公共圏とインターネット
〜インターネットにおける「議論する公衆」の可能性
A9719028 小西靑
目次
はじめに
第1章 公共圏概念の歴史 第1節 公共圏概念の位置付け 第2節 公共圏概念の歴史的展開
第3節 公共圏の再建・公共圏に対する批判 第2章 インターネットの歴史と展開
第1節 インターネット・その歴史とメディア的特性 第2節 公共圏の制度的基準とインターネットの比較 第3節 まとめ
第3章 インターネットの現状 第1節 日本人の情報行動の変容 第2節 行政の取り組み
第3節 政治での取り組み 第4節 個人の取り組み 第4章「議論する公衆」のために
第1節 社会制度における課題―平等性と公開性の確保 第2節 市民における課題―自律性の確保
第3節 まとめ
おわりに
参考文献・参考URL
はじめに
近年、インターネットは新しいメディアツールとして社会の中に浸透し つつある。
郵政省による「生活における情報通信メディアの重要度」(1999年)で はテレビを抜いて10段階評価の8.4ポイントを記録している1。自宅のパ ソコンのネットワーク接続率は1999 年11 月で59.3%となっている。15 歳から69歳までの利用者数は2706万人と推計されている2。
また、インターネットショッピングの拡大、CMや広告でURLが取り 入れられるようになった等、商業での利用が広がっている。
2001 年度からは小・中学校で情報教育が必修となり、就職活動におい てもインターネットがまず使えないと資料請求ができないなど、教育の現 場でもインターネットの利用が無視できなくなっている。
各地方自治体や政治団体もホームページを作成して、市民への広報活動 に利用している。今後、ネット上でも公的書類の決裁が行われるようなシ ステム作りと法整備も行われている。
さらに、東芝ビデオ事件(1999 年)など、消費者による告発HPで可 視化したような、「個人から多数の情報発信」の可能性も広がっている。
以上に見られるようにインターネットは、利用者数の増加に伴い、政 治・行政・娯楽・学業・商業・コミュニティの各方面で取り入れられつつ ある。
これらは、インターネットが与えつつある社会的インパクトであり、浸透 しつつある証拠の一端であろう。
1 郵政省『郵政白書』平成12年度版第1章序説 「2.新しい情報サービス への期待」
http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/h12/html/C1020000.ht m l アクセス日:2000年11月7日
2 同上 「4.インターネットの普及」
http://www.mpt.go.jp/policyreports/lapanese/papers/h12/html/C1040000.ht ml アクセス日:2000年11月7日
さて、ここで、ハーバーマスの言う「議論する公衆」の集まる「公共圏」
概念が、現在、どのようにすれば再構築されるかを考えたい。
「なぜ自分の知る必要のある情報を手に入れられる環境にあるのに、そ れを利用しないのだろう?」 私が面接のときに答えた、新聞学科受験の 理由を要約すればこういうことだった。これは今にして思えば、「なぜす べての人が、自ら『議論する公衆』たりえようとはしないのだろう?」と いうことだったろう。それは民主主義の国に生き、そのシステムを肯定し、
ベターな形で継続させようと試みるうえで、本来的に必要な行為である。
ただそれは、とても頭を使い、とても疲れ、そしてとても「めんどくさい」
ことだ。
しかし今、インターネットという、個人が簡単に多数への発信者となり うるメディアツールが登場し、ドッグイヤーと言われる速さで、確実に社 会に浸透している。その、「めんどくささ」を少しは減らし、「議論する公 衆」としての意識の喚起の可能性があるツールとして、インターネットは 使えるのではないだろうか。
それが、本研究を試みようと思った理由である。
インターネットという新たなメディアツールにおいて、公共圏、そして
「議論する公衆」はどのような可能性を持つのかということを、この論文 では論じたい。
1章では、ハーバーマスによる公共圏概念の概説を行う。
2 章では、公共圏概念をもとにインターネットのメディア特性と公共圏 の制度的基準の比較を行う。
3 章では、実際の、インターネットでの「議論する公衆」の例を挙げ、
分析する。
そして4章では、2章と3章をふまえて、「議論する公衆」のためにどの ようにインターネットは使われていくか、ということについて考察を進め たい。
参考文献・参考 URL
<書籍>
ユルゲン・ハーバーマス(Habermas,Jülgen)著 細谷貞夫・山田正行訳
『公共性の構造転換〜市民社会の一カテゴリーについての探求〜』(原 題:Strukturwandel der Öffentlichkeit)未來社発行、1994年第2版
(第1版は1973年発行)
阿部潔『公共圏とコミュニケーション』(ミネルヴァ書房、1998年)
井上宏『現代メディアとコミュニケーション』(世界思想社、1998年)
池田謙一『社会学と理論のモデル5 コミュニケーション』(東京大学出 版会、2000年)
岡部一明『インターネット市民革命―情報化社会・アメリカ編』(お茶の 水書房、1996年)
川浦康至・黒岩雅彦・大谷祐子『電子コミュニティの生活学』(中央経済 社、 1998年)
河上倫逸・M.フーブリヒト編『ハーバーマス・シンポジウム 法制化と コミュニケイション的行為』(未來社、1987年)
栗原幸夫・小倉利丸編『市民運動のためのインターネット―民衆的ネット ワークの理論と活用法』(社会評論社、1996年)
児島和人編『個人と社会のインターフェイス』(新曜社、1999年)
児島和人・橋本元明『変わるメディアと社会生活』(ミネルヴァ書房、1996 年)
佐藤俊樹『ノイマンの夢・近代の欲望』(講談社、1996年)
菅谷実・清原慶子 編『通信・放送の融合〜その理念と制度変容』(日本 評論社、1997年)
竹内郁郎・児島和人・橋元良明『メディア・コミュニケーション論』(北 樹出版、1998年)
豊泉周治『ハーバーマスの社会理論』(世界思想社、2000年)
夏井高人『ネットワーク社会の文化と法』(日本評論社、1997年)
成田康昭 『メディア空間文化論』(有信堂、1997年)
野村一夫 『インターネット市民スタイル』(論創社、1997年)
花田達郎『公共圏という名の社会空間』(木鐸社、1995年)
花田達郎『メディアと公共圏のポリティクス』(東京大学出版会、1999年)
前屋毅「全証言東芝クレーマー事件」(小学館文庫、2000年)
村井純『インターネット』(岩波書店、1995年)
林紘一郎・田川義博『ユニバーサル・サービス:マルチメディア時代の「公 正」理念』(日本評論社、1996年)
吉田純『インターネット空間の社会学 情報ネットワーク社会と公共圏』
(世界思想社、2000年)
渡辺武達『メディアと情報は誰のものか 民衆のコミュニケーション圏か らの発想』(潮出版社、2000年)
<雑誌>
『情報通信学会年報』8(情報通信学会、1996 年)
國井昭男「ビジネス分野におけるマルチメディアサービスの導入 モデル分析」
井上善友「コンピュータ・ネットワークを介した政治コミュニケーショ ン」
『情報通信学会年報』9(同上、1997 年)
島崎誠彦「『マルチプルなメディア』情報環境の普及と、そこにおける
『表現の自由と通信の秘密』の保障ならびに部分的規制の実行水準の普 遍性・整合性についての一考察」
『情報通信学会年報』10(同上、1998 年)
阿部勘一「サイバースペースの陥穽と民主主義の言論」
『情報通信学会誌』Vol.14 No.2(同上、1996 年)
特集:第 13 回情報通信学会大会「『メディアと社会』を考える」「パソ コン普及の意味―スタンドアロンからネットワーキングへ」
辻正次・森徹・手島正章「地域情報化施策の実証分析」
『情報通信学会誌』Vol.15 No.1(同上、1997 年)
特集:情報通信インフラの現在 〜2010 年のシステム構築のために〜
情報通信法制・政策研究会「インターネットのコンテンツ問題について 考える」
『情報通信学会誌』Vol.16 No.1(同上、1998 年)
藤田高弘「インターネットの『倫理』とオンラインコミュニケーション」
中井豊「インターネットにおけるホームページの成長減少とそのメカニ ズムについて」
『情報通信学会誌』Vol.17 No.1(同上、1999 年)
坂本昂「教育改革に貢献する情報通信技術」
鈴木敏恵「それは、新しい絆 〜ネットワークが、未来教育を開く!〜」
小田浩一「視覚障害メーリングリスト」
『情報通信学会誌』Vol.17 No.2(同上、1999 年)
特集:第 16 回情報通信学会大会「情報メディアのマナーと規範」
『情報通信学会誌』Vol.17 No.3(同上、2000 年)
第 15 回コミュニケーション・フォーラム セッション 2「メディアの融 合とパブリック・リレーション」セッション 3「メディアの融合に伴い、
教育環境はどう変わるか」
小笠原盛浩「電子コミュニティ内の知識流通におけるメンバー間の役 割」
『情報メディア白書』1998・1999・2000(電通総研)
『通信白書』平成 10 年度版・11 年度版・12 年度版(郵政省)
『テレコム社会科学学生賞入賞論文集』(財団法人電気通信普及財団、1998 年)
内田啓太郎「インターネットの社会学―インターネットによる市民的 公共圏再建についての一試論―」
『放送研究と調査』(日本放送出版教会)
「21 世紀の放送・メディア放送の課題」(6 月号)」
上村修一・居駒千穂・中野佐知子「日本人とテレビ・2000」(8 月号)
中野佐知子「インターネットユーザーはどうテレビを見るのか」(11 月 号)
<参考サイト>
ICANN http://icann.nic.ad.jp/
JCA‑net http://www.jca.apc.org/
megabbs.com http://www.megabbs.com/
So What? http://www.infonia.ne.jp/ hakase/
2ちゃんねる http://www.2ch.net/
2ちゃんねる研究 http://yokohama.cool.ne.jp/sepadenial/
5ちゃんねる http://5ch.tanuq.net/
15 ちゃんねる BBS http://www22.big.or.jp/ 15ch/
920 ちゃんねる http://www.920.ch/
悪徳商法?マニアックス
http://www6.big.or.jp/ beyond/akutoku/
あめぞう http://www.amezo.com/
世論の広場 http://www.so‑net.ne.jp/seron/
政治討論ホームページ http://www.njd.com/seiji/
トーシバの暴言騒動を読む http://thunder.prohosting.com/ b‑
files/Toshiba/tshiba̲index.html
開け電脳政治の時代 http://www.yk.rim.or.jp/ sousou/politic 弁護士紀藤正樹の LINC http://homepage1.nifty.com/kito/
郵政省 http://www.mpt.go.jp/
山口大学経済学部経済法学科 憲法学/情報法学研究室 http://tachiyama.econo.yamaguchi‑u.ac.jp/
Yasushi's Web Page http://www.kinoshita.com/indexj.shtml