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人口爆発の 2010年5月中旬の時点で

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1

変化する人口問題―人口爆発の20世紀から人口高齢化の21世紀へ

2010年 5月中旬の時点で、アメリカ合衆国商務省センサス局による推計では、世界人口の

総数は68億

2000万人となっている。その世界人口の増加率がピークであったのは、第 1図

に示されているように、1960年代後半であった。その当時の世界人口の年増加率は2.02%で あり、1960年代後半から

1970

年代前半では人口爆発の問題が人口学において最も重要な研 究トピックであり、その結果、1972年のローマ・クラブの報告書『成長の限界』(メドウズ

ほか

1972)

が世界に大きなショックを与えるまでになった。ところが、その後の人口増加の

ペースはそれまでに想定されていたシナリオとは著しく異なり、21世紀に入った現在では 世界人口の年成長率は

1.15%まで減少してきている

(第

1

図からも明らかなように、開発途上 地域での人口増加率の著しい低下がその主要因である)。

このように世界人口の年増加率を劇的に変化させたのは、AIDSという予期せぬ死亡リス

開発途上地域 3.0

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

第 1 図 世界人口の年増加率(1950―2050年)

(%)

世界

先進地域

(2)

クの出現があったものの、先進地域は言うに及ばず、開発途上地域においても出生率が大 幅に低下したことが主な要因であった。1960年代後半から最近までの

40年間で、1

人の女性 が生涯に産むと思われる子ども数を示す合計特殊出生率(Total Fertility Rate、以下

TFR)

は4.8

人から

2.6人へとほぼ半減している。また、同じ期間に、人口数が減りもせず増えもしない

出生水準である人口置き換え水準(TFRが

2.1人)

を下回る国の数は

8ヵ国から 76ヵ国へと急

増しており、さらに、2050年には

147

ヵ国まで増加することが

2008年の国際連合人口推計

(United Nations 2009)で示されている。

さらに、これら人口置き換え水準以下の国々の総人口が、世界人口に占める割合でどの ように変化してきたかをみると、第2図に示されているように、旧ソ連邦の崩壊や中国の

TFRが2.1

人を下回る状況を呈するようになった

1990― 95年の期間で急速にその割合が増加

した。その後は2005―

10年で46%、そして2010

―15年ではそのシェアも

50%を超え、2045

―50年では実に

4分の 3

を超えていることになる。しかも第

1図に示されているように、少

子化問題は

21

世紀においては先進地域だけの問題ではなく、アジアやその他の開発途上地 域を含むグローバルな問題となっている。このような人口問題の根本的な変化を反映して、

最近、

20

世紀は人口爆発の世紀、21世紀は人口高齢化の世紀 と人口学者の間でしばしば 言われようになった。

このように急速に多様化し、複雑化し、グローバル化してきている最近の人口問題であ るが、それらの問題のなかで経済成長と密接な関係をもっている年齢構造変化(すなわち人 口高齢化)に注目した研究がグローバル・スケールで爆発的に拡大してきている。この点に 着目して、本稿では、年齢構造変化と経済成長ポテンシャルとの関係を、まったく新しい

1950

1955 1955

1960 1960

1965 1965

1970 1970

1975 1975

1980 1980

1985 1985

1990 1990

1995 1995

2000 2000

2005 2005

2010 2010

2015 2015

2020 2020

2025 2025

2030 2030

2035 2035

2040 2040

2045 2045

2050(年次)

 United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2009).

(出所)

100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

第 2 図 人口置き換え水準を下回る国の人口が世界人口に占める割合の変化(1950―2050年)

(%)

(3)

分析手法を駆使し、世界人口のなかでも最大の割合を占めているアジア人口の将来変動に 視点をおきながら考察を進めていくことにする。

2

年齢構造転換と画期的分析手法の出現

通常、人口をライフサイクルの段階によって年少人口、生産年齢人口、高齢人口の3つの グループに分けるが、経済的に自立できない年少世代や高齢世代は生産年齢人口が生み出 す経済的リソースの世代間移転に大きく依存している。すなわち、人口の年齢構造が変化 すると当然、世代間移転のパターンや各世代におけるリソースの流入量・流出量に変化が 生じることになる。そのような世代間移転パターンの変化により、資産の保有・分配に変 化が生じ、しばしば世代間の不平等問題が深刻化し、経済成長にも多大なインパクトを与 えることになる。ところが、このような人間生活の維持・存続に大きな影響を及ぼす世代 間移転についての研究も現時点ではいまだ十分とは言えない状況である。このような世代 間移転に関する研究面の空白をできるだけ埋めることを目的として、2004年ごろから国民 移転勘定(National Transfer Accounts、以下NTAと略称)システムの開発が本格化しており、筆 者もこのNTA研究プロジェクトに参加している。2010年

5

月現在、NTA研究プロジェクト には世界で

30

ヵ国の大学や研究所を中心とする研究機関がチームとして参加しており、大 半の研究チームはそれぞれの国の統計局や財務省などの人口統計や経済統計を扱う政府機 関と共同プロジェクトを形成している。

本稿では、このNTAグローバル・プロジェクトでこれまでに公表されてきた研究成果の なかから、特にアジア諸国に関するものを使って今後のアジアの経済成長ポテンシャルを 分析してみることにする。まず、NTA分析に先立って、NTAの際立った特徴を3点挙げてみ る。その第1の特徴として、国民所得勘定から得られる値をベースラインデータとして扱い、

その各勘定項目に一致するようにミクロおよびマクロレベルのデータから推計された世代 間移転の各構成要素を調整している点が挙げられよう。第2の特徴としては、公的部門のみ ならず、私的(家族)部門におけるリソースの変動も取り込んでいるということである。

NTAの特徴の第 3

点としては、年齢構造変化が世代間移転に与えるインパクトを明示的に捉

えるためにすべての主要変数に年齢をリンクさせていることである。ただし、現時点での

NTAでは男女別の計算はしておらず、各年齢における男女平均的な 1

人当たり という考

え方で分析がされている。NTAに関するさらに詳しい説明は

NTA

研究プロジェクトのホー ムページを参照されたい(http://www.ntaccounts.org)。

3

加速するアジアの人口高齢化
(4)

このような大きな変化をアジア人口にもたらした主要因は顕著に低下した出生率である。

1965― 70年の時点では、TFR

が人口置き換え水準を下回る国は日本のみであったが、2000

―05年では15ヵ国/地域(すなわち、日本、中国、香港、マカオ、北朝鮮〔朝鮮民主主義人民 共和国〕、モンゴル、韓国、カザフスタン、シンガポール、タイ、アルメニア、アゼルバイジャン、

キプロス、グルジア、レバノン)まで増加してきている。また、これらの低出生国はその数 だけでなく、アジア人口に占める割合においても、1965―

70年では 4.9%

であったが、中国 のTFRが2.1人を下回った

1990

年代前半には

42.2%

まで増加し、2012年には

50%

を超えるこ とが2008年の国連人口推計の結果でも示されている。また、インドのTFRが

2.1

人を下回る ことが予想されている

2020年代後半では、アジア人口の 80%

を超える人口が人口置き換え 水準以下の社会で生活していることになりそうである。さらに、現時点でも、香港、マカ オ、韓国、シンガポールの4ヵ国/地域は

TFR

1.3人を下回る超低出生水準にあり、地域

的にみても東アジアが世界一の低出生地域を形成している。

出生率の低下に加え、寿命の改善もアジアでは近年目覚しいものがある。具体例を挙げ るならば、日本のケースが代表的なものであり、日本が経済協力開発機構(OECD)に加盟 した1964年の時点では、加盟国のなかで最も低い平均寿命であったが、1980年代の初めに は加盟国のなかで最高となった。また、2005―

10

年にはアジアでは30ヵ国において男女平 均寿命(正確には出生時の平均余命年数)が

70

年を超えており、特に香港、マカオ、日本の 東アジアの国/地域では

80年を超える水準にある。

このような出生低下、寿命の大幅改善の結果、アジアの人口の年齢構造が著しく変化し てきている。第3図で示されているように、アジア人口の従属人口比(0―14歳の子ども人口 と65歳以上の高齢人口を合計し、その値を

15― 64歳の生産年齢人口で除した値)

1965

年にピ ークに到達し、その後は

2016

年まで連続的に低下し、その後は再び上昇する。すなわち、

(年次)

 United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2009).

(出所)

0.85 0.80 0.75 0.70 0.65 0.60 0.55 0.50 0.45 0.40

第 3 図 アジアの従属人口比(1950―2050年)

1950 55 60 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 10 15 20 25 30 35 40 45 50

(5)

現在ではアジア全体で生産年齢人口の総人口に占める割合が増加している状況にあり、2016 年までは生産活動の視点からみると有利な年齢構造を形成していると言えよう。

このようなアジア全体における年齢構造変化をさらに国レベルで比較したものが第1表に 示されている。この表では、アジア諸国のなかから

16

ヵ国を選び、それらの国について、

従属人口比に加え、老年化指数(65歳以上人口を

0

―14歳人口で除し、100を掛けた値)も計算 し、その結果を1975年、2000年、2025年、2050年の4時点で比較している。この表におけ る数値で特に目を引くのは老年化指数の時系列変化であろう。2000年以降では値が100を超 える国の数が急激に増加し、生産年齢人口の割合が経済的に有利な状況が終わると、高齢 化現象がひたひたと迫っている状況が理解できる。

4

年齢構造転換と

2

つの人口配当

最近の10年前後の人口経済学の分野における研究をみると、1990年代におけるアジア経 済の目覚しい躍進に触発されたこともあり、人口の年齢構造が変化する過程で第1次人口配

第 1 表 アジア16ヵ国における年齢構造変化

日  本 0.475 32 0.467 118 0.686 269 0.963 337

韓  国 0.713 9 0.392 35 0.476 149 0.838 300

中  国 0.782 11 0.482 26 0.458 74 0.629 153

モンゴル 0.875 7 0.618 10 0.417 28 0.528 95

シンガポール 0.586 13 0.408 33 0.546 184 0.779 291

タ  イ 0.859 9 0.460 25 0.476 67 0.601 117

フィリピン 0.897 7 0.703 9 0.533 23 0.509 60 インドネシア 0.820 8 0.543 16 0.431 42 0.563 107 マレーシア 0.846 9 0.596 12 0.476 37 0.529 89 イ ン ド 0.768 9 0.647 12 0.472 30 0.470 75 イ ラ ン 0.924 8 0.578 15 0.409 34 0.581 115 パキスタン 0.914 12 0.816 9 0.580 16 0.496 43 バングラデシュ 0.924 7 0.672 9 0.439 25 0.495 82 スリランカ 0.703 11 0.492 24 0.543 65 0.635 123 カザフスタン 0.675 16 0.526 25 0.490 41 0.529 82 アルメニア 0.671 17 0.559 39 0.544 77 0.615 129

従属 人口比

老年化 指数 1975年

(出所) United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2009). 従属

人口比

老年化 指数 2000年

従属 人口比

老年化 指数 2025年

従属 人口比

老年化 指数 2050年

(6)

貯蓄率の上昇、および資本の深化などの経済的なゲインが生まれるとしており、これを人 口配当(demographic dividend)と呼んでいる。

これらの先行研究に続いて行なわれたMason(2007)や

Mason and Lee

(2007)では、人口 配当をさらに2つに区分している。すなわち、Masonらは、出生率低下が起こると人口成長 率は直ちに抑制されるが、労働力の成長率はしばらくの間はそれまでと変わらない、とい う時間差から生じる経済的なゲインが創出されることを指摘しており、Masonらはこれを第

1次人口配当

(first demographic dividend)と呼んでいる。ただし、これはあくまでも経済的な ゲインが生み出されることに対するポテンシャルが高まるということであり、そのポテン シャルを十分に活用できる政策的対応が必要となることは言うまでもない。この点は開発 途上国の長期経済開発の担当者の間でも見落とされる傾向があり、出生低下した国はなん ら政策的対応をしなくても、第

1次人口配当により経済成長が速まると誤解されることがよ

くあり、このような安易な考え方が長期経済計画などに組み込まれるとしたら、きわめて 危険である。

さらに、比較的に短期間で終わってしまう第1次人口配当とは対照的に、長期間にわたっ て経済効果が期待できるものとして第2次人口配当(second demographic dividend)がある。こ の第2次人口配当は次のような

2

つのメカニズムが作用することで生み出されるのである。

ひとつ目のメカニズムでは、いずれの社会でも出生率低下と並行して経済発展が進む結果、

各コホート(同年または同期間に出生した集団)とも寿命が伸長し、老後の期間が長くなるた め、老後のための貯蓄を増強する必要が生じ、本格的な老後設計を開始する50歳ごろから 各コホートで資産形成や投資が促進されるのである。言い換えるならば、50歳前後に接近 するコホートの規模が大きくなるとマクロ的に資産の量も増えることになる。もうひとつ のメカニズムでは、出生低下の結果、子どもの消費に回されるはずであったリソースが貯 蓄に回り、投資活動が強化されることになる。主として、これら2つのメカニズムによって 第2次人口配当が創出される。

ただし、この第2次人口配当も、各コホートがそれぞれの引退生活を貯蓄・投資の増加と いう手段で準備することなく、100%世代間移転に依存して暮らす場合(例えば、年金制度を 完全に賦課方式にし、積み立て方式を放棄した場合)には資本蓄積は進まず、第

2

次人口配当 は創出されず、長期的には経済成長率や1人当たり実質消費にもマイナスの影響を与えるこ とがいくつかのシミュレーション分析から示されている(Mason, Lee and Lee 2008)。言い換え るならば、第2次人口配当は、年齢構造的に

50歳代の人口が相対的に増加しても、公的年金

制度を積み立て方式にするのか、賦課方式にするのか、また医療保険制度の財政方式に民 間保険をどこまで取り入れるのか、さらに家計における将来資産形成に影響を与える税制 制度などによって著しい差が生じることになる。つまり、採用される政策に大きく依存し ているのである。さらに、2つ目のメカニズムについても、少子化によって生ずるはずのリ ソースも、親世代が投資などに活用せず彼ら自身の消費に回してしまった場合には、当然 ながら、その効果は消滅してしまうことは言うまでもない。
(7)

5

アジアにおける第

1次人口配当のタイミングと期間

このような理論的な背景を念頭におきながら、第

1次人口配当をアジア諸国について計算

してみることにする。まず、第1次人口配当を計測するためには、サポート比(support ratio)

を求めることが必要になる。このサポート比は、対象としている国の各年齢の人口数に年 齢別1人当たり消費量を掛け合わせることで有効消費者数(effective consumers)を求め、続い て各年齢の人口数に年齢別1人当たり労働所得を掛け合わせることで有効労働者数(effective

producers)

を求め、後者を前者で除し、その値が時系列的に上昇しているか否かによって第

1次人口配当がプラスかマイナスであるかが判定されるのである。この計算で最も重要なポ

イントは、1人当たり消費年齢プロフィールと

1

人当たりの労働所得年齢プロフィールを家 計調査などのミクロデータをベースに推計することである。

ここでの計算は、アジア各国における家計調査などのミクロデータを入手することはき わめて困難であるので、NTAプロジェクト参加国のなかから、インド(2004年)、インドネ シア(2002年)、フィリピン(1999年)、タイ(2004年)の

4

ヵ国で得られた消費年齢プロフ ィールと労働所得年齢プロフィールを使用することにし、これらの4ヵ国の年齢プロフィー ルを統合することで、 アジアの消費・労働所得プロフィール を求めることにした。

その統合アジアプロフィールが第4図に示されているが、この図にある値を統計的なウェ ートとして各国の年齢別人口数に掛け合わせて、有効消費者数と有効労働者数を求め、こ れらからサポート比を計算している。この計算作業を各国について、1950年から2050年ま での年齢別人口データ(国連人口部による推計結果を使用)を駆使して行なった。ただしここ で注意すべき点は、この第

4

図の年齢プロフィールが1950―2050年の全期間を通じて不変 であると仮定していることである。このように仮定した目的は、年齢構造の変化だけで生 み出される第1次人口配当を数量化するためである。もちろん、理論的には時間の経過とと

労働所得 1.4

1.2

1.0

0.8

0.6

第 4 図 アジアの消費・労働所得の年齢プロフィール

消費 30

49

(8)

もに年齢構造の変化で相対賃金などが変化することも考えられるが、ここではそのような メカニズムは分析対象外となっている。また、計算対象国として、筆者の恣意的な判断で はあるが、アジアの

13の開発途上国を選び出し、第1

次人口配当が創出される期間について 計算結果をまとめたものが第

2表である。

この表をみると、これら

13

ヵ国の間で、第1次人口配当の開始年次のみならず、終了年 次も著しく異なっていることに気付くであろう。第

1次人口配当の開始年次が一番早い韓国、

シンガポールの

1967年と、一番遅いパキスタンの 1995

年ではその差が

28年もある。また、

終了年次も最も早いシンガポールは2004年ですでに終わってしまっているが、最も遅い

2049年のバングラデシュ、フィリピンまで、実に 45

年の差が存在している。また、第1次

人口配当の期間も13ヵ国中最短であるモンゴルが

36年間であり、それにシンガポールの 37

年間が続いている。これに対して、第

1次人口配当の期間が最長となっているのがフィリピ

ンの79年間であり、その他にも

70年間以上の国はバングラデシュの 75年間、マレーシアの

71年間、インドの 70年間が続いている。

第1次人口配当の開始年次、終了年次、配当持続期間がこのように国ごとに著しく異なる のは、それぞれの国の出生低下のペースやその低下幅などが異なるからである。アジアの

13ヵ国でこれだけ第 1次人口配当の出現タイミングが国ごとに異なると、経済成長のピーク

となる時期も異なり、グローバル化された経済状況の下では、輸入・輸出のみならず、資 本の流入・流出のパターンやそのフロー量にも大きな影響が出てこよう。もちろん、前述 したように、各国とも第

1次人口配当を適切な雇用政策・教育政策・健康政策を実施するこ

とで十分に活用できれば、経済成長率はいっそう高くなり、さらなる教育・健康などの人 的資源の拡充や社会保障制度などの充実などができるのである。

第 2 表 アジア13ヵ国における第1次人口配当の時期と期間

バングラデシュ 1974 2049 75 カンボジア 1982 2043 61

中  国 1973 2016 43

イ ン ド 1974 2044 70 インドネシア 1977 2028 51

韓  国 1967 2014 47

マレーシア 1969 2040 71

モンゴル 1990 2026 36

パキスタン 1995 2045 50 フィリピン 1970 2049 79 シンガポール 1967 2004 37

タ  イ 1971 2011 40

ベトナム 1980 2027 47

始まりの年

第1次人口配当

(出所) Ogawa, N., A. Chawla, and R. Matsukura (2009).

終わりの年 期間(年間)

(9)

また、近年、アジアのみならず、世界中から注目されている中国およびインドの計算結 果を第2表でみると、中国は

2016年で第 1

次人口配当が消滅するのに対して、インドは2044 年まで年齢構造の変化がインド経済の成長に有利に働くのである。さらに、韓国は

2014年

で、タイは

2011

年で人口配当が消滅することになり、これらの国々は新たな経済成長戦略 が必要となりそうである。

6

アジアにおける第

2次人口配当の創出

続いて、第2表で検討した13ヵ国についての第

2

次人口配当をみることにしよう。第

2次

人口配当の計測は、第1次人口配当よりも計算手続きがはるかに複雑であり、それに関する 説明はMason(2007)に詳しいので、そちらに譲り、ここでは計算結果のみを検討する。

計算結果は第

3

表に掲げられている。この表では、アジア

13

ヵ国について、2020年から

2050

年までの

30

年間を10年ごとに区切り、各期間における第

2

次人口配当の大きさが追跡 されている。この結果をみると、資本ストックの年増加率はアジアで比較的に開発が遅れ ている国々(例えばカンボジアやバングラデシュ、モンゴル、パキスタン、フィリピンなど)で 高くなっている。ここで注意すべき点は、これらの計算結果は主として年齢構造の変化に よってもたらされる効果を計量化したものであり、これらの国々で今後どのように年金制 度などの社会保障制度を構築するかによって社会で資産が増強されるパターンやレベルが 大きく変わってくるのであり、将来の経済成長シナリオも変化することを忘れてはならな いのである。これらの開発途上国とは対照的に、高齢化や社会保障制度がはるかに進んで いるシンガポールは2030―

40年の期間で第 2

次人口配当はマイナスとなり、韓国も今後資 本ストックの増加率が顕著に低下していく可能性がある。

第 3 表 アジア13ヵ国における第2次人口配当     (資本ストッックの年成長率)

バングラデシュ 2.98 2.06 1.57 カンボジア 4.60 1.98 2.43 中  国 1.14 0.38 0.34 イ ン ド 1.74 1.32 1.13 インドネシア 1.91 1.29 0.78 韓  国 1.03 0.34 0.09 マレーシア 1.53 1.13 1.01 モンゴル 2.46 1.64 1.00 パキスタン 2.94 2.47 2.13

2020−30年 2030−40年 2040−50年

(10)

結びに代えて

アジアの人口は近年ダイナミックに変化してきており、それが経済成長に影響を与えて おり、今後もその傾向は続くことになりそうである。本稿で議論した第1次人口配当、第2 次人口配当は、多くの人々にとっていまだ耳慣れない概念であるが、この2つの変数の今後 の動向は21世紀前半におけるアジア経済の行方を大きく左右することになりそうである。

■参考文献

ドネラ・H・メドウズ、デニス・L・メドウズ、ジャーガン・ラーンダズ、ウィリアム・W・ベアラン ズ三世(1972年)『成長の限界─ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』、大来佐武郎訳、ダイ ヤモンド社。

Bloom, D. E., and J. G. Williamson(1998)“Demographic transitions and economic miracles in emerging Asia,”

World Bank Economic Review, Vol. 12, No. 3, pp. 419–455.

Bloom, D. E., D. Canning, and J. Sevilla(2002)The Demographic Dividend: A New Perspective on the Economic Consequences of Population Change, Santa Monica, CA: RAND.

Mason, A.(2007)“Demographic transition and demographic dividends in developed and developing countries,” in Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the United Nations(ed.), United Nations Expert Group Meeting on Social and Economic Implications of Changing Population Age Structure, New York: United Nations, pp. 81–102.

Mason, A., and R. Lee(2007)“Transfers, capital and consumption over the demographic transition,” in R. Clark, N.

Ogawa, and A. Mason(eds.), Population Aging, Intergenerational Transfers and the Macroeconomy, Northampton, MA: Edward Elgar, pp. 128–162.

Mason, A., R. Lee, and S.-H. Lee(2008)“Demographic transition and economic growth in the Pacific Rim,” NTA Project Working Paper Series, No. WP08-05(available at http://www.ntaccounts.org/web/nta/show/Working%20 Papers).

Ogawa, N., A. Chawla, and R. Matsukura(2009)“Some new insights into the demographic transition and changing age structures in the ESCAP region,” Asia-Pacific Population Journal, Vol. 24, No. 1, pp. 87–116.

United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division(2009)World Population Prospects: The 2008 Revision, New York(advanced Excel tables).

[付記] 本稿における計算は、文部科学省の学術フロンティア事業による私学助成を得て行なわれた成 果の一部である。

おがわ・なおひろ 日本大学人口研究所長 [email protected]

Referensi

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