学科・専攻 こどもの生活専攻 所感
ナショナルカリキュラムの背景や方向性と自己の研究である①園児や児童を対象とした音楽教育②汎用的かつ学 術的な学びの鍵となる「概念」の形成③International Baccalaureate(IB)との関連をはかる教育を実施してい きたいと再認識した。
氏名
安江 真由美
家政学部家政学科の教育目標は、本学の教育目標と教育方針の下、「真心・努力・奉仕・感謝」の四大精神の実践を通して社会的に自立して生きていく上で必要 な①スキル・リテラシー・教養等に関する一般的知識・技能と②家政に関する専門的知識・技能と③建学の精神・社会人基礎力・pisa 型学力を統合的に身に付け、
社会に出てからは、これらの知識・技能をベースに生涯学習社会の中で自己の潜在能力をさらに開発しながら、職場と地域の課題解決に貢献できる人材を育成する ことである。
イ 家政学専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、これからの社会の新しいライフスタイルのデザインを提案することによって、人々の日常生活を衣・食・
住の面から支援することのできる人材を育成することである。
ロ 管理栄養士専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、管理栄養士の資格を生かして、チーム医療、健康増進・疾病予防、食育・栄養指導又は健康をテーマ にした食品の研究・開発等で活躍することによって、人々の日常生活を健康の面から支援することのできる人材を育成することである。
ハ こどもの生活専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、保育士・幼稚園教諭・小学校教諭の資格を生かして、こどもたちの学力および社会性・社会力の基 礎・基本を育てることによって、人々の日常生活を子育ての面から支援することができる人材を育成することである。
1 教育の責任
私は、家政学部こどもの生活専攻の教員として2021年3月の時点で4年間教鞭を振 るってきた。その中で、2020年度はオムニバス科目を含めて合計13科目担当した。
右の一覧表のうち、多くの科目が教育職員免許法に基づいて、幼稚園教諭および小 学校教諭を目指す学生が教職教養を身に着ける授業である。また、保育必修科目は保 育士試験実施要領に基づきその内容に類した内容を展開した。さらに卒業必修科目は、
4年間の学びの集大成となるよう、そして本学が定める社会人基礎力等と対応させなが ら実施してきたものである。(添付資料1)
その他)就職指導、学生指導、高校生対象のオープンキャンパスにおける模擬授業 やなるには講座、資格試験講座、等
科目名 専攻 開講期 受講者数 備考
専門演習B こどもの生活 3年後期(2020) 26 オムニバス、卒業必修科目
教育実習指導(幼稚園) こどもの生活 3年後期(2020) 20 幼稚園教諭一種免許状必修科目 こども表現(音楽Ⅰ) こどもの生活 1年後期(2020) 26 保育士資格・幼稚園一種免許状必修科目
音楽科教育法 こどもの生活 3年前期(2020) 36 小学校教諭一種免許状必修科目 音楽科研究 こどもの生活 3年後期(2019) 22 小学校教諭一種免許状必修科目
保育内容(領域 表現/演劇) こどもの生活 2年前期(2019) 42 幼稚園教諭一種免許状必修科目 卒業研究 こどもの生活 4年通年(2019) 4 卒業必修科目
他6科目
2 教育の理念と目的
学生には、何のために音楽を学校で教えるのかについての理解ができることを求めたい。これまで行われてきた伝統的な音楽教育では、主に文化の伝達がなされ てきた。これからは、子供の内的な経験を豊かに形成するために、また、新しい価値を創造するために、音楽教育がなされるべきである。ひいては、各自が各自の 内的世界に気づき、受容し、表現し、さらに他者理解へつなげ、多様な人々と共生することにつなげたい。その積み重ねの結果、「科学的な知」だけでなく、「時間 芸術的な知」の大切さに気づかせ、不透明な社会を各自が各自らしく生き抜くための術としても学校における音楽教育が必要であるということを認識させたい。そ のための方法として、教育対象児を「演奏者」「創造者」「研究者」という3つの立場からファシリテートする方法を身に付けてほしいと考える。私自身も、学生に 対して、音や音楽を強制的に与えることはせず、各自の専門性や人間性等を踏まえて、あくまで中立的な立場から活動の支援を行い、広義における環境の構成を行 う。そこで、実際の授業にあたっては、日頃の研究に加えて、様々な研究会等へ行って見聞を広げたり教育現場において教育を行ったりした成果をもとに、学生が 教員等になったときに現場において即実践できる内容を教授することを心掛けている。
上記の観点から、音楽の授業カリキュラムについては、本学のディプロマポリシー及び学習指導要領等を鑑み、目の前の学生にあった内容等を再考し続ける。具 体的には、こちらの意図を明確化させるような音楽の表現活動や思考活動、言語活動等を生み出す発問や指針を与えるような言葉がけを行う。加えて、話し合いを 組織したり、対象者の興味や関心を引き出すような計画を立案したりする。そうすることで、学生は教員になった際に、「子供が音や音楽を楽しんでいるうちに自 然と音楽の基礎が身についた」という授業や活動を展開できると考える。そこでまずは、学生自身に音や音楽を楽しんでほしいと願い、授業を構成する。そしてそ の授業をICT等を活用してリフレクションし、その場の状況に合わせた臨機応変な指導について共に思考し、判断、表現する学習スタイルを採る。
何より、学生が将来教育者になった際に教育対象の子どもとの時間を大切にできる「人」になってほしいと願っている。そのため、私の授業は、対象の学生の将 来を変えたり、長い目で見て何かのきっかけになったりする特別な時間になるかもしれないと考え、授業対象者と対峙することに重きをおく。
3 教育方法
授業においては、教育課程部会総則評価特別部会において示された「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を念頭に置いている。
具体的に、「何ができるようになるか」については、子供の目線に立ち、発達段階を考慮ながら教育できるようにする方法・技術である(添付資料2)。
また、「何を学ぶか」においては、保育内容「領域 表現」や小学校音楽科などの教科の内容や指導のポイント等を中心に、子供にとっての音楽の意味がわかるよ うになってほしいと考えて、授業している。(添付資料3)。
さらに、「どのように学ぶか」においては、バズ・セッションや反転授業等を取り入れている(添付資料4)。加えて、音や音楽の学びを行っているため、Google
classroomを用いて、活動内容等に関するリフレクションを実施している(添付資料5)。
4 授業改善の活動
2点実施している。1点目は、学生への調査である。これは、口頭や紙面で毎年行っている。調査直後に自分の授業への省察に活用し、迅速な改善を試みてきた
(添付資料6)。また、2点目は、よりよい指導法の研究のために各種勉強会や学会等へ参加している(詳細は、「8 指導力向上のための取り組み」において示す)。
5 学生の授業評価
2018年度の評価は、添付資料の通りである(添付資料7)。特にこれまでの教育活動の成果として評価が高かったのは、項目12と13 である。具体的には、本 学の指針でもある社会人基礎力やPCRシートにおける科目特性を踏まえた工夫の項目である。それは、本学の指針及び上記の教育方法と改善が具体的に数値とな って表れた結果であるといえる。
この結果を踏まえ、2019 年度の授業では、学生が音と向き合う時間を拡大した。また、それを現場や実習において即実践できるように現在音楽教育において着 目されている身体を用いた活動とした。また、活動あって学び無しとならないように、本学就任時から心掛けている学びの着地点を小学校学習指導要領に定められ ている〔共通事項〕とした。例え保育現場に行く学生であっても幼小連携を踏まえ、遊びを仕組む手立てを打つことに繋がる。こういったことを通したことで、具 体的な音を媒体とした明瞭な活動の実施という解釈で、項目2と3と5の評価が高まった。今後もこのような授業を続け、また日々の省察や改善を繰り返し、他 の項目の評価も高まっていくことを期待したい。
6 学生の学修成果
振り返りにおいて、様々な活動が〔共通事項〕の何に位置づくのか考えさせた。その結果、授業回の初期と後期を比較すると多くの内容において記載の拡がりや 深まりが感じられる。はじめは、具体的な内容を抽象的に示すことに難しさを感じていた学生もいた。しかしながら、回を重ねるごとに音楽の要素といった側面か ら分析が可能となった学生もいる。例えば、11 回目の授業において「〔強弱〕は、模倣させる、思いや意図について思考させる」と示していた学生が、15 回目で は、「〔旋律〕は、前奏と同じモチーフのメロディをくり返し歌う(原文ママ)」、また「〔強弱〕は、作曲者に指定されているものの意図を踏まえて、小鳥さんの性
格を変えて歌ってみる。例えば、げんきな小鳥さん、おとなしい小鳥さん(原文ママ)」というような記載も見られる(添付資料8)。これは、本学において大切に されている社会人基礎力の「創造力」とも関連すると考える。
7 授業科目に関連した教材開発
わらべうた等、曲ごとに様々な活動内容を提示した。それがそのまま教材となっている。それらは、実際の活動およびパワーポイントという形で示した(添付資料 9)。前者は、活動、そして後者は、振り返り及び子どもへの教授法というまとめとして示した。教授法に関しては、汎用的なものなので、他の楽曲であっても対 象の子供に合わせて臨機応変に用いることのできる内容である。また、学びを深めるためにワークシート等の作成を行った(添付資料1~5)。
8 指導力向上のための取り組み
今年度も昨年度同様、様々な研修会や研究会に積極的に参加し、研鑽を積んでいる。具体的には、下記の通りである。
2019年度
日程 時間 内容 場所
4月21日(日) 10時~12時半 音楽教育研究会 千種区役所会館 5月26日(日) 9時半~12時半 音楽教育研究会 岡崎市内幼稚園 6月9日(日) 9時半~12時半 音楽教育研究会 岐阜市民会館ホール 6月22日(日) 全日 日本カリキュラム学会 全国大会 京都大学
7月7日(日) 9時半~12時半 音楽教育研究会 名古屋市内育成所 7月20日(土) 全日 奈良女子大学附属小学校 生活科・総合的な学習の時間 授業及び討論会 奈良女子大学附属小学校 8月4日(日) 10時~12時半 音楽教育研究会 中川区役所会館
8月17・18日(土・日) 全日 学校音楽教育実践学会 全国大会 畿央大学
8月24日(土) 10時~12時半 音楽教育研究 岐阜市民会館ホール
9月1日(日) 9時半~12時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所
9月29日(日) 全日 日本教育方法学会 口頭発表 東海学園大学
10月6日(日) 9時半~12時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所
10月19日(土) 13時~17時 小学校 授業公開及びリトミック研修会(ダルクローズ) 筑波大学・筑波大学附属小学校 11月7日(金) 9時~16時 東海北陸小中学校音楽教育研究会 愛知県小中学校音楽教育研究会 一宮市立富士小学校
11月24日(日) 13時半~16時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所 12月15日(日) 13時半~16時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所 12月22日(土) 13時~16時20分 「私立大学研究ブランディング事業」第一回子ども好適空間シンポジウム ウインクあいち 1月26日(日) 13時半~16時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所
2月6日(木) 9時半~12時 公開授業 岡崎市立広幡小学校
2月16日(日) 13時半~16時半 音楽教育研究 名古屋市内育成所 3月14日(土) 13時~16時半 学校教育実践学会(和太鼓) 中部支部(延期) 東海学園大学 3月27日(金) 13時~17時 日本音楽教育学会 東海地区例会(Web例会) 岐阜大学 3月30日(月) 14時~16時 学校教育実践学会(筝) 中部支部 東海学院大学
研究日 午後 研究予備観察 岡崎市内小学校
研究日や土日ほか 午前等 「保育内容 領域表現/演劇」:舞台における表現方法
「こども表現(音楽)」:即時反応(リトミック)の「音価」等を踏まえた美的感覚を養う身体表現
関連場所
2020年度
6月13日(土) 19時~21時15分 「コロナ禍における合唱活動を考えるー 公衆衛生学の見地から」 ZOOM株式会社コーラス・カンパニー 6月28日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所
7月26日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 8月16日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 8月22日(土) 9:30~12:30 音楽教育研究(様々な発達段階に焦点をあてて) 名古屋市内育成所
9月12日(土) 13:30~15:00 学校教育実践学会 関西支部 研修会 ZOOM学校教育実践学会 8月13日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所
9月19日(土) 15:30~17:00 教育音楽セミナー(ウィズコロナの歌唱指導を探る) ZOOM音楽之友社 9月26日(土) 10:30~12:00 教育音楽セミナー(ワクワク鍵盤ハーモニカ) ZOOM音楽之友社 9月26日(土) 13:30~15:00 教育音楽セミナー(コロナ禍の授業で見えた教科書の新たな見方・考え方) ZOOM音楽之友社
9月27日(日) 15:00~17:00 IBセミナー(文部科学省) 滋賀県 米原市 米原公民館 10月17日(土) 9:00~17:00 第51回音楽教育学会 全国大会 【口頭発表】 ZOOM音楽教育学会 10月18日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 11月3日(祝・火) 9:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 11月8日(日) 9:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 11月29日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 12月6日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 12月24日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 1月24日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 ドリームシアター岐阜 2月13日(土) 9:30~16:50 初等教育研修会(筑波大学附属小学校) オンライン
2月14日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所
愛知学泉大学ティーチングポートフォリオ 2021 年 3 月 3 日 改訂
3月19日(金) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 3月21日(日) 13:30~16:30 音楽教育研究 名古屋市内育成所 また、愛知学泉大学家政学部が主催するFD 研修会に参加し、教育改善の方策のヒントを得ている。FD 研修会への参加記録は添付資料10に示す。
さらに、いままでの教育実践に対していろいろな検討を行い、その結果を学会で発表している(添付資料11)。 9 今後の目標
短期的な目標としては、学習指導要領改訂で打ち出された「思考力・判断力・表現力等」「知識・技能」「学びに向かう力・人間性」等に基づいた指導法の研究、
およびその背景となる理論の研究を深める。
一方、長期的な目標としては、ゼミ生や受講生との相互交流を彼らの卒業後も深め、彼らが職業上で得た体験が現役生にもフィードバックされたり、特に教育現 場での実際の経験を生かしたりできるような環境を構成していきたい。そして私の演習や講義を選び、学んだことが良かったと思ってくれるような集まりにしてい くことである。
他方、本学において重視されている「基礎学力と社会人基礎力と専門知識・技能を三位一体的に修得させる教育活動」については、教師の積極的な働きかけによ り実現するものと認識している。引き続き、学生のために精進する。
10 添付資料
添付資料1「シラバス」、添付資料2「授業プリント1」、添付資料3「授業プリント2」、添付資料4「授業プリント3」、添付資料5「授業プリント4」
添付資料6「学生インタビュー」、添付資料7「授業評価」、添付資料8「授業プリント5」、添付資料9「授業プリント6」、添付資料10「FD資料」、添付資料11
「学会資料」