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226 化学と生物 Vol. 56, No. 3, 2018

思い出コラム

遠藤 章 博士のガードナー国際賞受賞を祝して 受賞に際して思うこと

小平了二

元和洋女子大学教授

遠藤博士とは,大学の教養部時代,旧制二高のバンカ ラな気風がまだ漂う学生寮で,それぞれ過ごし,農芸化 学科に進んでから2年間,同じ下宿で寝食をともにして 学びました.社会に出てからも,今日まで公私にわたり 親しくお付き合いをさせていただいております.今回の この受賞は,私にとっても最高のよろこびであり,たい へんうれしく,また誇りに思っている次第です.

この受賞に際し,この欄への寄稿の機会を与えていた だきましたので私なりの思いを拙文ながら綴らせていた だきます.

これまでに,遠藤博士は国内では日本国際賞を受賞 し,文化功労者にも選ばれ,国外では,マスリー賞やラ スカー臨床医学研究賞など,数々の大きな賞を受賞して おります.

出版界においても世界的に高く評価され,多くの出版 物に登場しております.有名な生化学書Lehninger Prin- ciples of Biochemistry(第5版 2008年) に は,Dr. A. 

Endoの 業 績 が 著 名 な 生 化 学 者(た と え ば,Pasteur,  Watson, Crick, Jacob, Monod, Bloch, Lynen, Goldstein,  Brownなど)とともに,写真つきで紹介されています.

2011年,国連はキューリー夫人のノーベル化学賞受賞 100年にちなんで,この年を国際化学年と定めました.

これ に 呼 応し て 英 国 王 立 化 学 協 会 は,そ の 機 関 誌,

Chemistry World(2011年3月号)に,直近60年間に化 学者によってなされた発見の中から10年ごとに1件(計 6件)を選んで紹介しています.ちなみに1980年代はK. 

B. MullisのPCR法を挙げています(1993年ノーベル化 学賞).その中で1970年代はスタチンが選ばれているの です.また,発明家としても日本人で初めて2012年に

「全米発明家殿堂入り」を果たしています.これらのこ とは,スタチンの発見がいかに偉大なことだったかとい うことを物語っているのではないでしょうか.

このような偉業達成のルーツは生まれ故郷の秋田にあ り,その素地は,いま思えば,学生時代から着実に培わ

れていたような気がします.

われわれの学生時代は敗戦からほぼ10年,各自各様 に夢をもっておりました.高邁な理想主義に関心を寄せ るむきもありましたが,彼はそのようなものよりも,人 間生活に密着したよりリアルで具体的な課題に関心を寄 せておりました.

秋田の山村で,豊かな自然環境の中で育った体験か ら,この地方に自生するユニークなキノコ,ハエトリシ メジのことを熱っぽく話しておりました.このキノコは ハエを殺すが,人は美味しく食べられるというもので,

彼は高校生のとき,このキノコの殺ハエ成分は水溶性 で,耐熱性であることを確かめていたのです.この殺ハ エ成分を有機化学的に追及したいという夢を抱いており ました.カビについても,子どもの頃,母親の麹づくり を徹夜で手伝ったことなどの体験から,身近な馴染み深 い存在だったのです.

殺ハエ成分など,いわゆる生理活性物質がかかわる有機 化学は,Fieser & FieserのTextbook of Organic Chemis- tryで勉強しておりました.700頁にわたるこの本を,教養 部の2年次の夏休みに読み通し,この中で,特に微生物由 来の抗細菌性物質の構造にたいへん興味を覚えたと懐古し ています.彼のこの本は4年次にはボロボロになっていま した.おそらく,3回ぐらいは繰り返し読んだのでしょう.

生化学はB. HarrowらのTextbook of BIOCHEMISTRY を,酵素化学についてはJ. B. NeilandsらのOutlines of  ENZYME CHEMISTRYを参考書にしていました.夜も5 時間以上は机に向かっているのが日常で,目標に向かって 粘り強い取り組みにより未知の世界が拓けてゆく過程を楽 しんでいるようにも見えました.

将来について,「裸一貫の零からの出発だから,失う ものは何もない,夢をもって,人がやらないことを思い 切りやろうじゃないか,そして,世の中の役に立つこと ができれば,これ以上の幸せはない」などと彼は語り,

よく似た境遇の傍系出身同士,安酒を酌み交わしたもの

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化学と生物 Vol. 56, No. 3, 2018

でした.

ハエトリシメジへの具体的な取り組みは,本人の意に 反し,卒論研究でも,会社に入ってからも諸々の事情で 実現しなかったということですが,カビとキノコには,

入社後,ペクチナーゼの開発研究で再会し,麹蓋を使う ペクチナーゼ製造法を提案し,さらに,これら菌類が生 産するペクチナーゼの生化学的研究により農芸化学会賞

(1966年)を授与されております.

この間,ハエトリシメジの殺ハエ成分は,東北大

(薬)の竹本教授により,抽出,単離され,構造が決定 されております(1964年).

いずれにしても,彼の若い頃からの上述のような姿 勢,信念は,ハエトリシメジへの思いを端緒とし,カビ が生産するスタチンの発見となって結実したのです.

すなわち,タンパク質や核酸の分野に研究者が集中 し,脂質関連分野の研究者がまだ少なかった1960年代 にコレステロールの重要性に着目し,この生合成経路を 解明したBloch博士(1964年ノーベル医学生理学賞)に 強く傾倒しておりました.米国留学で,コレステロール と心疾患の関係を再認識し,帰国後,コレステロールの 生合成系を阻止する薬剤の開発を着想したのですが,生

体内におけるコレステロールの必須性から,この考え方 に対し,当時,大方は否定的だったそうです.それで も,コ レ ス テ ロ ー ル 生 合 成 系 のkey enzymeで あ る HMG-CoA reductaseを阻止する活性物質をカビの生産 物の中から探し出したいという信念から,目標を明確に 設定し,論理的に極めて卓越した合理的で,かつ効率的 な探索方法を考案し,これにより短期間で目的どおりの 活性物質を見いだしたのです.これは,想定外の思いが けない偶発的な事象からの発見ではなく,所期の目標を 完全に達成する発見であり,目的探索研究の典型的なす ばらしい成功例といえましょう.

スタチンの医薬品としての開発では,動物実験の段階 で動物の種差に由来する予想外の結果や安全性の問題に 直面しながらも,挫折することなく,客観的な考察に基 づき内外のトップレベルの研究者と連携し,粘り強い取 り組みにより,これらの問題を克服してきました.

現在では,世界で何千万もの人がスタチンの恩恵にあ ずかり,救われています.このような薬を一徹な信念に 基づいてつくりあげた功績は絶大で,驚嘆に値するたい へんな快挙だと思います.

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プロフィール

小平 了二(Ryoji KODAIRA)

<略歴>1957年東北大学農学部農芸化学 科卒業/1960年同大学大学院農学研究科 修士課程修了/1960年旭化成工業(株)技 術研究所研究員/1969年農学博士(東京 大学)/1971年米国ミシガン大学医学部微 生 物 学 教 室 研 究 員/1982年 旭 化 成 工 業

(株)医薬開発研究部長/1986年同医療科 学研究所長/1990年同和鉱業(株)理事バ イオ担当(中央研究所)/1993年和洋女子 大 学 教 授/2002年 同 退 職<趣 味>囲 碁,

ウォーキング

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