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リスク・ガバナンス・リーダーシップ―」

3. 最後に

最大の教訓である備えについて、なぜそのような備えしかできな いのか、なぜリスク評価に裏打ちされたリスク管理がきちんとでき ないのかは、日本の組織文化の問題まで深く立ち入らなければ見え てこないのではないかと思います。挨拶で五百旗頭先生が「全体」

という言葉をお使いになりましたが、全体を見て、全体をつかんで、

全体を動かして危機に当たるという組織文化、体制が極めて弱いと ころに一つの原因があるのではないでしょうか。企業にしても、政 府にしても、その部分その部分に最も適した部分最適解が全体の最

適解を凌駕してしまいます。

もう一つ、一番難しい判断、決断はどうしても先送りします。組 織の中で決定することは、ものすごいストレスを起こします。特に 先例がある場合には、それを変えなければいけません。先例をつ くった先輩、上司、トップに対して、「これは変えなければ駄目です」

と言うストレスはものすごく大きいです。それが非決定を生みます。

それが積もり積もって累積し、ますますそれを変えるのが難しくな ります。この非決定の構造に、日本の組織文化的な難しさを感じま す。

先ほど、安心と安全という言葉が出ました。憲法9条、13条で保 障されている生命と財産に加えて、もう一つ心ということが成熟し た社会においては重要になってきます。このことは間違いありませ ん。ただ同時に、そこを政府にどこまで求めるのか。政府は安全に 最大の責任があるのであって、安心まで保障するというのは多分う そだろうし、個々人からしても、そこまで政府にしてもらいたくな い、心の中は放っておいてくれ、安心は自分や家族、隣近所、共同 体、社会でマネジメントしますというならいいのです。しかし、得 てして日本の場合は、政府にもそこまでやれと求めます。安心社会 と、小さな安心をあまりにも言い立てることによって、大きな安全 を損なう、犠牲にしているところがあるのではないでしょうか。こ れが最後にお上頼みにつながる危険性があります。安全神話の根幹 は、安心を優先させて物事を解決していこうとするところにあると 思うのです。

山本七平が昔、『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』という本 を書いています。その中で、旧軍は、問題がものすごく難しくなっ

てきたときに、問題を真正面から捉えて現実的、実務的に対応しよ うとせず、全部それを心理的解決に置き換えようとした。現実的解 決を心理的解決に置き換えようとする、つまり真実を見ようとしな い、ここに最大の敗北の原因があると書いています。原子力の安全 神話には、安心を上位に置くことにより安全を犠牲にするという一 種の統治のからくりも、深く関わっているのではないかと思う次第 です。

皆さん、こんにちは。本日はこのような機会を頂戴しまして誠に ありがとうございます。皆さんにお話しできることを大変光栄に 思っています。神戸は20年前に非常に大きな災害に見舞われながら も、画期的な回復を遂げられました。緊急対応、復興の専門家を目 指す者にとって、皆さまとお話しできることは大変うれしいことで す。

本日は、緊急事態に対する準備と対応におけるわれわれFEMA

(連邦緊急事態管理庁)の役割についてお話しします。FEMAがこ の7年間で緊急事態への備えと対応をどのように変えてきたかとい うことを、われわれが特に焦点を絞ってきた人・原則・目的という 三つのテーマについてお話ししたいと思います。