を 聞 く 世 界の中で
小さな声
親 子 で 学 ぶ 世 界 の い ま
奴隷制度を続けようとします。この対立から１８６１年に南北戦争が始まり、
63年にはリンカン大統
領が奴隷解放宣言を出します。
１８６５年、南北戦争は北軍が勝利し、奴隷制度が廃止され、黒人には公民権が与えられました。
しかし、奴隷であった黒人は衣食住が保証されず、教育も技術もなく経済的に自立できなかったため、白人の差別感情は消えません。
南部の諸州では、黒人の投票権が制限され、黒人取締法が制定されるなど、差別は深刻化します。クー・クラックス・クラン（ＫＫＫ）のような狂信的な白人至上主義運動も活発になっていきました。
人種隔離政策により、列車やバス、学校や図書館、レストランからトイレまで、白人と黒人は分離され、黒人への差別は続きます。
１９５５年にバスの席を譲ることを拒否した黒人女性が逮捕されたことで始まったバスボイコット事件から、黒人差別に対する非暴力的な抗議運動が拡がりました。
マーティン・ルーサー・キングは、奴隷解放宣言から１００年目 １４９２年のコロンブスの「発見」以来、アメリカ大陸はヨーロッパ諸国の植民地になりました。奴隷とされた「インディオ」は、過酷な労働と持ち込まれた感染症のために多数が病死しました。 不足した労働力を補うために多くのアフリカの黒人が誘拐され、荷物のように輸送され、売られ、家畜のようにこき使われました。 北アメリカのイギリス植民地に黒人奴隷が初めて「輸入」されたのは１６１９年で、主に南部のプランテーションで働かされました。 １７７６年の独立宣言の「すべての人は平等に造られ」に、黒人や「インディアン」は含まれません。
87年に制定された合衆国憲法
では、黒人や「インディアン」は一人の人間としては認められず、奴隷貿易も認められていました。
19世紀になると、北部の工業地
帯では解放した黒人を雇って給料を払い消費者とすることで経済発展をめざし、南部の農業地帯では
奴 隷 解 放 宣 言 か ら 公 民 権 法 の 成 立 へ
フロイドさんは、偽札を使った容疑で白人の警察官によって地面に押しつけられ、首をひざで圧迫されて「息ができない」と訴えたにもかかわらず、無抵抗のまま亡くなったのです。現場に立ち会った４人の警察官は解雇され、殺人罪と殺人幇助罪で起訴されました。
アメリカではこれまでも、アフリカ系アメリカ人の男性が歩いているだけで不審者扱いされ、白人の警察官に有無を言わさず射殺されるというような事件が何回も起こっています。しかもこのような事件では、ほとんどの「犯人」が起訴されなかったり、裁判にかけられても無罪になってきたのです。
世界の各地にも抗議の輪が拡がりました。人々が掲げるスローガン、「ブラック
ライブズ
する意思表示です。 警察官の過剰な取り締まりに抗議 事件がきっかけで翌年始まった、 は、２０１２年に起こった同様の 人の命こそ軽んじてはならない）」 マター（黒
民主主義の国アメリカで続く 構造的黒人差別
2020
年５月、ミネソタ州のミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の ジョージ・フロイドさんが白人警官に命を奪われた事件を きっかけに、アメリカ全土に抗議行動が拡がりました。民主主義の国アメリカで、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
大妻多摩中学高等学校アドバイザー・鷗友教育研究所研究員
吉野 明
の１９６３年にワシントン大行進を率い、「私には夢がある」という演説を行いました。それを受け、１９６４年には人種差別を禁止する「公民権法」が制定されました。
何故、「黒人」であるというだけで怪しまれ、侮辱され、暴力を振るわれ、殺されるのでしょうか。
原因の一つは、支配層のＷＡＳＰ（白人、アングロサクソン、プロテスタント）が今後は少数派になる可能性が高く、利益を独占できなくなると恐れていることです。
出発点が奴隷制度であったため、優秀な白人が劣った「黒人」を支配するのは当然という誤った考えから抜け出せない人も多くいます。
白人と「黒人」の居住区が分かれていて、貧しい地区では税金が教育に十分投入されないために多くの「黒人」が教育を満足に受けられず、就職もできず、貧しさに苦しみ、犯罪も増えるのです。
新型コロナで「黒人」の犠牲が多いのも、狭い家が密集し、バス
現 在 も 消 え な い 構 造 的 差 別
や鉄道しか使えず、保険に加入できず健康不安を抱え、日常に欠かせない現場の仕事が多いからです。「黒人」地区の親は忙しく、子供の世話が行き届きません。子供は落ち着かず、基礎力が不足し、筋道立てて話す力もありません。 学校では受け容れられず、否定的な言葉を浴びせられて自己肯定感が下がり、能力があっても発揮できない生徒が多くなります。 優秀であっても就職の時点で差別を受けることも多く、出世の道も非常に狭いといわれています。 多くの白人はこのような構造を知ろうともせず、自己責任と考え、「黒人」に対して怠け者、犯罪者などというレッテルを貼ります。 何回訴えても白人の暴力が止まらない状況に対して、「黒人」の暴力的な抗議行動も起こるのです。 キング牧師は、「暴動は誰にも聞いてもらえなかった者の言葉」と言っています。「略奪が始まったら発砲を始める」などと一方的に抑えつけるのではなく、正面から「黒人」の話を聞き、本質を理解することが求められます。よしのあきら 東京都生まれ。鷗友学園女子中学高等学校社会科教諭、校長、名誉校長を経て、
2020年度から現職。著書に『女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子 どもの人生を左右する！』などがある。
ストウの『アンクル・トムの小屋』は古典として、『マーティン・ルーサー
・キング自伝』、アフリカ系アメリカ人初のノーベル賞作家モリスンの『ビ ラヴド』、デンゼル・ワシントン主演の「マルコムＸ」はおすすめです。
保護者のために
第
15
回白 人 警 察 官 の 暴 力 へ の 抗 議 運 動
アメリカの黒人に関する年表
南北戦争当時のアメリカ
1607年 イギリス人がバージニア植民地に初めて入植する 1619年 バージニア植民地に黒人奴隷が初めて「輸入」される
この間イギリス、アフリカ、アメリカの間で三角貿易が盛んになる 1776年 アメリカがイギリスから独立し、「独立宣言」が出される 1787年 アメリカ合衆国憲法制定
1852年 ストウが、奴隷の逃亡を擁護する『アンクル・トムの小屋』を発表する 1861年 南北戦争が始まる
1863年 北軍のリンカン大統領が奴隷解放宣言を出す 1865年 南北戦争は北軍が勝利して終結、奴隷制度が廃止される
KKK結成、この後、黒人に対する暴行事件が南部の諸州で多発する 1868年 黒人にも公民権が認められる
1870年 黒人の男性に投票権が与えられる
1883年 最高裁判所が公民権法のほとんどを無効にする判決を出す 1890年 南部諸州で黒人の選挙権剥奪や、黒人と白人を分離する法が成立する 1896年 最高裁判所が人種隔離政策を制度として容認する判決を出す 1910年 全米黒人地位向上協会（NAACP）が設立され、人種差別に立ち向かう 1955年 席を譲るのを拒否した黒人が逮捕され、バスボイコット運動が起こる 1956年 最高裁判所がバス車内における人種分離を違憲とする判決を出す 1957年 リトル・ロック高校で黒人生徒の入学に反対する白人の運動が起こる 1962年 ミシシッピ大学に初めての黒人学生が入学したことから暴動が起こる 1963年 キング牧師の呼びかけるワシントン大行進で公民権運動が最高潮に 1964年 公民権法が制定され、南部諸州で人種差別を禁止する法案が成立する 1968年 キング牧師が暗殺され、全米60以上の都市で暴動が起こる 1980年 黒人を殴打した白人警官が無罪となり、マイアミ暴動が起こる 1992年 黒人に暴行した白人警官が無罪となり、ロサンゼルス大暴動が起こる 2012年 黒人少年を射殺した白人警官の無罪判決が出た後、抗議運動が起こる 2013年 ブラック ライブズ マター（BLM）運動が始まる
2014年 黒人2人の死亡を受けて発生したデモからBLM運動が全国に拡がる 2020年（2月）白人の元警察官親子が黒人男性を射殺。5月に逮捕される
（3月）黒人の救急救命士が自宅で白人の警察官に8回も撃たれて死亡
（5月）トランスジェンダーの黒人男性が白人の警察官に射殺される
黒人女性初のピューリ ッツァ賞受賞者スーザ ン＝ロリ・パークスか ら大妻多摩中高校長・
谷林眞理子先生が2013 年に譲り受けた缶バッジ ブラック ライブズ マターのデモ
（2020 年 6 月 5 日／ロードアイランド）
写真：ＡＦＰ/アフロ
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