国立大学法人福岡教育大学知的財産ポリシー
平 成 2 0 年 3 月 1 9 日 最終改定 平 成 2 7 年 3 月 3 1 日 国立大学法人福岡教育大学
1.総則
(1)本学の社会的使命
福岡教育大学(以下「本学」という。)は,教員養成系大学として優れた教育 者を数多く輩出することを通し,教育界の発展に大きく貢献してきたところであ るが,今日の日本社会は,少子・高齢化,情報化,グローバル化などの激しい潮 流のなかにあり,教育に関する諸課題も,多様化・複雑化の度を深めている。こ のような状況において,本学は,教員養成系大学としての伝統を継承する一方で,
教育をめぐる多様かつ複雑な現代的諸課題に対しても,本学が擁する多彩な研究 者の力を結集しつつ果敢に取り組んでいく必要がある。そして,その教育研究活 動を通して蓄積された知的財産を広く社会に還元することは,とりわけ本学を取 り巻く地域社会の発展や文化の向上に貢献するものとして重要である。
また,2002 年7月3日に国の知的財産戦略会議が公表した知的財産戦略大綱は,
「かつて『象牙の塔』といわれた大学が,自ら知的財産を生み出す体制へと生ま れ変わることが必須である。大学においては,優れた発明が生み出されても,そ れを権利化することにより,その成果を社会へ還元する体制が整備されていなか った。そのうえ,教員の意識も,研究には熱心でも,その成果を社会へ還元させ ることには関心が低かった」と述べたうえで,「大学・公的研究機関等は,企業 の研究開発では生まれにくい創造的な発明を生み出し,それらを社会へ還元する 役割を担うべきであるが,この機能を十分果たしていない。知的財産立国の実現 のためには,この機能を十分に果たすことができるような仕組みを整備すること が欠かせない」と指摘している。特に本学のような教員養成系大学の場合,従来 の製造業中心・重厚長大型の産業構造のもとでは,知的財産分野での社会貢献は,
重視されてこなかったといってよい。しかし,「経済・社会のシステムを,加工 組立型・大量生産型の従来のものづくりに最適化したシステムから,付加価値の 高い無形資産の創造にも適応したシステムへと変容させていくことが求められて いる」(知的財産戦略大綱)なかにあって,例えばソフトウェア開発やコンテン ツ創造などの「情報づくり」をはじめとして,知的財産の創造活動を多角的に展 開することは,技術的に十分に可能であると同時に,重要な社会的使命でもある。
本学は,以上のような認識に立ち,ここに知的財産の創造,保護及び活用に関し て「国立大学法人福岡教育大学知的財産ポリシー」(以下「ポリシー」という。)
を策定し,もって社会貢献及び地域貢献の礎とするものである。
(2)ポリシーの目的
このポリシーは,本学の職員及び役員並びにこれらと共同研究等の関係にある 学生及び本学の規程に基づき受け入れた各種研究員その他の者(以下「職員等」
という。)がその教育研究上の創造的活動を通じて創出した知的財産の取扱いに 関する基本的な考え方を定め,知的財産の創出,保護及び活用を促進し,もって
本学の教育研究活動の成果を教育界その他各界に還元して社会貢献及び地域貢献 を推進するとともに,本学における教育研究活動等の一層の活性化に資すること を目的とする。
(3)用語の定義 1) 知的財産
このポリシーにおいて「知的財産」とは,本学の職員等の教育研究上の創造 的活動により生み出される成果のうち,次のものをいう。
① 特許権の対象となる発明
② 実用新案権の対象となる考案
③ 意匠権の対象となる意匠
④ 商標権の対象となる商標
⑤ 回路配置利用権の対象となる回路配置
⑥ 育成者権の対象となる植物の品種
⑦ 著作権の対象となる著作物としてのプログラム及びデータベース
⑧ 上記①から⑦までに該当しないもののうち,秘匿することが可能であって,
かつ本学の教育研究上又は運営上特に価値があるとして学長が指定する技術情 報その他のノウハウ
⑨ 著作権の対象となる著作物(ただし,上記⑦を除く。)のうち,本学が創作 する企画を立て,かつ本学の名義で公表するもの(以下「法人著作物」という。)
⑩ 研究開発の成果としての有体物(ただし,著作権の対象としての著作物を除 く)のうち,一定の学術的又は財産的価値を有するもの(以下「研究開発成果 有体物」という。)
2) 知的財産権
このポリシーにおいて「知的財産権」とは,特許権,実用新案権,意匠権,商 標権,回路配置利用権,育成者権,著作権その他知的財産に関して日本及び外国 の法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
3) 発明等
このポリシーにおいて「発明等」とは,上記1)の①から⑧までに係る創造的活 動をいう。
4) 職務発明等
このポリシーにおいて「職務発明等」とは,本学が費用その他の支援をして行 う教育研究上の創造的活動,本学が管理する施設設備を利用して行う教育研究上 の創造的活動,又は公的機関や民間企業等の資金を得て行う教育研究上の創造的 活動に基づき職員等が行った発明等であって,かつ当該発明等をするに至った行 為が本学における当該職員等の現在又は過去の職務に属するものをいう。
(4)学生に関する特則
本学の学生が主導的に創出した知的財産については,次のいずれにも該当する 場合を除き,原則として当該学生に知的財産権が帰属する。
1) 学生が本学の研究室等において行う研究に共同して参画し,又は本学の業務 に従事し,これらの結果として知的財産の創出に寄与した場合
2) あらかじめ本学と学生との間で知的財産に関する権利の本学への譲渡及びそ の対価について合意があり,かつ知的財産が創出されたときに本学と当該学生 との間で譲渡契約を締結した場合
2.知的財産管理室
(1)研究開発推進室
本学の職員等が創出した知的財産の取扱いに関する方針(知的財産ポリシーを 含む。)及び関係規程その他の基本的な事項については,研究開発推進室が所管 する。
(2)知的財産管理室
本学における知的財産の創造,保護及び活用に係る活動を実効性のあるものとす るため,知的財産管理室を置き,次の各号に掲げる業務を行う。
1) 知的財産の創造,保護及び活用に関する次の事項に関する審査
① 発明等の職務発明等への該当の有無並びに本学による知的財産権の承継及び 保有の継続等の当否
② 本学が知的財産権の承継を決定した職務発明等に係る特許出願及び登録出願 等(以下「特許出願等」という)の可否並びに当該特許出願等を行う場合にお ける必要事項
③ 本学の特許出願等に係る特許庁における査定その他の行政庁の処分に対する 不服申立ての当否
④ 知的財産の承継及び特許出願等に関する本学の決定に対する異議申立ての当 否
2) 法人著作物及び研究開発成果有体物の管理並びに法人著作物及び研究開発成 果有体物の活用に関して必要な事項に関する審議
3) 知的財産の技術移転に関して必要な事項に関する審議
3.職務発明等に関する取扱い
(1)権利の帰属
職務発明等に係る知的財産権は,原則として本学に帰属する。この例外につい ては,別に定める。
(2)届出
職員等は,職務発明等を行ったと思われるときは,速やかに学長に届け出る。
この届出は,職務発明等の内容を学術論文等として公表する予定がある場合には,
原則として公表の前に行うものとする。
(3)知的財産権の承継等の決定
学長は,届出のあった発明等につき,知的財産管理室における審査の後,職務 発明等への該当の有無,知的財産権の承継の当否及び特許出願等を行う場合の必 要事項を速やかに決定する。発明者等は,学長が当該発明等について職務発明等 に該当せず,又はその知的財産権を承継しないと決定した後に限り,特許出願等 又は第三者への当該権利の譲渡をすることができる。
(4)特許出願等
本学が知的財産権の承継を決定した職務発明等に係る特許出願等は,知的財産 管理室と担当事務職員との連携のもとに行い,発明者等は,必要に応じてこれに 協力する。
(5)発明者等への補償
学長は,本学が知的財産権を承継したとき,又は承継した知的財産権の行使若
しくは処分により収益を得たときは,発明者等に対し別に定める補償金を支払う。
4.法人著作物の取扱い
(1)権利の帰属
職員等が職務上の行為として創作した法人著作物の著作者は,本学とし,その 著作権は,契約,就業規則その他に別段の定めがない限り,本学に帰属する。
(2)管理者
法人著作物の管理については,知的財産管理室において行う。
(3)利用許諾等
学長は,法人著作物が次のいずれかに該当する場合は,知的財産管理室におけ る審議の後,取り扱いについて速やかに決定する。
1) 本学が学外から利用許諾等の申込みを受けたとき 2) 本学が学外に対する利用許諾等を必要とするとき
3) 法人著作物と本学に帰属する知的財産権との関連が生じたとき
5.研究開発成果有体物の取扱い
(1)権利の帰属
職員等が創作又は取得した研究開発成果有体物のうち,次のいずれかに該当す るものに係る権利は,原則として本学に帰属する。
1) 研究開発の際に創作又は取得された有体物であって,研究開発の目的を達成 したことを示すもの
2) 研究開発の際に創作又は取得された有体物であって,上記1)の有体物を得る のに利用されるもの
3) 上記1)又は2)の有体物を創作又は取得するに際して,派生して創作又は取 得された有体物
(2)管理者
研究開発成果有体物の管理は,その性質及び財産的価値等に応じ,創作者若し くは取得者又は知的財産管理室が関係する法令及び学内規程を遵守して行う。
(3)利用許諾等
研究成果有体物について学外より利用許諾等の申込みがあった場合の取扱いに ついては,次の通りとする。
1) 申込者が非営利目的での利用を予定している場合には,当該研究成果有体物 の管理者が申込者と当該利用に係る契約を締結し,その旨を学長に報告する。
2) 申込者が営利目的での利用を予定している場合には,当該研究成果有体物の 管理者は,その旨を学長に報告する。学長は,知的財産管理室での審議の後,
その可否を決定し,可とする場合は,申込者と当該利用に係る契約を締結する。
6.知的財産の保護,管理及び活用を推進するための方策及び措置
(1)知的財産の保護,管理及び活用を推進するための体制の整備
本学は,部局と事務局が連携して知的財産の保護,管理及び活用を推進するた め,その体制の整備に努める。
(2)啓発・教育活動
本学は,構成員の知的財産に対する理解と意識の向上を図るため,教員に関し
ては研究及び技術シーズを知的財産化するための知識及び技能の修得を,事務職 員等に対しては知的財産の管理事務に必要な知識及び技能の修得をそれぞれ主た る目的として,学外関係機関及び団体の協力のもとに講習会等を定期的に開催し,
並びに当該機関・団体が開催する講習会への参加を促す。また,学生に対しては,
知的財産教育の体制及び内容の充実を図る。
(3)教材開発のための拠点形成
本学は,教員養成系大学としての特性を活かして知的財産を創出及び活用する ため,初等教育から高等教育までの教材開発のための拠点形成を図る。開発した 教材について特許権等の取得による知的財産化を促進するとともに,各教育委員 会,各教育センター及び教育関連産業その他の関係機関及び団体と連携して当該 権利の実質化に取り組む。
(4)技術移転
本学は,その有する知的財産について,民間団体等への技術移転によりそれが 適正かつ有効に社会で活用される場合は,知的財産管理室での審議の後,学長の 決定を経て,当該団体等に対して,必要な条件を定めた技術移転契約を締結した うえで技術移転を行う。また,本学は,技術移転を行った後,当該団体等におけ る技術の利用状況を適宜把握し,社会でのその最大限の活用に努める。
(5)知的財産の再評価
本学は,その有する知的財産について,一定の期間経過後に再評価を行い,利 用又は活用の見込みがないと判定したものについては,当該発明者等に知的財産 を無償で返還することができる。ただし,当該発明者等が返還を希望しない場合 は,知的財産権を放棄することができる。
(6)秘密保持
本学において知的財産の取扱いに携わる全ての者は,知的財産の内容その他の 事項について,必要な期間(その職務を離れた後を含む。)において,秘密を保 持する義務を負う。
(7)異議申立て権の付与
本学は,創出した知的財産の取扱いについて異議がある職員等に対し,学長へ の異議申立て権を付与する。異議申立てを受けた学長は,知的財産管理室に付託 し,かつ申立人に対して意見陳述の機会を与えたうえで,速やかに当該申立ての 取扱いを決定する。