令和3年度 研究プロジェクト実施報告書
研究代表者:愛知学泉短期大学 幼児教育学科 児玉珠美
保育者養成課程における食物アレルギーに対する意識向上のための プログラムに関する研究
1. 研究活動の概要
本研究は、本学幼児教育学科における「保育者養成課程における食物アレルギーに対する意識向上の ためのプログラム」の実施を通して、保育者をめざす学生が食物アレルギーについての専門的知識と実 践的な活動について学び、食物アレルギーに対する高い意識を持てるようにすることを目的としている。
プログラムは、①授業での取り組み ②紙芝居上演会「みんないっしょのクリスマス会」③ DVD 制 作の 3 段階で実施された。幼児教育学科2年生の授業「子どもの食と栄養」において、食物アレルギー の基礎知識や代替食についての講義後、食物アレルギー除去食の調理、食物アレルギーをテーマとした 食育媒体(紙芝居)の制作を実施した。地域親子を招待したクリスマス会では、授業で制作した紙芝居 を読み聞かせをした。さらに、授業で学習した三大アレルゲンを除去したクッキーを作り、食物栄養学 科の学生が作った食物アレルギー対応のケーキと共に参加者に提供した。
クリスマス会について周知するため、岡崎市との連携協力のための包括協定のもと、岡崎市こども部 保育科の協力を得て、市内の公立園に案内チラシの配布を依頼した。また、紙芝居は市内の民間幼稚園 において上演会を実施する予定であったが、コロナ禍により中止となったため、紙芝居の読み聞かせを DVDとして制作し、希望園等に配布した。
2. 成果
(1) 授業での取り組み
幼児教育学科2年68名を対象に、後期科目「子どもの食と栄養」の5~9週目の授業において、本プ ログラムを実施した。
子どもの食と栄養5~9週 授業内容
食物アレルギーの原因食品や身体症状、除去食、
さらに、アレルギーの有無に関係なく、子どもたちがみんなでいっしょに食べる機会を持つ大切さを 学んだ。
5週目 食物アレルギーの基礎知識、
食物除去食について
講義
6週目 食育について 食育媒体の制作①
演習
7週目 8週目
食育媒体の制作②③ 演習
9週目 食物アレルギー除去食の調理 調理 授業では、食物アレルギーの基礎知識を講義で
学んだ後、食物アレルギーをテーマとしたオリジ ナルの紙芝居制作をした。食物アレルギーのある 園児のみでなく、食物アレルギーのない園児にも、
食物アレルギーについて理解してほしいという思 いで、学生たちは制作に取り組んだ。さらに、三 大アルゲン(卵・小麦・牛乳)除去のクッキー作り に取り組んだ。食物アレルギーの代替食を調理す ることにより、食物アレルギーについての理解を 深め、アレルギー除去食を身に付けることができ
制作した紙芝居より クッキー作り
(2) クリスマス会の開催
(3) DVD制作 クリスマス会の様子
3. 考察・今後の課題
本プログラムにおいては、保育者養成課程の学生たちが多様な視点で食物アレルギーについて考え、
実践的な経験を通して、食物アレルギーについて高い意識を持つことを目的とした。終了後のアンケー ト結果からも、学生たちが食物アレルギーについて向き合い、保育者としての視点で対応する具体的な 方法を学ぶ機会となったことがわかった。食物アレルギーに関する講義、調理実習および紙芝居制作と いうプログラムを通して、食物アレルギーに対する意識が高まったといえる。
クリスマス会やDVD制作は、授業での取り組みをさらに発展させたものであったが、これらの活動を 全体の学生にフィードバックしていくことが、今後の課題のひとつとなる。来年度の授業では、前年度 のクリスマス会やDVD内容を学生たちに紹介し、自分たちが取り組むプログラムが地域にとってどのよ うな意味を持つのかについて考える機会を設定することも必要となる。学生全体にフィードバックして いくことにより、地域の食物アレルギーの意識を高める活動の重要性を理解し、保育現場においても地 域との連携活動に積極的に取り組んでいく保育者が増加することに繋がると期待される。2022年度の「子 どもの食と栄養」の授業では、本プログラムを継続するとともに、食物アレルギー専門の医師による講 演も予定されており、保育者養成課程における学生の意識がさらに高まる活動に取り組んでいく。本学 幼児教育学科の卒業生たちが、食物アレルギーへの高い意識を持ちながら、子どもたちの命と健康を守 る保育者をめざしていけるよう、保育者養成課程における食物アレルギーへの意識を高めるプログラム に、今後も取り組んでいきたいと考える。
授業で制作した紙芝居は、市内の民間幼稚園において上演会を実施する予定 であったが、コロナ禍により中止となったため、紙芝居の読み聞かせをDVD として制作し、希望園等に配布した。公立の保育園やN P O法人などを含む 4施設に寄贈することになった。また、この取り組みはマスコミにも取り上げ られ、地域の多くの方々の食物アレルギーに対する関心を高めることに繋がっ
たと考えられる。
令和3年12月4日(土)午前、午後の2回、本学1号館1階ラウンジにて、
アレルギーのある子どもにも同じお菓子をお土産として提供し、親子みんなで 楽しめるイベントとして、「みんないっしょのクリスマス会」を実施した。授 業で制作した紙芝居の読み聞かせや音楽演奏等を通して、参加親子は楽しみな がら食物アレルギーについて理解を深めることができた。参加者数は、家族 46 組、大人 66名、未就学児71名であった。
DVDジャケット