数学 数学
学 校 法 人 河合塾 学 校 法 人 河合塾 数学科講師
数学科講師 長谷川 進 長谷川 進
大学入学共通テスト および 国公立大二次・私大
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令和5年度 2023
大学入試
分析と対策
本試験の数学Ⅰ・A,数学Ⅱ・Bの分析と学習対策を 述べる。
(1) 大問構成
今年度の大問構成は以下のようになった。ただし,括 弧内は配点であり,★は選択問題(2問選択)である。
また,形式は次のように分類した。
センター…センター試験型の問題 会話…太郎さんと花子さんの会話
考察…太郎さんや花子さんが考察する(会話なし)
活用…実生活に関連づけた問題
丸投げ…解答を追体験させたり,解答の方針をほと んど受験生に委ねたりする問題
設問別平均点は河合塾が多数の受験生に協力していた だいて実施した「答案再現分析」によるものであり,全 体の平均点は大学入試センター発表による。
数学Ⅰ・A
数学Ⅱ・B
センター試験から共通テストに変わり,選択肢を選ぶ 問題が多数出題されるようになった。2021年度から 2023年度の選択肢形式の問題数と配点の遷移は,数学
Ⅰ・Aが20題44点→10題25点→18題47点,数学Ⅱ・
B(選択者が極端に少ない第3問は除く)が14題27点
→25題53点→28題60点となっている。2024年度以降 も 共通テストらしさ を打ち出すために,選択肢形式 の問題は40〜50点程度は出題されるであろう。選択肢 形式の問題は大量の選択肢の内容を素早く理解する必要 がある。これは数学の学力とは別の能力であるから,数 学の学力をある程度身につけた後にこのタイプの問題の 演習を十分する必要がある。
(2) 難易度
昨年度の平均点が,Ⅰ・Aは37.96点,Ⅱ・Bは43.06 点と異常に難しかったことを反省したのか,今年度は大 幅に易化した。昨年度まで存在した「丸投げ」がなくな るなど設問が適切になったことが大きな原因であるのは 言うまでもないが,「太郎と花子の会話」に代表される 無駄な情報が大幅に減り,受験生が問題を解くのに集中 できたのも理由だと思う。
来年度もこのような出題形式,難易度になることを望 む。
(3) 「数学Ⅰ・A」の設問別分析
河合塾の「答案再現分析」では,受験生の学力を偏差 値により次の7段階(層)に分け答案を分析している。
S A B C
( 〜65.0)(64.9〜60.0)(59.9〜55.0)(54.9〜50.0)
D E F
(49.9〜45.0)(44.9〜40.0)(39.9〜 )
以下では設問ごとに内容の分析・評価とともに,学力 層による正解率の特徴をまとめていく。
第1問
〔1〕 絶対値を含む不等式の良問。出来も良い。①と② から③を導かせる部分は,簡単な式変形なのに図形 的な意味があり,感服した。
〔2〕 三角比の良問。鈍角の を求める シ でD層 の正解率が50%を切り,図から を読み取る ス でC層の正解率が50%を切る。PH,QH,RHの大 小を選ばせると見せかけて「3つとも同じ」を選ば
大学入学共通テスト
1
大問 単元(配点) 形 式 選択肢
(配点)問 題 平均点 1 〔1〕数と式(10) センター 7.6
〔2〕図形と計量(20) センター 4題(10) 11.1 2 〔1〕データの分析(15)センター 6題(15) 12.7
〔2〕2次関数(15) 会話,活用 2題(6) 7.7 3 ★場合の数・確率(20)センター 1題(3) 12.2 4 ★整数の性質(20) 会話 11.1 5 ★図形の性質(20) センター 5題(13) 8.8
全体 55.65
大問 単元(配点) 形 式 選択肢
(配点)問 題 平均点 1 〔1〕三角関数(18) センター 4題(8) 9.8
〔2〕指数・対数関数,
整数(12)
センター 3題(8) 10.3 2 〔1〕微分法(15) センター 4題(4) 10.6
〔2〕積分法(15) 会話,活用 3題(9) 11.0 3 ★確率分布と統計的な
推測(20)
活用 5題(8) 6.9 4 ★数列(20) 活用,考察 8題(18) 12.4 5 ★ベクトル(20) センター 6題(13) 11.6
全体 61.48
cos tan
せる ナ は予想外の答なのか,正解率はS層でも 82%,A層 が63%,B層 が49% で あ る。 最 後 の ニヌ ネノ ハ の正解率はS層でさえ 47%しかない。
第2問
〔1〕 データの分析。相変わらず問題文が6ページもあ るが,昨年度の「散布図の を数える」のような異 様な問題がなくなり,授業でも扱いたくなる良問に なった。表のデータから相関係数を求めるという カ のような問題こそ共通テストで聞くべきもの だと思う。出来もよい。高校生に統計を学ばせたい のならば,今年度のようなストレートな良問を出し 続けてほしい。
〔2〕 二次関数。バスケットボールのシュートへの応用。
出来が悪いのは式が複雑に見えるからだろう。例え ば サ は「ボールが描く放物線」をイメージす れば計算しなくても答えは明らかなはずだが,正解 率はA層でさえ70%を切る。 タ , チ も勘で 当たりそうだが,正解率はS層が64%,A層が33%,
B層になると18%しかない。「実生活への活用」を テーマとするこのような問題は類題がないので対策 に困る。せめて,本問のような「係数に文字が入っ ていて,汚い式」を練習すべきであろう。
第3問
確率の出題が続いてきた第3問だが,久しぶりの「場 合の数」である。しかもグラフ理論を題材として出題さ れるとは驚いた。選択問題の中では一番出来がよい。
アイ , ウエ はE層でも正解率が80%を超えている。
正解率が70%を切るのはB層が コ ,A層が サシス , S層が セソタチ である。
第4問
昨年度に続き1次不定方程式の整数解を求めるという テーマだが,昨年度が難しすぎた(平均点は6.4点)た めか今年度はかなり易しくなった。ただし,簡単なはず の最初の アイ の正解率がS層からB層までほぼ80%で ある。設問をよく読まずに最大公約数を答えてしまった 者が20%ほどいたのだろう。(1)の最後の ケコサシ の正解率はS層は78%であるがA層で47%,B層で26% しかない。何をしたらよいかわからなかったのだろう。
(2)に入り タチ までは出来がよいが ツテトナ の正 解率はB層が75%,C層で56%になってしまう。最後の
ニヌネノ の正解率はS層でも37.5%,A層で10%しか ない。
第5問
平面幾何。作図と証明の問題。良問だが出来は悪い。
ウ 〜 カ の連続して4つの選択肢を選ぶ部分は 問題の意図を読み取るのが大変であろうし,平面幾何な のに図を書くスペースが少ないので解きにくい。平面幾 何を選択する受験生は問題の余白に小さく図を書く練習 が必要であろう。 キ の正解率がS層で87%,A層で 61%,B層で39%。 の正解率がS層で 65%,A層で32%,B層で14%。設問の終盤で急激に難 しくなっているとわかる。最後の サ は5つの選択 肢から1つ選ぶのでランダムに答えても正解率が20% はあるはずなのにC層以下は正解率が10%を切る。諦 めてしまったのだろう。
(4) 「数学Ⅱ・B」の設問別分析 第1問
〔1〕 三角関数。 ア , イ はとても出来がよいの だが,どの学力層も イ のほうが少し出来が悪く なる。単位円がイメージできないのであろう。正解 率が70%を切るのはE層が オ ,D層が カ , キ ,C層が ク , ケ ,B層が コ ,A層,
S層は サ 〜 セ (A層は28.3%,S層は62.1% と 大 差 が つ く ) と 順 に 推 移 し て い く。 ク , ケ の直前には指導要領の範囲外の「和積公式」
が書かれているので,使い方も問題文に明記されて いるとはいえ,そこで脱落してしまった受験生もC 層以下には多かったのであろう。面白いことに コ 〜 セ のミスは最後の ソ 〜 チ には 影響しないので,S層の正解率は85%程と大きく上 昇している。他の学力層も若干上昇している。穴埋 めなので諦めずに解けるところは解くべきとわか る。これで4点だから大きい。
〔2〕 対数が有理数か無理数かを調べる良問。出来もよ い。F層でさえ平均点は6点ほどある。対数の定義 を問う ツ の正解率がD層でも92%あるのに驚 いた。もっと出来が悪いと想像していた。ただし,
これと同じことを聞いているはずの ニ の正解 率はすべての学力層で下がり,下がり幅がS層の6 ポイントから徐々に大きくなりF層では32ポイン
ク ケ コ
トも下がる。 の変形ができない者がこれぐ らいいるということだろう。
第2問
〔1〕 3次関数の増減についての問題。 ア 〜 ク はとても出来がよく,正解率はC層で約94%,D層 でも約85%である。しかし, ケ 〜 サ にな ると,C層は42%,D層は22%と大きく落ちる。S 層,A層がほとんど変わらないのと対照的である
(B層は20ポイントほど落ちる)。問題文の図を見 れば簡単に答えられるはずだが,学力の違いはこう いう部分に現れるのであろう。
〔2〕 ソメイヨシノの開花日を予測する積分法の応用。
予想外のテーマであるが,(1)に典型的な計算問 題があるので平均点は意外と高い。ここでの計算が 最後に生きてくる巧妙な作問である。(1)の計算 ができてもそれを(2)の ノ でどう使うのか を問題の「設定」から読み取れるかどうかで出来が 分かれ,ここの正解率はS層からF層まで順に 96%,86%,77%,67%,57%,40%,22%と落ち ていく。同様に,定積分の大小を問う ハ の出 来はよい(D層でも正解率69%)のにそれを用いて 答 え る ヒ の 正 解 率 はS層 か らD層 ま で 順 に 96%,75%,59%,44%,39%と落ちていく。こう いう思考力が共通テストでは要求されるのであろう が,何か勉強したからといってできるものではない 気がする。
第3問
二項分布を正規分布で近似し,ピーマンの袋詰めに応 用する問題。統計にこのような応用があることを示して くれる教育的な問題。高校の統計の内容を素直に用いて ここまで面白い問題ができることを示してくれた良問で ある。河合塾が集めたデータでは平均点は悪いが,これ は人数が極端に少なく,勉強していないのに選択した者 を含むからであろう。筆者が担当するクラスで本問を選 択した者は皆高得点をとっていた。
第4問
複利計算に関する問題。昨年度は異様な設定の難問
(平均点は8.32点)だったのに対し,教育的な良問に なった。数列が実生活に活かせることを示すならこうい う問題であるべきであろう。正解率は ア 〜 ウ はC層以上はでも90%を超え,D層もそれより少し悪い
ぐらいであるが, エ , オ で上位と中下位の差が 開く。すなわち,S層からF層まで順に99.7%,98.6%,
92.3%,71.9%(これがC層),42.1%(D層),15.6%,
3.3%となる。 カ 〜 ク の正解率はB層以上は90% を超え,C層は約70%,D層は約50%であるが,次の「等 比数列の和の公式」を聞いているだけの ケ で差が 開く。すなわち,S層からD層まで順に98%,88%,
72%,47%,28%となる。①と②の2択に見えるので,
50%を切るのは不思議な結果である。
第5問
空間ベクトル。良問だが昨年度より選択肢の数が大幅 に増え,それを読むのが大変である。昨年度は選択肢は 全部で10個(4題)だったのが今年度は38個(6題)
であった。出題者も配慮したのか,正解を オ は①,
ク と コ も⓪として選択肢をすべて読まなくて もよいようにしてくれている。選択肢が多数ある場合は 初めのほうからチェックするようにしよう。 キ まで は出来がよく,正解率がE層でも75%ほどある。しかし,
垂直条件を書き直すだけの ク で正解率に差が出る。
S層からE層まで順に96%,72%,41%,21%,11%,
6%である。 サ は出来が悪く正解率はS層でも60% であり,A層以下は20%を切る。しかし,次の シ は すべての学力層で32%〜35%である。明らかにおかし い⓪と④を除外して3択問題にしたからではないだろう か。
選択問題の比較
第3問〜第5問のうちでは今年度は珍しく数列が一番 やさしい。次が確率・統計,一番難しいのはベクトルで あろう。しかし,例年の数列,ベクトルを見ると確率・
統計を安全策として勉強しておくことを勧める。教科書 を読めば休日二日間程度で独学が可能であるし,教師の 指導があれば数列,ベクトルよりはるかにやさしいはず だ。
(1) 今年度の特徴
コロナ流行による高校での対面授業の減少,共通テス トによる 長文読解型の問題 などの実施の影響のため か,昨年度に引き続き入試傾向が変化している大学が目 2qp=3
国公立二次試験,私大入試
2
立つ。各大学の入試対策には,先入観を捨てて最近5年 程度の問題を確認して新たな傾向に対応することが重要 である。
(2) 各地区の主要大学の傾向,特徴 北海道地区
北海道大・前期日程と後期日程理系の入試傾向は昨年 度大きく変わったが,今年度はほぼ一昨年度までの傾向 に戻った。昨年度の出題が異例であり,来年度は一昨年 度までのレベル・傾向になるのではないだろうか。
文系は昨年度に40年以上出題され続けていた微積分 がなくなったが,今年度復活した。昨年度やや易化した が今年度は一昨年度までのレベルに戻った。
理系は昨年度に分量も増え,難化したが,今年度は分 量,難易度とも一昨年度までのレベルに戻った。ただし,
今年度は数Ⅲの積分がなかったものの,これは来年度は 出題されると思われる。
北海道大・後期日程理系は昨年度は積分がなくなった が今年度は復活した。
札幌医科大 は外角の二等分線を扱う問題であった が,内角の二等分線の性質は知っていても,こちらの性 質は知らない受験生が多い。証明から理解すればこの2 つは本質的に同じものだとわかるはずだ。また,昨年度 の積分は従来より易化し区分求積法の典型問題であった が,今年度も部分積分の典型問題であった。しかし,一 昨年度までのレベルを念頭に置いて準備すべきであろう。
旭川医科大では昨年度の積分は計算量が多くても単純 なものであったが,今年度は極方程式で表された曲線に 関する面積計算であり,従来のハードなものに戻った。
東北地区
東北大・前期日程は文理とも易化した。文系 , は 合格者平均が40点を超えると予想されるし(50点満点),
理系 , は満点が多数出たと思われる。ただし,文系 と理系 は出来が悪い。ともに線分の通過領域である が(扱う式は異なる),文系はこのテーマは苦手な者が 多いし,理系は領域が図示できてもその後の面積計算が 重すぎる。積分区間が工夫しても3個,素直にやれば6 個に分かれるのである。
福島県立医科大は の回転体の体積の計算に現れる面 倒な計算を事前に (1)で求めさせている。
関東地区
東京大は文系がやや易化し,理系がやや難化した。理 系第1問は積分の良問。(1)は と置換するだけ だが,それに気づかなくても(2)は解ける。理系第5 問と第6問完答は大変だろうが,どちらも(1)はやり やすい。部分点を取れるところは取るのが,東京大では 重要である。また,理系第6問は東京大が好む通過領域。
しかも実際に図形(今年度は線分と折れ線)を動かして みるのが重要(昨年度なら第3問と第5問)なのも東京 大の傾向である。
文系がやや易化したのは,文系はこれぐらいの難易度 のほうが入試として適切と判断したのだろう。文系の問 題を何年か後に発展させて理系の問題とする場合がある ので,理系生は文系の過去問も見るべきである。
一橋大はやや易化し,どの問題も文理問わず上位生に 解かせたい良問になった。昨年度までのレベルでは難し すぎたと判断したのかもしれない。 の背景には「連続 する3つの二項係数が等差数列」がある。 は2つの曲 線が共通接線をもつような の範囲を求める良問である。
東京工業大 は, はすぐわかるが, を示す 方針を立てるのに色々考える必要がある良問。 は計算 が大変だが定積分の式を正しく立式していれば最後の答 は間違っていても減点されない可能性がある。 も面倒 だが180分5題という形式なので時間はあるだろう。
東京工業大との統合が発表された東京医科歯科大はや や易化した。 は折れ線の個数を求める問題。共通テス ト数学Ⅰ・Aの第3問と同じくグラフ理論を背景にして いる。 は3種類の数列の連立漸化式を解く必要がある ので驚くが,冷静に考えるとうまく解けるようにできて いる。巧妙である。
早稲田大・理工 は「ポリアの壺」。2007年度名古屋 大に類題がある。
中部・北陸地区
名古屋大は理系が一昨年度易化したが昨年度難化し,
従来のレベルに戻った。今年度はさらに難化した。また,
昨年度までは文理共通で出せるものは共通にしていた が,今年度は共通問題がなくなった。文系は一昨年度難 化,昨年度やや易化を経て今年度はやや難化した。
理系は150分4題という独特な出題形式を生かすため に時間をかけて解かせるという意図がみられるし,文系 は90分3題なのだから理系と共通にせず文系にふさわ しい難易度・分量を模索しているのかもしれない。
理系 は複素数平面と二次方程式の融合問題。このよ t=x2
a
I12 I21
うな出し方があるのかと感服した。理系 は時間がかか る計算問題。1題に40分ぐらいかけてもよい名古屋大・
理系だからこそ出題できる問題である。理系 (3)は のグラフの動きを考えればあっさり答えが出て きそうだが,(1)と(2)の流れを踏まえて解答を作 るべきか迷う。理系 は,2009年度までの「 は変わっ た問題と普通の難問の選択」の「変わった問題」の雰囲 気がある。数列の母関数と呼ばれるテーマである。(1)
は とするだけなのだが,ここからできていなかっ たようだ。
浜松医科大 は昨年度に続き問題と答案例を与え考察 させる問題。今年度は「下線部を詳しく証明せよ」。採 点は大変だと想像されるが,よりよい入試づくりへの強 い意志を感じる。
愛知教育大 は媒介変数表示の曲線の変曲点を扱って いるが,わかりやすいように曲線の概形を与えていて計 算も手頃である。
関西地区
京都大は文理とも易化し, は小問集合であり特にや さしい。しかし,文系 問2の「有理化」の正解率は 10%程度のようだ。理系 以外の問題は上位レベルの受 験生が真面目に勉強したら類題を解いた経験があるので はないかと思われる。しかし,合格した生徒に聞くと,
理系 以外の出来は意外とよくない。理系 は回転体と は問題文にはないがそれに気づく必要がある。
教師の目から見るとやさしく思える問題も,誘導なし で解く生徒にとってはハードルが高いのだろう。京都大 対策としては,標準的な問題を誘導なしで解く練習が必 須であろう。
大阪大・前期日程は文理とも昨年度やや易化したが今 年度はやや難化し,一昨年度までのレベルに戻った。理 系は10年以上出題され続けてきた空間図形が昨年度出 題されなかったが,今年度は に復活した。軌跡として 二次曲線が現れる典型問題である。
神戸大・前期日程は文系は変化なしだが,理系は昨年 度までの数Ⅲ重視から今年度は数Ⅲは1題のみとなり,
やや易化した。数Ⅲの媒介変数表示の曲線は神戸大は何 故か「 」となっている場合が多いのだが,今年 度の もそうであった。
京都府立医科大 は立方八面体の問題である。
関西医科大 は 軸まわりの回転か 軸まわりの回転 か受験生に選択させて体積を求めさせるという珍しい聞 き方をしている。しかも,この2つで計算量がかなり異
y=f x] g
x=1
sin x= t
x y
なる(前者が楽)。
中国・四国地区
広島大・理系は2020年度までは数Ⅲが3題出題され ていたが,2021年度,2022年度と続けて1題のみになり,
数Ⅲの積分がなくなっていたが,今年度は数Ⅲは2題
(1題は積分)となり,レベルも2020年度までのもの に戻った。理系 (4)は定積分の意味を考えると面積 計算に帰着できるものであり,1993年度東京大・文類 に類題がある。広島大・医学部医学科に合格した生徒に 聞き取った結果では,二次試験の数学は7割程度の得点 が必要のようである。
この地方の国公立大の理系では広島大以外でも2021 年度,2022年度と数Ⅲの出題が減った大学が目立った が,島根大・医学部医学科,鳥取大・医学部医学科など は昨年度より数Ⅲの積分の問題が増えた。
香川大・医学部医学科 は楕円の縮閉線の長さを求め る問題である。
九州地区
九州大・前期日程は文理とも昨年度に引き続きやや難 化した。特に文系は,あまり差がつかなかったと思われ る。東京大のように完答できなくても部分点を稼げると ころは稼ぐという姿勢が重要であろう。
理系は難問揃いだがどれもよくできた良問である。特 に数列の収束発散を調べる はよくできているし,オー バーハングがある図形の面積を求める は上位生には是 非解かせたい。何と言っても昨年度に続き長文を読んで 考えさせる は,「これが解ける受験生を求む」という 強いメッセージを感じる。来年度もこの形式の出題があ りそうだ。文系 の確率は複素数との融合なので文系生 には敷居が高く,自分で漸化式を作るという方針を立て る必要があり,完答は厳しい。(1)だけ解けば十分で あろう。
宮崎大・教育 (1)は一次不定方程式の整数解を連 分数を用いて求める方法が背景にある。次の(2)は合 同式を有理数に拡張する方法が背景にある。受験生はど ちらもそんな背景があることを知らないで解けるのだ が,出題者の趣向がうかがえる。同じく [A]の
「 が周期関数でないことを示せ」は 上位生に解かせたい良問である。
sinx cos x
3 + ] gr
理系生は,積分は数Ⅲのものが中心となり数Ⅱのもの の練習が足らない傾向がある。それでは試験で困る大学 が目立つ。例えば部分積分は, を 回積分したも のを と表して
まで上位生には指導すべきと思う(部分積分を2回行っ た)。これで整式の積分はかなり簡単になることが多い。
論証の力をつけるには浜松医科大 ,九州大・前期日 程理系 がお勧めである。
共通テスト対策は,まずは記述式の標準的な問題が確 実に解ける力をつけた後,共通テスト形式の問題を解い て慣れる必要がある。
3 対策
f x] g n x
Fn] g
f x g x dx F x g x F x g x F x g x dx
a b
a b
a b
1 2 2
= - l + m
] ]g g < ] ]g g ] g ] gF ] g ] g
#
abf x g x dx F x g x F x g x#
F x g x dxa b
a b
1 2 2
= - l + m
] ]g g < ] ]g g ] g ] gF ] g ] g
# #
長谷川 進(はせがわ・すすむ)
授業は東大京大理系クラス,医進クラスを中心に 担当する。
共通テスト対策「共通テストマスタードリル」作 成チーフ。他に執筆は河合出版「Iシリーズ」,「J シリーズ」,「Kパック」,「共通テスト対策パック」
など。
著書:「マーク式基礎問題集数学Ⅰ・A 六訂版」(河 合出版),
「教科書だけでは足りない〜確率分布と統計 的な推測改訂版」(河合出版)
本 社 〒 543-0052 大阪市天王寺区大道 4 丁目3 番 25 号 電話(06)6779-1531 FAX(06)6779-5011 東京支社 〒 112-0013 東京都文京区音羽2丁目10番2号日本生命音羽ビル4階 電話(03)3814-2151 FAX(03)3814-2159 北海道支社 〒 060-0062 札幌市中央区南二条西9丁目1番2号サンケン札幌ビル1階 電話 (011)271-2022 FAX(011)271-2023 東海支社 〒 460-0002 名古屋市中区丸の内1丁目15番20号ie丸の内ビルディング1階 電話(052)231-0125 FAX(052)231-0055 広島支社 〒 732-0052 広島市東区光町1丁目7番11号広島CDビル5階 電話(082)261-7246 FAX(082)261-5400 九州支社 〒 810-0022 福岡市中央区薬院1丁目5番6号ハイヒルズビル5階 電話(092)725-6677 FAX(092)725-6680 URL https://www.shinko-keirin.co.jp/
令和 6 教 内容解説資料