応用数値解析特論 第 12 回
〜Navier-Stokes 方程式に対する有限要素法(3)〜 非定常Navier-Stokes方程式
かつらだ
桂田
ま さ し
祐史
https://m-katsurada.sakura.ne.jp/ana2022/
2022年12月19日
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 https://m-katsurada.sakura.ne.jp/ana2022/応用数値解析特論 第12回 〜Navier-Stokes方程式に対する有限要素法(3)〜 非定常Navier-Stokes方程式 1 / 26
目次
1 本日の講義内容、連絡事項
2 Navier-Stokes方程式に対する有限要素解析
非定常Navier-Stokes方程式
はじめに 例題
弱形式の準備
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 FreeFem++のconvevt()
流線を描くテクニック 3 流体力学の常識: Poiseuille流
4 参考文献
本日の講義内容、連絡事項
流体力学の方程式の最後として、非定常Navier-Stokes 方程式を取り上 げる。有名な一様流の中に置かれた円柱の周りの流れを取り上げる。
Newton法のような反復解法は必要ないが、安定性の確保が大きな問題
となる。それへの対処策は現在も研究中である。
レポート課題Bの提出先をOh-o! Meijiに用意しました。〆切は2023年 1月18日18:00です。(Covid-19の流行状況にもよるが) 提出したレポー トの内容について最後の授業 (2023/1/22 2限) に口頭試問を行う。
かつらだ 桂 田
まさし
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11 Navier-Stokes方程式に対する有限要素解析11.5非定常Navier-Stokes方程式 11.5.1はじめに
非定常Navier-Stokes方程式の有名な問題を1つ解いてみよう。
日本応用数理学会のチュートリアル (2016) で公開された資料である、
鈴木 [1] の “Time-dependent Navier-Stokes equations around a cylinder”
とそのサンプル・プログラムを読んでみる。
https://www.ljll.math.upmc.fr/~suzukia/FreeFempp-tutorial-JSIAM2016/
このサイトに置いてある example9 NS-cylinder.edpを入手しよう。
curl -O https://www.ljll.math.upmc.fr/~suzukia/FreeFempp-tutorial-JSIAM2016/EDP/NS-cylinder.edp
有名な円柱をよぎる一様流の問題である。Reynolds数を変えることで、
流れがどのように変わるか、多くのテキストで説明されている。
“fluid cylinder”などのキーワードで、動画を検索してみることを勧める。
かつらだまさし
常識的知識 : 円柱のまわりの一様流
基本的な文献である今井[2]での「円柱のまわりの一様流」の説明の図1-1 (p. 3)
図 1:今井[2] Reynolds数R の増加とともに層流,双子渦, Karman渦列,乱流、と遷移する R が小さいうちは対称性を持つ定常流。大きくなると非定常流,交互に逆向きの渦が発生して流れる
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.2 例題
問題を考える領域Ωは、長方形領域から閉円盤を除いたものである。
Ω = ((−1,9)×(−1,1))\
(x,y)(x−3/4)2+y2 ≤1/16 .
Ωの境界を、以下の5つの部分に分ける (下、上、右、左、穴の縁)。 Γ1 = [−1,9]× {−1}, Γ3 = [−1,9]× {1},
(1a)
Γ2 ={9} ×[−1,1], Γ4 ={−1} ×[−1,1], (1b)
ω=
(x,y)(x−3/4)2+y2 = 1/16 . (1c)
かつらだまさし
11.5.2 例題
Navier-Stokes方程式の以下の初期値境界値問題(方程式は鈴木先生の資料によ
る)を考える。
∂u
∂t +u· ∇u−2ν∇ ·D(u) +∇p= 0 (in Ω×(0,∞)), (2a)
∇ ·u = 0 (in Ω×(0,∞)), (2b)
u=0 (onω×(0,∞)), (2c)
u= (1−y2,0) (on Γ4×(0,∞)), (2d)
u·n= 0∧(2νD(u)n−pn)·t= 0 (on (Γ1∪Γ3)×(0,∞)), (2e)
2νD(u)n−pn=0 (on Γ2×(0,∞)), (2f)
u(x,0) = Stokes方程式の解 (2g)
u: Ω×[0,∞)→R3,p: Ω×[0,∞)→Rは未知関数である。
n と t は、境界上の点における外向き単位法線ベクトル、単位接線ベクトル である。
ν は既知の正定数である(Reynolds数の逆数)。 D(u) =
1 2
∂ui
∂xj +∂u∂xj
i
は歪テンソルである(前回まではE(u)と書いた)。
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.2 例題
∇ ·D(u)はその発散である(行毎にベクトル場の発散を並べたもの)。結局
∇ ·D(u) =4u+grad divu
ということになり(説明済み)、(2a)は確かにNavier-Stokes方程式である。
境界条件の物理的な意味を復習しておく。
(2c)は粘着境界条件(no-slip boundary condition)
(2d)はDirichlet境界条件(境界値はポアズィユ流(付録参照)の値) (2e)は滑り境界条件(slip boundary condition)
(2f)は応力が0という条件(outflow conditionと呼ぶ人が多い) 記号は異なるが、第10回講義スライドp. 6の (1a)–(1e)で
f =0, g1(x,y) :=
(1−y2,0) ((x,y)∈Γ4)
(0,0) ((x,y)∈ω), g2=0 とした場合である。
初期値は、対応する定常Stokes方程式の解u0とする(これは境界値問題を解 いて求めている)。
かつらだまさし
11.5.3 弱形式の準備
弱形式の作り方は、第10回の講義と同じ議論を行う。
Γ4∪ω で定義されたg に対して(g =g1,g =0として用いる) V(g) :=
v ∈H1(Ω)2v =g on Γ4∪∂ω, v·n= 0 on Γ1∪Γ3 , Q:=L2(Ω).
弱形式(作りかけ)
Find (u(t),p(t))∈V(g1)×Q (t∈[0,∞)) s.t.
Du Dt(t),v
+a(u(t),v) +b(v,p(t)) = 0 (v ∈V(0),t>0), b(u(t),q) = 0 (q∈Q,t >0),
u(·,0) =u0. ただし
a(u,v) := 2ν Z
Ω
D(u) :D(v)dx, b(v,p) :=− Z
Ω
p∇ ·v dx.
物質微分項 Du
Dt をどう扱うかが問題になる。
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.3 弱形式の準備
第10回の講義では、物質微分に由来する Du
Dt(t),v
の扱いは述べな かった。
素朴に考えると、熱方程式のときのように、∂u
∂t を後退差分近似するこ と、すなわち ∂u
∂t(tn)≒ un−un−1
∆t が思い浮かぶ。この方法でも、流速が 非常に小さい場合はそれなりの結果が得られる。
しかし、流速が大きくなると不安定性が生じてうまく行かない。それに 対処するための方法がいくつか考えられている。
ここでは、FreeFem++で比較的実装しやすいLagrange-Galerkin法を 紹介する。
かつらだまさし
11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式背景と歴史一般に、移流の効果がある現象のシミュレーションで、安定性を向上させるた めに、上流(
かざかみ
風 上)の情報を優先的に取り入れるという方法がある。(これは有限 要素法や流体力学の方程式に限定されるものではなく、差分法や移流拡散方程式 などにも現れる。)
特性曲線有限要素法はその考え方に基づく方法で、Lagrange-Galerkin法とも
呼ばれる(物質微分のことをLagrange微分ともいうから?)。
1982年に出版されたDouglas-Russel [3], Pironneau [4]が世界的に有名である が、日本では Tabata [5]以来の田端スクールの研究がよく知られている(野津・
田端[6], Notsu-Tabata [7], Tabata-Uchiumi [8],内海・田端[9])。
理論的に安定に計算できる手順は知られているが、積分を厳密に計算する必 要があり、FreeFem++ でそれを実行する効率的なプログラムを書くのは難しく (以前そういう課題を院生に与えたが、力及ばなかった)、いいかげんな数値積分 で実装した場合は、「十分小さな刻み幅を用いれば安定」(もちろん、もはや無条 件安定とは言えない)となるようである。
現在でも精度の改善など研究が続いている。
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 物質微分の近似以下は、おおむね内海[10]に従って説明する。特に難しいことをしているわ けではないが、文献によっては、いい加減な記述で混乱した説明になっているも のが珍しくない。きちんと書かれた[10]はありがたい(自力でやったものを照ら し合わせられないと不安が残る)。
Ω⊂Rd,T >0,そして流速場u: Ω×[0,T)→Rd があるとする。
s∈[0,T),x ∈Ωとする。X(·;x,s) : [0,s]→Ωが、時刻s でx を通る特性 曲線(characteristic curve)であるとは、次式が成り立つことをいう。
(3) dX
dt (t;x,s) =u(X(t;x,s),t) (0≤t <s), X(s;x,s) =x
X(t;x,s)は、時刻sでx にいる流体粒子の、時刻t における位置を表す。
時刻を刻み幅∆t (>0) で離散化する。すなわち (4) tn:=n∆t (n= 0,1,2,· · ·)
における値un(x) :=u(x,tn),pn(x) :=p(x,tn)を求めることを目標とする。
かつらだまさし
学生の相手をした経験から言うと、次の初期値問題の解φをX(·;x,s) と表す、という方が分かりやすいかもしれない、と考えている。
φ′(t) =u(φ(t),t) (t ∈[0,s)), φ(s) =x.
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 物質微分の近似ϕ: Ω×[0,T)→Rの物質微分 Dϕ
Dt が、流体粒子から見た時間変化率であるこ とは説明してある。それによると
∂ϕ
∂t +u· ∇ϕ
(x,tn) = d
dtϕ(X(t;x,tn),t) t=tn
≒ϕ(X(tn;x,tn),tn)−ϕ(X(tn−∆t;x,tn),tn−∆t)
∆t
=ϕ(x,tn)−ϕ(X(tn−1;x,tn),tn−1)
∆t .
すなわち
(5)
∂ϕ
∂t +u· ∇ϕ
(x,tn)≒ϕn(x)−ϕn−1(X(tn−1;x,tn))
∆t .
ただしϕn(x) :=ϕ(x,tn)である。
かつらだまさし
11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 物質微分の近似FreeFem++のドキュメントや鈴木厚先生は、写像x 7→X(tn−1;x,tn)をXn−1 と表す記法を用いている。それを使うと
ϕn−1(X(tn−1;x,tn)) =ϕn−1(Xn−1(x)) =ϕn−1◦Xn−1(x).
ゆえに ∂ϕ
∂t +u· ∇ϕ
(x,tn)≒ ϕn(x)−ϕn−1(X(tn−1;x,tn)
∆t = ϕn(x)−ϕn−1◦Xn−1(x)
∆t .
個人的な意見
私は、X(·;·,·)とXn−1で、X という文字を使い回しているのは、混乱を引 き起こしかねないような気がする(この後X∗n−1なんてのも出て来るし)。例 えば微分方程式の解の方をφ(t;x,s)と書いて
Xn−1(x) :=φ(tn−1;x,tn) とするとか記号を工夫してみたい。
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 弱形式 Navier-Stokes方程式の弱形式に現れる DuDt,vをこのやり方で差分近 似する。
un−un−1◦Xn−1
∆t ,v
+a(un,v) +b(v,pn) = 0 (v ∈V(0)), (6a)
b(un,q) = 0 (q ∈Q).
(6b)
… これが Lagrange-Galerkin法である。
連立1次方程式の係数行列に、対流項(u· ∇)u に由来するものが入ら ないため、行列は対称になる。これは数値計算には有効である。
安定性にも効果がある。移流拡散方程式に適用した場合に無条件安定で あり、Navier-Stokes 方程式に適用した場合も ∆t ≤Chd/4 という形の安 定性条件が成り立つ (S¨uli [11])などの結果がある。
かつらだまさし
11.5.4
Lagrange-Galerkin法とそれによる弱形式 物質微分の近似X(·;x,tn)は常微分方程式の初期値問題 dX
dt (t;x,tn) =u(X(t;x,tn),t) (0≤t<tn), X(tn;x,tn) =x の解である。(5) の右辺に現れるXn−1(x) =X(tn−1;x,tn) の厳密な値を 計算するのは難しいが、近似値で良ければ Euler法による次の値を使うこ とが考えられる。
(7) X∗n−1(x) :=x −un(x)∆t.
すなわち
(8)
∂ϕ
∂t +u· ∇ϕ
(x,tn)≒ ϕn(x)−ϕn−1(X∗n−1(x))
∆t .
かつらだ 桂 田
まさし
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11.5.5 FreeFem++ の convevt()
FreeFem++には、convect([u1,u2],∆t,ϕ)というオペレーターが用意され ている。
u1,u2,ϕはいずれもある有限要素空間Vhの要素であり、∆t∈R, ∆t6= 0 で ある。
convect([u1,u2],∆t,ϕ)はϕ◦X を返す。ここでX: Ω→Rd は以下のよう に定義される。
任意のx ∈Ωについて、微分方程式の初期値問題 dξ(t)
dt (t) =u(ξ(t)), ξ(0) =x
の解ξ (これはx に依存するので、本来はξ(·;x)のように、x を添えて表すべ きかもしれない)を用いて
X(x) =ξ(∆t)
と定める。(X はベクトル場u の定める力学系において、時間 ∆t が経過した後 の位置を対応させる写像である。)
前項のϕn−1◦Xn−1は、convect([u1n, u2n],−∆t,ϕn−1)とすれば計算できる。
かつらだまさし
11.5.6 流線を描くテクニック
速度場uが与えられたとき、流線は、常微分方程式を解くことで描けるが、も し流れ関数が求まるならば、その等高線としても描くことができる。
命題
1 (非圧縮流と流れ関数)2次元領域Ωにおける速度場u について、次が成り立つ。
(1) u の流れ関数が存在するならば、u は非圧縮である。
(2) u が非圧縮ならば、Ωの任意の単連結部分領域でu の流れ関数が存在する。
(3) u の流れ関数ψ が存在するとき、4ψ=−rotu. (rotu = ∂u∂x2 −∂u∂y1.) 証明は難しくない(次の応用複素関数のスライド1枚)。
https://m-katsurada.sakura.ne.jp/complex2-2021/AC06_0525_handout.pdf#page=13
今考えている問題は非圧縮流である。Ωは1つ穴が空いているので単連結で はないが、穴の縁ω で u= 0であるので、実は流れ関数ψが存在する。実際、
ψ(x) :=
Z
γx
(−u2dx+u1dy)
とすれば良い。ここでγx は、定点a= (−1,0) からx に至る曲線である。
かつらだ 桂 田
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11.5.6 流線を描くテクニック
Z
ω
(−u2dx+u1dy) = 0であるから、ψ(x)がγx の取り方によらずに定まる。
ψはPoisson方程式の境界値問題の解として求めることができる(?)。
−4ψ=rotu =∂u2
∂x −∂u1
∂y . Γ4 でのDirichletデータが次のように求まる。
ψ(−1,y) = Z y
0
u1dy = Z y
0
(1−y2)dy=y−y3.
Γ1, Γ3でのDirichletデータが次のように求まる。
ψ(x,±1) =±2 3+
Z
(−1,±1)→(x,±1)
(−u2)dx=±2
3 + 0 =±2 3.
ω ではψ= 0と鈴木先生は書いているが…理解できない。((−1,0)から(0,0)ま での水平線上でu2= 0として (なぜ?)、ψ(0,0) = 0と結論している。)
またΓ2で ∂ψ
∂n = ∂ψ∂x =−u2= 0としているが、これも根拠が良く分からない。
かつらだまさし
流体力学の常識 : Poiseuille 流
ポ ア ズィユ
Poiseuille流は、ハーゲンHagen-Poiseuille流,管内流とも言う。定常Navier-Stokes方程式の有 名な特殊解である。
空間内の(断面が円盤である)柱状領域
(9) Ω :={(x,y,z)∈R3|y2+z2<a2} における定常Navier-Stokes方程式
ρ(u· ∇)u=−gradp+µ△u (in Ω), (10a)
divu= 0 (in Ω), (10b)
u=0 (on∂Ω) (10c)
を考える。無限遠での境界条件の指定はしていないので、このままでは解が一意には定ま らない。
一方向の流れ、つまり速度場u= (u,v,w)が
(11) v =w = 0, i.e. u= (u,0,0)
となっている場合を考える。
非圧縮条件divu= 0は、
0 = ∂u
∂x + ∂v
∂w +∂w
∂z =∂u
∂x となるので、u=u(y,z)となる。
かつらだ 桂 田
まさし
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流体力学の常識 : Poiseuille 流
結局Navier-Stokes方程式中の非線型項(u·∇)u= 0となる。実際(v =w= 0,
∂u/∂x= 0であるので)
(u· ∇)u =
u∂u∂x +v∂u∂y +w∂u∂z u∂v∂x +v∂v∂y +w∂v∂z u∂w∂x +v∂w∂y +w∂w∂z
=
0 0 0
=0.
従って
0=−1
ρgradp+ν△u.
成分表示すると
0 0 0
=−1 ρ
∂p
∂x∂p
∂y
∂p
∂z
+ν
4u 0 0
.
すなわち
0 =ν ∂2u
∂y2 +∂2u
∂z2
−1 ρ
∂p
∂x, 0 =−1 ρ
∂p
∂y, 0 =−1 ρ
∂p
∂z.
かつらだまさし
流体力学の常識 : Poiseuille 流
後の二つの式からp=p(x). 最初の式を移項した
−ν ∂2u
∂y2 +∂2u
∂z2
=−1 ρ
∂p
∂x.
において、左辺はx に依らず、右辺はy,z に依らないので、結局は定数である。
それをαとおくと、
ν ∂2u
∂y2 +∂2u
∂z2
=−α, 1 ρ
∂p
∂x =−α.
後者を積分して
(12) p(x) =p0−ραx (ただしp0:=p(0)).
一方
ν ∂2u
∂y2+∂2u
∂z2
=−α.
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流体力学の常識 : Poiseuille 流
流れが軸対称であることを仮定する。yz 平面に極座標 y =rcosφ, z =rsinφ を導入すると、軸対称性により u=u(r)であるから、
∂2u
∂y2+∂2u
∂z2 = ∂2u
∂r2 +1 r
∂u
∂r + 1 r2
∂2u
∂φ2 = 1 r
d dr
rdu
dr
.
ゆえに 1
r d dr
rdu
dr
=−α ν. これから
u(r) =−α
4νr2+Alogr+B (A,B は積分定数).
r = 0においてu は有限でなければならないからA= 0.
また円柱の壁面r =aにおいて、流速は0 でなければならないから 0 =u(a) =−α
4νa2+B ゆえに B= α 4νa2. ゆえに
u(r) = α
4ν a2−r2 .
かつらだまさし
流体力学の常識 : Poiseuille 流
こうして次の有名な結果を得た:
(13) u(r) = α
4ν a2−r2
, p(x) =p0−ραx.
流量は
Q= 2π Z a
0
ru(r)dr = α 8νπa4. 平均流速はこれをπa2で割った
Umean= α 8νa2.
Poiseuille流は、Stokes方程式(Navier-Stokes方程式で非線型項= 0とおいて 得られる)の厳密解でもある。
2次元版として、平行版の間の領域Ω ={(x,y)∈R2| −a<y<a} における 流れ
(14) u(x,y) = α
2ν(a2−y2), p(x) =p0−ραx が得られる。
かつらだ 桂 田
まさし
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参考文献 I
[1] Suzuki, A.: Finite element programming by FreeFem++
—intermediate course, 日本応用数理学会「産業における応用数理」
研究部会のソフトウェアセミナー 「FreeFem++による有限要素プ ログラミング — 中級編 —」(2016/2/11-12) の配布資料で、
https://www.ljll.math.upmc.fr/~suzukia/
FreeFempp-tutorial-JSIAM2016/から入手できる (2016).
[2] 今井功:流体力学 前編,裳華房 (1973),流体力学の基本的文献。後 編は書かれなかった。
[3] Douglas, J. and Russell, T.: Numerical methods for
convection-dominated diffusion problems based on combining the method of characteristics with finite element or finite difference procedures, SIAM Journal on Numerical Analysis, Vol. 19, No. 5, pp.
871–885 (1982).
かつらだまさし
参考文献 II
[4] Pironneau, O.: On the Transport-Diffusion Algorithm and Its Applications to the Navier-Stokes Equations, Numerische Mathematik, Vol. 38, No. ?, pp. 309–332 (1982).
[5] Tabata, M.: A finite element approximation corresponding to the upwind finite differencing, Memoirs of Numerical Mathematics, Vol. 4, pp. 47–63 (1977),私はコピーを持っていない。東大数理の図 書室にある。
[6] 野津裕史,田端正久:Navier-Stokes 方程式のための圧力安定化・特 性曲線法結合有限要素スキーム,日本応用数理学会論文誌, Vol. 18, No. 3, pp. 427–445 (2008).
[7] Notsu, H. and Tabata, M.: A single-step characteristic-curve finite element scheme of second order in time for the incompressible Navier-Stokes equations, Joumal of Scientific Computing, Vol. 38, No. 1, pp. 1–14 (2009).
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まさし
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参考文献 III
[8] Tabata, M. and Uchiumi, S.: An Exactly Computable
Lagrange-Galerkin Scheme for the Navier-Stokes Equations and its Error Estimates, Mathematics of Computation, Vol. 87, No. 309, pp.
39–67 (January 2018).
[9] 内海晋弥,田端正久:数値積分を用いるLagrange-Galerkin スキーム の収束性,日本応用数理学会 2018年 年会 講演予稿集(2018.9.3-5, 名古屋) (2018).
[10] Shinya UCHIUMI(内海晋弥):Lagrange-Galerkin schemes with a locally linearized velocity for the flow problems, 早稲田大学大学院の 博士論文?https://waseda.repo.nii.ac.jp/records/38754 (February 2017).
[11] S¨uli, E.: Convergence and nonlinear stability of the Lagrange-Galerkin method for the Navier-Stokes equations, Numerische Mathematik, Vol. 53, No. 4, pp. 459–483 (1988).
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