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Kigyō no jigyō keizoku keikaku ni okeru shakai kōken katsudō no hyōka : sakutei sogai yōin to sono taiōsaku ni kansuru kōsatsu

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 企業の事業継続計画における社会貢献活動の評価 : 策定阻害要因とその対応策に関する考察 鳥越, 一平(Torigoe, Ippei) 大林, 厚臣( Ōbayashi, Atsuomi) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 2018. Thesis or Dissertation http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002018 -3462.

(2) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程 学位論文(. 2018. 年度). 論文題名. 企業の事業継続計画における社会貢献活動の評価―策定阻害要因とその対応 策に関する考察―. 主. 査. 大林 厚臣. 副. 査. 中村 洋. 副. 査. 市来嵜 治. 副. 査. 氏. 名. 鳥越 一平. 1.

(3) 論 文 要 旨. 所属ゼミ. 大林 厚臣 研究会. 氏名. 鳥越 一平. (論文題名) 企業の事業継続計画における社会貢献活動の評価―策定阻害要因とその対応策に関する考察―. (内容の要旨) 企業が活動する上で常にリスクが存在する。ステークホルダーとの関係や市場の動向などの外部要因 の他、自らの組織のガバナンス、災害・事故等に対する備えなどの内部要因、地球環境への配慮など多 様である。様々なリスクに対して発生要因を適切に掴み、適切な対処を施すリスクマネジメントが企業 の持続的成長には必須となる。 リスクマネジメントの一環として取り組んでいるものに事業継続マネジメント(Business Continuity Management、以下 BCM とする)がある。事業継続計画(Business Continuity Plan、以下 BCP とす る) 策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透さ せるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動が BCM で ある。不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない、または中断しても復旧させるための方針、 体制、手順等を示した計画を立てる必要があり、従業員の人命や建物・設備などの資産を守る為の計画、 所謂防災計画とは異なる。 BCP で対象とする重要業務については、停止時に社会的損失を生むものであり、企業単独の利潤や売 上高の確保の為の事業とは異なる。人命の保護や社会基盤となっているエネルギーやインフラ設備の維 持などが挙げられる。つまり BCP を基にした BCM は、社会貢献の意味合いが強い。事業内容が社会的 損失を生む業種には、社会から BCP 策定への要求も大きくなる。 BCP の策定率を内閣府が隔年調査(n=1,985)しているが、全体的には 50%弱前後を推移し、業種 によって策定率には開きがある。扱う事業内容も異なる為、この開きについては許容できるが、先述の 社会からの BCP 策定への要求に対して実際の策定率が及ばない業種があることに着目した。小売業は、 策定率が 17.6%と全業種に比べて低水準でありながら、不特定多数が利用することで人命確保の重要業 務を抱えている。中でも 100 を越える専門店とスーパーマーケットを併設したショッピングセンター(以 下 SC とする)は、複数企業の集合体で指揮命令系統が確立しにくく BCP 策定が困難であると推測した。 ついては、SC への訪問と社内防災訓練の参加、SC グループ防災担当と実店舗の責任者および関係者 へのインタビューを経て BCP 策定の阻害要因を分析した。結果、阻害要因には主として、指揮命令系統 の確立が困難であることと不特定多数が来場することで不測の事態を発生しやすいことにあった。筆者 が実務として属している建設業では、阻害要因は似ているものの、請負契約の効力から管理体制と指揮 命令系統が確立されている。SC において阻害要因の解消には、請負契約にも似た半強制的な効力を持っ た管理体制が必要となるが、従業員同士のコミュニケーションによっても打破できると考えている。SC 運営者に対しては従業員相互の連絡ツールの確保と一元管理できるシステムの導入を提言する。同時に コミュニケーション向上の為、人に重点を置いた施策も企業として必要となってくる。 また一般消費者についても SC を介して提言を行う。BCP が社会的損失を最小限に留めるものであ り、社会貢献の意味合いが強いにも関わらず、世間の関心が非常に薄い。個人の行動と社会的損失には 直接影響が無いように感じられてしまう為であろう。この点については環境問題を引き合いに出したい。 ゴミの分別をしている時間は、個人の行動としては無駄な時間と言える。それよりも個人の利益になる よう有意義に使った方が良い。しかし分別をすることで地球環境を守ることになると考え行動している。 個人の行動が社会に直接影響すると感じているのだ。BCP についても、その本質が社会的活動とするな らば適切な評価をされるべきである。一般消費者が SC に対して行う評価として、SC が行う社会貢献活 動を購買動機にすることが明確な行動となり得る。この購買行動は企業の更なる社会貢献活動を促進す る源泉にもなり、結果的により多くの社会利益の一部を享受する事ができるのである。SC に対しては、 BCP 策定が社会的損失を最小限にしていることを広報し、一般消費者の評価を得る必要性があると提言 している。 社会貢献を果たす活動は、適切な評価をされるべきである。BCP については、策定する企業及びその 顧客それぞれが適切な評価をしなければならない。地球環境に対する評価と同様に考えることで行動に 移すことができると考えている。あらゆるリスクに対して強靱な社会作りは、万が一に起こるリスクに 対しての対策を評価することから始まる。. 2.

(4) 目次 第 1 章 序論 ...........................................................................................................................4 1-1 はじめに ................................................................................................................4 1-2 リスクへの対応策と事業継続計画 ........................................................................6 1-3 問題意識 ................................................................................................................7 1-4 研究の目的と意義................................................................................................10 1-5 研究方法 ..............................................................................................................10 第 2 章 現状認識..................................................................................................................12 2-1 内閣府指針からみる民間企業の事業継続計画変遷 ............................................12 2-2 東日本大震災を契機にした変化..........................................................................18 2-3 事例に基づく BCP 対策の実態調査 ....................................................................20 2-4 産業別経営資源 ...................................................................................................23 2-5 BCP 対策への社会的要請 ...................................................................................27 第3章 大型商業施設における BCP 阻害要因 ....................................................................31 3-1 選定理由 ..............................................................................................................31 3-2 要因分析 ..............................................................................................................34 (1)要因1:従業員の連携不足 .................................................................................39 (2)要因2:不特定多数の来場者 .............................................................................42 (3)要因3:BCP 策定の潜在的効果算定が難しい...................................................43 (4)要因4:BCP 策定費用が高い ............................................................................44 (5)要因5:一般消費者の BCP 低評価 ....................................................................47 第4章 提言 .........................................................................................................................48 4-1 大型商業施設の BCP ...........................................................................................48 (1)提言1:連絡体制の確立、コミュニケーションによる連携 ..............................48 (2)提言2:予期せぬ事象の洗い出しと経営資源の拡充 .........................................49 (3)提言3:潜在的効果の適切な評価、広報による回収 .........................................50 (4)提言4:指定公共機関としての責務、社企問題の解決 .....................................52 (5)提言5:広報による宣伝、地域連携の強化 .......................................................52 4-2 類似産業への展開................................................................................................53 第5章 本研究の限界と示唆................................................................................................54 引用文献・ウェブサイト .......................................................................................................55 付属資料 ................................................................................................................................57 謝辞 ......................................................................................................................................105. 3.

(5) 企業の事業継続計画における社会貢献活動の評価 ―策定阻害要因とその対応策に関する考察― 81730794 鳥越一平 第1章. 序論. 1-1 はじめに 人間はリスクの許容量を増やすことで発展を遂げてきた。新たな便利さを得 るには、これまでに無かったリスクを許容する必要がある。車が普及すれば交通 渋滞、事故等のリスクが発生し、情報技術が進歩すればシステムの誤作動やサイ バーテロ等の新たなリスクが発生する。技術や文化を蓄積していくためには、相 応のリスクを許容しなければならないのである。 企業もまた同様にリスクを許容している。企業は経済活動を行っていく上で 注視すべき内容が、自らの組織のガバナンス等の内部要因や、ステークホルダー との関係や市場の動向、災害・事故等に対する備えや、地球環境への配慮などの 外部要因など、多岐に渡っている。(表1参照) リスクはその全てを許容するばかりではなく、対策を講じることによってリ スク自体を低減したりリスクを回避したりできるようになる1。自らが保有する リスクに対策を講じるには、時間・労力・費用等のコストが必要となるが、対価 としてリスクの脅威が小さくなるというメリットを享受できる。 合理的判断をする企業にとって、リスク対策は将来起こるかも知れない不確 定要素への投資となり、効果の算出が難しいものほど対策を講じることに消極 的になり得る。対象とするリスクの発生確率が極めて小さい場合や、リスクを予 測できない場合などが、それに当たる。また享受できるメリットが自身ではなく、 社会(第三者)が主であった時、判断に困る部分が出てくる。例えば地球環境の為 の投資を一企業がどこまで行うかといった場合である。 また社会からの視点で、全体最適を考えリスクに備える際には、異なる判断基 準となる。社会全体としてコスト負担を最小限に抑えるには、同じ目的を最小限 のコストでできる企業が担当することが最善である。社会コスト最小の企業が、 社会に対してコストをかけることを社会貢献とすると、その企業の社会貢献へ の価値観が社会にとって大きな影響を及ぼす。. JISQ31000『対訳 ISO 31000:2009 リスクマネジメントの国際規格 / 日本規格協会編』 、. 1. 日本規格協会、2010 年 4.

(6) 表 1 企業が抱えるリスク 大分類. 小分類. リスク. 大分類. 戦略. ビジネス. 新規事業・設備投資. ハザード 自然災害. 小分類. 竜巻・風害. リスク. 戦略. 研究開発. リスク. 落雷. 企業買収・合併. 地震・津波・噴火. 海外生産拠点の崩壊. 天候不良・異常気象・冷夏猛暑等. 生産技術革新. 事故・故障 火災・爆発. 市場マーケ 市場ニーズの変化・製品の不発. 設備故障. ティング. 価格戦略の失敗. 交通事故(就業中). 宣伝・広告の失敗. 航空機事故・列車事故・船舶事故. 競合・顧客のグローバル化. 労災事故. 情報技術革新. 停電・断水. 集団離職. 運送中の事故. 海外従業員の雇用調整. 海賊・盗難. 従業員の高齢化. 放射能汚染・放射能漏れ. 人事制度. 退職金 政治. 有害微生物漏洩・バイオハザード. 法律の制定・制度改革 税制改革. 経済. 情報. 情報システム誤作動・設備故障. システム. コンピュータウイルス・サイバーテロ. 国際社会の圧力. オペレー 製品. 製品の瑕疵. 貿易問題・通商問題. ショナル サービス. 事務ミス. 戦争・内乱. リスク. 製造物責任. 改変・革命・テロ・暴動. リコール・欠陥商品・製品回収. 経済危機. プライバシー侵害. 景気変動. 個人情報・顧客情報漏洩. 原料・資材の高騰 社会. メディア. 機密情報漏洩・情報管理の不備. 不買運動・消費者運動. 法務・倫理 知的財産権・著作権侵害. 風評. 特許紛争. 地域住民とトラブル. 環境規制違反. 誘拐・人質. 役員従業員の不正・不法行為. 反社会的勢力による恐喝・脅迫. 商法違反・不当な利益供与. インターネットを用いた誹謗中傷. 独占禁止法・公正取引法違反. マスコミによる批判・中傷. 不正取引. メディア対応の失敗. インサイダー取引. 資本・負債 格付けの下落. 財務. リスク. 資産運用. リスク. 社内不正・横領・贈収賄. 金融支援の停止. 企業倫理違反・問題情報の隠蔽. 資金計画の失敗. 外国人不法就労. デリバティブ運用. 役員賠償責任. 不良債権・貸し倒れ. 決済. 環境. 株価変動. 環境賠償責任・公害. 地価・不動産価格変動. 環境汚染・油濁事故・土壌汚染. 取引先倒産. 廃棄物処理・リサイクル. 金利変動 流動性. 環境規制強化. 労務人事. 差別(性・国籍・出身・宗教など). 為替変動. 過労死・安全衛生管理不良. 黒字倒産. セクシャルハラスメント 労働争議・ストライキ 伝染病 職場暴力・パワーハラスメント 海外駐在員の安全 経営者. 経営者の死亡・執務不能 乱脈経営・粉飾決算 役員のスキャンダル. 〔出典〕東京海上日動リスクコンサルティング㈱、 『最新リスクマネジメントがよくわかる本[第 2 版]』 (秀和システム、2012 年)101 頁より作成. 5.

(7) 1-2 リスクへの対応策と事業継続計画 リスクの度合いは発生確率と影響度を乗じて評価をする。どちらの指標も企 業や事業によって異なる事から、評価内容はその企業特有のものになるのが一 般的である。評価内容によって対応すべきリスクの優先順位を決めて、計画を立 てていく。 リスクへの対応策として JIS Q 31000 には、以下の7つが整理されており、い ずれかを選択するか、組み合わせることによって対応することになる。 ①リスクの回避 ②リスクテイク ③リスク源の除去 ④発生確率の変更 ⑤結果の変更、影響度の変更 ⑥リスクの共有 ⑦リスクの保有 ここで特に⑦リスクの保有について考えたい。リスクの保有の意思決定要因 としては、発生確率×影響度がリスク対策コストよりも小さい場合が考えられ る。発生確率が高いものについては対策を立てることが日々の業務改善につな がりやすく該当しないので、発生確率(小)×影響度(大)のリスクについて採択さ れることが多いと考えてよい。しかしながら、ひとたびそのリスクが発生した際 には影響度が大きく、被害は企業内部だけに留まらない可能性がある。つまりは 社会的な損失を生む可能性が⑦リスクの保有には含まれているのである。 企業がリスクマネジメントの一環として取り組んでいるものに事業継続マネ ジメント(Business Continuity Management、以下 BCM とする)がある。その 企業が抱えるリスクに対して、上記の①~⑦の内、対応策として最適のものを選 択して対応する取組みである。BCM とは、内閣府防災によると、「大地震等の 自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網) の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中 断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体 制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP) と呼び、BCP 策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、 事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改 善などを行う平常時からのマネジメント活動は、事業継続マネジメント 6.

(8) (Business Continuity Management、BCM)と呼ばれ、経営レベルの戦略的活 動として位置付けられるものである。」2 BCM とは、あらゆるリスクに対して社会的損失を最小限に留める活動であり 社会貢献の意味合いが強い。企業内部のみで収まる事象は含まれていないこと に注意しなければならない。利益を上げるための売上高確保は該当しない。操業 し続けることでの雇用確保も該当しない。社会全体の損失を軸に考える必要が ある。つまり極論ではあるが、ある企業が倒産をしても社会的な損失を生まない ならば、社会としては倒産をしても問題無いのである。その場合には、BCM を 策定する必要は無い。 1-3. 問題意識. 内閣府による平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査3 によると、大企業の 64%が「策定済みである」と回答し、 「策定中である」を含 めると 81.4%に達している。対して中堅企業は、「策定済み」が 31.8%、「策定 中である」を含めると 46.5%となっている。大企業を中心に、BCP 策定は進ん できているが中堅企業では限られた活動となっている。 (図1参照)。 また業種別に BCP 策定率をみると、金融・保険業が 66.0%・情報通信業が 55.9%と高い水準であるが、他産業の策定率は近年伸びてはいるものの 50%以 下となっており業種毎のバラツキが大きいと言える(図2参照)。一つの業種の隔 年推移を見ると策定率は上下している。特に平成 22 年と 25 年には、業種全体 として策定率が下がっている。要因としては、新型インフルエンザ蔓延や東日本 大震災など、これまで想定いなかったリスクが露見し、対応を求められたからと 推察できる。しかしながら近似曲線は右上がりとなっており BCP 策定活動を着 実に進んできていると言える。 業種毎のバラツキに着目したときに、BCP 策定可否要因が BCP 策定の難易. 2. 内閣府防災担当『事業継続ガイドライン第三版』 、2013 年、3-4 頁、. http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline03.pdf(最終検索日:2018 年 12 月 1 日) 3. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、 『平成 29 年度企業の事. 業継続及び防災の取組に関する実態調査』 、2018 年、7-8 頁、 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/h30_bcp_report.pdf (最終検索日:2018 年 6 月 3 日) 7.

(9) 度に因っており、BCM 本来の目的である社会貢献を果たす必要性がある業種に て不十分な策定状況が存在するのでは無いだろうか。その結果、社会的損失が生 まれている可能性を危惧している。 ついては、BCM が求められる期待値と現状の BCP 策定率の差が大きい業種 や企業形態を抽出し、現状策定率を阻む要因を分析して改善策として提言した い。 図 1 BCP 策定状況. 出所) 内閣府平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査4. 4. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2018 年、7 頁 8.

(10) 図 2 業種別事業継続計画(BCP)の策定状況. 出所) 内閣府平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査5. 5. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2018 年、8 頁 9.

(11) 1-4. 研究の目的と意義. 本研究の目的は、BCP 策定を社会から求められる期待値と現状の策定率に差 がある業種を絞り込み、BCP 策定に至らない原因を明らかにする。その上で、 原因に対しての改善策の提案を行い BCP 策定へと促すことを目的としている。 大規模災害の発生を契機に着目される性質を持つ BCM の本来の目的と評価方 法についても言及し、社会的なメリットを誰もが享受できることを強調したい。 本研究の意義は、BCM 活動の認知が企業だけでなく一般消費者にも広がるこ とで、大きな流れを作ることができるようになると考える。環境問題に対する活 動と同等の認識を、リスクに備える安全にも持てるようになれば、より自発的な 活動が推進される。その結果あらゆる産業の企業が十分な BCM 導入に取組み、 社会的責任を果たすことで、社会全体がリスクに強い強靱なものになると考え ている。 1-5. 研究方法. ⅰ)文献調査 内閣府、日本建築学会等の震災調査結果や BCP 実態調査を基に現在の 日本企業の BCM の認識と対策コストへの判断軸を把握する。また、十分 な BCM を策定することでもたらす付加価値を模索する。 ⅱ)事例研究 熊本地震を対象とした BCP の好事例を実例として抽出する。 ・ディスカウントストア「MrMax」㈱ミスターマックス ・半導体製造ルネサスエレクトロニクス社 ・サントリー ・三菱電機 ・富士フィルム九州 BCAO アワード ・イッツ・コミュニケーションズ㈱ ・TOTO㈱ ⅲ)店舗訪問とインタビュー 全産業の内、BCM 対策が重要且つ難易度の高い産業に着目し施行され ている施策と効果を探索する。加えて公共性が高いことと規模が大きいが 故に有事の際に該当地域の避難所としても機能するところからショッピン 10.

(12) グセンター(以下 SC とする)を選択した。地域共生の点から社会貢献につ いての意識調査までインタビュー範囲とした。 実店舗での防災訓練の立会い。ショッピングセンターの防災担当、店舗 責任者へのインタビュー実施。 実店舗としてはイオンモール座間に訪問した。イオンモール座間は座間 市北東部に位置し、東京都心から約 40km、横浜市からは約 20km の通勤 圏内に位置している。工場跡地の土地に立地しており工業専用地域である が、土地利用転換検討地と位置づけられ座間市も参画した都市基盤整備の 対象となっていた。 防災訓練は半年に一度、営業開始前に実施。想定する災害や発生場所、 被害の大きさは、その店舗の特徴に合わせるために、店舗独自に決めて毎 回異なるテーマで訓練を行う。 立会をした日の訓練内容は店舗内3階フードコート内飲食店厨房にて出 火を想定し、初期消火と共に、避難場所である駐車場まで来客者を誘導す るというもの。初期消火は専門店店長によって構成された自衛消防団にて 対応。来客者役として専門店スタッフが 100 名程参加していた。訓練後に はすぐに営業開始となるので、各店舗では訓練に参加しない者が開店準備 をしていた。訓練時には火災報知器を発報させて集中管理室にて手順や計 時管理を行っていた。避難場所に来客者役であるスタッフ含めて全員が集 まると人数確認を行い、イオングループ防災担当者からの講話と店舗責任 者からの総括で中締めとなっていた。総括後参加者全員が、水が空気圧で 出る訓練用消火器を用いて模擬消火を体験してから各々の店舗へと解散と なった。準備から含めて時間にして約 1 時間の訓練となった。. 11.

(13) 第2章. 現状認識. 2-1 内閣府指針からみる民間企業の事業継続計画変遷 事業継続について、国がガイドラインを出したのが 2005 年となる。各機関が 公表している事業継続ガイドラインには以下のようなものがある。 発行体. 書名6. 発行年. 経済産業省 『事業継続計画策定ガイドライン』7. 2005 年 3 月. 内閣府. 2005 年 8 月. 『事業継続ガイドライン. 第一版』8. 中小企業庁 『中小企業 BCP 策定運用指針. 第一版』9. 内閣府. 『中央省庁業務継続ガイドライン. 内閣府. 『事業継続ガイドライン. 第一版』10 2007 年 6 月. 第二版』11. 中小企業庁 『中小企業 BCP 策定運用指針. 第二版』12. 内閣府. 『事業継続ガイドライン. 内閣府. 『中央省庁業務継続ガイドライン. 2006 年 2 月. 第三版』13. 2009 年 11 月 2012 年 3 月 2013 年 8 月. 第二版』14 2016 年 4 月. 変遷を辿ると日本企業が BCP に対してどのように認識し取り組んできたのか を伺うことができる。現在第三版まで発行されている内閣府防災の事業継続ガ イドラインを基にすると、2005 年第一版では、その特徴として次のように述べ られている。 「自然災害を熟知する日本企業は、事業継続計画を作っても実際の 被害は様々で想定どおりの被害にならず無駄と感じやすいのではないかとの認 識に立ち、計画策定の意義を説明し、着手方法を提案している。具体的には、は じめに想定する災害として重大な災害リスクで海外からも懸念の強い「地震」を. 6. 脚注には URL のみ示す。全て最終検索日:2018 年 12 月 3 日. 7. http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/docs/secgov/2005_JigyoKeizokuKeikakuSakute. iGuideline.pdf 8. http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline01.pdf. 9. 該当 URL 無し. 10. http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/20/pdf/shiryo4.pdf. 11. http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline02.pdf. 12. http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/download/bcppdf/bcpguide.pdf. 13. http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline03.pdf. 14. http://www.bousai.go.jp/taisaku/chuogyoumukeizoku/pdf/gyoumu_guide_honbun16042. 7.pdf 12.

(14) 推奨し、その後、段階的に想定する災害の種類を増やしていく現実的なアプロー チを例示している。」15 まずは、BCP そのものが従来の防災対策と異なる事を説明している。その上 で「地震」という誰しもが被害を想定しやすいものを対象リスクとして推奨し、 実際に策定へ至るように促している。第二版を発行する前年にあたる 2008 年の 「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」16では、BCP 策定状況とし て策定済みが大企業 18.9%中堅企業 12.4%17となっている。同調査では防災計 画の策定状況についても調査しており大企業 68.2%中堅企業 45.9%となってい る。この比較をあえて同時に調査したのは、企業に対して防災計画とは異なる BCP の目的を認知させる意図があったと考えるのが妥当であろう。 第二版では、第一版に添付されたチェックシートはそのままに、新型インフル エンザのような断続的に被害が発生する場合の事業継続対応と地震のように一 気に被害が拡大する場合の事業継続対応との違いについて追記され18、リスク対 象を「地震」として BCP を策定した企業が他のリスクに対して有効な対策を打 てるようにしている。同時に未策定企業に対しても、入門編として扱うことがで きる内容となっているので、BCP 策定率向上が念頭に置かれている。この時点 での課題としては、社会全体としての取組みに至っていない、BCP がひな形に 沿って作成され実状に合っていない、BCP 策定後 BCM へ至らない、中小企業 の策定率が改善されない、などが上がっていた。中でも、BCP の文書作成が目 的となり実態が伴っていない事が一番の問題であったと考える。 第三版では、先に挙げた課題と共に経済社会の動向を踏まえた改定が行われ た。同時に積極的な BCP 策定支援や、BCP の更新を求めるような内容となって いる。第三版に述べられている BCP の概略として、図3に沿って全体プロセス がある。. 15. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2005 年、6 頁. 16. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、 『平成 20 年度企業の. 事業継続及び防災の取組に関する実態調査』 、2008 年、10 頁、 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/topics/pdf/080610chousa.pdf (最終検索日:2018 年 12 月 3 日) 17. 2017 年は大企業 64%中堅企業 31.8%. 18. ニュートン・コンサルティング、事業継続ガイドラインの解説より、https://www.new. ton-consulting.co.jp/bcmnavi/guideline/cao_bcp.html(最終検索日:2018 年 12 月 3 日) 13.

(15) 図 3 BCM の各プロセス. 出所) 事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-19. BCM は次の①~⑥を繰り返すこととなる。①方針の策定、②分析・検討、 ③事業継続戦略・対策の検討と決定、④計画の策定、⑤事前対策及び教育・訓練 の実施、⑥見直し・改善を繰り返す。 ④の計画策定が BCP であり、この BCP を PDCA で回すことが BCM である。 計画を立てるだけでは、対策は完成しない。⑤の訓練や⑥の見直しが必須となる。 この BCM 手順の各項目を後ほど BCP 策定の阻害要因を分析していく上で使用 するので、各項目の概略を、事業継続ガイドライン第三版を元に説明する。. 19. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、 『事業継続ガイドライ. ン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(平成 25 年8月改定)』 、2013 年、8 頁、http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline03.pdf (最終検索 日:2018 年 12 月 3 日) 14.

(16) ①方針の策定 基本方針を策定する上で「事業継続の目的や BCM で達成する目標を決定し、 BCM の対象とする事業の種類や事業所の範囲なども明らかにする」20。内容に ついてはステークホルダーや社会からの要求に基づいて洗い出す。洗い出され た目標及び対象範囲の決定については各企業の経営者による判断で行われるも のとされている。ここでの意思決定の礎としては、理念から来る社会貢献の意味 合いや費用対効果による打算的なものまで多様となっているのが現状である。 同時に実施体制を整えることも重要となる。持続的な活動を維持するために も、実施組織に権限を与えておくことが一般的である。 ②分析・検討 事業影響度分析(Business Impact Analysis、以下 BIA とする)とリスク分析 を行う。ここで重要となるのは、重要業務の決定である。重要業務では、人命に 係る項目が最優先であるので、自らの経済活動の中で人命に影響を与えるもの を抽出する必要がある。BIA では、重要業務の停止に対して二つのアプローチで 対策を考える。回復時間の短縮と、復旧レベルの決定である。図 4 のように、災 害発生時に操業度をいかに復旧させるか、また操業度の許容限界内に被害を抑 えるかを判断軸にして、対策の中身を検討していくのである。 リスク分析では、序論で述べたように自社の経営資源に合った対応策を選択 し、重要業務の停止を回避することになる。この段階では、あくまで対応策の案 を挙げることが目的であり、比較・決定するのは次工程以降の作業である。. 20. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2013 年、8 頁) 15.

(17) 図 4 事業継続計画(BCP)の概念図. 出所)内閣府平成 20 年度版 防災白書21. ③事業継続戦略・対策の検討と決定 検討段階では「方向性として、第一に、想定される被害からどのように防御・ 軽減・復旧するか、そして、第二には、もし利用・入手できなくなった場合にど のように代わりを確保するか、の二つの観点が主なものとなる。これを例えば拠 点について当てはめると、前者が「現地復旧戦略」となり、後者が「拠点の代替 戦略」となる。」22この方向性によって挙げられた選択肢の中から費用対効果を 検討し、戦略としての対策を選んでいく。 同時にこの段階で、選択肢を地域共生の面からも考慮する。地域防災計画等と の整合性を持つことで、外部との連携を図ることが可能になる。 ④計画の策定 ③までに選択された対策を計画に落とし込む作業である。今後の活動につい て現場の実施計画を、ここで作成する。実施計画の内容としては、どのように教 育や訓練をするのか、どのように評価して見直しをしてくのか等である。注意点 としては、実施可能な計画であることと、結果として目標を達成する計画である. 21. 内閣府政策統括官(防災担当) 、 『平成 20 年版防災白書』 、2008 年、http://www.bousai.. go.jp/kaigirep/hakusho/h20/bousai2008/html/zu/zu_1b_3_5_01.htm(最終検索日:2018 年6月 3 日) 22. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2013 年、15. 頁) 16.

(18) ことでる。そして、策定した計画については文書化をして記録に残しておく。チ ェックリスト等も同時に精査することで、計画の運用や、後の見直しに有効な材 料となり得る。 ⑤事前対策及び教育・訓練の実施 事前対策とは、リスク発生時に円滑に BCP 活動を行えるように平常時から準 備をしておくことである。 教育・訓練の実施とは、従業員に事業継続の重要性を共通認識として持たせる ために平常時に教育や訓練をすることである。訓練は、リスク発生時にマニュア ル等を見なくても行動ができるレベルまで教育することが目標である。その為、 訓練を受ける側、従業員が積極的な技術を習得しょうとする意識が必須となる。 ⑥見直し・改善 BCP はあらゆるリスクに対して、現状の経営資源を用いて対策を取ることか ら、定期的にアップグレードをする必要がある。また、BCP 発動時には改善が 必要な部分を見直して、より有効な対策が打てるようにしていく。. 尚、各項目の詳細については、添付資料として『事業継続ガイドライン第三版』 の一部を添付するので、巻末資料を参照されたい。. 17.

(19) 2-2 東日本大震災を契機にした変化 事業継続計画が着目される契機となった東日本大震災について触れておきた い。根拠として、図 5 を提示する。平成 19 年から東日本大震災発生後の平成 23 年までの BCP 策定率の推移が示されている。平成 23 年については、東日本大 震災に起因する津波の被災地域および放射能汚染の避難地域に本社が位置して いる企業は除かれている。BCP の策定状況の回答として「策定済み」の合計割 合をみると、大企業(平成 19 年)18.9%・(平成 21 年)27.6%・(平成 23 年)45.8%、 図 5 BCP 策定状況推移(H19~H23). 出所) 企業の事業継続の取組に関する実態調査について23. 23. 内閣府政策統括官(防災担当) 、 『企業の事業継続の取組に関する実態調査について』 、. 2011 年、http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/topics/pdf/kentoukai12_09.pdf(最終検 索日:2018 年6月 3 日) 18.

(20) 中堅企業(平成 19 年)12.4%・(平成 21 年)12.6%・(平成 23 年)20.8%となって いる。各年度の策定率の差は、大企業で平成 19 年から 21 年は 8.7%、平成 21 年から 23 年は 18.2%となっている。中堅企業は平成 19 年から 21 年は 0.2%、 平成 21 年から 23 年は 8.2%となっている。策定率の推移を見ると、大企業・中 小企業共に東日本大震災後に策定割合が大きく伸びている。 また、BCP 策定をいていない回答の中で、「BCP 自体を知らなかった」は大 企業で(平成 19 年)22.7%・(平成 21 年)12.0%・(平成 23 年)0.3%、中堅企業(平 成 19 年)61.2%・(平成 21 年)45.3%・(平成 23 年)13.3%となっている。つまり BCP の認知率は東日本大震災を契機に大きく上がっていると捉えることができ る。. 19.

(21) 2-3 事例に基づく BCP 対策の実態調査 企業の BCP が具体的にどのように機能するのかを理解する為に、熊本地震で の実施策と効果24を見ていきたい。 ・ディスカウントストア「MrMax」㈱ミスターマックス 熊本県内4店舗を展開していたが、店内損傷の少なかった2店舗で翌日から 営業を再開した。 「緊急事態対応マニュアル」に基づいて従業員の出社要請、店 内への出入の可否といった対応の判断を行った。被災当日は翌日から営業を再 開するために、落下した商品の片付け等を実施した。余震が続いていたので、消 費者を商品棚のスペースに入れず、従業員が商品をレジまで持ってきて販売を 行った。また、店内に損傷があり入店できない2店は、店の前でテントを立てて 販売を行った。販売したのは、水や電池など最低限の商品。周辺店舗が閉店して いる中での営業となったので、消費者に感謝される結果となった。 本社では、当日中に災害対策本部を立ち上げ、被災地からの要請を待たずに、 必要不可欠と見込まれる物資を調達・輸送する支援方法を行った。他県への物資 を熊本に回すことで、結果として不足無く納品できるようになった。 「緊急事態対応マニュアル」には、初動対応についてきめ細かく定められてい たので、従業員が迷うこと無く行動ができた。具体的には、震度6以上の場合に は、地震発生後 60 分は店内に入らず、設備の点検などを行い、安全が確保され てから従業員が入るという手順。震度毎や現場の状況毎に設定されている。 ・半導体製造ルネサスエレクトロニクス社 工場が被災。BCP の手順に従い、従業員の安否や被害状況を確認した。熊本 地震後1週間で「再開目標」の時期を、1カ月間で「完全復旧」を目指すと定め ており、その情報を逐一発信するためのニュースリリースを 8 回も発表した。 これは取引先にルネサスの復旧を待つか、他の調達先を探すかの判断ができる ようにとの配慮から判断されたものである。早期回復の要因として、東日本大震 災での被災が教訓となり、拠点工場の耐震性の強化とマルチファブ化の整備を 行っていたことが挙げられる。 第1報 2016 年4月15日 第2報 2016 年4月16日 第3報 2016 年4月17日 24. サイボウズスタートアップス㈱、みんなの BCP、https://bcp-manual.com/(最終検索. 日:2018 年10月3日) 20.

(22) 第4報 2016 年4月18日 第5報 2016 年4月19日 第6報 2016 年4月20日 第7報 2016 年5月10日 第8報 2016 年5月23日(最終報) ・サントリー 配管設備などの被害が大きく、生産再開まで数ヶ月かかることから、工場の従 業員の安否を確認後、他工場での代替生産に切り替えた。災害時には対策本部を 設置し、迅速に初動対応を行うよう備えている。体制や手順についてのマニュア ルは、社内イントラネットに掲載し、従業員がいつでも確認できるようにしてい る。東日本大震災以降は、対応マニュアルの見直しや通信手段の増強、備蓄品の 増強といった BCP の見直しがされていた。 ・三菱電機 同時に熊本県内の2拠点で被災し、半導体を作る上で不可欠なクリーンルー ムが損傷。BCP に従い、本社から技術者が応援に入って復旧を進めつつ、不足 する生産量を県外にある生産委託先の工場の生産量を増やすことで補った。 「サ プライチェーンにおける事業継続」を掲げ、上記対応を予め想定していたことで 早期の生産継続と再開が可能となった。 ・富士フィルム九州25 TAC フィルムと呼ばれる液晶ディスプレイ の構成部材である偏光板の保護 膜を生産する工場が被災したが、2 週間で復旧。工場及び本社の初動の早さが特 筆しており、連携も取れていた。本社では物資、人員の派遣を滞りなく進め、現 地では工場の復旧・再開に専念。これらの連携は東日本大震災以降、全社を挙げ て訓練を強化してきた結果である。訓練の想定は地震以外にも噴火も想定して おり、年 2 回のペースでグループ全体の緊急情報共有訓練を行い、防災訓練、消 火訓練なども繰り返し行っていた。また、安否確認訓練は 3 カ月に 1 回の頻度 で実施していたという。. 25. 中澤、 『先進的な民間企業の BCP から被災自治体が学べること』 、2017 年、. http://www.bousaihaku.com/bousai_img/data/H28_dai5bu3.pdf(最終検索日:2018 年1 0月3日) 21.

(23) また、特定非営利活動法人事業継続推進機構(以下 BCAO とする)は、日本の 事業継続の普及に資するため、その普及および実践に貢献した個人・団体を表彰 する「BCAO アワード」を毎年発表している。添付資料1に各賞受賞者の一覧 を添付する。このアワードの審査基準は、事業継続改革の標準化・公開や普及、 調査研究などの活動や体制整備・人材育成を含めた自らの実践を示すことで BC の普及に向け社会的に影響が大きいと判断されるものである。 ・イッツ・コミュニケーションズ株式会社(2014 年、大賞) 東日本大震災を契機に、 「東商版 BCP 策定ガイド」に準拠した BCP を策定し、 特徴のある図上訓練・実働訓練を実施している。その中で「事業継続成熟度モデ ル」の基準を作成し、BC 訓練監査を行っている。また、経営者自らが関与し、 中長期の成長戦略に対して BC の視点を連動させている。さらに、同業他社およ び取引会社 6 社との「お互い様 BC 連携協定」を締結し、災害時だけでなく新た な事業の連携を図っている。 ・TOTO 株式会社(2011 年、大賞) 2005 年以降、国内外の自企業グループ全体を対象としたリスク管理委員会を 設置し BCP を策定し、継続的な改善活動を実施しており、特に東日本大震災に おいては、代替戦略を実践した点に大きな特徴を見ることができた。 ・代替戦略の策定と実行による生産と安定供給 ・代替拠点による生産工場での雇用の確保 ・訓練を通じて対応力を強化 東日本大震災では、即座に社長を本部長とする対策本部を立ち上げて事業継 続と被害最小化に努めたこと。特に、福島第一原発事故に伴い、生産子会社 1 社 が立入不可になったことに対して、即座にグループ内のある拠点に製造ライン を新設して、代替製造工場として製品を生産したこと。また、製品の一部を競合 他社からの OEM に切り替え、ユーザーへの影響を最小限に食い止めて安定供 給したこと。また、これらの努力により、2011 年度上半期に対前年を上回る連 結決算をあげ、BCP の有効性を実証し、自社の経験を積極的に情報提供してい ること。. 22.

(24) 2-4 産業別経営資源 企業が何かを行動に移す時は、内部資源を用いることになる。BCM の各サイ クルを実行する上で、考慮しなければならない事として企業が自らできる範囲 を正確に掴むことがある。把握が正確でないと、BCP 対策を講じる案として、 実現不可能な案を選択してしまったり、効果が期待できない案を選択したりす る可能性がある。 次章では、具体的に一つの産業を挙げて BCP の策定の現状と改善策を分析し ていくので、この節では全産業について経営資源の構成がどの様になっている かを定義しておく。日本における BCP は全産業において適用される為である。 産業毎に資本形態や企業が持つ経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の内、 事業を継続する上で重要になる資本を一覧にした(図 6 参照)。この一覧表は総 務省による日本標準産業分類を用いて、各産業の分類型と経営資源の重要度を 該当箇所に「1」表記を用いてまとめている。産業の分類型については、「資本集 約型」「労働集約型」「知識集約型」の3つに分けそれぞれの定義は後述とする。経 営資源については、「ヒト・モノ・カネ・情報」の他産業と比較した際に災害時に守 る必要性の高いものを該当としている。BCP 策定率の高い産業は、バックアッ プ可能な情報であったり代替可能な業務であったり比較的 BCP 導入しやすいこ とが考えられる。 各分類においての定義は以下のようにする。 【産業の分類型】 ■資本集約型・・・企業が事業を継続する上で、資本が中心となるもの。企業が 持つ資産の内、土地や建物・機械装置等の固定資産が大きく、設備投資額も同様 に大きくなる。売上高に占める人件費率は低くなる傾向があるため、変動費は小 さくなりやすい。金融・保険業などの多額の資本を要する業界も含まれる。 [電気・ガス・熱供給・水道業等の装置産業的なインフラ事業、規模の経済を生 み出す製造業、金融・保険業、不動産業、医療・福祉事業も含まれる。] ■労働集約型・・・企業が事業を継続する上で、労働力が中心となるもの。設備 投資額は少なくても事業は可能であるが、事業拡大には雇用拡大の必要がある。 売上高に占める人件費率は高く、一人当たり生産量を上げることが比較的難し い。 [サービス業、大規模化や機械化がされていない製造業や、農業・林業・漁業、 建設業] 23.

(25) ■知識集約型・・・企業が事業を継続する上で、知識労働が中心となるもの。差 別化を図るために研究開発や先進技術を利用して新しいものを生み出す一方、 事業を継続するために専門知識が必要となるもの。 [医療品製造業、インターネット付随サービス業、教育・学習支援業、学術研究・ 専門技術サービス業、通信・放送(新聞)] 【経営資源】 ■ヒト・・・経営者、管理者、従業員に分類している。リスク発生時に事態の収 束に最も影響を与えるヒト、もしくは分類されたヒトがいない場合に被害の拡 大が考えられる場合に該当するとした。 経営者・・・企業として意思決定を行う者で、その判断が BCM の行動に大きく影 響する。またトップダウンの指示系統が確立している業界で重要度が 高い。 [医療・福祉業務、諸官庁] 管理者・・・機械化されている現場において、操作等の指揮や調整業務を中心とし ている者。非常時の対応マニュアルが整備されていることが多く、そ のマニュアルに沿って対応する。 [大規模化や機械化がなされた製造業、電気・ガス・熱供給・水道業 等のインフラ事業、金融・保険業] 従業員・・・労働集約型、マンパワーによって問題を解決していく業界で従事して いる者。非常時の対応マニュアルが整備されていることが多く、その マニュアルに沿って対応する。最も重要な経営資源がヒトとなる為、 ヒトの確保・保護の優先度が高い。 [建設業、サービス業、大規模化や機械化がされていない製造業] 技術力・・・下記「情報」内より移項したもの。 ■情報・・・企業が持つ無形資産でノウハウ・技術・各種データ(統計データな ど)を指す。ヒトに付随している場合は、一部のヒトしか有していない能力。こ の場合は、ヒトに移項する。 情報 ・・・ヒトに付随しないもの。顧客(取引先)データや製品データ、各種デー タ(統計データなど)などの資源。 技術力・・・ヒトに付随するもの。事業を行うことで蓄積されたノウハウや技術。 ヒトに移項する。. 24.

(26) ■信頼度・・・取引先や消費者や投資家等ステークホルダー目線で安全性におけ る観点からの信頼度。関係者のみならず世論の動きを反映しやすいのが特徴で ある。差別化による利益として高い価値を創出するようなブランド価値とは異 なる。. 25.

(27) 図 6 産業別分類一覧 産業分類凡例:1⇒該当 経営資源及び信頼度凡例:1⇒他産業に比べて重要度が高い 産業分類. 経営資源及び信頼度 経営資源. 項目名. 資. 労. 知. 本. 働. 識. 集. 集. 集. 約. 約. 約. 型. 型. 型. ヒ. モ. カ. 情. ト. ノ. ネ. 報 信. 土. 機. 地. 械. 経. 管. 従. 技. 原. 営. 理. 業. 術. 材. /. /. 者. 者. 員. 力. 料. 建. 備. 物. 品. 設. 頼. 現. 運. 備. 本. 金. 転. 投. 情. 社. 預. 資. 資. 報. 金. 金. 資. 度. 金. A. 農業,林業. 1. 1. 1. 1. B. 漁業. 1. 1. 1. 1. C. 鉱業,採石業,砂利採取業. 1. 1. D. 建設業. 1. 1. 1. 1. E. 1 製造業. 素材型. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 2. 加工組立型. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 3. 生活関連型. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. F G. 1. 1 1. 電気・ガス・熱供給・水道業 1 情報通信業. 通信・放送. 2. インターネット附随サービス業. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1 1. 1. 1. H. 運輸業,郵便業. 1. 1. I. 卸売業,小売業. 1. 1. J. 金融業,保険業. 1. 1. 1. K. 不動産業,物品賃貸業. 1. 1. 1. 1. L. 学術研究,専門・技術サービス業. 1. 1. 1. 1. M 1 宿泊業,飲食サービス業 2 N. Q R. 1. 1. 1 1. 1. 1 生活関連サービス業,娯楽業 洗濯・理容・美容・浴場業. 1. 1. 1. 2. 1. 1. 1. 娯楽業(映画館/劇場/競馬場) 教育,学習支援業. 1. 1 医療,福祉. 病院. 2. 社会保険・社会福祉・介護事業. 1. 複合サービス事業 1 サービス業. 廃棄物処理業. 2 (他に分類されないもの). 職業紹介・労働者派遣業. S. 公務(他に分類されるものを除く). T. 分類不能の産業. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1 1. 26. 1. 1. ー. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1 ー. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. 1. ー. 1. 1. 1. 飲食店. 1. 1. O P. 旅館・ホテル. 1. 1. 1. 1. ー. ー. 1 1. ー. ー. ー. ー. ー. ー. ー. ー. ー. ー. 1.

(28) 2-5 BCP 対策への社会的要請 BCM とは、あらゆるリスクに対して社会的損失を最小限に留める活動であり 社会貢献の意味合いが強い。では全業種を相対的に比較したときにリスク発生 時の社会的損失が大きい業種とはどのようなものがあるだろうか。本論文では、 インフラストラクチャーと病院関係とした。 更にインフラストラクチャーについては「指定公共機関」 (図 7 参照)に該当 する業種と定めた。インフラストラクチャーとは下部構造、社会基盤のことであ る。個人見解としては、インフラストラクチャーと呼べる業種は電気やガス・水 道などを代表的な例として、人間が生活する為に必要な生活基盤、社会的に必要 最低限守らなければならないものと考えている。電気やガス・水道以外にも鉄道 や航空、道路管理なども該当する。飲食業や娯楽業などの人間に豊かさを与える 類いの産業は該当しない。 インフラストラクチャーの範囲は、設定する人の考え方によって異なる可能 性があるので、上述の通り指定公共機関に該当する業種とした。根拠としては、 指定公共機関とは、国や地方公共団体と協力して国民保護措置を実施する機関 であることから公益性が高い事業を含む企業が指定されている為である。指定 図 7 指定公共機関と業種一覧(全 83 機関) 指定公共機関の指定(平成29年7月1日時点). 業種. 1 国立研究開発法人防災科学技術研究所(法人番号3050005005210). (学術研究). 2 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(法人番号8040005001619). (学術研究). 3 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(法人番号6050005002007). (学術研究). 4 独立行政法人国立病院機構(法人番号1013205001281). (医療). 5 独立行政法人地域医療機能推進機構(法人番号6040005003798). (医療). 6 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(法人番号7050005005207). (農業). 7 国立研究開発法人森林研究・整備機構(法人番号4050005005317). (林業). 8 国立研究開発法人水産研究・教育機構(法人番号1020005004051). (漁業). 9 国立研究開発法人土木研究所(法人番号8050005005206). (建設業). 10 国立研究開発法人建築研究所(法人番号9050005005205). (建設業). 11 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(法人番号5012405001732). (運輸). 12 独立行政法人水資源機構(法人番号6030005001745). (学術研究). 13 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(法人番号3010405004914). (運輸). 14 日本銀行(法人番号3010005002599). (金融). 15 日本赤十字社(法人番号6010405002452). (医療). 16 日本放送協会(法人番号8011005000968). (通信・放送). 17 電力広域的運営推進機関(法人番号6010005023758). (電気・ガス・熱供給・水道業). 18 東日本高速道路株式会社(法人番号9010001095716). 道路. 19 首都高速道路株式会社(法人番号2010001095722). 道路. 20 中日本高速道路株式会社(法人番号4180001056169). 道路. 21 西日本高速道路株式会社(法人番号3120001112341). 道路. 22 阪神高速道路株式会社(法人番号2120001112350). 道路. 23 本州四国連絡高速道路株式会社(法人番号3140001024527). 道路. 24 成田国際空港株式会社(法人番号9040001044645). 空港. 25 新関西国際空港株式会社(法人番号1120001169813). 空港. 27.

(29) 26 中部国際空港株式会社(法人番号7180001093548). 空港. 27 北海道旅客鉄道株式会社(法人番号4430001022657). 鉄道業. 28 東日本旅客鉄道株式会社(法人番号9011001029597). 鉄道業. 29 東海旅客鉄道株式会社(法人番号3180001031569). 鉄道業. 30 西日本旅客鉄道株式会社(法人番号1120001059675). 鉄道業. 31 四国旅客鉄道株式会社(法人番号1470001002014). 鉄道業. 32 九州旅客鉄道株式会社(法人番号6290001012621). 鉄道業. 33 日本貨物鉄道株式会社(法人番号7011001068366). 鉄道業. 34 日本電信電話株式会社(法人番号7010001065142). 情報通信業. 35 東日本電信電話株式会社(法人番号8011101028104). 情報通信業. 36 西日本電信電話株式会社(法人番号7120001077523). 情報通信業. 37 日本郵便株式会社(法人番号1010001112577). 郵便業. 38 東京瓦斯株式会社(法人番号6010401020516). 電気・ガス・熱供給・水道業. 39 大阪瓦斯株式会社(法人番号3120001077601). 電気・ガス・熱供給・水道業. 40 東邦瓦斯株式会社(法人番号2180001022387). 電気・ガス・熱供給・水道業. 41 西部瓦斯株式会社(法人番号6290001014048). 電気・ガス・熱供給・水道業. 42 出光興産株式会社(法人番号9010001011318). 卸売業. 43 太陽石油株式会社(法人番号4010001021635). 卸売業. 44 昭和シェル石油株式会社(法人番号5010401014535). 卸売業. 45 コスモ石油株式会社(法人番号3010401010164). 卸売業. 46 富士石油株式会社(法人番号3010701015631). 卸売業. 47 JXTGエネルギー株式会社(法人番号4010001133876). 卸売業. 48 日本通運株式会社(法人番号4010401022860). 運輸業. 49 福山通運株式会社(法人番号1240001032736). 運輸業. 50 佐川急便株式会社(法人番号8130001000053). 運輸業. 51 ヤマト運輸株式会社(法人番号1010001092605). 運輸業. 52 西濃運輸株式会社(法人番号7200001015755). 運輸業. 53 北海道電力株式会社(法人番号4430001022351). 電気・ガス・熱供給・水道業. 54 東北電力株式会社(法人番号4370001011311). 電気・ガス・熱供給・水道業. 55 東京電力ホールディングス株式会社(法人番号1010001008825). 電気・ガス・熱供給・水道業. 56 東京電力フュエル&パワー株式会社(法人番号5010001166925). 電気・ガス・熱供給・水道業. 57 東京電力パワーグリッド株式会社(法人番号3010001166927). 電気・ガス・熱供給・水道業. 58 東京電力エナジーパートナー株式会社(法人番号8010001166930). 電気・ガス・熱供給・水道業. 59 北陸電力株式会社(法人番号7230001003022). 電気・ガス・熱供給・水道業. 60 中部電力株式会社(法人番号3180001017428). 電気・ガス・熱供給・水道業. 61 関西電力株式会社(法人番号3120001059632). 電気・ガス・熱供給・水道業. 62 中国電力株式会社(法人番号4240001006753). 電気・ガス・熱供給・水道業. 63 四国電力株式会社(法人番号9470001001933). 電気・ガス・熱供給・水道業. 64 九州電力株式会社(法人番号4290001007004). 電気・ガス・熱供給・水道業. 65 沖縄電力株式会社(法人番号3360001008565). 電気・ガス・熱供給・水道業. 66 電源開発株式会社(法人番号6010001050764). 電気・ガス・熱供給・水道業. 67 日本原子力発電株式会社(法人番号2010001033087). 電気・ガス・熱供給・水道業. 68 KDDI株式会社(法人番号9011101031552). 情報通信業. 69 株式会社NTTドコモ(法人番号1010001067912). 情報通信業. 70 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(法人番号7010001064648). 情報通信業. 71 ソフトバンク株式会社(法人番号9010401052465). 情報通信業. 72 輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社(法人番号3020001081423). (運輸). 73 株式会社イトーヨーカ堂(法人番号2010001098023). 小売業. 74 イオン株式会社(法人番号6040001003380). 小売業. 75 ユニー株式会社(法人番号4180001104506). 小売業. 76 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(法人番号1010001088181). 小売業. 77 株式会社ローソン(法人番号2010701019195). 小売業. 78 株式会社ファミリーマート(法人番号9180001085915). 小売業. 79 株式会社セブン&アイ・ホールディングス(法人番号1010001095203). 小売業. 80 公益社団法人全日本トラック協会(法人番号6011105005423). (運輸業). 81 一般社団法人全国建設業協会(法人番号8010005018533). (建設業). 82 公益社団法人日本医師会(法人番号5010005004635). (医療). 83 一般社団法人日本建設業連合会(法人番号7010005003742). (建設業). 出所)内閣府防災 HP より筆者作成 http://www.bousai.go.jp/taisaku/soshiki/s_koukyou.html. 28.

(30) 公共機関に指定されている企業の業種は、道路管理、鉄道業、空港、情報通信 業、郵便業、電気・ガス・熱供給・水道業、卸売業、運輸業、小売業となってい る。業界団体としては医療、農業、林業、漁業、建設業、運輸業、金融、通信・ 放送、電気・ガス・熱供給・水道業が指定されている。最近では平成 29 年 7 月 1日付でイオンやセブン&アイ HD などの生活用品を扱い、全国に流通網を持 つような小売業が、日用品の安定供給として指定公共機関に追加されている26。 また医療や介護といった人命に関わるような業務を扱う業種もリスク発生時に 社会的損失が大きいと言えるであろう。 これらの業種に対しては、社会的損失を最小限にする活動である BCM が運 用されていることを社会は望むことになる。本論文では、これを社会からの期待 値が高い業種として議論を進めていく。 期待値の高低と先述の BCP 策定率の高低を軸として図8を作成した。この図 を直行座標軸とした場合の第3象限に当たる部分(図8アミカケ部)について筆 者は危機感を抱いている。第3象限は、BCP 対策への社会的要請、つまり期待 値が高いにも関わらず、策定率が低い業種が挙げられている。医療や介護、イン フラの中でもプロパンガスなどの中小インフラ、小売業が含まれる。. 小売業の指定公共機関としては、㈱イトーヨーカドー、イオン㈱、ユニー㈱、㈱セブ. 26. ン・イレブン・ジャパン、㈱ローソン、㈱ファミリーマート、㈱セブン&アイ・ホールデ ィングスの7社 図7通し番号 73~79 29.

(31) 図 8 BCP の社会的要請と策定率. 30.

(32) 第3章 大型商業施設における BCP 阻害要因 3-1 選定理由 業種別事業継続計画の策定状況(図9参照)を振り返ると、不動産業・物品賃 貸業、小売業、宿泊業・飲食サービス業の3つの業種が平成23年以降下位を独 占している。同時期より他業種が策定率を伸ばしているので、その差は年々広が っているのが現状である。BCP 策定率下位3業種は何れも、B2C で一般消費者 向けの製品販売やサービス提供を行っている。モノコト消費を提供する場とし て、企業は店舗を構え消費者は店舗へ足を運ぶことになる。リスク発生時には、 店舗内にいる消費者の安全を守ることが、店舗を運営する企業にとって最大の 重要業務と言える。 図 9(再掲)業種別事業継続計画(BCP)の策定状況. 出所) 内閣府平成 29 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査27. 27. 内閣府政策統括官(防災担当)付 普及啓発・連携担当参事官室、前掲、2018 年、8 頁 31.

(33) 本論文 2-5 にて、社会的要請が高いにも関わらず策定率が低い業種の中から BCP 策定の阻害要因を分析していく業種を選択する。指定公共機関にも該当す る業種は、小売業である。 店舗への来場者が多いほど管理は難しくなる。小売業は3業種の中で最も来 場者数が多く、買上率という指標の存在からも不特定多数が店舗内に来場する。 買上率とは、購入した客数を来客数で割った割合である。つまりは来場者の全て が、店舗が提供するモノコト消費を行うわけでは無いのである。対して不動産業 や宿泊業は、モノコト消費を目的にして来店することが多く、顧客データを求め ることが可能であるから、来場者のある程度の把握ができる。 不特定多数が来場する小売業として代表的な形態は、百貨店やスーパーマー ケット、ショッピングセンターなどが挙げられる。百貨店やス-パーマーケット 等の大型小売店は所有企業単体の施設であるが、ショッピングセンターは複数 テナントの集合体の施設である。規模が大きいだけで無く、複数テナントが存在 すると指揮命令系統を確立することが困難になり得る。BCM を運用するオペレ ーションをする上で連携が難しいショッピングセンターに着目していく。 日本ショッピングセンター協会におけるショッピングセンターの定義とは、 次の通りである。 「一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体 で、駐車場を備えるものをいう。その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便 性、快適性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として 都市機能の一翼を担うものである。 ショッピングセンターはディベロッパーにより計画、開発されるものであり、次の条 件を備えることを必要とする。 1.小売業の店舗面積は、1,500 ㎡ 以上であること。 2.キーテナントを除くテナントが 10 店舗以上含まれていること。 3.キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の 80%程度を超 えないこと。但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が 1,500 ㎡以上である場合 には、この限りではない。 4.テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っているこ と。 」28. テナントには、百貨店・スーパーマーケットといった大型小売店や、アパレル・ 28. 一般社団法人日本ショッピングセンター協会、. http://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/definition(最終検索日:2018 年6月 26 日) 32.

(34) バッグやアクセサリーを含むファッション雑貨・家具・食料品・本・文房具・玩 具などのモノ消費の専門店、飲食店・シネマやホテル・旅行代理店や携帯電話・ クリーニング・カルチャー教室・リフォーム・ゲームセンターなどコト消費の専 門店など多種多様である。また企業のオフィス、銀行などの金融機関、医療機関、 電気・ガス等のサービスセンター、行政の出張所や郵便局などの公的機関なども テナントになり得る。 大型商業施設は、生活用品を取り扱っているので、有事の際に避難場所として 想起されやすい点も今回着目した理由の一つである。つまりは平常時も不特定 多数の来場者が見られるが、有事には生活用品を求め、更に多くの来場者が考え られる。その対応策として BCM は有効なのである。 大型商業施設について要因分析を進めていくが、コンビニエンスストアのよ うな流通網を持った小型商業施設も候補として挙げていた。事例研究を進めて いく中で、大手 3 社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)以外にも 地元密着型の BCP 対策が特筆すべきものとなっていたので、一部紹介をしてお きたい。 セイコーマートは、北海道内1,100店舗を展開するコンビニエンスストア である。大手に見られるドミナント戦略を取ること無く、地元密着型を目指して 地位を確立している企業である。中でも非常時の対応マニュアルが整備されて おり、2018年9月6日北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震では、 その成果が形となって現れた。同地震では、北海道全域が停電し多くの商業施設 が休業したにも関わらず、 「セイコーマート」は95%以上の店舗が営業を続け、 被災直後の道民の生活を支えた。 コンビニチェーン店は停電でレジが使えず、休業したところが多かった。一方 でセコマによると、同社は停電の際は車を使って最低限の電源を確保すること がマニュアル化されている。更に、近くに車が置けない場合やガソリンがない場 合を想定し、電気や通信回線が使えなくても使える小型会計端末を全店舗に配 布していた。 停電などに備えたマニュアルは、道内の暴風雪被害や東日本大震災、2016 年の台風被害などのたびに見直しを重ねてきた。こうした更新や準備によって、 休業を回避したのである。. 33.

(35) 3-2 要因分析 大型商業施設における BCP 阻害要因として、図10の5項目を挙げた。要因 番号は筆者が考える阻害要因の大きい順番である。阻害要因を挙げる際には、 BCM の全体プロセス(図10右)において弱点になり得る部分を抽出した。 図 10 阻害要因一覧 要因内容 要因1 従業員の連携不足. 該当. (該当プロセス凡例)BCM全体プロセス. プロセス. ①方針の策定. ①~⑥. ②分析・検討. 要因2 不特定多数の来場者. ②⑤. ③事業継続戦略・対策の検討と決定. 要因3 BCP策定の潜在的効果算定が難しい. ①②. ④計画の策定. 要因4 BCP策定費用が高い. ①③. ⑤事前対策及び教育・訓練の実施. 要因5 一般消費者のBCP低評価. ー. ⑥見直し・改善. 最も大きな要因として(要因1)従業員の連携不足を挙げ、該当プロセスは①~ ⑥のプロセス全体に関係する。ここでの従業員とは、SC において専門店含めた 全ての店舗内スタッフである。2番目に(要因2)不特定多数の来場者で②分析・ 検討⑤事前対策及び教育・訓練の実施プロセスに該当する。購買に関わらず店舗 内に入場する全てが顧客である点から挙げている。3番目には BCP 策定の潜在 的効果算定が難しい事で、全体プロセスでは始動部分である①方針の策定、②分 析・検討に該当する。次に BCP 策定費用が高い事を挙げ、予算決めに関わって くる①方針の策定及び③事業継続戦略・対策の検討と決定部分に該当する。店舗 規模が大きくなるにつれて規模の経済が効きやすくはなるが、有事の際の備え は、そもそも何事も起こらなければ不要なコストと成り得る。策定費用自体がイ ンパクトを持ち障壁となるのでは無いかと考えている。最後に一般消費者の BCP 低評価を挙げているが、これは外部要因から挙げたので該当プロセスは空 欄としている。 これらの阻害要因1~5を実店舗にて確認、調査する為にイオンモール座間 (図11参照)に訪問し、店舗責任者及びイオンモール株式会社の防災担当者に インタビューを実施した。イオンモール株式会社は、202店舗(国内175/ 海外27)のショッピングセンターを展開している。その中でイオンモール座間 は中規模となっており、食料品や衣料品等を販売する総合スーパーであるイオ ンスタイルと呼ばれる核店舗とテナントに該当する専門店約160店舗から構 成されている。 34.

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