Sendai shimin toshokan zo "Shasekishu" nukigakibon honkoku jo

Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 仙台市民図書館蔵『沙石集』抜書本 翻刻・上 上野, 陽子(Ueno, Yoko) 慶應義塾大学国文学研究室 1999 三田國文 No.30 (1999. 9) ,p.50- 71 資料紹介 Departmental Bulletin Paper http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koar a_id=AN00296083-19990900-0050.

・旧 蔵 者. 翻 刻 ・上. 上 野. 陽 子. 仙 台 市 民 図 書 館 以前 に本 書 を 所 蔵 し て い た の は 岡 氏 。. 現 存 は し て い な い と いう 。. 仙 台 市 民 図 書 館 蔵 ﹃沙 石 集﹄抜 書 本. こ こ に翻 刻 す る仙台 市 民 図書 館 所蔵 本 は、 ﹃沙 石集 ﹄ の抜書 を主 な内 容と する。 本書 に関 す る詳 し い考察 は後 に予定 し て い. は 本 書 が 書 か れ た 享 和 二 (一八 〇 二 ) 年 の 三 年 後 に 没. 二 丁 表 に ﹁岡 氏 蔵 書 ﹂ の 朱 印 が あ る 。 岡 氏 六 代 目 正 介. し て い る 。 七 代 目 蔵 治 、 八 代 目 台 輔 は学 に 通 じ 、 本 の. 岡 氏 は 儒 学 者 の 家 系 で 、代 々 仙 台 藩 で書 記 役 を 務 め た 。. 仙台市 民図 書館 ( 函 架番 号 3 70). 蒐 集 に 熱 心 だ った と 言 わ れ て お り 、 両 者 い つ れ か の代. るの で、 こ こでは簡 単な 書誌 を記 す にと どめ る。本書 の書 誌 は ・所蔵. 写本。 一冊。袋 綴 じ。縦 二五 ・五糎、 横 一六 ・四糎。. 以 下 の通 り であ る。. 薄鈍色 表紙 。外 題、 内題 、 目録、 序文 、蹟 文な し。. ( 前 半部 )を 翻. に 本 書 が 所 蔵 に加 え ら れ た の で は な いか 。. 刻 す る。 本 文 は 底 本 に な る べく 忠 実 に な る よ う に務 め た が 、 旧. 今回は ﹃ 沙 石 集 ﹄ 巻 一よ り 巻 六 に当 た る 箇 所. ﹃ 沙 石集﹄ 抜書 、 五十 九丁表 ∼ 六十 三丁裏 ⋮ ﹁雑聞 ﹂. 全六十 四 丁。 一丁表 裏 ⋮白紙 、 二丁表 ∼ 五十 八丁裏 ⋮. 小 口に ﹁ 沙 石集 ﹂ と横書 き。. ・形態. ・本文. 字 体 ・異 体 字 等 は 通 行 の書 体 に 改 め 、 私 に句 読 点 ・括 弧 等 を 補. 余 白 に話 の題 名 が 記 さ れ て い る が 、紙 面 の 都 合 上 、題 名 を ︻ ︼. き が あ る 箇 所 に は (一行 ア キ ) と 記 し た。 底 本 で は 本 文 の上 部. ( ー オ ) のご と く 丁 数 と 表 裏 の 別 を 略 記 し 、 底 本 に 一行 分 の 空. い、 改 行 を 加 え た 。 底 本 に 丁 付 け は 記 さ れ て い な い が 、 私 に. (﹁ 雑 聞﹂ の内 容 は ﹃ 沙 石集 ﹄ とは関 係 なし﹀、 六十 四 丁表 ⋮奥付 、 六十 四丁裏 ⋮白 紙。 す べて同筆 。 一丁 に つき十行 。和 歌 の み漢字平 仮名 交 奥 付 に ﹁チ時享 和 二戌年 二月彼 岸會第 一日書. じり文 、 そ の他 す べて漢字 片仮名 交 じり 文。. に 入 れ 、 本 文 と 同 じ 高 さ に記 し た 。 同 様 に、 底 本 で は 本 文 の 上. ・年代 、抜書者. 写之/ 仙府 南鍛 冶 町/ 円乗 坊照寛 的 ﹂ とあ る。 南 鍛冶. 部 余 白 に 記 さ れ て い る ﹁○ ﹂を 本 文 と 同 じ 高 さ に 記 し た 。 ま た 、 (マ マ) は 記 し て い な い。. 町 は仙 台市 若林 区 に位 置す る。 照寛 に ついては未詳 だ が、円乗坊 は里修 験 を行う 者達 が集 ま った仏堂 の名 で、. 一50.

一九 七 五 年 一二 月 ). 本書 の紹介 ・翻 刻 をご 許 可 いただ いた仙台 市民 図書 館 に厚 く 御礼 申 し上げ ま す。. (1 ) 仙 台 市 民 図 書 館 郷 土 資 料 室 の御 教 示 に よ る 。. 注 (2 ) 注 1 に同 じ 。 (3 ) ﹃ 鹿 門 岡 千 勿 の生 涯 ﹄ (宇 野 量介 著 ・岡 広 発 行 参照。. ︻ 和 光 ノ事︼. レ ハ、 ﹁其 御 形 ニテ ハ此 界 ノ 衆 生 ハ化 シ 玉 フ 事 難 カ ル ベ シ。 隠. 昔 役 ノ行 者 吉 野 ︾山 奥 二在 シ ケ ル ニ、 釈 迦 如 来 ノ 像 現 シ 玉 ピ ケ. サ セ 玉 へ﹂ ト 被 レ申 ケ レ ハ、 次 二弥 勒 ノ 御 形 ヲ 現 ジ 玉 フ ニ、 ﹁猶. 是 モ叶 フ マジ ﹂ ト 被 レ申 ケ レ ハ、 重 テ 釈 迦 如 来 、 蔵 王 権 現 ト テ. 恐 ロ シ ゲ ナ ル 御 形 ヲ 現 シ 玉 ピ ケ ル時 、 ﹁是 ニテ コ ソ ハ我 国 ノ 能. 化 ﹂ ト申 玉 ピ ケ リ 。 釈 迦 劫 尽 ノ時 ハ夜 叉 ト 成 テ無 道 心 ノ者 ヲ 取. 食 フ テ 、 人 ヲ 勧 テ道 心 ヲ オ コ サ セ 玉 フ 。 是 レ和 光 ノ 方 便 ヨ リ 仏. ノ 上 宮 太 子 等 、 皆 是 和 光 ノ慈 悲 ノ 化 儀 也 。 (一行 ア キ ). 法 へ引 入 玉 フ ト ナ リ 。 実 二慈 悲 ノ 方 便 善 巧 、 漢 土 ノ 孔 老 、 和 国. ︻ 神 明 ハ慈 悲 ヲ 貴 玉 フ事 ︼. ト 難 ク ア リ ケ レ ハ、. ノ為 二普 ク 真 言 ヲ 人 二授 ケ ケ リ 。或 時 独 リ 吉 野 へ参 詣 シ ケ ル ニ、. 和 州 三 輪 ノ常 観 上 人 ト 云 シ ハ、 慈 悲 有 人 ニテ 蜜 宗 ノ 人 也 。 結 縁. 路 ノ 辺 リ ニ幼 キ 子 供 三 人 井 ビ 居 テ サ メ ぐ. (2 オ ) 母 上 悪 キ 病 ヲ シ テ 死 二侍 ル ガ 、 父 ハ遠 ク へ行 テ 候 ハ. 何 ト ナ ク 哀 レ ニ覚 テ 子 細 ヲ 問 フ ニ、 十 二 三 計 ノ 女 子 申 様 ハ ﹁私 共. 児 ク シ テ 云 甲 斐 ナ ク候 ヘ ハ、 唯 悲 サ ノ 余 リ ナ ク ヨ リ 外 候 ハズ ﹂. ズ 。 人 ハキ タ ナ ク 思 テ 訪 フ 者 モ ナ ク 、 我 身 ハ女 子 也 。 弟 共 ハ. ト テ 涙 モ カ キ ア ヱズ 。 実 二心 中 サ コ ソ ト哀 レ ニ覚 ヘケ ル 侭 二、. 野 辺 へ葬 シ陀 羅 尼 ナ ン ド 唱 ヘテ懇 二弔 ヒ、 籾 三輪 ノ 方 へ帰 ン ト. 今 度 ハ先 ス神 詣 ハヤ メ テ此 者 ヲ 見 助 ケ テ 重 テ 又 参 ル ベ シ ト 思 ヒ 、. ハ神 詣 ハ叶 フ マジ ト 思 ヘト モ、 コ ﹀ ロ ミ ニ吉 野 ノ 方 へ向 テ歩 メ. ス レ ト モ身 ス ク ン デ 歩 レズ 。 ナ レト モ垂 跡 ノ 御 替 メ モ 恐 シ ケ レ. バ 、 何 ノ事 モ ナ カ リ ケ リ 。 其 時 籾 ハ参 レト ノ 玉 フ事 ニャ ト 心 ヲ. 取 直 シ、 参 詣 ス ル ニ別 ノ 子 細 ナ シ 。 乍 レ去 恐 モ ア レ ハ、 御 殿 ヨ. 一51一.

リ 遙 カ ナ ル 木 ノ 下 ニテ 念 調 シ 、 法 施 ヲ 奉 リ ケ ル ニ、 折 節 神 主 二. レ ハ、 ﹁実 二争 力 歎 カ ザ ラ ン ヤ 。 去 レ ト モ此 事 二付 テ 真 実 ノ菩. ノ 仏 法 ヲ 守 ン ト 御 誓 有 ケ ル ニ、 如 レ此 ニ ナ リ シ 事 、 如 何 計 リ 御. 提 心 ヲ 発 ス僧 一人 有 ル事 ノ 喜 シ キ 也 。 堂 塔 仏 経 ハ財 宝 サ へ有 レ. 歎 キ モ 深 カ ラ ン ト 存 候 二、 其 御 気 色 モナ キ 事 ハ如 何 二﹂ ト 申 ケ. ハ作 ル ヘシ。 菩 提 心 ヲ 発 ス人 ハ千 万 人 ノ中 ニ モ求 メ 難 シ ﹂ ト被. 神 付 キ テ 舞 踊 リ ケ ル ガ 、 頓 テ 走 リ出 テ ・ ﹁ア ノ 御 坊 ハ何 者 ゾ ﹂. ニヤ ト 恐 レ 思 ケ ル ニ、 近 付 寄 テ ﹁ 御 坊此 程 ヨリ待 タリ。 ヲ ソク. 仰 ケ ル ト 夢 見 テ 、 今 ノ 僧 モ弥 々 強 盛 二発 心 セ シ ト 也 。 然 ハ今 生. ト ノ 玉 ピ ケ リ 。 籾 コソ 浅 間 シ ヤ 、 是 迄 参 ル マジ キ 者 ヲ御 ト ガ メ. ト テ 袖 ヲ 引 テ 拝 殿 へ旦ハシ 玉 ピ ケ レ ハ、 上 人 余 リ ノ嬉 シ サ 添 サ貴. ノ事 ヲ 祈 ン ハ本 意 ト 思 召 サ ズ 。 神 慮 ハ唯 真 実 二未 来 ヲ 願 フ ヲ コ. 御 出 候 ゾ 。 吾 ハ物 ヲ バ イ マ ヌ也 。 慈 悲 コ ソ貴 ト (2 ウ ) ケ レ ﹂. ク覚 へ、 墨 染 ノ ソ デ ヲ シ ボ ル 斗 也 。 籾 法 門 共 申 ウ ケ テ ナ ク く. ︻因 果 ハ難 遁 事 ︼. ソ喜 ヒ 玉 フ也 。 (3 ウ ). ︻ 神 ハ菩 提 心 ヲ 発 ス ヲ 喜 玉 フ 事 ︼. 下向 シ玉 フト也。. ル ニ、 ﹁相 計 フ ベ シ ﹂ ト 被 レ仰 ル ・示 現 ヲ蒙 テ 喜 思 テ 居 ケ ル ニ、. 古 へ叡 山 東 塔 ノ 北 谷 二極 ノ貧 僧 有 テ 、 日 吉 へ百 日 参 詣 シ テ 祈 ケ. 或 時 柳 ノ事 二依 テ 年 来 ノ 住 馴 タ 寺 ヲ追 出 サ レ テ寄 方 モ ナ ク ナ リ. 又 古 へ性 蓮 坊 ト 云 上 人 、 母 ノ 骨 ヲ 以 テ高 野 へ収 メ ニ参 ケ ル [ 圖. ケ ル侭 二、 西 塔 ノ南 谷 ノ 坊 二漸 ク同 宿 シ ケ リ 。 抑 く. 二、 人 皆 此 事 ヲ知 テ宿 カ ス者 ナ シ 。 然 二大 宮 ノ 南 ノ 門 ノ 脇 二参 籠 シ タ ル夜 、 大 宮 司 ノ 夢 二大 明 神 ノ 御 使 ト テ 神 宙 一人 来 テ ﹁今. テ 後 ハ、 恋 人 ヲ 待 ツ 如 ク ノ心 地 ニテ 居 タ リ シ ニ、 サ シ タ ル事 ナ. 示 現 ヲ蒙. フ ト 覚 テ 夢 サ メ タ リ 。 使 者 ヲ 社 壇 へ遣 シ 、 ﹁通 夜 ス ル人 ヤ ア ル﹂. 宵 ハ大 事 ノ 客 人 ヲ 得 タ リ 。 能 々 モ テ ナ セ ト ノ 仰 ニテ 候 ﹂ ト ノ 玉. ト 尋 ネ ケ ル ニ、 此 性 蓮 坊 ノ 外 人 ナ シ。 使 者 帰 テ 此 由 ヲ申 。 籾 ハ. 二、 示 現 ヲ 蒙 リ ケ ル ハ ﹁前 世 ツ タ ナ ク シ テ 少 モ福 分 ナ キ 故 二、. 東 塔 ノ 北 谷 ハ寒 キ 坊 ナ レ ハ、 西 塔 ノ 南 谷 ノ 暖 和 ナ ル 坊 へ出 シ タ. キ ノ ミ ニ非 ズ 、 坊 迄 追 出 サ レ面 目 ナ ク 思 テ 又 参 籠 シ テ 祈 誓 申 程. マジ ﹂ ト テ 辞 退 シ ケ ル ニ、 ﹁大 明 神 ノ 御 告 ア レ ハ私 二忌 二及 ハ. ト テ 此 僧 ヲ 我 家 二請 ス ル ニ、 ﹁我 ハ母 ノ 骨 ヲ 持 テ 候 ヘ ハ ヱ参 ル. ルゾ 。 是 コ ソ 小 袖 一ツ ノ 恩 ト 思 ヒ計 フ タ レ。 此 外 ノ 福 分 ハ我 力. 神 力 モ 業 力 二不 叶勝 イ ヘリ 。 仏 ノ 御 在 世 二、 五 百 人 ノ 僧 瑠 璃 太. 力 ノ 及 ブ ベ キ ニ非 ズ ﹂ ト 被 レ仰 ケ リ 。 是 ヨリ ハ思 ヒ 切 テ祈 リ 不. 子 二打 レケ ル ヲ 、 釈 尊 モ ヱ助 ケ 玉 ハズ 。 目 連 進 出 テ ﹀神 通 ヲ 以. ズ ﹂ ト テ ト モ ナ ヒ行 、 様 々 ニ モ テ ナ シ 、 馬 鞍 迄 用 意 シ テ 高 野 迄. ヲ 、神 主 (3 オ )制 シケ レ ハ、御 託 宣 在 テ 御 ユ ル シ有 ケ リ ト ナ リ 。. 救 フ ベ キ 由 ヲ 申 上 レ ト モ、 仏. 申 。 前 世 ノ 業 因 ノ カ レ 難 キ ハ、 仏 神 ノ御 力 ニ モ 不 レ叶 。 サ レ ハ. 昔 三 井 寺 山 門 ノ 為 二焼 払 ハ レ テ堂 塔 僧 坊 仏 像 経 巻 残 リ ナ ク 焼 失. 親 類 ナ レ ハ如 何 ナ ル神 通 ヲ 以 テ モ 助 ケ 玉 フ ヘキ 者 ヲ ﹂ ト 人 々 不. 人 、 日 吉 ヘ モ遁 世 ノ 者 、 死 人 ヲ 持 ナ カ ラ 供 養 シ テ 頓 テ参 リ ケ ル. シ ケ ル故 二、 山 僧 モ 山 野 二住 居 、 寺 僧 ︼人 モ ナ カ リ ケ ル中 二、. 審 申 ケ レバ 、 其 不 審 ヲ ハラ サ セ ン 為 二、 一人 ノ 僧 ヲ 御 鉢 ノ中 へ. 送 リ ケ ル ト 也 。 神 明 ノ 御 心 ハ何 レ モ替 ル事 ナ シ ト 見 ヘタ リ 。 或. 一人 新 羅 明 神 へ参 テ 通 夜 ス ル僧 ア リ ケ ル ニ、 明 神 御 戸 ヲ 開 テ 世. (4 オ ) 免 シ 玉 ハズ 。 ﹁釈 尊 ノ 御. ニ モ 御 心 地 ヨゲ ニ見 へ玉 ヘケ レ ハ、 夢 ノ中 ニテ 申 様 、 ﹁我 力 山. 一52一.

鉢 ノ 中 二死 デ 居 タ リ 。 其 因 縁 ヲ 説 玉 フ ニ、 ﹁五 百 ノ 釈 種 ハ昔 五. 入 テ 天 上 へ隠 シ ヲ キ 玉 フ ニ、 余 ノ 釈 種 ノ打 レ ケ ル日 、 自 然 ト 御. ﹃ 桓 舜 ハ今 度 生 死 ヲ 離 ル ベ キ 者 也 。 若 今 生 ノ栄 花 ア レ バ障 リ ト. 事 ハ思 ヒ 分 タ ズ 。 彼 レ ハ大 神 ニ テ 在 ス 故 二、 深 キ 思 召 ア リ 。. ク 候 ﹂ ト申 セ ハ、 御 返 事 二 ﹁吾 ハ小 神 ナ レ ハ法 味 ヲ 喜 デ 其 外 ノ. ハ御 計 ヒ モ ナ ク テ余 処 ノ 御 恵 ミ迄 ヲ 押 へ御 制 止 ア ル コソ 心 得 難. 成 テ 出 離 難 カ ル ベ シ。 故 二色 々申 セ ト モ 聞 モ 入 レ ヌ 事 二候 。 何. 百 人 ノ網 人 也 。 一ツ ノ 大 魚 ヲ 海 中 ヨ リ 引 上 テ 害 シタ リ シ故 也 。. ヲ 以 魚 ノ 頭 ヲ 打 タ リ シ 故 二、 今 日 頭 甚 痛 ム 也 ﹂ ト 被 仰 テ、 釈 尊. シ ニ賜 フ ゾ ﹄ ト ノ 玉 フ 。 故 二今 ハ取 返 スナ リ ﹂ ト 仰 ラ レ ケ リ ト. 其 大 魚 卜 云 ハ今 ノ 瑠 璃 太 子 也 。 我 ハ其 時 童 子 タ リ シ ガ 、 草 ノ葉. モ 其 日 御 悩 ミ ア リ ケ リ ト也 。 況 ヤ 凡 夫 ノ身 ト シ テ 因 果 ノ 理 リ 遁. へ帰 テ 一ト 筋 二後 生 菩 提 ヲ ツ ト メ 往 生 シ タ リ ト ナ リ 。 行 基 菩 薩. ノ 日 ﹁一世 ノ 栄 花 利 養 ハ多 生 輪 廻 ノ基 也 ﹂ ト 。. 見 テ 、 籾 ハ深 キ 御 慈 悲 ヨ ト 夢 ノ中 ニモ辱 ク 思 テ 、 頓 テ 本 ト ノ山. 地 房 ノ 謹 真 法 印 ノ 夢 二、 西 坂 本 ヨリ 十 禅 師 ノ 登 ラ セ 玉 フ ニ行 逢. 又 利 軍 子 比 丘 ト イ ﹀ケ ル ハ、 羅 漢 ノ 聖 者 也 ケ レ. 塔 ノ塵 ヲ ハカ セ 玉 フ ニ、 其 日 ハ其 福 分 ニ テ乞 食 ヲ 得 タ リ 。 或. ケ ル ニ、 手 輿 二召 テ 御 春 属 ヲ 数 多 ツ レ テ 在 ス。 其 時 法 地 房 、 何. ル ベ キ ヲ ヤ。. 日 朝 寝 ヲ シ テ ヲ ソ ク 起 ケ レ ハ、 余 ノ 比 丘 是 ヲ ハキ ケ リ 。 其 后 乞. ヲ カ 願 ヒ 申 バ ヤ ト 思 テ 、 老 母 ノ 貧 キ 事 ヲ 思 ヒ 出 シ テ 、 ﹁何 卒 彼. ト モ、 余 リ ニ貧 ク シ テ 乞 食 ス レト モ 施 ス者 ナ シ 。 仏 哀 二思 召 、. 食 ス ル ニ得 ズ シ テ 、 七 日 ノ 間 食 セズ テ 、 沙 ヲ 食 シ ( 4 ウ)水 ヲ. ノ (5 ウ ) 老 母 ヲ 養 フ 程 ノ 事 御 計 ヒ タ ビ 玉 へ﹂ ト申 ケ レ バ 、 御. 又叡 山宝. ニ シ テ 、 母 カ ウ ヘテ 食 物 ヲ 乞 ケ ル時 、 砂 デ モ ク ヒ水 ノ メ カ シ ト. 飲 テ 餓 死 セ リ 。 仏 因 縁 ヲ 説 玉 ピ ケ ル ハ、 ﹁過 去 二於 テ 母 二不 孝. ヲ聞 セ 玉 ヒ テ 、 シ ホ く. ニナ ラ セ 玉 ヒ、 御 心 地 ヨゲ ニテ 打 ウ ナ ズ カ セ 玉 ヘケ ル ト 見 テ 、. ト 痩 衰 ヘテ物 思 フ姿 ニナ ラ セ 玉 フ。 実. ヤ 世 間 ︼旦 ノ 事 ヲ 申 二依 テ 御 心 二叶 ヌ ニ コ ソ ト 思 返 シ テ 、 ﹁老. 色 ザ シ マ コト ニ目 出 度 御 心 地 ヨゲ ニ見 ヘサ セ 玉 ピ ケ ル ガ 、 此 事. 二逢 モ 我 昔 ノ 智 也 。 世 ヲ モ人 ヲ モ恨 ム ヘカ ラ ズ 。 唯 我 心 ヲ ハジ. モ 猶 報 フ也 ﹂ ト 説 玉 フ 。 斯 ル 因 縁 ナ レ ハ、 貧 ク 賎 キ モ難 二逢 苦. ノ事 、 如 何 候 ヘキ 。 御 指 図 候 へ﹂ ト申 ケ レ ハ、 御 気 色 元 ノ 如 ク. 母 ノ 事 ハ幾 程 モ有 間 敷 世 二候 ヘ ハ、 イ カ デ モ 候 ベ シ。 後 生 菩 提. 云 テ 、 七 日 食 ヲ 与 ヘズ シ テ 母 ヲ 干 害 シ タ ル業 也 。 聖 者 ト ナ レ ト. トヨ. シ メ テ菩 提 ヲ 願 フ ベ キ事 也 。二条 ノ院 讃 岐 、此 心 ヲ詠 シ玉 フ ニヤ 、. ミ玉 フナリ。. ミ神 仏 二祈 ル ハ、 返 ス く. 夫 ヨリ ハ道 心 イ ト 深 ク シ テ 終 リ 目 出 度 カ リ ケ リ 。 世 間 ノ事 ヲ ノ. う き も 猶 昔 の 事 と お も わず ば い か に 此 世 を 恨 み は て ま し. 昔 桓 舜 僧 都 ト イ ︾ケ ル山 僧 、 余 リ 貧 ク シ テ 日 吉 へ参 籠 シ テ 祈. 行 大 師 ヲ モ恨 ミ奉 テ 離 山 シ テ稲 荷 へ詣 デ 申 ケ ル ニ、 幾 程 モ ナ キ. 儀 ヲ 待 ヘシ 。 世 間 ノ善 ニ ハ孝 養 ハ最 上 ノ福 也 。 然 ト モ菩 提 心 二. 縁 ノ始 、 八 相 成 等 ハ以 論 二其 終 づト イ ヘリ 。 仏 意 ヲ 仰 デ 成 道 ノ 化. ン 為 也 。 世 間 ノ 利 益 ハ暫 ノ 方 便 也 。 故 二止 観 二、 和 光 同 塵 ハ結. モ愚 力 也 。 和 光 ノ 御 本 意 ハ仏 道 二入. 誓 シ ケ レト モ、 何 ノ 示 現 モ不 レ蒙 シ テ 有 リ ケ レ ハ、 山 王 権 現 伝. 二稲 荷 ノ被 レ仰 ケ ル様 ハ、 ﹁日 吉 ノ 大 明 神 ノ御 制 止 ア レ ハ先 ノ 札. 比 レ ハ劣 レリ 。 浄 土 二生 シ テ 引 導 セ ン事 、 実 ノ孝 養 也 。 善 根 ノ. 内・ 二千 石 ト 云 札 ヲ ヒ タ ヒ ニ押 シ 玉 フト 見 テ 喜 ビ 思 程 二、 又 ノ 夢. ハ ( 5 オ ) 召 返 ス﹂ ト 仰 セ ラ ル。 夢 ノ 中 二申 ケ ル ハ、 ﹁吾 コ ソ. 一53一.

○ 凡 三 界 ノ輪 廻 四 生 ノ 転 変 、 皆 是 無 明 ノ眠 ノ中 ノ 妄 想 ノ夢 也 。. (6 オ ). 有 劣 ア ル事 、讐 ハ星 ノ 光 リ ア レ ト モ 月 二及 バ ス 、月 明 力. 0 利 根 ノ 外 道 ハ邪 相 ヲ 正 相 二入 テ 邪 法 ヲ 以 正 法 ト シ 、 鈍 根 ノ 内. 説 ハ邪 法 正 法 ト ナ ル ト 。 下 医 ハ薬 ヲ 以 毒 ト シ、 上 医 ハ以 レ毒 為. リ 。 六 祖 大 師 モ 、 邪 人 正 法 ヲ 説 ケ ハ正 法 邪 法 ト也 、 正 人 邪 法 ヲ. 道 ハ正 相 ヲ 以 邪 相 二 (7 オ ) 入 、 正 法 ヲ 以 邪 法 ト ス ト 釈 シ玉 ヘ. ナ レ ト モ日 光 二不 レ及 。 如 此 孝 養 モ菩 提 心 二及 フ ベ カ ラ ズ 。 ︻ 生 類 ヲ 神 明 二供 ス ル不 審 ノ事 ︼ 安 藝 ノ 厳 島 ハ、 菩 提 心 ヲ 祈 請 ノ為 ニト テ 人 多 ク 参 詣 ス ル由 ヲ 申 伝 ヘタ リ。 其 故 ハ昔 弘 法 大 師 参 詣 シ 玉 フ テ甚 深 ノ 法 味 ヲ サ ︾. ル ニ、 ﹁我 身 ニ ハ別 ノ 所 望 モ候 ハズ 。 末 代 二菩 提 心 ヲ 祈 誓 ス ル. 邪 正 ハ人 ニ ヨ ル 。 (一行 ア キ ). ハ水 ヲ飲 テ 乳 ト シ 、 蛇 ハ水 ヲ飲 テ毒 ト ス。 法 ハ是 一味 ナ レ ト モ. 如 来 ノ 正 法 ヲ 邪 見 ノ情 二任 セ テ自 他 共 二邪 道 二可 レ入 ヲ ヤ 。 牛. レ薬 卜、中 医 ハ毒 ヲ 毒 ト シ薬 ヲ 薬 ト ス。 近 代 ハ正 見 ノ 人 希 ニシ テ 、. 人 ノ候 ハ ﹀、 道 心 ヲ タ ビ 玉 へ﹂ ト 申 玉 ピ ケ レ ハ、 ﹁承 リ ヌ ﹂ ト. ケ 玉 フ 時 、 御 示 現 二何 事 ニ テ モ御 所 望 ノ 事 承 ル ヘキ 由 被 レ仰 ケ. 仰 ラ レ ケ ル故 二、 昔 ヨリ 上 人 方 常 二参 詣 ス ト也 。 時 二或 上 人 参. ︻信 ノ 事 ︼. ガ 、 病 気 ノ 節 柄 ハ薬 迄 モ諸 事 問 ケ リ 。 此 僧 医 骨 モ ナ カ リ シ人 ニ. 昔 或 在 家 ノ 人 、 山 寺 ノ 僧 ヲ 信 シ テ世 間 出 世 ト モ ニ深 ク 頼 ミ ケ ル. 籠 シ テ 社 壇 ノ 容 子 ヲ 見 レ ハ、 海 中 ノ 鱗 イ ク ラ ト 云 事 モ ナ ク 祭. ヲ誠 メ 玉 フ ヘキ ニ、 此 有 様 何 共 不 審 也 ケ レ ハ、 ト リ ワ ケ 先 ツ 此. テ 、 万 ノ 病 二藤 ノ 疵 ヲ 煎 ジ テ 上 レ ト 教 ヘケ ル侭 二、 是 ヲ 用 ル ニ. 供 シ テ ア リ 。 和 光 ノ本 地 ハ仏 菩 薩 也 。 慈 悲 ヲ先 ト シ 人 ニ モ殺 生. 万 ノ病 癒 ズ ト 云 事 ナ シ。 或 者 、 ﹁ 馬 ヲ 失 ヒ テ 如 何 可 レ仕 ﹂ ト イ ヘ. ハ、 例 ノ ﹁藤 ノ 疵 ヲ 煎 シ テ メ セ ﹂ ト 云 。 心 得 難 ケ レト モ 容 子ゾ. コト ハ リ モ 不 レ知 、 徒 二物 ノ 命 ヲ殺 シ テ 浮 ビ 難 キ 者 ノ 我 二供 セ. ア ル ラ ン ト 思 ヒ 、 此 言 ヲ 信 シ テ 尋 レト モ 、 近 辺 ハ取 尽 シ テ ナ カ. 事 ヲ 祈 誓 申 ケ ル ニ、 御 示 現 二 ﹁実 二不 審 ナ ル ベ シ。 是 ハ因 果 ノ. ン ト 思 フ 心 ニ テ、 替 ヲ 吾 ニ ユヅ リ テ 彼 ハ罪 軽 ク 、 殺 サ ル ︾生 類. リ ケ ル故 二山 ノ 麓 ヲ 尋 ネ ケ ル程. ニナ ツ テ 和 光 ノ 方 便 ニ テ 出 離 ス ベ. 恭 ハ候 ヘト モ大 二本 意 ナ シ。 其 故 ハ徒 二海 中 ニシ テ 死 セ ハ出 離. ル ニ、 其 夜 ノ 夢 二老 翁 一人 来 テ 云 様 、 ﹁今 日 我 命 ヲ 助 ケ 玉 フ 事 、. 仏く. リ 。 正 月 元 日 二、 申 付 タ ル事 ナ レ ハ、 心 ナ ラ ズ モ ﹁南 無 阿 弥 陀. ナ ル宿 善 ヤ 有 ケ ン、 念 仏 ヲ 信 シ テ 人 目 ヲ 忍 ビ ツ ﹀密 二常 々申 ケ. 古 へ鎌 倉 二町 ノ ツボ ネ ト ヤ ラ申 有 徳 人 ガ 有 テ 、 召 遣 ノ女 、 如 何. ︻ア ミ タ 如 来 御 身 替 ノ事 ︼. タ ル馬 ヲ 見 付 シ ト 也 。 是 レ信 ノ 致 ス処 也 。. (7 ウ ) 二、 谷 ノ ポ ト リ ニ テ 失. ハ報 命 尽 テ徒 ニス テ ヘ キ命 ヲ ( 6 ウ ) 我 二供 ス ル 因 縁 二由 テ 仏. 江州 ノ. 道 二入 ル方 便 ト ナ ル。 依 テ 我 力 ラ ニテ 報 命 尽 タ ル鱗 ヲ カ リ ヨ セ テ 取 ス ル也 ﹂ ト 示 シ 玉 ヘケ レ ハ、 不 審 晴 ケ リ ト ナ リ 。. ノ 縁 カ ケ 候 ベ シ。 加 茂 ノ 蟄. ノ 死 タ ル様 二今 日 シ モ念 仏 申 事 、 返 ス く. 湖 デ 大 鯉 ヲ浦 人 取 テ殺 ン ト ス ルヲ 、 山 僧 価 ヲ ト ラ セ テ 湖 へ入 ケ. ク 候 ヲ 、 命 延 候 ヒ ヌ ﹂ ト恨 ミ タ ル色 ニテ イ ﹀ケ ル ト ナ リ 。 信 州. 頓 テ ト ラ ヘテ銭 ヲ 赤 ク焼 テ ホ フ ニア テ ケ リ 。 サ レ ト モ 女 ハ、 念. 悪 キ ヤウ也 ﹂ト テ、. シャ。 人. ノ 諏 訪 、 下 野 ノ宇 津 宮 、 狩 ヲ宗 ト シ テ鹿 鳥 ナ ン ド ヲ 手 向 ル モ此. ﹂ ト 申 ケ レ ハ、 此 主 大 二瞑 リ 、 ﹁ア ラ イ マく. 由 ニヤ 。 大 権 ノ方 便 、 凡 夫 ノ 知 ラザ ル 処 也 。. 一54一.

ハラ ハ ︾都 ノ 者 ニテ 候 ヒ シ ガ 、 ユ カ リ ノ者 モ皆 ウ セ 、 親 敷 者 モ. 輿 ヲ カ キ 入 サ セ ケ リ 。 女 房 内 へ指 入 テ 、 主 ヲ 尋 テ 申 ケ ル ハ ﹁ 本. ユ カ リ モ ナ ク ナ リ 果 タ ル事 ヲ 有 ノ 侭 二語 ン モ サ ス ガ 人 ゲ ナ ク 思. ノ ホ フ ニ銭 ノ 形 黒 ク 付 テ 見 ヘケ リ 。 怪 ミ テ能 々 見 ル ニ、 金 焼 ニ. ナ キ 侭 二、 是 ソ 我 力 伯 母 御 前 ト 申 テ候 也 。 願 ハ見 参 シ テ頼 ミ 入. 仏 申 タ ユ ヘナ ラ バ イ カ ナ ル 智 ニ モ ア タ レ、 夫 二付 テ モ如 来 ヲ念. シ タ ル銭 ノ形 也 。 女 ヲ 呼 テ 顔 ヲ 見 ル ニ、 柳 モ疵 ナ シ 。 主 大 二驚. シ ゲ ナ ル前 ヲ 過 キ ケ ル ニ、 ﹁是 コ ソ 我 伯 母 御 前 ノ本 也 ﹂ ト テ、. キ 悪 悦 臓 悔 シ テ 、 仏 師 ヲ 呼 金 伯 ヲ ヲ サ ス ル ニ、 伯 ハ幾 重 ト モ ナ. タ シ ﹂ ト テ、 懐 中 ヨ リ 金 子 ヲ 五 十 両 取 出 シ 与 へヶ レ バ 、 兎 角 ノ. テ 、 親 敷 者 モ有 由 イ ︾置 タ リ ケ ル ニ、 既 二京 へ入 テ或 家 ノ タ ノ. ク 重 レ ト モ疵 ハカ ク レズ 。 今 二金 焼 仏 ト テ在 ス。 当 時 ハ疵 三 角. ン ド ヲ勧 メ テ 後 、 主 此 女 房 二申 ケ ル ハ ﹁抑 イ カ ナ ル御 事 ニ テ 、. 子 細 モ ナ ク 、 ﹁メ イ 御 前 ノ 入 ラ セ 玉 フ タ ル ﹂ ト テ 親 敷 、 籾 酒 ナ. ジ 喜 ピ ケ ル ガ 、 サ ノ ミ 痛 モ ナ カ リ ケ リ 。 主 年 始 ノ勤 ナ ン ド セ ン. 二見 ユ ル ト 也 。 (8 オ ) マ コ ト ニ今 生 斗 二非 ス、 生 々 世 々 ノ 御. ト テ 、 持 仏 堂 ヲ 開 テ 本 尊 ノ ア ミ タ 如 来 ヲ 拝 ス レ ハ、 金 色 ノ 立 像. 身 替 ハイ カ斗 ナ ラ ン ト 思 シ ラ レタ リ 。. 京 二入 人 コソ 多 キ 、其 中 二斯 親 敷 ナ リ 参 ス ル事 、不 思 議 ノ 事 哉 ﹂. ト 云 程 二、 此 女 房 、 ﹁実 二是 モ 一世 ノ 事 ニテ ハ候 マジ 。 定 テ 昔. ︻観 音 利 生 ノ 事 ︼ 古 へ貧 キ 女 房 有 テ 清 水 へ常 二参 詣 シ ケ ル カ、 功 積 テ 示 現 一 二 人. ト 語 リ ケ レ ハ、 主 手 ヲ ハタ ト 打 テ 、. ﹁ア ラ 不 思 議 ノ事 ヤ 。 彼 ノ 衣 裳 ハ某 ガ 衣 ニ テ有 リ シ ガ 、 盗 レテ. テ 始 メ (9 オ ) ヨリ 細 く. ノ契 リ モ深 ク コ ソ 候 ハン。 吾 身 ノ事 、 有 ノ 侭 二語 リ 申 ベ シ﹂ ト. 思 煩 ピ ケ レ ト モ、. ノ 老 僧 告 玉 ヒ ヶ ル ハ ﹁其 傍 ラ ナ ル者 ノ衣 裳 ヲ 盗 メ ﹂ ト仰 ラ ル ︾ ト 見 テ夢 醒 タ リ 。此 事 如 何 ス ベ キ ヤ ト 返 ス<. 槌 ナ 御 示 現 ナ レ ハ、 タ ト ヒ 如 何 ナ ル恥 ヲ ウ ル ト モ 如 何 セ ンゾ ト. ル ニ行 逢 ケ リ 。 ﹁如 何 ナ ル 女 ゾ 、 唯 一人 居 ル ソ ﹂ ト 問 ヘ ハ、 物. ノ 物 登 セ、 都 ヨ リ モ 色 々物 下 シ テ 、 実 ノ 身 ヲ分 シ親 類 ヨリ モ ム. ツ ﹀、 打 連 テ 清 水 へ詣 ケ ル。 夫 ヨ リ 弥 ﹀親 敷 テ 、 田 舎 ヨリ モ 国. カ サ ヨ 。 観 音 ノ御 慈 悲 方 便 、 難 有 コ ソ﹂ ト テ、 互 二袖 ヲ シボ リ. ヨ。 斯 ル御 計 ヒ ニ テ 末 目 出 度 カ ル ヘシ ト 知 ラザ ル 凡 夫 ノ 心 ノ 愚. 詣 ノ 下 向 ノ 由 答 ヘケ ル。 ﹁ナ ン ト 某 ト 田 舎 へ行 ベ キ ヤ ﹂ ト ナ ヲ. ツ マジ カ リ シ ト ナ リ 。 是 大 聖 ノ 方 便 、 難 有 コソ 覚 ケ ル。. 後 ハ仏 ヲ ウ ラ メ シ ク 思 奉 テ 、 参 詣 モ セザ リ ケ リ 。 吾 心 ノ 愚 カ サ. ザ リ ニイ ︾掛 ケ レ ハ、 ﹁便 リ ナ キ 身 ニテ 候 ヘ ハ、 御 哀 ミ 有 ル ヘ. 鎌 倉 二或 武 士 二 人 、 地 蔵 ヲ 信 シ テ 倶 二崇 メ供 養 シ ケ リ 。 一人 ハ. 思 切 テ 、 傍 ナ ル者 ノ衣 裳 屏 風 二掛 置 タ ル ヲ 引 落 シ テ 、 打 カ ツ ギ. ク ハ何 国 ヘ モ参 ン ﹂ ト 云 。 ﹁実 歎 ﹂ ト 問 ヘ ハ、 御 疑 ヒ有 間 敷 由. 貧 シ カ リ ケ レ ハ、 古 キ 地 蔵 ノ 相 好 モ ヨ ゴ レ タ ルヲ 、 花 香 ヲ サ ︾. 下 向 ス ル程 二、 五 条 ノ 橋 二大 番 衆 ト 覚 敷 武 士 、 大 勢 ノ 供 ニテ 通. レ バ 、 ﹁サ ラ ハ﹂ ト テ 頓 テ 引 馬 二打 チ 乗 セ テ 東 へ下 リ ケ リ 。 夫. ゲ 尊 ピ ケ リ 。 一人 ハ世 間 ユタ カ ナ リ シ ユ へ、 新 敷 造 立 シ テ 厨 子. 時 求 メ タ レ バ ト テ 、 傍 二打 置 テ供 養 モ セザ リ ケ ル 時 、 夢 二此 地. ナ ン ド 美 麗 ニシ タ テ ﹀崇 メ供 養 シ ケ リ 。 此 人 先 ノ 地 蔵 ハ貧 シ キ. (8 ウ ) 志 不. イ ﹀ケ リ 。 月 ノ 光 二見 レ ハ、 若 キ 女 房 ノ ミ メ形 ナ ビ ラ カ ナ リ ケ. 婦 ノ 契 リ ム ツ マジ ク 、 観 音 ノ 御 助 ケ ニ ヤ 。 互 ノ. レ浅 、 子 息 ナ ン ド 出 生 シ テ 楽 ミ 栄 へ、 奥 州 ノ南 都 二有 ケ リ 。 籾 十 年 斗 過 テ 、 次 ノ大 番 二此 女 房 モ都 へ相 具 シ登 リ ケ ル ニ、 都 二. 一55一.

世 を 救 ふ 心 は 我 も あ る も のを 仮 り の 姿 は さ も あ ら ば あ れ と カ ク. 蔵 物 怨 ミ タ ル気 色 ニテ 、 ( 9 ウ). 以 テ 即 チ 諸 天 ト 共 二仏 処 二詣 シ、 法 ヲ 聞 テ 初 果 ヲ 得 シ ト 也 。. サ シ殺 シ ケ ル ニ、 聞 法 ノ因 縁 二依 テ 切 利 天 二生 ジ 生 シ テ神 通 ヲ. ノ 根 ニ マト ハ ツ テ聞 ク時 二、 牧 レ牛 ヲ人 知 ラ ズ シ テ 杖 ノ ハ シ ニテ. 又 天 竺 二婆 羅 門 有 テ 、 人 ノ 燭 骸 ヲ ウ ル 者 有 リ ヶ ル ニ、 是 ヲ 買 人. (10 ウ ). 詠 ジ 玉 フト 見 テ驚 キ 、 一ツ ノ厨 子 ヲ安 置 シ 、同 様 二貴 ヒ ヶ リ ト也 。. 二期 ナ キ ニ、 其 子 孫 有 テ 此 神 呪 ヲ 談 二七 返 満 テ 彼 ノ 亡 魂 二廻 向. ○ 宝 簾 印 陀 羅 尼 塔 ハ、十 悪 五 逆 ノ 罪 人 、悪 道 二堕 シ テ マヌ カ ル ︾. キ ニ ハ少 ク 与 へ、 通 ラ ヌ ニ ハ与 ヘズ 。 其 故 ヲ 問 ヘ ハ、 ﹁昔 聞 法. 銅 ネ ノ 箸 ヲ 以 耳 ノ穴 ヲ 通 シ テ 、 深 キ ニ ハア タ ヘヲ 大 ク 与 へ、 浅. シ ケ ル人 ノ 耳 ハ穴 深 シ。少 ク 聞 ル ハ浅 シ。惣 テ 不 聞 ハ穴 通 ラ ズ ﹂. ス レ ハ、 忽 二其 洋 銅 熱 鐡 変 シ テ 八 功 徳 ノ池 ト 也 。 蓮 花 生 シ テ 足. ト イ ヘリ 。 籾 聞 法 ノ 燭 饅 ヲ 買 テ 塔 ヲ 立 、 供 養 セ シ カ バ 、 天 二生. ヲ ウ ケ 、 宝 蓋 頂 キ ニ止 リ 、 其 蓮 飛 力如 ク シ テ、 須 萸 ノ 問 二極 楽 二生 シ テ 、 一切 ノ 種 智 ヲ 証 シ、 位 補 庭 二有 ト 説 玉 フ 。. ジ ケ リト也 。 況ヤ自 ラ法 ヲ聞 テ信 センヲ ヤ。. ︻光 明 真 言 ノ 事 ︼ 光 明 真 言 ハ又 儀 軌 ノ 説 二、 地 獄 二落 テ 苦 患 二沈 ム亡 魂 二、 此 真. 抱 テ酒 ノ家 ヨ リ 酒 ノ家 へ至 ン ヲ モ、 舎 利 仏 目 連 ノ 如 ク 敬 ハ ﹀、. 十 輪 経 ノ 中 二、 破 戒 ノ 比 丘 ノ 盲 目 ナ ラ ン 妻 二手 ヲ 引 レ、 子 ヲ. ︻末 法 ノ僧 ヲ敬 フ事 ︼. 世 界 へ引 導 シ玉 フ ト 云 二、 又 経 ノ中 二、 此 陀 羅 尼 ヲ 満 テ 土 砂 ヲ. 言 一返 ミ テ ﹀廻 向 ス レ ハ、 無 量 寿 如 来 、 此 亡 魂 二手 ヲ 授 テ 極 楽. 加 持 ス ル事 一百 八 返 シ テ 、 此 土 沙 ヲ 墓 所 二散 ラ シ 死 骸 二散 ハ、. 田 也 ト イ ヘリ 。 持 戒 ナ レ ト モ悪 見 ノ者 ハ悪 知 識 ト 見 ヘタ リ 。 悲. 福 ヲ ウ ベ シ ト。 心 地 観 経 ニ ハ、 破 戒 ナ レ ト モ正 見 ノ 者 ハ国 ノ 福. 華 経 ニ モ、 袈 裟 ヲ カ ク ル程 ノ者 ハ必 解 脱 ス ヘシ ト 云 ヘリ 。 大 集. ︻仏 法 ノ 結 縁 不 空 ル 事 ︼. 土 沙 ヨリ 光 ヲ 放 チ 、 霊 魂 ヲ 救 テ 極 楽 二送 ルト 也 。 ( 10 オ ). 経 ニ ハ、重 キ 宝 ニタ ト ヘテ 、金 銀 等 ノ ナ キ時 ハ白 錫 マデ 宝 ト ス。. ノ カ タ ハシ ヲ モキ テ僧 ノ形 ナ ラ ン ヲ バ 供 養 ス ヘ シ。 繋 縛 シ殺 害. 高 野 ノ 南 謹 房 寛 海 ト 云 人 ハ近 代 蜜 宗 ノ 明 匠 也 聞 ヘケ ル ガ 、 先 キ. ス ヘカ ラ ス 。 タ ト ヒ 犯 罪 ア リ ト モ、 法 ニ ヨリ 寺 ヲ イ ダ ス ヘシ 。. 得 道 ノ 人 ナ ク 乃 至 持 戒 破 戒 ナ キ 時 ハ、 唯 髪 ヲ 剃 、 (1ー オ ) 袈 裟. 寄 ラ レ浜 二有 リ シ ヲ 、 幼 ナ キ者 是 ヲ 取 テ金 堂 ノ 前 二持 行 キ ケ ル. 若 王 臣 是 ヲ 繋 縛 シ殺 害 セ ハ、 賢 聖 国 ヲ 去 、 災 難 シ バ く. リ 。 始 ハ天 王 寺 ノ 西 ノ 海 二有 少 キ蛤 ニテ有 シ ガ 、 自 然 二波 二打. ニ、 舎 利 讃 嘆 ノ声 ヲ 聞 シ ユ へ、 死 シ テ 後 天 王 寺 ノ犬 二生 ル。 常. 生 ノ事 ヲ 知 リ 度 思 テ 大 師 二祈 念 ス ル ニ、 七 生 ノ 事 ヲ 示 シ 玉 ピ ケ. 二陀 羅 尼 ノ声 ヲ聞 シ 故 二牛 二生 レ、 大 般 若 ヲ ヲ ヒ シ故 二馬 二生. 異 国 キ ソ ヒ テ 境 ヲ犯 ス ヘシ ト 説 玉 フ 。 タ ト ヒ悪 趣 二堕 ス ト モ 、. 右 ハ沙 石 集 一ニ ノ巻 二出 ツ. 来 リ。. レ、 熊 野 詣 ノ 者 乗 テ 参 詣 セ シ 故 二柴 灯 タ ク 者 ト 生 レ、 常 二火 ノ. 遠 ク菩 提 ヲ ウ ベ キ因 ヲ 見 ル故 也 。 不 レ可 レ軽 。. ︻頭 陀 ノ 事 ︼. 光 ヲ 以 人 ヲ 照 ス故 二、 智 恵 サ ト ク奥 ノ院 ノ 承 仕 ト生 レ、 三 密 ノ. 又 律 ノ 中 ニ ハ、 仏 在 世 二蛤 池 ノ 中 ヨリ 出 テ 仏 ノ 説 法 シ 玉 フ ヲ 草. 行 法 ヲ 耳 二触 、 目 二見 ル 故 二、 今 検 校 ト 生 レ タ リ ト 示 シ 玉 フ 。. 一56一.

ナ ク シ テ 、 十 王 冥 宙 ノ前 二引 ス ヘラ レ、 阿 防 羅 刹 ニ シ バ ラ レテ. ヲ キ テ、 閻 魔 ノ 聴 庭 ニシ テ倶 生 神 ノ御 タ ﹀ シ、 浄 婆 刹 ノ 鏡 ノ 影. ノ 道 理 ヲ 弁 へ、 臓 悔 ス ヘシ ト 也 。. ○ 田 有 レ ハ田 ヲ憂 へ、 家 有 ハ家 ヲ 憂 へ、 牛 馬 六 畜 コ レ ナ ケ レ ハ. ○ 他 郷 ト 云 ハ三 界 也 。 本 国 ハ浄 土 也 。 安 楽 集 二有 之 。 敵 国 ノ 人. 恥 ヲ カ ク ノ ミ ニ非 ス、 地 獄 二落 テ 苦 ヲ ウ ク ル ニ讐 へ玉 フ 。 因 果. 陀 ヲ行 ス レ ハ、 世 間 ニ ハ賎 キ 業 ト 思 ヘリ 。 仏 法 ノ中 ニ ハ清 浄 ノ. ノ 子 取 レ テ悪 ク 使 ル ︾ガ 、 本 国 へ帰 ン ト思 フ如 ク、 娑 婆 ヲ他 国. 二付 テ モ憂 フ ト 経 二説 玉 フ 事 。 出 家 ハ煩 ヒ ナ ク 愁 ス ク ナ シ。 頭. 活 命 也 。 三 十 二 相 ノ中 ノ無 見 頂 ノ因 ハ乞 食 也 。 三 界 ノ 独 尊 タ ル. ナ キ事 ヲ 憂 へ、 ア レ ハア ル 事 ヲ憂 フ 。 有 ル ニ付 テ モ ウ レ へ、 無. サ へ其 跡 ヲ 示 シ 、 釈 子 ト シ テ 彼 風 ヲ 学 ハザ ラ ン ヤ。 禄 ヲ 求 メ 栄. ト 思 ヒ テ 、 浄 土 ノ 行 業 ヲ ス ヘシ ト 云 々 。. シ ケ リ 。 余 リ 腹 立 ツ上 人 ニ シ テ 、 飯 ノ カ ヨ ヒ ス ル ニ モ、 湯 ノ ァ. 中 頃 甲 斐 国 二厳 融 房 ト 云 学 匠 有 ケ リ 。 修 行 者 多 ク給 仕 シ テ学 問. ︻厳 融 妹 ト問 答 ノ 事 ︼. 花 ニホ コラ ン事 ヲ 手 柄 二今 時 思 フ事 、 大 キ ナ ル誤 也 。. 即 消 滅 ス。 云 々 。 (1ー ウ ) 罪 ヲ 隠 ス パ、 木 ノ根 二土 ヲ 覆 ヘ ハイ. 0 心 地 観 経 二日 、 若 覆 レ罪 者 、 罪 即 増 長 シ 、 発 露 臓 悔 ス レ ハ罪. 木 サ カ フ 。 臓 悔 ス ル ハ、 根 ヲ 顕 セ バ木 ノ 枯 ル カ 如 シ ト イ. ヘリ 。 然 ハ罪 業 ノ 木 ヲ 枯 ン ト 思 ハ ︾、 覆 蔵 ノ 土 ヲ覆 フ ヘカ ラ ズ. ツ キ モ ヌ ル キ モ シ カ リ 腹 立 、 疾 持 来 レ ハ ﹁我 二物 ク ハセ ジ ト ス. ヨ<. ル カ ﹂ ト イ ﹀、 又 久 シ ケ レ ハシ カ リ 、 其 間 ヲ 取 ン ト テ 障 子 ノ ヒ. 心 ヨ カ ラ ズ 見 ヘケ レ ト モ、 ヨ キ 学 匠 ナ レ バ 忍 テ 学 問 シ ケ リ 。 此. マ ヨ リ ノ ソ ケ バ 、 ﹁何 ヲ 見 ルゾ ﹂ ト テ 弥 々 腹 立 ヶ ル 故 二、 皆 力. ト イ ヘリ 。 ︻ 物 カ クス因縁 ︼ 百 喩 経 二日 、 昔 愚 ナ ル男 有 テ人 ノ貿 二成 テ 行 ケ ル ガ 、 サ マ<. 還 リ 来 ル。 恥 カ シ サ ニ顔 ヲ 打 赤 メ テ 居 タ リ 。 ﹁ホ フ ノ 腫 テ 見 へ. ノ 中 二聞 テ 、 ﹁彼 ノ 妹 ノ 怨 ミ 被 申 候 ヘ ハ訪 ヒ 玉 ヘガ シ﹂ ト イ ヘ. 玉 ハザ ル事 ノ 、 余 処 ノ 人 ダ ニモ 情 ヲ カ ク ル﹂ ト 云 ケ ル ヲ 、 弟 子. ザ リ ケ ル ヲ ﹁ウ タ テ ヤ ﹂ ト ウ ラ ミ 、 ﹁是 程 ノ 歎 キ ヲ 上 人 ノ訪 ヒ. ウ ) 歎 キ ケ レ ハ、 近 処 ノ 人 モ訪 ヒ哀 ミ ケ ル ニ、 此 上 人 決 テ訪 ハ. 顔 赤 ミ ケ レ ハ、. 僧 ノ妹 、 最 愛 ノ }子 二送 レ テ、 人 ノ 親 ノ 習 ト 云 乍 ラ 強 ク モ (12. 玉 フ ハ如 何 二﹂ ト 問 ヘト モ 、 物 モ イ ハズ 弥 く. ニモ テナ セ ト モ サ ノ ミ 物 モク ワ ズ 、 餓 テ 覚 ヘケ ル 侭 二、 妻 力 近. 大 事 ノ 腫 物 ニ テ 物 モ 云 レ ン ニャ ト 思 テ 、 父 母 二告 ケ レ ハ来 テ. ハ、 例 ノ腹 立 テ 、 ﹁無 下 ノ 女 房 カ ナ 。 法 師 力妹 ト モ 云 レ ン 者 ハ、. 処 へ立 出 タ ル ヒ マ ニ、 米 ヲ 一ト ホ フ ク ﹀ ミ テ 食 ン ト ス ル処 へ妻. 恥 シ サ ニ顔 赤 ミ ケ リ 。 隣 ノ 者 皆. 在 家 ノ 外 ノ 人 ニ ハ似 ベ カ ラ ズ 。 生 老 病 死 ノ国 二居 乍 ラ 、 愛 別 離. ﹂ ト 問 二、 弥 く. 苦 ノ愁 ナ カ ル ベ シ ト 思 フ歎 。 ア ラ 不 覚 ヤ 。 云 甲 斐 ナ キ 女 哉 。 イ. ﹁ 如 何 二く. 集 リ テ 、 ﹁智 殿 ノ 腫 物 ハ大 事 ニ オ ハ ス ルゾ 。 浅 間 敷 事 哉 ﹂ ト 訪. ト シ テ 行 レ ケ ル ニ、. デく. ﹁ 無 下 ノ 人 哉 。 サ ス カ此 法 師 ガ 親 敷 験 シ ニ ハ、 世 ノ常 ノ 人 ニャ. ﹁誠 二余 リ ノ歎 キ ニ心 モ ア ラ レズ 。斯 ヤ 申 テ 侍 ル也 ﹂ト イ ヘ ハ、. 往 テ 、ツ メ フ セ コ ン﹂ト テ 、 ガ サ く. ハ、 ﹁ユ ﹀ シ キ 大 事 ノ者 也 。 急 キ療 治 ス ヘ シ﹂ ト テ 、 大 キ ナ ル. ピ ケ リ 。 如 何 サ マ ニ モ大 事 ノ物 ニ コ ソ ト テ、 医 師 ヲ呼 テ 見 セ レ. 火 針 ニテ ホ フ ヲ 焼 ヤ ブ ル 。 米 ポ ロく. ト コボ レ テ 、 恥 ヲ カ キ シ. 事 限 リ ナ シ ト ナ リ 。 是 ハ罪 ヲ (12 オ ) 発 露 臓 悔 セズ シ テ カ ク シ. 一57一.

似 玉 フ ベ キ。 生 有 者 ハ必 死 二帰 シ、 会 者 定 離 ハ常 ノ事 。 南 部 ハ. 為 二諸 国 ヲ歩 キ シ ニ、 或 国 二鶏 ノ 形 、 余 ノ常 ノ鶏 ニテ ハナ ク、. 由 ヲ イ ヘリ 。 愛 二居 士 、 ﹁唯 今 思 ヒ 合 ス ル事 ノ 候 。 ア キ ナ ヒ ノ. 音 ハ 鶏 ノ音 ナ ル ア リ 。 此 由 ヲ 問 ヘ ハ、 此 鶏 ノ 母 鳥 ト 嫁 テ 生 メ. 家 ノ 語 也 。 彼 ノ 鳥 鶏 コソ 思 ヒ 出 サ レ候 ﹂ ト 云 時 、 善 法 比 丘 言 ナ. 不 覚 也 ﹂ ト 呵 ヶ レ ハ、 ﹁カ. タ ノ 如 ク 道 理 ハ承 リ 知 リ テ 候 ヘト モ、 身 ヲ 分 ケ手 付 テ 候 ヒ ツ ル. 始 テ 歎 キ驚 ク ヘキ ニ非 ス 。 返 ス <. ヘリ 。 今 御 形 ヲ 見 奉 レ ハ、 沙 門 ノ 御 姿 ナ リ 。 仰 ラ ル ﹀御 言 ハ在. リ 。 傍 テ 形 ハ母 二似 リ 。 音 ハ父 二似 テ 候 。 是 ヲ鳥 鶏 ト 名 ク ト イ. 元 ヨリ 老 少 不 定 ノ 国 也 。前 後 相 違 也 。母 子 ノ 別 レ世 ニナ キ 事 力 。. ( 13 オ ) 理 モ 忘 テ 、 唯 別 レ ノ ミ悲 敷 覚 候 ﹂ ト テ 、 泪. モ カ キ ア ヱズ ナ キ ケ レ ハ、 ﹁ア ラ 愚 痴 ヤ 。 道 理 知 リ 乍 ラ 猶 歎 ク. 上 ハ何 ノ 道. ク 腹 ヲ 立 テ、食 セ ズ 座 ヲ 立 サ リ ヌ ト 也 。厳 融 房 ノ風 情 彼 二似 リ 。. 草 河 ノ真 観 長 老 ト イ ﹀ シ ハ、 教 院 二 六年 、 禅 院 二七 年 、 在 唐 十. ︻ 自 ヲ ヲ ヒ テ 他 ノ 沙 汰 ヲ ス ル事 ︼. (14 オ ) 時 ノ出 家 ハ形 斗 出 家 ニ シ テ 心 ハ俗 也 。 是 ヲ 袈 裟. 実 二当. ヘキ 欺 。 サ レ ハソ レ ハ知 リ タ ル 甲 斐 ア ラ ス。 不 覚 ヤ ﹂ ト テ 、 イ. キ ル 猟 師 ト モ イ ﹀、 古 人 ハ釈 眼 儒 心 ノ者 ト モ イ ヘリ 。 可 恥 可 悲. 責 フ セ タ リ 。 良 有 テ 泪 ヲ 押 ヌ グ ヒ、 ﹁抑 人 間 ノ腹 立 候 事. ハ悪 敷 事 歎 。 又 苦 シ カ ラ ヌ 事 力 ﹂ ト 云 ヘ ハ、 ﹁夫 ハ貧 瞑 痴 ノ 三. ヨ<. 当今 ナ リ。. 三 年 修 学 シ テ 天 台 禅 門 ノ 観 心 ノ 用 意 心 ニ ク ︾思 ハ レ シ 人 ニ テ、. ﹁ナ ド サ ラ バ、 夫 程 御 心 得 有 ラ ハ、 余 リ ニ御 腹 ハ立 ラ レ。 ナ ト. 毒 ト テ、 煩 悩 ノ 瑞 一也 。 云 ニ ヤ 及 ベ キ 恐 ロ敷 省 也 ﹂ ト 云 時 、. 悪 敷 事 ゾ ﹂ ト 云 二、 ハ ッ タ ト ツ マ ッ テ 云 ヘ キ 言 ナ ク シ テ 、 ﹁ヨ. 帰 朝 ノ 後 洛 陽 ノ 学 者 道 人 二便 リ ヲ 求 メ訪 ピ ケ ル ニ、 或 時 遁 世 ノ. 僧 、 齢 五 旬 二余 レ ル人 見 参 仕 度 由 有 リ ケ ル ニ、 タ ヤ ス ク人 二対. シ サ ラ バ 、 如 何 ニ モ思 フ サ マ ニ歎 キ 玉 へ﹂ ト 呵 テ 帰 リ ケ リ 。 学. フ ハ実 二難 シ 。改 テ 行 ハ智 者 也 。賢 人 也 。 多 聞 広 学 ト モ云 ヘシ 。. 二対 面 シ テ ﹁何 事 ノ 御 用 二候 ヤ ﹂ ト 問 ヘ ハ、 ﹁天 台 ノ 法 門 ヲ カ. 面 ス ル事 モ ナ ク 、 法 門 ナ ン ト 申 サ ル ︾事 モ希 也 ケ ル ガ 、 籾 此 僧. 匠 ノ 妹 ノ 印 ト 聞 ヘケ リ 。 サ レ ハ道 理 過 ト 誰 モ 知 レト モ 、 守 リ 行. 昼 二日 知 ル事 ノ 難 ニ ハ非 ス。 行 事 難 キ也 ト 。 妹 ハ多 聞 ハ兄 二劣. 二僧 ヲ供 養. ヶ ル ト ナ リ 。 此 僧 自 分 ノ 生 死 ノ大 事. 意 力 有 ヘク候 ﹂ ト テ立 入 ラ レ ケ リ 。 此 僧 言 ナ ク ニガ リ 顔 ニ テ出. ト 問 ハ ル ︾ 二、 ﹁此 事 ハ未 タ 何 ト モ存 セ ズ ﹂ ト 云 。 ﹁先 ツ其 御 用. 事 ナ シ。 ﹁草 木 成 仏 ハ暫 ク ヲ キ 候 。 御 辺 ノ成 仏 ハ如 何 御 存 候 ソ ﹂. タ ノ 如 ク 承 リ 候 二付 テ 草 木 成 仏 ノ 事 不 審 二候 ﹂ ト 云 。 良 暫 ク 返. リ タ レ ト モ、 智 恵 ハ勝 テ イ ﹀ ツ メ ケ リ 。 ︻ 末 代僧 ノ悪 敷事 ︼. テ供 養 ヲ ウ ク 。 或 時 遠 国 ヨ リ 客 僧 ノ来 リ ケ レ ハ、 居 士 懇 二供 養. 論 ス ル 故 二、 志 シ ナ シト 見 テ 立 入 ラ レタ リ 。 名 利 ノ 為 二広 学 ヲ. 又 仏 在 世 二質 多 居 士 ト 云 俗 ノ 初 果 ノ 聖 者 有 テ 、 信 心 深 ク シ テ 常. シ ケ リ 。 善 法 比 丘 是 ヲ 見 テ 、 吾 ヲ ハ供 養 セ ズ シ テ 他 国 ノ僧 ヲ 重. 元 ト シ テ 何 ゾ 真 実 ノ道 二入 ザ ラ ン ヤ 。. ( 13 ウ ) シ ケ ル ニ、 善 法 比 丘 ト 云 僧 、 常 二彼 家 二行. ス ル事 無 二本 意 一ト妬 敷 思 テ 、 本 ヨリ 腹 立 比 丘 ニテ 悪 ロ シ ヶ リ 。. テ 後 、 名 利 ノ ニ 字 ヲ 拝 レ ケ ルト カ ヤ 。 名 利 ノ 心 ヲ 以 テ 学 問 シ、. 恵 心僧都 菩提 心 ヲ起 シ. (14 ウ ) ヲ ハ指 置 、 多 事 ヲ. ﹁今 日 ノ御 供 養 コソ 目 出 度 見 へ候 へ。 山 海 ノ 珍 物 数 ヲ 尽 サ レ。 唯 ナ キ 者 ト テ ハ油 糟 計 也 ﹂ ト 云 。 居 士 油 ヲ ア キ ナ ヒ テ 世 ヲ 渡 ル. 一58一.

ラ ズ 。 学 ナ ク ン ハ智 恵 ア ラ ジ 。 智 恵 ナ ク ハ道 心 発 シ難 シ。 浄 名. 学 ノカ ニ由 テ道 心 ヲ 起 ス ヘシ 。 又 名 利 ノ 心 ナ ク ン ハ学 問 ス ヘカ. 失 ヒ テ肝 モ心 モ身 ニ ソ ハズ ア リ シ ガ 、 此 児 心 有 ル 者 ニ テ 唯 世 ノ. ノ 山 寺 二有 ケ ルヲ 呼 寄 セ 、 母 ノ 前 ニテ ヨ マ セ ヶ レ ハ、 母 ハ色 ヲ. 力 無 筆 ニテ 読 レザ リ. 期 ル 事 ア リ ト 告 知 ラ ス ル者 有 リ ケ レ ハ、 夫 是 ヲ 尋 ネ 出 シ テ 、 吾. (15 ウ ) ケ ル侭 二、 息 子 ヲ 小 僧 ニ シ テ 戸 隠. 経 二、 欲 ノ 釣 ヲ 以 引 テ後 二道 二入 ルト 是 也 。 但 シ道 心 ヨ リ 名 利. 常 ノ 文 ノ 様 二読 聞 セ ケ レ ハ、 人 ノ ワ ザ 也 ト 思 テ ヤ ミ ヌ 。 此 継 母. 余 二嬉 敷 思 テ 、 翫 ビ 物 取 具 シ テ文 ヲ ヤ リ ケ ル 歌 二、. ︻ 孝 子 ノ事 ︼. ヲ 捨 ル ト 、 名 利 カ ラ 道 心 二入 ト ハ順 逆 遅 速 ア ル ヘ シ。. 漢 朝 二元 啓 ト 云 者 ア リ 。 十 三 ノ時 、 父 妻 力 言 ヲ 本 ト シ テ老 親 ヲ. し な の な る 木 曽 路 に かく る ま ろ 木 橋. ふみ みし時 はあ やう かりし を. 山 二捨 ン ト ス 。 元 啓 頻 二諌 レ ト モ 不 用 シ テ、 元 啓 ト ニ リ 手 輿 ヲ 作 テ 深 山 ノ 中 二捨 ケ リ 。 元 啓 ﹁輿 ヲ 持 帰 ン﹂ ト 云 二、 父 ﹁今 ハ. し な の な る そ のは ら に し も や ど ら ね ば 皆 母 き ・ と お も ふ 斗 そ. 此 児 ノ返 事 ノ歌 二、. ル為 也 ﹂ ト 云 。 其 時 父 心 付 テ 、 ﹁ 我 父 ヲ捨 ル事 、 実 二悪 敷 業 也 。. 彼 ノ 閾 子 篶 二似 リ 。 梵 網 経 ニ モ、 ︼切 ノ 男 子 ハ皆 我 父 也 、 ︼切. 何 ニ セ ンゾ 。 捨 ヨ﹂ ト 云 時 、 ﹁父 ノ 年 老 タ ラ ン時 、 又 用 ナ ンズ. 是 ヲ 学 デ 我 ヲ モ又 捨 ン﹂ ト 思 返 シ テ 、 父 ヲ具 シ テ (15 オ ) 帰 リ. ノ 女 人 皆 我 母 也 ト 云 々。 ︻孝 道 事 ︼. 養 シ ト 也 。 此 事 天 下 二聞 ヘテ 、 孝 孫 ト ゾ 云 ケ ル。 実 二父 ヲ 教 ル 智 恵 甚 深 シ。 愛 二賢 人 ト 世 人 呼 ト也 。. 魯 州 二母 子 三 人 貧 ク シ テ 世 ヲ 渡 ル 者 有 ケ リ 。 二 人 ノ 子 他 行 ノ ヒ. マ ニ、 隣 ノ 人 母 二恥 ガ マ シ キ事 ヲ 与 ヘケ ル ニ、 子 帰 テ 此 事 ヲ 聞. ︻孝 子 ノ 事 ︼. レ ヨ﹂ト 申 。弟 ハ ﹁母 ト 兄 ト ハ過 ナ シ。 吾 ヲ 諜 セ ラ レ ヨ ﹂ ト 申 。. 孔 子 ノ 弟 子 四 人 ノ 上 足 ノ 中 二閲 子 審 ト 云 ケ ル ハ、継 母 是 ヲ 悪 ミ 、. 母 ヲ 召 シ テ 問 レ ケ レ ハ、 母 ﹁二人 ノ 子 ハ過 ナ シ。 我 子 ヲ 教 ヘザ. ﹁過 二行 ハ レ ヨ﹂ ト 申 。 兄 ハ ﹁母 ト 弟 ト ハ過 ナ シ 。 我 ヲ 珠 セ ラ. テ 父 大 二瞑 テ 妻 ヲ 追 出 ス。 審 父 ヲ 諌 テ 日 ﹁此 母 家 ニア レ ハ 一子. ル 故 ナ レ ハ我 身 二過 ア リ 。 二 人 ノ 子 ヲ 助 ケ 玉 へ﹂ ト 申 。 ﹁倶 二. テ 母 ガ恥 ヲ ス ﹀ガ ン為 二隣 ノ 人 ヲ害 ス。 (16 オ ) 互 二役 所 へ出 、. ︼重 ナ ラ ン。 母 家 ニ ナ ク ハ三 子 一重 ナ ラ ン。﹂ 若 余 ノ 母 ヲ 入 レ. 申 処 ア レ ト モ、 母 ヲ ハ助 ケ テ ニ人 ノ 子 ノ 中 一 二 人 ヲ 諌 ス ヘシ 。. 我 子 二 人 ニ ハ常 ノ 綿 ヲ 入 テ キ セ、 審 ニ ハ葦 ノ 花 ヲ 錦 ニ シ テ キ セ. ハ三 人 マ ﹀子 タ ル ヘキ 由 願 ピ ケ レ ハ、父 道 理 ニヲ レ テ 妻 ヲ 留 ム 。. ケ リ 。 是 ヲ怨 ル心 ナ ク シ テ 父 二隠 シ ケ レ ト モ、 自 然 ト 或 時 見 付. 其 後 継 母 心 ヲ 改 メ 、 我 実 ノ 子 ヨ リ モ イ ト ヲ シ ミ ケ リ 。 此 故 二賢. 但 シ 母 ガ 言 ニ ヨ ル ヘシ ﹂ ト テ 母 二間 ケ レ バ 、 ﹁弟 ヲ 召 取 テ 兄 ヲ. 実 子 也 。 兄 ハ継 子 也 。 兄 力 父 命 終 リ シ時 、 ﹃ 我 子 ノ 如 ク ハゴ ク. 多 ク 幼 キ ヲ 愛 ス 。 何 故 二弟 ヲ ス テ ル ヤ ﹂ ト 。 母 力 日 ﹁弟 ハ我 力. ハ助 ケ ラ ル ベ シ ﹂ ト 申 。 王 ノ 玉 バク ﹁人 ノ 親 ノ 子 ヲ 思 フ 習 ヒ、. 人 ノ名 ヲ 得 テ 、 終 二上 足 ノ弟 子 二列 ナ ル。. 信 州 二中 昔 或 人 京 ヨ リ 女 房 ヲ 具 シ テ 下 リ ケ ル ニ、 京 ニテ 古 へ契. ︻孝 子 ノ 事 ︼. リ 通 シ ケ ル中 ヨリ 文 ヲ 下 シ ケ ルガ ア マタ 有 ケ ル ヲ 隠 シ 置 タ ルヲ 、. 一59一.

ノ名 天 下 二聞 ユ。 人 ヲ 損 ス ル ハ身 ヲ 損 ス ル。 人 ヲ 助 ル ハ身 ヲ 助. 同 ク 富 栄 ヘケ リ 。 我 身 ヲ忘 テ 我 身 全 シ、 ナ サ ケ 深 ク義 有 テ 賢 人. 弟 ハ我 子 ナ レ ハ参 ラ ス﹂ ト テ 、 二人 乍 ラ 臣 家 二召 ツ カ ハ レ母 モ. ム ベ シ﹄ ト 申 セ シ カ バ 、 彼 ノ言 忘 レ難 キ 故 二是 ヲ 助 ント 思 フ。. ヲ 弁 へ、愚 ナ ル事 ヲ 捨 テ ﹀賢 キ 道 ヲ 慕 フ 心 也 。不 飲 酒 戒 二当 ル。. 邪 婬 ハ人 ヲ ア ナ ド リ ケ ル故 也 。 智 ト 云 ハ照 了 ノ 心 有 テ 是 非 好 悪. ル。礼 ト 云 ハ人 ヲ 敬 慎 ミ 恐 レ テ僑 ラ サ ル 事 也 。不 邪 婬 戒 二当 ル。. 好 邪 ナ キ ヲ 云 。 五 戒 ニ ハ、 仁 ハ不 殺 生 戒 、 義 ハ不 楡 盗 戒 ニア タ. 孝 経 二日 、 居 け上 不 レ驕 .、 為 レ下 不 レ乱 、 在 レ醜 能 推 云 々。 是 ヲ. ︻孝 教 ノ教 ︼. 害 ナ ク 運 命 久 敷 保 ツ。 名 ヲ 上 、 徳 ヲ 施 シ 孝 養 ノ 本 ト ス。. ニ モ実 有 テ 偽 リ ナ ク、 不 妄 語 戒 二当 ル。 此 五 常 全 ク ス ル 人 ハ災. 酒 ハ人 ノ心 ヲ 狂 ハ シ メ 愚 痴 ノ 因 縁 ナ ル故 二、 信 ト 云 ハ心 ニ モ言. ︻孔 子 身 ヲ 忘 ル ﹀事 ヲ タ ト フ ︼. ク ル。此 道 理 ヲ忘 ル ﹀人 ハ人 ノ皮 ヲ キ タ ル畜 生 ナ ル ヘシ。 (16 ウ ). 孔 丘 ハ儒 童 菩 薩 ノ 後 身 ト シ テ 周 ノ世 二出 テ、 仏 法 ノ方 便 ノ 為 二. ヲ 正 ク セ シ 賢 聖 ナ リ 。 或 時 二魯 ノ哀 公 ﹁世 二物 忘 ス ル者 有 テ 妻. 先 王 ノ要 道 ヲ 述 ヘテ 国 ノ政 ヲ 示 シ、 仁 義 ノ孝 道 ヲ 教 ヘ テ 人 ノ 心. ニ シ テ 乱 レ ハ刑 セ ラ レ、醜 (17 ウ ) 二有 テ 争 ヘ ハ兵 ス ト イ ヘリ 。. 災 難 天 亡 是 ヨリ 起 ル。 身 ヲ 妄 レタ ル人 也 。 色 欲 ヲ愛 シ、 精 ヲ 尽. 孝 養 ト ス。 此 三 事 ヲ 不 レ行 ヲ 不 孝 ト ス。 上 二有 テ 驕 ハ亡 ビ 、 下. シ 、 酒 肉 ヲ ホ シ ヒ 侭 ニ シ テ 臓 騎 ヲ ク ダ シ 、 家 ヲ 美 麗 二作 リ 、 民. ヲ忘 ル ﹀﹂ ト 語 リ 玉 フ ニ、 孔 丘 ノ 日 ﹁臣 物 忘 ス ル人 ノ 夫 二過 タ. 毅 ノ 紺 王 、 仁 恵 ナ キ 君 ニテ 国 ヲ 煩 シ 民 ヲ 悩 ス 。 時 ノ后 ヲ 愛 ス ル. ヲ ナ ヤ ミ ヲ 思 ハザ レ ハ、 身 ヲ 損 ジ 命 ヲ 失 ヒ、 久 敷 保 ツ事 ナ シ ト. ル ヲ 見 ル。桀 紺 ノ 君 ハ其 身 ヲ 忘 レ玉 ヘリ ﹂ト 語 ラ ル。 夏 ノ 桀 王 、. ノ柱 ヲ焼 テ人 ヲ セ メ登 セ. 焼 殺 ス。 是 ヲ 見 テ 后 ノ 笑 ヒ 愛 ス ル ヲ 心 ヨ キ 事 ト シ テ 、 人 ノ 悲 ミ. ︻末 代 ノ 遁 世 ノ事 ︼. ル ﹀事 、 浅 間 シ キ 。. イ ヘリ 。 当 時 ノ 人 皆 身 ヲ 忘 レ ル 人 多 シ。 況 ヤ未 来 ノ 一大 事 ヲ 忘. キ、 人 ヲ シ テ 飲 酔 シ メ悩 シ 殺 シ、 銅. 余 リ ニ彼 ノ 心 ヲ喜 バ シ メ ン ト シ テ 、 酒 ノ 泉 ヲ タ ﹀ へ肉 ノ山 ヲ ツ. ヲ忘 レタ ル 人 也 。 妻 ハ猶 身 ノ 外 ナ レ ハ忘 ル ︾事 モ ア ル ベ シ 。 我. 近 代 ハ名 利 ヲ 捨 テ ︾遁 世 二入 ル 人 、 実 二希 也 。 唯 渡 世 ノ 為 二遁. 歎 キ 積 テ 天 ノ 責 ヲ 蒙 リ 、 俄 二后 ト ト モ ニ亡 ビ 失 玉 フ。 是 ハ我 身. 身 ヲ 忘 ル ﹀ ハ愚 ナ ル由 被 レ 申 ケ リ 。 哀 公 此 語 二恥 テ 政 ヲ 正 ク シ. 世 ス ル 人 、 年 々 二多 ク 覚 へ候 。 当 世 ハ遁 世 ノ遁 ノ字 ヲ 改 テ 貧 世. 0 諸 悪 莫 作 、 衆 善 奉 行 ハ過 去 七 仏 ノ 通 戒 也 。 諸 悪 莫 作 ハ戒 、 衆. ト 書 ク ヘキ ヲ ヤ。 昔 ハ世 ヲ 遁 ル 、 今 ハ貧 ル ナ リ 。. テ賢 王 ニテ在 シ ケ リ 。此 事 ヲ 思 二、実 二身 ヲ忘 レ サ ル 人 ハ少 シ。. 善 奉 行 ハ定 、 自 浄 其 意 ハ恵 ト 釈 ス。 然 ハ戒 ハ盗 ヲ ト ラ へ、 定 ハ. ︻五 定 ノ事 ︼ 先 ツ仁義礼智. (17 オ ) 信 ノ 五 常 ヲ 正 ク シ 、 家 ヲ 持 チ 国 ヲ 収 ル。. 是 身 ヲ 忘 レ ヌ 人 也 。 仁 ト 云 ハ広 ク 人 ヲ 恵 ミ愛 シ テ 、 老 タ ル ハ親. 賊 ク縛 リ 、 恵 ハ賊 ヲ害 ス 三 学 ト 云 。. 法 花 ヲ 弘 通 ス ル 人 ノ中 二念 仏 ヲ 誹 ル事 、 天 台 大 師 ノ 御 意 二背 ヶ. ︻法 花 念 仏 ヲ 誹 ル誤 ノ 事 ︼. ノ如 ク 敬 ヒ 、 幼 ハ子 ノ如 ク 哀 レ ム。 若 人 仁 ナ キ ハ鬼 畜 ノ如 シ。 ナ サ ケ 深 ク恵 ミ厚 キ ヲ 云 。 心 セ マ キ 時 ハ仁 恵 ト 云 。 広 キ 時 ハ慈 悲 ト ス。 義 ト 云 ハ正 直 ニ シ テ 道 理 ヲ 弁 へ、 是 非 ヲ 判 ジ 偏 頗 ナ ク. 一60一.

ミ タ ノ 名 号 ヲ 唱 へ、 意 ニミ タ ノ 身 心 ヲ 観 ズ 。 (18 オ ) 或 ハ先 ツ. リ。 法 花 修 行 ハ止 観 ノ 四種 三 昧 二出 ス。 常 行 三 昧 ハ九 十 日 ロ ニ. 釈 分 明 也 。 地 蔵 ミ タ 観 音 一体 ナ リ 。. 界 ニ シ テ ハ観 自 在 ト 名 ク ト イ ヘリ 。 法 花 ミ タ 観 音 一体 ノ事 、 此. ︻妻 帯 ノ 事 ︼. ﹁浅 間 敷 候 事 カ ナ。 上 人 ノ 妻 二送 レ 玉 ヘ ル﹂ ト イ ヘ ハ、 ﹁如 何. 八幡 山 ノ 辺 二上 人 有 シカ 、妻 ヲ持 タ リ ケ ル ガ 病 死 セ リ 。人 訪 テ 、. 念 シ テ 後 二唱 へ、 唱 ヘテ後 二念 ジ 、 或 ハ唱 念 ト モ ニ運 ブ 。 歩 々. モ 釈 シ テ 、 ミ タ 一仏 ヲ 唱 フ ル ハ、 十 方 ノ 仏 ヲ 唱 フ ト 同 ト 見 ヘタ. 声 々念 々 皆 ア ミ タ ニ在 ス ト 釈 セ リ 。 或 ハ与 称 十 方 仏 功 徳 正 等 ト. ト ス。 ア ミ タ ハ梵 語 、 漢 ニ ハ無 量 寿 ト 云 。 阿 ハ無 空 ノ義 、 般 若. 経 ニ ハ、 淫 心 ヲ タ ﹀サ レ ハ生 死 出 ツ ヘカ ラ ズ 。 淫 心 ヲ タ ︾ズ シ. リ 。 今 ノ世 ニ ハ隠 ス 上 人 少 ナ カ ラ ズ 、 セ ヌ 仏 弥 々 希 也 。 首 樗 厳. 人 、 セ ヌ ハ仏 ﹂ ト 被 レ仰 ケ ル ト カ ヤ 。 此 聖 ハ隠 ス迄 モ ナ カ リ ケ. (19 オ ) 希 ニ コソ ト 人 々 云 ニ ケ ル。 後 白 川 ノ法 王 ハ ﹁隠 ス パ上. ノ 徳 也 。 弥 ハ量 仮 ノ義 、 解 脱 ノ 徳 也 。 陀 ハ寿 、 中 道 ノ義 、 法 身. シ 候 ハ ン。 妻 持 テ 候 ニ ハ﹂ ト 云 ケ ル 。 末 代 ニ ハ妻 持 ヌ 上 人 モ. 常 住 ノ寿命 也。 又法 報応 ノ 三身也 。三徳 也。 仏法 僧 ノ三宝也 。. テ 生 死 ヲ 解 脱 セ ン ト 思 ハ、 沙 ヲ ム シ テ 飯 ト セ ン ガ 如 シ ト 云 々 。. リ 。 荊 渓 ハ諸 経 所 讃 多 在 弥 陀 ト 釈 シ テ 、 一代 ノ経 ニミ タ ヲ ホ ム. 如 是 恒 沙 ノ徳 、 三 字 ノ 中 二具 セ リ 。 此 三 諦 三 身 我 等 力 一念 ノ 心. ト モ 云 テ、 三 界 ノ 牢 獄 二人 ヲ 繋 ク 鎖 リ ハ唯 婬 欲 也 。 老 子 ノ 日. 欲 界 ノ 煩 悩 ノ根 本 也 。 諸 苦 所 因 貫 欲 為 本 ト モ説 。 愛 是 諸 煩 悩 足. ル事 多 シ ト ノ玉 ヘリ 。 況 ヤ 法 花 ノ妙 体 ハ空 仮 中 ノ 三 諦 ヲ 以 規 模. 蔵 理 三 諦 ノ 義 也 。 如 ハ空 、 蔵 ハ仮 、 理 ハ中 也 。 是 ノ理 ヲ 証 ス故. 中 二有 ル時 ハ、 本 性 ノ ミ タ ト モ自 性 清 浄 ノ蓮 ト モ 云 。 是 即 如 来. ト 云 リ 。 南 山 大 師 ノ 日 ﹁四 百 四 種 ノ 病 ハ宿 食 ヲ 根 本 ト シ 、 三 塗. ﹁罪 ハ可 欲 ヨリ 多 キ ナ ル ハナ シ 。禍 ハ不 知 足 ヨ リ大 ナ ル ハナ シ﹂. 八 難 ノ 苦 ミ ハ女 人 ヲ 根 本 ト ス ﹂ ト 云 々。. 二、 天 台 ノ 御 臨 終 ニ ハ観 経 法 華 ノ 首 題 ヲ 御 弟 子 二唱 ヘサ セ 、 四 十 八 願 、 荘 厳 浄 土 、 華 池 宝 樹 、 易 往 無 人 ト自 唱 ヘテ観 音 来 迎 シ. 師 ハ念 仏 ヲ 我 モ 信 ジ 人 ニ モ勧 メ、 心 地 明 カ ナ ラ ザ ラ ン 行 者 ハ念. 称 十 方 仏 ノ御 釈 モ 此 心 ヲ得 玉 ヘ ル ニ ヤ。 禅 師 ノ 中 ニ モ 、 智 覚 禅. 事 ア リ 。 一切 ノ 如 来 ヲ 五 仏 二摂 ス ル事 、 密 教 ノ 談 也 。 天 台 ノ与. テ 入 滅 ス。 今 ノ 嵯 峨 ノ釈 迦 如 来 是 也 。 ( 19 ウ ) 呉 王 后 ヲ ニ人 押. ガ ン ト テ 王 ノ 女 ヲ嫁 テ羅 什 三 蔵 ヲ 生 メ リ 。 鳩 摩 羅 炎 ハ彼 国 ニ シ. 亀 薮 国 等 ノ 四 ノ 国 ヲ 経 ル ニ、 彼 国 ノ王 像 ヲ止 メ 、 又 聖 ノ 種 ヲ ツ. 天 竺 ノ 鳩 摩 羅 炎 三 蔵 、優 填 王 ノ栴 檀 ノ像 ヲ 負 テ 漢 土 へ渡 シ奉 リ 、. ︻妻 帯 ノ 事 ︼. 玉 ヘ ハ、浄 土 へ行 ト コ ソ 御 弟 子 二告 玉 フ 。真 言 ノ 中 ニ モ (18 ウ ). 仏 ヲ 行 シ テ 浄 土 二生 ジ 、 大 事 ヲ 発 明 ス ヘシ ト イ ヘリ 。 法 花 ト 念. 合 テ 聖 ノ 種 ヲ ツ ギ 、 生 肇 融 叡 ノ 四 人 ノ 子 ヲ マウ ク。 羅 什 ノ 子 也. ア ミ タ ノ 習 コ マヤ カ 也 。 口伝 有 テ 六 字 ノ名 号 ヲ 五 仏 ノ 呪 字 ト 習. 仏 ハ 一具 ノ 法 門 也 。 古 徳 ノ ロ 伝 日 、 昔 在 霊 山 名 法 花 、 今 在 西 方. トイ ヘリ 。但 シ 一説 ニ ハ弟 子 ト イ ヘリ 。実 二末 代 ノ⋮機 ヲ 知 セ玉 フ。. 或 山 寺 ノ 法 師 、 世 二落 テ或 女 ヲ カ タ ラ ヒ テ 住 ケ ル程 二、 此 僧 病. ︻ 臨 終 二女 障 ト ナ ル事 ︼. 無 量 寿 、 娑 婆 示 現 観 世 音 、 大 悲 一体 利 衆 生 ト 云 々。 金 剛 頂 経 ヲ 引 テ 弘 法 大 師 釈 シ 玉 ハク 、 妙 法 蓮 華 経 ハ観 自 在 王 ノ密 号 也 。 此 仏 ヲ 無 量 寿 ト 名 ク 。 浄 妙 国 土 ニ シ テ ハ成 仏 ノ身 ヲ 現 ジ 、 雑 染 世. 一61.

二伏 シ テ月 日 ヲ経 ル ニ、 妻 懇 二看 病 シ テ ア ツ カ ピ ケ ル。 病 日 数. ︻慈 悲 ノ 事 ︼. 0 人 王経 二日 、 菩 薩 未 成 仏 時 、 以 菩 提 為 煩 悩 、 菩 薩 成 仏 時 、 以. 慈 悲 ハ菩 薩 ノ 体 、 仏 ノ 心 也 。 少 分 ナ ル時 ハ仁 ト イ ﹀、 広 大 ナ ル. 煩 悩為菩 提。. 時 ハ慈 悲 ト名 ク 。 此 心 法 界 ノ衆 生 ヲ利 ス 心 ナ ラ バ、 全 ク 菩 薩 ノ. テ 西 方 二向 テ 高 声 二念 仏 シ ケ リ 。 此 妻 、 ﹁我 ヲ 捨 テ 何 国 ヘヲ ハ ス ルゾ 。 悲 ヤ ﹂ ト テ 首 二抱 キ 付 テ 引 伏 セ ケ リ 。 ﹁ア ラ ロ 惜 ヤ 。. 慈 悲 諸 仏 ノ 心 也 。 観 経 ニ ハ仏 心 者 大 慈 悲 是 也 。 法 花 ニ ハ如 来 室. 積 テ 臨 終 ト 覚 ヘケ ル侭 二、 念 仏 数 返 申 テ 最 後 ト 覚 テ 端 座 合 掌 シ. 心 安 ク 往 生 サ セ ヨ ﹂ ト テ 起 上 テ念 仏 ハ シ ケ レ ト モ、 引 伏 セ ラ レ. 釈 尊 御 入 滅 ノ時 、 純 陀 長 者 一鉢 ノ飯 ヲ仏 二供 養 セ ル志 シ 、 法. スト答 フベシト。. ト 云 。 喩 伽 論 ニ ハ、 菩 薩 ハ何 ヲ 以 体 ト ス ト 問 ハ ︾慈 悲 ヲ 以 体 ト. テ 終 ニケ リ 。 摩 障 ノ到 ス 処 力 。 ︻臨 終 摩 障 ノ 事 ︼. 界 ノ衆 生 ノ為 ナ リ シ カ ハ、 広 大 ノ 慈 心 二答 ヘテ 一鉢 ノ飯 十 二 由. 古 キ 物 語 ニ モ、 道 念 ア リ ケ ル僧 世 二落 テ妻 ヲ カ タ ラ ヒ 、 庵 室 二 籠 リ 居 テ妻 二知 ラ レズ シ テ持 仏 堂 二入 、 端 座 シ テ 目 出 度 終 リ ニ. 旬 ノ大 会 二供 養 セ シ ニト ボ シ カ ラ ズ 。 人 天 大 会 、 異 口同 音 二、. ﹁南 無 純 陀 、身 ハ人 身 也 ト イ ヘト モ 心 ハ仏 心 二同 ﹂ト ホ メ ケ リ 。. ケ ル ヲ 、 妻 後 二見 付 テ、 ﹁ア ラ ロ 惜 。 拘 留 孫 仏 ノ 時 ヨリ 付 添 テ. 又 天 竺 二王 ノ 后 有 テ 、 慈 悲 深 ク シ テ 一切 ヲ 哀 ミ 三 宝 ヲ敬 ヒ 玉 ピ. 取 ツ メ タ リ シ 者 ヲ 逃 シ ツ ル﹂ ト テ 、 恐 敷 気 色 二成 テ 手 ヲ 打 テ 飛 (20 オ ) ウ セ ニケ リ 。 発 心 集 二侍 ル。 大 論 二日 、 臨 終 ノ 一念 ハ. ニ、 后 少 モ怨 ル色 ナ シ 。 弥 々慈 悲 起 シ テ 王 ノ 邪 見 ヲ 哀 レ ム ニ、. ケ ル ニ、 国 王 邪 見 ニシ テ 是 ヲ ソ ネ ミ 、 弓 ヲ 引 テ 后 ヲ 射 玉 ピ ケ ル. 矢 返 テ 王 ノ胸 二立 テ 死 ス。 世 ノ 諺 ニ モ、 瞑 拳 ハ不 レ打 笑 面 ト イ. 百 念 ノ 業 ニス ク レ タ リ ト イ ヘリ 。 阿 脅 陀 王 ト 云 シ 国 王 ハ善 人 ニ. 発 シ テ 死 シ テ 大 蛇 二生 レ テ、 迦 施 延 二逢 テ 此 由 ヲ 語 リ ケ リ 。 一. テ 在 シ ケ ル カ 、 臨 終 ノ時 看 病 ノ者 扇 ヲ 顔 二落 シ ケ ル ヲ、 瞑 悉 ヲ. 生 五 戒 ヲ 持 セ ル優 婆 塞 、 臨 終 二妻 ヲ 憐 ム愛 習 在 ケ ル ガ 、 妻 力 鼻. ︻智 者 ヲ コ ﹀ ロ ミ ル事 ︼. ヘリ 。 (2ー オ ). 昔 漢 土 二国 王 有 テ 、 天 下 ノ智 者 ヲ 試 ン ト テ 百 人 ノ高 僧 ヲ 内 裏 へ. ノ 中 ノ 虫 二生 レ タ リ 。 又 一生 ノ悪 人 モ臨 終 二口 口 ロ ニ逢 テ 勇 猛. ヲ 祈 ル事 也 。. 請 シ テ 、 武 士 ヲ 数 百 騎 隠 シ 置 テ 百 僧 ヲ 俄 二殺 害 ス ヘ キ体 ニカ コ. 二念 仏 シ テ往 生 ス ル事 、 観 経 下 品 下 生 ノ如 シ。 此 故 二臨 終 正 念. ○ 光 明 后 宮 ノ 内 裏 ノ 屏 風 二書 玉 ヘ ル ト 也 。 ﹁清 貧 ハ常 二楽 、 濁. ハガ ス シ テ撮 然 ト シ テ 座 ス 。 事 ノ色 バ カ リ ニテ ヤ ミ ヌ。 王 此 僧. ミ ケ レ ハ、 皆 ア パテ サ ワギ テ 四 方 へ逃 去 ル ニ、 一人 ノ僧 少 モ サ. 二間 玉 フ ハ ﹁余 ノ 僧 ハ皆 恐 レ サ ル。和 尚 一人 何 ゾ 恐 レ ザ ル﹂ ト 。. 右沙 石集 ノ三 四ノ取意 也. 富 ハ常 憂 ﹂ ト 。. 梵 網 経 二、 一切 ノ畜 類 ヲ 見 ン時 ハ、 汝 是 畜 生 発 菩 提 心 ト 云 ヘ シ. 僧 ノ 日 ﹁生 レ ル ヨリ 念 々 二死 ス 。 何 ゾ 始 テ 驚 ン﹂ ト 。 愛 二王 、. ﹁此 僧 ハ智 者 也 ﹂ ト テ 崇 テ 国 師 ト セ ラ レケ リ 。 生 ノ 始 ヨリ 死 ノ. ト 説 玉 フ。 下 劣 ノ有 情 、 タ ト ビ領 解 ナ ク ト モ、 法 音 毛 孔 ヨ リ 入 テ 遠 ク 菩 提 ノ 因 縁 ト ナ ルト イ ヘリ 。 ( 20 ウ ). 一62一.

他 国 へ行 テ 年 タ ケ テ 後 古 郷 へ帰 ル ニ、里 人 ﹁昔 ノ 人 ノ 来 レ ル ヤ ﹂. 来 ル事 ヲ 知 ラ ス 。 何 ゾ 敢 テ 無 常 ノ 死 ヲ 恐 レ ザ ラ ン。 昔 梵 士 有 テ. 山 の 端 に 影 か た む き て悔 敷 は 空 し く す ご す 月 日 な り け り. 浦 山し いか なる空 の月 なれ は心 の侭 に西 に行 らん. 貫 之 病 重 ク シ テ 心 ヨ ハリ ケ ル 時 読 シ歌 也 ト拾 遺 ニ ア リ 。. 其 後 歌 ヲ 読 玉 ピ ケ リ 。 近 代 ノ 集 ニ モ此 歌 見 へ侍 リ 。 最 此 歌 ハ、. 恵 心僧都. ル事 ヲ ハ知 テ年 二随 テ身 ノ去 ル事 ヲ 人 知 ラ ズ 。. ト 云 二、 ﹁我 ハ昔 ノ 人 二似 テ 昔 ノ 人 二非 ズ ﹂ ト イ ヘリ 。 年 月 去. 昔 道 林 禅 師 秦 望 山 ノ 松 ノ 上 二居 シ 玉 フ ニ、 時 ノ 人 鳥 案 和 尚 ト 名. キ事 ヲ 祈 申 ケ ル ニ、 娘 ハ歩 ミ ツ カ レ テ 宵 ヨリ 通 夜 ラ 打 伏 シ テ休. 洛 陽 二貧 ク 世 ヲ 渡 ル若 キ 女 有 テ 、 母 ヲ 具 シ テ 八 幡 へ詣 テ 身 ノ貧. 古 人 ノ 言 二、 老 来 テ初 ア 莫 レ学 レ道 、 古 墳 多 ハ是 少 年 ノ人 。. 或上 人老 後述懐. ク 。 白 居 易 其 国 へ下 テ行 テ問 テ 日 ﹁禅 師 ノ 居 処 危 ク コソ ﹂ ト 。. ︻無 常 ノ 事 ︼. (2ー ウ ) ノ 危 キ 事 、 是 ヨリ. モ 甚 シ ﹂ ト 云 。 白 居 易 力 日 ﹁某 二何 ノ 危 キ 事 力 侍 ン 。﹂ 師 ノ 日. ミ ケ リ 。 暁 二母 驚 シ テ 、 ﹁如 何 ニ サ シ モ思 ヒ立 テ詣 テ タ ル ニ、. 師 ノ 日 ﹁吾 何 ノ 危 キ 事 力 有 ン。 其 許. 思 フ事 能 々 祈 リ 申 玉 へ。心 安 モ打 ト ケ テ 休 ム 者 カ ナ ﹂ト イ ヘ ハ、 返 事 二、. ﹁薪 火 相 交 リ識 性 不 レ停 。 何 ソ 危 キ 事 ナ カ ラ ン 。﹂ 侍 郎 ガ 日 ﹁如 何 ナ ル カ 是 仏 法 ノ 大 意 。﹂ 師 ノ 日 ﹁諸 悪 莫 作 、 衆 善 奉 行 ﹂ ト 。. 身 のう さは中 々何 と石清 水 おも ふ心 は汲 てし るらん. いか に せ ん 行 へき 方 も お ぽ ほ へず 親 に先 た つ道 を し ら ね ば. 小 式 部 ノ 内 侍 重 病 ニテ 心 ヨ ハク 覚 ケ ル時 、 母 ヲ 見 テ 声 ノ 下 二、. (22 ウ ). 下 向 ノ 時 道 ニテ 殿 上 人 ニ マミ へ、車 ニノ セ テ ツ レ行 玉 フ ト ナ リ 。. 。 何 ソ 無 常 ヲ 忘 ン ヤ。. 侍 郎 力 日 ﹁三 歳 ノ咳 児 モ 如 レ此 ハ シ レ リ ﹂ ト 。 師 ノ 日 ﹁三 歳 ノ. 弁く. 弦 児 モ 云 事 ヲ ウ レ ト モ、 八 十 ノ 翁 モ 行 事 不 レ欲 ﹂ ト ノ 玉 フ。 可. ︻歌 ノ 徳 ︼. ト叫玉 フ。. 大 江 ノ挙 周 病 重 シ テ頼 ミ ナ カ リ ヶ リ 。住 吉 ノ 御 タ ︾リ 也 ヶ レ ハ、. 天 井 二感 ス ル 声 有 テ 、 神 明 ノ 御 助 ニヤ 、 ﹁汝 力 病 ハイ ヘ ニ ケ リ ﹂. 母 赤 染 衛 門 祈 誓 申 テ ﹁我 命 ヲ 召 シ テ 彼 ヲ 助 ケ 玉 へ﹂ ト 祈 リ 申 テ. 恵 心 僧 都 ハ修 学 ノ外 他 事 ナ ク 道 心 深 キ 人 也 ケ レ ハ、 狂 言 綺 語 ノ. ハ所 詮 ナ キ者 也 。 ア レ体 ノ者 ア レ ハ余 ノ 児 共 モ見 学 ブ 。 明 日 ハ. ル ア リ 。 ﹁児 共 ハ学 問 ナ ン ド ス ル事 コ ソ本 意 ナ ル ニ、 和 歌 ヲ 好. か わ ら ん と 祈 る命 は お し か ら で 籾 も 別 れ ん 事 そ か な し き. 此 歌 ヲ書 、 御 社 二奉 ル 。. 徒 ヲ悪 マ レ ケ リ 。 弟 子 ノ 児 ノ 中 二朝 夕 心 ヲ ス マ シ テ 和 歌 ヲ 詠 ス. 里 ヘヤ ル ヘシ ﹂ ト 同 宿 二能 々 申 含 メ ラ レ ケ ル ヲ モ 知 ラ ス、 月 サ. 其 夜 白 髪 ノ老 翁 来 テ 、 ﹁此 幣 ヲ 取 ﹂ ト 打 笑 ミ 玉 フ ト 夢 見 テ 病 癒. ヘテ物 静 ナ ル ニ夜 更 テ縁 二立 出 テ 手 水 遣 フ ト テ 、彼 ノ 児 ノ 歌 二、 手 に む す ぶ 水 に や ど れ る 月 影 の有 か な き か の 世 に も す む か な. ニケ リ 。. ノ前 ノ 桜 ノ 花 ヲ 一ト 枝 折 テ 逃 ケ ル ヲ 、 主 見 付 テ ﹁ア ノ 法 師 ヲ ト. 家 隆 卿 ノ 子 息 隆 尊 禅 師 、 坂 東 修 行 シ テ歩 キ ケ ル ニ、 或 地 頭 ノ 家. (22 オ ). ケ レ ハ、 歌 ハ道 心 ノ シ ル ベ ニモ ナ ル ヘキ 者 也 ト テ 此 児 ヲ 止 メ、. 僧 都 是 ヲ聞 テ 、 折 節 ト 云 、 歌 ノ 体 ト イ ﹀、 心 肝 ニ ソ ミ テ哀 レ也. 一63一.

白 浪 の名 を は た つ と も 吉 野 川 花 ゆ へ沈 む身 を ば う ら み じ. 禅 師 不 祥 ニア ヒ テ詮 方 ナ カ リ ケ レ ハ、 ﹁ 殿 二斯 申 伝 へ玉 へ﹂ト テ 、. ラ ヘ ヨ﹂ ト ノ ﹀ シ リ ケ レ ハ、 人 々 ヲ ハ ヘテ カ ラ メ ヶ リ 。 ( 23 オ ). 或 卿 相 石 見 ノ 国 ノ国 司 ニ テ 石 見 方 ニテ 遊 ヒ 玉 ピ ケ ル ニ、 国 ノ習. 其 児 此 歌 ニ メデ ︾又 元 へ帰 リ 、 互 ニワ リ ナ ク 侍 リ ケ リ 。. い か に し て 詞 の 花 の 残 り け ん う つろ いは て し 人 の 心 に. ト テ 召 レ ケ ル ニ、 皆 逃 ケ ル ヲ 雑 色 ト モ走 リ 廻 テ少 々 ト ラ ヘテ参. ﹁慰 二召 シ テ 唄 ハセ 聞 シ 召 セ カ シ﹂ ト 申 ヶ レ ハ、 ﹁サ ラ バ 召 セ ﹂. リ 、 又 酒 ナ ン ド ヲ 賜 テ 唄 ハセ ケ ル ニ、 逃 散 タ ル海 人 ト モ愛 彼 コ. ニ テ カ ツギ ス ル海 人 共 ヱ モ ( 2 4 オ )云 レ ン歌 ヲ 唄 ピ ケ ル ヲ 、人 々. 又 彼 ノ禅 師 初 テ 修 行 セ ン ト テ 、 同 行 一人 具 シ テ 都 ヲ 出 テ 江 州 ノ. ニ群 リ 居 テ 聞 ケ ル中 二、 十 七 八 斗 ナ ル女 ノ ミ メ貌 チ 下 郎 ニ モ ナ. ト イ ヘ ハ、 ﹁縄 ヲ ハ解 、 唯 具 シ テ コ ヨ ﹂ ト テ 取 留 テ. 或 里 二行 暮 テ宿 カ ル ニ、 惣 テ カ ス モ ノ ナ シ。 詮 方 ナ ク 或 小 家 ノ. ク 宜 敷 見 ヘケ ル カ 、 小 侍 ヲ 一人 招 キ ヨ セ テ 、 ﹁ア ノ 御 前 二候 歌. 使 シカ<. ア ヤ シ ケ ナ ル ニ立 寄 テ、 日 モ 暮 ニケ レ ハ押 入 テ 夜 ヲ 明 シ 朝 出 ヶ. 仕 女 共 二斯 申 ヨ シ 伝 テ タ ビ 給 へ﹂ ト テ 一首 ノ歌 二、. 様 々 モテナ シ、歌 ナト学 問 シケ リ。. ル ヲ 、 主 呼 留 テ サ シ ダ シ タ ル ヲ見 レ ハ、 折 敷 二紙 打 敷 テ 稗 ノ飯. 音 ナ シ 川 ト 云 所 二梅 ノ 花 ノ 盛 ナ ル ヲ 見 テ 読 ケ ル。. ( 24. 後 嵯 峨 ノ 法 皇 ノ熊 野 詣 有 ケ ル時 、 伊 勢 ノ 国 ノ夫 ノ中 二、 本 宮 ノ. ル者 也 。. ウ ) 君 達 ア マタ 出 来 、 目 出 度 カ リ ケ リ 。 人 ノ 心 ハ ヤ サ シ カ リ ケ. ヲ歎 キ 申 ケ レ ハ、 父 母 共 二具 シ テ上 リ 給 ヒ テ御 台 所 ト 成 テ. 召 ニケリ 。 ﹁ 都 へ具 シ テ 登 ン﹂ ト 仰 ラ レ ケ ル ヲ 、 父 母 二離 ン 事. ト申 テ カ ヒ シ 参 セ ケ レ ハ、 イ ト ﹀色 マ サ ツ テ哀 二思 給 テ 、 頓 テ. 紫 の 雲 の 上 着 も な に か せ ん か つぎ の み す る 海 士 の 身 な れば. ト重 ネ給 ピケ ルヲ、. 此 事 ヲ 披 露 シ ケ ル ヲ 上 ニモ 聞 玉 ヒ テ 、 御 感 ノ余 リ ニ紫 ノ 衣 ヲ 一. も ろ と も にあ さ り し 者 を 浜 千 鳥 い か に雲 ゐ に た ち の ぼ る ら ん. ヲ 置 タ リ ケ ル 紙 二何 力書 付 タ ル ヲ 見 レ ハ、 数 な ら す いや し き 草 の実 な れ ど も これ に そ か く る 露 の い の ちを ト 畷 佗 人 の命 を か く る 草 の実 と き け ば 涙 の露 そ こ ほ る ︾ 或 蔵 人 子 ヲ山 へ登 セ タ リ ケ リ 。 ミ メ 形 宜 敷 児 也 ケ ルガ 、 里 へ下 リ タ ル ニ寺 法 師 ス カ シ (23 ウ ) 取 テ 寺 ニヲ キ ケ リ 。 山 僧 此 由 ヲ. 承. 聞 テ、 ﹁口惜 ﹂ ト テ 大 衆 憤 リ 置 テ 師 匠 二事 ノ 子 細 ヲ 問 二、 ﹁児 共. ノ里 二久 ク候 事常 ノ習 ト存 ル也。 三 井寺 二候 ラ ン事 ツヤ<. リ 及 ハズ 。 先 ツ 状 ヲ 遣 テ 見 候 ハ ン﹂ ト テ 、 紙 ト 硯 ヲ 取 寄 テ斯 ゾ イ ﹀ヤ リ ケ ル 。 山 の端 に待 を ば し ら て 月 影 の ま こ と や 三 井 の 水 に す む と は 寺 法 師 是 ヲ 感 シ テ 、 ﹁秀 歌 返 事 ナ シ﹂ ト テ 子 細 ナ ク 山 へ送 リ カ. 音 無 に 咲 初 め に け る梅 の花 匂 は さ り せ は い か て し ら ま し. シ 召 、 北 面 ノ 下 郎 二仰 テ 召 レ ヶ リ 。 馬 ニ テ ア チ コ チ 打 廻 テ 、. 夫 力 歌 ニ ハイ ミ シ キ 秀 歌 ナ ル ヘシ。 此 事 ヲ御 下 向 ノ 時 道 ニテ 聞. ヘシ ケ リ ト ナ リ 。. シ タ ル中 二詞 華 集 ヲ 忘 レ タ リ ケ ル ヲ 見 出 シ テ 、 送 リ 遣 ス ト テ 元. ﹁本 宮 ニ テ 歌 読 ヶ ル夫 ハ何 レゾ ﹂ ト 問 ケ ル ニ、 ﹁是 コ ソ 件 ノ 夫. 鎌 倉 二或 僧 児 、 師 怨 ル 事 有 テ 他 ノ僧 房 へ行 ケ ル ニ、 諸 道 具 取 落. ノ師 、. 一64一.

ニ テ 候 へ﹂ ト ソ バ ニ テ 人 申 ケ レ ハ、 ﹁仰 也 。 参 ヘ シ ﹂ ト イ ﹀ ケ ︻ 人 感 ノ歌 ︼. フ者 、 世 ヲ 渡 ル 事 ヲ得 ト 。. ヲ メ シ下 シ テ隠 シ ヲ カ レタ リ ケ ル ヲ 、 梶 原 三 郎 兵 衛 尉 所 望 シ テ. 古 鎌 倉 ノ 右 大 将 家 、 京 ヨリ ア ヤ メ ト 云 ハシ タ 者 ノ美 人 ナ リ ケ ル. レ ハ、 返 事 二、. ト 馬 ヨ リ 下 テ 具 シ テ 参 リ ヌ。 珠 ノ 子 細. 花 な ら は 折 て そ 人 の 問 ふ へき に な り さ が り た る身 こ そ つら け れ. セ テ 井 ベ ス ヘヲ キ テ、 ﹁此 中 ニ ア ヤ メ ヲ 見 シ リ タ ラ ハ賜 ヘ シし. 見 タ リ ケ レ ハ、 同 シ 齢 ノ 十 七 八 計 ナ ル 女 ノ美 ナ ル ヲ 十 人 装 束 サ. 返 事 ニモ 及 バ テ ヲ メ <. ( 25 オ ) 候 ヘキ ﹂ ト 申. 下 シ 文 ヲ 賜 フ 。 百 姓 ノ 子 ナ レト モ 歌 道 二心 ヲ 入 レ、 斯 ル 目 出 度. ル ヲ 、 彼 所 役 公 事 御 免 有 テ 永 代 ヲ 限 テ 子 孫 迄 違 乱 有 間 敷 由 ノ御. ニテ 候 者 養 程 ノ 御 恩 コ ソ 所 望 二候 へ﹂ ト 申 上 ケ レ バ 、 百 姓 也 ケ. 上 ケ レ ト モ、 ﹁ナ ド 分 二随 フ所 望 ナ カ ル ヘキ ﹂ ト 仰 ケ レ ハ、 ﹁母. 和 歌 ハ惣 持 ノ義 ニシ テ 陀 羅 尼 也 。 故 二鬼 神 モ 感 応 シ玉 フ。 邪 見. 騨. テ 、 ﹁ア レ コ ソ ﹂ ト 申 テ ヤ ガ テ 賜 リ ヌ。. ト イ ︾ タ リ ケ ル時 、 ア ヤ メ 顔 ヲ 赤 メ テ袖 ヲ引 ツ ク ロ ピ ケ ル ヲ 見. 薦 草 あ さ か の 沼 に茂 り あ へて いつ れ あ や め と 引 ぞ わ す ら ふ. ト被 レ仰 ケ レ ハ、 見 分 ケ 難 ク テ 、 (26 オ ). ﹁云 甲 斐 ナ キ身 ニテ 候 ヘ ハ何 事 ノ 所 望 力. ヲ聞 シ メ サ レ 、 御 感 有 テ ﹁何 事 ニテ モ 所 望 申 セ ﹂ ト 仰 下 サ ル 。. 幸 二逢 モ 歌 ノ徳 也 。. ト 。 施 主 二被 レ招 、 布 施 物 多 ク 貰 テ 夜 陰 二入 テ 帰 リ ケ ル ヲ 、 河. 洛 陽 二説 経 師 有 リ ケ リ 。 一説 二聖 覚 法 印 、 一説 ニ ハ清 水 ノ 法 師. ︻盗 発 起 ス ル 事 ︼. 杣 か た のま き の立 が れ枝 を な み 己 そ 白 き 雪 は た ま ら ず. 原 二盗 共 数 多 待 カ ケ テ 、 有 程 ノ者 皆 取 ケ リ 。 此 僧 思 ピ ケ ル ハ、. 群 諸 共 にかち わた りせ ん. 鎌 倉 ノ大 臣 殿 ノ 歌 二、. ノ者 モ心 和 キ ケ ル ハ歌 ノ 徳 也 。. もけ ふ の軍 に名 と り川. な る こ を は 己 か 葉 風 に任 せ つ ﹀心 と さ わ ぐ 村 雀 か な. 枯 木 ヲ雪 カ ト 見 レ ト モ唯 己 力 白 キ ナ リ 。 有 ト 思 ヘ ハ有 二似 リ 。. 信 心 ノ施 主 、 三 宝 二供 養 ス ル志 ヲ 以 施 物 ニサ ﹀グ 。 是 ヲ 以 仏 事. 煩 悩 悪 業 ノ 下 へ引. 大 納 言 為 家 卿 、 最 愛 ノ 女 二送 レ 玉 フ テ 彼 ノ 孝 養 ノ 願 文 ノ 奥 二、. ル事 、 悲 ク哀 二覚 テ 、 我 難 ニ ア ヘル事 ヲ ハ忘 テ 心 ヲ ス マ シ声 打. あ わ れげ に同 し煙 の立 そ わ で残 る お も ひ に身 を こが す か な (25 ウ ). 上 テ 日 ﹁何 ソ 電 光 朝 露 ノ小 時 ノ 此 身 ノ 為 二、 阿 僧 祇 耶 長 時 ノ 苦. ニ モ用 、 利 益 有 ン 事 二用 ベ キ ヨ シ 思 二、 此 賊 共 横 サ マ ニカ ス メ. 0 行基菩 薩 ノ御遺 誠 ノ文. 因 (26 ウ ) ヲ 造 ン ト ス ﹂ ト 大 音 ニ テ 三 返 詠 シ ケ ル ヲ、 心 ハ知 ラ. ト リ シ事 、 同 盗 ト イ ﹀乍 ラ 珠 二罪 業 重 ク シ テ悪 道 二入 ナ ン ト ス. 聖 衆 二有 サ レ ハ思 二随 フ伴 ナ シ 。 世 二随 ハ望 ア ル ニ似 リ 。 俗 二. 彼 髪 ヲ 以 梵 字 ヲ 縫 テ 供 養 ノ 願 文 ノ 奥 二、. 背 ケ ハ狂 人 ノ如 シ 。ア ナ ウ ノ 世 間 ヤ 。何 ル 処 ニカ 此 身 ヲ 隠 サ ン。. 二逢 玉 ヒ テ 、 何 事 ヲ御 心 ヲ ス マ シ テ 斯 仰 候 ゾ 。 抑 是 ハ何 ト 云 心. ネ ト モ何 ト ナ ク 貴 ク 覚 テ 、 此 盗 身 ノ 毛 モ ヨダ チ テ 、 ﹁是 程 ノ 難. 我 涙 か ﹀れ と てし も な で さ り し 子 の 黒 髪 を 見 る そ か な し き. 口虎 身 ヲ 害 シ 、 舌 剣 命 ヲ 断 ツ。 ロ ヲ シ テ 鼻 ノ如 ク シ ヌ レ ハ、 死. 浄 土 二有 ラ ザ レ ハ心 二叶 フ処 ナ ク 、. シ テ 後 モ讐 ナ シ 。 ロ ヲ 守 、 心 ヲ 棲 シ テ 身 二犯 ス事 勿 。 如 レ 此行. 一65一.