の危機管理対応について」
2. ハリケーン・カトリーナ以前の FEMA 背景を説明するために、ハ
リケーン・カトリーナの話を したいと思います。2005年当 時、FEMAが 組 織 と し て ど のような状態であったかとい う こ と で す。FEMAに は 常 勤職員が約5000名いました。
これは多いように思えるかもしれませんが、50州だけでなく、属州 やミクロネシア、あるいはカリブ海まで広がるこの大きな国で、毎 年さまざまな災害が起こっていることを考えると、決して多くあり ません。そして、当時の予算が31億ドルでした。ハリケーン・カト リーナから学んだこととして、当時、大災害への備えが十分にでき ていなかったということがあります。われわれは大災害への備えに 十分焦点を当てていなかったのです。
このカトリーナの前の年にFEMAは、南西部で起こった五つの ハリケーンに、連邦政府からの追加支援なしに、独自に非常にうま く対応することができました。ただ、これらのハリケーンはどれも 大災害をもたらすようなものはなく、FEMAが十分対応できる規 模だったわけです。われわれわが対応しようとしているのは、例え ばカトリーナやサンディ、東日本大震災、あるいはそれ以上の規模 の大災害です。今日でも、FEMAが本当に大災害に対応できるよ うになるには、まだまだ先が長く、課題があります。しかし、カト リーナのときには今以上に備えが不足していました。それから、人 材・原則・目的という三つの点も、それぞれ問題として浮かび上がっ
てきました。人材が不足しており、人材育成や配置の制度もしっか り整備されていませんでした。
こ ち ら は、 ハ リ ケ ー ン・
カトリーナが実際にどれぐ らいの規模だったかという ことを表している気象図で す。カトリーナの範囲、大 きさのイメージをつかんで いただくために、日本地図
を載せてみました。非常に大きく、破壊的なハリケーンだったこと がお分かりいただけるかと思います。風速281km(175マイル)、死 者は1300名を超え、100万人以上が避難しました。重要なのが、カ トリーナの上陸前に1470名が配置されたということです。ハリケー ン・サンディのときの数字が後ほど出てきますので比べていただき たいと思います。それから、このハリケーン襲来のときには、16あ る病院のうち三つしか開いていませんでした。これだけの規模のハ リケーンになると、死者も増えますし、いろいろな活動が行われま す。
これは、カトリーナ直後 の航空写真です。ニューオ リンズは海に浸かってしま い、 堤 防 も 決 壊 し ま し た。
米国最大の流域面積を持つ ミシシッピ川にはさまざま
な堤防が造られているのですが、過去に、メキシコ湾からのアクセ
スを向上し、船がニューオリンズ港で荷下ろしや積み荷ができるよ うにする、また川を内陸の方に遡ったところに造船の場所も造ると いう計画に反対する動きもありました。水の入り口を複数つくった ために、高潮が入ってくる余地を残し、ハリケーン・カトリーナの 影響が大きくなってしまったのです。
また、避難についても指摘したいと思います。福島の場合も避難 の話が出てきましたが、米国では避難は国の決定事項ではありませ ん。これは行政の最下層の都市レベル、あるいは市より一つ上の郡、
もしくは州で行われる決定事項です。連邦政府は憲法にのっとって 地方分権を進めていますので、米国の場合は中央政府が避難勧告を するわけではありません。
また、実際にこれほどの規 模の災害が起きると、後で検 証が行われるわけですが、こ のレポートは、ホワイトハウ スで国家安全保障の顧問の下 に行われた評価です。125の 具体的な勧告が行われ、即 是正するべきアクションと して14件が指摘されていま す。ハリケーン・カトリー ナの対応に関して、185の資 料について検討が行われま した。監察当局は内部的な 組織としてFEMAあるいは
各部局の行いを見ていくところですが、ここでは38の勧告がされま した。人・プロセス・原則といったものが、ここでも取り上げら れています。やはり人材不足や、伝達システムが確立できていな かったこと、調整が十分にできなかったこと、プログラムの管理が 不十分であったこと、あるいはリソース手配のプロセスにおいて FEMAが存在感を示せなかったということが指摘されています。
3. ハリケーン・カトリーナ後の改革