一般入試前期B日程 物 理
Ⅰ
■出題のねらい
万有引力を題材した力学の問題です。万有引力の法則を使いながら,加速度,円運動,位置 エネルギー,力学的エネルギーや運動量保存の法則,ケプラーの法則などの力学の基本内容を 問い,それらを活用して地球を周回する人工衞星の運動を理解する問題です。数式の導出に加 えて,グラフの作成や記述問題もあります。
■採点講評
( )では万有引力の法則の理解を問いました。全体的によくできていました。問 , で は分母が 乗ではない誤答が見受けられました。問 のグラフでは高さ h=R のときに X=
/ を通らない誤答がありました。
( )では万有引力がはたらく等速円運動の理解を問いました。問 , はよくできていま した。ただし問 ではマイナスがない誤答がありました。問 の正答率は低かったです。問 はよくできていました。この大問では地表における重力加速度の大きさg を定義していませ んが,それを用いた誤答も見受けられました。
( )では人工衛星が加速し,軌道が楕円に変化した場合の運動を理解します。問 の運動 量保存の出来はよくありませんでした。人工衛星が減速する誤答がありました。問 は力学的 エネルギーを利用して人工衛星の運動の条件を求める問題です。速さの上限が求まるのですが,
逆に下限になっている誤答がありました。問 ではケプラーの法則の理解を問いました。文中 の説明を利用して解きます。力学的エネルギー保存の法則からvBを求める解答もありました が,正答としています。この問いでは理由の記述もあるので論理的な説明が求められます。そ こから人工衛星が周回する様子(位置と速度の関係)がイメージできます。最後の ア , イ , ウ は数式の展開 力 が 必 要 で す。 ア は 別 解 と し て −vB/vA も 可 能 で す。
イ , ウ の正答率は低かったです。最後の二つの式から得られる運動の条件は,問 の 条件式と一致するので,法則の一貫性を確認できます。
力学は工学の基本となる分野です。力学では日常の現象を説明する様々な法則を学びます。
受験者の皆さんはそれらの暗記に頼るのではなく,問題で与えられた状況に応じて法則を正し く活用する勉強をしてください。
Ⅱ
■出題のねらい
コイルを回転させた交流の発生や変圧器,および発電所や変電所での送電を題材とし,これ らに関する電磁気学の基本事項について問いました。これらは教科書にも載っている内容なの で,しっかり理解しておいてください。
■採点講評
この問題は,教科書の中では電磁気学の後半に出てくる内容なので,受験者にとっては少し 難しかったのかもしれません。この大問 Ⅱ の試験問題のほとんどが教科書に載っている基本 的な問題ばかりなので,教科書の内容を理解できていれば高得点も可能だと思います。
問 と イ ,問 は,この問題の中では正答率が高かったです。合格者は,少なくともこ の 問は正答できると思われます。特に, イ と問 を含む( )は物理基礎の教科書に 載っている内容です。問 ができていなくても,問 の正答者が多数いたので,送電について の知識をきちんと持っている受験者は多いようです。問 の出来が悪かったのは残念でした。
簡単な計算なので,できるようにしておいてください。
( )についてですが,問 の正答率はあまり高くありませんでした。コイルを貫く磁束が 次第に減少しますので,その磁束を増やそうとする向きに誘導電流が流れます。問 はフレミ ングの左手の法則の問題です。問 から問 までは正答率は約 割で,あまりできていません でしたが,合格者はこの 題中 題は確実にできるでしょう。コイルの回転と交流の発生につ いては,教科書に書いてある内容なので,きちんと理解しておきましょう。( )の相互誘導 の問題は,この大問 Ⅱ の中では一番出来がよくなかったです。問 はファラデーの電磁誘導 の法則を用いて誘導起電力を求め,グラフ化する問題でしたが,あまりできていませんでした。
問 は比較的よくできていました。物理は暗記科目ではありません。論理的に考える力をつけ るように学習してください。同時に図やグラフなどを見ながら,物理現象をきちんとイメージ できることも重要です。
Ⅲ
■出題のねらいと解説
波の分野からの出題で,虹ができる理由を考察しました。屈折の法則と,光が重なりあうと 強めあうという知識だけで, 本の虹ができることを説明できます。また,光の波長と屈折率 の違いから,虹の色順も考えました。大学入試としてはあまり見かけない題材ですが,それほ ど難しくないと想定しています。
虹の理論は, 世紀にデカルトが 万本の入射光線について丹念に偏角を計算し,その 番目から 番目までの光線がほとんど同一方向に進むことを発見したことから始まっていま す。当時はまだ微分法が開発されていませんでしたので,たいへんな計算が必要でした。
図 (a)(b)で,極値をもつのは図 (b)の方ですので,図 ではなく図 のような 一回反射の場合に強い光が水滴から出てくることがわかります。図 (b)から角度を読むと およそ 度の方向です。
色の分散は,波長による屈折率の違いが原因です。赤い色は波長が長いこと,(図 から)
波長が長いと屈折率が小さいこと,したがって(イの式から)赤い色ほど屈折角β が大きい ことがわかります。問題文中にあるθ の式からβが大きいほど仰角が大きくなります。よっ て,主虹の外側は赤色になります。また,主虹と副虹の順は,明るくなる仰角が 度と 度と 決まっているので,副虹のほうが高い位置に見えることになります。
θ の導出は次の図を参考にしてください。
仰角 観測者
太陽光線 2
2
色の順や 本目の虹は知識として知っていても,このように説明が論理的にできることを楽 しく思いませんか。
ちなみに,図 の作図には,逆三角関数の知識があると簡単です。sinα=b/r を α=Sin−
(b/r)などと記す関数表記です。大学に入学後,すぐに数学でお目にかかるでしょう。
■採点講評
ほとんどの答案が,最後の問題まで手がけていました。
イ や オ は等価な式であれば正解としています。 キ は, 度から 度までの答案 を正答としました。 キ には 度という誤答が散見されましたが,図 (b)のグラフをみ れば極値を取るのは明らかに 度を超えていますので不正解としました。
問いの虹の色順の理由欄は,色と波長の関係(赤い色ほど波長が長い,あるいは,紫の色ほ ど波長が短い)に言及できていれば部分点を与えました。さらに図 の場合の仰角と屈折角の 関係(屈折角βが大きければ仰角θ が大きいなど)に言及できて完答として採点しました。
指定された つの語がないものは完答とはなりません。
物理は,自然現象が少数の法則で説明できることを解明していく学問です。単に公式を暗記 して応用するのではなく,考えることを楽しむ姿勢をもってもらいたいと思います。