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保険 と 共済の 「 境界 」 について 早稲 田 大学 江澤雅彦

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(1)

保 険 と 共 済 の 「 境 界 」 に つ い て

早 稲 田 大 学 江 澤 雅 彦

I . は じ め に

2 0 0 6 年 度 ( 末 ) に お け る 4 団 体 と 日 本 生 命 の 業 績 指 標 比 較 ( 単 位 : 万 件 、 億 円 )

全 労 済 全 国 生 協 連 日 生 協 全 共 連 日 本 生 命

保 有 契 約 件 数 3 , 5 9 5 1 , 6 4 7 6 9 2 4 , 2 9 3 1 , 5 6 0 共 済 金 額 ・ 保 有 契 約 金 額 6 , 5 7 3 , o o o l , 8 8 8 , 0 2 6 5 6 , 5 7 8 3 , 5 3 5 , 8 6 6 3 , 3 3 3 , 5 2 2 受 入 共 済 掛 金 ・ 保 険 料 収 入 5 , 8 9 8 4 , 1 5 4 7 3 4 4 6 , 6 5 2 4 8 , 5 4 3 支 払 共 済 金 ・ 支 払 保 険 金 3 , 0 9 2 2 , 0 1 3 2 8 2 3 4 , 9 6 3 3 8 , 3 1 1 総 資 産 2 7 , 6 2 4 3 , 3 8 5 8 7 4 4 4 1 , 0 9 6 5 1 8 , 4 1 9 ( 出 典 ) 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 、

『 全 国 生 協 連 ・ 県 民 共 済 グ ル ー プ の 現 状 2 0 0 6 年 度 』

『 co ・ op 共 済 事 業 の ご 報 告 2 0 0 7 』

『 日 本 生 命 の 現 状 2 0 0 7 』

『 J A 共 済 連 の 現 状 2 0 0 7 』

( 注 ) 日 本 生 命 の 保 有 契 約 件 数 は 、 個 人 保 険 、 個 人 年 金 保 険 の 合 計 。

日 本 生 命 の 保 有 契 約 金 額 は 、 個 人 保 険 、 個 人 年 金 保 険 ( 年 金 原 資 と 責 任 準 備 金 ) 、 団 体 保 険 ( 保 障 額 ) 、 団 体 年 金 保 険 ( 責 任 準 備 金 ) の 合 計 。

全 共 連 の 保 有 契 約 件 数 は 、 生 命 総 合 共 済 、 建 物 更 生 共 済 、 自 動 車 共 済 、 自 賠 責 共 済 の の 合 計 。

全 共 連 の 共 済 金 額 は 、 長 期 共 済 、 年 金 共 済 の 合 計 。

上 表 は 、 各 種 協 同 組 合 法 ( 消 費 生 活 協 同 組 合 法 、 農 業 協 同 組 合 法 ) に も と づ き 共 済 事 業 を 実 施 し て い る 協 同 組 合 の 共 済 4 団 体 と 民 間 生 保 最 大 手 の 日 本 生 命 と を い く つ か の 業 績 指 標 に つ い て 比 較 し た も の で あ る 。 4 団 体 の う ち 、 全 共 連 ( 全 国 共 済 農 業 協 同 組 合 連 合 会 ) 、 全 労 済 ( 全 国 労 働 者 共 済 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ) 、 全 国

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

生 協 連 ( 全 国 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ) は 、 生 命 共 済 に 加 え 、 火 災 ・ 建 物 共 済 、 自 動 車 共 済 等 も 取 り 扱 っ て お り 、 ま た 日 生 協 ( 日 本 生 活 協 同 組 合 連 合 会 ) は 、 元 受 共 済 と し て 住 宅 災 害 共 済 を 扱 う 等 、 程 度 の 差 は あ れ 、 い ず れ も い わ ば 「 生 損 保 兼 営 」 の 状 態 で あ る 等 、 比 較 す る 上 で 留 意 す る 必 要 が あ る 。

本 報 告 に お い て は 、 「 い ま 保 険 と は 何 か を 考 え る 」 を 共 通 論 題 と し て 、 保 険 と 、 そ の 類 似 制 度 と し て の 共 済 の 「 境 界 」 に つ い て 検 討 す る 。 そ の 際 、 共 済 の 形 態 は い く つ か の 種 類 に 分 け る こ と が で き る が 1 、 本 報 告 で は 、 上 表 で 掲 げ た 協 同 組 合 法 に も と づ く 共 済 事 業 の う ち 、 特 に 全 労 済 、 全 国 生 協 連 、 自 生 協 と い っ た 「 大 規 模 生 協 共 済 」 を 取 り 上 げ 2 、 ま た こ れ に 対 し 、 株 式 会 社 ま た は 相 互 会 社 に よ る 保 険 を 会 社 保 険 と 呼 ぶ こ と と す る 。

以 下 、 第 2 章 で は 、 第 2 次 大 戦 前 後 を 通 じ た 、 協 同 組 合 に よ る 『 保 険 」 事 業 へ の 参 入 要 請 と そ の 頓 挫 、 そ の 後 の 「 共 済 」 事 業 の 開 始 の 過 程 を 概 観 す る 。

第 3 章 で は 、 こ こ 数 年 の 法 律 改 正 と い う 環 境 変 化 の 中 で の 協 同 組 合 に よ る 共 済 事 業 = 協 同 組 合 保 険 と 会 社 保 険 の 「 境 界 」 の 変 化 を 考 察 す る 。 す な わ ち 保 険 市 場 が 会 社 保 険 と 協 同 組 合 保 険 に よ っ て 構 成 さ れ 、 後 者 は も は や 前 者 に と っ て outs1de r(外 部 者 ) で は な く 、 comp e tlto r ( 競 合 相 手 ) で あ る こ と の 確 認 で あ る 。

ま た 第 4 章 で は 、 会 社 保 険 に 対 し comp e tltor と な っ た 協 同 組 合 保 険 の 側 が 、 会 社 保 険 の 側 に 対 し 、 そ の 特 徴 - 自 発 的 な 協 同 組 織 に よ る 相 互 扶 助 制 度 - と い う

自 ら の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 発 揮 、 す な わ ち 境 界 設 定 を 行 う た め に は ど の よ う な 運 営 努 力 を 払 う べ き か を 検 討 す る 。

1 押 屋 [ 2 0 0 7 ] に よ れ ば 、 共 済 の 形 態 は 、 ① 先 駆 的 共 済 の 残 存 形 態 、 ② 私 企 業 化 形 体 、 企 業 内 共 済 形 態 、 ⑧ 社 会 保 険 化 形 態 、 ④ 協 同 組 合 保 険 形 態 、 ⑤ 自 主 共 済 形 態 ( = 労 働 組 合 共 済 、 非 営 利 ・ 協 同 自 治 組 織 に よ る 共 済 ) の 5 つ に 分 け ら れ て い る ( p . 8 ) 。

2 共 済 事 業 の 根 拠 法 と な っ て い る 法 律 に は 、 他 に 、 農 業 災 害 補 償 法 、 水 産 業 協 同 組 合 法 、 森 林 組 合 法 、 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 、 地 方 自 治 法 、 国 家 公 務 員 共 済 組 合 法 等 が あ る 。

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ロ . 協 同 組 合 に よ る 「 保 険 」 事 業 へ の 参 入 要 請 3

( 1 ) 第 2 次 大 戦 前 の 動 向

保 険 業 法 が 制 定 さ れ た 1 9 0 0 ( 明 治 3 3 ) 年 は 、 わ が 国 最 初 の 協 同 組 合 法 で あ る

『 産 業 組 合 法 」 が 制 定 さ れ た 年 で も あ る 。 以 降 、 同 法 に も と づ い て 各 種 の 協 同 組 が 各 地 に 設 立 さ れ 、 そ の 数 は 、 1 9 0 4 ( 明 治 3 7 ) 年 に 1 , 2 3 2 、 1 9 1 4 ( 大 正 3 ) 年 に 1 1 , 1 6 0 、 1 9 2 3 ( 大 正 1 2 ) 年 に 1 4 , 2 5 9 に 達 し た 。

こ の よ う に 協 同 組 合 が 普 及 す る 中 、 1 9 2 4 ( 大 正 1 3 ) 年 4 月 に 開 催 さ れ た 「 第 2 0 回 全 国 産 業 組 合 大 会 」 で は 、 生 命 保 険 事 業 開 始 に 関 す る 議 案 が 満 場 一 致 を 以 っ て 採 択 さ れ 、 そ の 実 施 方 法 に つ い て は 、 産 業 組 合 中 央 会 が 調 査 研 究 を 行 う こ と と し た 。 中 央 会 が 策 定 し た 協 同 組 合 に よ る 保 険 事 業 の 構 想 は 、 「 疾 病 保 険 」 、 「 傷 害 保 険 」 、 「 廃 疾 及 家 族 保 険 」 、 『 火 災 保 険 」 、 「 気 象 保 険 」 、 『 家 畜 保 険 」 等 6 種 類 の 保 険 実 施 に 関 す る も の で あ っ た 。 そ の 後 約 2 0 年 間 、 都 合 1 6 回 の 全 国 産 業 組 合 大 会 に お い て 保 険 経 営 の 決 議 が 繰 り 返 さ れ た が 、 当 時 、 保 険 業 の 所 轄 官 庁 で あ っ た 商 工 省 は 、 民 営 保 険 会 社 の 新 設 を 許 可 し な い 方 針 を 堅 持 し 、 ま た 保 険 業 界 の 反 対 も 強

く 4 、 そ れ が 実 を 結 ぶ こ と は な か っ た 5 。 ( 2 ) 第 2 次 大 戦 後 の 動 向

1 9 4 6 ( 昭 和 2 1 ) 年 設 置 さ れ た 金 融 制 度 調 査 会 は 、 第 4 部 会 を 設 け 損 害 保 険 お よ び 生 命 保 険 の 各 分 科 会 に よ っ て 討 議 し 、 株 式 会 社 お よ び 相 互 会 社 の ほ か に 保 険 事 業 を 営 む こ と が で き る 組 織 と し て 協 同 組 合 を も 認 め 、 こ れ を 法 制 化 す る こ と が 決 定 さ れ 、 1 9 4 6 ( 昭 和 2 1 ) 年 3 月 1 1 日 に 政 府 に 答 申 し た 。 こ れ に 呼 応 し て 協 同 組 合 側 も 、 協 同 組 合 保 険 研 究 会 を 設 け 、 繰 り 返 し 業 法 改 正 の 陳 情 を 行 っ た 。 3 以 下 は 、 高 橋 [ 1 9 6 8 ] p p . 7 9 5 一 8 6 8 、 安 井 [ 1 9 9 7 ] pp . 2 7 2 一 2 7 7 に 多 く を 負 っ て い る 。 4 高 橋 [ 1 9 6 8 ] p . 8 0 6 .

5 保 険 事 業 運 営 の 要 望 は 繰 り 返 さ れ 、 つ い に 損 害 保 険 保 会 社 2 社 ( 大 東 海 上 、 大 福 海 上 ) の 買 収 に 成 功 し 、 1 9 4 2 ( 昭 和 L 7 ) 年 2 社 を 統 合 し て 、 組 合 が 経 営 権 を 得 る こ と に 成 功 し た が 、 事 業 形 態 は 株 式 会 社 ( 共 栄 火 災 、 1 9 4 6 ( 昭 和 2 1 ) 年 、 相 互 会 社 、 さ ら に 2 0 0 3 ( 平 成 1 5 年 ) 、 再 度 、 株 式 会 社 に 変 更 ) で あ っ た 。

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 1

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ ; 江澤雅彦

同 研 究 会 は 、 1 9 4 7 年 8 月 金 融 制 度 調 査 会 長 お よ び 大 蔵 大 臣 に 陳 情 書 を 提 出 し た が 、 そ れ に 際 し て の 基 本 的 態 度 は 、 ( a ) 協 同 組 合 組 織 に よ る 保 険 事 業 の 正 常 健 全 な 発 達 を 図 る た め 保 険 業 法 を 速 や か に 改 正 す る こ と 、 ( b ) 保 険 組 合 は 職 域 、 あ る い は 小 区 域 に 限 定 せ ず 、 広 区 域 の 連 合 体 も 認 め る こ と 、 ( c ) 保 険 組 合 の 運 営 に つ い て は 協 同 組 合 の 特 質 を 減 殺 せ ず 、 こ れ を 発 揮 す る よ う に す る こ と 、 で あ っ た 6。

し か し な が ら 、 結 果 と し て こ う し た 陳 情 が 実 現 さ れ る こ と は な か っ た 。

そ の 後 、 議 論 の 場 は 大 蔵 省 保 険 業 法 改 正 委 員 会 に 移 っ た 。 1 9 4 7 ( 昭 和 2 2 ) 年 1 1 月 お よ び 1 9 4 9 ( 昭 和 2 4 ) 年 3 月 、 そ れ ぞ れ 、 い わ ゆ る 「 第 1 次 改 正 委 員 会 」 お よ び 『 第 2 次 改 正 委 員 会 」 に お い て 保 険 業 法 改 正 の た め の 要 綱 案 が ま と め ら れ た 。 そ れ ら は と も に 、 地 域 ま た は 職 域 に も と づ く 保 険 組 合 の 設 置 を 合 法 化 し よ う

と す る も の で あ っ た 。 た だ し 、 第 2 次 案 は 生 命 保 険 を 除 外 す る と い っ た 内 容 も 有 し て い た 。

大 蔵 省 は 、 1 9 5 0 ( 昭 和 2 5 ) 年 1 2 月 の 第 1 0 通 常 国 会 に 上 述 の 第 2 次 案 を 修 正 し た 改 正 法 律 案 7 の 提 出 を 予 定 し た が 、 協 同 組 合 関 係 団 体 の 反 対 も あ り 、 提 案 は 見 合 わ せ ら れ た 。 ま た 同 省 は 、 『 協 同 組 合 の 保 険 事 業 に 関 す る 法 律 』 を 保 険 業 法 改 正 案 と と も に 第 1 5 特 別 国 会 に 提 案 す る こ と と し 、 1 9 5 3 ( 昭 和 2 8 ) 年 1 月 7 日 そ の 要 綱 を 関 係 各 省 に 提 示 し 折 衝 を 開 始 し た 。 そ の 内 容 は 、 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 、 農 業 協 同 組 合 法 、 水 産 業 協 同 組 合 法 、 消 費 生 活 協 同 組 合 法 の 協 同 組 合 ま た は そ の 連 合 会 に 対 し て 、 保 険 業 法 の 準 用 を 求 め る も の で あ っ た 8。

こ れ に 対 し 上 述 諸 団 体 は 、 1 9 5 3 ( 昭 和 2 8 ) 年 1 月 2 1 日 付 け で 反 対 声 明 を 発 し 、 同 要 綱 は 、 「 各 種 協 同 組 合 間 の 相 違 を 無 視 し て 画 一 的 に 規 制 し よ う と し て い る 」 、

「 共 済 の 本 質 と 目 的 と を 無 視 し 営 利 保 険 と 混 同 し て い る 」 と い っ た 理 由 を 掲 げ 、

「 か か る 営 利 保 険 を 擁 護 し 共 済 事 業 を 抑 圧 す る 反 協 同 組 合 的 法 律 を 別 個 に 制 定 す

6 高 橋 [ 1 9 6 8 ] p . 8 1 4 .

7 第 2 次 案 と 異 な る 点 は 、 保 険 組 合 の 出 資 額 を 2 0 0 万 円 以 上 と す る こ と 、 組 織 は 同 一 業 種 に 限 る こ と 、 再 保 険 取 引 を 認 め る こ と 等 が あ っ た ( 高 橋 [ L 9 6 8 ] p . 8 1 8 ) 。

8 い く つ か 摘 記 す れ ば 以 下 の と お り で あ る 。 ① 保 険 会 社 と 同 様 の 基 礎 書 類 を 要 す る 、 ② 責 任 準 備 金 の 積 立 て 、 財 産 利 用 、 保 険 計 理 人 等 に つ い て 保 険 業 法 を 準 用 す る 、 ⑧ 報 告 徴 収 お よ び 調 査 、 監 督 命 令 お よ び 基 礎 書 類 の 変 更 命 令 、 違 法 行 為 に 対 す る 処 分 、 決 算 書 類 の 提 出 等 に つ い て は 保 険 業 法 を 準 用 し 、 募 集 に つ い て は 募 取 法 ( 当 時 ) を 準 用 す る ( 高 橋 [ 1 9 6 8 ] p . 8 2 0 参 照 ) 。

4

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る が 如 き 暴 挙 を 排 し 、 各 協 同 組 合 法 毎 に 監 督 規 定 の 不 備 あ る も の に つ い て は 、 こ れ を 速 や か に 整 備 し 各 協 同 組 合 の 実 情 に 即 し た 共 済 事 業 の 発 達 を 一 層 育 成 助 長 せ ら れ ん こ と を 要 望 す る も の で あ る 」 と し た 。 そ れ ま で 業 法 改 正 に よ る 組 合 保 険 の 認 可 を 求 め て い た 共 済 諸 団 体 は 、 自 由 な 運 営 を 阻 害 す る と し て 、 こ れ に 反 対 す る 立 場 を と る よ う に な っ た 。

こ れ に 先 ん じ て 、 1 9 4 7 ( 昭 和 2 2 ) 年 、 従 来 の 産 業 組 合 法 に 代 わ っ て 農 業 協 同 組 合 法 が 制 定 さ れ 、 同 法 1 0 条 1 項 8 号 に よ り 、 組 合 が 「 農 業 上 の 災 害 又 は そ の 他 の 災 害 の 共 済 に 関 す る 施 設 」 を 実 施 す る こ と が 可 能 と な っ た 。 こ れ が 今 日 の 農 協 に よ る 共 済 事 業 の 出 発 点 と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 農 協 は 、 共 済 事 業 の 普 及 と 再 共 済 の 機 関 と し て 、 1 9 5 1 ( 昭 和 2 6 ) 年 1 月 、 全 国 共 済 農 業 協 同 組 合 連 合 会 を 設 立 し た 。

以 上 の と お り 、 協 同 組 合 は 、 自 ら 「 保 険 」 事 業 を 実 施 す る 方 向 を 模 索 し て い た が 、 各 種 協 同 組 合 や そ の 他 の 共 済 事 業 が 発 生 段 階 か ら 普 及 段 階 に 入 っ て い た こ と も あ り 、 全 国 規 模 で 、 「 共 済 」 と い う 名 称 を 冠 し な が ら も 事 実 上 「 保 険 」 事 業 を 営 む 道 を 歩 み だ し た 。 こ の 農 協 の 共 済 に つ づ い て 、 他 の 協 同 組 合 も そ れ ぞ れ の 組 合 法 9 に も と づ き 、 共 済 事 業 に 着 手 し た 。

要 す る に 、 戦 前 ・ 戦 後 を 通 じ て 協 同 組 合 は 、 自 ら 保 険 事 業 を 営 む こ と を 可 能 と す る た め 保 険 業 法 の 改 正 を 要 請 し た が 、 実 現 に は 至 ら な か っ た 。 そ し て そ の 後 は 、 各 種 協 同 組 合 の 根 拠 法 に 共 済 事 業 の 裏 づ け と な る 規 定 が 盛 り 込 ま れ 、 以 降 、 共 済

と い う 名 で 実 質 的 な 保 険 事 業 を 営 む 途 が 開 か れ る こ と と な っ た 。

m . 法 制 度 の 変 更 に よ る 新 た な 状 況

前 述 し た 経 緯 を た ど り 、 制 度 共 済 は 、 少 な く と も 保 険 業 法 に よ る 規 制 の 枠 外 で 、 今 日 ま で 周 知 の よ う な 普 及 ・ 発 展 を 遂 げ た 。 規 模 の 拡 大 は 、 い わ ゆ る 「 イ コ ー ル ・

9 1 9 5 0 ( 昭 和 2 6 ) 年 1 2 月 水 産 業 協 同 組 合 法 1 0 0 条 の 2 、 1 9 4 9 ( 昭 和 2 4 ) 年 6 月 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 7 0 条 、 1 9 4 8 ( 昭 和 2 3 ) 年 7 月 消 費 生 活 協 同 組 合 法 1 0 条 4 。

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K 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

フ ッ テ イ ン グ 」 論 を 呼 び 起 こ し 、 や が て 制 度 共 済 を め ぐ っ て 法 規 制 の 変 更 が 実 施 さ れ た 。 以 下 、 保 険 業 法 、 保 険 法 、 協 同 組 合 法 に つ い て そ の 動 向 を 概 観 す る 。

( 1 ) 保 険 業 法

2 0 0 6 ( 平 成 1 8 ) 年 4 月 の 保 険 業 法 改 正 に よ り 、 保 険 業 の 定 義 が 見 直 さ れ 、 特 定 の 者 を 相 手 方 と し て 保 険 の 引 き 受 け を 行 う 事 業 に つ い て も 保 険 業 に 含 め 原 則 と

し て 保 険 業 法 の 適 用 下 に お く も の の 、 保 険 業 法 第 2 条 1 項 の 中 に 「 他 の 法 律 に 特 別 の 規 定 の あ る も の 」 を 挙 げ 、 当 面 保 険 業 法 の 適 用 が 除 外 さ れ た 。 こ れ に よ っ て 各 種 協 同 組 合 に よ る 根 拠 法 を 有 す る 制 度 共 済 は 、 保 険 業 法 上 の 保 険 業 に 含 め ら れ る も の の 、 そ の 適 用 を 「 当 面 」 は 、 免 れ る こ と と な っ た 。 す な わ ち 、 金 融 担 当 国 務 大 臣 ( 当 時 ) か ら 、 改 正 保 険 業 法 施 行 後 5 年 を メ ド に 、 制 度 共 済 等 を 含 め た 「 共 済 事 業 全 体 の 在 り 方 」 を 検 討 す る 方 向 性 が 示 さ れ た 1 0。

( 2 ) 保 険 法 ( 2 0 0 8 ( 平 成 2 0 ) 年 5 月 3 0 日 成 立 、 同 年 6 月 6 日 公 布 )

新 法 は 、 商 法 か ら 独 立 し た 単 行 法 と し て 制 定 さ れ 、 そ の 適 用 範 囲 は 商 行 為 と し て 引 き 受 け ら れ る 保 険 に 限 定 さ れ な い こ と と な っ た 1 1 。 ま た 「 保 険 契 約 」 の 定 義 ( 第 2 条 第 1 号 ) に お い て は 、 「 共 済 契 約 」 等 の 名 称 を 問 わ な い こ と が 明 確 化 さ れ た 。

( 3 ) 各 種 制 度 共 済 の 根 拠 法 規 1 2

一 方 、 各 種 制 度 共 済 の 根 拠 法 規 の 改 正 も 行 わ れ た 。 一 例 を 挙 げ れ ば 、 消 費 生 活 協 同 組 合 法 も 約 6 0 年 ぶ り に 改 正 さ れ 、 2 0 0 8 ( 平 成 2 0 ) 年 4 月 1 日 、 施 行 さ れ た 1 3 。 同 法 の 改 正 内 容 の う ち 、 特 に 契 約 者 保 護 に 関 連 す る と 考 え ら れ る 主 な 規 定 を 列 挙 す れ ば 以 下 の と お り で あ る 。

1 ) 最 低 限 保 有 す べ き 出 資 金 額 に 関 す る 規 定 ( 5 4 条 の 2 )

い わ ゆ る 「 入 口 規 制 」 で あ る 。 共 済 金 の 支 払 能 力 を 確 保 す る た め 、 最 低 限 保 有 す べ き 出 資 金 額 を 、 一 定 規 模 以 上 の 共 済 事 業 を 行 う 生 協 で は 1 億 円 以 上 、 ま

1 0 押 尾 直 志 [ 2 0 0 7 ] p . 6 .

1 1 大 串 淳 子 ・ 日 本 生 命 保 険 生 命 保 険 研 究 会 [ 2 0 0 8 ] : 『 解 説 保 険 法 』 弘 文 堂 、 p p . 2 1 - 2 3 . L 2 江 澤 [ 2 0 0 8 ] p p . 9 8 一 m 4 .

1 3 そ の 他 、 農 業 協 同 組 合 法 等 の 改 正 ( 2 0 0 5 ( 平 成 1 7 ) 年 4 月 1 日 施 行 ) 、 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 等 の 改 正 ( 2 0 0 7 ( 平 成 1 9 ) 年 4 月 1 日 施 行 ) 等 が あ る 。

(7)

た 共 済 事 業 を 行 う 連 合 会 は l o 億 円 以 上 と 定 め た 。 2 ) 兼 業 禁 止 に 関 す る 規 定 ( 1 0 条 3 項 )

共 済 事 業 を 行 っ て い る 生 協 が 購 買 事 業 を 兼 業 す る 例 は 多 く み ら れ る が 、 今 改 正 に お い て 、 規 模 が 一 定 以 上 の 共 済 事 業 を 実 施 す る 消 費 生 活 協 同 組 合 お よ び 連 合 会 等 に つ い て は 、 他 の 事 業 の 兼 業 を 禁 止 す る こ と と し た 。

3 ) 諸 準 備 金 の 充 実 に 関 す る 規 定 ( 5 1 条 の 4 第 1 項 、 第 2 項 )

共 済 経 営 に お い て は 、 健 全 性 確 保 の た め 、 出 資 金 に 加 え て 事 業 運 営 の 結 果 生 じ る 剰 余 の う ち の 一 部 を 将 来 の 共 済 金 支 払 い の た め に 積 み 立 て て い る 。 今 回 の 改 正 に お い て 、 毎 事 業 年 度 の 剰 余 金 に 係 る 積 立 割 合 は 1 0 分 の 1 以 上 か ら 5 分 の 1 以 上 に 引 き 上 げ ら れ る と と も に 、 積 立 限 度 は 、 出 資 総 額 の 2 分 の 1 以 上 か ら 出 資 総 額 以 上 に 引 き 上 げ ら れ 、 財 政 力 の 強 化 、 支 払 能 力 の 確 保 が 図 ら れ た 。 4 ) 共 済 計 理 人 の 活 用 に 関 す る 規 定 ( 6 0 条 の 1 1 )

今 回 の 改 正 で は 、 契 約 が 長 期 に わ た る も の で 、 共 済 規 約 の 設 計 に お い て 共 済 数 理 の 知 識 お よ び 経 験 を 必 要 と す る 場 合 や 、 契 約 者 割 戻 し を 行 う 場 合 に は 、 共 済 計 理 人 の 選 任 を 義 務 づ け 、 責 任 準 備 金 の 積 立 の 妥 当 性 や 割 戻 し の 公 正 性 に 関

し て 意 見 書 の 提 出 を 義 務 付 け る こ と と な っ た 。 5 ) 支 払 余 力 比 率 の 導 入 に 関 す る 規 定 ( 5 0 条 の 5 )

共 済 事 業 の 財 務 健 全 性 を 確 保 す る た め 、 一 定 規 模 以 上 の 共 済 事 業 に つ い て 支 払 余 力 比 率 を 定 め 、 同 比 率 に も と づ く 経 営 の 健 全 性 確 保 の た め の 改 善 計 画 の 提 出 お よ び そ の 実 行 命 令 な ど の 行 政 庁 に よ る 早 期 是 正 措 置 を 導 入 す る こ と と し た 。

6 ) 透 明 性 の 確 保 と 外 部 か ら の 監 視 に 関 す る 規 定 ( 3 1 条 の 8 、 5 3 条 の 2 ) 新 た に 組 合 に 加 入 し 、 契 約 を 締 結 す る 組 合 員 等 に 広 く 業 務 お よ び 財 産 に 関 す る 情 報 を 提 供 す る た め 、 そ れ ら に 関 す る 説 明 書 類 に つ い て 公 衆 縦 覧 を 義 務 づ け る こ と と し た 。 ま た 、 負 債 額 が 一 定 以 上 の 共 済 事 業 を 実 施 す る 組 合 に つ い て は 、 外 部 の 公 認 会 計 士 ま た は 監 査 法 人 に よ る 監 査 を 義 務 づ け る こ と と し た 。

7 ) 契 約 締 結 時 に お け る 禁 止 行 為 に 関 す る 規 定 ( 1 2 条 の 2 第 3 項 )

共 済 事 業 が 適 正 に 行 わ れ る に は 、 組 合 員 が 生 協 の 推 進 担 当 者 か ら 十 分 か つ 適 切 な 情 報 を 得 た 上 で 、 契 約 締 結 に い た る 必 要 が あ る 。 そ れ に 資 す る た め 、 従 来

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 1

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

は 、 厚 生 労 働 省 の 通 知 に も と づ く 行 政 指 導 と い う 形 で 行 わ れ て き た 共 済 の 推 進 に 際 し て の 禁 止 行 為 に つ い て 、 保 険 業 法 第 3 0 0 条 「 保 険 契 約 の 締 結 又 は 募 集 に 関 す る 禁 止 行 為 」 1 4 を 準 用 す る と い う 規 定 が 設 け ら れ た 。

8 ) 共 済 契 約 に か か わ る 契 約 条 件 の 変 更 ( 5 3 条 の 4 ~ 5 3 条 の 1 5 )

今 回 の 改 正 に よ り 、 共 済 契 約 に お い て も 保 険 契 約 同 様 、 契 約 条 件 の 変 更 、 具 体 的 に は 、 「 経 営 破 綻 前 の 予 定 利 率 引 き 下 げ 等 」 が 可 能 と な っ た 1 5。

以 上 の よ う な 法 改 正 が 、 同 法 の 規 制 対 象 で あ る 生 協 共 済 に 及 ぼ す 影 響 と し て 以 下 の 点 が 考 え ら れ る 。

第 1 に 、 兼 業 禁 止 、 諸 準 備 金 の 充 実 、 共 済 計 理 人 の 活 用 、 支 払 余 力 比 率 の 導 入 等 に よ っ て 、 確 か に 生 協 共 済 の 財 務 体 質 が 強 化 さ れ る こ と は 予 測 で き る 。 し か し な が ら 、 特 に 諸 準 備 金 の 充 実 、 支 払 余 力 比 率 に よ る 早 期 是 正 措 置 に よ り 、 従 来 、 そ の 特 徴 と し て 指 摘 さ れ る こ と の 多 か っ た 『 共 済 契 約 者 へ の 割 戻 金 の 高 さ 」 1 6 が 一 部 抑 制 さ れ る 結 果 と な ろ う 。 そ の 点 、 組 合 員 へ 十 分 な 説 明 を 行 い 、 理 解 を 得 て 、 生 協 共 済 か ら の 脱 退 を 防 ぐ 必 要 が あ ろ う 。

L 4 本 規 定 に 関 す る 詳 細 な 議 論 は 、 江 澤 [ 2 0 0 4 ] 参 照 。

1 5 保 険 契 約 の 場 合 に つ い て は 、 江 澤 [ 2 0 0 7 ] p p . 3 3 2 - 3 3 5 参 照 。

1 6 以 下 、 「 割 戻 率 」 を 団 体 ・ 会 社 別 に 掲 げ る ( い ず れ も 2 0 0 6 年 度 末 の 数 字 ) 。

・ 全 労 済 … 割 戻 金 総 額 5 0 6 億 円 と 火 災 共 済 の 利 用 割 戻 金 2 3 億 円 を 合 計 し て 5 2 9 億 円 、 受 入 共 済 掛 金 5 , 8 9 8 億 円 で 、 割 戻 率 9 . 0 % ( 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 p . 1 0 ) 。

・ 全 国 生 協 連 … 割 戻 準 備 金 繰 入 額 1 , 3 3 0 億 円 、 受 入 共 済 掛 金 4 , 1 5 4 億 円 で 、 割 戻 率 3 2 . 0 % ( 『 全 国 生 協 連 ・ 県 民 共 済 グ ル ー プ の 現 状 2 0 0 6 年 度 』 p . 2 7 、 p . 4 0 ) 。

・ C 0 ・ O P 共 済 … 生 命 ・ 住 宅 災 害 共 済 、 こ ど も 共 済 の 利 用 割 戻 金 1 0 0 億 円 と 定 期 生 命 共 済 の 割 戻 金 4 1 億 円 を 合 計 し て 1 4 1 億 円 、 受 入 共 済 掛 金 7 3 4 億 円 で 、 割 戻 率 1 9 . 2 % ( 『 C 0 ・ O P 共 事 業 の ご 報 告 2 0 0 7 』 p . 9 、 p . 4 3 ) 。

・ 全 共 連 … 割 戻 準 備 金 繰 入 額 1 , 0 2 3 億 円 、 受 入 共 済 掛 金 4 兆 6 , 5 3 2 億 円 で 、 割 戻 率 2 . 2 % ( 『 J A 共 済 連 の 現 状 2 0 0 7 』 p p . 7 5 一 7 6 ) 。

・ 日 本 生 命 … 社 員 配 当 準 備 金 2 , 3 9 7 億 円 、 保 険 料 収 入 4 兆 8 , 5 4 3 億 円 で 割 戻 率 4 . 9 % ( 『 日 本 生 命 の 現 状 2 0 0 7 』 p . 8 4 、 p . 8 7 )

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第 2 に 、 契 約 締 結 時 の 契 約 者 保 護 の た め に 、 保 険 業 法 第 3 0 0 条 を 準 用 し て 、 「 共 済 契 約 の 締 結 又 は 共 済 の 募 集 、 す な わ ち 推 進 に 関 す る 禁 止 行 為 」 が 法 定 さ れ た 点 を 取 り 上 げ た い 。 か つ て の 厚 生 労 働 省 の 通 知 に も と づ く 行 政 指 導 と い う 形 か ら さ ら に 進 ん で 、 組 合 や そ の 役 職 員 な ど に 対 し て 、 共 済 契 約 の 締 結 等 に 関 し て 共 済 契 約 者 等 に 対 し て 虚 偽 の こ と を 述 べ る こ と を 禁 止 す る な ど 、 共 済 推 進 時 の 行 為 規 制 を 設 け る と と も に 、 共 済 契 約 の 締 結 の 代 理 ま た は 媒 介 を 行 う 者 を 法 令 上 位 置 づ け 、 こ れ ら の 者 に つ い て も 当 該 行 為 規 制 を 適 用 す る こ と に よ り 、 共 済 事 業 の 健 全 な 運 営 を 図 る こ と と し て い る 。

生 協 共 済 の 推 進 は 、 組 合 員 が 自 主 的 に 参 加 し て い る 。 た と え ば 全 労 済 の 場 合 、 職 場 で は 、 組 合 員 の 組 織 と し て 、 労 働 組 合 や 事 業 所 を 「 協 力 団 体 」 と し て 、 労 働 組 合 員 や 従 業 員 に 全 労 済 ・ 共 済 の 紹 介 や 各 種 手 続 き を 行 い 、 地 域 で は 、 全 労 済 に

「 共 感 」 し た 者 を 「 地 域 推 進 員 」 と し て 登 録 し 、 地 域 住 民 に 対 し て 全 労 済 ・ 共 済 の 紹 介 や 各 種 手 続 き を 行 っ て い る 1 7 。

ま た 日 生 協 を そ の 中 心 的 組 織 と す る C O - O P 共 済 の 加 入 に 際 し て は 、 主 に 商 品 を 配 達 ( 共 同 購 入 や 個 別 配 達 ) す る 職 員 や 店 舗 で 働 く 職 員 が 窓 口 と な っ て い る 。 組 合 員 は 、 配 達 商 品 を 受 け 取 る と き や 、 店 舗 に 来 店 し た 際 に 、 C O - O P 共 済 に つ い て 加 入 手 続 き や 問 合 せ を す る こ と が で き る 1 8。

こ う し た 組 合 員 に よ る 自 主 的 な 推 進 に つ い て は 、 生 協 の 活 動 の 特 徴 と し て 維 持 さ れ る 必 要 が あ ろ う 。 そ れ と 同 時 に 、 推 進 現 場 で 働 く 職 員 等 の 意 識 改 革 、 そ の 裏 づ け と な る 推 進 行 為 に 関 す る 教 育 体 制 の 整 備 が 強 く 要 請 さ れ る 。

以 上 の よ う な 新 生 協 法 の 規 定 を 概 観 す る こ と に よ り 、 い ず れ に し て も 、 保 険 業 法 と 生 協 法 が 規 制 レ ベ ル の 平 灰 を 一 定 程 度 合 わ せ る こ と が で き た と 評 価 で き よ う 。

1 7 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 p . 3 6 以 下 参 照 。

1 8 『 co ・ op 共 済 事 業 の ご 報 告 2 0 0 7 』 p . 1 9 以 下 参 照 。 な お 、 2 0 0 7 年 u 月 3 0 日 付 生 協 共 済 研 究 会 資 料 に よ れ ば 、 日 本 生 協 連 の 共 済 推 進 は 、 「 共 同 購 入 ・ 個 配 チ ャ ネ ル 」 で 、 2 0 0 4 年 度 デ ー タ で 新 規 契 約 の 約 7 7 % を 占 め 、 会 員 生 協 の 店 舗 で 来 店 し た 組 合 員 に 対 す る 加 入 推 進 は 、 同 じ く 2 2 % で あ る 。

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ " 江澤雅彦

W . 今 後 の 会 社 保 険 と 協 同 組 合 保 険 の 境 界 に つ い て

- 協 同 組 合 保 険 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 発 揮 の 可 能 性 -

社 団 法 人 日 本 共 済 協 会 『 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 日 本 の 共 済 事 業 』 に お い て 、 共 済 事 業 は 、 「 協 同 組 合 が 保 険 の し く み を 使 っ て 行 う 保 障 事 業 」 と 説 明 さ れ て お り 1 9 、 会 社 保 険 も 協 同 組 合 保 険 も 、 そ の 事 業 内 容 が 「 保 障 の 提 供 」 で あ る と い う 点 で は 共 通 し て い る 。 上 述 の 法 規 制 の 変 更 か ら み て も 、 協 同 組 合 保 険 は 、 も は や 会 社 保 険 の outs1de r で は な く 、 co 肛p et1tor で あ る 20。 問 題 は 、 株 式 会 社 ま た は 相 互 会 社 が 経 営 主 体 と な る 「 会 社 保 険 」 と 、 共 済 と 呼 ば れ る 「 協 同 組 合 保 険 」 の 境 界 の 存 在 の 有 無 、 あ る い は 、 そ の 位 置 づ け で あ る 。

国 際 協 同 組 合 同 盟 ( I CA) 声 明 2 戴こ よ れ ば 、 「 協 同 組 合 は 、 そ の 組 合 員 に よ り 管 理 さ れ る 民 主 的 な 組 織 」 で 、 「 組 合 員 は そ の 政 策 決 定 、 意 志 決 定 に 積 極 的 に 参 加 す る 」 ( 同 第 2 原 則 ) も の と さ れ る が 、 一 方 で 、 そ れ が 大 規 模 化 す る に つ れ 、 加 入 者 の 結 合 は 間 接 的 と な り 、 自 治 意 識 は 希 薄 化 し て ゆ く と い う 可 能 性 も 指 摘 さ れ る 。 ま た 、 制 度 共 済 に よ っ て は 、 そ の 加 入 手 続 き に お い て 、 新 聞 等 に 折 り 込 ま れ た 加 入 申 込 書 に 署 名 し 、 同 時 に 掛 金 の 振 替 口 座 を 指 定 し て 返 送 す る と い っ た 仕 組 み が と ら れ て い る 。 こ う し た 手 続 き か ら み て 、 共 済 団 体 で あ る 協 同 組 合 に 対 し 、 契 約 者 が ロ イ ヤ ル テ ィ を も ち う る か と い う 疑 問 も 生 じ う る 22 。

以 下 で は 、 保 障 の 提 供 と い う 会 社 保 険 と 共 通 の 事 業 内 容 を 有 す る 制 度 共 済 が 、

1 9 同 書 p . 4 参 照 。

2 0 「 そ れ ぞ れ の 保 険 機 関 が 独 自 の 存 在 理 由 を 強 調 す る こ と は 自 由 で あ る が 、 し か し 、 ど れ が 本 筋 で ど れ が ア ウ ト サ イ ダ ー か 、 と い う 色 分 け は あ り 得 な い 。 保 険 と 共 済 は 保 障 の 観 点 か ら は 対 等 で あ る 。 」 田 村 [ 2 0 0 8 ] p . 1 6 6 .

2 1 「 協 同 組 合 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 関 す る I C A 声 明 」 ( 1 9 9 5 年 対こ お け る 協 同 組 合 原 則 と は 、 第 1 原 則 : 自 発 的 で 開 か れ た 組 合 員 制 、 第 2 原 則 : 組 合 員 に よ る 民 主 的 管 理 、 第 3 原 則 : 組 合 員 の 経 済 的 参 加 、 第 4 原 則 : 自 治 と 自 律 、 第 5 原 則 : 教 育 、 研 修 、 お よ び 広 報 第 6 原 則 : 協 同 組 合 員 間 の 協 同 、 第 7 原 則 : 地 域 社 会 へ の 関 与 、 で あ る 。 ( 岡 田 [ 2 0 0 8 ] p . 1 2 3 )

2 2 水 島 [ 2 0 0 6 ] p . 1 2 5 参 照 。

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な お 組 合 員 に よ る 相 互 扶 助 制 度 と し て の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 打 ち 出 す と す れ ば 、 具 体 的 に は 、 ど の よ う な 点 に 努 め る べ き か 、 主 と し て 全 労 済 、 全 国 生 協 連 、 日 生 協 と い っ た 、 い わ ゆ る 大 規 模 生 協 共 済 を 例 に 検 討 す る こ と と し た い 。

以 下 、 「 組 合 員 へ の 契 約 推 進 の 枠 を 超 え た 共 済 ・ 保 険 に 関 す る 幅 広 い 学 習 機 会 の 提 供 」 、 『 共 済 契 約 者 か ら の 意 見 反 映 を 通 じ た 「 間 接 的 自 治 の 実 現 確 保 」 の 2 点 に つ い て 延 べ る こ と と す る 。

( 1 ) 共 済 組 合 員 へ の 契 約 推 進 の 枠 を 超 え た 共 済 ・ 保 険 に 関 す る 幅 広 い 学 習 機 会

の 提 供 1 ) 意 義

た と え ば 、 消 費 生 活 協 同 組 合 法 2 条 に は 、 生 協 が 備 え る べ き 要 件 と し て 、 『 組 合 員 の 生 活 の 文 化 的 経 済 的 改 善 向 上 を 図 る こ と の み を 目 的 と す る こ と 」 が 挙 げ ら れ て い る 。 こ の 目 的 を 共 済 事 業 と い う 分 野 で 果 そ う と す れ ば 、 そ れ を 営 む 主 体 と し て の 生 協 ( あ る い は 連 合 会 ) は 、 単 に 契 約 推 進 の た め に 共 済 に 関 す る 説 明 ・ 情 報 提 供 を 行 う だ け で は な く 、 組 合 員 の 生 活 保 障 に 関 す る 「 経 済 的 改 善 向 上 」 と い う 視 点 の 下 、 他 の 共 済 、 あ る い は 保 険 商 品 に 関 す る 情 報 を 幅 広 く 提 供 し 、 あ る い は 、 ま た そ う し た 学 習 機 会 を 積 極 的 に 設 け る べ き で あ る 。

筆 者 は 別 稿 23 に お い て 、 保 険 募 集 行 為 は 2 重 の 構 造 に な っ て い る と の 認 識 が 重 要 で あ る と 主 張 し た 。 す な わ ち 、 1 つ は 「 全 社 共 通 部 分 」 で 、 保 険 へ の ニ ー ズ を 喚 起 し 、 そ れ を 質 的 ( 保 険 種 類 ) 、 量 的 ( 保 険 金 額 、 保 険 料 の 大 き さ ) に 明 確 に

さ せ る プ ロ セ ス で あ る 。 こ れ は 特 定 会 社 の 特 定 商 品 の 購 入 に 直 接 結 び つ く も の で は い が 、 そ れ は 募 集 行 為 の 今 1 つ の 構 成 要 素 で あ る 、 『 自 社 商 品 販 売 促 進 部 分 」 に 、 そ れ は 募 集 行 為 の 今 1 つ の 構 成 要 素 で あ る 、 「 自 社 商 品 販 売 促 進 部 分 」 に と

り 不 可 欠 な 前 提 と な っ て い る 。 こ う し た 区 分 を 考 慮 す る と き 、 非 営 利 を 原 則 と す る 協 同 組 合 で あ れ ば 、 こ の 「 全 社 共 通 部 分 」 を 契 約 推 進 の 枠 を 超 え て さ ら に 積 極

的 に 推 し 進 め る こ と が 期 待 さ れ る 。

個 別 事 例 を 挙 げ れ ば 、 C O - OP 共 済 の ホ ー ム ペ ー ジ に 「 共 済 事 業 の め ざ す も の 」 と い う 6 か 条 か ら な る 方 針 表 明 が あ り 、 そ の 4 か 条 目 に 『 私 た ち は 、 組 合 員 が 共

2 3 江 澤 [ 2 0 0 4 ] p . 2 0 参 照 。

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

済 や 保 険 に つ い て 学 び あ え る 機 会 を つ く り 、 く ら し に 役 立 つ 保 障 の 選 択 が で き る 力 を 養 い ま す 。 」 と あ る 。 こ う し た 方 針 を よ り 積 極 的 に 推 し 進 め る こ と が 、 共 済 事 業 を 実 施 す る 生 協 の 存 在 意 義 と い え る 。

2 ) 現 状 で の 取 り 組 み

こ う し た 取 り 組 み の 現 状 を 以 下 に 概 観 す る 。

第 1 が 、 全 労 済 に お け る 「 生 活 保 障 設 計 運 動 と 生 活 保 障 プ ラ ン ナ ー の 養 成 」 で あ る 24。 生 活 保 障 設 計 運 動 と は 、 組 合 員 各 人 が 自 分 の ラ イ フ ス テ ー ジ を あ ら た め て 認 識 し 、 自 ら に 合 致 し た あ っ た ラ イ フ プ ラ ン ( 保 障 計 画 や 資 金 計 画 等 の 生 活 設 計 ) を 、 組 合 員 自 ら 立 案 で き る よ う 、 保 険 や 共 済 と い っ た 保 障 分 野 に と ど ま ら ず 、 生 活 関 連 情 報 の 提 供 や 相 談 活 動 を 通 じ て 幅 広 く サ ポ ー ト す る 活 動 で あ る 。 こ れ は 特 に 職 域 協 力 団 体 ( 労 働 組 合 や 職 域 の 共 済 会 ) に お い て 特 に 積 極 展 開 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 公 的 な F P 資 格 を 有 す る 全 労 済 職 員 が 、 同 団 体 の 福 利 厚 生 担 当 者 ・ 労 働 組 合 執 行 部 を 対 象 に F P 単 元 に 準 拠 し て ラ イ フ プ ラ ン や 関 連 知 識 に 関 す る 講 座 を 開 催 し 、 「 生 活 保 障 プ ラ ン ナ ー 」 と し て 養 成 す る も の で あ る ( 2 0 0 7 年 9 月 末 現 在 、 修 了 者 は 全 国 で 約 9 , 000 名 ) 。 こ の 「 生 活 保 障 プ ラ ン ナ ー 」 が 、 個 別 の 組 合

員 か ら の 質 問 に 対 応 す る 。

こ の 全 労 済 の 取 り 組 み に は 、 さ ら な る 量 的 拡 大 を 求 め る と 共 に 、 い わ ゆ る 地 域 組 合 員 に も 浸 透 を 要 請 し た い 。 こ く み ん 共 済 の 取 扱 い 開 始 以 降 四 半 世 紀 を 経 て 、 同 団 体 に お い て 地 域 の 組 合 員 の 重 要 性 は 、 職 域 組 合 員 と 同 様 あ る い は そ れ 以 上 に 高 ま っ て い る と 考 え ら れ る 。 ま た こ く み ん 共 済 が 、 不 特 定 多 数 を 対 象 に 銀 行 窓 口 で 加 入 を 受 け 付 け る と い う 特 徴 か ら み て 、 共 済 事 業 の 利 点 で あ る 共 済 加 入 者 の 共 済 団 体 に 対 す る ロ イ ヤ ル テ ィ を 大 き く 期 待 し 得 な い と の 前 述 の よ う な 批 判 に 鑑 み て も 、 そ う し た 努 力 を 払 う べ き で あ ろ う 。

取 り 組 み の 第 2 の 例 は 、 コ ー プ 共 済 の 「 ラ イ フ プ ラ ン ニ ン グ 活 動 」 25 で あ る 。 こ れ は 、 組 合 員 が く ら し の 保 障 や 「 お 金 」 に つ い て 学 ぶ 活 動 と さ れ て い る 。 中 心 的 な テ ー マ で あ る 「 保 障 の 見 直 し 」 で は 、 組 合 員 に と っ て 真 に 必 要 な 保 障 を 自 ら

2 4 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 p . 2 7 以 下 参 照 。 2 5 『 co ・ op 共 済 事 業 の ご 報 告 2 0 0 7 』 p . 2 3 以 下 参 照 。

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選 択 す る 力 を つ け る 手 助 け を し て い る 。

日 生 協 で は 、 こ の 活 動 の 担 い 手 と し て 、 組 合 員 や 職 員 を 対 象 に 『 ラ イ フ プ ラ ン ・ ア ド バ イ ザ ー ( L P A ) 」 を 養 成 し て い る 。 L P A 養 成 セ ミ ナ ー の 受 講 者 は 、 日 本 生 協 連 所 定 の 講 座 で ラ イ フ プ ラ ン ニ ン グ や 保 険 、 税 金 、 金 融 等 に つ い て 総 合 的 に 学 習 し 、 修 了 後 L P A と な る 。 2 0 0 6 年 度 末 現 在 で L P A は 1 , 8 4 1 名 で 、 全 国 の 生 協 で 活 躍 し て い る 。 こ の LPA が 、 前 述 の 組 合 員 向 け の 「 保 障 の 見 直 し 学 習 会 」 な ど の 企 画 ・ 運 営 お よ び 講 師 活 動 を 行 っ て い る 。 こ の 事 例 に お い て も 、 少 子 ・ 超 高 齢 社 会 に お い て 、 組 合 員 の ラ イ フ プ ラ ン に 関 す る ナ ビ ゲ ー タ ー と な る べ く 、 そ の 活 動 内 容 を 質 量 と も に さ ら に 充 実 さ せ る 必 要 が あ ろ う 。

以 上 、 全 労 済 は 「 生 活 保 障 プ ラ ン ナ ー 」 、 日 生 協 は 、 「 ラ イ フ プ ラ ン ・ ア ド バ イ ザ ー 」 と い っ た 独 自 の 資 格 を 設 け 、 当 該 資 格 を 保 持 す る 組 合 員 が 、 他 の 組 合 員 に 生 活 保 障 全 般 、 税 金 、 金 融 等 に 関 す る 啓 蒙 を 行 う と い う 形 を と っ て い る 。 こ こ で 1 つ 留 意 す べ き こ と は 、 保 障 の 見 直 し に お い て 、 組 合 員 の 既 契 約 が 他 の 保 険 会 社 の も の で あ る 場 合 に 、 前 述 の 保 険 業 法 第 3 0 0 条 の 1 項 4 号 の 「 不 利 益 と な る べ き 事 実 の 不 告 知 に よ る 乗 換 募 集 」 あ る い は 同 項 6 号 の 「 誤 解 さ せ る お そ れ の あ る 商 品 比 較 情 報 の 提 供 」 と い っ た 事 態 を 発 生 さ せ な い と い う こ と で あ る 。

( 2 ) 共 済 契 約 者 か ら の 意 見 反 映 を 通 じ た 「 間 接 的 自 治 」 の 実 現

生 協 共 済 の 契 約 者 は 、 自 ら の 意 見 が 、 頻 繁 か つ 迅 速 に 共 済 運 営 や 共 済 契 約 の 内 容 に 反 映 さ れ て は じ め て 、 生 協 共 済 の 『 民 主 的 運 営 」 を 実 感 す る と 考 え ら れ る 。 そ う い う 意 味 で は 、 組 合 員 の 意 見 吸 収 ・ 反 映 の 仕 組 み の 完 成 度 が 、 そ の ま ま 「 共 済 ら し さ 」 の 尺 度 に な る と い え る 。

1 ) 全 労 済 の 場 合

実 際 の 取 り 組 み と し て 、 ま ず 、 全 労 済 が 2 0 0 年 5 月 か ら 実 施 し て い る 業 務 改 善 活 動 を 同 会 の ホ ー ム ペ ー ジ か ら み て み る 。 『 お 客 様 の 声 」 に 対 す る 改 善 実 績 は 、 以 下 の と お り で あ る 。

・ 2 0 0 5 年 度 に お け る 「 お 客 様 の 声 」 1 7 , 1 7 4 件 に 対 し 業 務 改 善 4 5 件 (0 . 2 6 % )

・ 2 0 0 6 年 度 に お け る 「 お 客 様 の 声 」 l o , 8 3 2 件 に 対 し 業 務 改 善 4 7 件 (0 . 4 3 % )

・ 2 0 0 7 年 度 ( 6 ~ 9 月 ) に お け る 「 お 客 様 の 声 」 3 , 0 2 0 件 に 対 し 業 務 改 善 1 2 件

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 1

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

(0 . 4 0 % )

要 望 数 に 対 す る 業 務 改 善 実 行 数 が 、 1 % を 割 っ て い る と い う こ の 実 績 か ら 判 断 し て 、 契 約 者 か ら の 意 見 に 対 す る 業 務 改 善 の 態 勢 に は 、 改 善 の 余 地 が 大 き く 残 さ れ て い る と い わ ざ る を え な い 。 2 0 0 6 年 4 月 に 役 員 が 委 員 を 兼 ね て 「 お 客 様 満 足 の 向 上 に 向 け た 業 務 改 善 推 進 委 員 会 」 を 設 置 し 、 2 0 0 7 年 1 0 月 か ら は 「 全 労 済 業 務 改 善 向 上 委 員 会 」 と 改 組 し た と の こ と で あ る が 、 こ う し た 措 置 が 実 効 性 を 伴 う こ

と を 期 待 し た い 。

次 に 、 連 合 会 と し て の 全 労 済 を 組 織 す る 各 県 共 済 生 協 の 中 で 、 一 般 組 合 員 か ら の 意 見 が 吸 い 上 げ ら れ る 場 と 考 え ら れ る の が 「 地 区 集 会 」 で あ る 。 こ れ は 、 総 代 会 の 審 議 事 項 ( 決 算 報 告 、 活 動 方 針 ) や 共 済 制 度 の 開 発 ・ 改 定 等 の 重 要 な 課 題 に つ い て 説 明 ・ 意 見 交 換 を も と に 、 総 代 会 ・ 理 事 会 の 審 議 事 項 等 へ の 意 見 反 映 を 行

う も の で あ る ( 2 0 0 7 年 開 催 回 数 ・ 出 席 者 数 ( 全 国 ) 6 2 5 回 1 7 , 7 8 7 名 参 加 ) 。 2 ) 全 国 生 協 連 の 場 合

各 都 道 府 県 民 共 済 に お い て は 、 パ ン フ レ ッ ト を 届 け て い る 普 及 員 が 、 地 域 か ら 直 接 受 け て く る 意 見 ・ 要 望 や 日 常 の 電 話 対 応 に お け る 組 合 員 か ら の 声 を 集 約 し 、 そ れ を 連 合 会 へ 要 望 書 と し て 提 出 す る 。 ま た 、 定 期 的 に 組 合 員 集 会 を 開 催 し 、 直 接 、 共 済 事 業 に 対 す る 意 見 ・ 要 望 を 聴 取 し て 連 合 会 へ 同 じ く 要 望 書 を 提 出 す る 。

そ の 他 、 連 合 会 主 導 の 取 り 組 み と し て 、 商 品 開 発 ・ 制 度 改 正 の 参 考 と す る た め 、 一 定 期 間 の 新 規 契 約 者 に 対 し 、 必 要 と す る 保 障 内 容 、 保 障 額 、 共 済 金 額 に つ い て ア ン ケ ー ト を 実 施 す る 。

3 ) C O - OP 共 済 の 場 合

第 1 が 、 組 合 員 モ ニ タ ー 制 度 で あ る 。 全 国 で 約 400 名 の C O - OP 共 済 モ ニ タ ー が 登 録 し て い る 。 商 品 開 発 を 行 う 際 は 、 組 合 員 に モ ニ タ ー に ア ン ケ ー ト を と り 、 C O - OP 共 済 に 対 す る 要 望 や 意 見 、 あ る い は 新 商 品 案 に つ い て の 感 想 ・ 意 見 等 を モ ニ タ ー か ら 集 約 し て い る 。

第 2 が 、 前 述 の 「 保 障 の 見 直 し 学 習 会 」 の 利 用 で あ る 。 そ こ に 、 商 品 開 発 担 当 者 が 出 席 し 、 C 0 ・ OP 共 済 に 関 す る 要 望 や 意 見 の 聞 き 取 り を お こ な う 。 ま た 、 組 合 員 か ら 個 別 相 談 を 受 け る 。

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第 3 が 、 日 生 協 が 設 置 し た 「 組 合 員 の 声 推 進 室 」 で あ る 。 こ こ で は 、 組 合 員 か ら の 苦 情 ・ 相 談 を 直 接 受 け 付 け 、 そ れ ら を 分 析 し 、 多 発 案 件 や 重 要 案 件 は 商 品 改

定 に 活 か し て い る 。

4 ) 契 約 者 か ら の 意 見 反 映 に よ る 商 品 改 善 の 例

全 労 済 ホ ー ム ペ ー ジ で は 、 全 労 済 が 契 約 者 か ら の 意 見 を 反 映 さ せ て 商 品 を 改 善

し た 例 を 見 る こ と が で き る 。

た と え ば 、 ① 電 話 以 外 で の 共 済 金 請 求 可 能 に す る と い う 要 望 に 対 し て は 、 ホ ー ム ペ ー ジ で 対 応 可 能 と し た り 、 ② 「 落 書 き 」 等 に よ る 車 両 損 害 担 保 の 要 望 に は 担 保 範 囲 を 拡 大 し 、 ③ こ く み ん 共 済 の キ ッ ズ タ イ プ の 入 院 保 障 拡 充 の 要 望 に 対 し て 、 限 度 を 3 6 5 日 に 拡 大 し 、 ④ マ イ カ ー 共 済 で 自 転 車 運 転 中 の 対 人 賠 償 を 要 望 す る 意 見 に 対 し 、 マ イ カ ー 共 済 に 特 約 を 設 定 す る こ と と し た 。

そ の 他 、 C 0 ・ O P 共 済 で は 、 日 頃 か ら 組 合 員 と 接 し て い る 生 協 の 職 員 を 通 じ て 組 合 員 の 声 が 寄 せ ら れ 、 こ う し た 声 を 商 品 開 発 に 生 か し て い る 。 2 0 0 6 年 9 月 に は 、

「 ジ ュ ニ ア 1 8 コ ー ス 」 に 関 し て 、 複 数 の 会 員 生 協 の 職 員 ( 共 済 部 局 職 員 、 共 同 購 入 お よ び 店 舗 の 推 進 担 当 職 員 ) 合 計 2 7 4 名 か ら 報 告 さ れ た 告 知 に よ り 謝 絶 の 対 象 と な っ て い た 疾 病 ( ぜ ん そ く 、 中 耳 炎 、 斜 視 、 扁 桃 炎 等 ) に つ い て 、 そ れ ら を 免 責 と し た 上 で 契 約 を 引 き 受 け る と い う 、 加 入 引 受 基 準 の 緩 和 が 実 施 さ れ た 。

一 般 に 共 済 契 約 は 保 険 契 約 同 様 、 附 合 契 約 性 を 有 し て い る 。 大 量 の 契 約 を 迅 速 に 処 理 す る た め に 共 済 契 約 も 定 型 化 、 標 準 化 さ れ た も の と な っ て い る 。 し た が っ て 、 共 済 契 約 を 締 結 す る 際 、 契 約 者 は 具 体 的 な 契 約 内 容 に つ い て 共 済 者 と 自 由 に 交 渉 す る 余 地 は ほ と ん ど 残 さ れ て お ら ず 、 契 約 者 は 共 済 者 が 一 方 的 に 作 成 し た 契 約 内 容 を 総 て 受 け 入 れ る か 、 契 約 締 結 を 断 念 す る し か な い 。 上 述 の よ う に 、 商 品 の 内 容 改 善 の た め に 、 契 約 者 の 要 望 の う ち 実 行 可 能 な も の が 、 迅 速 に 取 り 入 れ ら る 態 勢 が さ ら に 整 備 さ れ れ ば 、 附 合 契 約 性 の も つ 契 約 者 側 に と っ て の 不 利 益 を 一 部 是 正 す る こ と が 可 能 と な る 。

以 上 、 大 規 模 共 済 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 発 揮 の た め の 運 営 努 力 と し て 、 共 済 ・ 保 険 に 関 す る 学 習 機 会 の 積 極 的 提 供 、 共 済 契 約 者 か ら の 意 見 反 映 を 通 じ た 『 間 接 的 自 治 」 の 実 現 2 つ の 観 点 か ら 現 状 を 概 観 し た 。 特 に 後 者 に つ い て は 、 全 労 済 ホ

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何 か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

一 ム ペ ー ジ で の 改 善 実 施 率 等 か ら み て も 今 後 さ ら に 真 剣 に 取 り 組 む 必 要 が あ る 。 ま た 、 実 際 こ う し た 取 り 組 み は 、 民 間 保 険 会 社 で も 行 わ れ て い る 。 た と え ば 日 本 生 命 で は 、 全 国 の 支 社 ・ 営 業 部 ・ ラ イ フ プ ラ ザ 等 で 、 来 客 時 ・ 電 話 対 応 時 に 寄 せ ら れ る 契 約 者 か ら の 意 見 ・ 要 望 等 の 中 か ら 、 改 善 す べ き 点 に つ い て と り ま と め 、 月 に 1 度 、 支 社 等 の 会 議 で 検 討 し 、 す ぐ に 解 決 で き る 課 題 に つ い て は 、 営 業 第 一 線 で 改 善 対 応 を 行 っ て い る ( 『 お 客 様 の 声 」 に も と づ く 改 善 提 案 活 動 ) 。 ま た 1 9 7 5 年 以 来 、 全 国 の 契 約 者 に 事 業 活 動 を 説 明 し 、 経 営 全 般 、 商 品 ・ サ ー ビ ス 等 に 関 す る 意 見 ・ 要 望 を 聞 く 場 を 設 け て い る ( ニ ッ セ イ 懇 話 会 ) 26。 こ の 点 、 契 約 者 ・ 組 合 員 か ら の 意 見 ・ 要 望 の 吸 い 上 げ の ス ピ ー ド 、 そ の 実 効 性 に つ い て 協 同 組 合 保 険 と 会 社 保 険 の 間 で 「 競 争 関 係 」 が 生 じ て い る と い え る 。 当 面 、 こ う し た 競 争 の 中 で 相 対 的 優 位 を 目 指 す こ と に ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 見 出 す 道 が 考 え ら れ る 。

こ の よ う な 状 況 下 、 大 規 模 共 済 が そ う し た ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 打 ち 出 そ う と す れ ば 、 「 共 済 保 障 の 提 供 者 」 と し て 「 顧 客 」 と 相 対 す る と い う 構 図 は 望 ま し い も の で は な い 。 具 体 的 に い え ば 、 契 約 者 等 の 意 見 ・ 要 望 に 「 対 応 」 あ る い は 「 対 処 」 す る と い う 姿 勢 と い う よ り は 、 む し ろ そ れ ら を 自 ら 呼 び 込 ん で 、 経 営 資 源 と し て 利 用 し 、 契 約 者 志 向 の 経 営 の た め に 資 す る と い う 態 度 が 望 ま れ る 。

V . む す び に か え て

前 章 の 協 同 組 合 保 険 の ア イ デ ン ティ ティ ー に 関 連 し て 、 社 会 保 険 に 見 ら れる 危 険 の 程 度 を 考 慮 し な い 一 律 掛 金 を も っ て 、 危 険 の 程 度 の 低 い 者 か ら 高 い 者 へ の 「 扶 養 性 」 が 実 現 さ れ 、 そ れ に よ っ て 協 同 組 合 保 険 独 特 の 互 助 や 連 帯 と い っ た 価 値 基 準 が 働 い て い る と の 考 え 方 も あ る 。 一 律 掛 金 か ら 生 み 出 さ れ る 内 部 補 助 を も っ て 組 合 員 間 の 相 互 扶 助 ・ 助 け 合 い の 精 神 の 現 れ と す る も の で あ る 。 確 か に 、 全 国 生 協 連 は

「 運 営 方 針 」 に お い て 、 「 一 律 掛 金 ・ 一 律 保 障 」 を 謳 い 27 、 ま た 日 生 協 で 7 割 強 、 全 労 済 で 6 割 弱 の 掛 金 収 入 が 一 律 掛 金 と な っ て い る 現 状 が あ る 28。

2 6 『 日 本 生 命 の 現 状 2 0 0 6 』 p . 9 参 照 。

2 7 『 全 国 生 協 連 ・ 県 民 共 済 グ ル ー プ の 現 状 2 0 0 6 年 度 』 p . 4 参 照 。

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た だ し 、 こ う し た 共 済 団 体 が 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査 29 か ら は 、 契 約 者 の 主 た る 加 入 動 機 が 「 掛 け 金 の 割 安 さ 」 に あ る こ と か ら み て 、 契 約 者 と の 意 思 の 垂 離 が あ る こ と も 否 定 で き な い 。 こ の 点 、 共 済 団 体 の 側 か ら ( 見 込 ) 契 約 者 に 向 け た 、 一 層 丁 寧 な 趣 旨 の 説 明 が 求 め ら れ る と こ ろ で あ る 30。

冒 頭 の 図 表 に 示 し た と お り 、 保 有 契 約 件 数 で は 、 全 労 済 、 全 国 生 協 連 と も 生 保 最 大 手 の 日 本 生 命 を 超 え 、 契 約 の 普 及 ・ 浸 透 と い う 面 で は 「 大 規 模 化 」 し 、 市 場 に お い て 見 過 ご せ な い 存 在 に な り つ つ あ る 。 そ れ が 、 「 保 険 ・ 共 済 統 一 規 制 論 」 の

1 つ の 論 拠 に な っ て い る と 思 わ れ る 。

新 た な 法 制 度 の 下 、 こ れ ら 共 済 団 体 は 、 あ ら た め て 、 協 同 組 合 「 保 険 」 を 運 営

2 8 宮 地 [ 2 0 0 8 ] p p . 1 9 9 - 2 0 0 、 中 林 [ 2 0 0 8 ] p , 1 6 3 参 照 。

一 律 保 険 料 は 日 生 協 の 場 合 、 生 命 共 済 、 住 宅 災 害 共 済 、 こ ど も 共 済 で 、 総 共 済 掛 金 7 3 4 億 円 の 7 3 . 2 % ( 『 co ・ op 共 済 事 業 の ご 報 告 2 0 07 』 p . 3 6 ) 、 全 労 済 の 場 合 、 受 入 共 済 掛 金 う ち 一 律 掛 金 を 取 り 出 す と ( カ ッ コ 内 は 構 成 比 ) 、 こ く み ん 共 済 ・ 団 生 移 行 共 済 ( 2 5 . 2 % ) 、 火 災 共 済 ( 1 0 . 2 % ) 、 自 然 災 害 共 済 ( 4 . 2 % ) 、 団 体 定 期 生 命 共 済 ( 1 5 . 0 % ) 、 交 通 災 害 共 済 ( 2 . 0 % ) で 、 合 計 5 6 . 6 % に な る ( 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 p p . 3 0 一 3 5 、 p . 7 3 参 照 ) 。 2 9 2 0 0 7 年 6 月 に 行 わ れ た 全 労 済 モ ニ タ ー ア ン ケ ー ト ( 複 数 回 答 ) で は 、 全 労 済 の 共 済 へ の 加 入 理 由 は 、 ① 掛 金 が 安 か っ た ( 8 4 % ) 、 ② 保 障 内 容 が 良 か っ た ( 44 % ) 、 ③ 全 労 済 を 信 頼 し て い る ( 4 1 % ) 、 ④ 自 分 に あ っ た 保 障 内 容 だ っ た ( 3 8 % ) 、 ⑤ 全 労 済 が 非 営 利 組 織 で あ る ( 3 6 % ) 、

⑥ 経 営 の 安 定 感 ( 3 2 % ) の 順 で あ る 。 ま た 、 全 国 生 協 連 共 済 の 「 総 号 保 障 型 」 へ の 加 入 理 由 に 関 す る ア ン ケ ー ト ( 2 00 7 年 1 2 月 2 0 日 現 在 、 複 数 回 答 ) の 結 果 は 、 ① 掛 金 に 対 し て 保 障 が 充 実 し て い る ( 2 1 . 5 % ) 、 ② 保 障 が 8 6 歳 ま で 続 く ( 1 6 . 5 % ) 、 ③ 家 族 で 入 っ て も 月 々 の 掛 金 が 安 く 済 む ( 1 3 . 6 % ) 、 ④ 入 院 保 障 も 死 亡 保 障 も 手 厚 く な っ た ( 1 1 . 3 % ) 、 ⑤ 共 済 金 の 支 払 い が 早 い ( 9 . 8 % ) 、 ⑤ 国 や 自 治 体 の 認 可 を 受 け た 事 業 だ か ら ( 9 . 6 % ) 、 で あ る ( 宮 地 [ 2 0 0 8 ] p . 1 9 4

参 照 ) 。

30 ま た 、 今 回 の 報 告 で は 取 り 上 げ な か っ た JA 共 済 が 、 基 本 的 に は 個 別 保 険 料 主 義 に よ り 運 営 さ れ て い る 実 態 を み る と 、 同 共 済 も 含 め た 協 同 組 合 保 険 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 考 え る 場 合 に 、 一 律 保 険 料 に よ る 相 互 扶 助 の 実 践 と い う 考 え 方 は 採 る こ と が で き な い 。

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【 平成 20 年度 日 本保険学会 大会 】

共通論題 「 い ま 保 険 と は何か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ ; 江澤雅彦

す る 者 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 自 ら が 、 保 険 市 場 の outslder で は な く 、 独 自 の 存 在 意 義 、 ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 主 張 す る comp etitor で あ る と の 認 識 が 重 要 で あ

る 3 1 。

共 済 団 体 に お い て も 、 今 後 に 時 代 に 向 け 、 自 ら の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 『 組 合 員 参 加 と 民 主 的 運 営 」 と い っ た 抽 象 的 な 表 現 で 語 れ た と し て も 、 そ の 具 体 化 は い ま だ 模 索 の 時 代 32 をこ あ る と 言 わ ざ る を 得 な い 。 前 章 で 述 べ た ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 発 揮 の た め の 方 策 は 、 そ の 手 が か り に 過 ぎ な い が 、 こ う し た 努 力 を 粛 々 と 続 け る

こ と が 、 今 後 に お い て も 大 規 模 生 協 共 済 が さ ら に 社 会 に 根 付 く 、 一 見 迂 遠 に 見 え

る が 、 最 も 確 実 性 の 高 い 道 だ と 考 え る 。

3 1 田 村 祐 一 郎 教 授 に よ れ ば 、 保 険 と 共 済 を 『 何 ら か の 上 位 概 念 で 括 る か 、 あ る い は 国 民 の 生 活 保 障 の 視 点 か ら 公 ・ 私 保 険 シ ス テ ム を 含 め て 「 生 活 保 障 シ ス テ ム 」 と い う 呼 称 の 下 に 整 理 す る 方 が 分 か り や す い 。 」 ( 田 村 [ 2 0 0 8 ] p . 1 5 0 )

3 2 1 9 9 7 年 8 月 2 8 ・ 2 9 両 日 に 開 催 さ れ た 全 労 済 第 6 9 回 通 常 総 会 に お い て 承 認 さ れ た 「 日 本 の 共 済 協 同 組 合 の 2 1 世 紀 に お け る 協 調 ・ 連 帯 構 想 」 の 中 に 「 近 年 、 協 同 組 合 金 融 で あ る 信 用 組 合 の 破 綻 や 、 住 専 問 題 の 発 生 、 一 部 生 協 の 運 営 と 事 業 の 失 敗 な ど が 生 じ て い ま す 。 き び し い 市 場 の 中 で 戦 わ ざ る を え な い 協 同 組 合 に と っ て 、 経 営 の 近 代 化 を す す め な が ら 、 協 同 組 合 と し て の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 維 持 し 、 組 合 員 参 加 と 民 主 運 営 を 確 保 し つ つ 、 事 業 上 の 優 位 性 と 独 自 性 を ど う 獲 得 す る の か 、 そ れ ぞ れ の 協 同 組 合 と も 大 き な 模 索 の 時 代 と な っ て い ま す 。 」 と あ る 。 ( 『 全 労 済 フ ァ ク ト ブ ッ ク 2 0 0 7 年 版 』 p . 1 0 3 参 照 )

ま た 、 日 本 生 活 共 同 組 合 連 合 会 「 「 保 険 法 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 」 に 対 す る 意 見 」 ( 2 0 0 7 年 9 月 ) に は 、 次 の よ う な 記 述 が あ る 。 「 保 険 と 共 済 と は 、 制 度 の 理 念 や 歴 史 的 な 沿 革 を は じ め 、 監 督 法 や 組 織 法 が 異 な っ て い る こ と か ら 、 保 険 と 同 じ 法 律 の 下 に 適 用 対 象 と す る 場 合 に は 、 ま ず 保 険 と 共 済 に 関 す る 「 定 義 規 定 」 を 設 定 す る こ と が 必 要 で す 。 そ の 点 を 曖 昧 に す る こ と は 、 協 同 組 合 が 行 う 共 済 の 「 相 互 扶 助 」 と し て の 特 質 と 社 会 的 役 割 を 軽 視 し た り 、 共 済 に 対 す る 消 費 者 の 理 解 を 曖 昧 に し た り す る こ と に な る 惧 れ が あ り ま す 。 」

ま さ に 、 『 定 義 設 定 」 が 、 保 険 と 共 済 の 境 界 設 定 で あ っ て 、 協 同 組 合 保 険 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ

ー の 確 立 の た め の 作 業 で あ る 。

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《 参 考 文 献 》

・ 明 田 格 [ 2 0 0 3 ] : 「 共 済 事 業 の 現 状 と 課 題 」 『 ニ ッ セ イ 基 礎 研 RE P ORrr』 ( 2 0 0 3 . 3 ) 、

p p . 1 6 - 1 9 .

・ 番 場 博 之 ・ 千 葉 商 科 大 学 生 協 編 [ 2 00 5 ] : 『 生 協 の 本 』 コ ー プ 出 版 .

・ 江 澤 雅 彦 [ 2 0 0 2 ] : 『 生 命 保 険 会 社 に よ る 情 報 開 示 』 成 文 堂 .

・ 江 澤 雅 彦 [ 2 0 0 4 ] : 「 保 険 顧 客 へ の 情 報 提 供 と そ の 課 題 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 6 8 7 号 、 p p . 3 - 2 2 .

・ 江 澤 雅 彦 [ 2 0 0 8 ] : 「 大 規 模 生 協 共 済 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 」 『 生 協 の 共 済 今 、 問 わ れ て い る こ と 』 ( 生 協 共 済 研 究 会 編 著 ) コ ー プ 出 版 、 p p . 9 5 一 1 1 2 .

・ 本 間 照 光 [ 1 9 9 6] : 「 金 融 ・ 保 険 改 革 と 協 同 組 合 保 険 の 課 題 ( 上 ) ( 中 ) ( 下 ) 」 『 共

済 と 保 険 』 年 3 、 4 、 5 月 号 .

・ 本 間 照 光 [2 0 0 7-- a] ; 「 共 済 危 機 - 日 本 の 共 済 を 踏 み 潰 さ せ て い い の か 」 『 エ コ ノ ミ ス ト 』 第 3 , 8 9 6 号 、 p p . 7 2 - 7 4 .

・ 本 間 照 光 [2 0 0 7‐一 b l : 「 日 本 の 保 険 マ ー ケ ッ ト 拡 大 と 共 済 規 制 」 『 共 済 事 業 と 日 本 社 会 』 保 険 毎 日 新 聞 社 、 p p . 1 5 - 2 6 .

・ 印 南 博 古 口 9 6 7 ] : 『 新 訂 保 険 経 済 』 白 桃 書 房 .

・ 笠 原 長 寿 [ 1 9 8 2] : 『 協 同 組 合 保 険 論 集 』 共 済 保 険 研 究 会 .

・ 松 崎 良 [ 2 0 0 6 ] : 「 根 拠 法 の な い 保 障 の 問 題 点 と 法 規 制 の あ り 方 - 保 険 と 共 済 の 棲 み 分 け に 力 点 を 置 い て - 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 5 9 2 号 、 p p . 3 - 1 8 .

・ 目 崎 雅 之 ( 編 著 ) [ 2 0 0 7 ] : 『 改 正 消 費 生 活 協 同 組 合 法 』 大 成 出 版 社 .

・ 宮 地 朋 果 [ 2 0 0 8 ] : 「 生 協 共 済 に お け る 環 境 変 化 と 未 来 」 『 生 協 の 共 済 今 、 問 わ れ て い る こ と 』 ( 生 協 共 済 研 究 会 編 著 ) コ ー プ 出 版 、 pp . 1 8 9 - 2 0 L

・ 水 島 一 也 [ 2 0 0 6 ] : 『 現 代 保 険 経 済 第 8 版 』 千 倉 書 房 .

・ 村 田 敏 一 [ 2 0 0 6 ] : 「 「 根 拠 法 の な い 共 済 」 規 制 立 法 の 現 状 と 今 後 の 課 題 - 保 険 ・ 保 険 業 の 定 義 と 組 織 法 的 観 点 を 中 心 に 一 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 5 9 2 号 、 p p . 3 9 - 5 8 .

・ 中 林 真 理 子 [ 2 00 8 ] : 「 生 協 共 済 の コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス に 関 す る - 考 察 - 出 資 者 ・ 運 営 者 ・ 共 済 利 用 者 と し て の 組 合 員 を め ぐ っ て - 」 『 生 協 の 共 済 今 、 問 わ れ て い る こ と 』 ( 生 協 共 済 研 究 会 編 著 ) コ ー プ 出 版 、 p p . 1 49 - 1 7 1 .

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【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大会 1

共通論題 「 い ま 保 険 と は何か を 考 え る 」 レ ジ ュ メ : 江澤雅彦

・ 中 村 秀 一 [ 2 0 0 7-- a ] : 「 現 代 社 会 に お け る 生 協 の 意 義 と 役 割 - 生 協 法 改 正 を 担 当 し て - ( 上 ) 」 『 週 間 社 会 保 障 』 No . 2 4 3 3 、 p p . 5 4 一 5 7 .

・ 中 村 秀 一 [ 2 0 0 7-- b ] : 「 現 代 社 会 に お け る 生 協 の 意 義 と 役 割 - 生 協 法 改 正 を 担 当 し て - ( 下 ) 」 『週 間 社 会 保 障 』 No . 2 4 3 4 、 p p . 4 8 - 5 3 .

・ 岡 田 大 [ 2 0 0 8 ] : 「 生 協 共 済 の ビ ジ ネ ス モ デ ル 」 『 生 協 の 共 済 今 、 問 わ れ て い る こ と 』 ( 生 協 共 済 研 究 会 編 著 ) コ ー プ 出 版 、 p p . 1 1 3 - 1 3 1 .

・ 押 尾 直 志 [ 2 006] : 「 協 同 組 合 保 険 と し て の 共 済 と 「 無 認 可 共 済 」 に 関 す る 考 察 - 保 険 経 済 論 か ら 見 た 本 質 的 相 違 を 中 心 に -- 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 5 9 2 号 、 p p . 1 9

- 3 8 .

・ 押 尾 直 志 [ 2 0 0 7 ] : 「 共 済 事 業 の 今 日 的 意 義 と 法 規 制 問 題 」 『 共 済 事 業 と 日 本 社 会 - 共 済 規 制 は な に を も た ら す か - 』 ( 押 尾 直 志 監 修 、 共 済 研 究 会 編 ) 、 p p . 3 -

1 4 .

・ 押 尾 直 志 [ 2 0 0 8 ] : 「 保 険 契 約 法 と 共 済 に つ い て - 保 険 法 部 会 「 中 間 試 案 」 に お け る 保 険 契 約 法 の 「 適 用 範 囲 」 を 中 心 に -- 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 6 0 0 号 、 p p . 2 0 9

一 2 2 6 .

・ 坂 井 幸 二 郎 [ 1 9 7 6 ] : 「 わ が 国 に お け る 協 同 組 合 保 険 の 性 格 と 現 状 分 析 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 4 7 5 号 、 p p . 4 8 一 7 3 .

・ 坂 井 幸 二 郎 [ 1 9 8 1 ] : 「 戦 後 3 5 年 保 険 業 の 回 顧 と 展 望 共 済 に つ い て 」 『 保 険 学 雑 誌 』 第 4 9 5 号 、 p p . 6 0 一 7 6 .

・ 社 団 法 人 農 協 共 済 総 合 研 究 所 [2 00 6] : 『 い わ ゆ る 「 無 認 可 共 済 」 に 対 す る 保 険 業 法 改 正 に 関 す る 有 識 者 研 究 会 報 告 書 』

・ 高 橋 新 太 郎 [ 1 9 6 8 ] : 「 共 済 事 業 の 歴 史 」 『 日 本 保 険 業 史 ・ 総 説 編 』 保 険 研 究 所 、

p p . 7 9 6 一 8 6 8 .

・ 竹 内 昭 夫 [ 1 98 6 ] : 「 保 険 と 共 済 」 江 頭 憲 治 郎 編 『 八 十 年 代 商 事 法 の 諸 相 -- 鴻 常 夫 先 生 還 暦 記 念 』 有 斐 閣 p p . 48 5 - 5 2 0 .

・ 田 村 祐 一 郎 [ 2 0 0 8 ] : 「 共 済 問 題 と 保 険 政 策 」 『 保 険 制 度 の 新 潮 流 水 島 一 也 博 士 喜 寿 記 念 』 千 倉 書 房 、 p p . 1 49 - 1 6 6 .

・ 安 井 信 夫 [ 1 9 9 7 ] : 『 人 保 険 論 』 文 眞 堂 .

2 0

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図 表 1 の 例 で は 固 定資産が 50 減少 し て い る < 図 表 2 > 貸 借 対 照 表
図 表 5 は 、 証券化 の 取 り < 図 表 5 > 世 界 の キ ャ ッ ト ・ ボ ン ド の 発 行 状 況
図表 9 はそ の 考 え方 を 示 し て い る 。 地震が発生 し施設 が損害 を被 り 、 営業が停止す る と バ ラ ン ス シー ト の借 り 方で は 固 定資産が減 り 、 貸 し方で は 、 資本が減少す る 。 資本 は保険金 を受 け取 る こ と で回復で き る の で、 保険契約 の 内容か適切 か ど う か を 見直 し た。 見直 し の結果、

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