はじめに
核兵器のない世界の実現を目指すことは
21世紀の国際政治の重要な課題であり、唯一の
被爆国である日本にとっては、かねて、国民的な使命感を伴う政策目標である。それ故に、バラク・オバマ大統領のプラハ演説は核軍縮の進展を望む世論の期待を高めたし、オバマ 大統領が、核兵器を使用した唯一の国として米国には核軍縮のために行動する「道義的な 責任がある」と言い切ったことは、多くの日本人に感銘を与えた。
しかしながら、プラハ演説後の核軍縮の動きは、世論が期待したほど目覚ましいもので はない。昨年12月に失効した戦略兵器削減条約(START)の後継条約として本年
4月に米ロ
間で調印された新条約の米上院による年内批准は危ぶまれているし、オバマ大統領が重視し ている包括的核実験禁止条約(CTBT)批准の見通しも立っていない。米国の戦略態勢につ いて検討するために米国議会が組織した超党派の委員会(以下「コングレッショナル・コミッ ション」)(1)が昨年発表した報告、『米国の戦略態勢(America’s Strategic Posture)』でも、CTBT の批准について意見が割れたことが明らかにされており、その背景に、新型核弾頭開発の 是非をめぐる意見の対立があったと言われる。また、本年5月に開かれた核不拡散条約(NPT)運用検討会議も、何らの合意もできなか った前回会議(2005年)の轍を踏むことは避けられたものの、核軍縮の進展に政治的な弾み をつけるような成果は生み出せなかった。さらに、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(いわ ゆる「カットオフ」条約)についても、ジュネーブ軍縮会議での交渉を開始することすらで きない情況が続いている。
その一方で、核兵器の拡散は進んでいる。冷戦時代からイスラエルが秘密裡に核武装を 進めてきたことは、今や、公然の秘密であり、冷戦終了後には、インド、パキスタンが本 格的に核武装し、北朝鮮の核兵器開発も、また、核兵器開発への転用が疑われているイラ ンの原子力開発も止まらない。それに加えて、核兵器や核物質がテロリストの手に渡る危 険も現実的になってきた。さらに、中国の軍事力近代化には核戦力の近代化も含まれてい るとみられているし、ロシアも、本年
2月に発表した新軍事ドクトリン
(2)で、核兵器重視の 方針を打ち出した。だからこそ、核軍縮・不拡散の分野でのいっそうの国際協力が求められているのだが、
国際連合やジュネーブ軍縮会議における国際協力には時間がかかるうえに、そのできるこ
とにも限界があり、日本にとっては、核抑止力を含む米国の抑止力の信頼性を確保してい くことが、これまで以上に重要になってきた。
ひるがえって日本政府は、これまで、国内世論の強い反核感情を背景に、外交面で核軍 縮・不拡散を追求することを核兵器に関する政策の中心に据え、安全保障の面でも、米国 の核抑止力に依存しつつも、米国の核戦略に対しては意識的に距離を置き、さらに進んで、
米軍艦船の寄港や領海通過にも非核三原則を厳密に適用する方針を内外に宣明してきた。
マスコミや世論の関心はもっぱら核軍縮に焦点があてられ、安全保障上の課題である抑 止戦略に対する理解度も低い。そのこと自体は唯一の被爆国の国民感情としては当然のこ ととも言えるが、それを背景に政府が非核政策に傾斜してきたことが米国の核戦略に対す る日本政府の関与の欠如と情報不足を招いてきたことも事実であり、さらにこのことが、
米国の拡大抑止の信頼性について、政府が説得力をもって国民に説明できない大きな原因 になってきた。米国の抑止戦略に関与しない日本政府は、この問題について、米国を信用 するかしないかという次元でしか議論できないからである。
本稿は、このような問題意識から出発して、「核なき世界」を目指す過程において、いか にして米国の拡大抑止の信頼性を確保するかに焦点を絞って論じている。筆者の限られた 知識と経験に基づいた意見であり、識者のご意見、ご批判をいただければ幸いである。
1
米国の拡大抑止と日本の対応核兵器の脅威には米国の核抑止力に依存して対処するという方針は、冷戦時代より今日 まで一貫して日本の安全保障政策の基本であり、米国もこれに応えて、大統領以下の政府 高官の発言や日米両政府間の合意文書で、米国の核戦力のもつ抑止効果を日本に及ぼす決 意を繰り返し表明してきた。しかし、米国の拡大抑止に対する日本政府の対応は受け身に 終止してきたと言っても過言ではない。
(1) 防衛計画の大綱における取り扱い
昭和51年(1976年)、平成
7
年(1995年)と平成16
年(2004年)に各々閣議決定された、3 次にわたる防衛計画の大綱における核抑止についての書き振りも次のようになっている。第1次大綱:「核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存するものとする」
第2次大綱:「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮 の国際的努力のなかで積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする」
第3次大綱:「核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。同時に、核兵器のない世 界を目指した現実的・漸進的な核軍縮・不拡散の取組において積極的な役割を果たすものと する。その他の大量破壊兵器やミサイル等の運搬手段に関する軍縮及び拡散防止のための国 際的な取組にも積極的な役割を果たしていく」
一読して明らかなことは、核抑止についての米国まかせの姿勢と、軍縮面の努力を強調 することによって、米国の核抑止力への依存とのバランスをとろうとする国内向けの配慮 である。
第1次大綱が策定された
1976年は米ソ冷戦のまっただ中で、当時米国は、ソ連と対立関係
にあった中国を対ソ戦略上のパートナーとみなしていたし、日本国内でも、日中国交正常 化(1972年)を受けて、中国に対する脅威感はなかった。したがって、核兵器の脅威と言え ばソ連の核戦力についてのことであり、米ソの核戦力が世界的な規模で均衡していれば、
米ソ間の相互抑止の効果は日本にも及ぶというのが当時の日本政府の認識だった。第1次大 綱は、「核相互抑止を含む軍事均衡や各般の国際関係安定化の努力により、東西間の全面的 軍事衝突又はこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない」
と結論づけているし、また、それから10年後の
1986
年に京都で開かれた国際戦略問題研究 所(IISS)の年次総会で倉成正外相(当時)は、「米国の核戦力が全体としてソ連の核戦力と 全世界的に均衡している限り、米国の核抑止力のメカニズムはこの〔アジア・太平洋〕地域 で有効に機能する」と述べている(3)。第2次大綱が核軍縮のための努力を、米国の核抑止力に依存することについての但し書き のように付記した理由は必ずしも明らかではないが、冷戦終了後の核軍縮進展への期待の 高まりや、社会党の村山富市首相(当時)の下の内閣のイデオロギー的な立場が反映された ものと考えられる。小泉純一郎首相の下で採択された現行の第
3次大綱は、米国の核抑止力
への依存について、第2次大綱にあった但し書きを削除して、第1次大綱とほぼ同じ表現に 戻しているものの、核抑止力への依存に続けて外交面での軍縮努力を詳しく書いており、後者によって前者とのバランスをとろうとしているような印象が残ることは否めない。
3次にわたる大綱がいずれも、米国の核抑止力の効果を確保するために日本として何をな
すべきかといった視点からの考察を欠いているのは、世論の強い反核感情に配慮して、米 国の核戦略から距離を置こうとしてきた政府の姿勢の反映と考えられる。いわゆる「核の 傘」についての世論の受け止め方も、最も肯定的な場合でも「必要悪」という認識で、世 論の関心は、米国の核兵器が国内に持ち込まれることを避けることに集中してきた。
なお、米国の核抑止力への依存との関係で生物・化学兵器の脅威への対応に言及がない のは、意識的に外したというよりも、これらの大量破壊兵器による攻撃を受ける可能性は 低いと考えられていたためと思われる。
(2) 日米間の合意文書での取り扱い
米国の核戦略との間に距離を置こうとする日本側の姿勢は日米間の合意文書にも反映さ れている。例えば、冷戦終了後の日米安保協力を再確認、再定義したと言われる1996年の 橋本龍太郎首相とビル・クリントン大統領の共同宣言でも、両首脳が「日米安保条約に基 づく米国の抑止力は引き続き日本の安全保障の拠り所(guarantee)であることを確認した」(4)
と書かれているだけであり、翌
1997
年に両政府が発表した「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」でも、日本が「自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持する」ことと、
米国が「そのコミットメントを達成するため、抑止力を保持する」こととを書き分けて、
その間の関係については論じられていない(5)。2007年の日米安全保障協議委員会の共同発表 でも、「米国の拡大抑止は、日本の防衛及び地域の安全保障を支える」という日米共通の認 識を述べた後に、米国側の意思表示として、「米国は、あらゆる種類の米国の軍事力(核及 び非核の双方の打撃力及び防衛能力を含む)が、拡大抑止の中核を形成し、日本の防衛に対す
る米国のコミットメントを裏付けすることを再確認した」と書かれている(6)。
(3) 日米協議の必要性
米国の拡大抑止の信頼性との関係でもうひとつ指摘しなければならないことは、ごく最 近まで、米国の抑止戦略について日米両政府間で議論されたことがないことである。後述 するオバマ政権による核態勢見直しの過程で、日米間で公式、非公式の意見交換が行なわ れたと言われているが、これは、これまでの日米安保条約の歴史からみれば例外的なこと だった。
抑止戦略について日米協議が行なわれないできた主な理由も、米国の核戦略に取り込ま れることを避けようとしてきた日本側の姿勢にあるが、米国側にも、中国の最初の核実験
(1964年)の前後を除いて、日本政府を説得してまで核戦略について協議しようとする意思 はなかったように思われる(7)。日本の世論の強い反核感情に対する米側の理解が深まったこ とがその最大の理由と思われるが、核搭載艦船の寄港に対する非核三原則の適用をめぐる 認識の相違という、いわば議論の入口で問題があったことが、核戦略についての日本との 協議を避ける米国の姿勢を助長したという事情もあったのではなかろうか。
しかしながら、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発や核戦力を含む中国軍事力の近代化を前 にして、日本国内でも、米国の拡大抑止の信頼性を問う意見が出てきたし、その信頼性を 向上させるために非核三原則を修正して核搭載艦船の寄港を認めるべしといった意見も、
少数ながら、政治レベルで聞かれるようになった。また、8月に公表された菅直人首相の諮 問機関(8)の報告書も、当面、非核三原則を改めなければならない情勢にはないとしつつ、
「一方的に米国の手を縛ることだけを事前に原則として決めておくことは、必ずしも賢明で はない」との見解を示した。さらに、抑止戦略について米国と協議することなしに米国の 拡大抑止の信頼性を議論することに限界があることについての認識も、政府内外の専門家 の間で広まってきた。
米側でも、核軍縮を進めるにあたって同盟国に不安を与えないように配慮することの重 要性が強調されるようになり、例えば、先に触れた米国のコングレッショナル・コミッシ ョンの報告は日本との協議の重要性を特記している。その背景に、日本が核武装に走るこ とを防ぎたいという意識があることは明らかであり、またオバマ政権の核態勢見直しの過 程で米側が、公式、非公式に、日本側の意見を聞く姿勢をみせたことも前述のとおりである。
このような、日米双方における意識の変化を反映して、2009年夏以来、日米の外交・防 衛事務当局の間で、抑止戦略についての非公式な対話が行なわれている。今後、日米両政 府間の戦略協議がさらに組織化されるとともに、日米双方の研究機関や専門家の間でも、
抑止戦略についての意見交換が進むことを期待したい。
2
「宣言政策」―核軍縮と抑止戦略の接点米国の拡大核抑止の信頼性を考えるうえで重要な要素のひとつが「宣言政策(declaratory
policy)
」と呼ばれる核兵器の使用に関する米国の意図表明で、抑止効果を挙げるために意図的に何も言わないことや曖昧な姿勢をとる、「意図的な曖昧性(“calculated ambiguity”)」を残
すことを特徴としている。
この関連で注目すべきことは、2007年以来の米国のいわゆる四賢人の提案(9)に触発され、
本年5月の
NPT
運用検討会議をひとつの節目として国際的に盛り上がった核軍縮のための議 論のなかから、米国の宣言政策の修正を求める意見が出てきたことである。(イ)核兵器の「ファースト・ユース」の可能性を否定すること、すなわち「ノー・ファースト・ユース」
を宣言することを求める、以前からある意見と、(ロ)それに代わるようにして出てきた、
「核兵器を保有する『唯一の目的』を核兵器の脅威を抑止することに限定する」ことを求め る意見がその代表的なもので、岡田克也前外務大臣も就任直後に、個人的意見と断りつつ も、核の「先制使用」に反対する立場を明らかにした。
同外相はまた、昨年12月にヒラリー・クリントン国務長官とロバート・ゲイツ国防長官 に送った書簡(10)や、本年2月にオーストラリアのスティーブン・スミス外相と共同で発表 した声明(11)で、核兵器保有の唯一の目的を核兵器の使用を抑止することに限定するという 考え方への強い関心を示し、さらに、後述するオバマ政権の核態勢見直し報告に関する談 話でも、核保有国の間でこの考え方についての議論が深まることへの期待を表明した。岡 田前外相はこれらの書簡や共同宣言で、オーストラリアのギャレス・エヴァンス、日本の 川口順子両元外相が共同議長を務めた「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」(12)
の報告に言及しているが、この報告の問題点については後述する。
(1) 核兵器の「ファースト・ユース(first use)」
この問題を議論するにあたってまず指摘しておかなくてはならないことは、核の「先制 使用」という、国内で一般的に使われている用語は、核戦略の用語として国際的に使われ ている「ファースト・ユース(first use)」の訳語としては正確ではないことである。
そもそも、冷戦時代に北大西洋条約機構(NATO)で使われ始めた「ファースト・ユース」
という用語に先制攻撃の意味は含まれていない。例えば、英国の国防次官を務め、核戦略 の専門家として生前に広く尊敬を集めていた故マイケル・クウィンランは、晩年に出版し た名著『核兵器について考える』(13)で、西側世界で使われる戦略用語としての「ファース ト・ユース」と「ファースト・ストライク」とを区別して、「ファースト・ユース」は「紛 争の過程ではじめて核兵器が使われる場合」を指し、「ファースト・ストライク」は「一方 が他方の報復能力を奪う目的で、多数の核兵器を使って『先制作戦』(pre-emptive operations)
を起こす場合の核兵器の使い方」と説明している。
言い換えれば、通常戦力や生物・化学兵器による攻撃に対してはじめて核兵器を使うこ とが「ファースト・ユース」であり、核兵器の「ファースト・ユース」の可能性を排除し ないことによって、相手側に、通常戦力や生物・化学兵器によって攻撃を仕掛けることを 思いとどまらせるというのが核抑止論の基本的な考え方のひとつである。したがって、米 国の拡大核抑止に依存する日本が米国に、「ノー・ファースト・ユース」への政策転換を求 めることは、政策論として矛盾している。
学界では「ファースト・ユース」を「先行使用」と訳す向きもあり、そのほうがこの用 語の本来の意味に近いと思われる。しかし、そのこと以上に、先制攻撃を意味すると受け
止められやすい訳語を使うことによって「ファースト・ユース」という政策概念を誤解す る可能性があることと、国内では「先制使用」という訳語を使い、外に向かっては「ファ ースト・ユース」を使うことにより、「ファースト・ユース」についての国内の議論が同じ 問題についての国際的な議論とかみ合わない結果を招くことが懸念される。
ちなみに、NPT上核保有を認められている米ロ英仏中
5
ヵ国のなかで「ノー・ファース ト・ユース」を公言しているのは中国だけだが、本年8月に発表された中国の軍事力に関す る米国国防省の報告書(14)は、中国の主張に曖昧さが残ることを指摘している。また、ソ連 時代に「ノー・ファースト・ユース」を表明していたロシアも、先に触れた新しい軍事ド クトリンで、「ロシアや同盟国に対する核その他の大量破壊兵器による攻撃に対する報復」のために、あるいは、「ロシアに対する通常戦力による攻撃によって国家の存亡が脅かされ る場合」に、核兵器を使用する権利を留保するとして、核兵器の「ファースト・ユース」
を排除しない方針を明らかにした。
(2) 核兵器保有の唯一の目的
核兵器を保有する目的を核兵器の脅威を抑止することに限定しようとする発想が米欧の 核軍縮推進論者の間から出てきた背景には、ソ連の圧倒的な通常戦力による攻撃を抑止す るために米国が、通常戦力による攻撃に対して核兵器を使用する可能性を排除しないとい う、冷戦時代の戦略がヨーロッパではもはや必要なくなったという認識と、「ファースト・
ユース」という、冷戦時代を想起させる用語の使用を避けたいという意識が働いていたと 思われる。
しかし、この発想が北朝鮮の通常戦力による攻撃を抑止するために米国の核戦力を含め た抑止力を必要としている朝鮮半島の現状に適用できないことは明らかであり、また、こ の発想は生物・化学兵器のような、核兵器以外の大量破壊兵器の使用をいかにして抑止す るかという問題に対する回答も用意していない。
生物・化学兵器の使用を抑止する方途として核兵器が適切かどうかについて疑問が残る ことは事実だが、生物・化学兵器の使用を抑止する有効な手段が見出されていない現状の 下では、生物・化学兵器を保有している国が、これらの兵器を使えば核兵器による報復を 受けるかもしれないという恐れを抱かざるをえない情況を維持しておくこともやむをえな いことと思われる。とくに、北朝鮮が生物・化学兵器を保有しているとみられている情況 の下で米国が、一方的に、生物・化学兵器が使用されても核兵器による報復はしないとい う方針を打ち出すことは北朝鮮を安心させるだけであり、とくに北朝鮮が国連安全保障理 事会の決議を無視し、6ヵ国協議にも参加しない姿勢をとっているときにこのような方針を 打ち出すことは、北朝鮮の挑発的な姿勢を助長するだけと思われる。
(3) オバマ政権の
NPR報告
このような議論が行なわれてきたなかで、オバマ政権が本年4月に発表した『核態勢見直 し(NPR: Nuclear Posture Review)報告』は、抑止戦略における核兵器の役割を縮小する方針を 明確にするとともに、宣言政策の面で、核兵器国が非核兵器国に対して核兵器による攻撃 や威嚇をしないことを保証する、いわゆる「消極的安全保証」の強化と絡めて、概略次の
ような政策を打ち出した。
(イ)
NPT
加盟国で、かつ核不拡散の義務を遵守している国に対しては核兵器を使用せ ず、その脅威も与えない。これらの国が米国やその同盟国、パートナー諸国に対して 生物兵器や化学兵器を使用した場合には、通常兵器により壊滅的な打撃を与える。た だし、生物兵器の発達や拡散の状況いかんによって、この(生物兵器の攻撃に対しても 通常兵器によって対応するという)保証を修正する権利を留保する。(ロ) この消極的安全保証が適用されない国による米国やその同盟国、パートナー諸国 に対する、通常兵器や生物・化学兵器による攻撃を抑止するためには、今後とも、米 国の核兵器が役割を果たすかもしれない(U.S. nuclear weapons may still play a role)。
(ハ) 核攻撃の抑止を核兵器の唯一の目的とすることを普遍的に適用する政策として採 択する用意は、今のところない。
「NPTの加盟国」で、かつ、「不拡散の義務を履行している国」という条件を満たさない国 が、NPTから脱退した北朝鮮や、NPTに加盟してはいるもののその義務を履行していないイ ランを指していることは明らかで、これらの国々が通常兵器や生物・化学兵器を使用して 攻撃を仕掛けた場合に米国が、核兵器の「ファースト・ユース」の可能性を排除しないと いう姿勢は、米国の拡大核抑止の信頼性を裏付ける対応だと言える。
(4) 今後の論点
その一方でオバマ政権のNPR報告は、核攻撃の抑止を核兵器の唯一の目的とする政策を 安全な形で(safely)採択できるような条件を作り出すよう努力するとしている。そこで、
核兵器保有の目的に関する米国内の議論と、日本政府が間接的にかかわったICNNDのこの 問題に関する提案の違いについて触れておきたい。
①米国内の議論
米国にも核兵器保有の目的を核攻撃の抑止に限定することを求める意見はある。しかし、
多数意見は核兵器の目的を抑止力の提供と考えるところでとどまっており、核兵器の脅威 を抑止することに限定するまでには至っていない。例えば、米国の外交問題評議会の独立 タスクフォースの報告書『米国の核兵器政策(U.S. Nuclear Weapons Policy)』(15)は、共同議長
(ウィリアム・ペリーとブレント・スコウクロフト)連名の序文で、「米国の核兵器の唯一の目 的」との表現を用いつつ、それを「米国と同盟国に抑止力を提供すること」と定義してい る。また、同報告書は、本文で、生物・化学兵器に対する報復のために米国が核兵器を使 用するかしないかを意図的に曖昧にしておくこと(“calculated ambiguity”)は今後とも米国の 国益に資するとして、言外に「ノー・ファースト・ユース」政策の採択を否定している。
先に触れたコングレッショナル・コミッションの報告書も核戦力の目的について、同盟 国への保証(assurance)と潜在敵国に攻撃を思いとどまらせること(dissuasion)を含む、広い 意味での「抑止」と定義している。また、この報告書は、「自国または同盟国に向けた核攻撃 に対する報復以外の目的のためには核兵器を使用しないと、あらかじめ誓約する(foreswear)
こと」を意味する「ノー・ファースト・ユース」を政策として採択することによって核兵 器の使用についての意図的な曖昧さをなくすことは、してはならないと強調している。こ
の報告書は、さらに、「ノー・ファースト・ユース」政策は「生物兵器の攻撃を抑止するた めに核兵器が果たしうる潜在的な貢献を損なう」と指摘し、意図的な曖昧さが米国の宣言 政策の重要な要素であることの理由として、「通常戦力の面での米国の優越が長続きするこ とを当然視できない」ことも挙げている。
②ICNNDの提案
上記の議論と明確な対比をなすのが、2009年
12月に発表された ICNND
の報告『核の脅威 を絶つために(Eliminating Nuclear Threats)』(16)で、(イ)2012年までにすべての核保有国が、
「核 兵器保有の唯一の目的が自国またはその同盟国に対する核兵器の使用を抑止すること」で あることを宣言し、(ロ)2025
年までにすべての核保有国が核兵器の「ノー・ファースト・ユース」を約束することを提案している。
国際世論を先導しようとする意欲が込められた提案だが、すでに指摘したとおり、核兵 器保有の目的を核攻撃を抑止することに限定しようとする発想は北朝鮮との関係で、当面、
妥当とは思われない。また、ICNNDの報告が、「核兵器保有の唯一の目的」に関する提案と
「ノー・ファースト・ユース」についての提案は「基本的に同じ考えを異なった組み立て方 で表現したもの(“a different formulation of essentially the same ideas”)」と説明しつつ、すべての核 保有国が核兵器保有の唯一の目的を核攻撃の抑止と宣言したうえで次に約束すべき「ノ ー・ファースト・ユース」の内容を、敵対的な核保有国に対して核兵器を「予防的に(pre-
ventively)
」、または「先制的に(pre-emptively)」使用しないことと定義していることは、ICNNDの主張をわかりにくくしている。繰り返しになるが、核兵器の「ファースト・ユー
ス」は通常戦力や生物・化学兵器による攻撃に対応するもので、その可能性を排除するこ とを目指す「ノー・ファースト・ユース」は、核保有国同士が予防的、あるいは先制的に 核兵器を使用する可能性を排除することだけを求めるものではなかったはずだからである。この報告によれば、冷戦時代のソ連についての経験(偽って「ノー・ファースト・ユース」
を主張していたこと)から、この言葉が疑念をもって受け止められがちなので、まずは、別 の立論で同じ目的を達成しようとしたということのようだが、そうだとすれば、本来の意 味を変えてまで「ノー・ファースト・ユース」という言葉にこだわることをせずに、第
2段
階では文字どおり、核保有国間での核兵器の予防的、あるいは先制的使用を禁止すること を提案したほうが、「ノー・ファースト・ユース」についての従来の議論との一貫性が保て たと思われる。さらに、採るべき措置の順序を逆にして、核兵器の「予防的使用」や「先制的使用」を 禁止することから始めて、将来、条件が整ったところで核兵器保有の目的を核攻撃を抑止 することに限定するように提案したほうが、少なくとも言葉のうえでは、岡田前外相の提 案を生かすことにもなったのではないかと、個人的には思う。先に触れた岡田前外相の主 張も、日本語の表現ではまさに核兵器の「先制使用」に対する反対であり、これを文字ど おりに英訳すれば、“pre-emptive use”に対する反対ということだからである。
なお、ICNNDの報告は、将来、すべての核保有国が「ノー・ファースト・ユース」を約 束した場合の核保有の目的について、「自国または同盟国に対する核攻撃が加えられた後に
(“following”)、それに対する報復のために使用するか、そうすると威嚇する」ためとしてい るが、この考えに従うと、日本との関係における米国の核保有の目的は、「日本が核攻撃を 受けた後で、攻撃を加えた国に報復するため」ということになり、日本として到底受け入 れられるものではない。
3
日米協議と日本の課題岡田前外相は、NPR報告を歓迎する談話のなかで、米国が「我が国を含む同盟国等に対 する核兵器によるものを含む抑止力のコミットメントを再確認し、これを保証するため同 盟国と緊密な協議を実施していくことを明らかにした」と指摘している。すでに述べたと おり、米国の抑止戦略について日本政府が関与を避けてきたことが、米国の拡大抑止の信 頼性について説得力をもって国内で説明できなかった一因と考えられるし、また、米国の 抑止戦略自体が変化しつつあるなかで日本の見方や判断を米国の抑止戦略に反映させるよ う努力することも大事なので、抑止戦略についての日米協議に肯定的と受け止められる岡 田前外相の談話は拡大抑止の信頼性向上に向けた一歩と考えられる。
米国の拡大抑止に関する日米協議の当面の課題が、北朝鮮への対応であることは言うま でもない。北朝鮮はすでに2回核実験を強行したうえに、2008年以来
6
ヵ国協議をボイコッ トしている。また、本年3月に韓国の哨戒艦が爆発、沈没した事件も北朝鮮の魚雷攻撃によ
るものとみられており、米国政府も韓国政府も危機感をつのらせている。米国内の政策論議でも危機感が高まっており、外交問題評議会が本年6月に発表した朝鮮 半島についてのタスクフォースの報告『米国の朝鮮半島政策(U.S. Policy Toward the Korean
Peninsula)
』(17)も、オバマ政権のそのときまでの北朝鮮政策に対する焦燥感を隠さず、北朝鮮が6ヵ国協議に復帰しないままに核兵器とミサイルの開発を続けている情況に対して米国が
「戦略的忍耐(strategic patience)」を続けていると、北朝鮮の核兵器保有の「既成事実化」を 許してしまうと警告している。
このような情況の下で日本がなすべきことは、日米共通の抑止目標を達成するための戦 略の策定と実行に積極的に関与することであり、米国の拡大抑止の信頼性との関連で次の4 点の重要性を強調したい。
第1に、日米共通の抑止目的を達成するために、自衛隊と米軍の間の共同作戦計画を含む 防衛協力を拡充、強化すること。このことは、米国の抑止戦略における核兵器の役割が減 少し、通常兵器やミサイル防衛が果たす役割が大きくなっていくことと密接に関連してお り、オバマ政権の
NPR
報告も、核兵器の削減を進めるために必要な措置のひとつとして、同盟国の非核戦力の改善を挙げている。この目的を達成するためには、自衛隊の防衛態勢 やそのための予算配分の見直しから、ミサイル防衛を含む日米防衛協力における自衛隊の 対米支援活動の範囲を制限している集団的自衛権に関する憲法解釈を改めることまでの多 くの課題に取り組むことが必要であり、今年中に決定されることが予定されている第4次防 衛計画の大綱が、これらの課題について積極的な方針を打ち出すことが強く望まれる。
なお、本年2月に発表されたオバマ政権のミサイル防衛についての報告(18)は、ミサイル
防衛の分野における日米協力を世界的に優れた地域協力の例として特記している。それだ けに、将来、米国領土に届く弾道ミサイルを迎撃できるミサイル防衛システムを自衛隊が 保有するようになったときに、集団的自衛権の行使を禁ずる憲法解釈によって、米国領土 に向けた弾道ミサイルを迎撃対象からはずすようなことにでもなれば、米国の猛反発は必 至であり、このような事態を招かないように、解釈の早期変更が強く望まれる。
第2に、在日米軍基地の役割を再認識する必要があること。在日米軍基地については、基 地が集中している沖縄をはじめとして、米軍の活動が周辺住民に与える負担を軽減するこ とが日米共通の関心事項になってきた。この問題への配慮は今後とも重要だが、米国の拡 大抑止の信頼性を維持するうえで米軍の存在が果たす役割を認識することも、あらためて 重要になってきた。在日米軍に対する攻撃は米国に対する攻撃を意味するので、日本を攻 撃しようとする国は自動的に米国の反撃を受けることを覚悟しなければならず、その意味 で、在日米軍の存在は米国の拡大抑止の信頼性を保証する役割も担っているからである。
いわゆる「有事駐留」が米国の拡大抑止の信頼性を弱めることは言うまでもない。
第3に、米国の拡大抑止への信頼性向上を目的とする、日米韓
3
国間の戦略協議を強化す ること。当面は日米、米韓、日韓という3つの二国間協議を有機的に活用することから始め ることが現実的だが、なかでも、米国の拡大抑止の受益者の立場から利害を共有する日韓 両国間の協議、協力を強化することが必要である。そして第4に、より基本的なこととして、日米間の政治協力を強化すること。協力の対象 は多岐にわたり、かつ、その時々の国際情勢によって変化するが、日米間の相互信頼関係 が米国の拡大抑止の信頼性の基礎であることには常に変わりがない。オバマ政権の
NPR報
告も、地域的抑止力の不可欠な要素として、米国と同盟国との間の「強靭で信頼しあう政 治関係(strong, trusting political relationships)」を挙げている。4
中国とロシアオバマ政権の
NPR報告で注目すべきもうひとつの点は、米ロ間、米中間の「戦略的安定
(strategic stability)」の強化を今後の重要な課題としていることである。もっとも、そのため に行なう「戦略対話(strategic dialogue)」について、ロシアに対しては、「米国のミサイル防 衛や将来配備する通常弾頭を搭載した長距離弾道ミサイル・システムが地域的な脅威に対 応するものであって、米ロ間の戦略的なバランスに影響を与えるものではないことを説明 すること(およびロシア側の戦略についての説明を聞き、また、西側の懸念する問題について議 論すること)」と具体的に書いているのに対して、中国との間では、「お互いの戦略や政策、
核兵器その他の戦略能力に関する計画について意思疎通をはかる場を作り、信頼感を高め、
透明性を改善し、不信感を減らすこと」としており、中国との戦略対話自体がいまだ模索 段階にあることが読み取れる。
(1) 中 国
日本にとってより重要な意味をもつのは米中間の戦略対話であり、とくに経済的に相互 依存関係にあり、国際政治における重要性も増している中国との間の「戦略的安定」をど
のように考えるかは、日米間の緊密な協議を通じて、同盟国としての認識の一致を常に確 保していくべき課題である。もちろん、日本が独自の立場から中国との戦略的安定を追求 していくべきことは言うまでもない。
中国との戦略対話の課題は多々あるが、例えば、中国の核戦力を含む軍事力の増強やそ の不透明性はすでにアジア・太平洋地域の大きな不安定要因となりつつあり、とくに、近 年、中国が海洋、宇宙、サイバー空間における軍事能力を強化していることや、増大しつ つある軍事力を背景に周辺海域で排他的な権益を主張し始めたことが地域的な国際秩序や 戦略的安定を揺るがす恐れも高まりつつある。また、中国が北朝鮮の核兵器開発計画の廃 棄に向かってこれまで以上に積極的な役割を果たすことを求めることも地域の安定のため に重要であり、さらに、ミサイル防衛における日米協力に対して警戒的な中国の主張にど のように対応するかも日米共通の関心事項である。
(2) ロシアとヨーロッパ
米ロ間の戦略対話についても、米国がとりあげようとしているミサイル防衛と通常弾頭 搭載の長距離弾道ミサイルは、いずれも日本の安全保障に直接、間接にかかわる問題であ り、またロシアの戦術核重視の姿勢についても、日本としては無関心ではいられない。
さらに、米ロ間の戦略対話においてアジアの問題が軽視される可能性があることも注意 を要する。冷戦時代のソ連のような軍事的脅威がなくなったヨーロッパの戦略環境は、中 国の軍事力増強や核兵器の拡散を特徴とする冷戦後のアジアの戦略環境とは大きく異なっ ており、ヨーロッパとアジア・太平洋地域の安全保障が不可分と認識されていた冷戦時代 とは異なり、今日では、ヨーロッパとアジア・太平洋地域において、各々の戦略環境に合 った形の戦略的安定をはかっていくことが必要とされている。また、その関連でヨーロッ パ諸国のアジアへの関心が経済面に限られがちなことも懸念材料である。
それゆえに、ヨーロッパとアジア・太平洋地域の双方の安定に大きくかかわっている米 国の戦略が
NATOの視点からの議論に引きずられすぎないようにすることが重要で、そのた
めには日本が、米国に対してのみならずヨーロッパ諸国に対しても、アジア・太平洋地域 の戦略的安定についての自らの考えを伝えていくことが必要と思う。(3) 米ロ中の核戦力バランス
より長期的な課題としては、米国とロシア、中国との間の核戦力バランスの問題がある。
当面は、両国合わせて世界の核兵器の9割以上を保有すると言われる米ロの核軍縮が先決で、
これが相当進むまでは中国が核軍縮に取り組むことは期待できない。また、中国が核軍縮 に取り組まなければインドは、中国を意識した核抑止力の削減に取り組まないだろうし、
インドが動かなければ、インドを主たる敵国とみなしているパキスタンもその核戦力の削 減に取り組むことはないだろう。
また、核兵器の数の単純な比較が核保有国間の戦略的なバランスを表わすものではない ことも明らかだし、とくに、米国が先進的な通常兵器によって核兵器の役割を代替させる 方向に進むことを考えると、より広い視点から核保有国間の戦略的なバランスをみる必要 があることは言うまでもない。しかし、米国の拡大抑止に依存している日本のような国に
おけるマスコミや世論は、米国とロシア、中国との核戦力バランスによって米国の拡大抑 止の信頼性を判断しがちだし、また、通常兵器の分野における米国の優越が長く続くこと を当然視できないという見方が米国内にあることもすでに指摘したとおりであり、数字の 上での核戦力バランスの政治的影響は軽視できない。
したがって、日本の立場からみれば、対中戦略対話において米国が、米ロ両国が核戦力 を削減する間に中国が核戦力を増強しないよう求めていくことが望ましいし、少なくとも 米国政府に対して、核戦力削減の過程で生ずる米国とロシア、中国との間の核戦力バラン スの変化が拡大抑止の信頼性に与える影響を十分考慮するよう求めていくことが大事であ る。米国がロシアと中国との関係で安定的と考える核戦力バランスのレベルが、米国の拡 大抑止に依存する日本や韓国の立場からみて安心感がもてるレベルと一致するとは限らな いだけに、なおさらである。
おわりに
先に引用したマイケル・クウィンランの著書は広島と長崎の被爆者に捧げられている。
このことはとくに驚くべきことではなく、核保有国で核戦略にたずさわる人たちは、ほぼ 例外なく、広島、長崎の惨禍を繰り返すまいと願っていると言っても過言ではないと思わ れる。核なき世界の実現が国際政治の課題になってきたゆえんである。
しかし、核なき世界に至る道程が長く、かつ、その道筋自体がみえないことも現実であ る。それだけに、核兵器の惨禍を伝え、核廃絶を追求していくことは、日本にとって今後 とも使命感を伴う課題であるが、同時に、軍事的多極化と核兵器の拡散による戦略環境の 悪化を前にして、米国の拡大抑止の信頼性の維持、向上のために積極的に取り組んでいく ことが、日本にとって、かつてないほどに重要な課題となっている。
国内ではかねて、国際的な核軍縮・不拡散と国の安全保障を別々の課題として、相互の 脈略なく議論する傾向があった。しかし、この2つは、本来、相互の関連性を考慮して、相 互補完的に追求すべき課題である。そのことを考えるうえで本稿が何らかの参考になれば 幸いである。
(1) The Congressional Commission on the Strategic Posture of the United States. 委員は12名、委員長はウィ リアム・ペリー元国防長官(民主党)、副委員長はジェームス・シュレジンジャー元国防長官(共 和党)。報告書『米国の戦略態勢(America’s Strategic Posture)』の出版は、United States Institute of Peace(www.usip.org)。
(2) “The Military Doctrine of the Russian Federation,” the Official Website of the President of the Russian Federation(www.Kremlin.ru/).
(3) “Documentation,” Survival, International Institute of Strategic Studies(IISS), January/February 1987.
(4) 平成22年版『防衛白書』。
(5) 同上。
(6) 同上。2007年日米安全保障協議委員会の出席者は、日本側は麻生太郎外務大臣と久間章生防衛 大臣、米国側はコンドリーザ・ライス国務長官とロバート・ゲイツ国防長官。
(7) 中国の最初の核実験(1964年)の前後に、米軍部のなかに自衛隊の核武装を検討する動きがあ
ったことは、太田昌克『盟約の闇―「核の傘」と日米同盟』(日本評論社、2004年)に詳述され ている。
(8)「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」。
(9) George P. Schultz, William J. Perry, Henry A. Kissinger, Sam Nunnの4名によるWall Street Journal紙へ の寄稿(2007年1月4日付“A World Free of Nuclear Weapons”、2008年1月15日付“Toward a Nuclear- Free World”)。
(10) 岡田前外相のクリントン国務長官宛書簡(2009年12月24日付)の和文は外務省のウェブサイト に公表されている。ゲイツ長官宛の書簡も内容は同じと言われる(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/
kaiken/gaisho/pdfs/g-1001-01pdf)。
(11) 日豪外相共同ステートメント「核兵器のない世界に向けて」、2010年2月21日、西オーストラリ ア州パースで発表。
(12) オーストラリアのケヴィン・ラッド首相(当時)と福田康夫首相(当時)の合意に基づき設立。
15ヵ国から15名の委員により構成。
(13) Michael Quinlan, Thinking About Nuclear Weapons: Principles, Problems, Prospects, Oxford: Oxford University Press, 2009.
(14) “Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China,” 2010, Office of the Secretary of Defense, U.S.
(15) Council on Foreign Relations, Independent Task Force Report, No. 62, 2009.
(16) International Commission on Nuclear Non-Proliferation and Disarmament, Eliminating Nuclear Threats
(www.icnnd.org).
(17) Council on Foreign Relations, Independent Task Force Report, No. 64, 2010.
(18) Ballistic Missile Defense Review Report, 2010, Office of the Secretary of Defense, U.S.
■参考文献(筆者による拡大抑止についての論文等)
“Reinforcing American Extended Deterrence for Japan,” AJISS-Commentary, The Japan Institute of International Affairs(JIIA), No. 57, 3 February 2009.
“Are the Requirements for Extended Deterrence Changing?” Carnegie International Nonproliferation Conference, 6 April 2009(http://www.carnegieendowment.org/files/npc_extended_deterrence4.pdf).
「核軍縮時代の日本の安全保障」『外交フォーラム』2009年8月号。
“On Rethinking Extended Deterrence,” Shared Responsibilities for Nuclear Disarmament: A Global Debate, American Academy of Arts & Sciences, April 2010(www.amacad.org).
“Japan-U.S. Alliance Cooperation In the Era of Global Nuclear Disarmament,” The Japan-US Partnership Toward a World Free of Nuclear Weapons, April 2010, Woodrow Wilson International Center for Scholars(www.
wilsoncenter.org/asia).
“Agenda for Japan-US Strategic Dialogue,” Nuclear Weapons and International Order, April 2010, The National
Institute for Defence Studies(「日米戦略協議の課題」、平成21年度安全保障国際シンポジウム、「核兵
器と国際秩序」、2010年4月、防衛省防衛研究所、www.nids.go.jp)。
「米国の拡大抑止と日本の課題」『修親』2010年7月号、修親刊行事務局。
さとう・ゆきお 前日本国際問題研究所理事長