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kinzoku heputankei no mekanikaru aroingu ni okeru han\u27no katei to sono seikeitai ni kansuru kenkyu

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(1)

り稲田大学審査学位論文(唐土)

ニカルアロイ

͡ . − 、 / 、 / ゝ y − / 7 − − −   ` V f 一一 心 こ 一   −   -心 ●f -− - ● 一 一 八=’

ングに

(2)

-__

金属−ヘプタン系のメカニカルアロイングにおける

    反応過程とその成聖体に関する研究

1995年3月

(3)

第1章   1.1   1.2 IJ I 1.4 1.5 1.6 第2章   2.1   2.2 第3章   3.1   3.2   3.3 序論

−一一 目次 −一一

I 24   メカニカルアロイングの歴史的経緯………1   メカニカルアロイングの原理………2 1.2.1 装置について………2 1.22 ボールミルによる合金化過程………4   MAによる非平衡相の生成………6 13.1 多層膜拡散法によるアモルファス相の生成………6 1.3.2 MAによるアモルファス化の熱力学的考察………8   MAによるメカノケミカル反応………10   メカニカルアロイングでの構造用材料の作製.‥………12   本研究の目的………14   参考文献………14   実験方法………17   実験の手順………17   解析方法………19 2.2.1 X線回折による相の同定………19 2.2.2 示差走査型熱量分析………19 22.3 炭素、水素の分析………21   参考文献………23 金属単体粉末(Zr、Ni、Ti)とヘプタンとの反応………24 緒言 実験条件………25 反応に対するプレミリングの効果………26 I

(4)

一 一 -34 MAでの反応における準安定中間体の発見………31 3.5 3.6 Ti−ヘプタン系における湿式ミリングが反応に及ぼす効果………37 炭素と水素の反応量の比について………… 44 3.7 反応機構の検討………46 3.8 小括 参考文献……… 51 52 第4章 金属混合粉末(Ti+AI)とヘプタンとの反応………53 4.1 緒言…… 4 4.6 炭素と水素の反応量の比について 4.7 小括 5.1 緒言 53 89 90 91 92 42 ミリング条件………53 4.3 ミリングによる粉末の変化………54   4.3.1ミリングによる粉末外観の変化………54   43.2ミリングによる粉末粒子の内部組織変化………58   43.3ミリングによる構造変化………61 44 ミリング中での反応の確認………64 5 メカノケミカル反応に対するミリング条件の影響………72  4.5.1反応に対するプレミリングの効果………72  45.2湿式ミリング(反応ミリング)の効果………84 参考文献……… 第5章 MAによる炭化物複合TiAI金属間化合物粉の作成及びその成型体     の性質………92 5.2 遊星型ボールミルとアトライターにより作成したミリング粉末   の特徴………96   5.2.1ミリング条件………96 II

(5)

-IJ ζJ 5.4 5.5 5.2.2  ミリング進行状況の比較………98   焼結性及び成型体の性質………101 5.3.1 実験条件………101 5,3.2 成型体のX線回折による相同定………103 5.3.3 成型体の密度測定………105 5.3.4 成型体の組織観察………106 5.3.5 高温硬度の測定………108   高温三点曲げ試験結果………109 小括 112 参考文献………112 第6章  総括………114 謝辞………117 研究業績………II8 III

(6)

-第1章序論

1.1 メカニカルアロイングの歴史的経緯

 メカニカルアロイング(Mechanical A11oying: MA)はボールミル申で金属粉末を撹 挫して合金化する方法で、1970年にBe巾minにより耐熱強度に優れた超合金を作成す る方法として開発された1).NiヽCrなどの原料粉末と少量のY203粉末を高エネル ギーボールミルにより混合し、粉末の粉砕と圧接を繰り返して合金化を行なう。ニ のプロセスは溶解プロセスを経ずに機械的手段で合金粉末を製造する点からメカニ カルアロイングと呼ばれている。このB哨aminにより作成された酸化物分散強化型超 合金(Oxide DispersionStrengthenedSuperanoy : ODS超合金)は従来の方法と比べて、 酸化物が金属粉未申に均質、微細に分散し、しかも金属結晶粒自身も微細化される ために耐熱強度が高まることが明らかにされている。さらに溶融法にはない自由度 の大きな組成の選択が可能であり、大きな融点差や比重差を待つ元素の組み合わせ からなる合金を生成することができる。  一方、1981年にYermakovらがY-Co系金属間化合物をトルエン申でボールミルする 事によりアモルファス化することを見出し2)、さらに1983年にKochらがNiとNbの純 金属混合粉末をミリングすることによりアモルファス相を作成することに成功した恍 このことにより、従来は気相急冷、液休息冷でのみ得られていた準安定非平衡物質 を因相反応により得る方法としてMAが注目を集めるようになった。  また、MAで得られた金属間化合物粉末のバルク化や、MAによる希土類磁石の作 成などの研究も進めらている4・5)。MAでは組織の微細化が可能であるため、金属間 化合物の欠点である延性の改善や磁性材料における保磁力の上昇が期待されている。  さらに、従来は高温で起こる化学反応がMAにより常温でも生ずることが見出され ている。高温や高圧で金属を窒化させることにより得られていた金属窒化物が、N2 雰囲気でのMAにより合成出来ることをCalkaらは明らかにした6)。また、Schaflerら によりMAで金属酸化物の還元が可能であることが明らかにされている7)。これらの ように化学反応の低温化に有効な方法としてもMAが研究され始めている。 1

(7)

-1.2 メカニカルアロイングの原理

1.21 装置について

 メカニカルアロイングは装置としてボールミルを用いており、そこが特徴の一つ

である。 したがって装置についての説明を述べる。一般にボールミルでは容器の回

転速度を速くするとボールが容器壁と共に回り始める、いわゆる臨界条件が存在す

る。そのため回転速度はこの臨界条件の範囲内に制約される。

Fig.1-1に従来使われ

てきた落下式回転型ボールミル装置を複式的に示す。この落下式回転型ボールミル

ではミリング中に粉末に与えられる力、すなわちミリング強度は容器内のボールが

重力により落下する速度とボールの質量に依存する。落下式回転型ボールミルでは

臨界条件におけるボール衝突時の速度はv=2ソRンで与えられる8)。ここでgは重カ加

速度、りは容器の半径である。この値は容器の直径により決まるが、容器の直径を

大きくすることには限界があるため、ボールの速度も制限される。従って落下式回

転型ボールミルでは近年需要の高まってきた微粉体を得るにも長時間の粉砕が必要

である。そのため、より高エネルギーのボールミル装置が望まれ、新しい形式の

ボールミルとして遊星型ボールミル、振動型ボールミル、アトライターなどが考案

された。

ノ ///j 一 -!・.︲一属

Fig.1-I Conventional horizontal ball miH

IJ

遊星型ボールミルとアトライターの複式図をFig.1-2に示す。遊星型ボールミルは

遠心力を利用したボールミル装置である。粉砕容器が水平面上におかれた支持回転

盤上に取り付けられており自転運動を行なう。これと同時に支持盤は自転方向とは

(8)

-逆向きに公転運動を行ない、これら2つの回転運動により容器内のボールは遠心力を

受け加速度を生じる。本間らは公転と自転の速度比9を用いて臨界条件を式(口)のよ

引こ示し、遊星型ボールミルの臨界条件は公転と自転の速度比の形で与えられるこ

とを導いている9)。このように遊星型ボールミルの臨界条件は容器の回転速度ではな

く、公転と自転の速度比の形で与えられるので、理論的にはいくらでも速度を速く

して大きなエネルギーを得ることが可能である。

      (i)=1+、/2尽/(必−ゐ) ここで zil:支持盤中心から容器中心までの距離 ふ:ボールの直径 である。  ̄ ̄    公転方向 遊星型ボールミル (I.1)

ゐ:容器の直径

アトライター

Fig.ls2 High energy ball mill equipments.

これら装置はそれぞれミリング方式が違うため、ミリング時間や条件がミリング

の進行へ及ぼす影響は装置ごとに異なる。鰐川らはTiCの生成に及ぼすミリング方式

の効果を報告している1o)。遊星型ボールミルと振動型ボールミルをもちいて丁㈲と

黒鉛粉末をミリングする。このとき発熱を伴ってTiと黒鉛は反応するが、遊星型と

(9)

-振動型とでは発熱反応が起きる時間がそれぞれ5.22ksと163.2ksである。また、遊星型 ボールミルではボール径の影響を受けにくいが、振動型ボールミルではボール径を 小さくすると粉末の活性化は小さくなり、ミル内での爆発的な発熱反応現象も起こ らなくなることを明らかにしている。  さらに、Eckertらは遊星型ボールミルの回転数がアモルファス形成に与える影響 を調べている11)。装置の回転レンジを変化させることによりミリング条件を変化さ せた。 レンジ3のときは回転数が遅く、60h以内のミリングでは完全なアモルファス は形成せず、レンジ5では60hで完全なアモルファス相が得られる。回転数の速いレ ンジフの場合には金属間化合物が生成し、部分的な結晶化か確認されている。  1、2.2 ボールミルによる合金化過程  MAでは粉砕媒体であるボールが衝突する時の衝撃圧縮、剪断、摩擦により粉末粒 子が変形、加工硬化すると同時に新生面の生成が起こる。このときKneading効果、す なわち新生面の圧着及びたたみ込みにより次第に微細に混ざり合っていき、原子レ 4ルでの混合が起こり合金化する。この現象はKneading効果を用いて以下のように説 明される12・13)。Fig.1-3にKneading効果の原理を複式的に示す。金属AとBの粒子をあ わせて、初めにjoの厚さがあるとする。次に圧延やMAのボールなどによりこれを 1/aに圧縮して延ばし、これを折りたたんでふたたび1/aに圧縮する。この操作をn回 繰り返すと、A、B金属の厚さjはKneadingの式よりj=べ)x(1/α)"となる。ここで α−2で15回(z7=15)、この圧延と折りたたみが行なわれたとするとA、B両金属は 厚さd、dox10-5で積層された状態となる。 したがって、例えば元の粒径が1 ・m オーダーの異種金属元素の混合粉末の場合ではj=10-9mオーダーの積層となり原子 レベルでの混合が可能である。 4

(10)

-→

/

ノダ

Fig. 1-3 A schematic diagram of kneading eact.

□jox(1/α) ∠

djく(1/α)2 jo)く(1/α)3

 通常、MAによる合金化の進行過程は3段階に分けて説明される14・15)。第1段階で

は原料粉末粒子は冷間圧接により扁平化あるいは片状化されて二次凝集する。その

複合体粒子中にはまだ出発原料が残り、二次粒子ごとに組成の偏りができている。

酸化物などの硬度の高い分敷物が存在する場合は一次粒子の界面に沿って分有する。

第2段階では、複合体粒子はKneading効果が進み層状構造を持つようになりラメラ組

織が発達する。ミリングが進むにつれてこのラメラ組織の層間隔は狭くなり、分散

物がある場合はKneading効果により粒内に微細に取り込まれる。第3段階ではラメラ

組織はランダム化し、ついには光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡では識別できない程

度まで微細に均一化する。組成も各々の粒子全体にわたって挿入時の混合組成で均

一になる。粉砕と凝着が釣り合い粒径は一定値に近づく。このミリング進行過程の3

段階を複式的に表したのがFig.1-4である。

(11)

-︲ ︲ − ︲ − ’ − − ︲ −

クプく

乙?

Ball

(-フ

ンフ

⇔ 四 ⇔ ⇔ Ball Ball Ball  CDハ   こづ沙 つ/-″ ̄ ̄ ̄ Ba‖ (ご ⇔ ⇒四心  − 感吟

ノ四

≪5

Fig‘1'4 A progress process ofmechanical alloying

1.3MAによる非平衡相の生成  1.3.1 多脳膜拡教法によるアモルファス相の生成  固相反応での非平衡相であるアモルファス形成反応機構において、MAでのアモル ファス形成反応機構と類似している重要な反応に多層膜によるアモルファス相の生 成がある。この多脳膜拡散法によるアモルファス合金の作成は1983年にSchwarzと JohnsonがAu−Laの多屠腹を低温熱処理することにより成功し、注目を集めた16)。彼 らは基盤状にAuとLaとを交互に厚さ100∼600Åの脳を6∼16脳蒸着させ結晶質の多肩 6

(12)

1.〔〕 La

0.8

Fig.1‘5 Gibbs n゛eeenergy for Aul-XLax alloy system at 373K

-膜を形成し、323∼353Kで2∼5hの熱処理を行ない相互拡散させることによりアモル

ファス相を得た。彼らはこの固相反応を自由エネルギー図を用いて説明した。Fig」-5にAu−La系の373Kにおける自由エネルギー曲線を示す。結晶AuとLaの混合状態は

破線で示したAuとLaを結んだ線上にある。過冷却液体とみなしたアモルファス相の

エネルギーは実線で示した低い状態となる。反応の化学的な駆動力はAu−La系の混

合のエンタルピー∠IHmixであって、この値が大きく負であれば、多層膜の界面で拡

散が起こり系の自由エネルギーを下げ、ついには過冷却液体の状態すなわちアモル

ファス相になる。この∠Hmixが大きな負の値であることが多層膜拡散法によるアモ

ルファス化に必要な条件だとされている。 La中のAuの拡散が速いので結晶化温度以

下の温度でもこのアモルファス化反応は進むが、温度が低いため自由エネルギーの

より低い状態である金属間化合物の核生成や成長が起こらずアモルファス相のまま

である。

−90     00        10     ︲1       ︲1 ︵一〇s/K)¥)E)HN2I EE SEID 120 0.2 0.4  X→ 0.6

(13)

- □2 MAによるアモルファス化の熱力学的考察  最初にMAによるアモルファス化現象を発見したYermakovらはこれを固相反応に よるものとは考えず、合金粒子表面の局所的な加熱による溶融一息冷凝固現象と考 えた2)。 しかし、Schwarzらはボール衝突時に挟まれている粉末の温度上昇を計算し た結果38K程度であり、局所的な融解は起こり得ないことを指摘した17)。現在では 局所的に溶融急冷が起こってアモルファス化するという考えは一般的ではなく、以 下のように説明されている。  金属混合粉末のメカニカルアロイングにおけるアモルファス相の形成機構は基本 的には多層役を熱処理して得られる機構と同じと考えられる。 ミリングの進行過程 の説明で述べたようにミリングの進行に伴い、あたかも多端役のように層状組織が 発達する。この層状組織はミリング時間が長くなるにつれて、Kneading効果の式 j−d,

ox(1/α)"で示したように拡散によってアモルファス化するほどの薄さとなる。

SchxvarzらはNiとTiの純金属同士のメカニカルアロイング途中で組織を観察した18)。

その結果、粉末内部は層状構造であることを値話し、その界面からアモルファス相

が生成していることを明らかにし、多層膜拡散法によるアモルファス形成機構と同

じであることを結論した。

 MAによるアモルファス化は熱力学的には以下のように説明される。金属間化合物

を形成する二元系合金の自由エネルギーをFig.1-6のように複式的に示す。平衡相と

して固溶体のα相とβ相およびAnBm組成の金属間化合物yが存在する。また、アモ

ルファスは過冷却液体とし、その自由エネルギーは液相の自由エネルギー状態とし

て扱う。 AnBm組成になるようにA、B両元素粉末を混合すると、MAのスタートにお

いてはA、B混合物の自由エネルギーはFig.1-6の点(a)で与えられる。この時、混合の

エンタルピー∠Hmixが負で両者の間に化学的な駆動力があれば相互拡散の結果A-BI川

に化学的な結合が生まれる。これは自由エネルギーの点(b)への低下を導く。通常の

鋳造法の場合は金属間化合物の生成は避けられない。しかしMAの場合には結晶A、

Bが自由エネルギーの低いアモルファス相へと変化することは容易であっても、さら

にヒエラルキーの低い金属間化合物へと変化することは困難である。なぜならば、

(14)

-金属間化合物を形成するための原子の再配列は低温では起こりがたいことや、余屈、 間化合物の核の生成も起こりにくいからである。すなわち、“kinetic constraint" が アモルファス相形成の一つの要件となる。  各相の自由エネルギー曲線に対する共通接線を引くことにより、相の境界組成が 求められる。金属間化合物yの生成が起こらない場合、この共通接線の法則を用い てアモルファス相を形成する組成範囲を予想することができる。Fig.1-6においてa 相、β相の自由エネルギー曲線とアモルファス相の自由エネルギー曲線との共通接 線の接点をそれぞれXI、X2、X3、X4とする。この時、XI−X2、X3−X4の組成範囲 においては固溶体とアモルファスとの2相混合であり、X2−X3の組成範囲ではアモ ルファス単相となる。Schwarzらはこの方法によりアモルファス相を形成する組成範 囲を予測し、これがMAによるアモルファス形成組成範囲を調べた実験結果とよく一 致したことを報告している16)。  一方、金属間化合物をボールミルでミリングすること(Mechanical Grinding : MG)によってもアモルファス相が得られる。 1981年のYermakovら2)による実験に引 き続き、Schへvarzら17)がNi−Ti系の金属間化合物のMGにおいてもアモルファス相が 形成されることを見出した。この場合には自由エネルギー的にヒエラルキーの最も 低いFigl-6の点(c)にある化合物相がMGにより機械的エネルギーを投入され、ヒエラ ルキーの高い点(b)のアモルファス相へと移行している。Schwarzらはこの機械的エネ ルギーは主に空孔子点や転位のような格子欠陥のエネルギーとして蓄えられている と結論した17)。  このように、高エネルギーのミリングによって自由エネルギーの高い準安定非平 衡状態へ移行し得ることは、多層膜拡散とは全く異なる現象である。この現象は以 下に述べる化学反応の活性化として利用することができる。 9

(15)

-ADJeuE19aJj sqqi︶ I I I I I I I I I y Λ山川w tば ハー c) β J  X4 A  XI system. X2 AnBm  Composition 10 X3

Fig.1'6 Schematic Gibbs fiee energy curves in a hypothetical binary A-B alloy

1.4MAによるメカノケミカル反応

 メカノケミカル反応は固体、液体、気体物質に、種々の形式一例えば圧縮、剪断

摩擦、延伸、曲げ、衝撃などーで加えられた機械的エネルギーが、それらの物質の 物理化学的性質の変化を誘起させ、固体の場合にはさらにまわりの液体や気体と化 学反応を起こすなどの一連の化学的現象に関するものである19)。  応力下の固体表面におけるミクロな塑性変形は表面近傍での原子のポテンシャル エネルギーを変化させる。原子レペルでの混合が単なる粒子同士の混合とは異なる 点はこのポテンシャルエネルギーの変化、すなわち安定な結晶状態からの偏りを伴 う点である。この偏りによるエネルギーの励起は緩和による再安定化に直結するの でメカニカルアロイングを含む粒子の複合化は過渡的現象を応用したものである2o)。

(16)

- 

高エネルギーボールミルを用いたミリングによって金属粉末には新しい活性な新

生表面が常に生成されている。この活性化により金属を窒素や炭素、有機化合物な

どの媒体物質と反応させることが可能であり、MAはメカノケミカル反応を起こさぜ

る方法の一つでもある。これらの化学反応を伴ったメカニカルアロイングは反応ミ

リングと呼ばれることがある。

 CalkaらはN2ガス中で種々の金属粉末をミリングすることにより金属窒化物を得て

いる6)。例えばTi粉末をN2ガス流中でミリングしていくとアモルファス状のTiNが生

成し、これを熱処理することにより結晶相のTiNを得ている。同様の方法で他にも

ZrN、VN、BN、Mo2N、Si3N4、AINなど様々な窒化物の合成に成功している。

 また、SchaarらはMAが金属の還元反応を低温で起こさせるのに有効であること

を示した7)。例えばCuOの還元反応の場合、CuO粉末とCa粉末を室温でミリングする

事によりCuを還元させることができる。この他にも以下のような化学反応をMAによ

り行なっている。

3CuO十2AI  → 2CuO十Ti CuO十Mg 2ZnO十Ti → → → 3Cu十A1203 2Cu十Ti02 Cu十Mgo 2Zn十Ti02

 これらの実験結果は溶融法では困難であった合金の合成やアモルファス相の作成

方法として考えられていたMAが室温における化学反応の活性化に貢献できる可能性

を示している。

 通常の化学反応においては自由エネルギーが下がる方向へだけ反応は進むが、MA

やMGでは自由エネルギーが上がる方向へも反応を進めることができ、このことによ

り反応を中間状態で止めアモルファス相や準安定化合物相を得ることができる。

Tanakaらは以下のことを報告している21・22)。FeとグラファイトのMAにより準安定

FeフC3とFe3Cが形成しヽNiとグラファイトヽCoとグラファイトのMAによりそれぞれ

準安定Ni3C、Co3Cが形成する。これら炭化物Fe3C、Ni3C、Co3Cの標準生成自由エネ

ルギーはそれぞれ約19kJ/mol、32kJ/mol、1、2kJ/molと正であり23)、従来は溶融状態の

金属にグラファイトを添加して急冷する方法でしか得られなかった準安定化合物で

      一目一

(17)

〃 ミ

ある。これがMAによって容易に生成されたことは反応の活性化と準安定非平衡状態

の保持という点で注目すべき現象である。

 有機化合物と金属粉末のボールミルによる反応はAfiasにより報告されている2ヤ

この報告では有機化合物側からの分析のみを行ない、金属粉末に起こっている変化

はとらえていない。また、兼言らはヘキサン中におけるNb粉末のMGを行ない、ヘキ

サンの添加量によって、炭化物または水素化物ができると報告している25)。

1.5 メカニカルアロイングでの構造用材料の作製  MAによる酸化物分散強化型超合金が1970年にBenjaminl)により開発されて以来、 MAによる構造用材料作成の研究も進められている。 ODS合金には、金属粉末表面に 生じる酸化皮膜を分散粒子として利用したSAP(AI-A1203)合金(摩擦法)、あるいは、 混合塩類の水溶液から化合物を沈殿させ、加熱分解によって得た酸化物の一方を水 素ガスで還元する方法で作成されたTD-Ni合金(共沈法)がある。 しかし、いずれの 製造法においても分散粒子の量的コントロール、製造コストの点で問題があり、適 用できる合金系が限られていた。MAにおいてはこの従来の分散強化型合金の作成上 の問題点の解決が期待される。  黄らはAI粉とFe粉をMA処理して分散強化型AI−Fe合金を作製し、得られた粉末を 強制圧延法により固化成形した26)。この成型体の引張強さは粉末作製時のMA処理時 間が長いと増加することを見出している。また、高橋らは分散強化銀作製のため純 銀、黒鉛粉末、及び炭化物を形成する第三元素M(Ti、Zr、Ta、Nbなど)の三者で MAを行なった27・28)。彼らはMAにより一旦Cu-M-C固溶体もしくは超微細混合物を作 製し、それを反応熱処理することにより炭化物分散銅を作製する方法を提案してい る。この場合、熱処理したMA粉末を熱間押し出しすることにより常温での引張強さ 657∼725MPa、伸びII∼12%という従来よりも優れた分散強化銀を作製することに成 功している。  金属間化合物を粉末冶金で作製する場合においてもMAはその粉末試料作成方法と して注目を集めてきている。大浦らはNi-Ti系における三つの化合物組成(NiTら、 NiTi、Ni3Ti)の混合粉末について、MAに伴う粉の形状、結晶構造の変化、昇温によ 12

(18)

〃 ` る反応および加圧焼粘挙動を調べている29)。MA後の生成相は組成によりアモルファ ス単相と、アモルファスと過飽和固溶体の混合相となった。これらの粉末を昇温す ると発熱反応を伴い各化学組成の金属間化合物へ変態しか。MA粉末を加圧焼粘した 試料の硬さはMA時間の増加とともに増加し、MA処理が焼粘体試料の性質に影響を 与えることを示した。  また、落合らはMAに基ずく粉末冶合法によりNiAI金属間化合物の製造を行ない、 その組織および機械的性質に及ぼすMAの影響について検討している3o)。MA処理時 間が長いほどその粉末の焼粘体組織は微細化する。MAにより製造した試料は673K以 上の温度で曲げ変形量が大きくなり、明らかにMAによる延性の改善が認められた。 MA処理時間が増加するとNiAIの強度の増加をもたらすが、変形態はむしろ低下して くる。室温でさえも破面が脆性的形態から延性的形態に変化する。MA処理はNiAIの 延性の改善への好影響を暗示していると報告している。  さらに、高比強度耐熱材料として近年注目を集めているTiAI金属間化合物のMAに よる作製も試みられている31・32・33)。杉本らはMAにより作製したTiAI粉末をホットプ レスにより固化成型し、得られた焼粘体の組織と機械的性質について報告している 34)。彼らは、回転式ボールミルにより1800ksのMAを行ない、ほぼ均一に微細分散し たTiとAIの微細混合組織粉末を得た。その粉末を真空ホットプレスにより1173Kで 100MPaの荷重をかけて焼粘した。焼粘体のXRエ)測定ではTiAIのピークが主に見られ るとともに、A13Ti金属間化合物のピークも少し見られる。この焼粘体の機械的性質 として常温での圧縮試験の結果と1173Kでの圧縮試験における真応力一真ひずみ速度 線図を溶製材と比較して示している。この焼粘体の強度は0.2%耐力(cJ02)で 2770MPaであり比較の溶製材の295MI)a、その溶製材の1473K焼鈍材に比べて非常に 高いが圧縮伸びは約1%と比較材の約20%に比べて著しく小さい。 しかしこのMA− ホットプレス焼粘体を1473Kで焼鈍したものはり2が1189MPaで約20%の圧縮ひずみ においても破壊しない。このことはTEMによる組織観察の結果から結晶粒径が1∼卸 mの比較的微細な組織であるためと結論している。H73Kの圧縮試験での真応力一真 ひずみ速度線図では溶製材のひずみ速度感受性指数m値が約0.1と低いのに対し焼粘 体では0.32と比較的大きく、超塑性の可能性を示すことを明らかにした。       −13−

(19)

〃 ミ

1.6本研究の目的

 メカニカルアロイングにおける化学反応はミリングの進行に件って徐々に進行す

ることが特徴である。化学反応は一般に複雑でその進行過程を取り出すことは困難

であり、それが反応機構の解明を困難にしている原因の一つである。 しかし、メカ

ニカルアロイングでは室温で反応を起こさせることができ、いろいろな進行段階を

制御することができる。そこで本研究では主としてメカノケミカル反応において反

応量と金属中における構造の変化に注目して反応過程の解析を行なうこととした。

 さらに、実用材料の開発を考えるとき、材料の限界を改善するために新しく改良

された材料を発展させる必要があり、新たな材料作成プロセスの研究が行なわれて

いる。非平衡プロセス技術は準安定構造を作れるため、ユニークな材料の合成が可

能であり、現在までは急冷凝固という方法が多くの研究者により研究されてきてい

る。メカニカルアロイングも非平衡プロセスの一つであり、多彩な相及び組織を生

成し、同時にそれらを制御することが可能であるので、大きな期待が寄せられてい

る。よって化学反応を伴うMAを用いて作成した粉末で成型体を作成し、その杵腫を

調べることも行なった。

 また、1.2.1節において高エネルギーボールミルについて説明した。これらの装置

は実験室的な使い易さの点で特徴があるが、ボールから試料へのエネルギー伝達様

式が各装置同士で異なる。従って、MAにより合金化あるいは化学反応を起こさせる

場合の運転条件は装置によって異なる。また、室温での固相反応であるために反応

の均一性、再現性という点では従来の気相、液相の反応とは異なることが予想され

る。本研究ではこれらの装置を比較してMAという固相反応の再現性を調べることが

目的の一つである。

1) 2)  参考文献

J.S.Benjamin : Met. Trans、、1(1970)2943.

A.Ye.Yermakoev、Ye.Ye. Yurchikov and v.A Barinov : Phys. Met. MetaH 、52 (1981) 50.

(20)

〃 `

3) C.C,Koch,0.B,Cavin,C.G.MCKamey and J.0.Scarbrough: Appl.Phys.Lett.43    (1983)1017. 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10)

C.C.Koch : Annu. Rev.Mater. Sci・,19(1989)121. L.Schultz : Materia】sScience Forum, 88-90(1992)687.

A.Calka and J S Wimams : MaterialsScience Forum, S8-90(1992)787.

G.B.SchaSr and P.G.MCCormick : MaterialsScience Forum, 88-90(1992)779. D.R.Maurice and T.H.Courtney : Metall.Trans.A,21A(1990)289.

本間寅次郎,栗山雅文,長谷川波祐,神田良照:化学工学論文集,11(1985)3 鰐川周治,武田徹:粉体および粉末冶金,39(1992)1145.

11)J.Eckert,L. Schultzand K, Urban : J.Mater.Sci。26(1991)441, 12)新宮秀夫:日本金属学会会報,27(1988)805.

13)(財)金属系材料研究開発センター,非平衡新材料部会,「非平衡新材料の製    造プロセスに関する調査報告書」(1992)p182

14)渡辺龍三:日本金属学会会報,27(1988)799.

15)Elazar Y. Gutmanas : Progressin MaterialsScience,34(1990)261. 16)R.B. Schwarz and W.L. Johnson : Phys.Rev. Letters,51(1983)415. 17)R,B. Schwarzand(IC. Koch : Appl,Phys.LettJS9(1986)146.

18)R.B.Schwarz,R.R. Petrichand C.K. Saw : J.Non-Cryst,So】id76 (1985)281, 19)久保輝一郎:メカノケミストリー概論,東京化学同人,(1971)。

20)仙名保:日本金属学会会報、27(1988)802.

21)T. Tanaka、 S.Nasu、K.N.lsihara and P.H. Shingu : J.Less-Common Met.、171(1991)   237.

22)T. Tanaka、 K.N. lsiharaand RH. Shingu : Meta】1.Trans. A、 23A(1992)2431. 23)データブック高融点化合物便覧モスクワ<冶金>出版所1976年版

24)A.Arias : NASA、 Tech.Note、NASA TN-D8015 (1975).

25)兼吉高宏、山田和俊、高橋輝男、林行信、元山宗之:粉体粉末冶金協会講演概   要集、平成4年度秋季大会p.164.

26)黄斌、小林紘二郎、新宮秀夫:軽金属、38(1988)165、

(21)

〃 ` 27) 28) 29) 30) 31) 32) 33) 高橋輝男、橋本雅彦、香山滉一郎:粉体および粉末冶金、36(1989)404 高橋輝男、橋本雅彦:粉体および粉末冶金、36(1989)688 大浦修司、五日市剛、梅本実、岡根功:日本金属学会講演概要、1991.10 p.215、 落合鍾一、小島陽、中野千寛:粉体および粉末冶金、36(1989)683 菅原智、深潭英一、木村博:日本金属学会講演概要、1992.1o、p.247 朴容浩、橋本等、渡辺龍三:日本金属学会講演概要、1991、4、p35o.

T.lsukaichi、K.Masyama、M.Umemoto、I.0kane and J.G.Cabanas-Moreno : J. Mater

Res.、8(1993)1 8 17.

34)杉本春彦、飴山恵、稲葉輝彦、時実正治:日本金属学会誌、53(1989)628

(22)

│ − I r ・ W I 〃 −

第2章実験方法

2.1 実験の手順  本研究では各章においてボールミル装置を以下のように使用した。第3章の実験で は振動型ボールミル(Spex社製:Spex8000)と遊星型ボールミル(Fritsch社製:P− 5)を、第4章においては遊星型ボールミル使用した。また、アトライターは大量の 粉末を一度にミリングすることが可能であり、実用化に適している。第5章において は実用化への応用を検討しており、遊星型ボールミルとアトライター(三井三池化 工機社製:MA5D-X)の両方を用いた。これらの運転条件については実験結果の記 述において述べる。Fig.2-1に基本的な実験手順を示した。試料の調整、ポットヘの ボールと粉末の封入、ヘプタンの添加作業、粉末試料の回収はすべてAr置換された グローブボックス中で行なった。置換用Arガス純度は99.999%であり、グローブボッ クス内の酸素濃度は10ppm以下まで制御可能である。

試料の調整

Dry Premi

ヘプタン添加

 Vvet Milling (Reaction MilJjng)

成 型

 ̄¬ −ノ Fig.2-I Procedure 17

(23)

〃 ・

本研究における実験方法においての大きな特徴は乾式プレミリングを行なった後

ヘプタンを添加して湿式ミリングを行ない、ミリングの過程を二段階にを分けたこ

とである。このことにより乾式プレミリング(従来のMA)の効果と湿式ミリング

 (反応)の効果とを分けて抽出する事ができる。従来ミリング助剤は最初から示加

される。この場合は粉末同士や、ミリング媒体との凝着を訪ぐのが目的であるから

ミリング媒体が摩砕されることによる不純物が多くなる。またミリング助剤を加え

ない場合はミリング媒体への凝着が多く、特に高エネルギーボールミルなどの場合

には極端に回収量が少なくなる。本法においては乾式プレミリングでミリング媒体

 (ポット、ボール)の表面に試料粉末をコーティングすることにより不純物を少な

くし、その後の湿式ミリングで飛躍的に回収量を上げることを可能とした。このよ

うにミリング途中でミジング助剤を加えることにより両方の問題を解決する事がで きたので、本法を採用した。  ミジング助剤にはステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)、メタノール(CH30H)な どが通常使われる。 Be巾minl)らもアルミナ分散アルミニウムをMAで作成しすると きにこれらのミリング助剤を使用しているが、このときこれらミリング助剤のため にA14C3が生成している。ヘプタンは金属と反応しにくいアルカン系炭化水素(炭素 と水素からなり二重結合、三重結合を持だない炭化水素)であり、酸化を防止レ かつ過剰な凝着を防ぎながらMAをする場合有効なミリング助剤である2)。これらミ リング助剤は乾式ミリング中のにおける粉末同士、または粉末とミリング媒体との 過剰な凝着を防ぐのが目的であるから、ミリング中に気化してしまうとその効力を 失う。そのため 々へ リング中においても液体である必要がある。 本実験におけるミリング条件(ボール数、回転数など)ではミリング中のポット の温度上昇は約333Kまでである。ヘプタンは333Kで液体であり 化合物であるので、回収時1

また揮発吐の高い

こヘプタンを揮発させやすいという利点がある。他のア

ルカン系炭化水素は、炭素数が少ないメタンやエタンではミリング中に気体になっ

てしまいミ!Jング助剤として使えずヽ ̄方ヽ炭素数の多いノナン(CH3(CH2)7CH3)

やデカン(CH3(CH2)8CH3)は揮発させにくく粉末の回収が困難になる。このためヘ

キサン(CH3(CH2)4CH3)かヘプタン(CH3(CH2)5CH3)がミリング助剤としては妥

      −18 −

(24)

〃 `

当なアルカン系炭化水素であるといえる。ステアリン酸などの酸やメタノールなど

のアルコール類はその分子内に酸素を含むので金属粉末と反応したときに酸化物な

ど多種の化合物が生成する可能性がある。そのためこれら酸やアルコール類は使用

しなかった。従来は有機化合物はミリング助剤としてのみ用いられ、反応生成物の

作成という目的には使用されていなかった。このアルカン系炭化水素をミリング助

剤と反応物の両方の役割で使用することも本研究の特徴の一つである。

2.2解析方法 2.2.1 X線回折による相の同定  ミリングした粉末試料、DSC制定後及び熱処理後の反応生成物、また焼結体生成 相を同定するためにX線回折法(XRD)を用いた。XRDの測定には理学電機製RAD −Cを用いた.Cu−Ka線を用い、管電圧50kv、管電流100mA、走査速度4deg/min サンプリング間隔0、02degで測定した。相の固定はJCPDSカードにより行なった。 2.2.2 示差走査型熱量分析  ミリングした粉末試料の昇温による変態や反応の有無、またその反応温度を調べ

るために示差走査熱量測定(dinFerential scanning calorimetry: DSC)を行なった。本研

究では島津熱流束示差走査熱量計(島津製作所製:DSC-50)を用いた。この装置は

熱涙束型のDSC装置で原理的には示差熱分析(di面rential thermal analysis: DTA)と同

じである。Fig.2-2に装置の原理図と典型的なDSC曲線を示す。均熱ブロックから試 料系、基準物質系に熱が流れ込みそれぞれの温度Ts、Trがプログラム温度に準じて 昇降する。このとき、試料系温度Tsからの基準物質系温度Trの偏差∠IT=Ts−Trを検 出する。基準物質としては通常測定温度域で熱的に不活性な物質が選ばれるが、試 料も熱的に不活性な状態にあるときは両者の熱容量差に基づく温度差がついて安定 する。今回は基準試料としてA1203を用いた。さて、試料に何らかの熱的活性状態、 例えば融解が起こったとする。融解中は試料温度が一定に保たれるのに対し、低率 物質の方は昇温を続ける。その結果一丁は融解前の一定値からはずれることになり、 この∠7]Tを時間または温度に対してプロットしたものがDTA曲線となる。DSCではこ 19

(25)

〃 W ・ 「 C 〃 `

の温度差∠ITがなくなるように補正するその熱量を測定する。そしてこのピークと

ベースラインで囲まれた部分の面積は融解、相変態や化学反応に要した熱エネル

ギーに比例する3)。

パネル部 温度, 温度差 電 気 部 ノ△Qに比例 △T べ スライン  /;,ジ / ///レ// _J △T

D S     .づー づ ジ" ジ.´ ベースライン 融解ピーク 時 間

Fig.2-2 A schematic diagram ofDSC and typicalDSC curve.

(26)

〃 ・ 〃 s

 DSCはミリングにより試料に蓄えられたエネルギーを評価するためにも用いた。

その方法としては以下の通りであり、測定法を複式図でFig.2-3に示した。最初に昇

温速度20K/minで室温から873Kまで通常のDSC測定を行なう。これをFirst

Runと呼ぶ。

その後室温まで炉冷し、再び同じ測定条件で再昇温を行ない測定を繰り返す。これ

をSecond Runと呼ぶ。最初のFirst Runで得られたDSC曲線とSecond

Runで得られた

DSC曲線により囲まれた面積を測定することにより873Kまでに放出されたエネル

ギーを求めた。この873Kまでの昇温により放出されたエネルギーをミリング中に金

属粉末に蓄積されたエネルギーとした。

︵一〇E、2︶収縮ヨ奘 First Run

Temperature(K)

873K Fig,2-3 DSCによる放出エネルギーの測定法

2.2、3 炭素、水素の分析

 ミリング後の粉末に含まれる炭素と水素の分析を行ない得られた結果を反応量と

した。炭素の分析には炭素硫黄同時分析装置(LECO杜製:CS−144)を用いた。測

定時の燃焼助剤としてはSnを少量用いた。炭素硫黄同時分析装置は酸素精製部、試

料燃焼部(高周波燃焼装置)、ダスト捕集部、赤外線検出部、データ処理部などか

ら構成されている。分析試料を高周波燃焼装置によって酸素気流中で燃焼させ、Cは

C02と一部COになり過剰の酸素によって搬送させて赤外線検出器に導かれる。その

流れをFig、2-4に示す。

21

(27)

〃 ` キャリア  ガス ト 。 一 M . ` 刃 ア H 2 除 0 去 ロン 卜う sツ プ 酸化銅 キャリアガズフ -浄化装置 f -・.__コ ダスト トラップ 赤外線 検出器 一一 (C02) 赤外線 検出器 一一  (S02) レ]ソープアンハイト'ロン

プラチナイズト  シリカゲル ー CO→C02 S02→S03 Exhaust

Fig.2'4 CS'144 gas flow diagram.

ルッボ

高周波炉

 水素の分析には水素分析装置(LECO社製:RH3)を用いた。測定時の燃焼助剤と

してSnを少量添加した。水素分析装置はキャリアガス精製装置、抽出炉、ダストト

ラップ、測定成分制御系、分離および検出系、データ処理装置などから構成されて

いる。キャリアガスにはN2を試料の融解には黒鉛るつぼを用いた。水素分析装置の

概要をFig、2-5に示す。

22

(28)

一 一 〃 ミ 1) 2) 3) N N2ヽH2 分離

り精製装置

¬ j   インパルス炉 l 二・ ト ー フ ッ プ |心  データ 処理装置   n / ` H CO N2  測定成分制御系 CO 1205つ-C02↓ I    H20↓

Fig.2-5 RH3 gas now diagram.

 参考文献

J.S.Bel!jamin and M.J. Bomfbrd : Met. Trans・,8A(1977)1301.

AN.Patel and W.E.Kuhn : Modern Developments in Powder Metanurgy, 13(1980)27 日本化学会:「新実験化学講座2,基礎技術I,熱・圧力」丸善,1977.

りー

(29)

-第3章金属単体粉末(Zr、Ni、Ti)とヘプタンとの反応

3.1 緒言

 金属と有機化合物のボールミルによる反応の研究例はまだ少ない。金属単体と有

機溶媒とのボールミルによる反応がAriasにより報告されているがI)、使用装置は従来

の落下式回転型ボールミルでありエネルギーが低い。反応物や反応過程の解析など

も有機化合物側からの分析のみを行ない、金属粉末の変化については解析を行なっ

ておらず、ミリング条件の違いが反応に与える影響もとらえていない。そこで本研

究ではミリング過程を乾式プレミリングと湿式ミリングの2段階にすることにより、

ミリングによって生じる金属粉末の変化と、それが化学反応の活性化に影響する効

果とを分離し、それぞれの条件を系統的に変化させることにより反応過程の解析と、

各ミリング段階が反応に与える影響について調べた。この様な手法によりミリング

が反応へ与える効果を抽出できることが本法の特徴となっている。

 金属単体粉末をミリングすることはミリング中の合金化過程がないという点では、

出発原料を金属間化合物としたときのミリング(MG)による非晶質化と類似の過程

であると考えられる。金属単体は非晶質化しないが金属間化合物のMGを行なったと

きと同じように歪みの蓄積や様々な欠陥、例えば空孔、転位、結晶粒界などの導入

により自由エネルギーが上昇すると考えらる。MAにおいて化学反応を起こさせる場

合、このミリングによる自由エネルギーの上昇は反応を促進させる可能性がある。

 そこで、ミリングによる自由エネルギーの上昇がその後の湿式ミリングでの反比

に与える影響を調べるために、Zr、Niそれぞれの金属単体粉末のミリングにおいて、

ヘプタンを添加して反応を開始させる直前までにプレミリングにより粉末に与えら

れたエネルギーを定量化した。ついでこの蓄積されたエネルギーがその後行なわれ

るメカノケミカル反応による反応量に与える影響を検討する。また、湿式ミリング

時間を長くすることによる反応の進行に伴う反応速度の変化、生成物の安定性の変

化など反応過程をとくにTi−ヘプタン系について解析を行なう。

24

(30)

-〃

3.2実験条件

 Zr、Ni粉末でのミリングと、Ti粉末でのミリングに分けて実験条件の詳細を述べ

る。使用した金属粉末及びn-ヘプタンの詳細は以下の通りである。

Table 3-1 試料の詳細  -試料  - 純度

粒 度

製 造 者

Zr粉末

99.7%

100 mesh

(株)高純度化学研究所

Ni粉末

99.9% 250 mesh

(株)高純度化学研究所

Ti粉末

99.9% 170∼250 mesh

(株)高純度化学研究所

99.7%

平均粒径:82潟Jm

(株)東邦チタニウム

n-ヘプタン(液): CH3(CH2)5CH3

試薬特級

(株)国産化学

 Zr、Ni粉末試料のミリングには振動型ボールミル(Spex杜製:Spex 8000)を川い た。粉末試料はZr、22.23gまたはNi、30.53gをそれぞれSUS-304製ボール10個(ボー ル直径:3/8inch、全ボール質量:36g)と共にAr雰囲気グローブボックス中でSUS-304製ポット【容量:100m】)に封入し、Oリングで密封した。 Spex 8o00の振動数は 850cycle/minで固定されている。 ミリング途中でヘプタンを添加する直前に数mgの粉 末試料のサンブリングを行ない、DSCによりプレミリングにより粉末に蓄積された エネルギーを放出エネルギーとして測定した。残りの試料にヘプタン10ml(6.8g)を 加えミリングを続けた。ミリング中のポット内もAr雰囲気である。湿式ミリングを 所定の時間行なった後に回収し、反応により粉末に含まれる炭素と水素の分析を行 なった。試料のサンプリング、ヘプタンの添加、粉末の回収などはすべてAr雰囲気 グローブボックス中で行なった。  Ti粉末のミリングに関しては遊星型ボールミル(Fritsch杜製:P-5)を用いた。Ti 粉末2ogをSUS-3o4製ボールloo個(ボール直径:3/8inch、ボール:試料質量比 =18:1)と共にAf雰囲気中グローブボックスでSUS-304製ポット(容量:680ml)に封 入し、Oリングで密封した。回転数430rpm(レンジ:5)でミリングを行ない、その 後ミリング途中でヘプタンを添加して反応させた。本実験では自転数を430rpmでミ ″ ` 。 J り / `

(31)

- − ■ 〃 ” ■ ” -〃 ゛

リングを行ったが遊星型ボールミル(P-5)は回転レンジを変えることにより回転数

を変更可能である。ミリング中のポット内もAr雰囲気である。乾式プレミリング時

間を変化させ湿式ミリング時間を一定にする場合にはヘプタン添加量をlm1、プレミ

リング時間を一定にして湿式ミリング時間を変化させる場合には、ヘプタン全量を

消費することによる反応の終了を避けるためにヘプタン添加量を10mlとした。

3.3 反応に対するプレミリングの効果  プレミリングによる金属単体粉末への効果を定量化するため、ヘプタン添加の直 前までにプレミリングにより粉末に蓄えられたエネルギーを、873Kまでの昇温で放 出される熱量としてDSCにより測定した。測定法については第2.2.2節に述べた通り である。その結果をZr、Ni粉末についてそれぞれFig.3-1、Fig.3-2に示す。 hcp構造で あるZrはプレミリングにより20kJ/mol程度のエネルギーが蓄積される。6hまではミリ ング時間が長くなると蓄えられるエネルギーも大きくなる傾向があるが、それ以降 は減少していく。fcc構造であるNiはミリングによるエネルギーの蓄積がほとんど起 こらない。 25  20  15  10  5   0 ︵一〇Eヽコ︶ぶ﹂の⊂3 peseelelj 0 2    4    6    8  DryPremilling Time (h) 10

Fig.3-I Released energy ofpowders aner various premilling periods fbr Zr system,

(32)

-=一匹∼ ︵一〇Eヽコ︶ぶ﹂auEl peseelel!j 3.0 2.5 O  Lr‘︶ O 2   1  1 0.5 0.0 0 2  4  6  8

 Dry Premilling Time (h)

10

Fig.3‘2 Released energy ofpowders afler various premilling periods fbr Ni system.

 プレミリングによって蓄積されたエネルギーは歪みや欠陥の導入によるものと考

えられる。このエネルギーはその後に行なう湿式ミリングでの反応に影響を及ぼす

と予想される。そこで、その影響を調べるために湿式ミリング(反応ミリング)時

間を一定にして、プレミリング時間を変化せさることにより反応量がどう変わるか

を測定した。湿式ミリング後の粉未申に含まれる炭素と水素の分析値を反応量とし、

Zr、Ni粉末についての結果をそれぞれFig.3-3、Fig.3-4に示す。Zrはプレミリング時間

が長くなるのに伴って反応量が増加するが、10hの湿式ミリングを行なったFig.3-3(b)

ではプレミリング時間が6h以降では反応量の減少が見らる。この結果はプレミリン

グによりエネルギーが蓄積されていくFig.3-1の傾向と類似している。Niでは反応量

が少ないので結果的に反応量はプレミリング時間に依存しなかった。

 Fig.3-1、2で見たようにプレミリングによるエネルギーの蓄積量から、Zrはプレミ

リングの効果により反応しやすく、Niではプレミリングの効果が現れにくいのでは

ないかと予想できる。 Fig.3-3、Fig.3-4の結果はこの予想と一致している。

 また、Fig.3-3(a)と(b)を比較するとZrにおいて湿式ミリング時間が長い方が反応量

のレベルが高く、反応時間が長い方が反応量が多くなっている。この現象は3-7節で

述べるTi−ヘプタン系においても見出された。

Niは反応そのものが起こりにくく、

27

(33)

-〃 ゛

ほとんどプレミリングの影響がない。AriasらもNiとヘプタンを従来の落下式回転型

ボールミル装置でミリングした場合、同じ装置でのZrとヘプタンとのミリングの場

合と比較してヘプクンの分解がほとんど起こらないと報告している1)。本実験でのNi

−ヘプタン系においても反応が起こりにくく、この結果と一致している。

︵回忌 芒忽”﹄○○ co︵一一︶’バ︶ 司 W lueluo9 uo︵tQハ︶ 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 9 8 8 8 , 8 , 8 , 0 8 6 4 2 0 CO Q 9 7 7 7 ア フ 2 0 9.5 9.0 8.5 8.0 7.5 7.0 (□ W 芒S一 ⊂ O Q ⊂ (1) 2

a5ぞ

6.0 20.0 19.5 19.0 18.5 18.0 17.5 17.0 W 芒3co ○ i Cy) 2 'p 16.5コニ 16.0 Fig ○■ (a) ○ ○ ■ ■ ○ [ WetMilli ■○ Time lh -0 0 | (b) ■● ○ ■O 1 Dry S    2    3 Premjlling Tjme(h) ■○ ○ | Wet Millj ■ ○ 4 Tjme 10h -2   4   6   8

 Dry Premilling Time (h)

○■

10

3-3 Carbon and hydrogen contents of powders milled fbr (a)lh and (b)loh  with n-heptane aner variouspremillingperiodsfbr Zr system

(34)

-’ 〃 ミ ︵回忌芒2⊂oQ 1 .6 4 2 0 8 6 4 1 1 1   0 0 0 0.2 0.0 ○ ○ ○ | ■ ■ ○ | O j ○ │ ・’ ・ | 0 2   4   6   8

 Dry Premi‖ing Time (h)

10

Fig.3'4 Carbon and hydrogen contents of powders aner various premilling periods      fbrNi system,

 プレミリング時間によるエネルギーの蓄えられ方とプレミリング時間に対する反

応量の変化の仕方が同じなので、プレミリングにより蓄えたれたエネルギーと湿式

ミリングによる反応量を関係づけた。その結果をZrとNi系についてFig.3-5とFig.3-6に

それぞれ示す。 Fig.3-5からZrでは蓄積エネルギーに対して反応量が直線的に増加す

ることが明らかとなった。よってプレミリングは粉末にエネルギーを蓄えさせるこ

とにより、反応を促進していることがわかる。一方、Niでは蓄積エネルギー、反応

量が共に少ないため蓄積エネルギーと反応量との間に相関関係は見られなかった。

すなわち、ミリングによるエネルギーの蓄積が反応量を支配する1つの要因である

ことが見出された。

29

(35)

一 ゛ -〃 ` ︵回忌 2.4 ﹃ノ﹄ 0 2  2  8   ︲6   1  1 芒ScoQ 一’﹄○﹁一﹂’μ︶ ︵gぢご⊂S⊂oQ⊂召JQQ 1.4 1.2 1.0 9.5 O   Q   O   Lr︸ G]x︶  a︶  N 7,0 9.0 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 20 八 S 遡 W lueluoD uel >、 工 ︵S芭   1 9 Ue6〇JpxH    17 16 Wet milli - time lh ○ ■ O ○ ■■ ○ | 0 2 4  6  8 Released  10 12 14 16 18 20 Energy(kJ/mol) 0 Wetmilli time 10h

Carbon

g Hydrogen

-○ ●○  ■ 30

o i

■ ○ ■  ○ ○  − 芒3⊂oo   1 8 −﹁−1−1−﹁1 25 ○ | ○  ■ 5   10  15  20

Released Energy (kJ/mol)

Fig,3-5 The eflFectof stored energy in premming period on carbon and hydrogen       contentsfbr Zr system.

(36)

-- -〃 ∼ Cで3 W luelU00 1 .6 1 .4 1.2 1.0 0.8 0.6 0,4 ○ j ○ (lニ) レ_ ○ | ○ ■ ㎜ O 0.5 1   1.5  2  2.5

Released Energy (kJ/mol)

Fig. 3 -6 The eflbct of stored energy in premil】ing period on carbon and hydrogen       contentsfbr Ni system.

3.4MAでの反応における準安定中間体の発見

 前節において、Zr、Niに対してプレミリングを蓄積エネルギーと関連付け、その

エネルギーが反応量を決める1つの要因であることを示した。この際、反応過程に対

するプレミリングの影響に興味が持たれる。 しかし、Zr粉末をミリングする場合、

エネルギーの蓄積は連いが反応の進行も連いため反応過程を解析することが困難で

ある。そこでZrと同じ結晶構造であるが反応を徐々に進行させることが出来たTiにつ

いて反応過程に対するプレミリングの影響を調べた。ボールミル装置には遊星祭

ボールミルを用い、反応過程を解析出来るように反応速度を抑制した。各々の試料

でプレミリング時間だけを変化させて、その後の湿式ミリング(反応ミリング)は

全試料で20h一定とした。

 プレミリング時間を5hから20hまで変化させてもTiの場合は粉末に蓄えられたエネ

ルギーにほとんど差はなかった。また、反応量にも乾式プレミリング時間の違いに

よる差が現れなかった。 Zrでは振動型ボールミルを用いたが、Tiの場合は遊星型ボー

ルミルでミリングを行なっているので、これらの原因は装置の違いによるミル方式

の差によるものと考えられる。

31

(37)

- ・ ` 〃 ミ  湿式ミリング時間を20h一定としたときのプレミリング時間によるXRD図形変化を Fig.3-7に示す。Tiの構造はhcpであるが、プレミリングをしていない場合でも湿式ミ リングを20h行なうとブロードな単一ピークの回折図形となる。さらに、プレミリン グ時間を長くしていくと反応時間(湿式ミリング時間)が同じでも結晶構造が変化 していき、プレミリングを12h行なった粉末では化c構造の回折パターンが現れること が見出された。湿式ミリング時間が同じでもプレミリングが粉末の構造変化を促し ていることがわかる。  次に、これらのミリング後の粉末試料について、DSC測定を行なった結果をFig、3-8に示す。すべての試料において800K付近でブロードではあるが発熱ピークが現れた。 950K付近には吸熱ピークが現れ、プレミリング時間が長くなるととも吸熱量が増加 する。この吸熱の原因が水素の解離であると考えられる。これを確かめるため、fbc-TiHI.96の熱分析を行ない、その結果をFig.3-9に示した。このDSC曲線からfbc-TiHI.96 は930Kで水素の解離を起こし、この温度はFig.3-8の吸熱ピーク温度945Kとほぼ一致 する。したがって、Fig、3-8の吸熱ピークはミリング中におけるヘプタンとの反応に より粉末に含まれていた水素の解離によるものであると考えられる。  さらに、Fig.3-8中の発熱ピークの原因を調べるために、プレミリングを12h行なっ た粉末をF厄3-8中に示した発熱ピーク前後の各温度(693 K、769K、800K、861K、 873K、lo73K)まで昇温して冷却した後でXRD測定を行なった。その結果がFig.3-10 である。 ミリングままの粉末ではfbc構造をとっているが焼鈍温度を上げていくと、 Fig.3-8での800K付近の発熱ピーク直前の769Kでhcp-Tiの回折線が回復しはじめる。 発熱ピークが終了した861Kではミリングままの粉末におけるfcc構造は完全に消滅し、 873Kではほぼhcp-Ti単相となっている。そしてさらに温度を上げると再び化c構造で ある回折線が現れる。この回折線はTiC(NaCI型)と同定でき、最終的にはTiCと hcp-Tiとの2相混合物となった。この昇温してから冷却した試料での構造変化は昇温 中におけるin-situxRD測定においても同じ結果が得られている。  TiCはNaCI型の化合物であり、またTi水素化物は水素含有量によりその結晶構造を fct、fcc(y -Ti水素化物)、再び瓦tと変化することが知られている2・3)。通常ならミリ ングままの粉末の比c構造を持つ反応生成物はTiCとy −Ti水素化物と推定できる。し 2 ` 。 j

(38)

-かしながら昇温していくと化c構造である反応生成物が消滅することから、これは反

応の準安定な中間体であると考えられ、このことはミリング中における反応の際の

中間生成相をとらえられたことを示している。

('n'e)4!suelul

20 40

    60

2Θ(de9(ee)

90

Fig.3-7 X-ray dimaction pattems of the specimens su1!jected to dry premilling fbr     diarent periods fbllowed by 20h wet milling fbr Ti system.

(39)

-・ ● -・’ 〃 ∼ ’¥j﹂40X3 373

573

 Temperature

773

(K)

973

Fig.3-8 DSC curves of the specimens subjected to dry premilling for difTbrent     periods fbllowed by 20h wet millingn)r Ti system.

(40)

-P− 〃 ゛ ↑ り 1 1E﹂仙石ox山 373 Fig 573 773

Temperature(K)

3'9 DSC curves offbc'TiH1 96 powder

35

(41)

-W●` 〃 = Fig ︵.1.司︶ AI!suelul 20 40

    60

2e(de9(ee)

90

3-10 X-ray diflractionpattems of the specimens sutりectedto 12h dry   premiHing and 20h wet milling followed by annealing at difTerent   temperatures fk)rTi system.

(42)

-〃 s

3.5 Ti−ヘプタン系における湿式ミリングが反応に及ぼす効果

 ここまでは乾式でのプレミリングが反応に与える影響について見てきたが、反応

量を支配するもっとも重要な因子の一つはヘプタンと粉末が接触している湿式ミリ

ング(反応ミリング)時間である。そこでTi−ヘプタン系のミリングにおける湿式

ミリングの時間と反応量との関係を炭素と水素のそれぞれについてFig.3-11の(a)と(b)

に示す。ここではヘプタンをすべて消費することによる反応の終了を防止するため、

ヘプクン添加量を10m1とした。

 炭素も水素も湿式ミリング時間が長くなるのに伴って反応量が直線的に増加して

いる。湿式ミリング時間が20h以上になると炭素の吸収速度は遅くなり、水素に対し

ては反広量が減少している。またプレミリング時間の効果は認められなかった。

Fig.3-3に示したZrの結果から類推すれば本来ならばプレミリングを増加させれば同

じ湿式ミリング時間ならば反応量が増加するはずである。 しかしTiの場合はプレミ

リングによる反応量の変化は見られなかった。 3.4節で述べたとおり、これは装置の

違いによるミル方式の差によるものと考えられる。

 湿式ミリング時間が長いと反応量が増加するので、その際の構造の安定性の変化

について調べた。乾式プレミリングを5h一定にして、その後の湿式ミリング時間を

変化させたときのXRD結果をFig.3-12に示す。プレミリング時間を変化させた場合と

同様に湿式ミリング時間が長くなることによってもミリングままの粉末の構造は化c

構造へと変化する。 これら湿式ミリング時間を変化させた試料のDSC測定結果を

Fig.3-13に示す。プレミリングを5h、湿式ミリングを10h行なった試料では800K付近

に発熱ピークを持つ。このデータは先にFig.3-8で得られた乾式プレミリング12h、湿

式ミリング20hのデータと類似である。ただしFig.3-8ではヘプタン量1mlであるのに

対しFig、3-13では10mlである。

37

(43)

-●●" -25 20  15  10  5 (%lehueluo9 uoqJe9 0 40 5 0 5 10 15 20 25 30

 Wet Milling Time (h)

35 40 35 30 25 20 15 10 ﹁ざ届ご⊂ScoQ⊂&o﹂Iエ Premilling 10h Premilling 2賄 0 5 10 15 20 25 30

 Wet Milling Time (h)

35 40

Fig.3‘11(a)Carbon and (b)hydrogen contents of powders milled fbr various wet      mimng periods for Ti system.

(44)

-W’ 〃 ミ ︵.1.Q︶AI!suelul 匹 −ノ

i j I I I I M I ÅハづyΛ ’j八づ’︲j/ハ F /  ̄& I I V I I I ゲ へヽ一。。、ぺへ_へ・ y\ 、

Dry millin95h

Heptane loml

Wet millin9 り 、 5h .ノ`x肖 10h   八 八 ノレ 。__。−。−、/`y _-。/^゛I 9 1 ︿\ドノ ー4’   −g目︱ x い七_-、−∼_二 戸 20h 30h 20 40         60    2Θ(de9「ee」 Jjl)h 80 90

Fig.3'12 X-ray dimaction patterns of the specimens subjected to 5h dry premilling     followed by wet milling for di西rent periods fbr Ti system.

(45)

・ - − -・ ● ゛ -t a!ujJeql0x山

Dry millin95h

373

573

773

Temperature(K)

973

Fig.3-13 DSCcurves of the specimens sut!jected to dry premilling fbr      by wet milling fbr diarent periods for Ti system.

- 40

(46)

-W ゛ ’ 〃 `

 乾式プレミリングを変化させた場合(Fig.3-8)と同様にこの発熱の原因を調べるため

に、Fig.3-13中の湿式ミリング時間を1oh行なった粉末について、図中に示したピー

ク前後の各温度(723K、798K、873K、973K)まで昇温して冷却した試料のXRD測定を

行なった。その結果がFig3-14である。やはり発熱ピークを生ずる温度でhcp-Tiの回

折線が回復し、さらに昇温するとhcp-TiとNaCI型結晶であるTiCの2相となる。従って

このミリングままの粉末も準安定中間生成相であることがわかる。しかしFig.3-13に

おいて、湿式ミリング時間が20h以上になるとこの発熱ピークが現れなくなる。

 そこで湿式ミリングを40h行なった粉末について、図中に示した温度(693K、873K

1073K)まで昇温し冷却した試料の測定を行なった。その結果をFig.3-15に示す。ここ

では昇温に伴う構造変化は起こらず、湿式ミリングを4oh行なったミリングままの粉

末の瓦c構造は安定な状態のTiCであり、湿式ミリング時間を長くすることで準安定な

反応中間体から安定な状態へと移行することがわかる。

 XRD結果であるFig.3-12、Fig.3-14、Fig.3-15において、2θ=42°付近に回折線が現

れている。これらの回折線はJCPDSカードより同定することは出来なかった。これ

の回折線が現れている試料はTi、C、Hからなり、TiC相の生成以外にはこの三元素か

ら成る相の生成が考えられる。また、ミリング中での不純物の混入や酸化なども起

こっていることが考えられる。 物または不純物相4 したがって、これらの回折線はこの様な三元系化合 こよると考えられる。 41

(47)

− r W ’ 一 -− 〃 ` ︵.1.s︶AI!suelul  ̄ X < い

●JI ●− ● よ “

▽ (

♂ y ●Ti ▽TiC ▽● Dry Millng 5h Wet Millin9 10h Heptane loml as-mill 723K ▽ 973K 20 40

    60

2o(de9(ee)

80  90

Fig.3-14 X-ray di所action pattems of the specimens subjected to 5h dry premining     and 10h wet mining fbllowed by annealing at di而rent temperatures for Ti     system.

(48)

一 一 − -〃 ミ ︵.コー︶ AI!sualul 20

40

 2Θ(de9「ee

60 I

80  90

Fig.3 -15 X-ray di侑action pattems ofthe specimens subjected to 5h dry premimng     and 40h wet milling followed by annealing at diSrent temperatures for Ti

system.

Referensi

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