パシフィックコンサルタンツ株式会社 松田 健士(Matsuda Takeshi)
第8回 食品研究会Part2
食品ロス問題およびそのLCA側面について
+既存研究紹介
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/23自己紹介
氏名:松田健士(まつだ たけし)
所属:パシフィックコンサルタンツ株式会社
業務:LCA含む環境エネルギー分野のコンサル ティング
研究テーマ:廃棄物の3R効果のライフサイクル分 析および分別行動・分別施策効果の分析
「厨芥類の発生抑制と再資源化のトレードオフを考慮した家庭系廃棄物処理の ライフサイクル分析」日本LCA学会誌, 6(4): 280-287、(2010)
“Life-cycle greenhouse gas inventory analysis of household waste
management and food waste reduction activities in Kyoto, Japan”, The International Journal of Life Cycle Assessment, Volume 17, Issue 6, pp 743- 752, (July 2012)
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/23食べ残し 21%
手付かず 食品
15%
調理くず 53%
食品外 11%
家庭からの食品ロス発生
家庭系厨芥類(生ごみ)の4割以上が食品ロス
家庭からの発生量は200-400万t/yr
食品ロスの削減により、食品の生産量が最適化されるこ とで高い環境負荷削減効果が見込まれる
厨芥類
(生ごみ)
4
/23食品ロスに関する国外動向
近年、海外では食品ロス削減が大きな関心を呼 び始めている
FAOが取組みはじめた影響が大きい
Global food losses and food waste(2011)@Interpack
UKのWRAPという政府系機関が消費者向けでは 最も洗練された取組みを行なっている
Love food hate wasteキャンペーン
WRIは温室効果ガスと同じように、企業や政府レ ベルの定量化プロトコルを検討中
Reducing Food Loss and Waste(2013)→以下、いくつか抜粋
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/23食品別ロス率 発生地域内訳
6
/23一人一日あたり食品ロス量(カロリー)
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/23ライフサイクル段階別発生率
8
/23国別ライフサイクル段階別発生率
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/23日本の取組状況
4府省が合同で意見交換を実施
食品ロス削減関係省庁等連絡会議(内閣府、文部科 学省、農林水産省、環境省、消費者庁)
農水省が賞味期限等の商習慣ルールの検討会 を開催
食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム
消費者庁は自治体の組成調査やキャンペーン 運動を支援
環境省では「循環基本計画」で食品ロス削減含 む2Rが新たな柱に位置づけられる10
/23私のこれまでの研究紹介
主に大学院時の修士論文より紹介
修論タイトル「家庭系厨芥類の発生抑制・資源化 に関する研究-分別収集の実証分析およびLCI 分析-」11
/23生物由来廃棄物の資源化
温室効果ガス削減、資源有効活用の観点から国 内外で生物由来廃棄物の資源化が検討中1.背景と目的
厨芥類 37%
紙類 31%
プラ類 13%
その他 19%
コンポスト化 バイオガス化 分別収集
機械選別
焼却 埋立
CH4 分別収集量は大きな不確実性を 持ち、導入による環境負荷削減
効果に大きな影響を与える
CO2
家庭ごみ
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/23厨芥類の分別収集と発生抑制行動
家庭系厨芥類の分別収集導入による、厨芥類の 発生抑制効果が国内外で報告されている
厨芥類の発生抑制要因として以下の3つがある1.背景と目的
食品ロス削減
水切り
自家処理
厨芥類分別収集の追加的な 効果として期待できる これらの行動を総合的に LCAで検討した事例は無い
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/23本研究の目的
厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的 に分析する→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析
家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負 荷(温室効果ガス:GHG)削減効果を評価する→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
1.背景と目的
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/23モデル実験の概要
2.京都市生ごみ等分別収集実験
家庭ごみ
生ごみ+紙ごみ
(2回/週)
他家庭ごみ
(2回/週)
プラスチック製
容器包装(1回/週) 再資源化
バイオガス化
焼却 期間1:生ごみ分別 期間2:生+紙ごみ分別
分別対象 ○:生ごみ
×:貝殻、かに殻、骨
×:紙ごみ類
○:生ごみ
○:貝殻、かに殻、骨
○:紙ごみ類 利用方法 バイオガス化
堆肥化(発酵残渣)
バイオガス化
実験期間 2008.10-12 2009.1-9
対象地区 京都市内12地区、約2,200世帯
缶・びん・
ペットボトル
(古紙類)
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/23本研究の目的
厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的 に分析する→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析
家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負 荷(温室効果ガス:GHG)削減効果の評価→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
1.背景と目的
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/23発生抑制効果の分析方法
厨芥類の分別収集を導入している86市町村の 1998-2008年度のパネルデータを用いて以下の 線形回帰分析を実施
モデル式:y
it= β
1x
it1+β
2x
it2+…+β
jx
itj+a
i+u
it 3. 分別収集量・発生抑制量の実証分析t年度の家庭ごみ 排出原単位
(g/人・日)
厨芥類分別導入の有無
生ごみ処理機の助成台数 ごみ有料化の有無
地域特性等
β
1β
2x
it2x
it1y
it自治体iの個別効果
※イメージ図
a
ix
it3誤差項
u
it分別収集される 厨芥類も含む
β
3他廃棄物関連施策
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/23家庭系廃棄物排出量のパネルデータ分析結果
変数名 係数 標準誤差 有意確率
厨芥類分別ダミー -82.2 16.1 0.0%
古紙分別ダミー -78.8 25.2 0.2%
紙容包分別ダミー -29.9 32.2 35.4%
プラ容包分別ダミー 37.1 21.5 8.5%
可燃ごみ等有料化・袋指定ダミー -173.9 25.7 0.0%
可燃ごみ等収集頻度(回/週)* -52.4 22.4 2.0%
生ごみ処理機累積助成数(台/世帯) -327.7 116.4 0.5%
地域特性*
定数項 1,556.9 296.1 0.0%
3. 分別収集量・発生抑制量の実証分析
*:地域特性、可燃ごみ等収集頻度は個別効果との相関が強く、理論と整合する結果とはならなかった
ごみ有料化や生ご み処理機の助成制
度も有意な発生抑 制効果を示した
厨芥類の分別収集導入により、
家庭ごみ排出量は80g/人・日減尐
モデルにより40~100g/人・日
厨芥類の発生抑制 効果は十分にあった
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/23本研究の目的
厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的 に分析する→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析
家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負 荷(温室効果ガス:GHG)削減効果の評価→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
1.背景と目的
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/23機能単位の設定
機能単位
厨芥類、プラスチック製容器包装および一部資源ご み*を除く国内の家庭ごみ1,500万t-wetの処理
日本国民1億2千万人の食品摂取量
国内で廃棄されたプラスチック製容器包装200万t- wetによる製品の保護4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
*:分別収集率が高い缶・びん・ペットボトルおよび白色トレーのうち、
可燃ごみ等に排出されない分(=分別収集された量)を除いた
厨芥類の発生抑制、プラスチック製容器包装の素材転換 を評価するため、複数の機能単位を設定した
バイオガス化・堆肥化技術との親和性が高い 生分解性プラスチックへの素材転換を考慮
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/23システム境界・シナリオフロー
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
可燃ごみ等 焼却・蒸気発電 飛灰
焼却灰 電力 混合収集
焼却シナリオ
分別収集
(厨芥類・紙類) メタン発酵
可燃ごみ等 バイオガス
発酵残渣 分別収集
(非分別ごみ) 焼却・蒸気発電
飛灰 埋立 焼却灰
電力 ガスエンジン発電
(GE発電)
分別収集バイオガス化シナリオ
可燃ごみ等
機械選別
混合収集 メタン発酵 バイオガス
発酵残渣
焼却・蒸気発電 飛灰 埋立
焼却灰
電力 ガスエンジン発電
(GE発電)
機械選別バイオガス化シナリオ 食品生産~調理
(食品ロス)
他製品生産 食品生産~調理 (食品ロス以外)
他資源化物
(缶・びん・ペッ トボトル等)
プラ容包生産
自家処理
(家庭コンポスト化) 堆肥
埋立
各種リサイクル
京都市実験での 収集率を適用
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/23発生抑制ケースの設定
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
実証分析の結果を参考に、厨芥類排出量が 10%(21g/人・日)減尐すると仮定1.食品ロス削減ケース
厨芥類のうち食品ロスのみが減尐(27%減)
生産段階のGHG削減2.水切りケース
厨芥類の含水率が76.9%→74.3%に低下3.自家処理ケース
厨芥類の減尐分は自家処理
生成した堆肥は化学肥料を代替電動生ごみ処理機:プラスチッ ク製コンポスター=1:9 卒論時に推定した値を利用
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/230 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
GHG排出原単位(gCO2eq/kg-waste)
食べ残し構成比(%)
調理 卸売・小売 輸送 生産(CH4) 生産(CO2)
動物性(36%)
植物性(25%) 穀物性(25%) その他
(14%)
調味料 (0.5%)
食品ロス生産段階のGHG排出量
食べ残し、手付かず食品のGHG排出原単位は 1.5-1.7kg-CO2eq/kg-Food4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
GHG排出原単位(g-CO2eq/kg-waste)
手付かず食品構成比(%)
卸売・小売 輸送 生産(CH4)
生産(CO2) 動物性(21%)
植物性(36%)
卵(ゆで)(0.4%)
穀物性(31%)
嗜好飲料(3.5%)
乳製品(2.2%)
調味料(5.0%) 飲料水(0.6%)
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/2317,023 16,361 16,286
14,832 16,308 16,544
-10,000 -5,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
焼却 分別バイオ 機械バイオ 分別バイオ 分別バイオ 分別バイオ
基本 ロス減 水切り 自家処理
GHG emission (103 t CO2eq/yr)
プラリサイクル 化肥代替 GE発電 蒸気発電 処理
埋立地ガス 焼却排ガス 収集
樹脂生産 食品生産 Net GHG
基本シナリオ・発生抑制ケース結果
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
-66万tCO2eq/yr -74万tCO2eq/yr
分別収集シナリオからさら に-150万t-CO2eq/yrの
GHG削減効果
水切りはほとんど 変化なし
自家処理は逆に GHG排出増加
発生抑制ケース
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/230 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000
基本 全量収集 ロス減 水切り 自家処理
分別バイオ GHG Reduction (千t CO2eq/yr)
発生抑制効果の感度解析結果
発生抑制ケース
発生抑制効果を0~20%で感度解析 全量収集ケース
厨芥類、対象紙類が100%分別収集されるケース4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
GHG削減効果が 大きく向上する
可能性
全量収集ケース以上の GHG削減効果を示した
焼却シナリオからの GHG削減量
=食品ロス54%減
=食品ロス
27%減 厨芥類20%減
厨芥類0%減
厨芥類10%減
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/230 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800
基本 分別率最大 参加率最大 収集率最大 全量収集 基本 選別率大 +省電力
選別率小 +大電力
分別バイオ 機械バイオ
GHG Reduction (千t CO2eq/yr)
分別収集と機械選別の比較
収集率向上・機械選別性能変動ケース
発酵残渣の含水率が42、52、62%で変動4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
発酵残渣の脱水は機械 選別時に特に有効 参加率・分別率ともに高ければ、
分別が望ましい
(発生抑制が無い場合)
世帯分別率最大値=厨芥80%、紙40%
参加率最大値=80%(京都市調査より)
残渣含水率42%
残渣含水率62%
良 悪
26
/2320,871
18,820
15,829
33,065
29,588
24,014
-10,000 -5,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000
埋立 分別バイオ 機械バイオ 埋立 分別バイオ 機械バイオ
埋立・準好気 埋立・嫌気性
GHG emission (103 t CO2eq/yr)
プラリサイクル 化肥代替 GE発電 蒸気発電 処理
埋立地ガス 焼却排ガス 収集
樹脂生産 食品生産 Net GHG
埋立ケース(焼却なし)
非分別物、発酵残渣等が全て埋立されるケース4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
焼却シナリオ 基本ケース17,023
埋立の場合、機械選別バイオ ガス化がGHG削減の観点から
望ましいシナリオとなった
嫌気性埋立の場合はGHG 排出量が大きく増加した
準好気性・嫌気性の
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/23結論① 実態調査・実証分析
2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
各厨芥類・紙類の分別傾向
分別収集量の決定要因として参加率が重要3.分別収集量・発生抑制量の実証分析
厨芥類の分別収集導入による家庭ごみ発生抑 制効果が存在する5.結論と今後の課題
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/23結論② GHG削減効果
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
分別収集導入による食品ロス削減がある場合、厨芥類等を全量収集する以上のGHG削減効果
発生抑制の内訳によりGHG削減効果は異なる
分別収集と機械選別の差は小さく、収集率・施設 能力など条件によって最適なシナリオは異なる5.結論と今後の課題
本研究を踏まえ、厨芥類の分別収集や食品ロス削減 施策が効果的に推進されることが望まれる
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