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jikan bunkai kyomei raman bunkoho oyobi bunshi kido keisan ni yoru reiki bunshishu no kozo ni kansuru kenkyu

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(1)lll一稲田大学審査学位論交(博士). ゛゛:jL l .│..| 1. ら一. ....‘. l. ー-7四 jJぞご. z一. '戸・ │. ’. ご『こ. や こハ. ヱ ヽ// O. ■㎜−J. y・.かI. II・■・・㎜■■■● lj・・ ニバ={:モ − ノX≒,:ゼ. I.-ヽsニ. a. `g. ゴヅ. ジマン. .j.ど. −. ノ‘1. ゝ. 1. −一一. `づ。こヽ. /. S. 一. こノ. 一一. -一一. ご͡. ■ふ皿 〃-・. −ミt −−-a. /ご・‘こ’. 一一 −−. べしヽノ. ノj.. J■㎜. こノ. y y. じ. 忿怨分子言の七三 に謁す. 一. ヽy. `/’. 一一. 一一. ㎜㎜㎜■・. / ̄`. Z・6=a. ・. J. ミ. ノヽ. −. ヽゲ こノ. Ξ ノv. −¶−「. ゛/y. -一一. −φ. .ノ,.・/ここ. −S“. 一. べ. jジ7. 一. −j'd・. ど1ご. /. 心/. =. ノ. ・-J. 一. J・皿● 〃’゜’ ㎜-==・㎜. 皿j. J..

(2) 時間分解共鳴ラマン分光法および 分子軌道計算による励起分子種の 構造に関する研究. 1991年2月 応用化学専攻構造化学研究 阿部. 二朗.

(3) 目 第一章. 第 一 一 章 2. 1. 2. 2. 2. 2. 2. 2. 序論. 1. 参考文献. 5. 時間分解共鳴ラマン分光法および分子軌道計算の理論. 7. 時間分解共鳴ラマン分光法. 7. 半経験的分子軌道計算の理論. 9. 2.1. hrtree-Fock-Roothaan. 2.2. MNDO法. 12. 2.3. AMI法. H. 配置間相互作用(Co. SCF法. 「iguration. lnteraction:CI)の理論. 9. 18. 2. 4. 励起状態のCI法. 22. 2. 5. フロンティア軌道による励起分子構造論. 23. 参考文献. 28. MNDOC/MR-SDCI法による電子的励起状態の分子軌道計算. 29. 3.1. 序. 29. 3.2. MR-SDCI法による分子軌道計算. 29. -. 第. 3. 次. 一 一. 章. 〈補足〉. 38. 参考文献 第回章. 41. N,N,N≒N' −テトラメチルーp-フェニレンジアミン(TMPD) の最低励起三重項状態およびラジカルカチオンの時間 3 9. 分解共鳴ラマンおよび分子軌道計算による研究. 3 9. 1. 4. 序. 4 3. 基底状態の基準振動の帰属. 4. 4. 最低励起三重項状態の時間分解共鳴ラマンスペクトル. 4. 5. 分子軌道計算による最低励起三重項状態の構造. 4 4. 実験方法. 5 4. 4. 2. 8 4 4 5. 参考文献. 第五章. 60. 時間分解共鳴ラマンおよび分子軌道計算による2,2’−スピロ 2 6. ビ[2H-1-ベンゾピラン]の光励起種の構造についての研究. 2 6. 5. 1. 序.

(4) 5. 2. 実験方法. H. 5. 3. 光励起種の時間分解共鳴ラマンスペクトル. 64. 溶媒効果. 5. 3.2. 過渡分子種の振動形の帰属. 5. 3.3. 励起波長依存性. 5. 第六. 4. 章. 9 6. 3.1. 4 6. 5. 76. 分子軌道計算. 82. 参考文献. 92. ジベンソスベレニル化合物の最低励起三重項状態および ラジカルカチオンの時間分解共鳴ラマンおよび分子軌道 3 9 3 9. 計算 序. 6. 2. 合成方法. 6. 3. 基底状態の分子構造と分子内反転ポテンシャル. 6. 3.1. 基底状態のラマンスペクトル. 6. 3.2. 温度可変1H−NMR(400MHz)スペクトル. 6. 3.3. 3.4. 6. 4. 6. 6. DBCH-5-o1のラマンスペクトルの溶媒依存性 分子軌道計算による構造最適化及び反転ポテンシャル. 過渡分子種の時間分解共鳴ラマンスペクトルと分子軌道計算 4.1. 6. 4.2. DBCH-5-olの励起分子種の立体異性体. 4.3. 第七章. 4.4. 100. 109. 111. 1 16. 116. 1 2 6. ジベンソスベレニル化合物の励起分子種の分子軌道 計算. 6. 95. ジベンソスベレニル化合物の時間分解共鳴ラマンスペ クトル. 6. 5 9. 1. 5 9. 6. 光化学反応ダイナミックス. 128. 03. 参考文献. 1 3 8. 総括. 13. 謝辞. 14. 研究業績. 142. 9. 1.

(5) m−F-. 第一章. -. 序論. 基底状態の分子は光を吸収することによって電子密度分布の異なる励起状態へ 遷移し、原子核には基底状態と異なった力が働き分子構造の変化が生ずる。励起 状態は光化学反応で重要な働きを担っていて、基底状態と大きく異なる反応性や 分子構造は多くの研究者の興味をひきつけて今日に至っており、励起状態の分子 構造を明らかにすることは光化学反応を理解する上で非常に重要な地位を占めて いる。一般に励起状態の寿命はピコ(10-12)秒からナノ(10-9)秒という非常に短 かいものであり、測定にあたってはかなり低い励起分子密度が対象となるために 大きな困難を伴う。しかしながら、特に近年のレーザー技術の発達によって多様 な実験が可能になり、この時間領域での急速な進展が見られている。基底状態の 分子に関してはマイクロ波吸収スペクトル、X線結晶構造解析、さらに赤外線吸 収スペクトル、ラマン散乱スペクトルなどの豊富な実験結果が蓄積されているだ けでなく、分子軌道計算によっても安定構造が決定されており、実験結果と理論 計算の結果についても検討されており分子構造についての系統的な理解が得られ ている。一方、励起状態の分子構造については未だ良く解明されていないのが現 状である。. 励起状態の研究では古くから紫外・可視吸収スペクトルが多く用い. られているが、近年では基底状態の分子にレーザー光を照射して励起状態に遷移 させて、その状態での紫外・可視吸収スペクトルを測定するレーザーフラッシュ フォ. トリシス法の発達がめざましく、フェムト秒(10-15秒)のレーザーパルスに. よる実験も行なわれており、種々の光化学反応の初期過程の解明が試みられてい る。さらに分子間の衝突がなく、極低温である超音速分子線の状態での基底状態 の紫外・可視吸収スペクトルや蛍光励起スペクトルを測定する手法(Supersonic free. jet)が開発され、励起状態の振動スペクトルを得ることが可能になり、最. 低励起一差損状態(SI)の分子構造について多くの研究がなされている。 時間分解共鳴ラマン分光法は摂動か加えられた系の化学反応過程で生じる短寿 命分子種や電子励起状態についての興味から開発された。摂動としては電子線パ ノレス. 光励起、ストップト・フロー法によるものなどがある。電子線パルスや光. 励起の場合はピコ秒の時間領域まで追うことが可能であるが、ストップト・フロー. 1. −.

(6) 一一-. 法では溶液の拡散過程がそれほど速くないのでミリ秒の時間領域の現象を観測す ることになる。現在ではその適用範囲が広いことと、励起エネルギーを自由に変 えられることから光励起の方法が多く用いられている。またストップト・フロー 法は、反応にそれほど高い活性化エネルギーを必要とせず、熱的に起こる二分子 反応などに適用されている。二つのレーザーパルスを用いるポンプープローブ法 による過渡ラマン分光の実験は1976年にWilbrandt[1]らによって初めて行なわれ た。彼らは、2Mev、30ナノ秒の時間帽を持つ電子線パルスを用い、p一ターフェニ ルのラジカルアニオン(R. ゛゜ )を生成させ、色素レーザーによるレーザーパルス(1. 0mJ、600nsec、481.61nm)によって共鳴ラマンスペクトルの測定に成功した。ポ ンプープローブ法の他にも連続発振レーザー光をチョップして励起光源に用いる 方法や、マイクロビームフロー法、励起レーザーのパワー依存性からスペクトル を解析する方法などが考えられている。ポンプープローブ型の方法は1980年代に なっていくつかのグループでパルスレーザーを用いて別々に開発されはじめた。 今日ではナノ秒の時間分解ラマン分光の手法は確立され、ピコ秒の時間分解能を 持つ装置が開発されつつある。 電子励起状態の過渡ラマン分光はWilbrandtらによって開拓された。彼らはpターフェニルに電子線パルスを照射することによって最低励起三重項状態(TI) の共鳴ラマンスペクトルの測定に成功し[2]、こめ研究が引き金となって電子線 パルスや光励起によって生じる他の多くの有機化合物のTI. に適用されるように. なった。特に芳香族炭化水素のT1についての研究例は多く、クリセン[3-5]、p −ベンゾキノン[6]、N、N、N’N‘−テトラメチルーp-フェニレンジアミン(TMPD)[7]、 ジフェニルアミン[8]、アントラセン[4、9、10]、ナフタレン[11]、ベンソフ、ノ ン[12−14]、ピフェニル[15]、t−、c−スチルベン[16]などについて過渡共鳴ラマ. ンスペクトルが報告されている。最低励起一重項状態(SI)の寿命はT1のもの に比べてかなり短く、その過渡ラマンスペクトルの測定にも多くの困難が伴うこ ともあって、それほど多くの報告はなされていない。Gustafsonらは5ナノ秒の時 間幅をもつレーザーパルスを用いたポンプープローブ法の過渡ラマン分光法で68 ピコ秒の寿命を持つt-スチルベンのSIのスペクトルを初めて測定した[17]。ま た最近Hopkins[18]らは5ピコ秒の時間分解能を持つ装置を用いた測定に成功し、. 2.

(7) Hamaguchi[19]らも励起レーザーのパワー依存性のスペクトルを解析する方法を 用いた結果を報告している。またジフェニルブタジエン[20、21]、ビフェニル[22 ]、メチルオレンジ[23]、β−カロチン[24、25]などについても報告例がある。. 最近、Reidらは1、3−シクロヘキサジェンが光励起により間環反応を起こし、シス ーヘキサトリェンを生成する機構をピコ秒時間分解紫外共鳴ラマン分光法によっ て明らかにした[26]。この研究は周辺環状光開環反応をピコ秒の時間領域ではじ めて直接測定した非常に興味深いものである。彼らはシンクロナスポンプモード ロック色素レーザーを用いた時間分解能2ピコ秒の装置によって光励起後Oピコ秒 から3.1ナノ秒の時間領域の共鳴ラマンスペクトルを測定し、光開陳生成物は励 起後8ピコ秒で現れることを明らかにした。 このように時間分解共鳴ラマン分光法による研究は年々増加の傾向を見せてい るが. ラマンスペクトルからだけでは励起分子の詳細な構造については明らかに. することはできない。例えば基底状態では種々の分子のフェニル基は、ほぼ同じ ような構造を保っているが、励起状態では分子によって異なった構造をとること が過去の研究例から示唆されている。また振動スペクトルから分子構造を推測す る場合は、基本的にはグループ振動の考え方によって解析を行なうが、励起状態 では分子構造が大きく変形するために、基底状態のグループ振動を適用すること は困難になってくる。すなわち励起状態では基底状態とかなり異なった振動モー ドを持つために、この振動数から分子構造の推測を行なうことは大きな困難を伴 なうだけでなく、誤った結論を導き出す可能性がある。 本研究の特色は、従来の時間分解共鳴ラマン分光法に加えて、従来この分野の 研究であまり用いられることが無かった分子軌道計算を導入し励起分子構造の詳 細について、理論的な面からも明らかにしたことである。 本論文は七章から成っている。. 第一章の序論では時間分解共鳴ラマン分光法による従来の研究を紹介して問題 点を示し、本研究の目的について述べてある。 第二章では本研究で用いた時間分解共鳴ラマン分光法と分子軌道計算の方法に ついての説明を行なう。特に半経験的分子軌道計算についての説明と、配置間相 互作用の方法(CI法)を用いた励起状態についての計算方法について述べてある。. -. 3. −.

(8) またHOMO・LUMO軌道と励起分子構造の関係についての考察を行ない、一般的な励 起分子構造論についての議論を行なっている。 第三章は本研究で独自に作成したCI計算のプログラムを用いて、種々の有機分 子の基底状態および励起状態についての励起エネルギーの計算結果を示してある。 またこれらの結果からMR-SDCI(Multi. reference-SDCO計算の有効性と問題点に. ついて提示している。すなわち基底状態にMR-SDCI計算を適用すると、実験結果 よりかなり小さい値の励起エネルギーが得られるという問題があるが、励起状態 については実験結果を良く再現する良好な結果を得ることができた。 第四章では芳香族アミンの一つであるN、N、N≒N' XXへ. シア. −テトラメチルーp-フェニレン. ン(TMPD)の時間分解共鳴ラマンスペクトルおよび同位体置換体のスペクト. ルから振動の帰属を行ない、最低励起三重項状態およびラジカルカチオンの分子 構造について議論するとともに分子軌道計算を行なって、それらの構造について 明らかにした。 第五章ではフォトクロミズムを示す機能性物質の一つであるスピロピラン系物 質の2、2’ −スピロビ[2H-1-ベンソピラン](SBP)の過渡分子種について種々の同位 体置換体の時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定し振動型の帰属を行なうととも に分子軌道計算を行なって得られた過渡分子種の分子構造について述べてある。 第六章ではジベンソスベレニル化合物について、反転ポテンシャル、光イオン 化機構、系間交差、励起分子種の分子構造について時間分解共鳴ラマン分光法、 温度可変NMR、分子軌道計算によって総合的に研究した成果が述べられている。 第七章は以上の研究をまとめた総括と将来の展望について述べてある。. 4.

(9) [第一章の参考文献] al. [1]P.Pagsberg,R.Wilbrandt,K.8.Hansen,K.V.We. sberg,Chem.Phys.Lett.,. !!,538(1976) 1brandt,N.II.Jensen,P.Pagsberg,A.U.S. ″︱. W︰. 一︱. R. [2]. 11esen,K.B.Hansen,. Nature,276,167(1978). [3]G.H.Atkinson,L.R.Dosser,J.Chem.Phys.,U,2195(1980). [. 4. ]. ]. [5. G.H.Atkinson,D.A.Gilmore,L.R.Dosser,J.B.Pa11. H. 6. ix,J.Phys.Chem‥. 2305,(1982). -. [. ,1031(1981). S.M.Beck,L.E.Brus,J.Chem.Phys.,瓦. ]. R.Rossetti,S.M.Beck,L.E.Brus,J.Phys.Chem.,8. !,. 3058,(1983). −. [. 7. ]. [. 8. ]. K.Yokoyama,Chem.Phys,Lett.,U,93,(1982). T.Kobayashi,S.Koshihara,Chem.Phys.Lett.,. 設!,174(1984). [9]G.N.R.Tripathi,M.R.Fisher,Chem.Phys.Lett.,!jは,297(H84). [1. 0. ]. P.H.M.Van Zeyl,C.A.G.0.varH,G.Vroege.Chem.Phys.Lett.,LQj,1. (1H4) [. 11. ]. [. 12. ]. [. 13. ]. ]. [. 15. ]. 113.344(1985). T.Tahara,H.Hamaguchi,M.Tasulli,J.Phys.Chem.,鉦,5875(1987). T.Tahara,H.11amaguchi.M.Tasumi,Chem.Phys.Lett.,152.135(1988). T.Tahara,H.Hamaguchi,M.Tasumi,J.Phys.Chem.,U,170(1990). G.Bunt. nx,0.PO izat,J.Chem.Phys‥. 釘. 。. 14. Prasad,P.N.Prasad.Chem.Phys.Lett‥. 11. [. J. 2153(1989). C ︱. Orland. al. i. 一1. [16]F.W.Langkilde,R.Wilbrandt,F.Negr. Chem.Phys.Lett. H5,66く1990) [17]T.L.Guftafson,D.M.Roberts,D.A.Chernoff,J.Chem.Phys.,U,1559,. (1983). [18]J.B.Hopkins,P.M.Renzepis,Chem.Phys.Lett‥. U!,79(1986). [19]H.Hamaguchi,C.Kato,M.Tasumi,Chem.Phys.Lett.,100,3(1983). [20]R.Wilbrandt,N.H.Jensen,F.W.Langkilde,Chem.Phys.Lett.,111,123 (1984) [21]T.L.Gustafson,J.F.Palmer,D.M.Roberts.Chem.Phys.Lett‥. -. 5. −. !27.505. 27.

(10) ●−・W−−・・●r. (1986) [. 22. ]. C.xato,H.Hamaguchi,M.Tasumi,Chem.Phys.Lett.,120,. 18 3(1985). 23. ]. L.V.Haley,J.A.Koningstein/Chel.Phys‥U,263(1982). [. 24. ]. L.V.Haley,J.A.Koningstein,Chel.Phys‥n,1(1983). [. 25. ]1.W.Wylie,J.A.Koningstein,J.Phys.Chem‥U,295()(1984). 26. ]P.J.Reid,S.J.Doig,R.A.Mathies,Chem.Phys.Lett.,156,163(1989). [. [. -. 6. −.

(11) 第. 一 一. 章. 2.1. 時間分解共鳴ラマン分光および分子軌道計算の理論. 時間分解共鳴ラマン分光法’. ラマン散乱効果は1928年にC.V.RamanとK.S.Krishnanによって発見された現象 であり、現在では構造化学をはじめとして、生化学、固体物理、工業材料の分析 といった幅広い領域で応用されている。振動ラマンスペクトルからは分子構造を 直接反映する分子の固有振動数がわかり、分子構造の研究には非常に有用な方法 である。励起分子のラマンスペクトルを測定するためには特殊な方法が要求され る。すなわち波長の異なる二種類のレーザーパルスを用いて、一方のレーザーパ ルスで分子を励起(ポンプ)させて、それによって生じた過渡状態のラマンスペク トルを時間遅延をつけた他方のレーザーパルスで検出(プローブ)する、いわゆる ポンプープローブ型の方法である。このような方法はパルスレーザーと高感度マ ルチチャンネル光検出器の出現によってはじめて可能となった。このときプロー ブレーザーの波長を過渡状態の電子的共鳴条件を満たすように選ぶと、共鳴ラマ ン効果によってその過渡状態を選択的かつ高感度に検出することができる。この 場合時間分解能はレーザーパルスの時開帳によって決まる。ポンプ光とプローブ 光の時間遅延を変化させて測定することによって、電子励起状態にある分子の構 造だけでなく、励起状態のダイナミックスに関する情報を得ることも可能となる。 以下に本研究で用いた時間分解共鳴ラマン分光装置を示す。. 7.

(12) 図2.1. 一 一. 時間分解ラマン分光装置. 台のエキシマーレーザー励起色素レーザー(Lambda. Physik LPX120i、FL3002. )を試料のポンプ先およびプローブ先に用いた。ポンプ先とプローブ先の時間遅 延は遅延パルス発生器(Stanford. Research. 乱売はトリプルポリクロメーター(Spex ル検出器(SMA. DG535)を用いて行なった。. ラマン散. 1877)によって分光し、マルチチャンネ. D/SIDA-700G)によって検出した。マルチチャンネル検出器のゲー. トやポンプ先とプローブ先の遅延時間はフォトダイオード(Hamamatsu )とオッシロスコープ(Sony. Tektronix. R1328U-02. 11302-11A52)によってモニターした。. キシマーレーザーの308nmの発振線での最大パルスェネルギー、パルス幅、最大 繰り返し数はそれぞれ150mJ、17ns、200Hzである。. -. 8. −. ェ.

(13) 2.2. 半経験的分子軌道計算の理論. 2.2.1. Hartree-Fock-Roothaan. SCF法. 分子内の電子の挙動は、原理的にはシュレディンガー方程式によって記述する ことができる。. HΦ. -. EΦ. Hはハミルトニアン、Φは波動関数、Eは系のエネルギーである。通常、原子核 の質量は電子の質量よりはるかに大きいので、核の運動と電子の運動は分離され、 電子の運動についてのみ方程式を解くことになる。いわゆるBorn-Oppenheimer近 似である。. H. ここでN電子系の分子の全ハミルトニアンHは核の部分を除いて. Σく1/2)jl−ΣΣZA/rlA十ΣΣΓn. 一 -. とする。. このようなハミルトニアンに対するシュレディンガー方程式を正確に解. くことはできない。これは電子が互いに相互作用しながら運動している多体系で あることに起因している。そこで一電子の座標だけを含む関数を用いてΦの近似 的な解を求める方法が考案された。すなわちHatree-Fock(HF)近似である。. この. 近似では分子内の各々の電子が独立に運動しているという一電子軌道近似であり 電子間の相関が考慮されていない粗い近似である。. HF近似の本質は、分子内の電. 子は原子核と他の電子によって作られる平均の場を動いているという独立粒子模 型(independent. particle. approximation)として扱うことにあり、一次独立な規. 格直交系である関数系{φl}を考え、この一電子軌道関数を用いてN電子系の波動 関数Voを近似的に表わそうというものである。正確な波動関数Φは次の三つの 条件を満たすことが要請される。. (1)任意の二つの電子の座標の交換に対して反対称に. なっていること。すなわ. ちPauliの原理を満たすこと。 (2)ハミルトニアンHはスピン演算子を含んでいないので、スピン演算子s2、. 9.

(14) szの同時固有関数になっていること。. s2φ=S(S十1)Φ szΦ=MsΦ. (3)系のハミルトニアンの属する点群の既約表現の基底としての変換性を持つ こと。. このような条件を満たすものとしてSlater行列式が良く知られている。すなわ ちN電子系のSlater行列式|Ψo〉は以下のように与,えられる。. I. W,〉=|φ1(1)φ1(2)φ2(3)φ2(4)‥‥・φs/2(N-1)φx/2(N)>. このIVo〉は問題とするシュレディンガー方程式の近似的な解となる。この一 電子軌道関数による閉殼基底状態のHartree-FockエネルギーEoは. Eo=2Σ(alhla)十ΣΣ{2(aalbb)−(ablba)} (a. l. h. l. a)=. (a. a. l. bb)=. (a. b. l. ba)=. Jdr1φこ(1){(-1/2)j1−ΣzA/r1A}φ。(1) ydrldrJφ。(1)リ・riFIφt,(2)12 Jdrldr2φこ(1)φt,く1)r i1φ;(2)φ。(2). となる。. この一電子軌道関数φlは変分原理から、以下のHartree-Fock方程式を解くこと によって得ることができる。. 目(−1/2)zj1-ZA/r. 1A}十Σyd. −Σ(Jdr加州)φ1(m(i. r2 1 φj(2)12・. r il]φl(1). 1]φ』川=Eiφ1(1〉. このHartree-Foek方程式は¢1(i=1,2,‥・,n)が既知でないと解くことができず,. N.

(15) 繰り返し計算によるSCFの方法(self-consistent. field、つじつまの合う場の方. 法)によって解か求められる。この方法により多電子問題が一電子問題に帰着さ れ、一電子近似の範囲内で最良な波動関数(Hartree-Fock軌道)を得ることができ. る。 Hartreeづock方程式の数値的解法は大変困難であり、一般的な解法はない。こ の困難を克服するためにRoothaanは一電子軌道関数φ1を解析的な関数の線形結 合で近似し、近似的なHartree-Fock軌道を求めるSCF法を提唱した。 原子軌道χ。の一次結合(Linear. Combination. φ1をn個の. of Atomic orbi ta1)で表わす近似. 方法をLCAO近似という。. φ。=Σc. 7χ。. (p=1、2、‥・、n). この場合、原子軌道の係数C7は以下のHartree-Fock-Roothaan(HFR)の式を解くこ とによって得られる。. mp. ΣFIJC7=ε。ΣSijC FC=SCE. Hi Oj『゜十ΣP1』[「i」. 一. lj. 一. 一. I. lkj)]. T IJ十V?rl. 「. χ. 1. t(1){(-1/2)J1}χj(1). I C uj nl. v. ∫d. ∫ d一一. 一. 1j. =. J. OJ cl. H. T. lk1)−(1/2)(. 91. F. ∫. r1χt(1){−ΣZA/r1A}χバ1). 一︱. ぐ. P. |. J. ij. 一. kl)=. drldr2χt(1)χJ(1)rihこ(2)χ1(2). 2Σci。ci。. (密度行列、あるいは電荷結合次数行列). この犯法を用いると分子の全エネルギーは. E=(1/2)ΣΣP となる。. ここで行列F. ij 『H貿”十F1』) ijをFock行列という。. □. このHH法でもFock行列の計算のた.

(16) めには原子軌道の係数C1.が既知である必要があり、HF法の場合と同じように繰 り返し計算のSCF法で解くことになる。つまり、係数CI。の初期値の組を仮定して Fock行列要素を計算し、その固有値と固有ベクトルを求める。最初の仮定が正し ければSelf-consistent解になる。このようにしてSelf-consistent解か得られる まで繰り返し計算を行なわなければならない。. HF法の場合は分子軌道φ1で変分. したが、この方法だと原子軌道χ。は固定しておいて係数のChで変分するため に、HFの方法に比べると近似は悪いことになる。しかし計算時間が大幅に短縮さ れることになり、一般的な方法として用いられている。. MNDO法. 2.2.2 f. 一︱. 11od. 11. MNDOは. ed neglectof diatomicoverlapの略称であり、χiとχjが異. なる原子に属する場合のみ、微分重なりχ1(1)*χj(1)dr1をゼロとする近似方法 である。以下、原子軌道χlとχ」は原子Aに、χ1、とχ1は原子Bに属するものとす る。 Fock行列要素を、対角要素FHと非対角要素のうち同一原子に属する原子軌 道間のFij、および異なる原子に属する原子軌道間のFHにわけて考えると、MNDO 近似ではそれぞれ以下に示すように簡約化される。. lkl). lk1). ここで一電子積分(コアー積分)の項についてはポテンシ申ルエネルギーを各原 子核からの寄与の和として書き直してある。すなわちVAを原子Aの原子核と内殻 電子によるポテンシャルとし、V9を原子A以外からの原子Bによるポテンシャルと すると. 12. ●︱. II. ∩川+ΣΣpぷ. 。1(. sJ. al II く. βa−(1/2)ΣΣPJI(. 5 ・J 11. 一. l jj)−(1/2)(ij l ij)]+ΣΣP. −. 一. .J. lk. =ΣVI」,日十(1/2)PI」[3(. 一︱. F. U 11+ΣVII,B十ΣPjj[(ii. IJ −︱. FIJ. 一. ・︱. 一. F11. l k1).

(17) ︱ く *1. 一 一. y. (1){vjχI(1)drl. *i. χ. = VI」,B. φi. χ. 11,日. (1){va}χバ1)drl. 1 く *i. rIj. βH,=. ){-(1/2)JI十VA}χl(1)drl. ∫. V. χ. 11. ∫ =. U. ){-(1/2)jl}χ1(1)drl. 一丿. 一︱. またP1」は密度行列(電荷結合次数行列)を、さらに(. l k1)は以下の二電子反発. 積分を表わす。. =∫drldr2χ t(1)χ」(1)ri. χ. k1). 12. .J 11. ぐ. l. こ(2)χ1(2). このようなMNDO近似によってab-initio計算では考慮される三中心、四中心二 電子反発積分が無視され、SCF計算の中で最も計算時間と記憶容量を必要とする 二電子反発積分の数は大幅に減少することになる。その結果、比較的大きな分子 でも短時間で計算を行なうことが可能となる。以下にFock行列の計算に必要な項 をまとめておく。. (a)A原子に属する原子軌道χ1の電子の運動エネルギーと原子核Aによるポテンシャ ルエネルギーの和として表わされる一中心一電子積分UH (b)クーロン積分(Hljj)=gl』と、交換積分「ijnj〉=hl」のような一中心二電子 反発積分 (C)二中心一電子コアー共鳴積分βH、 (d)原子Aに属する原子軌道によって形成される電荷分布eχ1χjと、原子核Bとの 静電相互作用エネルギーを表わす二中心一電子透過積分VI』、8 (e)電荷分布eχ1χ』とeχ□いとの節電相互作用エネルギーを表わす二中心二電 子反発積分(i川kl). 分子の全エネルギーEt。t¨lは電子エネルギーE。Iと原子核AとBの間の校閲反発 エネルギーEAI,coreの和として表わされる。. 13.

(18) E. t。t・1°1=Eel+ΣΣEABcore. 分子の生成熱j. Hf”1は全エネルギーEt。t¨1から、その分子中の原子の電子エネ. ルギーE。IAを差し引いたものに、原子の生成熟の実験値J. j. H f゛゜1 =E. IlfAを加えて得られる。. t。t”1°1−ΣE。IA十Σ∠JHfA. MNDO法ではFock行列要素の一部や核間反発エネルギーは解析的に計算すること は行なわずに、実験データやパラメーターを念んだ半経験的な評価によって、分 子構造や双極子モーメント、生成熱、第一イオン化ポテンシャルといった実験値 を再現するように決められる。以下にFock行列要素に現れる項についての計算方 法についてまとめておく。 g1』、hljという一中心電子間反発積分についてはMINDO/3と同じようにSlaterCondonのパラメーターを用いて次のように評価される。. (sいss)=(ss. l p。p。)=FO. (p、pいp6)j=Fo十(4/25)F2、 (spJspj=(1/3)GI、. (p、p。lpyp。)=Fo−(2/25)F2. (p。p。lp。p。)=(3/25)F2. FoはSlater軌道を用いて解析的に計算され、F2、GIは原子スペクトルの実験値か ら決められるSlater-Condonパラメーターである。 U11はINDO法やMINDO法とは異なり、パラ'メーターとして扱われている。 透過積分V1』、9や、校閲反発エネルギーEA8c°¨は以下のように扱われている。. VI」, I,=−Z8(iAjA E. ABCQre. fl(RA9). I. 日 S. S. 8〉. =ZAZ8(sAsA I ジss)十f1(RAs) =ZAZ9(sAsAl s%9)[exp(−αARA8)十exp(−α9RA9〉). ここでRAsは原子Aと原子Bの距離、αAは原子Aに固有な値でパラメーターとして. -. 14. −.

(19) 決められている。またN−H、O−Hの原子対についてのf1(RA8)は次のような式が用 いられている。 fl(RXH)=ZXZH(s゛s)(ls“sり[(RXH/Å)exp(−αXRXH)十exp(−αHRXH)] (X=N、○). 二中心一電子コアー共鳴積分βaについては次のように近似されている。. βa=[(βIA十β?)/2]Sa. β1Aは原子Aに属する原子軌道χ1に固有な値であり、パラメーターとして扱わ れている。窒素原子と酸素原子についてはs軌道とp軌道のβは同一な値として扱 われている。. βsx=βpx. (X=N、〇). またLCAOの基底関数に用いるSlater型軌道のs型とp型のごの値はそれぞれの原 子で同一にしてある。. ごj=ごj=ご゛. (X. -. C. N、〇). ご゛の値はパラメーターとして扱われ、原子ごとに最適化されている。 最後に二中心電子反発積分くij. l k1)の計算方法について説明を行なっておく。. IJ. II く. |. kl)=ydrldr2χ. i(1)χ」(1)(e. 2/r. 12)χこ(2)χ1(2). χl、χ」、χ、いχ1がSlater型関数の場合には、これまでに考案された解析的 な計算方法では時間がかかりすぎ、実用にならないというのが現状である。二 中心電子反発積分は原子A上の電荷分布eχlχ』と原子B上のeχりいの静電相互作 用エネルギーを表わしているが、古典的には二つの電荷分布の多極子モーメント. 15. −.

(20) MI。(1,mはそれぞれ多極子の次数,および方向を示す。)の相互作用の和に等し いと考えられる。そこでMNDO法では二中心電子反発積分を半経験的な多極子一多 極子相互作用[MAII。,M%2.]として近似している。. lj. 沓︱ ぐ. lkl)=ΣΣΣ[MA11.,M≒2.]. 半経験的多極子一多極子相互作用はRAs→・=・、RAs→Oの極限において正確に振る 舞うことが要求される。すなわちRA9→α・では相互作用の古典的な値に、RAE、→0 では一中心反発積分に相当する半経験値を再現する必要がある。 各多極子MI。は電荷の大きさがe/21で、電荷間の距離がDIの21個の点電荷の適 当な配置[MI。]によって表わされ、多極子一多極子相互作用[MAII。、Ms12.]は古典 的な点電荷間の相互作用の問題に帰着される。. 2.2.3. AM1法. MNDO法により半経験的分子軌道計算は大幅に改善され、パラメーターの最適化 に含まれなかった分子についても基底状態の全ての物理量が極めて良く再現され るようになった。とくにMINDO/3のよ、うな方法では孤立電子対間の反発を正しく 再現できなかったが、MNDO法ではこの点も含めて改善されている。. MNDO法の主な. 改良点は不飽和分子、隣接した孤立電子対を持つ化合物、結合角、分子軌道のエ ネルギー順序についての性能が向上したことである。しかしながら、実験結果の 再現性が乏しい例もある。例えば、水素結合の再現性があまり良くないことや、 立体的にこみいった分子のエネルギーを過大評価すること、四員環を含む分子の 安定性を過大評価すること、また活性化エネルギーを過大評価することなどがあ げられる。他の点として、共役分子の回転障壁を計算できないことが指摘されて いる。. このことはスチルベンやアソベンゼンで確かめられている。さらに7r電子. 共役系の計算を行なうと、平面構造ではなくねじれた構造を与えやすいというこ とも指摘されている。 Dewarたちはこのような欠点が一つの共通な理由、すなわち核間反発エネルギー. -. 16.

(21) を過大評価してしまう傾向かおる、ということに起因することを指摘した。そこ でDewarらはこの欠点を克服するために、校間反発の計算方法を改良することを 試み、この新しい近似方法をAM1法(Austin. Mode1. 1)と名付けた。. 前節で述べたように、MNDO法では校閲反発エネルギーEA8c°”は以下のような 近似を用いて計算されている。. E. ABcorc. =ZAZa(sAsAj. f1(RAs)=ZAZ8(sAsA. sgs9)十fl(RAs). l s%9)[exp(−αARA8)十exp(−αsRAs)]. fl(RXH)=ZXZH(s)(s列slisli)[(RXH/Å〉exp(−αXRXH)+exp(−αHRXH)]. (X=N、○). AM1法では以下のように表わされている。. E. A3core=ZAZ9(SASA. I SsS8)[1十F(A)十F(B)]. F(A)=exp(−αARA8)十ΣK. Alexp[L AI(RA13−M A、I)2]. F(B)==exp(−α8RA8)十ΣK. sjexp「L8バRAI、−. M 8」)2]. このような改良は二つの計略に基づいている。―つめは核間反発を過大に評価し ないために数個のガウス関数で展開すること。二つめは校閲距離の小さい領域で 反発効果の大きいガウス関数を導入することによって、校から遠く離れた領域に おいて、EA8・・'・に最も寄与するガウス関数による反発効果を小さくすることで ある。 他の積分等の近似方法についてはMNDO法を継承しているが、パラメーターの最 適化については再度行なわれている。. MNDO法とAM1法の計算結果を比べてみると、. 生成熱、双極子モーメント、第一イオン化ポテンシャル、反応の活性化エネルギー など全体的に大きく改善されている。例えばニトロベンゼンの最適化構造につい て比べてみると、MNDO法では酸素原子はオルトー水素原子との反発が大きく見積 もられ、ベンゼン平面にはのらないが、AM1法では平面構造をとる。. これはMNDO. 法で過大評価されていた校閲反発エネルギーがAMI法では改善されていることを. -. ロ. ー.

(22) 示している。またMNDO法では実験値に比べてかなり大きな活性化エネルギーを与 えていたが、AM1法では大幅に改善されている。これは立体反発の大きい遷移状 態での核間反発エネルギーが改善されていることに起因している。 以上にまとめたように、AM1法では計算時間を増大することなくMNDO法の欠点 を補い実験値を良く再現する方法であることがDewarらによって示された。. 2.3. 配薩閥相互作用(Configuration. lnteraetion:CI)の理論. 励起状態は基底状態と異なって、電子的に開設系であることが多く、スピン多 重度も一重項、三重項などがあり、励起状態を扱う理論は基底状態の場合に比べ て格段に複雑になり、定量的な計算を行なうことは非常に困難である。そこで、 本研究では励起状態の波動関数は電子相関を考慮した配置間相互作用の方法(C I法:Configuration. lnteraction. method)によって計算した。. HF法は電子が、ある平均場の中を互いに独立に運動するという描像に基づく一 体近似であり、一電子の座標のみを含む一電子軌道関数によってN電子波動関数 を近似している。. HF近似で得られる全エネルギー(E. Hr)と波動方程式を十分高い. 精度で解いて得られるエネルギーくE.。。。t)との差は相関エネルギー(E。。。。)と 呼ばれる。. Ecorr. 一 一. E exact ̄E. HF. 通常は、この相関エネルギーは全体の1S以下にすぎない。例えば、水分子の基 底状態の相関エネルギーはわずか0.5%である。. しかし、分子の状態間のエネルギー. 差や異性体間のエネルギー差といった小さなエネルギー差を問題とするときは、 この相関エネルギーは無視できなくなる。特に電子励起状態では相関エネルギー が大きくなるので、励起エネルギーの計算に際しては重要な問題となる。このよ うな相関エネルギーは一つの電子の運動は他の電子の運動の影響を受けることを 無視したことに起因している。つまり波動関数が多電子の相対位置に依存するの に、このことを無視した一電子の座標を含む関数を用いて波動関数を近似く独立. 18. −.

(23) 粒子模型)したことに原因がある。 このような電子が独立に軌道上を運勤しているという近似を改善するためには 電子間の衝突、つまり電子の動きの相関を考慮する必要かおる。電子相関を扱う 方法の一つとして変分法に基づくものがある。その中で最も代表的なのがCI法で ある。 CI法の基本的な考え方は波動関数をN電子試行関数(Slater行列式〉の線形 結 合によって表わし、線形変分法を用いるというものである。もし基底が完全系. であれば、系の基底状態の正確なエネルギーのみならず全ての励起状態の正確な エネルギーが求められるはずである。本研究ではこのCI法を用いて励起状態の波 動関数を求めたので以下にCI法の概要について述べる。 簡単化のために分子は偶数個の電子を持ち、第一近似としては閉殼制限つきHF 行列式|Ψo〉を仮定する。有限の基底関数系を用いてRoothaan方程式を解き、2K 個のスピン軌道け1}を得たとする。エネルギーの低いNイ[5]のスピン軌道から作ら れた行列式カリWo〉である。2K個のスピン軌道からは|Ψo〉の他に多くの異なる 組のN電子行列式を作ることができる。すなわち得られる行列式の組は|Ψo〉、 一電子励起行列式|ΨD(|Ψo〉の中のスピン軌道χ。をχ。で置き換えた行列式)、 二電子励起行列式|Ψa〉などからはじまって、N電子励起行列式まで含んでいる。 以下に示すように、これらの多電子励起行列式は正確な多電子波動関数|Φo〉の 展開の際の基底として用いることができる。. a〉+ΣΣΣ. 山. CO波動関数の形である。. ところが、全てのN電子励起行列. 式を考慮するとその数は莫大になるために、通常は何らかの工夫を行なって、そ の数を減らすことをする。例えば、多重度の異なる電子状態は混ざることがない のでSlater行列式の適当な線形結合をとることによって、スピン演算子s2の固有 関数であるスピン対称性を満足する電子配置をつくり、その配置を便って波動関 数をあらわすことを行なう。たとえば、一重項状態を扱う場合は試行関数には一 重項のスピン対称性を満足する配置のみを含めればよいことになる。. 19. Ψal〉十‥. ct くく. b5 くく Sr. ar. これが完全CI(Fu11. べ〉+ΣΣca四. C. =col軍o〉十Σcい. − tc sb ra. φo〉.

(24) このような試行関数が与えられると、線形変分法を便ってそれに対応するエネ ルギーを求めることができる。そのためには展開の各項に現れるN電子関数を基 底としてハミルトニアンHの表現行列をつくり、この行列の固有値を求めればよ い。その最低固有値は系の基底状態のエネルギーの上限を与える。それより高い 固有値はそれぞれの系の対応する励起エネルギーの上限となる。すなわち最低励 起一重項状態のエネルギーと波動関数を得たければ、一重項のスピン対称性を満 足する配置で展開を行ない、ハミルトニアンの表現行列を求めて対角化を行ない 二番目に低いエネルギーとそれに対応する固有状態が目的のものである。 ここで完全C1行列の構造を調べるために、上式の展開を形式的に. Ψo〉=C・|Ψo〉十Csl. と書き直してみる。. S〉+C. I, ID〉十CTI. T〉+C。IQ〉十・. ・. ・. IS〉は一電子励起を含む項を表わし、ID〉は二電子励起を. 含む項を表わす。この記法を用いると、完全C1行列は次のように表わされる。. く軍ol <SI. S〉 O. 〈Ψol㈲ΨJ〉. Ψ. ID〉 〈Ψol則. 〈SIHIS〉. ID. D〉. 〈SnlD〉. 0. ン ud tc 3. I. |. Ψ. Ψ a〉. |Ψo〉. ン tc 5b r&. D. 軍 ︱. |. IQ〉 0. 〈Sリド〉. 0. 〈DIHID〉〈DIHIT〉〈DIHIQ〉‥. くD. <T目口T〉. くT. くQ. くTIHIQ)‥ 〈QIHIQ〉‥. く駆. 図2.2. 完全C1行列の構造. 20. −. D. D〉. tc. 則. V詣こ〉 Ψ. <帽. IHI. 「 a. H. くΨ. −. D. I. HI. ib r&. <い. ●●. ●●. a●.

(25) 以下にC1行列要素について重要な点を挙げておく。 (a)Hartree-Fock基底状態と一電子励起状態はBrolouinの定理から、直接には 混ざらない。(<ΨolHIS〉=O) (b)スピン軌道が三つ以上異なるSlater行列式の間のハミルトニアンの行列要素 は全てゼロであることから|Ψo〉と三電子励起あるいは四電子励起との直接的な 結合はない。同様に一電子励起と四電子励起も混ざらない。 (c)一電子励起は|Ψo〉と直接には混ざらないから、基底状態のエネルギーには ごくわずかな影響しか与えないと考えることができる。. しかし、|Ψo〉と直接相. 互作用する二電子励起とは直接混ざってくるので、その影響はゼロではない。一 電子励起は、基底状態のエネルギーにはほとんど無視できる程度の効果しかもた らさないが、電荷分布のように一電子的性質の物理量には影響を与える。特に、 吸収スペクトルの計算では、一電子励起が主要な役割を担う。 (d)直接|Ψo〉と混ざるのは二電子励起だから、基底状態の相関エネルギーには 重要な役割を果たすことが考えられ、さらに三電子励起や一電子励起よりも四電 子励起のほうが重要である。 以上に述べたCI法は電子相関効果を取り入れ、一つの配置関数で表現できない ような電子状態を求めるのに有効な手段である。しかしSCF法の立場からは少し はずれた理論である。. CI法では変分パラメーターは単に配置関数の展開係数のみ. で、配置関数そのものを構成する基底軌道は固定したままである。展開係数ばか りでなく、軌道をも変分の対称にしようとする方法かおる。これが多配置(multi -configurational、MC)SCF法であり、いわばSCF法とCI法の組み合わせである。当 然のことながら、変分空間は広がり、CI法よりも波動関数の収束は速くなり、よ り少ない配置関数で高い精度が期待できる。ある意味で軌道理論の自然な拡張に 当たる。ただし、MCSCF法の最大の問題点は収束の困難さにある。すなわち通常 のHartree-Fock方程式の正準軌道は、被占軌道はMCSCF法のよい初期値であるが、 空位軌道は必ずしもそうではなく、このことがMCSCF法の悩みの一つになってい る。さらに基底軌道の数が多いと、かなり大次元の永年方程式を解かなければな らない。. 21.

(26) 4. 2. 励起状態のCI法. 励起状態のCI計算を行なうにあたり、配置関数の選び方によっていろいろなレ ベルの近似法がある。以下に最も代表的な三種類についての説明を述べる。 (a)完全原子価CI法: 分子軌道を“内殻¨ど原子価"にわけて、内殻MOには電子を二個ずつつめる。内 殻の電子はそのままにして、残りの電子(原子価電子)を原子価MOに分配して得る 全ての可能な電子配置(CSF;configuration. state. Fの組を使って行なうCIを完全原子価CI(full. function)を生成する。このCS. valence. CI、略してFVCI)と定義す. るc (b)一参照関数からの一、二電子励起によるCI法: 一個のCSFを参照関数として、そこからの一ないし二電子励起配置のみを用い るCIをSDSR-CI(single. and double. excitation. from. single. reference. functio. n)と呼ぶ。いま、HF波動関数Ψoを一方のCSFとして考えると、Ψ。と行列要素を もつのは、先に述べたように二電子励起CSFまでである。したがってHF波動関数 を参照配置として用いる場合にはCI波動関数としてΨoの他にすべての一及び二 電子励起CSFの一次結合で表わせば、電子相関エネルギーの大部分は求められる ことになる。一電子励起CSFとHF. CSF Ψoの間の行列要素はBrillouinの定理に. よってゼロとなるので一電子励起CSFは電子相関エネルギーにあまり寄与しない。 このSD-CI法は閉殻分子の電子相関エネルギーの計算の主流になっている。実際 には原子の内殻電子の励起の寄与は小さいので、CIには含めないfrozen 近似を用いることが多い。. core. SD-CI法は、基底状態における分子の異性体間、始原. 系・生成系間のエネルギー差、反応障壁の高さなどの計算に広く用いられている。 (c)多配置参照関数からの一、二電子励起によるCI法: 励起状態の第一近似として用いるSlater行列式は基底状態のような閉殻構造で はなく、例えばHOMO(最高枝占軌道)からLUMO(最低空軌道)に一電子励起した状態 であると考えられ、このような配置を親配置(parent. configuration〉と呼ぶこと. にすると、励起状態のSCF法で求めた配置が親配置として最適であり、励起状態 の電子相関にとって最も重要な配置はこの配置からの二電子励起配置である。普 通の励起状態では、親配置は基底状態からみると一電子励起配置にあたるので、. 22.

(27) ㎜'■■・I・■I. 親配置からの一電子励起、二電子励起配置は基底状態の配置からみると二電子、 三電子励起配置にあたることになる。. しかしながら、一般の励起状態では親配置. といえども一つの配置では近似しきれない場合が多い。このような場合を含める と、一般に励起状態の電子相関はいくつかの主配置をまず考え、この主配置から の一電子、二電子励起配置を含めることでおよそ記述できるものと考えられる。 このようなCI法をMR-SDCI法(Multi. reference. SD-CI)と呼ぶ。. このMR-CIの考え. 方は励起状態に限らず、基底状態の場合にも有効な考え方である。例えば、結合 の解離近辺のように一つのSlater行列式で表わせない場合、あるいは基底状態と いくつもの励起状態を同じ形の波動関数で同じ程度の精度で表わしたい場合に用 いられる。主配置の選び方としては、摂勅諭によってエネルギーに重要な寄与を する配置のみをCIに含めるといった配置の選択を行ない、残りの配置の寄与は外 挿あるいは摂動補正をするといった方法がとられる。 以上述べたようにCI法にはさまざまな近似法かおるが、比較的大きな分子の励 起状態の計算ではfu11. CI法を行なうことは、たとえ半経験的分子軌道計算を用. いても多大な計算時間を必要とし、実用的ではない。そこで本研究では励起分子 の構造最適化は半経験的分子軌道計算(AM1、MNDO法)のSDCI計算によって行ない、 励起エネルギーの計算には、最後に述べたMR-SDCI計算を用いた。これらの計算 結果については第三章で述べる。. 2.5. フロンティア軌道による励起分子構造論. 福井謙一博士らによってHOMO(最高枝占軌道)とLUMO(最低空軌道)が化学反応性 も含む分子の性質を支配する、というフロンティア軌道理論が提唱されたが、こ の方法によれば励起状態を非常に簡単な描像で表わすことができ便利である。 SI. とTIの電子状態は近似的に閉殼基底状態のHOMOからLUMOへのー電子遷移. によって記述することができる。この場合SI ものだけである。またR. とTIの違いはスピン配置による. '‘はLUMOに一電子加えた状態で、R. '゛はHOMOから一電子. 取り去った状態で、それぞれ記述することができる。このような電子励起状態や ラジカルイオンにおける構造の変化を考えてみる。それにはπ電子系分子のHOMO. 23. −.

(28) ・・’〃−’. とLUMOがどのようになっているかを把握する必要がある。交互炭化水素のHOMOと LUMOの形状は簡単なHuckel理論より導くことができる。すなわち化学構造式を書 いたときに二重結合の部分のHOMOは総合性に、LUMOは反統合性になっている。ま LUMOでは結合性になっていることが導か. た単結 合の部分はHOMOでは反総合性に. n. ab. この規則はHucke1分子軌道だけでな. ︱︱. もちろん. II. く. れる。. tio法で得られる. AM1やMNDO法といった半経験的分子軌道計算によって得られる分子. 分子軌道や. 軌道についても同様に成立する。このようなHOMOとLUMOの形状から励起状態やラ ジカルイオンの分子構造について考えてみる。 まずIIOMOから電子が一つ抜けるR. 二重結合に関して結合性で単結合に関して灰結合性の性格が薄れるた. すなわち. 想できる。次にR. ' ̄で. ” について考えてみる。LUMOに一つの電子が入ってくるR. °゛と同じように. 心、 口. 二重結合の部分が緩むとともに、単結合の部分の結. φ5 カ. はR. 単結合の部分が短かくなることが予. 二重結合の部分が長くなるとともに. めに. なる。. ことに. '゛ではHOMOの性格が多少薄れる. 強く. なり結合長は短かくなることが予想できる。励起状態の場合は一つの電子が抜け たり、加わるというラジカルイオンとは異なり、HOMOからLUMOへ一つの電子が遷 移した状態として考えられる。すなわちHOMOの性格が緩和されるとともにLUMOの 性格が入り込んでくるために、ラジカルイオンと比べて二重結合の部分はさらに 長くなり、単結合の部分はさらに短かくなると考えられる。 それではSI. とTIの分子構造の違いはどのように考えられるだろうか。そこ. で定性的な議論をするために みる。. π電子を二個持つ二原子分子ABについて考えて. また分子軌道としてはπ電子系のみを取り扱う単純Hucke1法を用いる。こ. のときπ分子軌道は結合性π軌道φlと反結合性π゛軌道φ2ができる。基底状態 では分子の波動関数はVgは 軍g=. φ1(1)φ1(2){α(1)β(2)−βく1)α(2)}/石. と表わされる。. ここで括弧のなかの数字は電子の番号を表わす。. φ1からφ2ヘー. 電子遷移した励起状態の電子配置は (φ1)1(φ2)1 である。. この電子配置に対応する分子全体の波動関数としては. 二通り、. スピン部分として四通り可能である。すなわち、. -. 24. −. 空間部分として.

(29) {φ. 空間部分:. {φ. α(. スピン部分:. 1(. 1). φ. 2(2 )十. φ2(1)φ1(2)}/√j. 1). φ. 2(2 )−. φ2(1)φ1(2)}/√j. (2. ). 1(. 1). α. β(1) β(2 ). け(1. )β( 2)+β(1)α(2)}/√i. {α(1. )β( 2)−β(1)α(2)}/√j. 分子全体の波動関数は、電子の交換について反対称でなければならないから 許される組み合わせは. 対称×反対称 {φ1(1)φ2(2)+φ2(1)φ1(2)}{α(1)β(2)−β(1)α(2)}/2. 反対称×対称 a. (1/4/て){φ1(1)φ2(2)−φ2(1)φ1(2)}×. (. β(. 1. )α(2). 1. )β(2). け(1)β(2)+βく1)α(2)}/√ミ. (反対称×対称)によって求められた波動関数では、スピン関数として三通りが 許される。分子のエネルギーは空間軌道によってのみ決まるのでこれらの状態は 同じエネルギーを持つ。すなわち状態が三重に縮重していることから三重項状態 と呼ぶ。. また(対称×反対称)から求められた波動関数は状態が一つしかないので. 一重項状態と呼ぶ。 つぎに励起状態の波動関数を原子軌道で展開することを考える。A原子に属す るπ軌道をχA、B原子に属するのをχ8とすると、. φ1=χA十χ5. φ2=χA-χS. 25. −.

(30) となる。これらを先に求めた励起一重項状態と励起三重項状態の空間部分に代入 するとそれぞれ次のようになる。. 励起一重項状態 {φl(1)φ2(2)+φ2(1)φ1(2)}/4/勺 y ̄j =けA(1)χA(2〉−χ8(1)χバ2)}/. 励起三重項状態 {φ1(1)φ2(2〉−φ2(1)φ1(2)}/昌. ={χs(1)χA(2〉−χA(1)χ8(2)}/4/ ̄i. すなわち、励起三重項状態の空間部分は同じスピンの電子のうちの一つがA原子 にいるときは、他の電子は必ずB原子にいることを表わしている。これをビラジ カル構造と呼ぶ。一方、励起一重項状態の空間部分は、二つの電子が対をつくり 一つの原子上に局在することを示している。その結果、A−B゛のように分極する ので、双性イオン構造と呼ぶ。すなわち、SI. とTIで同じLUMOに電子が遷移す. る場合でもSIは双性イオン構造をとり、TI. はビラジカル構造になることによ. り、化学反応性はもちろんのこと分子構造にも違いが生じてくる。. 表2.1. 励起状態およびラジカルイオンの結合長の比較. 長. C−C単結合. SO. C=C二重結合. SI. 短. <一一一一>. < ∼TI. ∼R. R. ’゛ < °’<. SI. 双性イオン構造. TI. ビラジカル構造. R ” ∼SI. R’゛く. 26. −. ∼T1 SO.

(31) −`・m ̄. しかし. このような考え方は交互炭化水素の励起状態を一電子励起の近似の範 その適用には注意が必要である。例えば近似的に一電. 囲内で表わすものであり. 子励起で表現できないような電子励起状態には適用してはならなt. ことを銘記す. べきである。またベンゾフェノンのように非結合性のn軌道から反結合性のπ*へ の遷移によるn-π゛励起状態の扱いは特に注意を要する。すなわちHOMOがn軌道に なっていなければn-π*状態として考えることはできない、ということである。 さらに分子軌道が縮退している場合にも適用すべきではない。例えばベンゼンの ようにHOMOとLUMOが縮退している場合がこのケースに当てはまる。また対称性に も気をつけるべきである。. HOMOからLUMOに一電子遷移した状態の波動関数の対称. 性はHOMOの表現とLUMOの表現の直積の表現になるが、目的とする励起状態がこの 対称性になっていない場合も考えられるからである。 このように励起状態の構造を推測する場合に、フロンティア軌道に基づく方法 は簡便ではあるが. その適用にあたっては細心の注意が必要である。. 27.

(32) W'㎜皿II・'.・.・・. [第二章の参考文献] 〈分子軌道法一般について〉 藤永. 茂:. 分子軌道法(岩波書店,1980). 米沢. 貞次郎,永田親義,加藤博史,今村詮,詰熊奎治. 三訂量子化学入門. (上),(下)(イヒ学同人,1983) A.Szabo,N.S.0stlund著大野公男,阪井健男,望月. 祐志訳:. 新しい量子化学(上),(下)(東京大学出版会,1988). 樋口. 治郎編:分子科学講座第2,5巻(共立出版,1986). H.F.Schaefer,Ⅲ(ed.):. Methods. of. Electronic. Structure. Theory. (Mod,Theoret.Chem.,Vol.3,Plenum,1977). H.F.Schaefer,Ⅲ(ed.):Applications. of Elcctronic Structurc Theory. (Mod.Theoret.Chem.,Vo1.4,Plenum,1977). く半経験的分子軌道計算についての総説〉. G.A.Segal(ed.):. Calculation(Part. Selielpirical. A:. Methods. of. Electronic. Structure. Teehniques,Mod.Theoret.CheL,Vol.7,. Plenum,1977). G.A.Segal(ed.):. Calculation(Part. Selielpirical. B:. Methods. of. Electronic. Structure. Applieations,Mod.Theoret.Chem.,Vol.8,. Plenu,H77). くMINDO/3,MNDO,AMI,PM3についての報文〉. R.C.Bingham,M.J.S.Dewar,D.H.Lo,J.Am.Chel.Soc.,!ヱ,1285(1974). M.J.S.Dewar,W.Thie1,」.A11.Chem.Soc.,U,4899,4907(1976). M.J.S.Dewar,W,Thiel,Theoret.Chim.Acta‥廷,89(1977). M.J.S.Dewar,E.G.Zoebisch,E.F.11ealy,J.」.P.Stewart.J.Am.Chel.Soc‥. 107,3902(1985). J.J.P.Stewart,J.Comput.Chem.,U,209(H89). −. 28. −.

(33) ・I.㎜●−. 第 三章. 3.1. MNDOC/MR-SDCI法による電子的励起状態の分子軌道計算. 序. 本研究では半経験的分子軌道計算にMR(Mul. ti reference)-SDCI法を組み込んだ. プログラムを独自に開発し、いろいろな分子について基底状態および励起状態に ついての励起エネルギーの計算を行ない実験結果との比較を行なった。励起状態 の励起エネルギーはレーザーフォトリシス法によって得ることができるが、過渡 共鳴ラマンスペクトルを測定する際には欠かせないものである。半経験的分子軌 道計算を用いた励起状態の励起エネルギーの計算例は非常に少なく、MR-SDCI法 を適用した例はなく、本研究が最初のものである。. 3.2. MR-SDCI法による分子軌道計算. まずπ電子系の種々の炭化水素についてSDCIとMR-SDCI計算を行ない励起エネ ルギーの計算を行なった。. MR-SDCI計算ではπ電子系の範囲内で数個の参照配置. を選んだ。その結果を表3.1に示す。. 29.

(34) 表3.1. MNDOC/SDCIおよびMR-SDCI法による基底状態の励起エネルギーI(ev). 分子名. アセチレン. Σu ̄. 6. 58. 6. 34. 5. 23. [1,2]. △a. 6. 79. 6. 43. 6. 7. [3]. 7. 03. 6. 7. 4. 7. 65. [4]. 5. 80. 5. 4. 1. 6. 4. 5. [5]. 6. 39. 6. 00. 7. 1. 9. [5]. Ag. 4. 90. 4. 87. 5. 80. [6]. Bu. 5. 68. 5. 55. 5. 9. [6]. 7. 50. 7. 0. 6. 7. 28. [7]. B2. 4. 6. 4. 5. 8. 5. 20. [8]. AI. 7. 46. 6. 87. 7. 9. 0. [8]. B2. 3. 26. 3. 05. 3. 4. 4. [9,10]. AI. 5. 3. 5. 5. 1. 3. 5. 2. 8. [9,10]. 3. 6. 1. 3. 3. 6. 4. 89. [11]. 5. 0. 3. 4. 9. 1. 6. 20. [11]. 6. 5. 0. 6. 09. 6. 95. [11]. エチレン. B. シクロプロペン. A2. lu. B2. レブタジェン. Ref. Exp. MR−SDCI. SDCI. 対称性. Ag. 1. 2. シクロペンタジエン. フルベン. ベンゼン. B. 2u. B lu. E. lu. 5. 以上の計算結果を実験値と比較するとMRの効果は見られず、平均的にはむしろ SDCIの方が良い結果を与えている。そこで次にヘテロ原子を含むπ電子系や比較 的大きな分子について同様な計算を行なった。. 30. −.

(35) 表3.2. MNDOC/SDCIおよびMR-SDCI法による基底状態の励起エネルギーH(ev). 分子名. 対称性. MR−SDCI. SDCI. Ref. Exp. ホルムアルデヒド 3. 1. 9. 2. 99. 4. 20. [12]. 6. 1. 4. 5. 67. 5. 83. [4]. 7. 9. 5. 7. 5. 8. 3. [4]. B2. 5. 98. 5. 74. 5. 9. [4]. A1. 6. 88. 6. 4. 6. 5. [4]. A1. 7. 86. 7. 65. 7. 4. [4]. ジイミン. Bg. 2. 8. 1. 2. 57. 3. 5. ピロール. B2. 4. 9. 0. 4. 7. 5. 7. [13]. AI. 6. 1. 3. 5. 76. 6. 5. [13]. 6. 45. 6. 2. 7. 1. [13]. B1. 3. 7. 3. 56. 4. 3. [14]. B2. 4. 50. 4. 23. 4. 7. [14]. A1. 6. 6. 1. 6. 1. A2 A. 蟻酸 A. フラン. B2. ピ. リジン. 5. 8. 9. -. 31. −. 1. 2. 9. 5. 6. 1. 5. 6. [4]. [14].

(36) 匹-y・. 表3.3. MNDOC/SDCIおよびMR-SDCI法による基底状態 の励起エネルギーm(ev). SDCI. 対称性. 分子名. DBCH−5−o1. ビフェニル. B. 2u. B lu. B lu. B. t. スチルベン. 2u. Bu. AI. Ag. BU. 平均誤差. 20. 4. 43. 5. 2. 5. 64. 94. 4. 40. 4. 53. 4. 9. 5. 4. 4. 4. 9. 5. 6. 5. 8. 5. 83. 5. 7. 3. 6. 87. 6. 1. 6. 9. 6. 4. 7. 7. 4. 06. 4. 2. 1. 5. 4. 0. 4. 76. 5. 08. 5. 64. 4. 95. 5. 4. 3. 6. 1. 9. 5. 50. 6. 1. 5. 0. 3. 2. 0. 4. 4. 85. 5. 9. 4. 4. 1. SDCI. 0. 66. 0. 85. π電子数≧4. 0. 49. 0. 55 0. 果は見られない。 ているが. テロ. 7. 9. 2. MNDOC/PERTCI[15]LNDO/S. MR一SDCI. π電子数く4. のへ. 2. 基底状態の励起エネルギーの平均誤差くev). 表3.4. これら. Exp. MR-SDCI. 9. 4. PERTCI[16]. 0. 2. 2. 原子を含むπ共役系分子や比較的大きな分子においてもMRの効 SDCI計算の結果は実験値に比べてほとんどの場合過少評価され. MR-SDCI計算によってさらに小さくなっている。. -. 32. −. MRによって励起エネ.

(37) -. ルギーが小さくなるのは、配置関数の数が増えることに起因すると考えられる。 このように励起エネルギーの絶対値は実験値に比べて、かなり過少評価されて いるが、励起状態の対称性と順位についてはSDCI、MR-SDCI計算でともに実験結 果を良く再現しており、定性的な議論については十分に有効であると考えられる。 元来MNDO法は基底状態の物理量を再現する目的でパラメーターが設定されている ために、基底状態の励起エネルギーの計算のために考案されたCNDO/S、INDO/Sや LNDO/S法に比べて励起エネルギーの絶対値の再現性が劣るのは仕方ないことと考 えられる。 次に最低励起三重項状態(TI〉やラジカルカチオン(R’勺のような励起分子種 についての励起エネルギーの計算を行なった。励起分子種の過渡共鳴ラマンスペ クトルを測定するためには、基底状態ではなく励起分子種の吸収スペクトルを知 る必要かおる。励起分子種の過渡吸収スペクトルはレーザーフォトリンスにより 測定することができ、多くの分子について測定されている。そこで本研究ではMN DOC/SDCI計算を用いてDBCH-5-o1(5H-Dibざnzo[a、d]cyclohepten-5-o1 照)のTI. ; 第六章参. およびR¨の構造最適化を行ない、その構造を用いてMNDOC/SD-CI計算. を行なった。さらに励起分子のCI計算におけるMRの効果についての検討を行なっ た。 表3.5にはDBCH-5-olのTIのMNDOC/SDCIによる励起エネルギーの計算結果を示 す。. このように大きな分子のSDCI計算では全ての分子軌道を取り入れることはで. きないのでHOMO・LUMO近辺でいくつかの軌道の範囲内でのCI計算を行なった。計 算方法のSDCI(mxn)の記述は、占有軌道m個、非占有軌道n個の範囲内でのCI計算 を表わす。このような枠をウィンドウと呼ぶ。. -. 33. −.

(38) 表3.5. MNDOC/SDCI計算によるDBCH-5-o1のTIの励起エネルギー (TI. 計算方法. −T。吸収). 配置関数の数. 励起エネルギー[nm]. 振動子強度. SDCI(5×3)’. 235. 367. ().61. SDCI(6×4). 561. 357. ().57. SDCI(7×5). 1141. 340. 0.45. SDCI(8×6). 2080. 340. 0.44. SDCI(9×7). 3501. 341. 0.45. 420. Exp.[17]. ^(mxn)は被占軌道m個、空軌道n個の軌道内(ウィンドウ)でのCI計算を表わす。. ウィンドウが(7×5)から(9×7)までの間では、配置関数の数は1141個から3501 個に増えるが励起エネルギー、および振動子強度はほとんど変化していない。こ れ以上ウィンドウを広げてもこれらの値は変化しないと考えられる。すなわちSD CI計算の収束値が340nmであることを意味している。そこでウィンドウを(5×3) に固定してMR-SDCI計算を行なった。参照配置としてSDCI計算の結果を参考にし てCIの係数が大きい一電子および二電子励起配置を選び、三個から七個まで増や した。結果を表3.6に示す。. 34. −.

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