Kigyo soshiki niokeru togoteki na kiki kanri
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(2) 107 2005年3月17日掲載承認. 三田商学研究 第48巻第2号 2005年 6 月. 企業組織における統合的な危機管理. ピーダーアナンタスク,チャテイー 要. 約. 本稿では,危機管理を統合的なプロセスとしてとらえるために,比較経営論,戦略的イシューの 診断についてのパースペクティブを取り入れ 察しようとしている。統合的な危機管理の概念は, なぜ企業組織は,それぞれに危機のイシューに対して異なる解釈と対応方法をとるのかについての 理解に資すると えられる。更に,危機管理とリスク・マネジメントの間には,それら定義におい て明確な境界線が存在しなかった。もし企業組織が,危機管理をリスク・マネジメントと近い見方 で捉えているとすれば,危機のような確率が低い事象を予防し得ないことになろう。なぜならば, 起こる確率が低ければ,リスクが低いと言う意味に捉えられがちである。しかしながら,危機とは 起こる確率は低いが,多大な影響力のある事象を意味するものと位置づけられる。したがって,リ スク・マネジメント概念と危機管理概念を区別することが重要となる。 キーワード リスク,危機,危機の分類,リスク・マネジメント,危機管理,経営者の道徳観,危機利害関係 者,戦略的イシューの診断. 1.はじめに. 一般的に危機管理プロセスは,発生した危機に対応するプロセスとして捉えられている。しかし, 危機管理プロセスを損害の抑制プロセスとして捉えるだけでは十分ではなく,危機の予防・損害の 抑制のための対応・再発防止のための学習プロセスとして えるべきである。なぜなら企業組織は, リスクが危機に変容しうるということを認識できれば,危機が発生しないように予防することがで きるからである。また,危機が再発しないように危機の経験から学習して,効果的な危機の予防方 法を開発できるからである。 従って,企業組織における全体的な危機管理プロセスを 察するためには,危機の予防・損害の 抑制・再発を防止するための学習,といった三つのプロセスを統合的に える必要がある。.
(3) 108. 三. 田. 商 学 研. 究. また,利害関係者に関わる影響に対して,経営者の態度が異なれば,経営者は危機に対して異 なった行動を選択するかもしれないと えられる。そこで,本稿では比較経営論,戦略的イシュー の診断についてのパースペクティブから,何故,企業組織は危機のイシューに対して異なった解決 と行動を選択するのかについて説明しようとしている。これらのパースペクティブを援用すること によって,異なった環境で行動する企業組織はもちろん,同一環境にある各々の企業組織でも危機 に対する予防・対応・学習方法が異なることを明確にするのに役立つと えられる。 そして,これらのパースペクティブを統合し,統合的な危機管理のフレームワークを提示する。 最後に本稿は三菱ふそうトラック・バスの隠ぺい事例を取り上げ,このフレームワークを明確にし ようとしている。. 2.危機. まず,リスクと危機は意味を異にするということを明確に理解するべきである。リスクと危機の 意味の違いを明確にすることによって,リスクと危機の管理方法がどのように異なるのかについて 理解できるからである。リスクと危機の違いを明確にするため, 不確実性」という概念と比較し ながら議論したい。 1). Knight は,人は未来に対して不完全な知識しか持ちえないので,かならずしも完全に結果を予 測することができないと指摘している。Knight はリスクと不確実性の違いを示すために,客観的 な確率と主観的な確率という用語を用いて説明している。人は未来に対して不完全な知識しか持ち 得ないことから,リスクは,期待から逸脱した結果,もしくは損失の発生する可能性がある事象で 2). あり,また不確実性とは,客観確率によって予測することができず,発生の予測は個人の感性によ るものであり,その意味で人によって異なり,ある人にとっては時間によっても異なるものといえ 3). る。リスクと不確実性の違いは,客観的な様相であるか主観的な様相であるかの違いであるが,危 機は,リスクとも不確実性とも異なる事象であると えられる。 危機の定義は,多くの論者の間で合意に達していない。どのような事象が危機であるかを判断で きるよう,危機という用語の定義について明らかにしておく必要がある。 例えば,Hermann によれば,危機とは,①意思決定陣の重要な目的を脅かす,②意思決定をす 4). る前に,対応する時間がわずかしかない,③意思決定陣を驚愕させるような事象とされている。 これらの事象の中には,外国為替相場のように日常的変化として捉えられる場合もあり,危機と. 1) 2) 3) 4). Knight(1921), pp.197-199. Wilczynski(1973), p.50. Pfeffer(1956), p.41. Hermann(1972), p.13..
(4) 109. 企業組織における統合的な危機管理. 見なされないものもある。しかし,危機は稀な事象であり,起こる確率は低いが,システム全体を 5). 6). 混乱させるような強い影響力を持ち,すべてを予測することができないものであるといえる。この 意味で危機は,企業の生存を脅かし,迅速な意思決定や対応を必要とする事象にほかならない。 危機の分類 7). M ahon とCochran は危機をその原因に基づいて次のように分類している。 1.経営上や技術上の誤り,あるいは管理運用規定における失敗も含む企業組織的な活動あるいは 不活動によって生じるもの 2.外的な環境において,長期的におおよそ予想可能なトレンドから生じるもの 3.企業組織の過失ではない外部の活動や状況により生じるもの 4.天災 このように危機には様々な種類があり,その原因は各々異なる。しかし危機は不特定で起こり難 い事象であり,システム全体を混乱させるような強い影響を持つ事象と えることが出来る。. 3.リスク・マネジメントと危機管理. これまでの論述を踏まえて,リスク・マネジメントと危機管理の相違について検討を試みたい。 リスク・マネジメント 一般的にリスク・マネジメントは,純粋なリスクに焦点を当てている。純粋なリスクは,期待か ら逸脱し,損失の発生の可能性を引き起こす客観的な状態を指すものである。従って,リスク・マ ネジメントの目的は,純粋なリスクから生じる損失によって,経営目標の追及が妨げられないよう 8). 保証することにある。 リスク・マネジメントのプロセスは,まず純粋に損害をうけるようなすべての脅威を認識し,損 9). 害の潜在的な頻度と厳しさを評価することに始まる。次に,適切なリスク・マネジメントの手段 (回避,損害のコントロール,保有,ヘッジ,保険,多様化,協力:戦略的アライアンス,加盟団体の取締 10). 役連携)を選択する。そして,その手段を実行し,最後に出来る限りリスクを減らすために,リス 11). ク・マネジメントの手段の評価と再検討をする。. 5) Weick(1988),p.305;Shrivastava et al.(1988),p.288;Pearson and Clair(1998),p.60;Pauchant and Mitroff(1992), p.12. 6) Barton(1993), p.6. 7) Mahon and Cochran(1991), p.161. 8) Vaughan and Elliott(1978), p.32;Trieschmann and Gustavson(1998), p.14. 9) Rejda(1998), p.42. 10) Trieschmann and Gustavson(1998), pp.104-117;Pfeffer and Clock(1974), pp.212-215;Rejda (1998), pp.12-14;Miller(1992), p.323. 11) Vaughan and Elliott(1978), p.35..
(5) 110. 三 図1. 商 学 研. 究. 3つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階. 事前行動的な危機管理. 前兆の発見. 田. 危機. 事後行動的な危機管理. 封じ込め╱. 準備と予防. 損害の防止. 平常への復帰. 学習 相互作用的な危機管理 出典:Thierry C. Pauchant and Ian I. M itroff(1992), Transforming the crisis-prone organizations: Preventing individual, organizational, and environment tragedies,p.135,San Francisco:Jossey-Bass.. 従って,リスク・マネジメントは,発生し得る純粋なリスクを認識・評価し,手段を選んで実行 したうえで,リスクを予防,制御するために実行策を再検討するという一連のプロセスといえよう。 危機管理 ここでは,危機が与える影響への対処,あるいは予防する手段である危機管理の特徴について議 論し,危機管理とリスク・マネジメントの区別を試みることとする。 危機管理研究において,既に発生した危機への対応プロセスだけに焦点を絞る え方は,狭い 12). え方であるかもしれない。実際には,企業組織が早期に前兆に気付き,問題に対処することができ 13). れば,そのような問題を危機へと拡大させずにすむ。 Pauchant と Mitroff は,全体的な危機管理努力を説明するため「3つの重要な危機管理タイプ と5つの危機管理段階」を示している。図1に示されているように,ほとんどの危機に対して,5 つの主な危機管理段階(前兆の発見,準備と予防,封じ込め/損害の防止,平常への復帰,学習)がある。 危機が生じる前に予防する,生じている間に対処する,あるいは危機が終わった後に学習して,効 率的な危機管理を実施するために,企業組織はこれらの5つの危機管理段階を理解するべきである 14). としている。 このことから企業組織は,早期に前兆に気付き,問題が次第に拡大して危機になることを予防す ることができれば,危機を回避することができると えられる。予防のプロセスは,危機が発生す る前に実行されるため,Pauchant と Mitroff はこのプロセスを「事前行動的な危機管理」(危機管 理タイプ1)と呼んでいる。しかしながら,ある危機は避けられない,あるいは企業組織は危機を. 12) Weick(1988), p.314. 13) Fink(1986), pp.21-22;Weick(1988), pp.314-316. 14) Pauchant and M itroff(1992), p.135..
(6) 111. 企業組織における統合的な危機管理. 予防し損なうかもしれない。このような場合には,危機が発生した後に,企業組織はこれらの危機 に対応し,損害の拡大を防ぎ,できるだけ早く平常へ復帰できるように試みることが大切である。 このプロセスは危機が発生した後に実行されるため,彼らは「事後行動的な危機管理」(危機管理 タイプ2)と呼んでいる。そして企業組織は,危機の中から,早期の前兆の発見と危機に対応する. 能力を伸ばす方法を学習できるとし,このことを「相互作用的な危機管理」(危機管理タイプ3)と 15). している。 もし企業組織が,事象が危機を引き起こす時の事後行動的な危機管理のみに焦点を絞っており, 適切な対応方法を前もって準備しておかないと,危機の最中にその企業組織はパニックに陥りやす い。それに加えて,予防手段が無い場合,あるいは,効果的でない既存の危機対策が修正されない 場合は,おそらく危機は再発するであろう。従って,事前行動,事後行動,相互作用という3つの 危機管理タイプを統合すれば,企業組織における全体的な危機管理努力を説明することができる。 しかし,危機管理とリスク・マネジメントは両方共に事前行動,事後行動,相互作用プロセスを持 つ。これまで,危機管理プロセスとリスク・マネジメントのプロセスの間には明確な境界線がなく, しばしば混乱して使われてきた。そこで,危機管理とリスク・マネジメントの相違を改めて明らか にする必要がある。 リスク・マネジメントと危機管理の関係 リスク・マネジメントは損失の発生する確率に基づいてリスクを計算し,発生する確率が高い事 象を回避することに努力することを意味している。しかしリスク・マネジメントでは,損失は大き くとも,発生する確率が低い事象は無視されるかもしれない。一方,危機は,不特定で起こり難い 事象であり,過去の経験に基づいて危機の発生する確率を計算することは難しい。従って,確率計 16). 算に基づくリスク・マネジメントでは,危機の事象に備えられないことになる。このような危機が 発生すると,損失が予想を上回って企業組織を脅かすので,企業組織は迅速な意思決定を強いられ ることになる。リスク・マネジメントによる対応に失敗したとき,突然の不測の脅威に対処する上 17). で,危機管理は重要なマネジメント手段になる。例えば,火災による損害を少なくするために工場 に保険をかけるとする。しかし,火災が発生し予想を上回って工場が全焼してしまったとしよう。 その場合,火災被害分の金銭的な損害賠償は保険でカバーできるが,工場を平常の操業へと復帰さ せるまでの機会損失は保険適用外となる。このような場合,出来る限り早く工場を平常に復帰させ, そして出来る限り損失を減らす手段となるのが危機管理である。 18). 危機が発生したとき,企業組織は通常の経営手段で危機に対処することでは不十分である。危機. 15) 16) 17) 18). Ibid., pp.134-140. Ibid., pp.93-94. Chapman and Ward(1997), p.11;M uller(1985), p.38. Lagadec(1993), p.37..
(7) 112. 三 図2 リスク・マネジメント 企業組織は確率で損失可能 性を計算する,企業組織の 目標を達成するため,損失 を最小限にしようとする。. リスク・マネジメント. 田. 商 学 研. 究. リスク・マネジメントと危機管理 リスク・マネジメント によって損失が減少さ れ,また損失が予想以 内にとどめることがで き,危機は発生しない。 前例が無いケースが発 生し,リスク・マネジ. 損失が予想を上回り, 危機が突然,発生する。. メントが失敗する。. 危機. 危機. 危機管理 事前行動的な危機管理 企業組織と利害関係者に影響が及ぶので迅速意思 決定が必要な危機の前兆を発見すると,企業組織 は,危機を回避するための予防メカニズムを開始. 事後行動的な危機管理 企業組織は危機から出来る限 り損失を最小限に食い止めよ うとし,また,出来る限り早. する。. く,平常へ復帰しようとする。. 相互作用的な危機管理 企業組織は危機の経験から,事前行動的な危機管理から学 習し,危機の回避するための危機対策を改善する。あるい は,危機から生ずる損失を出来る限り最小限に抑える。. 管理の主要な特徴は,出来る限り多くの損失に対処し,また出来る限り早く平常へ復帰することで あり,また,早期に前兆の発見と効果的な対策を改善し,危機が再発生しないように予防すること 19). である。以上から危機管理を次のような特徴を持つものと えることができる。 危機管理とは,既存の管理では適切に処理することができず,予測を超える不特定の脅威となる 事象を管理することである。そこでは,緊急の意思決定と対応策が必要となる。 図2はリスク・マネジメントと危機管理の相違を明らかにしたものである。リスク・マネジメン トは純粋なリスクの認識から始まり,起こる確率から損失の確率を測定する。従って,リスク・マ 20). ネジメントは,確率計算でき,起こる確率が高い事象のみに焦点を当てて予防することになる。リ スク・マネジメント・チームは,リスクを制御,回避するために,常時,リスクを監視している。 リスクから生じる損害を予想できるかぎり,迅速な意思決定,対応の必要性はない。しかしながら, 前例の無い事象が発生する,予想を上回る損害が発生する,リスク・マネジメントに失敗する,危 19) Nudell and Antokol(1988), pp.20-23;Mahon and Cochran(1991), p.162. 20) Pauchant and M itroff(1992), pp.93-94..
(8) 113. 企業組織における統合的な危機管理 21). 機が突然発生する,あるいは企業組織の生存が脅かされ既存の解決方法では対処できない等の場合 には,迅速な意思決定や対応が必要であり,さもなければリスクが危機に転じることになる。事後 行動的な危機管理とは,危機からの損失を出来るだけ最小限に食い止めようと対処することであり, そして出来る限り早く平常へ復帰するための手段である。 リスク発生に対する対処策を講じることによって危機を回避しうるケースもありうる。しかし, このような方策では回避できないケースが生じた場合,危機管理が必要になる。一旦危機が発生す ると,既存のリスク・マネジメントでは対処できないため,危機を制御するための危機管理チーム の設置が求められる。事態が制御可能になるまでこのチームの活動は続けられる。こうした危機の 経験を積んだ組織はその経験から学習し,危機が起こらないように予防策を講じることになる。こ のようにして企業組織は事前行動的な危機管理も同時に学習することによって,早期に危機の前兆 22). を発見する能力と危機の予防メカニズムを改善することになる。 危機管理とリスク・マネジメントのより具体的な意味は,後段の三菱ふそうトラック・バスの隠 ぺいケースを用いて改めて明らかにする。. 4.統合的な危機管理の多面的なパースペクティブからの新たなアプローチ 23). 前節で述べてきた3つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階によって,全体的な危機管 理努力についてのあり方を知ることができる。しかしながら,なぜ同じ環境で同じ危機に直面して も,各々の企業組織は異なった解釈や対処をするのかについて,これらの研究では説明が不十分で ある。そこで,なぜ企業組織における危機管理プロセスが異なるのかを明確にするために,いくつ かの主張を検討し,フレームワークを構築していくこととする。 比較経営論 24). 外的な環境要素だけでなく,経営者の理念もまた,マネジメント・プロセスに影響を与える。比 較経営論では,外的な環境要素(例えば文化,政治,経済)も含まれるが,本稿では,経営者が社会 と利害関係者に対してどこまで責任を持つべきか,という観点から経営者の理念に注目する。 経営者の道徳観と危機利害関係者に対する社会的責任 Carroll は,会社の全体的な社会的責任は4種類の社会的責任(経済,法律,倫理,慈善的責任) 25). によって構成されていることを示唆している。経済的責任と法律的責任は,公正や正当性に関する 倫理的な規範が具体化されたものであり,倫理的な責任は,たとえ法に編まれていなくても,社会 21) 22) 23) 24) 25). Chapman and Ward(1997), p.11;M uller(1985), p.38. Mahon and Cochran(1991), p.162. Pauchant and M itroff(1992), pp.134-140. Negandhi and Prasad(1971), pp.22-28. Carroll(1991), pp.40-42..
(9) 114. 三. 田. 商 学 研. 究. の構成員によって望まれる,あるいは禁じられる活動や業務も含むものである。そのうえ,良き企 業市民となるために,企業組織は社会の期待に対して慈善的責任ある行動をとるものとしている。 経済的,法律的,倫理的責任を遵守することが求められるが,しかしながら慈善的責任は自発的 な行動である。例えば,企業組織は社会に対して寄付をしなくても,倫理的でないとはみなされず, 危機を引き起こすとは えがたい。従って,企業組織の経営を安全に,合法的に,効率的に行ない, 26). そして,社会に与える影響を最小にする限り,社会的責任を持つ企業組織といえる。 ただし,経済的,法律的責任に関しては,社会から企業組織の果たすべき責任の範囲,ガイドラ インが明確に示されるが,倫理的責任に関するガイドラインは,明確に示されず,経営者によって 判断されることになる。 経営者の道徳観 27). Carroll は経営者と倫理という視点から,経営者を3つに類型化している。 1.不道徳的な経営者。それらの経営者は,法律的基準すら,望むことを成し遂げるために克服し なくてはならない障壁や障害とみなす。 2.道徳観念のない経営者。不道徳でも道徳的でもないが,自分たちが日々行う経営上の意思決定 が,他の人々に有害な影響を及ぼすかもしれないという事実に対して敏感でない経営者を指す。 専ら,彼らの方針決定は,倫理的な指針としての法律の条文に沿って行われる。 3.道徳的な経営者。水準の高い,正しい行為を堅く守るという倫理的な規範をもつ経営者を指す。 このような経営者にとって法律は最小限の倫理的な行動や,優先されるべきものとみなされる。 そして,法律が要求する以上のことを行うことが目標となる。. こうした経営者の道徳観が次に述べるような利害関係者への対応の姿勢に影響を与える。 危機利害関係者 利害関係者は企業組織の行動によって影響を受ける存在であると同時に,企業組織に大きな影響 を与える存在である。Freeman と Clarkson によれば,利害関係者とは企業組織において権限と 28). 合法性という属性を持つ集団である。しかしながら権限と合法性は利害関係者と経営者の関係を説 明するための核となる属性であっても,企業組織が利害関係者の緊急の要求に注意を払わないとき には,問題を生じることになる。従って,緊急性を含めて えるならば,利害関係者と経営者の関 係をより明確にできる。 29). M itchell,Agle とWood によれば,利害関係者の分類は,次の属性のいずれか,あるいはすべ. 26) 27) 28) 29). Marsden(2001), p.46. Carroll(1991), pp.44-45. Freeman(1984), p.25;Clarkson(1995), p.106. Mitchell, Agle, and Wood(1997), p.854..
(10) 115. 企業組織における統合的な危機管理. てを持っているかによって明らかにできると提案している。1)企業組織に影響を与える利害関係 者の権限,2)企業組織と利害関係者の関係についての合法性,3)利害関係者の企業への要求の緊 急性の三つである。ただ一つの属性だけでは利害関係者と経営者間の関係を特徴付けるには十分で はない。利害関係者が三つないし二つの属性を持つ場合,その利害関係者は経営者から見てかなり 30). 特徴のある利害関係者といえる。 三つの属性の一部あるいはすべてが存在するかどうかによって,利害関係者と経営者の関係を分 類することが,どの利害関係者が企業組織にとって重要であるかを理解するのに役立つ。企業組織 31). はいかにして利害関係者を管理し,処遇するかを承知していなければならず,利害関係者に対する 対処を間違うと危機が強まることになる。 経営者の社会的責任についての理念は,経営者の道徳観と危機利害関係者にどう対処するかとい う態度によって異なってくる。企業組織における経営者が危機のイシューに対して,対策を準備す るか無視するかは,経営者の解釈プロセスによって左右される。解釈プロセスは,経営者の道徳観 と危機利害関係者に対する態度という経営者の理念に影響されるからである。 戦略的イシューの診断 戦略的イシューという用語は,企業組織の戦略に潜在的な影響を与えうるが,意思決定の段階に 32). 達していない事象や兆候などを記述するために使われる。経営者たる意思決定者は,代替的な行動 案を開始するために,関連するデータを使用し,あるいは戦略的イシューを解釈するような新しい 33). データを形成する。このプロセスは,戦略的イシューの診断と呼ばれている。 戦略的イシューの診断は,企業組織が戦略的イシューを発見し,それからイシューの緊急性と対 策の実行可能性を診断しようとするところから始まる。企業組織の経営者は存在する運営方法が潜 34). 在的に効果のない不適当なものであるかどうか確認する。企業組織はより緊急のイシューに対して, 迅速に対応する傾向がある。そしてある緊急のイシューについて特定の解決方法がない場合は,イ シューの影響を最小限にするために,企業組織はそのイシューに対して,迅速に対応することにな ろう。 資源が制約されているため,企業組織はすべてのイシューに注目することはできない。そこで企 業組織は重要なイシューのみ注目して選択するであろう。そして重要なイシューによる影響を減ら 35). そうとし,重要ではないと判断したイシューを無視することにな る。経営者はイシューに対して. 30) Ibid., p.868-870. 31) Donaldson and Preston(1995), pp.70-75. 32) Ansoff(1980),p.133;Dutton,Fahey,and Narayanan(1983),p.308;Dutton and Duncan(1987), p.280. 33) Dutton, Fahey, and Narayanan(1983), p.310;Dutton and Duncan(1987), p.280. 34) Dutton and Duncan(1987), pp.282-283. 35) Dutton, Fahey, and Narayanan(1983), p.311..
(11) 116. 三. 田. 商 学 研. 究. 誤った解釈をする,あるいは誤って扱うと,そのイシューは危機に転化する。Mahon と Cochran は,企業組織にとって,あるイシューが危機に転化する原因には,2つの内容(①イシューの結果 36). あるいは影響,②企業組織の対応の選択肢)があると説明している。イシューの影響が大きいと判断. すれば,企業組織は計画を立て,適当な選択肢を選ぶことになり,危機は回避出来る。重要なイ シューをマージナルなイシューとして間違って解釈すると,意思決定を誤り,危機に陥ることに なってしまう。同様に,企業組織が多くのイシューを確認してもわずかな対応しかしないと,その イシューは危機になる傾向にある。しかしイシューがマージナルなものであれば,企業組織はそれ らのイシューを処理するあらゆる計画を止め,無視することになろう。 危機に見舞われやすい企業組織と危機対応型企業組織 経営者の道徳観と危機利害関係者に対する態度,戦略的イシューの診断の議論を踏まえ,何故同 一環境下の企業同士でも同じ危機に対して異なる対応をとるのかについて えてみたい。 経営者は社会と利害関係者に対する潜在的な影響と責任に基づいて,異なる行動の代替案をまと めるだろう。企業組織は社会と利害関係者に対して強い影響を与える緊急イシューに注目し,責任 がなく緊急的でないイシューには注目しない。従って,経営者によって異なる道徳観と危機利害関 係者に対する態度,それらに基づく戦略的イシューの診断次第で,企業組織は危機に見舞われやす い企業組織か,危機対応型企業組織になると えられる。 危機に見舞われやすい企業組織では,社内で危機は発生しない傾向にあると信じている。企業組 織は危機の状況に対して,適切に対処できる,あるいは危機は運命であり,コントロールできない と信じているので,企業組織は危機対策を準備しようとしない。この企業組織は潜在的な危機の影 響について,利害関係者を意識せず,社内の問題だけに注目する傾向がある。一方,危機対応型企 業組織は,危機が起こると,その影響は自企業組織内だけでなく複数利害関係者にも及ぶと認識し ている。このような企業組織では危機を予防して,危機対応の準備をすることに尽力することにな 37). る。. 5.統合的な危機管理のフレームワーク. なぜ,企業組織によって危機対策と危機の解釈が異なるのかを説明するために,本稿では, 3 38). つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階」の研究 (図1)を拡大して,比較経営論のパー スペクティブと戦略的イシューの診断のパースペクティブを加え,そして図3で示すような統合的 な危機管理プロセスのフレームワークを提示したい。 36) Mahon and Cochran(1991), p.164. 37) Pauchant and M itroff(1992), p.33, p.62;M itroff and Pearson(1993), p.13. 38) Pauchant and M itroff(1992), pp.134-140..
(12) 117. 企業組織における統合的な危機管理. 3つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階は企業組織における全体的な危機管理努力 (事前行動,事後行動,相互作用危機管理プロセス)を説明する上で重要である。しかしながら,この. 3つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階の研究だけでは,なぜ同じ危機に対して企業組 織は異なる対応をとるのかを説明することができない。そこで比較経営論のパースペクティブを加 えることによって,外的な環境要素,経営者の道徳観と危機利害関係者に対する経営者の態度が異 39). なることで,危機管理プロセスが異なってくるということを説明することができ る。戦略的イ シューの診断のパースペクティブを加えると,企業組織における異なる解釈プロセスと危機対応プ ロセスを説明するのに役立つ。 企業組織は危機のイシューになるような前兆を発見した後で,対応策を始めるか回避プロセスを 無視するか,いずれかの行動をとるべきか否かの解釈をすることになる。その解釈には外的な環境 要素と経営者の理念が影響を与えることになる。 外的な環境要素 社会経済,文化,政治,法律などの外的な環境要素は経営者の道徳観と危機利害関係者に対する 経営者の態度に影響を与える傾向がある。例えば,厳しい法規制がなされていれば,緩やかな法規 制の場合よりも,経営者は利害関係者への影響を低減させようとする傾向がある。 経営者の理念 まずは経営者の理念に基づいて,代替的な行動案が選ばれる。その理念について,本稿は経営者 の道徳観,危機利害関係者に対する経営者の態度と戦略的イシューの診断のリンケージに注目して いる。 経営者はイシューについて,責任を持つイシューに早期的な対処をする傾向がある。一方,責任 を持たないイシューや,危機利害関係者に対する影響のないイシューに対しては,経営者は無視す 40). るかもしれない。 道徳観念のない経営者と不道徳的な経営者は法律の条文に基づいて利害関係者に影響を与えるイ シューを予防するだろう。彼らは,法律に成文化されていないイシューが利害関係者に影響を与え るということに対して注意を払わないかもしれない。一方,道徳的な経営者は,法律で制定されて 41). いなくても,利害関係者に影響を与えるようなことに対し,予防しようとするであろう。 企業組織における経営者は,経営者の道徳観に対する彼らの態度をもとにして利害関係者に対す 42). る戦略的イシューの影響を解釈・評価す る。そして企業組織は行動を始める前にその戦略的イ シューに対して実行可能性のある解決方法を評価する。企業組織は,どのようなイシューが危機に. 39) 40) 41) 42). Negandhi and Prasad(1971), pp.22-28. Dutton and Duncan(1987), pp.283-284. Carroll(1991), pp.40-42. Dutton and Duncan(1987), pp.280-281..
(13) 118. 三. 田. 商 学 研. 究. 図3 統合的な危機管理のフレームワーク 外的な環境要素 (社会経済,政治,法律,文化). 経営者の理念 経営者の道徳観と危機利害関係者 に対する経営者の態度 戦略的イシューの診断 本質的なイシュー. 認識されないイシュー 診断の結果 マージナルなイシュー. 危機の予防 -危機管理の計画 -危機管理チーム -危機管理予算 -訓練 相互作用的な危機管理 −訓練,危機経験から 学ぶ,早期前兆を発 見や危機対策など改. 危機の予防策が無い. 危機 -企業組織の活動があるか無いか -長期間予想可能な外部環境のト レンド -外部の活動や状況 -天災. 対応の失敗. 対応の失敗. 善する。 事後行動的な危機管理 −損害の防止 -臨時的な危機管理対策チームを設置する -危機利害関係者 -危機コミュニケーション −平常へ復帰 -社会的なインフラストラクチャー╱企業組織の準備. なりそうなのかを確認できれば,初期に危機を予防することになろう。 危機のほとんどは,発生する前に何らかの早期の前兆がある。しかし,ある前兆は発見しにくく, 43). あるいは,企業組織はその前兆に気付かないことがある。早期の前兆を企業組織が認識できるかど 44). うかが,危機の予防が実現できるか,あるいは危機を引き起こしてしまうかの転換点となる。 43) Nudell and Antokol(1988), p.8;Fink(1986), p.21;Pauchant and M itroff(1992), pp.136-137; Lagadec(1997), p.25. 44) Fink(1986), p.21..
(14) 119. 企業組織における統合的な危機管理. 危機の予防 企業組織は本質的なイシューを認識して評価し,既存の対処手段ではこのイシューにうまく対処 できないと分かると,その危機の影響を予防するための対策を始めるであろう。潜在的な危機に対 して危機管理チームを設置し,危機管理の計画を作成し,予算の割り当てを行なう必要がある。 危機管理計画を作成する前に,まず誰かを危機管理チームに選任しなければならない。異なる危 45). 機は異なるチームを必要とするかもしれないからである。危機のときに企業組織が危機への対処の 権限をはっきり与えない場合,従業員は誰に責任があるのか疑問を抱く。その結果として,企業組 46). 織はタイムリーに危機対処や意思決定などを実行できないかもしれない。 危機が起こった時,企業組織は記者会見,法律面への対応,危機の犠牲者への対応など,危機に 47). 対処するために多額の出費が必要である。そこで,危機管理チームはトップマネジメント,あるい は危機発生の当該部門長及び広報部,総務部,法務部,財務部の部長達から成る。そしてチーム リーダーはトップマネジメントである場合もあるが,危機によっては部門長が担い,チームの活動, 48). 情報の流れ,そして対策の意思決定などを実行する。 さらに,企業組織は潜在的な危機に対処するために,危機対策の訓練を行う。したがって,危機 管理チームは,回避メカニズムを改善するために危機対策の訓練から学習する。 資源制約のもとでは企業組織はすべてのイシューに注目することは不可能である。企業組織はリ スク・マネジメント概念に基づいてイシューを解釈すると,損失の発生する確率が高いイシューに 注目する傾向にある。損失の発生する確率の低いイシューが,仮に結果として強い影響を持つイ シューになろうとも,無視してしまうことになる。従って,企業組織は損失の発生する確率が低い イシューを,マージナルなイシューとして診断することになり,既存の対処策で十分であると判断 49). してしまうことになろう。それに加え,企業組織によって認識されない潜在的な危機に対しても, 対処策を講じないことになる。マージナルなイシュー,あるいは認識されないイシューが危機に変 わってしまうと,企業組織は既存の対応手段で対処できなくなる。これらのイシューに対応するた めに,企業組織は事後行動的な危機管理を行うことになってしまう。危機の原因には,4つの分類 (企業組織の活動があるか無いか,長期間予想可能な外部環境のトレンド,外部の活動や状況,天災)があ 50). るが,例え危機の予防策を作ったとしても,その方法で実際の危機にうまく対処できる保証はな 51). い。従って,企業組織は危機の予防策を講じることができないとき,事後行動的な危機管理策をと. 45) 46) 47) 48) 49) 50) 51). Ibid., p.57. Nudell and Antokol(1988), p.42. Nudell and Antokol(1988), pp.33-38;Pauchant and M itroff(1992), pp.109 -114. Nudell and Antokol(1988), p.33. Milliken(1987), pp.139 -140. Mahon and Cochran(1991), p.161. Ibid., p.160..
(15) 120. 三. 田. 商 学 研. 究. らざるを得なくなる。 事後行動的な危機管理 企業組織は危機が予防できない場合,できる限り最小限に損害を抑制し,そしてできる限り早く 現状に復帰しようとする。 企業組織は危機の予防ができないとき,できる限り早く制御可能な事象に復しなければならない。 なぜなら,それは組織の存続を脅かすからである。危機管理の計画や危機管理チームなどを持ち, 危機に対してどのような順序で対応するかを認識している企業組織は,計画のガイドラインに従っ て,対策を実行する。 それとは逆に,危機対策のガイドラインを持ってない企業組織は,臨時的な危機管理対策チーム を設置して,事象に対処する。なぜなら,日常の管理チームは事象を適当に取り扱うことができな いからである。この臨時的な危機管理対策チームはトップマネジメントと危機に関する部門の部長 から構成される。ある事象は,社内資源による管理では手におえないので,そのイシューに取り組 むために,社外資源が求められる。例えば誘拐事件などのケースでは企業組織では対処ができない ので,人質を釈放してもらうために警察官に協力を仰がなければならない。危機管理チームと臨時 的な危機管理対策チームの役割は,各部門に権限委譲して,損害の程度を管理し,できる限り早く, 制御可能な事象に復することである。 いずれのケースでも危機が発生する時,企業組織には権限,合法性,緊急性という属性を持つ危 機利害関係者が常に存在する。経営者が利害関係者の重要性を判断する基準は,利害関係者がどれ だけそれらの属性を持つか,である。企業組織は,これらのグループに対して適切に対処する方法 に関心を払うべきである。危機利害関係者の管理を誤れば,危機を一層激しいものにしてしまうこ とになる。危機の時には,複数の利害関係者がおり,そこには社外だけでなく社内の人々もいる。 もし,社内ならびに社内と社外の間で効果的なコミュニケーションがとれなければ,混乱してさら 52). に危機を拡大させてしまうかもしれない。 そのうえ,例えば道路の幅員や消防・レスキューなどのような社会的なインフラストラクチャー の質と企業組織の準備は,危機対応の成功・失敗や復帰時間などに影響を与える。不十分な社会的 インフラストラクチャーと不十分な企業組織の準備は,事象をうまく処理できない原因となり,損 53). 害をより増加させ,平常への復帰までに時間がかかることになるであろう。 相互作用的な危機管理 企業組織は危機経験と危機訓練から学習し,正確な危機イシューと危機の影響を早く認識し,評 価し,いち早く危機に対応できるように前兆が発見できるように改善し,危機対策の方法を改善し. 52) Quarantelli(1988), pp.376-379;Lagadec(1993), p.209. 53) Shrivastava et al.(1988), pp.290-291..
(16) 企業組織における統合的な危機管理. 121. 54). て,危機が再発生しないように予防する。. 以上,図3に示すような統合的な危機管理の概念的フレームワークを構築してきた。このフレー ムワークを用いることでリスク・マネジメントと危機管理を区別することの重要性を明確にできる。 以下では,この統合的な危機管理フレームワークを応用し,三菱ふそうトラック・バスの隠ぺい ケースによって,よりリスク・マネジメントと危機管理を区別する重要性を明らかにしたい。 *. 6.三菱ふそうトラック・バスの隠ぺいケース. 2003年1月6日以前,三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下 MFTBC)は三菱自動車会社の トラック・バス部門であった。 55). 三菱自動車は自動車製造業者であり,道路運送車両法に基づき,リコール(無償の回収・修理)の 義務を負っている。もし欠陥部品を搭載した全車両がある場合,無償で交換・修理を行わなければ ならない。 危機の早期の前兆 1992年6月,東京都で三菱自動車の冷凍トラックの前輪が外れるという初めてのハブ破断事故が 発生した。1994年6月,三重県で2例目の脱落事故が発生した。そして,広島県内で1999年6月, 三菱自動車製の路線バスで初めてタイヤ脱落事故が発生した。さらに,クラッチ系統の不具合によ る事故が発生した。クラッチを覆うカバー(クラッチハウジング)に亀裂が入りプロペラシャフト が脱落し,ブレーキの動力を伝えるブレーキホースなどを破損するという欠陥だった。旧運輸省は 事故をうけて警告を出し,三菱自動車社内に原因の内部調査を指示した。 社会的責任に対する経営者の理念とイシューの診断 三菱自動車のトップマネジメントと品質管理部門の部長は,1992年,1994年と1999年,設計など 各部門のグループ長らによる対策会議を開いた。会議ではハブの強度実験など十分な調査をしない まま, 整備不良」との結論を決定し,旧運輸省に報告した。さらに,検討会議を1996年5月に開 54) Mahon and Cochran(1991), p.162. *この事例研究は以下の新聞記事によって明らかになった事実に基づいている。 1.Japan Times:July 28,2000;September 9,2000;November 4,2000;February 16,2001;March 13, 2001;April 20,2001;M ay 19,2001;March 28,2002;September 21,2002;January 7,2003;M arch 12, 2004;March 20,2004;M arch 23,2004;March 26,2004;April 17,2004;April 22,2004;April 24,2004; M ay 7,2004;M ay 11,2004;May 19,2004;May 21,2004;May 22,2004;M ay 27,2004;June 3,2004; June 9, 2004;June 11, 2004. 2.日本経済新聞:2004年4月27日,2004年5月21日,2004年5月27日,2004年6月3日,2004年6 月11日。 55) Kaho Shimizu, Japan s vehicle-recall system:a summaryofits principles, Japan Times,March 25, 2004..
(17) 122. 三. 田. 商 学 研. 究. いた。その結果,彼らはクラッチ欠陥をリコールが求められる重要なものと認識していたが,リ コールを旧運輸省に届け出ず,クラッチ系統の改修は密かに1996年から2000年まで行われた。 三菱自動車の経営者はリコールイシューを,もしリコールすれば巨額の費用が発生し,ブランド イメージを傷つけるものと捉えた。同社は顧客の安全性よりもリコール費用に優先順位をつけてリ コールを隠し,道路運送車両法に違反した。 一回目の隠ぺいスキャンダル危機 旧運輸省は1999年11月,定期調査から,三菱自動車が顧客クレームを報告していないことを疑い, 2000年7月下旬,三菱自動車を再調査した。そして2000年7月,三菱自動車のクレーム隠しが発覚 した。三菱自動車はこのスキャンダルの責任をとり,河添克彦社長を更迭,経営者層を減給処分に した。同社の国内車両販売は大幅に減った。三菱自動車の2000年度決算では2,780億円の赤字に なった。 危機の対応 2001年4月,三菱自動車は顧客のクレーム,欠陥隠し事件によって傷ついた顧客の信頼を回復し, 成長を持続させるため,三カ年再建計画をスタートさせた。この計画は,名古屋の工場を閉鎖し, 2003年までに資材調達費15%を削減,2004年3月までに9500人を削減する,というものだった。 三菱自動車は2000年3月からダイムラークライスラーと戦略的提携を行っている。ダイムラーク ライスラーは筆頭株主になっている。2002年3月から,ダイムラークライスラーは三菱自動車に経 営者を送り込んでいる。 2003年1月6日,三菱自動車のトラック・バス部門を分社し,新会社の三菱ふそうトラック・バ ス(M FTBC)は世界大手トラックメーカーであるダイムラークライスラーと直接提携した。その 提携によって MFTBC は日本のトラック・バス市場におけるリーディングポジションを強化し,そ して海外のビジネス機会を開こうとした。 死傷事故 2002年1月10日,横浜市で走行中の三菱自動車製のトレーラーからタイヤが脱落し,母子3人が 死傷するという事故が起こった。国土交通省は車輪と車軸の間に繫がるハブの破損に疑念を持ち, 三菱自動車に事故原因の調査を指示した。同時に国土交通省は同社に車両のリコールを 慮するよ う指示した。しかし当時の三菱自動車の大型車両担当副社長,宇佐美隆はハブ欠陥を認識しながら リコールに反対した。そして三菱自動車はハブの欠陥を示すデータを隠し,国土交通省に「整備不 良が事故の原因」という虚偽の報告をした。 2002年10月19日,山口県で三菱自動車製のトラックがクラッチの欠陥の原因でシャフトが脱落, ブレーキが利かなくなり,衝突事故を起こして運転手が死亡した。 二回目の隠ぺいスキャンダル危機 2004年3月11日,MFTBC のヴィルフリー・ポート社長は国土交通省での記者会見で大型車両の.
(18) 123. 企業組織における統合的な危機管理. 車輪脱落の原因は欠陥部品によるものであり,それが原因で2002年の横浜の母子死傷事故を含め多 くの事故を引き起こしたと報告した。その結果同社は112,000台の大型トラックに対する前輪ハブ 欠陥によるリコールの届出をすることになり,2004年4月16日,MFTBC 会長,宇佐美隆は前輪 ハブの問題に対する責任を取って辞任した。2004年4月22日,隠ぺいスキャンダルが発覚した後, ダイムラークライスラーは三菱自動車への追加支援を打ち切った。 2004年5月6日,横浜県警は元会長の宇佐美隆ら7人を横浜の事故の発生を予見できたのに欠陥 部品を放置して,虚偽の報告をしたとして,業務上過失致死容疑で逮捕した。 2004年5月20日,MFTBC は2002年の山口県の死亡事故原因はクラッチハウジング,プロペラ シャフトの欠陥によるものと認めた。2004年6月10日,山口県警と神奈川県警は三菱自動車元社長 河添克彦らを,クラッチ部品の欠陥を認識しながら放置したため2002年山口県の死亡事故を引き起 こしたと判断し,業務上過失致死容疑で逮捕した。 二回目の危機への対応 三菱ブランドと三菱の社会的責任に対する危機利害関係者の信頼の回復に向け,2004年5月下旬, 三菱自動車は,企業の危機管理や法令順守についての え方を全社に徹底するため,企業の社会的 責任を推進するチームを設置した。ダイムラークライスラーが支援を打ち切ったため,三菱自動車 は他の増資の引受先を探した。 統合的な危機管理フレームワークに基づく M FTBC の隠ぺい事例の分析 統合的な危機管理のフレームワーク(図3)に基づき,MFTBC の事例について分析を加えたい (図4)。 56). M FTBC のスキャンダルケースは社内の経営上,技術上の誤りが原因で生じ た。 MFTBC の トップマネジメントは,死傷事故が起こる前に前兆を発見し,この部品の欠陥が事故の原因になる ことを認識していた。しかしながら,トップマネジメントはリコール費用を顧客の安全より優先さ れるものと えた。自動車製造業者として道路運送車両法に従い,必ず国土交通省に欠陥部品のリ コールを届け,原因の調査結果を報告しなければならないにもかかわらず,彼らはリコールを避け, 57). 国土交通省に虚偽報告を提出した。このような経営者は不道徳的な経営者と見なされる。 トップマネジメントは欠陥部品による死傷事故の潜在的な影響が生じる確率に基づいて,その影 響を解釈していたかもしれない。彼らは欠陥部品による死傷事故のイシュー,そして欠陥部品隠ぺ いのイシューが危機に転化することを見落としたかもしれない。彼らはリコール費用が消費者の安 全より優先するものと え,そのような低い確率のイシューによる利害関係者への潜在的影響を回 避するための準備をしなかった。言い換えれば,トップマネジメントは死傷事故というイシューに 関して,危機管理概念よりリスク・マネジメント概念に基づいて解釈した。 56) Mahon and Cochran(1991), p.161. 57) Carroll(1991), pp.44-45..
(19) 124. 三 図4. 田. 商 学 研. 究. 統合的な危機管理のフレームワークに基づく MFTBC の隠ぺいケースの分析. 外的な環境要素 道路運送車両法に基づいて,自動車製造業社はリコールの義 務を負い,国土交通省に報告しなければならない。. 社会的責任に対する経営者の理念とイシュー診断 -リコールはブランドイメージへの信頼に傷をつけるかもしれない。. 一回目戦略的イシュー -部品欠陥のリコール. -経営者はブランドイメージとコストを消費者の安全より優先する。 -経営者は起こる確率で部品欠陥による死傷事故の影響を解釈して いるかもしれない。. 二回目戦略的イシュー -部品欠陥による死傷事故. 診断の結果 -ブランドイメージのみ 慮し,隠ぺいが信頼を失う危機に繫がる ことを認識してなかった。そのため三菱自動車はブランドイメー ジ問題を回避するために,リコールを届けず闇改修し,国土交通 省に事故の原因は整備不良によるものという報告書を提出した。 -三菱自動車は信頼を失う危機の予防策を準備しなかった。 一回目のスキャンダル危機 -部品欠陥の隠ぺいが発覚した。 相互作用的な危機管理 三菱自動車は社内の経営. 二回目のスキャンダル危機 -経営者は死傷事故の原因は部品欠陥と 認識していたが,この部品欠陥を隠ぺい. 者の道徳観と部品の安全 の改善を発信するため, 二回目スキャンダル危機 を起こった後に,企業の 社会的責任を推進する チームを設置した。. して,虚偽の報告を提出した。 消費者の信頼喪失 一回目のスキャンダル危機から学習しなかった 事後行動的な危機管理 -損害の防止 -平常へ復帰. -経営者はハブとクラッチの欠陥は事故を引き 起こすと明確に認識していたが,リコールを届 けなかった。再び部品欠陥を隠ぺいして,闇改 修した。. トップマネジメントは隠ぺいすればブランドイメージの問題についてのリスクを回避できると えたかもしれない。しかしながら,彼らは隠ぺいイシューが信頼を失う危機に転化すると認識して いておらず,そのため信頼を失う危機に対して予防策をとらなかったと えられる。 2000年7月,一回目の隠ぺいスキャンダルが発覚した時,ブランドイメージの問題のリスクは信 頼を失う危機に転化した。三菱自動車は消費者の信頼を失い,大損害を受けた。三菱自動車は出来 るだけ損害を抑えるために,事後行動的な危機管理を行った。三菱自動車は工場を閉鎖,リストラ を行い,コストを削減した。同社はブランドイメージを回復するため,ダイムラークライスラーと.
(20) 企業組織における統合的な危機管理. 125. 提携した。しかし,危機に関する原因である組織文化の隠ぺい体質を変えなかった。従って,三菱 58). 自動車は危機に見舞われやすい組織と見做され,同様の危機が再発生しないように前の危機から学 習することをせず,2度目の隠ぺいによる危機を引き起こしてしまったと えられる。 2002年に死傷事故が起きた時,三菱自動車は死傷事故の原因が自社の部品欠陥にあるということ を認識していた。しかしながら,トップマネジメントはまたもブランドイメージの低下とリコール 費用の問題を優先した。彼らは国土交通省に,この部品欠陥を隠ぺいして,事故の原因は整備不良 として報告した。しかしながら,2004年 MFTBC が,部品欠陥を事故の原因として認めたとき, 事故の原因は整備不良とする以前のレポートと矛盾していたことが明らかになり,三菱自動車ブラ ンドは消費者の信頼を大きく失った。 損害は予想を超え,再び三菱自動車は信頼失墜の危機を予防し損なった。この危機は三菱自動車 の存続を脅かしている。三菱自動車は損害を防止し,そして出来るだけすみやかに平常へ復帰する ために,事後行動的な危機管理を行わなければならない。 三菱自動車は大損害に対処するために,工場や人員などの削減を計画している。危機利害関係者 の信頼回復に向け,法令を遵守し,法令順守や品質・安全管理などをチェックする社会的責任チー ムを設置している。このようにして,三菱自動車は,経営者の道徳観や部品の品質・安全性などへ の意識を改善しているかを発信している。しかし危機利害関係者の信頼を回復し,平常に復帰する には時間がかかるだろう。なぜなら,経営者の道徳観と危機利害関係者に対する旧トップマネジメ ントの態度は,危機利害関係者に三菱自動車は信頼できない会社,社会的責任を放置し,死傷事故 を引き起こした会社と確信されている。それに加えて,二回目の隠ぺい危機は,三菱自動車が一回 目の隠ぺい危機から,危機を回避することについて何も学習しなかったことを示唆している。. 7.結び. 本稿は,リスク・マネジメントと危機管理の境界線を区別しようとした。損害が予想を超え,リ スクが危機に転じると,危機を制御可能な状態にするためには,リスク・マネジメントではなく, 危機管理が必要になる。危機は起こり難い不特定な事象であり,確率をもとに判断して準備をする というリスク・マネジメントの概念では,危機のように確率が低い事象では,企業組織の盲点とな 59). るかもしれない。三菱ふそうトラック・バース(M FTBC)についての事例研究の結果は,この概念 を補強するものであり,リスク・マネジメント概念と危機管理概念の区別が必要であることを示し ている。. 58) Pauchant and M itroff(1992), p.33, p.62;M itroff and Pearson(1993), p.13. 59) Pauchant and M itroff(1992), pp.93-94..
(21) 126. 三. 田. 商 学 研. 究 60). 先行研究である「3つの重要な危機管理タイプと5つの危機管理段階」をもとにして,本稿では 比較経営論のパースペクティブと戦略的イシューの診断のパースペクティブを検討し,危機管理プ ロセスの統合的なフレームワークを発展させた。このフレームワークでは,なぜ企業組織によって 危機対応準備や対策が異なるかを説明し,企業組織における全体的な危機管理努力の相違を明らか にしようとした。 本稿は M FTBC による隠ぺいの事例研究を用いて統合的な危機管理プロセスを具体的に説明し た。事例研究から得られた結果は,経営者の理念が代替的行動案の選択に大きな影響を与えるとい うことである。彼らは隠ぺいが危機を引き起こすと認識していなかった,そこで,法律に違反して も部品欠陥の隠ぺいを行った。したがって,危機利害関係者と経営者の道徳観に関する経営者の態 度は危機管理研究が見過ごせないきわめて重要な要素である。なぜなら企業組織が危機を回避する ために危機の予防メカニズムを始めるか,あるいは危機予防メカニズムを無視して危機を引き起こ してしまうかはイシューの解釈と対応策の選択に関連しているからである。従って,もし危機管理 研究が経営者の道徳観と危機利害関係者に対する経営者の態度とイシュー診断に注意を払わなけれ ば,企業組織における全体的な危機管理努力がなぜ異なるのかをはっきり説明できないだろう。加 えて経営者の理念は組織の隠ぺい文化に影響を受けていることも示唆している。 また,三菱自動車が一回目の危機による損害を防止し,そして平常へ復帰しようとしたが,以前 の危機から関係する危機の原因である隠ぺい体質を変えるということについて何も学習しなかった ことが明らかになった。結果として,二回目の隠ぺいによる危機が再発生した。それ故に,危機管 理研究は危機損害の防止プロセスだけに注目していては不十分である。なぜなら,危機が再発生す るか説明できないからである。この事例研究の結果によると,企業組織は以前の危機の経験から, 回避メカニズムを改善するよう経営者の理念を変えることを学習しないと,危機が再発生する恐れ があることが明らかにし得たと言えよう。 確かにこのフレームワークはなぜ企業組織が危機イシューに対して異なる解釈や異なる代替的行 動案の選択をするのかを説明することができる。しかし,本稿は1つの事例研究だけで行われ,同 じあるいは異なる環境の企業組織に一般化するには限界がある。そこで,このフレームワークを検 証するためには,比較実証的な研究が必要とされよう。. 参. 献. Ansoff, H.I.(1980), Strategic issue management, Strategic Management Journal, 1(2):131-148. Barton, L.(1993), Crisis in organizations: Managing and communicating in the heat of chaos,Cincinnati:South-Western Publishing. Carroll,A.B.(1991), The pyramid of corporate social responsibility:Toward the moral management. 60) Ibid., pp.134-140..
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