ズ 1 う 4
釣仁 j . ゛ 1 S I I , 回 仁 ,
博士論文
植物細胞膜における
無機酸取り込みに関する研究
早稲田大学大学院理工学研究科
物理学及応用物理学専攻
植物生理学研究
降旗 敬
Takashi
FURUニIATA
目次
第1部:植物における無機酸の取り込み研究の現状‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1第2部:ニチニチソウCα面Z7・回功Sj・QSjS培養細胞における無機リン酸取り込み機構
第1章:植物における無機リン酸取り込み機構の研究の現状‥‥‥‥‥‥‥‥7
第2章:ニチニチソウ培養細胞におけるリン酸取り込みの反応速度論的解析 14
第3部:緑藻Chlorella
vul即7・凪こおける亜硫酸取り込み
第1章:亜硫酸の植物に対する影響に関する研究の現状‥‥‥‥‥‥‥‥40
第2章:aZQz・,逼7w唇z7治における亜硫酸取り込みの測定
47 第3章:C.y哨阿右における亜硫酸取り込みの性質‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥57第4部:総合討論
第1章:リン酸取り込み研究の今後の展開‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥69
第2章:亜硫酸取り込み研究の今後の展開‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥74
第3章:本研究の成果と今後の植物細胞膜における無機酸輸送研究‥‥‥‥78
辞 謝 80 参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥81 履歴書‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥91略語表
ATP,アデノシン斜三リン酸
BSA,牛血清アルブミン
C昿クロロフィル
DEEペジエチルアミノエクノール
DTT,ジチオスレイトール
EDTA,エチレンジアミン四酢酸
FCCPjカルボニルシアニド)トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン
丘wt,湿服
RPLC,高速液体クロマトダラフィー
瓦,阻害定数
瓦・,ミカエリス定数
MES,モルホリノエクンスルホン酸
NMR,核磁気共鳴
p阻細胞内pH
pH・,細胞外pH
Pi,無機リン酸
p瓦,解離定数
PMSF,フッ化フェニルメチルスルホニル
フフNPP,パラニトロフェニルジン酸
V回,最大活性
匹 1 02 7
第1部:植物における無核酸の取り込み研究の現状
植物は独立栄養生物であり、光合成系および二次代謝系により生育に必要な
すべての化合物を合成する。合成に必要な素材は周辺の環境に存在する無機
化合物であり、植物はこれを能動的または受動的に取り込む。
二酸化炭素(COふHCOハC032')、硝酸(NOダ)、リン酸(P043“)、硫酸(SO白などの無
機酸(およびイオン)もこうした同化反応に利川される無機化合物であり、その
欠乏は植物に成長阻害などの深刻な障害をもたらす。一方環境中には、大気汚
染物質の亜硫酸(S02、S032')平安京酸化物(NOjあるいはヒ酸(ΛsO白などのよう
に、かえって植物に障害を与えるものもある。したがって、必要な無核酸を+
分量獲得するー方で障害を与えるようなものの侵入を排除すること、あるいは
無毒化することは植物の生存にとって極めて重要な生理機能である。
これらの無核酸は主として土壌中から根を通して、あるいは大気中から気孔を通って植物体内に入り、根あるいは葉のアポプラスト相に溶解して、そこか
ら細胞に取り込まれる。取り込まれた無機酸は様々な化合物へと代謝されて
利用されるが、あるものはまたもとの無機酸に戻って細胞外へ放出され、導管
内を移勤して別の組織で再び辣腕に吸収される(図1-1)。
このような無機酸をはじめとする物質が細胞に入る、あるいは転読のために
細胞から出ていくためには、まず細胞膜を透過しなければならない。 しかし、
脂質二重層を基本とする細胞膜は様々な物質に対してそれぞれ異なった透適
性を特っている。水などの小さくて電荷を特だない分子、脂溶性物質などは単
純拡散(simple diffusion)により比較的容易に脂質層を透過して細胎内に入るこ
とができる。アミノ酸や糖などの親水性分子牛電荷を特つ分子(イオン)の場合
は一般に、副賞二重層膜を自由に透過することができない。したがって、細飽
かこうした化合物を取り込むためには細胞膜上の特異的なチャネル牛輸送体
一卜
言言 ・ d W’ X・・ 心耳 CO2
/
1葉におけるガス交換
導管
除管 \ \ `ゝ 気体状無機酸等根における水、養分の移動
表皮 皮層 カスパリー線 木部 節 部 outside H H20L辺細胞細胞間隙
葉肉組織/表皮
根組織におけるイオンの移動(モデル)
xylem side ち . ・ │ 1 j よ U cortex I レdo レ│ stele E ・ ご l l4 ‘ 八 ∼ S 1 ぺ y l j ? j ♂ J y ゝ ≒ j 4 y y り 一加・ ご jQ てド
I I ● jl・I°・ 71・・ い、 [ 、 、 モじ 、 ロレヽ… …、、 □ `ヽ 1 ミ り リ』 U ’ F ・>レ:j
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図1-1:植物における無機酸などの移動 (菓は近藤1993を一部改変、根は茅野1991およびClarkson l 983 を引用) −2−を介した促進拡散(fa
・itated diffusion)あるいは能動輸送(active transpoll)が必要
となる。さらに大きな分子の場今は膜動輸送(cytosis)によって運ばれる。
陰イオンが細胞に取り込まれる場合には、細胞膜に内側が稲(-90∼-120
mv)の膜電位が存在しているために、この電位勾配に逆らって輸送されること
になる。また、リン酸などの栄義也には土壌中渡座が細胞質濃度に比べて著し
く低いものが多く、植物はこれを数千倍から数百倍にも濃縮している。このよ
引こ、膜内外の渡座差や電位差、もしくはその㈹方(電気化学ポテンシャル)に逆
らって輸送される場合はエネルギーに共役しか能動的輸法体が必要である。
輸週休には、エネルギーと共役して能動輸送を行う輸送体クンパク質(パーミ
アーゼ、ポンプ)、あるいは促進拡散を担うエネルギー非共役型のキャリアー、
チャネルなどがあり、それぞれの分子に特異的な輸送を行う。エネルギー共役
型の輸送体は、ATPの加水分解によるエネルギーを直接利用する一次輸送系
(primary transport)と、膜上のプロトンポンプ(H・-ATPase)などによって形成され
るイオンの電気化学勾配を利用する二次輸送系(secondary
transport)とに二分さ
れる。後者には共輸送(symport)と対面輸送(antiport)かおる。電気化学勾配の
うちプロトン駆動力はH・-ATPaseなど一次輸送系の他に、ミトコンドリアや葉
緑体チラコイド膜、細菌細胞膜などにおいては、呼吸鎖や光合成などの電子伝
達系によって直接的に供給される場合もある。こうした、細胞膜をはじめとし
た膜系における輸送を図1-2にまとめて示す。
反応速度論的には、溶質が脂質二重層を受動的に単純拡散する場合、膜を通
した移動速度は内外の濃度差1
v=−Z〕 こ依存しヽFickの式(1)で表される: RT dS 一一 ぶ 直 j (1) y一 心 3 心 -血こで、司ま取り込みの全活性、川ま単純拡散係数、ωは移動度、ダは流量測定面に
A ̄ トヤ K十 C4` ・( d )・ 一 一 一 一 iffusjon H十 S H十 H十 ADP+Pi ATP ADP十Pi ATP Ca2十 H十
vacuole
tonoplast
cytoplasm
ATP K+ぷ ADP+Pi ATP ADP十Pi 十 十 十 H H Hplasma memblane
図1-2:植物細胞における様々な輸送体 (細胞膜、液胞膜における半々輸送体) AA;アミノ酸、S;糖、A-;陰イオン、C九陽イオン、PPi;無機ピロリン酸 −4−Na十
Ca2十y ︲ 乙 -おける溶質濃度、召! タ は勤力学的エネルギー項、亘 血
は渡座勾配、負の符号は
濃度の低い方向に移動することを示す
また、電荷を持つイオンが受動輸送される場合は、電位勾配による影響を受
けるため電荷を示す項を導入したNemst-Planckの式(2)で表される:
y一 心 y v may自 -£ m゛ S − S RT dS 一一 タ 冶 (3) zF j (2)は膜を隔てての電
5 D喩 -血 こで、zは透過する分子の電荷数消はフアラデー定数、ざ£ 血位の勾配を示す。
単純拡散の場合、速度は濃度に対して直線になり、飽和聖とはならない。温
度変化によって膜脂質の炭化水素領域の流動性が変化するためある程度の温
度依存性が存在するものの、その温度係数((?lo)は、酵素などの輸送体タンパク質
が関与するものと比べると一般に低い値になるといわれる。
一方、能動輸送または促進拡散のようになんらかの輸送体が関与していると
き、輸送には基質特異性かおり、一般的に濃度に対してミカエリスーメンテン型
の飽和曲線を描く。これは反応速度論的には酵素反応と同様に、次の式(3)のよ
引こ表すことができる:
ここで、乙はミカエリス定数、V−は佞人取り込み速度を表す。
−つの基質の輸送に対して複数の輸送体が存在しているとき、取り込み速度
は独立したミカエリス型成分の和で表される(Finean eta目984)。
袖飽による無核酸の取り込みについては、細菌や真核単袖胞生物でづン酸、
硫酸、硝酸などについてATPあるいはプロトン駆動力などのエネルギーと共役
した輸送核構の存在が報告されており、そのいくつかについてはタンパク質お
i
ブレ
ソT
よび遺仏子が固定され、環境に応じた遺伝子発現の応答などについても詳しく
研究されている。一方、植物細胞においては、光合成の原料とその同化物の輸
送が、特に葉緑体包膜においてかなり研究されている。細胞膜においてはショ
糖などの光合成産物について、また炭酸、硝酸などについていくつかの報告が
なされている。 しかし炭酸、硝酸についてもブロトンとの共輸送であるとい
う報告かおる七のの、輸送体そのものの同定は未だなされておらず、未解明の
部分が多い。
本研究では無機酸のうち二種類の分子、すなわち植物の主要な栄養素である
リン酸と、大気汚染物質として知られる亜硫酸について、植物細胞膜における
輸送過程を、主として反応速度論的に研究した。
6第2部:ニチニチソウCa山aran山us roseus培養細胞におけ
る無機リン酸取り込み機構
第1章:植物における無機リン酸取り込み機構の研究の現状
リンは窒素、カリウムと並んで植物三欠栄養素のひとつである。 リンはヌク レオチド率糖リン酸、リン脂質など主要な生体物質の構成要素であるばかりで なく、呼吸、光合成などのエネルギー代謝率タンパク質のリン酸化、脱リン酸化 による活性制御といった細胞内シグナル伝達など、生理的に極めて重要な反応 にも関与しており、その欠乏は深刻な成長阻害をもたらす。 リンは植物によって、無機リン酸(H2P01-あるいはHPO六Pよ略記)の形で周 辺の環境から取り込まれる。土壌などから根のアポプラスト相に入ったリン 酸は、細胞膜を透過して細胎内に入り、そこから各組織へ転流する。多くの場 合、リン酸栄養が充分なときの植物の葉においては、取り込まれたリン酸の 90%程度はポリリン酸などの形で液胞に蓄えられるといわれる。植物に取り込 まれた無機リン酸は、そのままの形か無機ピロリン酸、ポリリン酸あるいは有機化合物とのニIニーステルとして存在する(Bieleskj and Ferguson 1983)。植物におけ るリン酸の流れについて図2-1に示す。
土壌は一般に相当程度の有機リン酸化合物やリン酸カルシウムなどの不溶 性リン酸を含んでいるにもかかわらず、植物が直接利用できる形である可溶性 リン酸は多くの環境においてもっとも不足している無機栄養のひとつで、土壌 中には極めて少量しか合まれておらず、一般に植物は慢性的なリン酸欠乏状態
におかれている(Bieleski and Ferguson 1983)。これに適応して、植物は環城中の リン酸化合物を可溶性無機リン酸に変換させるため、細胞外ホスファターゼ、
有機酸分泌などの様々な機能を発達させている。 −7−
I I | | I I I I | | EFFLUX (LOSS) SOIL Pi≒−upTA・(E SOIL P,ASE SOIL P-ESIER PLANT DEATH SOIL MINERALS | | − I (INPUT) 1 1 1 1 0UTER‘ IAPOPLAsT I − I I I □IFFu510NaARRllR MEMBRANE P-ASE YWW31VWsVld CYTOPLASM 1 10(o−203 METABOLISM {cYCL}NG,P-ESTERj P ?︱▼ トMべ一軋OZO` ASE \ o︷IO 1III / ・1・ Pi P 一一s昌W;昌7:一一々”雪踏?’c O−5 RETRANS− LOCATION {INPUT} o−10 GROWTH (WITHDRAWAL= DNA,RNA, P-UP【D】 RESYNTHESIS (RNA,P-LIPID) {STORAGI,SALVAGE〉 E yWW31yWSYld TRANSPORT (WITHDRAWAり P-ASE
Dynamics of phosphorus use in the cell. N1面bers relaling to arrowson the diagram give the relative signincance of the different pathways of P movement and in a plant like ,S踊’ 沛o,are approximately equivalent
to (nmol g ̄l aesh wt, min ̄1).?-ど7sE£∫ “phosphatase ”,and in the context of this diagramjncludes
non-specinc acid and alkaline phosphomonoesterasesd〕lus ribonucleases, plus phospholipglses
図2-1:植物細胞におけるリン酸の移動 (Bieleski and Ferguson 1983 より引用)
一一 W ̄ _ ゝ
植物におけるリン酷刑刑の第
一
段階は根組織細胞膜でのリン酷取り込みに
姑まるが、このとき細胞膜には内側が斜の膜電位が存在しており、陰イオンで
あるリン酷はこれに逆らって能動的に輸送されなければならない。また、前述
のように土壌中の可溶性無機リン酷の渋皮はほとんどの場所で数μM以下とい
われており(Bieleski19フ3)、細胞質のリン酷濃度(>lmM)と比べて著しく低いこ
とが多く、植物はこれを数千倍にも素絹する必要がある(Bieleski
and Ferguson
1983)
。
それにもかかわらず、各組織の細胞質リン酷濃度は厳密に制御されており、
外郎リン酷濃度がある程度変動してもほぼ
一
定の値を保つことができる
(Mimura etaL 1992、 Mimura l995)。このとき、液胞がリン酷のリザーバーとして
働くことが知られているが、液胞膜における輸送システムなど、その詳細につ
いては充分な解明はなされていない
。
Amino
etal.(1983)はニチニチソウ培養細胞の増殖においてリン酷が律速要因
となっていることから、リン酷の飢餓処理と再添加によって細胞分裂を同調さ
せる方法を確立した。これは、リン酷の栄養状態が細胞分裂の一つの鍵となっ
ていることを示すものである。逆に、培地中のリン酷初期濃度が細抱腹度に比
宋て高すぎる場合にも成長(増殖)阻害が観察されている(Sakano
1995a、b)。これ
は高リン酷濃度あるいは低密度培養において、細胞がリン酷を無制限に取り込
んでしまうため細胞質の酸性化とそれに件う有機酸代謝の促進などによって
細胞の代謝系が乱されてしまうことによると考えられている。このように、培
養細胞系においてもリン酷濃度は初期条件として乖背である
。
多くの陸上植物においては、共生している菌根菌(VAM:
vesiculararbuscular
mycorrhizae)がリン酷取り込みにおいて生態的に重要な役割を演じていること
が知られている.VAMは菌糸を毛根よりも広い範囲に伸ばしてリン酷などを
吸収しヽそれを宿主に渡す代わりに有機化合物を受け取っている(Clafkson
−9−
198肛
Escherlchla coljなどの細菌においては、リン酸獲得系に関する分不生物学的、
生化学的研究が進んでいる(Torriani-Gorini etal.1987)。リン酸獲得に関連した
さまざまなタンパク質の発現はリン酸レギュロン(Pho
regulon)と呼ばれる複数
オペロンにまたがった遺仏子発現制御機構の下に統一的に制御されている。
リン酸レギュロンの支配下には低渋皮のリン酸でも取り込むことのできる高
親和性ジン酸輸送体(PST: Phosphate Specinc Transportsystem)や細胞外の有機リ
ン酸エステルを加水分解して無機リン酸を生じるアルカリ性ホスファクーゼ、
ダリセロール3-リン酸輸送体などがある。これらはリン酸欠乏に伴って誘導さ
れ、環境中のリン酸の効率良い取り込みに働く。その概要を図2-2、3に示した。
このうち高親和性輸送体(PST system)は、ATPの加水分解エネルギーを直接利
用して輸送を行うABC[ATP Bind面リ]ass ・e)輸送休タイプのもので、その成分
としてペリプラズム中のリン酸結合クンパク質を含む。このタイプの輸送休 は、原植生物から哺乳類にいたる様々な生物において様々な溶質の輸送を行
い、共通の構造要素からなるスーパーフアミリーを形成している(Ames 1992)。
ただし、高等植物においてはこのような輸送体はまだ報告されていない。£. c必には上述の高親和性輸週休以外に、構成的に発現する低親和性(h址h狐)のリ
ン酸'プ゛トン共輸送体(PiT: Pi-Transport system)も存在している。これは細胞
膜上のH旭ATPaseによって形成されるプロトン駆動力を利用してリン酸を取り 込む。 一部の良枝単細胞生物においても、同様にリン酸欠乏によって誘導されるリ ン酸獲得系が報告され、その発現制御に関する研究が進んでいる(Borst-Pauwels and Peters 1987)。コウボ(旋c湧・m)叩ノCeS CereVISlae)には高親和性(尨犬10μM)、低 親和性(琳M領域の心)の2種類のリン酸-プロトン共輸送休と高親和性ナトリウ ム`リン酸共輸送休(μM領域の瓜)の少なくとも3種類が存在する。このうち低 −10−
a1 ’ 、 - - X − A
引
PPS −− .大 守 B G3P I I ! 3‘AMP□回付しコ
Pi Poly P G3P OrgPロコ
5'AMP[コ
[
(ドラ→Pi→ザ¨寸寸
Pi ← G3P 図2-2 上P:大腸菌におけるリン酸取り込み機構
(Torriani-Gorrini
etal.1987)
A:充分にリン酸がある場合=低親和性リン酸輸送系(Pit)のみ
B:リン酸欠乏状態=高親和性リン酸輸送系(Pst),アルカリ性ホスファターゼ(AP),高親
和性G3P輸送系(Ugp)など
略号:BP,結合タンパク質;CM,細胞膜;CPD,2',31-サイクリックホスホジエステラー
ゼ;G3P,グリセロール3-リン酸;yNU,5'ヌクレオチダーゼ;OM,外膜;OmpC
and
ompF,外膜ポアタンパク質;OrgP,有機リン酸;PhoE,PhoEポアタンパク質;PPS,ペリ
プラズム;
(unknownsiqna1)
↓
(PhoM)
phoR −一一一一一一一 一 phoB −一一一如PhふBI -Pi −)Pst −j PhoU’ 図2-3 y t叫 土石 PhoB:大腸菌のリン酸レギュロンi
phoA -Pst ̄Phou operon phoB−phoR operon 一一一一 phoE -− ugpAJ un]mowTl phogenes-こよる遺伝子発現制御
(Torriam-Gorrini etal,1987)
Pst経路によって感知されたリン酸シグナルはPhoUを介してPhoRヽPUOBを連鎖的に活
性型とする。活性型PhoBIか加遺伝子群の転写を活性化する。ペリプラズムのリン酸
濃度はリン酸結合タンパク質(PBPj)stS)によってモニターされ,戸rC,戸tAおよび
` pslBによって紬胎内に伝えられると考えられる。 PhoRが存在しない場合、PhoMカ PhoBを活性型にする。 でJ −11−親和性のものは構成的に発現しており、2つの高親和性成分は細胞外分泌酸性 ポスファターゼなどとともにリン酸欠乏によって誘導される。コウボにおけ るリン酸欠乏誘導性クンパク質群についても大腸菌で見出されているものと 類似の調節機構が提案されている。
高等植物において伝様々な種についてリン酸欠乏に伴ってリン酸取り込み
活性が上昇することが報告されている(U11ich-Ebenuset al. 1984、ム四?阻7; Katz et a目986jomato; Lee 1988油alley root、 rose; Bieleski and Lauchli 1992、 七θ//ど7etc.)。 さらに土壌中の有機リン酸エステルを加水分解するために細胞外へ分泌され
る酸性ホスファクーゼやリボヌクレアーゼの活性上昇、あるいはリン酸化合物 に対する代謝活性、経路の変動などがいくっかの植物個体や培養細胞で報告さ
れている(GOldstem l992、 Glund and GOldstein 1993、 Theodorou and Plaxton 1995)。 また、土壌中の不溶性リン酸化合物を易動化するためにキレート作用を持つ有 機酸(クエン酸など)が分泌されるという例も報告されている(Gardner et al. 1983)。 大腸菌やコウボの例から考えると、植物においてもリン酸の栄養状態により これらの発現を遺伝子レペルで統一的に制御する機構の存在が予想される。 いくつかのホスファターゼなどについてタンパク質および遺伝子が同定され ているが、発現制御の詳細はわかっていない。 リン酸輸送については、リン酸輸送に伴う脱分極および細胞質の酸性化につ
いての研究がある.U11rich-Eberius et al・(!984)はウキクサLemna gibbaを用い てヽリン酸取り込みに伴う膜電位の変化をガラス微少電極により測定した。そ れによると、リン酸輸送に伴う脱分極の大きさは与えたリン酸渋皮に依存して 2相のミカニIニ‘リスーメンテン型飽和曲線(尨=3.8および39μM)を示し、リン酸輸送 が膜電位を利用した2HフH2P04'の共輸送であると述べている。さらに、この2種 類の成分の最大活性V−はともにリン酸欠乏や明所での培養によって増大する −12 −
-と報告している。
Sakano(1990)はpH電極を川いてニチニチソウ培養細胞のリン酸取り込みを研
究し、細胞に無機リン酸を添加すると培』也の急速なアルカリ化とそれに引き続
く酸性化が起こることを報告した。培地のアルカリ化は加えたリン酸の鍛に
依存していることから、無機リン酸の吸収がH→-との共輸送によって行われ、そ
の後細胞質の酸性化に伴ったプロトンポンプの活性化によりH-←が汲み出され
て培地が酸性化すること、さらにその変化量からプロトンとリン酸の化学量論
比が4HソPi-と見積もられると解釈している。また、pH
3.5−5.8の範囲では、リン
酸吸収に伴って細胞外pHが連続的に変化しているにもかかわらず、リン酸吸収
が一定の速度で進行することから至適pHは存在しないと報告している。彼等
はヽ細胞内pH指示薬および函汚931P-NMRを用いて細胞内pHを測定し、リン酸
取り込みに伴った細脳内の酸性化についても報告している(Sakano
et al.1992)。
このほかにもpH、膜電位などの測定からリン酸輸送がプロトンとの共輸送で
あることを示す報告かおるが、リン酸輸送体そのものの固定はなされておら
ず、輸週休がいくつ存在しているのかについても確定した結論は得られていな
かった。
本研究では高等植物におけるリン酸取り込み系の反応速度論的解析を行い、
その性質を明らかにするとともに、リン酸欠乏培養による取り込み活性の変動
について研究した。このような研究では、植物体そのものや組織切片などを用
いる場合と、培養細胞あるいは組織から分離したプロトブラストなどを用いる
場合がある。本研究は、細胞膜における輸送そのものを測定することが目的な
ので、取り込まれたリン酸の別組織への移動などの影響は排除することが望ま
しい。そこで、比較的均一で細胞塊があまり大きくならないニチニチソウ
Ca山aranlhus
roseusの液体懸濁培養細胞を材料として実験を行った。
13?・ I .・ ・
‥ .. . . ._ _ _ − ・ , ・ ,. .・ , . ・  ̄. ̄ r 'm ̄  ̄ .¬' '  ̄ i 'て 7'rr7・i ・ ・ . ; j −−・ ・ ・ −. り  ̄.' … ……… … ’ −・り‘ −. ・ . :・・ ぺ ・ ・ . ` ' , ` Z ・ ・ ゜…… 2.11: I .‘,・ .` ・‘. ・ ・ ・ . t ;1 .‘゜.. ‘ '・ . : . : ; ' ' 7 ! g j こ . i ・ ・ .・− ・ i ・ ・ ・ ご .−... . ・ , ;?'Tスフ……ダフj'ljy・77ミ"'……7可泰……阿愕回脳他郷■㎜I I■I■ I・5……;=1!㎜I■ I㎜ ■㎜■ ■■ ㎜I
.lg i . '・・l';i ., 1 -.●-●‘.・.バ……….-一一' ・」‘.゛':'.-・..-・ '・Jj..・j・- .. -14
第2章:二千二チソウ培養細胞におけるリン酸取り込みの反応速
座談的解析
I.材料と方法
1ニチニチソウ培養細胞とリン酸欠乏培養
ニチニチソウ洵/舶り
「7心rs四回L、)G
Don、 (strainA)は東京大学(現日本女子
大学)の駒嶺穆博士から恵与された黄○色の従属栄養的液体懸濁培養細胞株で、
通常は5-20個程度の細胞塊を形成している。培養には3%ショ糖、2.2μM2乖
Dを含むMulashige and Scoog (1962)の培地(MS培地)を用い、27・C、暗所で振とう
培養(9o cycle/min)して、7口口の細胞(湿重約0.7g)を培地ごと50 mlの新鮮な
MS培地に植え継いで経代培養した
。
培地中のリン酸(初期濃度1.25
「f)はこの条件下では24時間以内で細胞にほ
ぼ吸収されてしまう。そこで、2日ごとにリン酸を1.25あるいは2.5mMとなるよ
引こ加えてリン酸非欠乏(+P)細胞を準備し、これをリン酸を含まないMS培地に
移して培養を続けたものをリン酸欠乏(-P)処理細胞とした。また、+P7日日細胞
を新鮮なMS培地に植え継ぎ、さらにリン酸(2.5 mM)を1日おきに加えて培養し
たものを++P処理細胞とした(図2-4)。各処理におけるニチニチソウ培養細胞の
成長曲線を図2-5に示す。
−曹▼ −曹!
normal
cell
→-Transfer
dayo
1 0.7 g fr.wt,/50 ml medjum2 3 4 5 6 7
−曹! i▼ i・▼ i・・・・iTransfer
12 3 4 5 6 7
- -Pmedium
Transfer  ̄P
cell
all cell to250 「○仁P medjum
十P cell
1'1-5 g fr.wt./50r 「0 1 2 3 4 5 6 7
i▼ ・ −奮▼︲ −冒▼︲i▼
図2-4
i▼ i︲・・・y十十P cell
0 1 2 3 4 5 6 7
1.25 or 2.5 mM
Pi addition
1125 mM
Pi
■− n oリン酸欠乏処理培養
-!5-tialconcentration)
ら 一E 8 ︵n︶ `=QO で ̄ 〉く W
﹂oタcコZ=QO
4 2 0 1234567/01 234567
Daysof Culture
図2-5:ニチェチソウ培養細胞の成長曲線
それぞれ通常培養細胞(○)、+P処理細胞(●)、-P処理細胞(■)の成長を示す。+P細胞は
↓の位置でI.25mMリン酸を添加した。
162.プロトプラスト化と細胞の計数
実験には原則として、細胞壁やアポプラスト層の影響を排除し、和船膜上の
リン酸輸送活性を正確に知ることを川釣として、細胞壁を酵素処理によって消
化して得たプロトプラストを用いたが、一郎については細胞をそのまま用いた。
このとき消化に用いる市販の酵素は多量のリン酸を含んでおり、そのままでは
本研究に利用できないので、ToyopearI
HW-40Fカラム(直径5.0×高さ35
cm)によ
るゲルパーミエーションクロマトグラフィーで脱塩処理したものを用いた。
培養細胞を3層のガーゼ上に集め,その位置で約11の蒸留水により洗浄した 後,ペーパータオルで軽く水気を切り,湿重10加工つき10o mlの酵素混合液目% (w/V)cellulase¨ONOZUKA¨R-10,1.5%(w/V)Macerozyme R-10 (脱塩しかもの),0.6 M mannitolコmM CaCI2, 0,5 mM DTT, 0.025%(w/V)BSA,10μM PMSF, 0.01%
2-propanolコ5 mM MES-KOH (PH5.5)]とともに27・Cで約1時間振とう(90
cycle/min)しながらインキュベートすることによって細胞壁を消化レプロト プラストを得た。光学顕微鏡で消化を確認した後,70μmのナイロンメッシュ を通して末消化の細胞塊などを除き,遠心(looxg,2分間)によって回収したプ
゛トプラストをUptake Medium[06M mannitol, 0 2 mM CaOパ]5 mM DTTコ5
mM MES-KOH(pH5.5)]に懸濁した。これを遠心によって1回洗浄した後、生細 胞を計数して測定に用いた。 生細胞(プロトプラスト)は、染色液(0.25%EV皿s-Blue in 0.6 M sorbitol)とプロ トプラスト懸濁液を1:1に混合した後、反応液で約100倍に希釈して、色素を取 り込んでいない細胞(生細胞)数をTATAIの血球計数板を用いて計測した(Ka、nai and Edwalds 1973)。 プロトプラスト化に用いた酵素混合液は8、00oxg、30分間の遠心によって不 純物を除いたものを数回再使用した。消化後の計数において生細胞の割合が 低く(全細胞のおよそ70%以下)なった場合は、新しい酵素混合液と交換した。 −17−
3リン酸取り込み活性の測定 取り込み反応は以下の方法で行った。2mlのUptake Mediumに懸濁した細胞 (5 -50 mg湿重/ml)またはプロトプラスト(50っ000 −500っ000 cells / ml)に[32P]リン 酸(KH2P04、初期濃度0.1 −1000 μM)を加え、T7・Cで振とうしながらインキュ ベートした(時間は、初期リン酸濃度に応じて3−10分間)。取り込み反応は1.9 mlの細胞またはプロトプラスト懸濁波に0.1mlの20倍濃度円P]リン酸を加える
ことにより開始レ停止液[30mMリン酸、3μM
FCCPを含むUptake
MediumD
mlを加えて反応を停止あるいは減速した後、以ドの方法により洗浄して、細胞
に取り込まれた32P量をそのまま、チェレンコフ効果により、液体シンチレー
ションカウンター(LS-6500、Beckman)で測定した;
・Ficoll法:プロトプラストの場合は、停止液を含む反応液各1mlを2本のガラス
試験管に入れた各2mlの2%Ficoll-400、1mMリン酸を含むUptake
Medium上に
重層し、100×島2分間遠心して細胞と反応液を分離した。上清を除き、プロト
プラスト(沈殿)は各2mlの洗浄液(lmMリン酸を合むUptake
Medium)を加えて
遠心により2回洗浄した後、バイアルびんに移して32Pの放射能をカウントした。
・ガラスフィルター法:細胞をそのまま用いる場合は、反応液全量をガラス繊維
フィルター(GC-50、東洋ろ紙)上に吸引ろ過し(1225
Sampling Ma
「fold、
Millipore)、約50mlずつの蒸留水および20mMリン酸緩衝液(pHフ。2)で洗浄した
細胞をフィルターごとバイアルびんに入れて32Pの放射能をカウントした。
4.試薬
放射性リン酸、円P]H3P04(in
O.! N HCI、 carrierhe)は日本原子力研究所または
Amersham社から購入した。セルラーゼ¨ONOZUKA"R-10、およびペクチナーゼ
Macerozyme R-10はヤクルト本社の製品を用いた。FicoII-400はPharmacia社の製
品である。その他の試薬は市販の特級試薬を用いた。
II岩乗
1.リン酸取り込みに対するプロトプラスト化の影響
培養細胞をプロトプラスト化することのリン酸取り込み活性に対する影響
を調べた。細胞を酵素液(前述)とインキュベートする時間を変えて、リン酵取
り込み活性の経時変化をリン酸初期濃度3および500μMについて、Fico11法で測
定した(図2-6)。
プロトプラスト化に伴って取り込み活性は低下し、180分で約50%程度となっ
た。これは主として市販の酵素製品にプロテアーゼが混入しているためだと
考えられるが、リン酸取り込みのリン酸濃度依存性には処理時間による顕著な
影響は見られなかった(H-4参照)。
2リン酸取り込みの時間経過
リン酸取り込みの時間経過を-P4目口細胞、リン酸初期濃度5および500μMに
ついて測定した(図2-フ)。取り込みは少なくとも20分間は直線的に進行した。
以後の測定においては取り込みの直線性に影響しないよう、細胞濃度を反応旅
中に含まれる全リン酸量の0.5−10%程度が取り込まれるようにリン酸濃度に応
じて1×105一分105個/mlの範囲で調整した。
また、停止液を加えないでそのままFico11旅の上に重層して4分目に遠心を開
始した場合と停止旅を4分のところで加えて遠心しか場合(本論文における通常
の方法)とで取り込みを比較することにより、取り込まれたリン酸が停止・洗浄
時に流出しないかどうかを調べたが、その差は5%以内であり(データは示さ
ず)、本実験においてこのような流出は無視できる程度であると結論した。
19` £2 ↑2⋮こ⋮7涵包
7F白=QQj
t ← ○) W ■一〇Eま﹂ コー 4 3 2 1 0 1 20Maceration time(min)
1 80 図2-6:リン酸取り込みに対するプロトプラスト化の影響 それぞれ-P4d細胞における≒tM(○)および500μM(●)リン酸からの取り込みを示す。 酵素処理中の細胞を図中に示した時間にloox島2分間の遠心によって集め、Uptake Mediumで2回洗浄したのちそれぞれ5および25 mg fywt/mlとなるようにUptake Mediumに懸濁した後、5分間のリン酸取り込みをFicoll法によって測定した。 204!A!loR
e51Eldn
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r−−'¶ T ̄ ? 笏 Cで5 − Q。 S 2 Q. ら 乙 ・㎜ □_ − O E 三 0.8 0.4 010
Time(m
i
n)
20 図2-7:リン酸取り込みの時間経過 それぞれ-P4dプロトプラストにおける5μM(○)および5o㈲M(●)リン酸からの取り込 みを示す。プロトプラスト濃度はそれぞれ104及び105個/ml。示した時間に停止液を 加えて反応を停止したのち、Fico11法で細胞に取り込まれた32Pリン酸量を測定した。 213.リン酸欠乏培養によるリン酸取り込み活性の変化
+P培養した細胞をリン酸を含まない培地(-P培地)に移して培養したときのリン
酸取り込み活性の経口変化を、リン酸初期濃度1および500μMで測定した(図2-8)。
リン酸取り込み活性は-P処理によって増大したが、その変動は1μMの場合と500
FtMの場合では大きく異なり、1μMからの取り込みの方が500陣Mからの取り込み
に比べて変動の幅が大きかった。このことはリン酸欠乏培養によってリン酸に対
する見かけの親和性が高くなった、あるいはリン酸取り込みに親和性の異なるい
くつかの成分が存在し、親和性の高いものの活性がリン酸欠乏培養によって増大
した可能性を示唆すると考えられた。
4プロトプラストにおけるリン酸取り込みの濃度依存性 培義晴のリン酸栄養状態によってリン酸取り込みの親和性が異なるかどうか、 あるいは複数の輸送成分が存在するかどうかを調べるため、ニチニチソウ培養細 胞(-P細胞、++P細胞)ブロトプラストにおけるリン酸取り込み活性の濃度依存性を、 リン酸初期濃度0.1 −1000 FIMの範囲で測定した(図2-9コー10)。-P、++Pプロトプラ スト其に飽和型曲線を描いたが、低濃度域からの取り込みには明らかな差が見ら れ、-P細胞においては見かけの親和性が上昇していた。測定データをコンピュータープログラム¨GraFit¨(ver. 3.01、Erithacus Software)に よる非直線回帰で解析すると、-P細胞では少なくとも2種類の成分が存在するもの として解析したときに最も良い一致を見せた。一方、++P細胞では2種類の成分の 存在を仮定しても1種類の成分だけの仮定と比べて一致の程度はほとんど改善さ れなかった。解析の結果得られた心値は、試料によってある程度のばらつきが見 られたが、何回かの測定の結果の平均として-P細胞では心=3.0および47μM、 尚P細胞では瓜=47μMの値を得た(表2-1)。 22
L.%(slsi2ldolojd
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4!ApE
e¥31。dコー
一〇EΞ 4.0 3.0 2.01 1 0 12 3 4
Days
of Pi-free culture
5 図2-8:リン酸欠乏処理に伴うリン酸取り込み活性の経口変化 浬フd細胞をリン酸を含まないMS培地に移してから1目ごとにプロトプラストを調製 しヽ1μM(●、104個/ml、5分間)、500μM(□、10㈲/ml、10分間)からのリン酸取り込みを測 定した。 23
xl!
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7
冊・︵jS
一0︲o︸o﹂珊o−︶一︵︰一一〇EΞ 1 0.5 0 1 1 1Phosphate(μ.M)
1 00 1000 図2、9:-Pプロトプラストにおけるリン酸取り込みの濃度依存性 -P5dプロトプラストにおけるリン酸取り込みを、ジン酸濃度Oふ10μMについては2.5× 104個/mlで5分間、10-1000μMについては2.5XI05個/mlで10分間の取り込みを測定した。 曲線は(hFitによる回帰計算の結果を示し、それぞれ高親和性成分(点線)、低親和性成 分(破線)とその和(実線)である。挿入図はO-100μM部分の拡大図(普通目盛)。 −24− 2 a D トーj DAI!A!10E e)‘leld n !^¨¨一
2
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0
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冊
互mdolo40QdloE三
1 0 (5 0 1 1Phosphate(μM
j 1 00 1000 図2-10:十十Pプロトプラストにおけるリン酸取り込みの濃度依存性 十十P5dプロトプラストにおけるリン酸取り込みを、リン酸濃度Oふ10μMについては5× 104個/m1で5分間、10-1000μMについては5×105個/mlで10分間の取り込みを測定した。 曲線はGraFitによる回帰計算の結果を示し、それぞれ高親和性成分(点線)、低親租吐成 分(破線)とその和(実線)である。挿入図はO-100μM部分の拡大図(普通目盛)。 −25 −CeH type TwoU High-AnFimty A7m[μM] vmax3 take S’stems Low-Amnit
OneU take S stem
瓦4μM] V−j 瓦j:μM] V。j reduced chi2 A: -Pi 5d 2.2 士0.5 0.32士Oj7 48.8士14.9 1.02士0.07 4d 3.8 士1.4 0.31 士0.14 43.8士10.5 1.78士0.12 mean(A) 10士Oj 031士Oj146.3=1=12ブ7 L41士0.10 B: 十十Pi 5d 9 4士14.3 0.04士0 06 41.8 士6.0 1.46士0.10 4d 5.7士17.8 -0.03 =1=0.13 34」 士7.4 】.63士0.14 6.3 士6」0 0.07士0.09 64.1 士27.6 0.68士0.08 mean(B) 46 mean(AandB) 46 8[nmoI Pi ・(104 protoplasts)'1 ・ h'1] 7士13.7 1.26士0 5士13.2 1.34 9.1 士1.8 1.10士0.01 17.6士1.7 1.76士0 11 0.0054 0.0597 0.0032 0.0180 1.43士0.11 0 0248 382士3 8 1 48 士0.10 0 0276 0.0204 375士3 2 1 62 士0.08 0.0182 0.0123 34.1 士3.4 0.66士0.04 0.0181 32 36.6士3.4 1.25圭0.05 士0.21
表2-1:-Pおよび++Pプロトプラストにおけるリン酸取り込み活性の
反応速度論的解析
-26−
㎜ 27 − . ゛ . ゝ r . ● ÷ r a ÷ 1 ・ ゝ d . ・ ・ a − F ” ■ ・ . ゛ . ゜ ・ 4 ● 1 . 1 ● ・ i j r ● ¶ − ・ ♂ ¶ ● − 「 、 ` h t t p://www.’ ` こ ● ● ` 1 F r r r ■ i ・ ‘ ’ ` リ  ̄ ‘ : ’ ・ ; 、 ≒ ≒ ・ - い ・ 、 . ・ 、 ・ ; ・ ・ ’ l t ・ . ‘ i ゛ . ” . y ゛ ` . ` ’ ‘ ‘ ゛ ’ ・ . . ・ . ‘ こ ・ : S . ‘ ` ・ ‘ ’ 、 ・
5.細胞をそのまま用いた場合のリン酸取り込み活性の濃度依存性
細胞をプロトプラスト化せずに、そのまま用いたものについてもリン酸取り
込みの濃度依存性を0.1-1000μMリン酸からの取り込みで測定レ2種類の成分
の狐値を求めた。 -P細胞を用いた場合(図2-11)、瓜値はそれぞれ2、3±04μM、33
±16μMであった。Schmit
etal 0992)が示した特に低い親和比(瓜
!mM)を持
つ取り込み成分は、たとえ存在したとしても活性的にごく小さいものであった。
++P細胞ではやはり1種類の成分による仮定でも良い‐致を示し、瓜値として
26.8±1、6μMの値が得られた(図2-12)。
このような測定をいくつかの細胞について行った結果、平均値として瓜=4.2
士1.3μMおよび29±6.7μMの値を得た。 この値はプロトプラストで得られたも
のとそれほど大きく異なってはおらず、本章II-1の結果と併せて、細胞壁消化の
ための酵素処理による取り込み系の親和性(2種類の成分)に対する影響は大き
くないものと判断した。
大腸菌のリン酸輸送系の場合、ペリプラズムにリン酸結合タンパク質(PBP)が
表作しており、浸透圧の変化や外膜の消化(スフェロプラスト化)によってPBPが
失われるために高親和性のリン酸取り込み活性が著しく低下すると報告され
ているが(Gerdes etal.1977)、ニチニチソウ培養細胞ではこのようなことは起き
ないことから、遊離のリン酸結合タンパク質は存在しないのではないかと考え
られる。高等植物ではLefebvTe
nd Clarkson(1987)がェンドウの根において、浸
透圧ショックやプロトプラストの分離によって高親和性のリン酸吸収(瓦・≒
フ。フ)のV回は減少するが瓜値は変化しなかったと報告している。
■ ㎜ ㎜ ■ ㎜ 9 一 ・ ・ ■ = ・ 心 t= j:二 7 ﹁j﹂芯EごL一〇Ec︶jJ号i 2 1 0 0 1 10 [Pi](μM) 1 00 1000 図2-11:-P細胞におけるリン酸取り込みの濃度依存性 -P5d細胞におけるジン酸取り込みを、リン酸濃度0.1、10μMについては5 mg f1・wt/mlで 4分間、10-100陣Mについては5 mg ftwt/rnlで5分間、10o-looOμMについては25 mgft wl/mlで11分間の取り込みを測定した。曲線はGraFitによる回帰計算の結果を示し、そ れぞれ高親和性成分(点線)、低親和性成分(破線)とその和(実線)である。挿入図は O-100μM部分の拡大図(普通目盛)。 28
2 1 ﹁ ここ ー﹂≒E︶函 一〇Eに︶jJaDI 0 0 1 10 [Pi](μM) 1 00 1000 図2-12:++P細胞におけるリン酸取り込みの濃度依存性 →P4d細胞におけるリン酸取り込みを、0.1-10μMについては5 mg fywt/mlで4分開、 10-100μMについては5 mg fywt/mlで5分間、100-1000μMについては25 mg fi・wt/mlで 11分間の取り込みを測定した。曲線はGraFitによる回帰計算(1成分)の結果を示す。挿 入図はO-100μM部分の拡大図(普通目盛)。 29
6.2種類のリン酸取り込み成分の経口変化
前節で得られた3および47μMという瓜値を用い、図2-4の結果から各成分の
V−値を計算して、リン酸欠乏に伴う2種類のリン酸取り込み成分の活性変動を
経目的に比較した(図2-13)。
低親和吐成分の活性はリン酸欠乏培養による変動は少なく、比較的一定のレ
ベルを保っており、構成的な取り込み系だと考えられる。これに対して高親和
性成分の活性は、-P処理2目口まではほとんど見られなかったが、3目口以降著し
く増大した。
高親和性リン酸取り込み成分の活性が増大した-P4d細胞に再びリン酸を最
終濃度2.5mMまたは10mMとなるように添加して24時間培養すると、低親和性
成分はほぼそのまま残ったが、高親和性成分はほとんど見られなくなった(図
2-14)。
このことから、ニチニチソウ培養細胞の2種類のリン酸取り込み活性は低親
和性の系が構成的であるのに対し、高親和性の系はリン酸欠乏処理培養によっ
て誘導され、さらにリン酸が十分ある場合には抑制されていることが解った。
これは高等植物において披抑折ト生のリン酸取り込み成分が存在することを
示した初めての報告である(Fu油ata
et a1.1992)。
30&AF)13 e¥31dn !^¨¨一’︶宍︶コーー︶Q︵︶ r=−¶ 可 工二 ︵の召包o↑o&゛oこ110︲一〇EΞ 4.0 3.0 2.0 1 0 1
2 3 4
Daysof
Pi'free cU ltUre
5
図2-13:2種類のリン酸取り込み成分の経口変化
図2-8の結果から、2種類のリン酸取り込み成分の狐値3および47μMを用いて連立方程
式によりそれぞれのV−を求めた。それぞれ高親和性成分(●)、低親桓げ成分(○)の
V。拙蕩値)を示す。IμM(●)、500μM(□)ジン酸からの取り込みは図2-8と同じ。
−31−
AI!Ape
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心 でミ f︵の︶g一0︲o︸○﹂aマo’︶■一〇Ec W 3 2 1-Pi4d
2j
1O(mM)
24h
after Pi addition
図2-14:リン酸再添加による2種類のリン酸取り込み成分の変化 -P4d細胞(約4×106 cells/m1)にO、25および10 mMとなるようにリン酸を加えて培養した。 24時間後にプロトプラストを調製し、1および500μMリン酸からの取り込み(それぞれ 105およびシ105個/ml、5および10分間)を測定し、図2-13と同様に2種類の成分のV一値 を計算して求めた。それぞれ高親和性成分(□)、低親根性成分(■)のV一位を示す。 −32−フ.pH依存性
親和吐の異なる2種類の収り込み活性それぞれのpH依存性を別々に調べるた
め、高親和性成分の場合、リン酸欠乏処理(-P)細胞(4-6目口)における初期リン酢
漬度1−3μMからの取り込み値を測定した。なお、この測定法において、2つの
取り込み系のV−が等しいとして比較した場合、低親和性成分の寄与は濃度
1μMでは8%ヽ3μMでは11%と見積もられる。低親和性成分については++P細胞
における500μMリン酢からの取り込み値を測定した。表2-1に示したように、
++P細胞においては高親和性成分の活性がほとんどないと考えられる。
2種類のリン酢取り込み成分の体液pH依存性をpH
3.5−8.0の範囲で測定した
(図2-15)。いずれの成分もpH5−6に至適pHを持ち、大きな差は見られなかった。
8.ヒ酸によるリン酸取り込みの阻害
ヒ酸(arsenate、AsO白けリン酸の類似体として働くことが知られており、耐性
植物においては高親和性のリン酸輸送が欠けているという報告(Meharg
and
MCNair 1992)かおる。そこで、我々の見出したリン酸取り込みに対する
(Na2HAs04)の影響を調べた。
まず、ヒ酸によるリン酸取り込みの時間経過を、-P細胞を用い、初期リン酸濃
度5および100μMからの取り込みにおいてそれぞれ10倍濃度のヒ酸を同時に加
えることで測定した(図2-16)。
ヒ酸はどちらの場合においてもリン酸取り込みを強く阻害した。ヒ酸を加
えたときの取り込みの時間経過は直線的でなく、5分以内で遅くなった。これ
はヒ酸によって細胞内ATP濃度が低下し、H几ATPaseなどが阻害されたことによ
る二次的な影響だと考えられる。
そこで取り込み時間を2分問とし、結果をDixon
plotによって解析してヒ酸の
阻害定敷瓦を求めた。高親和性成分の発現した-P細胞でPi=1および5μMで測定
-33
−
︵一〇右oごo述
A1!AF)B
gEI。dn
!d
1 50 0 3 4 5pH
6 7 図2-15:2種類のリン酸取り込み成分のpH依存性 -P5d(104個/ml)および++P5d005個/ml)プロトプラストを用いてそれぞれ1(○)および 5oo(●)μMリン酸からの取り込みを測定レ対照(pH5.5)に対する百分率で表示した。異なるpHについては通常のUptake Mediumにおいて25 mM MES-KOH (pH 5.5)の代わ
りに、それぞれ図中に示したHEPES-NaOH、MES-KOH、β-alanine-NaOH(各25 「、4)を用
いヽ同反応液に15分以上おいた後、[32P]Piを加えて5分間の取り込みを測定した。
4
りー
︵=8四E へ i一〇E︶9eldr二n一 ︵=8?c へ
■一〇E︶のぶ包DI
4.0 × 10'9 2.0 × 10'9 6.0 × 10'8 4.0×10`8 2.0×10`8 0 0 0 5 10 time(min) 5 10 time(min) 15 15 図2-16:ヒ酸存在下におけるリン酸取り込みの時間経過 A:-P4d細胞(5 mg fiwt/ml)において5μMリン酸からの取り込みを50μMヒ酸有り(●)お よび無し(○)で測定した。 B:→P4d細胞(25 mg n・wt/ml)において100μMリン酸からの取り込みを、lmMヒ酸 (Na2HAs04)有り(■)および無し(□)で測定した。 35した場合、競争阻害によるヒ酸の瓦は約20μMと見積もられた(図2-17)。一方、
→P細胞を用いてPi=20および100μMで測定し、同様に瓦を求めると約560μMと
見積もられた(図1-18)。何回か繰り返した結果には多少変動が見られたが、お
よそ瓦=400-フ00μM程度の範囲であった。
このよ引こ瓦は高親和性成分に対しては瓜の約6-フ倍、低親和性成分に対して
は8-15倍程度となり、高親租陛成分の方が相対的な感受性が高かった。
各濃度のリン酸に対して10倍濃度のヒ酸を加えて2分間のリン酸取り込みを
測定し、そのリン酸濃度依存性を取ると、-P細胞においては全濃度範囲にわたっ
てヒ酸の影響が顕著に見られた(回I-19)。一方、++P細胞においてはこのように
低い濃度域においては阻害が小さく、影響の程度が異なっていることが解る(図
1-20)。これは上述の瓦の結果と調和している。
ヒ酸存在下ではリン酸取り込みが時間に対して直線的に進行しないため(図
2-16)今回の測定のみでは不十分な部分かおるが、高親和性取り込み系の方が低
親和性取り込み系よりもヒ酸に対する感受性が高く、より効率的にヒ酸を取り
込んでしまう可能性が示唆された。この結果から、Meharg
and MCNair (!992)の
報告におけるヒ酸耐性株は、高親和性のリン酸取り込み系を遺伝的に欠失して
いると考えると説明が付く。
E.cohのリン酸輸送の場合、これとは逆に低親和性の輸送(PIT)の方がヒ酸に
対する感受ト生が高いと報告されている(Rosenberg
et al.1977)。E.cohの場合、高
親和性の輸送(PST)が直接ATPによって、PITはプロトン駆動力によって駆動さ
れている。これに対し、われわれの見出した高等植物における2種類のリン酸
輸法体は、脱共役剤の影響などから共にプロトンとの共輸送によるものである
と考えられる(データは示さず)ことから、上記のような違いが生じたのかもし
れないとも考えられる。あるいは生物種の差にもとづく輸送体タンパク質の
性質の差により、たまたまこのような結果になった可能性も考えられる。
-36−
`4-二上
・ ‘ − ・ へ ζ ` ゛ j ゛ ' , ' . t ' r ' ・ ゛ ' ・ 乙 . ・ [︲Ξ、=8四E`一一〇Ec]JIJaヲ︵︰一 4 × 1010 2 × 1010 0 − 一 一 ⊃ ○ ○ ○ ● ● I I I I 5 × 10-5 5 × 10゛5 10`4 [arsenate](M) 図2-17:ヒ酸による高親和性リン酸取り込み成分の阻害(Dixon Plot) -P4d細胞(10 mg丘wl/ml)における1(○)および5μM(●)リン酸からの2分間のリン酸取 り込み(高親和性成分)を、図に示した濃度のヒ酸存在下で測定し、Dixon Plotで表示し た。 [︲︵石=8bLu/
!
d
一〇Ec︶Jljaコー 2 × 1010 1010 一 一 一 一 / ○ 1 1 1 0 2 ×10-3 4 × 10'3 [arsenate](M) 図2-18:ヒ酸による低親和性リン酸取り込み成分の阻害(Dixon Plot) 台P4d細胞(5 0 mg fywt/ml)における20(○)および100μM(●)リン酸からの2分間のリン 酸取り込み(高親和性成分)を、図に示した濃度のヒ酸存在下で測定し、Dixon Plotで表 示した。 37- 一 一 -百=QolE、一︵︰一一〇E 9)leldn !d W 百=8oE、一︵︰一一〇E 9)leldn !d `J 4.0 × 10-9 2.0 × 10'9 0 4.0 × 10“9 2.0 × 10'9 0 0 10-6 2 × 10-44 × 10'46 × 10“48 × 10'4 10'3 10-5 [Pi] [Pi] j M ぐ j’ M ぐ 1 O-4 1 O'3 図2-19:-P細胞におけるリン酸取り込みの濃度依存性に対する ヒ酸の影響 -P4d細胞(10 mg fi・wt/m1)におけるリン酸取り込みの(2分間)リン酸濃度依存性(○)をリ ン酸の10倍渡座のヒ酸存在下(●)で測定した。A:普通目盛、B:対数目盛(x軸) 38
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︵司一石ハ︶?ミーー〇E︶ 4.0 × 10-9. 2.0 × 10-9 0 4.0 × 10'9 2.0 × 10'9 0 10-6 2 × 10-44 × 10'46 × 10-48 × 10^4 10“5 [Pi](M) [Pi] ぐ M) 1 O-4 1 O"3 1 O‘3 図2-20:++P細胞におけるリン酸取り込みの濃度依存性に対する ヒ酸の影響 'P4d細胞(50 mg fi wt/ml)におけるリン酸取り込み(2分間)のジン酸濃度依存性(○)をリ ン酸の10倍濃度のヒ酸存在下(●)で測定した。 A:普通目盛、B:対数目盛(x軸) ︵ソ りー第3部:緑藻Chlorella vulgarisにおける亜硫酸取り込み
第1章:亜硫酸の植物に対する影響に関する研究の現状
主要な大気汚染物質である亜硫酸ガス(二酸化硫黄、S02)は、火山などから放
出される自然起源のものもあるが、近年では化石燃料中に含まれる有機、無機
の硫黄化合物が燃焼に伴い酸化して生成する人為起源のものが圧倒的に多い。
先進工業国においては脱硫技術の発達や燃焼規制の強化によって、人為起源の
S02排出量は減少する傾向にあるが、発展途上国などにおいては経済的理由か
ら硫黄分の多い石炭などが多用され、しかもその使用量は経済発展に体って増
加しているため、環境に対する悪影響が懸念されている(Willner
et al、1985)。
亜硫酸は酸性雨の原因物質の一つであるが、酸性物質としての生物に対する
直接的な影響、土壌や湖沼の酸性化などの影響ばかりではなく、その特異的な
影響、特に活性酸素生成などによる酸化的ストレス物質としての影響も大きい
と考えられている。また、亜硫酸イオン(HSOハS032-)は細胞内でタンパク質、核
酸などとも反応し得るため、硫酸イオン(SOj^)と比べてけるかに毒性が高い。
動物細胞においても亜硫酸による様々な障害が報告されているが、植物細胞の
方がけるかに感吏吐が高いとされている。
動物細胞には亜硫酸酸化酵素が存在し、S032-からS042-への酸化を行う。これ
は実質的にS02の解毒反応であり、亜硫酸耐性と密接な関係かおる。植物細胞
においても亜硫酸酸化酵素活性が存在しているが、その多くは光依存性であ
り、葉緑体内にあると言われている。葉緑体内における亜硫酸の酸化は次に示
すような活性酸素の生成を伴うものであるため動物細胞とは異なり、植物細胞
では必ずしも解毒反応とはいえない(近藤1993)。
植物において亜硫酸は、酸素が光介威光化学系I周辺の電子伝達系から電子を
受け取って生成した活性酸素(Oムスーパーオキシド)と反応して連鎖的に活性
−40-酸素生成を増大させるため、光合成の各段階に可逆的および非可逆的な障害を
与える(図3-1、Asada and Kiso 1973)。植物における亜硫酸緑院の原因としては、
活性酸素消去系(スーパーオキシドディスムターゼ、ペルオキシダーゼなど)の
活性上昇によるものが知られている(図3-2)。
なお、亜硫酸が酸化されて生じた硫酸はATPに付加されてアデノシンホスホ
硫酸(APS)となり、キヤリアタンパク質を介してりーアセチルセリンに海人され、
システインを生じる(Galsed
1985、 図3-3)。硫黄は必須元素のーつでもあるた
め、硫黄欠乏土壌に生育する植物においては、亜硫酸ガスがこの過程によって
含硫有機化合物を生じ、硫黄源になることも報告されている。
亜硫酸ガスは大気中から気孔を通して植物体内(細胞開院)に入る。亜硫酸が
スはまず気孔の開度によってその流人を制限される。高濃度の亜硫酸ガスは
気孔を閉じさせるが、低濃度のときは場合によってはかえって気孔が開くこと
も報告されている(Majemjc
and Mansneld 1970、Kondo皿d
Sugahara 1977)。気孔
から入った亜硫酸ガスはアポプラスト相に溶解して速やかに水和し(H2S03)、イ
オン化してHSOハSO汗を生じる。このときの水和およびイオンヘの解離は速
やかに起こり、各分子種の存在比は亜硫酸のp私憤および溶液のpHによって決
まる(Woollins 1994、 図3-4)。なお、本論文において亜硫酸またはsumteとはこれ
らのイオン種すべてを包括的に指すものとする。
この亜硫酸が障害を引き起こすためにはまず細胞に取り込まれなければな
らないから、亜硫酸イオンの取り込みの大小によって亜硫酸障害の大小が決ま
る可能性が考えられる。しかし、亜硫酸が細胞膜を透過して取り込まれる機構
に関しては、なんらかの輸送体クンパク質が関与しているとする説と、非解離
型分子種のH2S03が細胞膜の脂哲二重層を単純拡散するという説の2種類があ
り、植物に限らず、コウボなど他の生物の細胞においても確定していなかった。
上記のように亜]硫酸は気孔の開度に影響するので、植物による取り込み機構
一利−
-・ - I - = ■ I J HS03-+02'十2H゛⇒HS03 ・ +2HO・ 一一 一 一 〇: − 一 一 一 CAT
202
2RH various Pxs 2R 42 02,過酸化水素 − NADP十 NADPH十H十 NADPH十H十 HS03一十HO・+H゛⇒HS03・+H20-H20十1/202
GSSG HS03・+02→S03+02“+H゛ HS03・十HO・ -・ S03+H20 2HS03・⇒S03十HS03'十HI S03十H20⇒S042'十2II+ 02:十〇2’十2H゛→H202十〇2 − 一一 一一 H〇・十HO・⇒H202 図3-1:亜硫酸による活性酸素種の連鎖的生成 最初の02'は光化学系!周辺の電子伝達系から酸素に電子が渡されて生成する。下線 は活性酸素を示す。 02',スーパーオキシド;HO',ヒドロキシルラジカル;H2− -2トド92
図3-2:櫨物の主要な活性酸素消去系酵素群 SOD,スーパーオキシドディスムターゼ;APX,アスコルビン酸ペルオキシダーゼ; CAT,カタラーゼ;DHAR,デヒドロアスコルピン酸還元酵素; MDHAR,モノデヒドロアスコルビン酸還元酵素;GR,グルタチオン還元酵素; GPX,グルタチオンペルオキシダーゼ;various Pxs, その・ほかのペルオキシダーゼ−  ̄ j ■ ㎜ ■ ㎜ - ・ − . . I J - ・ ・ . ’ . ミ _ I − ’ = J ・ ・ ・ - ■ − a ・ ・ ・ ■ ・ - ==
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Reduced ferred・xin Tohopl〔〕st Oxidi2sd ferred。xin 円。srilQr7、eTヽbrclt、e図3-3:植物細胞における亜硫酸の代謝
Fysteine oしAcelyl serine Menlionine Other orgQnic cQmpounds GlU↑。thione(Garsed
l985より引用)
略語:APS,アデノシン5・-ホスホ硫酸;CS,CSS03 and CSSH, キャリア蛋白質(それぞれ
遊離型およびSO3,SH基結合型)
−43 -・■ ■ − ・ ■ = . − ■ − ・ ・  ̄ 一 一 1