福島大学饗科i鰻告第磐号（至鱒2） i
リチウム塩濃厚水溶液における過冷却状態の性質
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長谷部亨・佐藤遷恵㌦霧中秘子畢㌔玉虫伶太
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序 論
強電解質水溶蔽の中で，D誌欝4撫ε磁eiの理論が戒む立たなくなるような濃度の高い水溶綾では葬 常に興味ある現象がみられる。舞えば，抵滋領域では，熱力学から予想される凝國点よ鯵もずっと蟹い 温度まで凝嶽が莚こらなかったり，水溶綾の蔽鯵としての盤質を維持したまま分子運嚢の速さが葬常に 小さくなり，運動が止まったように観灘されるガラス状態（これは葬平衡状態である）に転移するよう なことがある。一般に強電解質水溶綾は，急速1こ冷隷（婚一貿K／秒）するとだラス状態に転移するが，
穏やかに濃度を下げていくと多くの水溶液では，ガラス状態になる蔚に含水島形絞や結藻析鐡をおこし てしまう。玉｝しかし，塩イヒ1タチウム，臭イヒ1ナチウム，そして，チオシアン酸1タチウムみ濃厚水溶液の場 合は少し変わった現象を示す。我々は，今まで濃厚電解質水溶液について，室温以下の湿度領域での示 達熱解析を鴛い熱的性質を調べてきた。その中の一纒として，翻套こ塩乾弓チウム水溶蔽の示差熱麹線 を示す。これ繰締つく参した温度変化鰺、3−3．3K／分）の示差熱解析である。．と露きのスパイクはそ の温度において試料が発熱したことを，また・下向きのスパイクは藪熱したことを示す。塩化蓼チウム 承濾液の8，稔そして越瓢纏藪g4の試料の示差熱麹線は，冷趨及び趨熱方陶において発熱暖熱境象が 見られず，ただだラス転移に梓う競熱の変化するのが見られるだけである。2）籔2にこの示差熱解梼に よって褥られた塩化弓チウム水溶液の各種濃度における凝羅点（◎）とガラス転移点（○），それに熱
＊ 橿鳥大学大学羨教育学醗究科修士課程理科教育專修平銭2年度修了 璽在棄髭大学大学院礫学醗究科博士後難課程在学
＊＊理化学硬究辮 埼玉桑穂光毒
2 長谷藻亨1リチウム塩濃簿水溶薮における遍冶趨状態の盤質
力学によって計算した凝趨点の鍵論縫（実線）を示 す。この欝の中程8一錘盤。扱ぎ｝の濃度範霧では 凝麗現象が晃られない。このような盤質は，水溶綾 のエネルギーと密接に灘保する￠ここで，25℃に おける水溶液の水の活量の実験纏を驚いて水溶綾の 水の余裂エネルギーを計算し，濃度に蝿してプ露ッ
トしたものを鑓3に示す。麟3からも瞬らかなよう に，8一鯵驚ol㎏一互の濃度範鑓に特にエネルギー の低いところは見られない。また，少量の弛の電解 質（舞えば塩建鉄筆）を不纏麹として漉入させても
この盤質は変わらない。上に逮べたような盤質は，
鱈温度において擁めて莞えてくるもので葬常に興殊 深いものである。我々は，今までの承差熱解析の醗 究から，このような盤質が塩乾彗チウムの飽に臭化 1タチウム水溶液の8一欝欝。滋琶弓，そして，チ愛 シアン轂撃チウム水溶蔽の8一慧盤。猛蓼一至の濃度 範嚢郵こ晃られることを確認している。3）
ここでは，これらの水溶綾の過冷簾温度領域での 安定牲を調べるために誤差熱解新装置を敬畏し，ガ ラス転移点よりわずかに高継灘綾：1こ濃度愛護1を毒賭ナ ながら約灘暗闘保持し，状懇変化等の有無を調べた。
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緩2 塩化撃チウム承溶液について示差熱解析から 得た凝1蚕点（◎），ガラスi転移点（○），及び熱 力学によって求められた凝圏点の選論難（一〉。
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騒3 塩化解チウム水溶液の活量（案験値〉から 計算した2§。Cにおける凍め余剰エネ痔ギー。
福島大学理群鞍告第紛号（至鱒2） 3
実 験
試料 試薬1ま，猛C壷（秘光練薬），L童掛・麹0（関棄靴学）そして簸SC賛・2麹0（添灘謬化学）の 特級品を精製せずにそれぞれの必要量を取り，蒸留水（この髭抵撹纏は鎗毒鱗Ω／e灘鎌上である）に 溶かした。これらをガラスフィルター（G凄）を耀いてろ過し示差熱解析購該料簑に入れ，費麗麗一興撫獅 t擁w法によって脱ガスした後真空封入した。
示差熱解鋳装置 装鍛のブ欝ック緩と全体の写真をそれぞれ轡縷，駿こ示す。装麗1ま，二つの試料を 羅鋳に灘定できるように設計したα2ペン記録計は，2ペン X−YレコーダーP−72型（蓬醗電子）
を，濃度設定のための直流電慶発生器には，精密ミ1ナボルト設定器（大倉電気）を，また，試料と標準
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ヒ一堂一 麟難 本務窒で驚いた示差熱解衝装羅のブ奮ック園。
羅§ 承差熱解析装羅の暫ル無の写真。
図5 示差熱解栃装置の全体写真。
試料との温度差灘定のための直流電圧増鵜器には，
AM欝艇形微少直流電獲計（大禽電気）をそれぞれ 2台ずつ湧いた。セルの葉分は．試料露建薬（銅製 でまわりにKA銭MA線を無誘導に巻き付け温度麟
舞舞窪ヒーターとした）を｛｝．§驚鑓の鑛鉄線で中空轟こ つるし，その外綴を真鋳筒で甥み・外気と遮漸した。
温度麟御装置は，箆鰐麟御方式をと鯵，籔磐こ示す ように．試料付逝の濃度が設定濃穫：よりも高い場合 は，セル蔀分に皺む付けたヒーターに電流が流れて 試料露定離を撫熱し，濃度が抵籍場合は，液体チッ 素ガスをセノレ額分に吹きかけて冷議するようにした。
灘定の際1ま，セル内の中空藻を真空ポンプにて滅狂 し，外との濃度接触を小さくしたGセルの藻分の写 真を麩緯に示す。
無蓋熱解観 改蜜した承差熱解析装羅を耀い，賑
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4 長谷藻亨：瞬チウム塩猿舞［水溶液1こおける過冷簾試態の性質
鰺盤。脹ぎ董の濃度の水溶綾について，それぞれの試料のガラス転移温度より高く，熱力学から予想さ れる凝翼点よりも無い温窪（疑C茎では欝3Kと路7Kそして露3翼，L灘rでは蔦2Kと馨5K，そして玉鱒 K，また，懸SC馨では亙72K）を選んだ。これらの濃度にお継て±2〜土5K／時の濃度変調をかけ約 講時懸経過後，すばやく試料を取鯵虚し，試料の状態を欝で観察して，また，すばやく戻し普通の趨熱 仮定の示差熱解析を行った。室撮から設定濃度までの冷却，及びその濃度から室濾までの撫熱は§．6−
i、§K／分の速さで行った。
実験結果
疑C篁水鰺蔽のi83Kに設定した撮度の灘定において，灘時翼経過後，試料を皺む鐡して見たところ，
翼騰臣ぎ｝試料が欝く均一な結騒を衝鐵していた。しかし，籔7に示すように示差熱解析灘建には熱 異常として観灘さ醜なかった。また，振翫水溶液の鐙騰。至㎏ 豊該料の蔦2Kに設定した実験では，講 時瞬経過後の蕊熱過程にお継て，騒8睾こ示すように一つの発熱，続いてこれに婦建1する暖熱が観灘され た。これらの弛の試料，及び灘定条欝のものでは韓の変乾も鰻灘されなかった。
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麟7纏餓。歓藪㌧しICl承溶液について行った 麟暮簿臨。獣§一豊一しi翫承溶液につ継て待った三 三つの濃度での鋳縫安達牲の承差熱麹線。 つの温度での時間安達牲の示差熱麟線。
欝2±2Kに保った後の熱熱方講での発熱及び 暖熱現象が晃られる。
考 察
水溶蔽申の縫チウムイオンの場合，イオンの大きさを考えると水分子が藁醗位したの揮安定である。
しかし，馨チウム塩水漆綾に関する中盤子散裁の礒究 諦｝から，L郵イオンのまわ瞬こ水隷している 水分子の数は，濃度に敏存し4〜6となっていることが墾らかとなっている。水秘獲：が藁と継うのは鴛．8 灘。猿琴一生の濃度で，この水溶液中では，彗チウムイオンに直接醗鼓していない承分子は全然無く，8 鵬墨取矯濃度の場合が，承秘数§で，野ウムイオンに直踊話し熟癒い激発子海溝んの少し存 在する程度である。本瞬究において蝿象とした濃度領域では，まさ紅，奪チウムイ煮ンのまわむに存在 する水分子のほとんどが，水秘した水分子であるといった状溌である。すなわち，欝露華こ運動すること のできる承分子（嚢由水）が慧とんどなく，結贔（氷）を形成するための承素結合が水分子講土で出来 にくい購造になっていると考えられる。塩乾蓼チウム水溶綾欝．8盤。靴紅玉の解チウムイ意ン．塩乾鞠 イオン，そして承分子について各分子種のサイズを考慮して叢べた醍置を纒§に示す。ここでサチウム イオンは，4懸の水分子によって繧まれているのでそのサイズも考癒すると，［娠綴含§）43千のイオン 半径は，§．2§8〜§．28霧搬．了・麟一方，Cトのイオン半径は，§．i8賊難3）である。興味あることに，騒§
購島大学遷科鞍告第雄号（欝麗） 5
の醗粥1ま｝捻Clや艮C茎の結贔に見られる立方賂子の醗列に獲ている。ここで，簸Cl結贔と比較してみ ると，L重C至結畠は879Kが鞍点であり，これ以■上の濃度では溶灘塩になっている。結贔・溶融塩の申で，
L罫イ方ンとCLイオンとにはクー【｝ンカ F＝・（（茎聖（ギ）／（尋簿ε塵r2）
が饑き，各イオン闘士はこのクーPンカによって結合しあっている。ここで，蔓，剣は，それぞれ L罫，Cレの電荷で，εで鎚ま真空誘電率である。実 祭はε毒に匙誘電率をかけなければならない、rはこ れらのイ言ン闘距離（§．2解職）である。触点はこのク一口ンカを反験しているので，塩化蓼チウム水 溶酸i3．8醗。臣窓『垂の場合のクー欝ンカを計算し，いまのところ観灘されていないこの水溶綾の凝露点
（鞍点）を推離してみよう。この醒還の結贔を考えれば，欝9から雄灘できるように疑『岡一Ci㎜闘距 離は，§、製9〜§．総翫盈である。純水の比誘電率は
約鍵であるが，纒9に醍直するように承分子が一縷 になっているような場合の鐘誘電率は，今のところ 報告されていない。そこで，比誘電率が小さくて水 を良く溶かすi，尋一ジ言キサン（誌誘電率が2§℃
で2、茎である〉と水の混合溶蔽の比誘電率から雛濾 した。園警のように承とi，逢一ジオキサンが甕i鬱 したと仮定した羅寺のモノレ員二（i：i）の混合溶液の 箆誘電率は，濃度によっても異なるが鰺℃で§．3く
らいで練粋のi，蓬一ジオキサンの達、尋賠である。
L墨α結贔の箆誘電率が約簸であるので，捻．8澱盛 装紅藍賑C至水溶液では48程度と考えられる。これ らの纏からクー欝ンカを計算すると，クー欝ンカは 盤C三結暴の場合の約i／捻．縷〜蓋／越、6となる。もし，
羅点もこの髭になるのならば，この水溶綾の議点は 大ざっぱに言って，6§〜§緩くの範囲となる。また，
この水溶綾慧，玉撰｝Kという｛籔い癒嚢蔓で液｛本になっ ているわけであるが，もはや普遍の水溶酸の纏念で はなく，鼓C至の溶融塩に鰐癒するような蔽捧になっ ていると考えると，このような低温においても凍結 しないで安定な溶蔽状態を維持しているのが理解で きる。試料の邊冷隷温度領域において，設定温震：
○
㊥
1紅1職〉4ゴ下襲。、278欝雛
Cl r薫G、総董既灘 醗§ 捻．き鵬。泳ぎ㌧鎌Cl承溶液において各イ オンのサイズを考慮して十イ孝ンと一イオン とを交互に較べた醗置。
±2〜±5K／時の撮度愛護をかけたわけであるが，繕贔紙墨をおこした騒C豊の鍵盤。箆蓼一士水溶蔽 について示差熱解析婁験後重量分析したところ，濃度は麺．i膿。董㎏ 1であり，醗置数が4よ吟小さかっ た。このことは．結鐵新出によって溶液を安定な構造にするために，濃度鍵驚。猛霧一！以上では結贔析 霞や含水贔形成を起こすと考えられる。
我々の実験から言えることは，水溶綾中に，1ナチウムイオンに4〜6纒の承分子が翫位した水難体と
（〕至一イオン，8ゼイオン，それにS（〕蓑一イ愛ンの緩み合わせで存在する（濃度範灘8〜難難。抜g…置）と きにのみ，これらの水溶綾は抵撮において普遍の水溶簸が示すような結贔観護や金氷錨形絞を起こさな い葬常に安定な性質を示すようになることである。これらの馨チウム塩の溶解痩が縫の強電解質塩より も大きいということも溶綾構造と密接な関係があることも理解できる。また，L童舞Osではこのような 性質が晃られなかったこと勤から陰イオンの果たす役割も無税できず，今後，陰イ言ンの役餐とか，勉 の陽イオン電解質水溶綾についてもこのような性質の存在有無を確認する必要がある。
水飜究は，文蕊省科学醗究費補豹金重点領域講究「溶渡の葬平衡過程の分子講的アプ聾心チ」（課題番 号毒323i婚3）の獲麟を受けて行ったものである。
6 長：谷難事l lタチウム塩濃厚水溶液における遍冶款状慰め盤質
参考文献
玉） C、A．A葺琶e難＆銀星璽、」．Sare，」．C簸e盈．P簸ys．，52，i蕊8（欝7｛茎）
2）？．艶se漉，K．？a懸紐繊盛衰．％盤投盤殻曲i，8瘡蓋ssss翌畿R曙鍛s擁rε（醗7）
3〉 猛i藤，長谷趨，鐙串，玉虫，第i3蟹溶液イヒ学シンポジウム（新潟〉（欝欝）
荏）」．猛、盆地r舞ya撮G．W、翼ei璽s。簸，嚢e夢．Pro塞澄鱈s．，麟，3叙爵8i〉
5）」．費．恥醜a蕪鷺．L．ぎr量e曲餓，魏曙．猛or奮．C蓋騰．，3彗，35獣麗3）
6〉A．2．C曜sも灘，G．W．Ne壷菫s・登録6」、嚢．臨曲舞y，」．難ys．C＝S・監鑛St段teP醜、，捻，麓鍍（玉鰯）
マ〉」．驚．漉ws鵬e，G．W．饗ei至s・鼓良撮」、翼．翫6紬y，J．餓警．C：So至i盛S搬艶P魏．，蓬3，L§23（i聯）
8〉K．至。磁a脚段，Y．Ka贈ぬ，肇．臨融盤。毛。麟透雇、M量s＆wa，」．P麹s．C＝So麗S織e難ys．，奪7，L鵬 （ig雛）
9〉L．P脳董墨曙，響魏翼灘re・費熱eC養e盤。豊田。撮部C。r譲U蜘欝ress，鰯（i㈱〉
欝）掌．滋seむe，衰．Sa竃・，銭．丁皺曲aa認R．下灘騰麟量，毛。もe群滅s観i簸Z．晦t磁・蓄s慮，（欝2）