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最適成長論による自然環境保全政策の経済評価

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Academic year: 2024

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(1)

最適成長論による自然環境保全政策の経済評価

武藤慎一*・上田孝行**・高木朗義***・伊藤  匠****

ECONOMIC EVALUATION OF THE ENVIRONMENTAL PROTECTION POLICIES WITH THE OPTIMAL ECONOMIC GROWTH THEORY

By

Shinichi MUTO, Takayuki UEDA, Akiyoshi TAKAGI and Takumi ITO

ABSTRACT: It is necessary to examine the control plan of natural resources with considering even to activities of the future generation, in order to achieve the sustainable development that is becoming a key word in a recent environmental argument. In this paper, we evaluate the environmental protection policies that optimize from the point of both of the environmental effects and economic impacts in the future from the present, by the optimal growth theory. And we measured the effects of the forest protection policy, in that using tax of the forest resources is introduced and it invest its tax revenues to the removing pollutants or restoring the forests. We announced the optimal policy level where all of people are satisfied.

KEYWORDS: The Optimal Growth Theory, Environmental Protection Policies, Economic Evaluation

1. はじめに 

  現在の環境問題に対する議論では,現時点での 過度の自然資源の利用が将来世代の諸活動を脅か すのではないかということが懸念されている.そ のため,将来世代まで含めた持続的な発展を可能 とするための自然資源の管理方策について,早急 な検討が必要とされている.

  これに対し,経済学の分野では,長期的な経済 状態を分析する手法として,最適成長論を用いた 研究が進められてきた.そこでは,持続的な成長 のために必要とされる物的資本の蓄積経路問題や,

最適成長のための政府の役割についての検討がな されている.そして,最近になり,冒頭の環境問 題に対し自然環境の変化が経済成長へ及ぼす影響 や自然環境保全政策の効果について,最適成長論 を適用した分析もなされるようになってきた1), 2). しかし,それらの研究では,理論的な観点からの 分析にとどまっている.

  本研究では,長期的に見て環境と経済の両者を 同時に分析することが可能な最適成長モデルの構 築を行う.そのモデルを用いて,諸経済活動にお

いて環境資源という制約が加わることにより,ど のような影響が生じるのかを明らかにし,その上 で自然環境保全政策の効果についての検討を行う.

さらに,本研究では従来の最適成長論の研究にお いて検討がなされてこなかった実証分析に対して 最適成長論の適用を行い,実際に数値シミュレー ションにより政策の有効性を明らかにする.

2. 既存の最適成長論 

  ここでは,経済学の分野で用いられてきた最適 成長モデル3)を示し,その概要を説明する.説明が 若干煩雑になる可能性があるが,まず,最適成長 理論の全体像を明らかにする.

2.1  最適成長モデルの概要 

  そもそも,最適成長論とは,ある一国経済にお いて,現在から無限の未来までどのような消費の 経路を選択するのが最適であるのかを論じようと したものである.ここで,何が「最適」となれば よいのかということが問題となるが,その前にこ こでの説明に用いる経済モデルの仮定を示してお くことにする.

* 岐阜大学工学部土木工学科,      ** 東京工業大学工学部開発システム工学科,

*** 中日本建設コンサルタント㈱計画本部, **** 新潟県庁

(2)

(1) 対象とする経済には,家計と企業が存在する.

(2) 家計は,無限遠まで続くような一つの家計を考 える.これは,家計を一つの連綿と続く家系と 考え,ある時点の家計はそれ以降の子孫の効用 を整合的に考慮し資産を残すと考えても良い.

(3) (2)の仮定より,家計は現在から将来までの全て の満足を最大とするよう行動するものと想定 される.しかし,企業は各期ごとに利潤を最大 とするよう行動するものとする.

以上の仮定の下で,家計と企業の行動モデルを構 築する.

2.1.1 企業の行動モデル 

  企業は,ある時点tにおいて,労働と資本を投入 し,技術制約の下で利潤を最大化するよう行動す るものとする.なお,生産される財の価格は 1 と している.この企業の行動は,通常の静学モデル と同様に定式化ができる.

  π

( )

t =y t L t K t( ) ( ) ( )max y t

( ) ( ) ( ) ( ) ( )

w t L tr t K t

, , (1.a)

  s. t. y t

( )

= f L t K t

( ( ) ( )

,

)

(1.b)

ただし,t:時点,π:企業利潤,y:生産量,L:労働 投入量,K:資本投入量,w:賃金率,r:利子率,f

( )

生産関数. 

  式(1)の最適化の一階条件は以下となる.

 

( ( ) ( ) )

( ) ( )

f L t K t

L t, w t

= ,

( ( ) ( ) )

( ) ( )

f L t K t

K t, r t

= (2)

2.1.2 家計の行動モデル 

  家計は,u t

( )

で表される時点tの効用関数を有す

ると仮定する.ここで,効用関数とは,財消費量

( )

c t などに依存して決定される満足度を関数として 表したものである.すなわち,c t

( )

という量の財消

費が行われたとき,家計はu t

( )

の効用を得ること

を表している.そして,家計は主観的割引率ρに よって割り引かれたu c t

( ( )

,L

)

を,現時点から無限遠

まで積分された通時的効用を最大化するよう行動す ることになる.

  なお家計は,企業が投入する労働,資本を全て 保有しており,それらを提供することにより所得 を得ているとする.そして,これを財消費cと余暇 消費sそして貯蓄に充てる.

  貯蓄についてはそのまま投資にまわされるもの とし,資本の蓄積を生むとする.こうして,現在 の消費をあきらめて貯蓄することにより,将来時 点での資本が増加され,将来期により多くの消費 を行えるというメカニズムが考慮される.そして,

家計がそのような将来期の消費量も考量に入れて,

現時点での消費,貯蓄を決定することになる.

  以上を定式化すると以下のようになる.

  V =c t s tmax( ) ( ),

0u c t s t

( ( ) ( )

,

)

exp

(

ρt dt

)

(3.a)   s. t. K t&

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

=w t l t +r t k t c t δK t

( )

(3.b)

  Ω =l t

( ) ( )

+s t (3.c)

ただし,V:無限期間にわたって割り引かれた効用の総和,

( )

ut期における効用関数,c:財消費,s:余暇消費,

ρ:主観的割引率,K& (=dK dt):資本の蓄積量,l:労 働供給量,k:資本保有量,δ:資本減耗率,Ω:総利用 可能時間. 

  式(3.a)は,通時的効用の最大化を表している.式

(3.b)は資本蓄積方程式であるが,賃金所得[w l]と

配当所得[rk]からなる実所得から,財消費と余暇 消費を差し引いた額が貯蓄にまわされ,次期の資 本蓄積を生むことが定式化されている.式(3.c)は時 間制約式であるが,式(3.b)と(3.c)よりl t

( )

を消去す

ることが可能である.

2.1.3 市場均衡条件 

  本モデルでは,労働市場,資本市場,財市場が 成立している.それらは,式(4)のように表される.

  l t

( ) ( )

=L t k t

( )

=K t

( )

y t

( ) ( )

=c t (4) 2.2  最適成長モデルの解法とその解釈 

2.2.1 ハミルトン関数と最大値原理 

  続いて,式(3)にて定式化された動学的最適化問 題を解くことを考える.その方法はいくつかある が,ここでは最大値原理を用いることとする.

  ハミルトン関数を以下のように定義する.なお,

ここでは現在価値換算されたハミルトン関数に対 する最大値原理の導出を示す.

  H t

( )

=

[

u c t s t

( ( ) ( )

,

)

+λ

( ) ( )

t w t

{

+r t K t

( ) ( )

     c t

( ) ( ) ( )

w t s t δK t

( ) } ]exp( )−ρt (5)

ただし,λ:資本蓄積方程式(3.b)に付随する共役変数. 

ここでは,式(3.b), (3.c)は一つにまとめ,またk t

( )

市場均衡条件よりK t

( )

に置き換えて表現した.

  最大値原理とは,式(3)で定式化された動学的最 適化問題を,巨大な非線形最適化問題と捉えるこ とから出発する.すなわち,式(3)の最適化問題の キューン・タッカー条件を導出し,それを整理す ることにより動学的最適化問題の最大値原理が導 出される[西村(1990)4) ].それが,以下に示すもの

(3)

である.

 

( )

( ) ( ( ) ( ) )

( ) ( )

λ

H t c t

u c t s t

c t t

= , − =

0 (6.a)

 

( )

( ) ( ( ) ( ) )

( ) ( ) ( )

λ

H t s t

u c t s t

s t t w t

= , − =

0 (6.b)

 

( ) ( )

&

( )

K t H t

= t

∂ λ

  =w t

( )

+r t K t

( ) ( ) ( ) ( )

c t s t δK t

( )

(6.c)

 

( ) ( ) ( )

&

( )

λ ρλ

t t ∂H t

− = − K t

  = −λ

( )

t r

[

δ

]

(6.d)

  limt→∞λ

( ) ( )

t K t exp

( )

ρt =0 (6.e)

  式(6.a)と(6.b)は,ハミルトン関数最大化の一階条 件,式(6.c)と(6.d)はハミルトニアン・ダイナミクス と呼ばれる条件,式(6.e)は横断性条件を表している.

  まず,式(6.a)と(6.b)は,静学モデルと同様にして 導かれ,財消費あるいは余暇消費に対する限界効 用が,資本蓄積方程式に関する共役変数λ

( )

t に価

格を乗じたものと等しくなることを表す.ここで,

( )

λ t は資本蓄積を一単位増やしたときにどれだけ 効用が増大するかを表しており,投資の帰属価格 (shadow price)を表すとされる.よって,式(6.a)と (6.b)は,各消費の限界効用が投資の帰属価値と各 財の価格の積と等しくなることを要請しているこ とになる.

  式(6.c)は,資本蓄積方程式そのものであり,資本 の時間的変化を規定している.

  一方,式(6.d)は,資本の帰属価値の時間的変化 を表す.式(6.d)の左辺第二項は,λ

( )

t を現在価値

換算する上で導出された項であり,結局,式(6.d) は投資の帰属価値が資本ストックK t

( )

のハミルト

ン関数H t

( )

に対する限界的な貢献を埋め合わせる よう下落していくことを意味している.この意味 としては,まず,投資により資本が蓄積されれば 次期の消費が増加するためハミルトン関数は高ま るといえる.しかし,一方で資本市場では資本供 給量が増加するため資本の価値自身は低下するこ とになる.この資本価値の低下というものが,資 本ストック増加によるハミルトン関数の限界的増 分と一致するように変化していくことを,式(6.d) は表しているといえる.

  式(6.e)は横断性条件と呼ばれるものである.これ は,無限遠の資本の帰属現在価値がゼロとなるこ とを要請したものである.もし,無限遠において

まだ資本の価値が残っているとしたら,それは,

それまでの消費が効率的になされなかったことを 示しており,そのような動学的不効率を排除する ための条件である.

2.2.2 最適成長経路の導出 

  式(6)の最大値原理から,c t

( )

K t

( )

の最適経路

を導出することが可能である.

  まず,式(6)の条件式を直接的に解くことを考え る.しかし,この場合,有限期間に対し,その最 終期の資本量を与えてやることが必要になる.こ れより,最終期の資本の帰属価値λ

( )

T が決定し,

これを出発として逆時間的に式(6.d)より資本の帰 属価値λ

( )

t の最適経路が計算され,さらに,式(6.c) より資本蓄積の最適経路,式(6.a)より財消費の最適 経路が求められる5).これによれば,実際の最適成 長経路を数値的に描くことも可能となる.しかし,

最終期での残存資本量をどのように決定するのか が課題として残されている.

  これに対し,無限期間を考えた分析手法も開発 されている.この場合には,時間とともに変化す る変数の変化率が全てゼロとなった定常状態に着 目して,最適消費および最適資本量についての検 討がなされる場合がほとんである.ただし,位相 図を用いた方法では,定常状態での最適解につい てだけでなく,そこに到達するまでの経路につい ても,初期状態に対応してどのような性質がある のかを分析しているものもある.

3. 環境評価のための最適成長モデル    本章では,前章の最適成長モデルを,環境問題 の分析に対して適用できるよう拡張する.

  環境問題へ最適成長論を用いた研究としては,

Johansson(1993) 1)が,環境状態変化や環境政策への

便益評価に対し,最適成長論を適用した分析を行 っている.また,Xepapadeas(1997) 2)は,環境面も 考慮した国内総生産として改めて定義された国民

純生産NNP(Net National Product)に対し,環境変化

がどのような影響を及ぼすのかを最適成長論を用 い明らかにしている.また,わが国でも井堀(1999)

6)が最適成長論を用いて,自動車交通に起因する環 境問題に対し,いくつかの税制策を組み合わせた 複合政策の効果と影響分析を行っている.しかし,

これらはいずれも理論分析の域にとどまっている.

そこで,本章では,まず 2 章で示した最適成長モ デルに環境要素を組み込んだ最適成長モデルを構 築し,式(6)の最大値原理がどのように修正される のかを明らかにする.

(4)

3.1  最適成長モデルの構造  3.1.1 モデルの仮定 

  本章で構築される最適成長モデルは,基本部分 は前章のモデルと同様であるが,環境要素を組み 込むため修正を行う.そこで,本章で改めて仮定 されるモデルの仮定と,モデルの全体構成を示す こととする.

(1) 対象とする経済には,家計と企業に加え,政府 と自然が存在する.

(2) 自然とは,次のようなものである.

① 自然は,企業に自然資源を提供する.

② 自然は,企業の生産活動に伴って排出され る汚染物質を受け入れ,ある程度までは浄 化させられるものとする.しかし,範囲を 超えた汚染物質はそのまま残存し,それが 家計の効用水準を低下させる.

③ 自然はアメニティの提供機能を有するとす る.この機能は,自然資源の総量に依存す るものとし,自然資源が多く利用されれば アメニティ供給機能が低下するものとする.

(3) 家計と企業の基本的な行動は,2 章のそれと同 様である.なお,政府は,環境政策を実施する ものとする.

  モデルの全体構成は,図-1のとおりである.

税金

労働・資本

汚染物質 排出

家計

自然環境 政府

自然環境保全政策

賃金・配当 財・サービス

企業

自然資源 提供

財支出 税金

汚染物質被害 アメニティ提供

汚染物質の自然浄化 自然資源の復元

物的資本の蓄積

図-1  モデルの全体構成 3.1.2 企業の行動モデル 

  企業は,ある時点tにおいて利潤最大化行動をと る点では前章と同様であるが,ここでは,労働と 資本に加え,自然資源も投入して合成財の生産を 行うものとする.

  π

( )

t =y L K Umax, , , y t

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

w t L t r t K t p t U t

(7.a)   s. t. y t

( )

= f L t K t U t

( ( ) ( ) ( )

, ,

)

(7.b) 記号は,式(1)で用いたものと同様である.ただし,U:自 然資源投入量,p:自然資源価格. 

  式(7)の最適化問題の一階条件は以下となる.

  f tL

( ) ( )

=w tfK

( ) ( )

t =r tfU

( ) ( )

t =p t (8) ただし,fL:生産関数の労働に対する偏微分

(

f L

)

3.1.3  家計の行動モデル 

  家計も,無限遠まで積分された形で表される通 時的効用を最大化する点では,前章のモデルと同 様である.しかし,ここでは,効用関数を財消費 と余暇消費以外に,汚染物質ストック水準Sと自 然資源ストック水準Rにも依存させた形で定式化 する.Sが効用関数に入ってくるのは仮定(2)②に よるものである.また,Rは自然資源の総量を表 すためアメニティ供給機能の水準を示すものと解 釈し,仮定(2)③に従い効用関数に組み入れた.

  V ( ) ( ) u c t s t S t R t

( ( ) ( ) ( ) ( ) ) (

t dt

)

c t s t

= max,

0 , , , expρ

(9.a)   s. t. K t&

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

=w t l t +r t k t c t δK t

( )

(9.b)

  Ω =l t

( ) ( )

+s t (9.c)

記号は,式(3)で用いたものと同様である.ただし,S:汚 染物質ストック水準,R:自然資源ストック水準. 

  SRの時間的変化については,以下のように 表されるものとする.

  S t&

( )

=ςy t

( )

ξS t

( )

(10.a)

  R t&

( )

=ζ R t

( ) ( )

U t (10.b)

ただし,ς:単位企業生産あたりの汚染排出量を表すパラメ ータ,ξ:汚染物質の自然浄化率,ζ:自然資源の自己再生 率とし,これらは固定とする. 

  式(10.a)では,汚染物質は企業が排出していると 考えているため,企業の生産量に依存した形で汚 染物質が蓄積されるとした.また,式(10.b)のUは,

自然資源の使用量である.

  本章は,家計は式(9.b)と(9.c)の制約条件に加えて,

式(10)の汚染物質ストックと自然資源ストックの 変化式の制約下で通時的効用を最大化するよう行 動をとるものと考えられる.

3.1.4  市場均衡条件 

  市場均衡条件については,前章と全く同様に表 される.

  l t

( ) ( )

=L t k t

( )

=K t

( )

y t

( ) ( )

=c t (11)
(5)

3.2  環境を組み入れた最適成長モデルの  最大値原理 

  前節で構築した最適成長モデルを用いて,最大 値原理を導出する.なお,ここでは,家計が環境 を考慮せず行動する場合と環境を考慮して行動す る場合とに分けて最大値原理を示すこととする.

そして,最終的には,これらの二種類の最大値原 理には乖離が生じることを明らかにする.

3.2.1 環境を考慮しない場合 

  家計が,環境を意識せず行動する場合とは,式

(9.a)中の効用関数u t

( )

の中にSRが含まれない

場合と考えられる.このとき,ハミルトン関数は 以下のように定義される.

  H t

( )

=

[

u c t s t

( ( ) ( )

,

)

   +λ

( ) ( )

t w t

{

+r t K t

( ) ( ) ( ) ( )

c t s t δK t

( ) }

   +µS

( ) ( )

t

{

ςc t ξS t

( ) }

   +µR

( ) ( ) ( )

t

{

ζR t U t

} ]

exp

(

ρt

)

(12)

ただし,λ µ µ, S, R:それぞれ,資本蓄積方程式(9.b),汚染 物質ストック変化式(10.a),自然資源ストック変化式(10.b)に 付随する共役変数.

  式(12)から導かれる最大値原理は以下のように なる.

 

( )

( ) ( ( ) ( ) ( ) ( ) )

( ) ( ) ( )

µ ς λ

H t c t

u c t s t S t R t

c t S t t

= , , , − − =

0 (13.a)  

( )

( ) ( ( ) ( ) ( ) ( ) )

( ) ( ) ( )

λ

H t s t

u c t s t S t R t

s t t w t

= , , , − =

0 (13.b)

  K t&

( ) ( )

=w t +r t K t

( ) ( ) ( ) ( )

c t s t δK t

( )

(13.c)

  S t&

( )

=ςy t

( )

ξS t

( )

(13.d)

  R t&

( )

=ζR t

( ) ( )

U t (13.e)

  λ&

( )

t ρλ

( )

t = −λ

( )

t r

[

δ

]

(13.f)

  µ&S

( )

tρµS

( )

t =µS

( )

t ξ (13.g)

  µ&R

( )

tρµR

( )

t = −µR

( )

t ζ (13.h)

  limt→∞λ

( ) ( )

t K t exp

( )

ρt =0 (13.i)

  limt S

( ) ( )

t S t exp

(

t

)

→∞µρ =0 (13.j)

  limt R

( ) ( )

t R t exp

(

t

)

→∞µρ =0 (13.k)

  まず,式(13)の最大値原理と式(6)のそれとを比較 してみる.式(13.b),(13.c),(13.f)および(13.i)は,式(6) と全く同じである.また,式(13.d),(13.e)は式(10) の条件式であり,最後の式(13.j),(13.k)は,環境スト ックに対する横断性条件を表している.よって,

実質的に式(6)の最大値原理と異なるのは,式(13.a) と式(13.g),(13.h)ということになる.

  式(13.a)は,財消費の限界効用から,単位財消費 に対する汚染物質排出の被害費用分を差し引いた ものが,投資の帰属価格と等しいという条件に修 正されている.これは,家計にとって財を消費す ることによって効用が上昇する一方で,それが汚 染物質の増加を招くためそれらの両者を考慮して 消費の最適経路が決定されるべきであることを示 している.

  式(13.g)と(13.h)は,式(10)よりSRに関する制 約式が加わったことによって新たに導出された条 件式である.すなわち,汚染物質ストックの共役 変数µS

( )

t と自然資源ストックの共役変数µR

( )

t 時間的変化を規定している.

  まず,式(13.g)について,µS

( )

t は汚染物質スト ックの増加に対する価値を表すといえる.また,

式(13.g)の右辺は,単位汚染物質あたりの自然浄化 量の価値額を表しており,よって,式(13.g)は汚染 物質ストックの価値が,自然浄化される汚染物質 の価値分だけ増加していくことを表している.こ れは,本モデルにおいて汚染物質ストック量S t

( )

に依存して自浄作用が働くものとしたためであり,

( )

S t が増加した場合には浄化される汚染物質の量 が増加するため,µS

( )

t が上昇していくことを示し ている.

  式(13.h)は,式(6.d)での解釈をそのまま持ち込め ばよい.すなわち,自然資源ストックの増加がハ ミルトン関数に及ぼす貢献を埋め合わせるように,

自然資源ストックの価値µR

( )

t が減少していくこ とを表している.これは,自然資源ストックが増 加していくことは,それだけ自然資源が希少でな くなっていくことを意味していると解釈できる.

3.2.2 環境を考慮する場合 

  続いて,家計が環境を意識して行動する場合を 考える.このときには,式(9.a)中の効用関数u t

( )

SRが含まれるものとして考えればよい.この とき,ハミルトン関数は以下のようになる.

  H t

( )

=

[

u c t s t S t R t

( ( ) ( ) ( ) ( )

, , ,

)

   +λ

( ) ( )

t w t

{

+r t K t

( ) ( ) ( ) ( )

c t s t δK t

( ) }

   µS

( ) ( )

t

{

ςc t ξS t

( ) }

   +µR

( ) ( ) ( )

t

{

ζR t U t

} ]

exp

(

ρt

)

(14)

  式(14)から導かれる最大値原理は,式(13)と重複 する部分が多いため,異なるものについてのみ改

(6)

めて示すこととする.

 

( ) ( ) ( ) ( )

&

( )

µ ρµ µ ξ

S t S t S t u t

− = + S t (13’.g)

 

( ) ( ) ( ) ( )

&

( )

µ ρµ µ ζ

R t R t R t u t

− = − − R t (13’.h)

以上に加え,式(13.a)から(13.f)および式(13.i)から (13.k)が最大値原理となる.

  式(13’.g)では,汚染物質の増加が家計に対して不 効用を与える点が加わって,汚染物質ストックの 価値額の変化が規定されている.

  また,式(13’.h)では,自然資源の増加がアメニテ ィ機能の強化を介して及ぼす家計の効用増加分を さらに加えた分について,埋め合わせるように自 然資源ストックの価値µR

( )

t が減少していくこと を表している.

  以上の結果,家計が環境について考慮しない場 合とする場合とでは,環境ストックの価値の時間 変化に乖離が生じることになり,それを通して財 消費経路や資本の蓄積経路にも影響が及ぼされる.

普通は,家計は環境について考慮しない場合が多 く,その時には何らかの形でその部分を内部化す る必要があるといえる.

4. 定量分析への最適成長モデルの適用    前章では,家計が環境を考慮せず行動した場合 には,環境を考慮した場合での最適成長経路とは 乖離が生じることを示した.これを修正するため の一つの方法は,政府が環境保全政策を実施する ことである.本章では,そのような環境保全政策 に対し,最適成長論を用いてその効果の定量評価 を行うこととする.

4.1  政策の設定とモデルの修正 

  ここでは,森林資源を対象として分析を行う.

もちろん,森林資源以外でも,水産資源や農産物 資源あるいは大気なども環境資源として分析対象 とすることも可能である.

  森林資源を対象とした場合,式(10.a)の汚染物質 は二酸化炭素を考えればよい.森林は二酸化炭素 を吸収するからである.また,式(10.b)の自然資源 は林業に対する森林資源の提供が考えられるし,

それ以上に家計へのアメニティ供給としての役割 が重要といえる.

  この森林資源を管理するため,政府はまず森林 資源使用税eの導入を行う.さらに,その税収を汚 染物質である二酸化炭素の除去に充てるか,森林 資源の再生として植林事業に充てるか,その配分 率κ を決定する.これら汚染物質除去活動および 自然資源再生活動の実施に伴い,式(10)の制約式は

以下のように修正される.

  S t&

( )

=ςy t

( )

G a t

( ) ( )

ξS t

( )

(15.a)

  a t

( ) ( ) ( ) ( )

=κ t e t U t (15.b)

  R t&

( )

=ζ R t

( )

+Z d t

( ) ( )

U t

( )

(16.a)

  d t

( )

= −

{

1 κ

( )

t e t U t

} ( ) ( )

(16.b)

ただし,G:汚染物質除去活動により除去された汚染物質 量,a:汚染物質除去への投資費用,Z:自然資源再生活 動により再生された自然資源量,d:自然資源再生活動へ の投資費用.

  式(15.a)と(16.a)では,それぞれ汚染物質除去活動 と自然資源再生活動による環境の向上が考慮され ている.そして,それぞれの投資費用の調達が式 (15.b)と(16.b)によって規定されている.

  さらに,森林資源使用税eの導入に伴い,式(7) の企業の行動も修正される.

  π

( )

t =y L K Umax, , ,

[

y t

( )

   w t L t

( ) ( ) ( ) ( )

r t K t

{

p t

( ) ( )

+e t U t

} ( ) ]

(17.a)

  s. t. y t

( )

= f L t K t U t

( ( ) ( ) ( )

, ,

)

(17.b)   eの導入は企業の生産費用を上昇させる.そして,

式(11)の市場均衡条件を介し,家計がその費用を負 担することになる.すなわち,森林資源使用税eの 導入は,家計を含めた社会経済システムには不効 用を与える.しかし,eからの税収により自然環境 の保全活動がなされ,汚染物質ストック水準は下 がり自然資源ストック水準は上がるため,家計の 効用を高めることとなる.以上の結果を総合して,

政策の有効性の評価がなされることとなる.ここ では,数値シミュレーションを行うことにより,

政策の効果を定量評価して,その有効性について 検討を行う.

4.2  定常状態での最適成長モデル 

  最適成長モデルの解法については,2章にて簡単 に述べたが,本研究では数値シミュレーションを 行うにあたり,全ての状態変数の時間変化率がゼ ロとなる定常状態に着目する.定常状態に着目す ることにより,3章で構築された最適成長モデルの 中の時点tという変数は意味を持たなくなる.この ことと,状態変数の時間変化率がゼロとなること を考慮すると,家計の行動モデルは以下のように 修正される.

  V u c s S R

( )

=maxc s , , ,

, (18.a)

  s.t. c+ws+δK =wΩ+r k (18.b)   式(18)での諸変数は,いずれも定常状態における 消費量,供給量,環境水準を表している.

(7)

  企業の行動モデルは,式(17)にて定式化したもの と同様となる.ただし,添字tは削除される.

  また,式(15),(16)の汚染物質ストック変化式,自 然資源ストック変化式において,時間変化率をゼ ロと置くと,定常状態での汚染物質ストック水準,

自然資源ストック水準が求められる.

  S =ςyG a

( )

ξR=UZ d

( )

ζ (19)

  以上の結果,まず式(17),(18)および市場均衡式 (11)より,家計消費,企業生産量,生産要素投入量 そして価格変数が求められる.また,式(19)より汚 染物質ストック水準,自然資源ストック水準も求 めらるので,家計の効用水準V を導出することが 可能となる.ただし,森林資源使用税e,投資配分 率κ については,一連のモデル体系からは決定さ れないため,家計の効用水準Veκ の関数と して表される.そして,政府はeκを操作するこ とにより,家計の効用水準が最大となるような政 策の組み合わせを考えるものとする.これを定式 化すると以下のように表される.

  maxe,κ V e

( )

,κ (20.a)

  s. t. 式(11),(17),(18),(19) (20.b)

4.3  数値シミュレーション 

4.3.1 関数の特定化とパラメータの設定    続いて,式(20)に基づき環境税の導入とその税収 による環境投資による効果を数値シミュレーショ ンを通して明らかにする.そのためには各関数の 特定化を行い,それらのパラメータを設定する必 要がある.

  まず,関数を特定化したものを表-1 に示す.こ の中で,生産関数はLeontief型とCobb-Douglas型 の二段階での特定化を行った.

表-1  関数の特定化

関数名 関数形

生産関数[式(18.b)] y VA a

U aU

= 



min 0, :a0+aU =1 VA= ⋅A L KαL αKαL+αK =1 効用関数[式(19.a)] u=cφc

{

RσRs

}

φsθSlnS

        :φ φc+ =s 1 汚染物質蓄積関数

    [式(20)] S y g a

=ςε ξ

ln

自然資源再生関数

    [式(21)] R U zd

= −ε ζ

ただし,a a0, U, ,Aα α φ φ σ θ ε εL, K, c, s, R, S, g, z:パラメー タ.

  パラメータ設定は,基準年のデータセットを作 成し,それを厳密に再現するようパラメータを決 定するキャリブレーション手法により設定した.

ここでは,1994 年を基準年としており,その基準 年データセットを表-2に示す.

労働投入量 1,298 総所得 12,284,300 資本投入量 1,091,685 財消費量 4,390,549 自然資源投入量 21,918 余暇消費量 1,811

生産量 4,390,549 労働供給量 1,298

表-2.1 データセット(企業) 表-2.2 データセット(家計)

(単位:労働投入・供給,余暇=億時間,その他=億円)

賃金率 2,539(円/時間) 汚染ストック量 1,407,227

利子率 1 資源ストック量 1,130,098 (単位:億円) 表-2.3 価格変数 表-2.4 環境水準

  表-2.1, 2, 3の経済データは,「日本統計年鑑(総 務庁)7)」に基づいている.また,表-2.4の汚染スト ック水準は二酸化炭素量の総量により,資源スト ック水準は総森林面積により表すこととし,それ ぞれDuraiappah(1995) 8),「林業白書(林野庁)9)」か らデータを作成した.

  続いて,キャリブレーションにより求められた パラメータの値を表-3 に示す.なお,環境要素に 関わるパラメータ値については,一部仮想的に与 えている.

表-3  パラメータ設定の結果

a0  0.095 φc  0.488

aU  0.005 φs  0.512

αL  0.751 σR  0.180

αK  0.249

効用関数 

θS  17,000 生産関数 

η  462 資本減耗率  δ   0.005

ς  0.025 ζ   0.019

εg  200

自然資源  再生方程式 

εZ  0.1 汚染物質 

蓄積方程式 

ξ  0.078

4.3.2 数値シミュレーション結果 

  表-3 にて設定したパラメータの下,森林資源使 用税e,投資配分率κ の組み合わせに対し,eを10

〜80まで10刻みずつ,κ を0〜1.0まで0.1刻みず つ変化させてシミュレーション分析を行った.な お,ここでは,政策による便益を等価的偏差EVの 概念を用いて定義し,その計測結果を持って各政 策の効果・影響の結果として表す(図-2).また,EV の定義式は次式による.

  V w

(

A,eA,κA,IA+EV

)

=VB

(

w e, , ,κ I

)

(21)

ただし,I:総所得(=wΩ+rk).

(8)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 10

40 70 -1600

-1200 -800 -400 0 400 800 1200

投資配分率

資源 使用税 便益(兆円/年)

図-2  便益計測結果

  図-2 では,自然資源利用税e=40,投資配分率 κ =0のとき便益最大の 689(兆円/年)となる結果を 得た.ここで,投資配分率κ =0とは資源利用税収 を全て自然資源再生投資にまわした場合を意味し ている.

  便益が最大となる政策の組み合わせについては,

環境水準に関わるパラメータ値に大きく依存する ため,パラメータの一部を仮想的に設定した本モ デルの結果は修正される可能性があるが,便益が 最大となる政策の組み合わせが存在することを示 せた点が,本研究における成果といえる.

4.3.3 便益帰着分析 

  前項では,森林資源使用税の導入と,その税収 による環境投資による政策に対し,便益の計測を 行った.本項では,その便益の帰着構造について さらに詳細に分析するため便益帰着構成表の作成 を行う.便益帰着構成表の説明については,他の 文献[例えば上田ら(1999)10)]に譲るとして,ここで はe=30, κ=0 5. のケースについて作成した便益 帰着構成表を示す.

表-4  便益帰着構成表(e=30,κ=0 5. の場合)

家計 企業 政府 合計

合成財価格変化 -613.94 657.55 -43.61 0 環境税率 (e) 変化 -657.55 657.55 0 環境投資量の変化 -613.94 -613.94

賃金率変化 0 0 0

利子率変化 0 0 0

汚染ストック変化 9.71 9.71

自然資源ストック変化 889.43 889.43

合計 285.19 0 0 285.19

(兆円/年)

  表-4 によれば,政府の環境投資量が減少するこ とによる不便益と汚染ストックが減少し,自然資 源ストックが増加することによる便益とが最終的 に残っており,それらの総和として純便益が正の

値となっている.この中の不便益,すなわち政府 の環境投資が減少するという部分は,まず本シミ ュレーションでは環境投資のため,政府は合成財 を購入していると仮定した.また,表-4 では合成 財価格が上昇していることがわかる.よって,合 成財価格が上昇したことにより,政府にとっては,

税収分をそのまま投資にまわしたても,投資量は 減少することとなり,それが不便益として現れた ものと解釈できる.

5. まとめ 

  本研究では,自然環境と経済活動との両者を扱 った最適成長モデルの構築を行い,成長過程に着 目して環境問題の分析を行った.さらに,定常状 態に着目し,森林資源を取り上げて,自然環境保 全政策の有効性について定量評価を行った.

  その中で,まず環境要素について家計が考慮す る場合と考慮しない場合とでは,成長経路に乖離 が生じることを明らかにし,その乖離分を内部化 するために政府の介入が必要となることを示した.

これは,静学分析における結論を動学的に拡張し たものとも解釈できる.さらに,森林資源を取り 上げた環境政策の定量評価では,資源利用税の導 入とその税収による環境投資の効果について便益 計測を行ったところ,便益が最大となる政策の組 み合わせが存在することを明らかにすることがで きた.

  今後は,政策のタイミングなどについても検討 するため定常状態に到達するまでの成長経路に着 目した分析が必要と思われる.

【参考文献】

1) Johansson, P-O (1993) : Cost-Benefit Analysis of Environmental Change, Cambridge University Press, pp.90-112.

2) Xepapadeas, A (1997) : Advanced Principles in Environmental Policy, Edward Elgar Publishing.

3) 岩井克人(1994):経済成長論,岩井克人・伊藤元重編,

現代の経済理論,第7章,pp.265-324.

4) 西村清彦(1990):経済学のための最適化理論入門,東 京大学出版会,pp.170-173.

5) 吉田和男(1993):経済学に最低限必要な数学,日本評 論社,pp.180-187.

6) 井堀利宏(1999):自動車交通による環境問題の経済分 析,日交研シリーズ  A-255,日本交通政策研究会.

7) 総務庁統計局(1994):日本統計年鑑(平成6年),統計 情報研究開発センター.

8) Duraiappah, A.K.(1993):Global Warming and Economic Development, Kluwer Academic Publishers B.V..

9) 林野庁(1997):林業白書,日本林業協会.

10)上田孝行・高木朗義・森杉壽芳・小池淳司(1999):便 益帰着構成表アプローチの現状と発展方向について,

運輸政策研究,Vol. 2,No. 2,pp. 2-12.

Referensi

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