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Imi bunseki yarimashita

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Academic year: 2021

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract. Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 意味分析やりました 重松淳日本語教育研究会(Shigematsu Jun Nihongo kyoiku kenkyukai) 慶應義塾大学湘南藤沢学会 2010 リサーチメモ 重松研は日本語の言葉の微妙な差異を考えまとめることを「意味分析」と呼び、「模擬授業」を 補完する意味合いも含め、研究会のもう一つのテーマとして活動してきた。重松研究会発足から 約20年、歴代研究生が調査し、蓄積されてきたその「意味分析」をまとめたものである。 重松淳研究会二十周年記念 Technical Report http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=0302-0000-0645.

(2) ISBN 978-4-87762-230-5 SFC-RM 2009-003. ワ η. た ..

(3) は じめ に 私 た ち 重 松 研 究 会 は 直 接 法 に よ っ て 、 外 国 人 に 日本 語 を 教 え る こ と を研 究 して き た 。 直 接 法 とは 学 習 者 の 母 語 や 英 語 の よ う な 媒 介 語 を 使 わ ず に 、 そ の 習 得 目標 言 語 だ け で 教 授 す る 言 語 教 育 法 で あ る 。 母 語 を 介 す る 一 般 的 な 教 授 法 よ り も身 ぶ りや ア イ コ ン タ ク トを 多 用 し 、 学 習 者 自身 の 理 解 や 気 づ き を 基 に 授 業 が 展 開 す る ア ク テ ィ ブ な 言 語 教 育 で あ る 。 重 松 研 は この 直 接 法 を 学 生 同 士 あ る い は 実 際 の 留 学 生 に 対 して 「 模 擬授 業 」 を行 う こと が 主 な 研 究 だ っ た 。 と こ ろ が 、 模 擬 授 業 を 行 っ て み る と普 段 な に げ な く使 っ て い る 日本 語 の ち ょ っ と した 部 分 が 学 生 に 説 明 で き な い と い う状 況 に 何 度 と な く立 た さ れ た 。 そ れ は 日 本 語 独 特 の 感 覚 に よ る も の で あ り、 ネ イ テ ィ ブ の 我 々 が 意 識 し て 考 え た こ と が な い よ うな 言 葉 の微 妙な 差 異だ った。 重 松 研 は こ の よ うな 日本 語 の 言 葉 の微 妙 な 差 異 を考 え ま と め る こ と を 「 意味 分析 」 と呼 び、 「 模 擬 授 業 」 を 補 完 す る 意 味 合 い も含 め 、 研 究 会 の も う一 つ の テ ー マ と して 活 動 して き た 。 本 書 は 研 究 会 発 足 か ら約20年. 、 歴 代 の 研 究 生 が 調 査 し、 蓄 積 され て き た そ の 「 意味 分. 析 」 を ま とめ た も の で あ る 。 意 味 分 析 は 次 の 手 順 で 行 わ れ る 事 を原 則 と した 。① 三 省 堂 新 明 解 国 語 辞 典 で 題 目 の 各 言 葉 の 意 味 を 調 べ る。 ② 数 多 く の 用 例 を書 き だ し、 代 表 的 な 用 例 を 精 選 す る 。 ③ 用 例 を 基 に い く つ か の 視 点 に 分 割 して 考 察 す る 。 ④ 考 察 を ま とめ る。 ⑤ 日本 語 教 育 の 視 点 か ら題 目 に 対 して 、 推 奨 す る教 育 手 順 を 紹 介 す る。 尚 、 い く つ か の 題 目 に 関 し て は 、 題 目へ の よ り適 当 な ア プ ロー チ あ る い は研 究 者 の 都 合 上 、 原 則 どお りで は な い も の が あ る が 、 ご理 解 頂 き た い 。. 編集長. 1. 四元憲太郎.

(4) 名詞 4. 01-気. 持 ち ・気 分. 02-文. 明 ・文 化. 03-付. 近 ・近 く ・近 所. 04-次. 78. 80. 目次. 10. 05-∼(と. ・今 度 い う)も の. 13 ・∼(と. い う)こ と. 16. 06-楽. し さ ・楽 しみ 、 悲 し さ ・悲 し み. 21. 07-ゆ. が み ・ひ ず み. 28. 08-思. う ・考 え る. 31. 09-走. る ・駆 け る. 34. 10-ひ. が む ・そ ね む ・ね た む. 37. 11-煮. る ・炊 く ・ゆ で る ・ゆ が く. 40. 12-濡. ら す ・浸 す ・漬 け る. 43. 13-冷. え る ・冷 め る. 45. 14-過. ご す ・暮 ら す. 4.7. 15-帰. る ・戻 る. 49. 16-見. る ・見 え る 、 聞 く ・聞 こ え る. 52. 17-足. す ・加 え る. 56. 18-た. わ む ・し な る. 59. わ い い ・か わ い ら し い. 62. 動詞. 形容詞 19-か 20-∼(し 21-危. な け れ ば)い け な い ・∼(し な け れ ば)な ら な い な い ・危 う い. 65 67. 副 詞 ・形 動 ・助 詞 ・助 動 詞 22-う. ち に ・間 に. 74. 23-か. ら ・の で. 74. 24-な. ぜ ・ど う し て. 77. 25-ゆ. っ く り ・ゆ っ た り ・の ん び り. 26-全. 然 ・ま っ た く. 84. 27-意. 外 に ・結 構 ・割 に. 90 2.

(5) 2 一 q畠. ぐ に ・ま も な く ・や が て. 29-∼. して いた だ け ます か ・∼ して いた だ け ま せ ん か. 30-人. 称 代 名詞. 31-ら. し い ・よ う だ. 7乙 9 漸. 28-す. そ ちら・ あな た・あ んた・きみ・お たく・お まえ・てめ え・きさ ま. 103 107,. 付録(漢 字の使い分 け) 32-と. る. U1. 33-ひ. く. 114. 3.

(6) 気 持 ち ・気 分 ■辞 書記載 の意味(三 省堂. 新 明解 国語辞典. 第 六版). 『気 持 ち 』 ① 何 か を 見 た り 、 聞 い た り、 そ こ に 身 を 置 い た りす る こ と に よ って そ の 人 が 感 じ る 、 快 ・ 不 快 、 好 き ・嫌 い な ど。(ち ょ っ と し た 刺 激 で 変 わ りや す い) ②(副 詞 的 に)わ ず か に 感 じ られ る 程 度 で あ る 様 子 。. 『気 分 』 ① そ の 人 が そ の 時 々 に 持 つ 、 快 ・不 快 な ど の 総 合 的 な 心 の 状 態 。 ② そ の 環 境 に 身 を お い て い る 人 た ち が 一 斉 に か も し 出 す 、 一 種 の 興 奮 した 精 神 状 態 。 雰 囲 気。. 辞 書記 載 の意 味か ら 「 気 持 ち 」 は よ り個 人 的 、 「 気 分 」 は個 人 的 な もの も含 む が 集 団 的 な 要 素 も 持 っ て い る と 思 わ れ る。 ま た 「 気 分」 は あ る時 点で の総 合 的な 心 の状 態で あ る の に 対 し、 「 気 持 ち 」 は 一 瞬 一 瞬 に お け る 、 ま た はな にか ひ とつ の 物 事 に対 す る 個 人 の 感 情 で あ る。. ■用例分析 1気持 ち の み 使 え る 場 合1 ・他 人 の 気 持 ち を尊 重 ・気 持 ち を こめ る ・気 持 ち が 伝 わ ら な い (・ 気 持 ち右 に寄 せ る). 医 分のみ使える場合1 ・気 分 転 換 を す る ・気 分 屋 ・気 分 を 害 さ れ た ・お 祭 り気 分. C方 使える場合1 ・気 持 ちが悪 い/気分 が悪 い ・愉 快な気 持 ち/愉快 な気 分 ・気 持 ち 次 第/気 分 次 第 ・気 持 ち が 盛 り上 が る/気 分 が 盛 り上 が る. 4.

(7) -考 察 1視点 ① 一 時 的 な ニ ュ ア ン ス の 有 無1 「 気 持 ち」 と 「 気 分 」 の 使 い 分 け の ポ イ ン トの 一 つ は 変 化 の しや す さ の 度 合 で あ る と 考 え られ る 。 辞 書 に は、 「 気 持 ち 」 の 方 に 『ち ょっ と した 刺 激 で 変 わ りや す い 』 と補 足 が 書 か れ て い た が 、例 文 や 過 去 の 意 味 分 析 を検 証 す る と、ど うや らち ょ っ と した 刺 激 で 変 わ りや す い の は 、 気 持 ち で は な く気 分 の よ う に思 わ れ る 。 そ れ は 、 「 気 分 屋 」 「お 祭 り気 分 」 な ど の 用 例 か ら も見 て 取 れ る よ う に 、 私 た ち は 「気 分 」 を 変 化 しや す く一 時 的 で あ る 状 態 の 時 に 使 う こ と が 多 い。 一 方 で 「 気持 ち」 に は一 時 的な ニ ュア ンス は な い。 「 気 持 ち を込 め る」 「 気持ちを 尊 重 す る」 で 「 気 分」 を使 う ことがで きな いの は、 厂 気分 」 にあ る一 時的 なニ ュ ア ンス が 、 継 続 的な 行為 で あ る 「 込 め る」 や 「 尊 重 す る 」 に そ ぐわ な い か らで あ る 。. 1視点②語感の差劉 視 点 ① に 関 連 して 、 そ れ ぞ れ の こ と ば が 表 わ せ る範 囲 に も違 い を 見 る こ と が で き る 。 「 気 分 」 の 辞 書 記 載 の 意 味 に は"雰 囲 気"を 含 ん で い る 。 「町 全 体 が お祭 り気 分 に 包 ま れ て い る」 とい う言 い 方 が 存 在 す る こ とか ら も 、 「 気分 」 が個 人 を離れ て集 団やそ の 場 の様子 を表 わ す こ とが で き る とわ か る 。 「 気 分 転 換 をす る」 「 気 分 を害 さ れ る 」 は 「気 持 ち 」 を用 いると 「 気 持 ち を 切 り替 え る」 「 気 持 ち を 傷 つ け られ る 」 な ど と言 い 換 え る こ と が で き る 。 しか し 「 気 持 ち」 は 「 気 分 」 に 比 べ て よ り個 人 的 な も の で あ り、 心 的 要 因 が 大 き く影 響 す る た め に 、 そ れ を"変. え る""変. え させ る"と. い う意 味 の 文 章 を見 た と き 、 「 気 持 ち 」 を使. っ た 例 文 の 方 に よ り深 刻 な 印 象 を 受 け る の で あ る 。 一 方 「 気 分 」 の ほ う で は 同 じ く心 の 状 況 が変 化 す るの で あるが 、比 較的 軽 い、表 面的 な表現 とな る。. ■ ま とめ ← 気 分(雰 囲 気). 心. ← 気 分(表 面) E-一. ∫()●(XXう. く●c(x⊃. 図の よ う に、 「 気 分 」 は"雰 囲 気"と. ← 気 持 ち(奥) 一. い う意 味 も持 つ こ と か ら、 よ り周 囲 の 影 響 を 強 く受. けや す い表面 的 な もので あ る。 「 気 持 ち」 は 「 気 分 」 の 基 に な っ て い て 、 よ り個 人 的 で 心 の 深 層 部 に あ る こ とか ら継 続 的 に 続 く も の で あ る と 考 え られ る 。 「 気 持 ち」 と 「 気分 」 は連 動 す る が 、 気 持 ち が 動 く と そ れ と共 に 気 分 も 動 くが 、 気 分 が 変 わ っ た か ら と い っ て 必 ず し も 気 持 ち が そ れ と共 に変 化 す る とは 限 らな い。. 5.

(8) ■ 日本 語 教 育 の 視 点 か ら 「 気分」 と 「 気 持 ち 」 は ど ち ら も使 用 頻 度 が 高 い の で 、 初 級 学 習 者 で も使 い 分 け が で き るよ うにな る必 要 が あ る。① 心 の 中 にお いて 「 気 分」 と 「 気 持 ち 」 は 表 面 とそ の 奥 に あ る 関 係 で ある こと、②. 「 気 分 」 は 個 人 を離 れ 、 集 団 や 場 所 の 雰 囲 気 も 表 現 で き る こ と 、 を 教. え 二 つ の 関 係 を 理 解 して も ら う の が 良 い 。 そ の 上 で 学 習 者 が 表 現 した い こ とが ら に 合 わ せ て 適 切 に使 い 分 け が で き る よ う 、 た く さ ん の 例 文 を 出 し な が ら練 習 して い け ば だ ん だ ん 身 に つ け られ る の で は な い か と思 う。. 執筆者 赤間千恵子 編集者 庄司由香里. 6.

(9) 文 明 ・文 化 ■辞 書記載 の意味(三 省堂. 新 明解 国語辞典. 第 六版). 「 文 明」 農 耕 ・牧 畜 に よ っ て 生 産 した もの を お もな 食 料 と し、 種 種 の 専 門 職 に従 事 す る 人 々 が 集 ま っ て 形 成 す る 都 市 を 中 心 に 整 然 と組 織 さ れ た 社 会 の 状 態 。[通 常 、 狭 義 の 文 化[[二精 神 文 化 】 】 を 伴 う。 狭 義 で は 、 そ の よ う な 社 会 が 、 さ ら に 発 展 し、 特 に技 術 の 水 準 が 著 し く向 上 した 状 態 を指 す 。 そ う した 技 術 の体 系(所 産)と. い う意 味 で も用 い られ 、 精 神 文 化(の 所 産). と 対 比 さ れ る 。 ま た 、 技 術 面 ・物 質 面 の み が 発 達 した こ と を強 調 す る た め に 、 「 技術 文 明 ・ 物 質 文 明 」 と表 現 す る こ とが あ る 。]. 「 文化 」 そ の 人 間 集 団 の 構 成 員 に 共 通 の 価 値 観 を反 映 した 、物 心 両 面 に わ た る活 動 の 様 式(の 総 体)。 ま た 、 そ れ に よ っ て 創 り 出 さ れ た も の 。[た だ し、 生 物 的 本 能 に基 づ く もの は 除 外 す る 。 狭 義 で は 、 生産 活 動 と必 ず し も直 結 し な い形 で 真 善 美 を追 及 した り獲 得 した 知 恵 ・知 識 を伝 達 した り人 の 心 に感 動 を 与 え た りす る 高 度 の 精 神 活 動 に つ い て 言 う。 こ の 場 合 は 、 政 治 ・ 経 済 ・軍 事 ・技 術 な ど の 領 域 と対 比 さ れ 、 そ の こ と を 強 調 す る た め に 「 精 神 文化」 と い う こ とが あ る 。 ま た もっ と も広 い用 法 で は 、 芋 を 洗 っ て 食 べ た り温 泉 に 入 る こ と を覚 え た サ ル の 群 れ な ど 、 高 等 動 物 の集 団 が 特 定 の 生 活 様 式 を 見 に つ け る に 至 っ た 場 合 を も含 め る 。 】. ■用例分析 1両方使 える場合文化人/文明人 異文化/異文明 西洋文化/西洋文明 文化発祥の地/文明発祥の地. 1文化 のみ使える場合1 文化財 文化的な生活を送る 文化生活. 文化遺産. 文化施設. 異文化交流. 食文化. 文化社会. 隣村 とは文化が違 う. 7.

(10) 1文明 の み 使 え る 場 合i. 文明の利器. 文明時代. 文明国家. ■考 察 1視点①物質の 「 文明」 と精神の 「 文化爿 「文 明 」 は 端 的 に 言 え ば 技 術 で あ る 。 技 術 は 伝 達 可 能 な 為 、 た と え 民 族 や 国 が 違 お う と も 共有 す る ことが でき る。一 方、 「 文 化 」 は 民 族 や 社 会 の 風 習 ・伝 統 ・思 考 方 法 ・価 値 観 な ど の 総 称 で 、 精 神 的 な も の で あ り、 民族 や 国 が 違 う と価 値 観 は 共 有 さ れ な い 。 「文 明 」 は 発 達 す る と い う こ と に 重 点 が 置 か れ て い る と考 え られ る 。 文 明 の 利 器 と い う 言 葉 が 象 徴 して い る よ う に 、 もの が 発 達 し社 会 が 豊 か にな っ て い く こ と を示 す か ら、 人 々 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 支 え る と い う よ り、 人 類 は 普 遍 的 な も の を意 味 して い る の で は な い か と考 え られ る 。一 方 、「 文 化 」は 、異 な る も の が あ る と い う こ と を 前 提 と し て い る。さ ら に 、 そ れ ぞ れ の 文 化 に属 す る こ とで 成 立 す る ア イ デ ン テ ィテ ィ を 生 み 出 す 。 そ れ 故 、 異 文 化 交 流 、 異 文 化 理 解 と い う言 葉 が 生 ま れ 、 また 自 国 の 文 化 を 守 ろ う と い う考 え が 生 まれ る の だ と 考 え られ る 。. 1視点②地域 と時固 「文 明 」 は歴 史 的 に 長 い ス パ ンで 進 化 を 遂 げ て あ る 程 度 の 地 域 的 な 広 が りを 持 つ に 至 っ た も の を言 う が 、 「 文 化 」 は 生 ま れ て 定 着 す る ス パ ンが 「 文 明 」 よ り短 く 、 ま た 地 域 的 広 が り も大 小 あ る 。. 閥 点③進歩するかどうか1 「 文 明」 は物 質的 な もの、 「 文 化 」 は 精 神 的 な も の と い う対 比 が し っ く り く る 。 「文 明 」 は 技 術 だ か ら、 時 と と も に 進 歩 す る 。 「文 化 」 は 変 化 こそ す る が 、 進 歩 は しな い。 精 神 的 所 産 に つ い て 進 歩 と い う 表 現 が 適 当 で はな い か らで あ る 。. 1視点④単語 としての使用頻閔 「文 化 」 と い う単 語 は 日常 会 話 で の 汎 用 性 が 非 常 に 高 い 。 対 して 「 文 明」 と い う単 語 は 歴 史 的 、 学 術 的 な 内 容 の 会 話 で 使 わ れ る こ と が 多 い が 、 日常 会 話 で は 「 文化 」 とい う単語 に置 き換 え られて使 われ て い るケー ス もあ るよ うに思わ れ る。そ れ は 「 文化 」 が 「 文 明」 よ り も 広 い 意 味 を持 つ か ら で あ る 。 原 義 は 視 点① の よ う に 技 術 の 「 文 明 」、 精 神 の 「 文 化」 で あ る が 、 い ち い ち 原 義 を意 識 して 使 わ な い の で 、 日常 的 な 意 味 で は 「 文 化 」 が 「文 明 」 の 意 味 を 少 な か らず含 ん で い る。. 8.

(11) ■ ま とめ 「 文 化 」 は 精 神 的 、 厂文 明 」 は 物 質 的 な 側 面 を 表 現 す る こ と に特 徴 が あ る 。 「 文 化 」 は 短 期 的 に 生 まれ 、 変 化 す るが 、 「 文 明 」 は 長 期 的 に育 ち 、 進 歩 す る。 「 文 化 」 の 方 が 単 語 と して 、 「文 明 」 よ り も使 用 頻 度 、 範 囲 が 広 い 。. ■ 日本 語 教 育 の 視 点 か ら 「文 化 」 と 「 文 明 」 と い う言 葉 は 、 日本 語 の 定 義 上 意 味 わ け が 非 常 に 難 しい 言 葉 で あ る 。 特に 「 文 化 」 と い う言 葉 に 関 して は 使 用 頻 度 も 高 いた め 、 理 解 して お く必 要 が あ る。 理 解 の た め の 手 順 と して は 、 「文 化 は 精 神 的 な もの を 示 し、 文 明 は物 質 的 な こ と を 示 す 」 と い う 説 明 を す る。 そ れ か ら2つ の 定 義 に つ い て 説 明 を して い く。 ①. 技 術 の文 明、 精神 の文化. ②. ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー と普 遍 性. これ ら に対 す る 言 葉 に具 体 的 な 例 を 出 し な が ら、 使 い 方 の 説 明 を して い く こ とが 良 い だ ろ う。. 執筆者 小林惇子 編集者 四元憲太郎. 9.

(12) 付 近 ・近 く ・近 所. ■辞書記載 の意 味(三省堂. 新明解 国語辞典. 第 六版). 【 付近】 (そ の 場 所 お よ び 、 そ の)近 く。 あ た り。 「こ の 付 近/東 ([表記]. 京 付近」. 「 附 近 」 と も 書 く). 【 近 く】 ①. 近 い所。 「近 くが 火 事 だ/近. ②. くの家」. 現 時 点 か ら 日時 の あ ま り経 過 しな い う ち に何 か が 行 わ れ る 様 子 。 「 近 く行 わ れ る 会 議 で 決 ま る だ ろ う/近. く決 行 す る」. 【 近所】 隣 合 わ せ と言 っ て も い い く らい 、 そ の 家(場 所)か ら近 い 所 。 「 娘 は 近 所 の 子 と学 校 へ/ビ. ル が 爆 破 さ れ 、 近 所 の 建 物 の 窓 ガ ラ ス が 壊 れ た/. 江 戸 庶 民 の 生 活 は 多 く長 屋 同士 の 近 所 づ き あ い を も と に 営 まれ て いた/ 自家 用 車 で の 深 夜 の 帰 宅 は 近 所 迷 惑 だ と の 声 も あ る」. -用. 例分析. 1).ど. れ で も使 え る 場 合. ・家 の 付 近/家. の 近 く/家 の 近 所. ・付 近 の コ ン ビニ/近. ID.ど. れ か1つ. く の コ ン ビニ/近. 所 の コ ン ビニ. が使 えな い場 合. ・α館 は メ デ ィ ア セ ン タ ー の(付 近 ○/近 ・トイ レは1階. の 出 口 の(付 近 ○/近. 皿).ど れ か1つ. しか 使 え な い場 合. ・近 く試 験 を 行 う○/付. く○/近. く○/近. 所 ×)に あ りま す 。. 所 ×)にあ り ま す 。. 近 試 験 を 行 う ×/近 所 試 験 を行 う ×(近 くの ② の 意 味 で 用 い る と き). ・近 所 づ き あ い 、 近 所 迷 惑 、 ご近 所 さ ん ○ 近 くづ き あ い 、 近 く迷 惑 、 ご近 く さ ん ×. (慣用 的 な 用 い 方 を す る 場 合). 付 近 づ き あ い 、 付 近 迷 惑 、 ご付 近 さ ん ×. 10.

(13) ・Q:「A君 A=「A君. は ど こ に い ま す か?」 はB先. 生 の近 く に い ま す 」 ○. 「A君 はB先. 生 の 付 近 に い ます 」 ×. 「A君 はB先. 生 の 近 所 に い ます 」 ×. ■考 察 i視点①距離による使い分け1 「あ る 場 所 に 近 い所 」 の 意 味 で 用 い る 場 合 を考 え て み る 。 そ れ ぞ れ で や や ニ ュ ア ンス が 異 な る。 ・駅 の 付 近 に お い し い お 店 が あ る 。 ・駅 の 近 く に お い し い お 店 が あ る 。 ・駅 の 近 所 に お い し い お 店 が あ る 。 こ の3つ. の 文 を み て み る と、 辞 書 的 意 味 に も あ る とお り 【 近所 】を用 いる場合 、駅 の か. な り近 い 所 に店 が あ る よ う に感 じ られ る。 【 近 く】 を 使 用 す る 場 合 【 近 所 】 ほ どで は な いが 「 駅 か ら徒 歩 数 分 」 と い っ た 、 歩 い て す ぐな どの イ メ ー ジ が 持 て る ほ ど の 近 さ に店 が あ る よ う に感 じ られ る。 これ ら と比 べ て 【 付 近 】を 用 い た 場 合 、近 い に して もそ の 範 囲 が 広 い 、 あ る い は 範 囲 が 曖 昧 な よ う に感 じ られ る 。. 1視点②汎用性一 【 付 近 】や. 【 近 所 】 は 用 例 分 析Hや. 皿 の よ うに 、 文 脈 に よ っ て は 使 えな い場 合 が あ る 。. ・α館 は メ デ ィ ア セ ン タ ー の(付近 ○/近 ・ トイ レ は1階 の 出 口 の(付近 ○/近. く○/近 所 ×)に あ りま す 。. く○/近 所 ×)に あ りま す 。. 【 近 所 】 は 主 語 と 目的 語 が 別 々 の 母 体 に属 す る 建 物 、 あ る い は場 所 で あ る こ と を条 件 と して 用 い る。 α館 と メ デ ィ アセ ン タ ー は 同 じ慶 応 大 学 湘 南 藤 沢 キ ャ ンパ ス と い う母 体 に 属 す る 建 物 で あ る。 ま た 、 トイ レは そ の 建 物 の1階 の フ ロ ア で あ るか ら、 共 通 の 母 体 に 属 し て い る。 よ っ て 【 近 所 】 を 用 い る こ とが で き な い 。. A:「A君. はB先. 生の 近 くに います」 ○. 「A君 はB先. 生の付 近 にい ます」 ×. 「A君 はB先. 生の近 所 にい ます」 ×. 【 近 く 】 は 主 語 や 目 的 語 を 、 人 や 物 事 、 場 所 も と る こ とが で き る 。 【 付近】と 【 近所 】は 場 所 や 建 造 物 しか 主 語 や 目 的 語 に で き な い 。 以 上の よ うに、 【 近 く】 が 最 も 汎 用 性 が 高 く、 次 に 【 付 近 】 が 、 【近 所 】 は 最 も低 い 。. 11.

(14) 付近. ■ ま とめ ・場 所 の 近 い 所 を 指 す 場 合 、 【 付 近 】 を 用 い る 場 合 に は か な り近 い 所 に あ り、 【 付 近 】 を用 い る 場 合 に は か な り曖 昧 で 広 い 範 囲 の 時 に 用 い られ る 。 ・【 近 く】〉 【 付 近 】〉 【 近 所 】 の順 に汎用 性 が 高 い。. ■ 日本 語 教 育 の 視 点 か ら 「 付 近 ・近 く ・近 所Jに. お いて まず 「 近 く」 は 一 番 早 い 段 階 で 覚 え る も の で あ ろ う 。 そ. れ と の 比 較 と して 「 付近」 と 「 近 所 」 の 違 い を ど う説 明 す る か が 問 題 に な る が 、 「 近所」 は か な り近 い 所 に あ る 場 合 な の で 比 較 しや す い の で は な い か と思 う。 た だ 「 付 近 」 と 「近 く」 の 比 較 も含 め て 、 「 付 近 」 の ほ うが 範 囲 が 広 く 曖 昧 で あ る と い っ た も の の 、 そ れ 自 体 主 観 的 に 判 断 さ れ る も の で あ る た め 、 ま た ど ち ら を 用 い て も間 違 い で は な い の で 、 そ う い っ た 区 別 が あ り ど ち ら を使 用 して も 間 違 い で は な い こ と を示 せ ば よ い。. 執筆者兼編集者 上田智哉. 12.

(15) 次 ・今 度 ■辞書記載 の意味(三 省堂 次 【 つぎ】. 新明解 国語辞典. 第六版). ① す ぐ後 に続 く こ と 。(も の ・所) 例)次. の世代. 次 に控 え る. この次. 次 か ら次 へ と 続 く. ② 昔 の宿 場。 宿駅 。 例)五. 今 度 【こん ど】. 十三 次. ① 何 度 か 行 わ れ る物 事 の うち 、現 在 行 っ て い る(行 っ た ば か り の)も の 。 例)今. 度 に 限 っ た こ と で は な い。. ② ご く最 近 行 っ た ば か りの 事 を 取 り上 げ て 言 うの に用 い られ る 語 。 例)今. 度 の大戦. ③ 近 い 将 来 に 実 現 され る と 予 測 さ れ る こ と を 取 り上 げ て 言 う語 。 例)今. 度 ア メ リカ に行 く こ と に な り ま した 。. 今 度(ニ. この 次)こ そ は し っ か りや ろ う。. ■用 例 分 析 「 次 」 の み使 え る場 合 ・ 次 か ら次 へ と …. /× 今 度 か ら今 度 へ と …. ・ 次 の 世代. /. ×今度 の世代. ・ 次 の 日/. ×今 度 の 日. ・ 次 の 方 、 ど うぞ 。 ・ 次 の駅. /△ 今 度 の 駅. ・ この 次 は …. /×. ・ 次 に 控 え る/ ・ 次 の様 な例 ・ 次 の機 会. /× 今 度 の 方 、 ど うぞ 。. ×今 度 に 控 え る /. /. この今度 は …. ×今度 の様 な例 △ ×今度 の機会. ・ 社 長 の 次 に偉 い 人/. ×社 長 の 今 度 に偉 い 人. 「 今度 」 のみ使 える場合 ・ 今 度 、 引 っ越 す こ と に な り ま した 。. /×. 13. 次 、 引 っ 越 す こ と に な り ま した 。.

(16) ・. (挨 拶 で)ま た 今 度 。. /. × また 次 。. ・ 今 度 に 限 っ た こ とで は な い 。/× 次 に限 っ た こ とで は な い 。 ・ 今 度 ば か り は 我 慢 の 限 界 だ 。/. × 次 ば か りは 我 慢 の 限 界 だ 。. ・ 今 度 こそ 本 当 に さ よ う な ら。/. ×次 こそ 本 当 に さよ うな ら。. 両 方 使 え る場 合 ・ 次 の 月曜 日. /. 今 度 の月曜 日. ・ 次 は、米 国 へ転 勤す る ことにな った。 ・ 次 の 電 車/. /今 度 は 、 米 国 に 転 勤 す る こ と に な っ た 。. 今 度 の電車. ・ 次 は 、 フ ラ ンス 語 を勉 強 し た い。/今. 度 は 、 フ ラ ンス 語 を勉 強 した い 。. ■考察 [視点①連続性の有無1 「次 か ら 次 へ と …. 」、 「次 の 駅 」、 「次 の 方 、 ど う ぞ 。」 の 例 文 よ り 、 「次 」 に は 、 連 続. して い る もの を 、 対 象 と し て い る こ とが あ る。 そ れ に 対 して. 「今 度 」 で は 、 必 ず し も 連 続 し て い る も の を 指 す と は 限 ら な い 。 「今 度 、 引. っ 越 す こ と に な り ま し た 。」 の 例 文 で 考 え て み る 。 一 生 の う ち に 何 回 か は 引 っ 越 す か も しれ な い が 、 定 期 的 に 引 っ 越 し をす る 、 と い う の は あ ま り一 般 的 で は な い 。 不 定 期 、 確 か で は な い対 象 を 指 して 、 「 今 度 」 を使 う こ と が で き る と考 え る 。 ま た 、 「次 」 は 、 「社 長 の 次 に 偉 い 人 」 の 様 に 、 順 序 を 表 わ す こ と も で き る 。. *. 「 次 」 と い う漢 字 か ら考 え る(読 み方 は 「つ ぎ」 で はな い が)… 先 ほど 「 次 」 の 連 続 性 に つ い て述 べ た が、 役 職 で使 わ れ る 「 次 」 とい う漢 字 を考 えて み て も、 そ の こ とが 伺 え るの で はな いか 。 国 家 機 関の 府 ・省 ・庁 な どで 、長 た る官 職 の次 に位 置 づ け られ る役 職 に 、 "∼ 次 官"と. い う官 職 が あ る。(例:国. 務 次 官 、 外 務 次 官 、 財 務 次 官 な ど). 1視点 ② 「今(ま た は そ の 直 後)の 」 と い う意 味 山 「 次 の 電 車/今 度 の 電 車 」 で は 、 現 在 、 自分 が ホ ー ム で 電 車 を待 っ て い て 、 この 言 葉 を使 う場 合 に は 、 「 次」 も 「 今 度 」 も 同 じ意 味 で 使 わ れ る 。 しか し、 ホ ー ム に 電 車 が い る 場 合 に使 う と、 「 次」 と 「 今 度 」 で 異 な る意 味 を もつ こ と が あ る の で はな い か 。 「 次 」 の 場 合 は 、 前述 の 意 味 と変 わ らな い 。"次 の 電 車 は 急 行 だ"と. 言. う と、 今 ホ ー ム に 停 車 して い る 電 車 の次 を指 す こ と に な る 。 だ が 、 同 じ状 況 で 、"今 度 の 電 車 は 急 行 だ"と 言 う と、 今 ホ ー ム に 停 車 して い る 電 車 を 指 す 場 合 が あ る 。 こ の と き 、"(さ っ き の 電 車 は 各 停 だ っ た が 、)今 度 の 電 車 は急 行 だ"と. いう. 意 味 に な る。 つ ま り、 「 今 度」 が 「 今 」 の 意 味 を含 ん で い る 。 「 今 度 ば か りは 限 界 だ 」 と い う例 文 で も 、 「 今 度 」 が 、 今(ま た は そ の 直 後)の. 14. 意 味 を含.

(17) ん で い る 。 何 か 我 慢 な らな い物 事 が 起 こっ て い る 、 ま た は 起 き た 直 後 に 発 せ られ る言 葉 だ と思 わ れ る 。. 1視点 ③(視. 一一. 点 ① ② をふ ま え た 上 で)起. 〈次 〉. ⑤. 過去. 〈 今度〉. 一-匚. 点 の 違 い)1. 未来. コ コエコ=Lー. ㊥. ⑤. →. 未 来. 「 次 」で は 、今 を起 点 に し て 、未 来 の こ と を指 す こ と が 多 い 。そ れ に対 して 「今 度 」で は 、 今 を 起 点 と して 未 来 を 指 す 場 合 も あ る が 、 過 去 を 起 点 に 今 を 指 す 場 合 、 過 去 を 起 点 に して 未 来 を指 す 場 合 も あ る と考 え た 。. -ま. とめ. 次 …. 近 い 将 来 、 行 わ れ る(行. う)こ と を 予 測 して 使 わ れ る 。. 対 象 とな る事 柄 に 連 続 性 が あ る 。 順 序 、 順 位 を 表 わ す こ と が で き る。. 今度 …. 近 い 将 来 、 行 わ れ る(行 「 今(ま. う)こ と を予 測 して 使 わ れ る 。. た は 、 そ の 直 後)」 の 意 味 を含 む こ と が あ る 。. 単 に順 番 を 表 わ す 使 い 方 は しな い 。. -日. 本語 教育の視点か ら 「 次 」 と 「今 度 」 の 意 味 は 非 常 に 良 く似 て い る。 両 方 と も 、 基 本 的 に は 未 来 の こ と を 指. して い る場 合 が 多 い 。 しか し 、 「 次 か ら次 へ と …. 」 な ど、 「 次 」 に しか 使 わ れ な い 言 葉. が あ っ た り、 「 ま た 今 度 。」 の 様 に 、 「 今 度 」 しか 当て は ま らな い も の が あ る。 そ の 為 、 どち らか 片 方 しか 使 え な い場 合 の 提 示 をす る こ と が 、 必 要 で あ る と思 う 。 そ の 際 、 日本 語 学 習 者 の 混 乱 を 防 ぐ為 に 、 「次 」 と 「今 度 」 を 一 緒 に教 え て し ま う の で は な く、 状 況 設 定 を した 上 で 、別 々 に 分 け て 教 え て い く の が 良 い の で は な い か 。 そ の次 の 段 階 と して 、 「 今 度 ば か りは 我 慢 で き な い 。」 の 様 な 「 今(ま た は そ の 直 後)」 を 意 味 す る も の を 教 え て い く の が 良 い と考 え る 。. 執筆者. 中田芽衣. 編集者. 庄司由香里. 15.

(18) ∼(と い う)も の ・∼(と い う)こ と. ■辞 書記載 の意味(三省堂. 新 明解 国語辞典. 第六版). もの … … 〔 抽 象 的 な 存 在 で あ る 〕 何 らか の 思 考 や 判 断 の 対 象 とな る ひ と ま と ま りの 内 容(を 備 え た 物 事 や 事 柄)。 「 病 気 と い う も の は 経 験 しな け れ ば そ の つ ら さ が わ か らな い/山登 りほ ど楽 し い も の は な い/もの に は 順 序 が あ る/政 界 の 腐 敗 に は 憤 慨 が た え な い(目 に 余 る)も の が あ る/も の の は ず み で 〔=ちょ っ と した 成 行 き で 〕/もの は 相 談 だ が 〔=相談 次 第 で よ い 結 果 が 得 られ る が 〕/も の は 試 しだ 、一 一つ や っ て み よ う/もの 〔=物事 の 道 理 や 人 情 〕 の 分 か っ た 人/も の の 哀 れ/も の を知 らな い 〔=基本 的 な 知 識 や 常 識 に欠 け る 〕 に も ほ どが あ る/も の の 序 〔=事の 序 〕/も の も言 わ ず 〔=一言 も しゃ べ らず 〕 部 屋 を 出 て い っ た/も の を 言 う 〔=a口 を き く。b効 果 を現 わ す 〕/知 らな い も の は 何 と い わ れ よ う が 知 らな い/も の に つ け事 に触 れ て 思 い 出 す 」. こ と … … 人 間 が 経 験 ・想 像 す る 対 象 の う ち で 、 時 間 の 推 移 と共 に変 化 して 行 く と考 え られ る も の 。 また 、 そ の 変 化 の 過 程 。 「こ と 〔=事態 〕 は(き わ め て)重 大 だ/こ と の 重 要 性/本 当 の こ と 〔=事実 〕 は 当 分 伏 せ て お くが い い/大 変 な こ と 〔=事態 〕 に な っ た/こ と 〔=問題 。 大 変 〕 だ/こ と も有 ろ う に 〔=より に よ っ て 〕/こと有 る 〔=何か 問 題 が 起 こ る 〕 ご と に/一朝 こ と有 る 〔= 何 か 大 事 件 が 起 き た 〕 秋/こ と 〔=事柄 の 性 質 〕 に よ っ て は/僕 の 言 う こ と 〔=事柄 〕 を 聞 い て くれ/・.・ と い う こ と 〔=話〕 だ/旅行 の こ と 〔=旅行 に関 す る 問 題 の 一 切 〕 は 任 せ て お け/こ と を 決 め る/… し て こ とが 済 む 〔=一切 が 解 決 す る 〕 問 題 で は な い/こ と 〔=事件 〕 が 起 き て か らで は 手 遅 れ だ に と の 起 こ り/こと 〔=仮に も 問題 が 〕 推 理 小 説 と な る と、 私 は 黙 っ て は い られ な い」. ■用 例 分 析 例1) ◎ ×. 人 生 と い う もの は 不 思 議 な も の だ 。 人生 とい う ことは不思 議な ものだ。. ⇒ 「人 生 」 は 名 詞 。. 例2) ×. 明 日晴 れ る と い う も の は 、 運 動 会 が あ る と い う こ とだ 。. ◎. 明 日晴 れ る と い う こ と は 、 運 動 会 が あ る と い う こ と だ 。. ⇒ 「明 日晴 れ る 」 状 態 を 指 す 。. 16.

(19) 例3) ×. 私 に と っ て 絵 を 描 く と い う も の は 生 き る も の と 同 じ意 味 を 持 つ 。. ◎. 私 に と っ て 絵 を 描 く と い う こ と は 生 き る こ と と 同 じ意 味 を持 つ 。. ⇒ 「 絵 を描 く」 と い う 動 作 。. 例4) ×. それ が 彼女 に とつて 重 要な意 味 を持 つの だ とい う ものを理解 す る必 要が あ る。. ◎. それ が 彼女 に とって 重要 な意 味 を持つ の だ とい う ことを理解 す る必 要が あ る。. ⇒. 「 重 要 な 意 味 を 持 つ の だ 」 と い うセ リフ 。. 「否 定 」 と し て の. 「も の 」. 例5) ◎. そ う は 言 う も の の 、 私 に は ど う し よ う もな い 。. ×. そ う は 言 う こ との 、 私 に は ど う し よ う も な い 。. 例6) ◎. 昔 は よ く飲 ん だ も の だ 。. ×. 昔 は よ く飲 ん だ こ とだ 。. ⇒ この 場 合 、 「 言 う」 や 「よ く飲 ん だ 」 は 動 作 で あ る し 、 時 間 性 の 契 機 も あ る の に 、 「こ と」 を 使 わ ず に 「もの 」 が 正 しい の は な ぜ か 。. ■考 察 1視点①意味論的解釈その11 ・と い う も の. 名詞 も しくは修飾 語 を伴 った 名詞 節 を引用 す る. ・と い う こ と. 述 語 を含 ん だ 文 章 を 引 用 す る. Googleで. 例:日 本 語 と い う もの. 例:日 本 語 を 教 え る と い う こ と. 「と い う も の 」 「と い う こ と」 を キ ー ワ ー ドに検 索 して み た と こ ろ 、用 例 の 大 部. 分 は仮 説 を裏付 ける ものだ った が、 「 文 章+と. い う も の 」 「名 詞+と. せ も無 視 で き な い 量 が 存 在 した 。. 例 α. 一 度 成 功 す れ ば 次 も う ま く い く と い う もの で は な い 。. 例β. 絶 対 と い う こ とで は な い が 推 奨 さ れ て い る。. 例γ. こ の ウ ィ ル ス の 機 能 は コ ン ピ ュ ー タ を壊 す とい う も の で す 。. 17. い う こ と」 の組 み 合 わ.

(20) 以 上 の よ う な 反 例 は 、 「もの 」 と 「こ と」 の使 い分 け が 、 そ れ が 指 し示 す も の が 名 詞 で あ る か 文 章 で あ る か と い う統 語 論 的 な 基 準 で は な く、 意 味 論 的 な 基 準 か ら行 わ れ て い る こ と を 示 唆 し て い る よ う に思 え る。. ・も の=物 ・こ と=動. ・概 念(一. 般 、 静 的 、 永 続 的 本 質). 作 ・行 為(特. *具 体 ・抽 象 は 無 関 係. 殊 、 動 的 、 宣 言 、 一 時 的 状 態). 物 や 概 念 を 表 す の は 普 通 ひ とつ の 名 詞 の み で あ る 。 しか し、 上 の 例 αの よ う な 場 合 に は 一 続 き の 文 章 が 一 っ の 概 念 を表 して い る 。 「一 度 成 功 す れ ば 次 も う ま く い く」 と い う の は 、 私 た ち の 住 ん で い る この 世 界 は そ の よ うな 本 質 を もっ て い る の だ と い う一 つ の概 念 を 示 し て いる。 ま た 、 動 作 や 行 為 は普 通 、 動 詞 を 核 と して 持 つ 文 章 に よ っ て 示 さ れ る が 、 例 β 「 絶対 と い う こ と」 は 意 味 的 に 「 絶 対 だ と い う こ と」 と 同 じ で あ り、 これ は 「 絶 対 だ 」 と い う宣 言 文 を 引 用 して い る と考 え る こ と が で き る 。 例 γの 「コ ン ピ ュ ー タ を 壊 す 」 は 、 単 に 「こ の ウ ィ ル ス の 機 能 」 と い う名 詞 節 に 対 応 し て 「も の 」 と な っ て い る と考 え られ る 。. 視点②意味論的解釈その2. 形 式 名 詞=実. 質 的 な 意 味 を 失 っ て 形 式 的 に 名 詞 と して の 役 割 を 果 た す だ け に な っ た も の 。. 形 式 名 詞 が つ く こ とで 動 詞 や 形 容 動 詞 、 形 容 詞 な どの 存 在 で な く状 態 を 表 す 言 葉 が 一 つ に く く られ る 。 そ れ で は 「こ と」 と 「も の 」 は 実 際 に どの よ う に使 い 分 け て い る の だ ろ う か。 「こ と」 は 事 が つ く と お りあ る 事 柄 を表 し て お り、 前 に は 動 作 や 状 態 が つ く 。 事 柄 の 説 明 が な さ れ て い る と き に は 「こ と」 が 使 わ れ る 。 形 の な い も の が 多 い 。 「も の 」 は 物 を 表 して お り、 前 に は物 の 性 質 を表 す 語 句 が つ く。 形 が あ る も の が 多 い 。 た だ し、 「 一 度 成 功 した か ら と い っ て も う 一 度 成 功 す る も の で は な い 」 の 「も の」 が な ぜ 実 体 が な い の に可 能 か と い う と、 これ は あ る思 考 過 程 を 一 ま と め に した もの で あ り、 あ る 一 つ の 概 念 と し て 実 体 を持 た せ た よ うな 形 だ か らで あ る 。. 區点③慣用司 例 α. 一 度 成 功 す れ ば 次 も う ま く い く と い う もの で は な い。. これ は 、 授 業 中 に 出 さ れ た 例 文 で あ る が 、 こ の 文 で は 「∼ う ま く い く 」 と い う 『行 為 』 と 思 わ れ る こ と ば で あ る の に 「∼ と い う も の 」 を 使 っ て い る こ と で 議 論 に な っ た も の で あ る 。 「∼ と い う こ と 」 「∼ と い う も の 」 の 前 が 完 全 な 一 文 と な っ て い る 場 合(英. 18. 語 で 例 え る な らS+V)且. つ.

(21) 「∼ で は な い 」 と 最 後 に 否 定 す る 場 合 は 、 「も の 」 を 使 っ て い る の で は な い か 。 他 の 例 を 挙 げ る と す る と 、「お 金 を あ げ れ ば い い っ て い う も の じ ゃ な い で し ょ」 「満 点 を と れ ば い い と い う も の で は な い 」 と い う 具 合 で あ る 。 反 対 に 、 前 が 完 全 な 一 文 で も 、 最 後 は 「∼ で あ る 」 と 肯 定 す る 場 合 は 、 「こ と 」 を 使 わ な くて は な らな い 。(「走 れ ば 走 る ほ ど体 力 が つ く と い う こ と だ 」 等)つ -S+V∼. ま り、. と い う も の で は な い-. で 一 つ の慣 用 句 にな って い るの で あ る。. ま た 例5、 例6よ り、 そ う は 言 う も の の 、 私 に は ど う し よ う もな い 。 A. B. 昔 は よ く飲 ん だ もの(だ)(の. 今 は さ っ ぱ りだ 。). A. B. こ の 時 、Aも の(の)Bと. い う用 法 で は 、AとBは. 正 反 対 の こ と を述 べ て い る 。. 反 対 の こ と を述 べ 、 「しか し」 と い う 否 定 の 意 味 で 使 い た い と き は 、 そ の 接 続 と して 「も の 」 を使 う。 そ れ が フ レー ズ と して 定 着 して 現 在 に 至 っ て い る の で は な い か 。. ■ ま とめ. i. 引 用 した 事 柄 に つ い て 一 般 的 に と りあ つ か う の な ら 「も の」 を 、 一 定 の 条 件 下 に 限 定 さ れ た 特 殊 な 事 柄 と して と り あ つ か うの な ら 「こ と」 を 用 い る 、 と い う の が こ こで の 結 論 であ る。. ii. さ ら に別 の視 点 か ら考 察 す る と … 形 が あ る もの. →. もの. 形 が な い もの. →. こと. 例外. →. 概 念 化 さ れ て い る も の は 実 体 が あ る と して も の と見 な す 。. 血. 慣 用 表 現 と して-s+v∼. と い う も ので は な い1があ る。. 1V. 反 対 の こ と を 述 べ 、 「し か し 」 と い う 否 定 の 意 味 で 使 い た い と き は 、そ の 接 続 と し て 「も の 」 を使 う。. ー 日本 語 教 育 の 視 点 か ら 様 々 な 用 法 が あ る 為 、 絞 っ て か ら徐 々 に 教 え て い く必 要 が あ る 。 最 も頻 繁 に 用 い られ る 「(名詞)と. い う も の 」 「(述語)と. い う こ と」 「(述語 を含 む 文)と. い う こ と」 が ス タ ン ダ ー. ドにな る 。 形 の あ る も の が 「も の 」 で 形 が な い も の が 「こ と」 で あ る イ メ ー ジ は大 切 で あ る か ら、 ま ず そ の イ メ ー ジ を 持 っ て も ら うよ う に教 え る と い い だ ろ う。. 19.

(22) 執筆者 朴廷珍 中村苑子. 伊藤貴祥 中村久子. 戎屋紘子 森下泰行. 副 田邦生 加藤聖人. 石田充. 別所佑子. 若 月亜 由美. 編集者 田邉寿子. 20. 黄佳瑩. 富田夏子.

(23) 楽 し さ ・楽 し み 、 悲 し さ ・悲 し み. 今 回 は 、 「楽 し さ ・楽 し み 、 悲 し さ ・悲 し み 」 の 意 味 分 析 を 通 じ て 、 接 尾 詞 の. 「み 」 と 「さ 」. の違 い につ いて考 察す る。. ■辞書 記載の意味(三省堂. 【さ(接 ①. 新 明解 国語辞典. 第四版). 尾)】. 〔形 容 詞 ・形 容 動 詞 の 語 幹 な ど に 添 え て 〕. …(の)程. 度 ・. い ・の で(余. … で あ る こ と の 意 を 表 す 。 「お も し ろ 一 ・静 か 一 ・金 欲 し 一 ・に. 〔=ほ し. り に)〕 や っ た 事 に 違 い な い 」. ②. 〔雅 〕 と き.お. り.「 帰 る 一 」. ①. 方 言 ら し い 感 じ を 出 す た め に使 う語 。 「 お ら が 国-で. 〔=自 分 の 国 で 〕」. 【み(接 尾)】 ①. 他 の も の に 比 べ て 一 層 そ う感 じ られ る 状 態 で あ る こ と を 表 す 。 「 赤 一 ・あ りが た 一 ・真 剣-・ 軽 一 ・重 一 」. ②. そ の 状 態 を持 つ 部 分 で あ る こ と を 表 す.「 弱 一 ・深 ー ・高 一 」. ③. 〔 雅 〕 そ の動 作 ・状 態 が 反 復 し て 行 わ れ る こ と を表 す. ④. 〔 雅 〕 そ れ を 原 因 ・理 由 とす る こ と を 表 す 。. 鬮. ①② を 「 味 」 と 書 く の は 。 借 字0. 【 楽 しみ 】 ②. 楽 し む こ と。 「 読 書 の一. 〔=お も し ろみ 〕・老 後 の 一 〔 慰 め 〕・子 供 を-に. 〔 子 供 の成 長. を 大 き な 目標 と して 〕 生 き る」 ③. そ れ を 見 た り聞 い た りな ど して 楽 しむ も の.「 読 書 を 毎 日 の一 とす る ・何 か と一 が 多 い 」. 【 分析 】 記 載 の辞 書で は、 接尾 辞 「 み 」 の つ く名 詞 形 は 「 楽 しみ 」 の み 単 独 で 記 載 して お り 、 他 は す べ て 動 詞 の 派 生 形 と し て 載 せ て い る。 「 楽 し さ」 「 悲 しさ」 は共 に 「 形 容詞 およ び いわ ゆ る 形 容 動 詞 に 基 づ く派 生 形(P.3)」 と して 記 載 さ れ て お り、 「悲 しみ 」 は 「 悲 しむ 」 の 名 詞 形 と して い る 。 接 尾 辞 の 「さ」 と 「 み 」 の辞書 記載 の意 味 を比べ てみ る と、両方 と も 「 ∼ で あ る こと、 そ の 状 態 」 と い う意 味 を持 っ て い る が 、 「 み 」 は 「さ」 に 比 べ て 主 観 的 な 要 素 が 強 い こ と が わ か る 。 「み 」 に は 「 他 の も の に 比 べ て 一 層 そ う 感 じ られ る 状 態 」 と い う定 義 が な され て お. 21.

(24) り、 個 人 に よ って 感 じ方 は 違 う こ と か ら 、 「 み 」 は 主 観 的 な 要 素 が 強 い と言 え る 。. ■用 例 分 析 例1)明. 日の パ ー テ ィ が 楽 しみ で す 。 ×楽 し さ. 例2)君. が パ ー テ ィ に 来 て くれ れ ば 、 楽 しさ 倍 増 だ よ 。 ×楽 しみ. 例3)深. い 悲 しみ に 包 ま れ る。 ×悲 しさ. 例4)お. 会 い で き る の を 楽 しみ に して い ます 。. ×楽 し さ. これ ら の語 が 、 形 容 詞 → 動 詞 → 名 詞 と い う順 序 で 派 生 して い く と い う仮 定 に た っ て 考 え て み た い 。 形 容 詞 か ら派 生 した 名 詞 の う ち 、 接 尾 辞 「 み 」 のつ くものが ある場 合 は、必 ず 接 尾 辞 「さ」 も あ る が(例=苦. しみ&苦. い って 「 み 」 が あ る と は 限 らな い(例:軽. し さ 、 弱 み&弱. さ な ど)、 逆 に 「 さ」 があ るか らと. さ○ 軽 み ×、 寒 さ ○ 寒 み ×な ど)の は な ぜ だ ろ. うか 。. 楽 し い → 楽 しむ → 楽 しみ(名 詞) ↓ 楽 し さ(名 詞). 楽 しみ=. 動詞 「 た の しむ 」 の 連 用 形 の 名 詞 化. 楽 し さ:. 形 容詞. 「 た の し い 」 の 語 幹 に 接 尾 語 「さ 」 が つ い た もの. 現 代 の 日本 語 の 形 容 詞 は す べ て 「い」 で 終 わ り、 「い 」 を と り、 「さ」 をつ け れ ば 、 形 容 詞 は 名 詞 化 され る の で 、 語 形 変 化 は1対1対 詞 形 が 生 成 さ れ る の に 、 『∼ しい(形 い う よ う に、2段. 応 に な りや す い。 そ れ に 対 し、 「 ∼ み 」 と い う名. 容 詞)』 ⇒ 『∼ しむ(動. 詞)』 ⇒ 『∼ しみ(名 詞)』 と. 階 の ス テ ッ プ を踏 ま な け れ ば な らな い とす る と 、 動 詞 『∼ し む 』 を は さ. む 分 、 生 成 の 自 由 度 が 制 限 され る の で は な いだ ろ う か 。 → 派 生 につ いて は付録 参照. ■考察 C点 ①主観と客観 【 ∼ み 】 と い う言 葉 は主 観 的 な感 情 を 表す 事 が 多 く、 【 ∼ さ 】 は客 観 的 な 事 柄 を表 す こ とが 多 い。 「楽 しみ 」 が 「 楽 しむ 」 と い う動 詞 か ら派 生 した も ので あ る とす れ ば 、 「 楽 し む」 とい う非 常 に個 人 的 で 主 観 的 な 言 葉 だ と い う こと にな る。 人そ れ ぞ れ で 異 な る個 人的 で 主 観 的 な 感 情 を表 す 時 に 「 楽 しみ 」 を 使 う と思 わ れ る。 一方. 「楽 し さ 」 は 、 客 観 的 な 事 柄 を 表 す 事 が 多 い 。 自 分 の 内 面 を 外 に 出 し て 、 そ れ を 一. 般 化 し た も の 、 つ ま り誰 も が 共 感 で き る よ う な 事 柄 に つ い て. 22. 「楽 し さ 」 を 使 う の で は な い.

(25) だ ろ うか 。 よ っ て 、 「シ ョ ッ ピ ン グ の 楽 し さ」 につ い て 話 す 時 と 、 「シ ョ ッ ピ ン グ の 楽 しみ 」 に つ い て 話 す と き で は 話 の 内 容 が 変 わ っ て く る。 「 楽 し さ」 に つ い て 話 す 時 は 、 自分 が シ ョ ッ ピ ン グ を す る 時 の ほ か に も 、 他 人 が ど う 楽 し ん で い る か と い う事 に つ い て も話 さ な けれ ば な ら な い 。 しか し、 「 楽 しみ 」 に つ い て 話 す 時 に は 自分 が ど う楽 しん で い る か を 話 す の で 、 個 人 的な体 験 談 を話 す ことにな る。 「 楽 しみ」 は形 容詞 「 楽 し い 」 が 表 す 実 態 そ の も の を 指 す と考 え られ る。 つ ま り 「 楽 しみ」 で 表 され る も の は 「 楽 し い こ とそ の もの ・内 容 」 で あ り、 「 弱 み 」 な らば 「 弱 い こ とそ の も の 」、 「 赤 み」 な ら 「 赤 い こ とそ の も の」 で あ る 。 つ ま りそ の 形 容 詞 の実 態 を 「∼ み 」 で 表 して い る 。 主 観 と客 観 と い う視 点 か らみ る と 、「 ∼ さ 」と 「∼ み 」の 関 係 は 以 下 の よ う に考 え られ る。 つ ま り 、 例3に. もある よ うに、 「 楽 し み」 と い う 主 観 的 な 視 点 が 集 ま っ て 、 「 楽 し さ」 と い. う大 き な 集 合 体 を 成 す の で あ る 。 「 楽 し さ」 の 中 に 「 楽 しみ 」 が含 ま れ て お り、 この 二 つ は 包 括 関係 にあ る といえ る。. 0. 楽 しみ. 1視点②程度1 辞 書 の 記 載 に も あ る と お り 、 「∼ さ 」 は 程 度 を 表 す 。 「楽 し さ 」 や 合は. 「悲 し さ 」 と 言 っ た 場. 「ど の 程 度 」 楽 し い の か 、 悲 し い の か と い う 事 を 表 す 。 特 に 、 「楽 し さ 」 で は そ の 傾 向. が 強 い と言 え る 。 例 え ば キ ャ ッチ コ ピー. 「楽 し さ 倍 増 、 楽 し さ い っ ぱ い 」 で は ど の 程 度 楽. し い の か を表 して い る。 「悲 しさ」につ いて も、 「 友 を失 った悲 しさを知 る人はやさ しくなれ る」のよ うに程度 を表す もの として用 いる こ とができるが、例えば、 「 深い悲 しみに くれる」のよ うに 「∼み」の方が多 く使われ る。そ こでは 「 深い」で 「悲 しい程度」が表 されてい る。 「 ∼ さ」は程度を表す ことか ら、「深い悲 しさに くれ る」 とは言えない。. 市 視点③ 時間軸 「 ∼ が 楽 しみ だ 」 や 「∼ を楽 し み にす る」 は 固 定 され た 言 い 方 で 、 上 記 の 「 ∼ み」 とは 一 線 を画 す よ う だ 。 例 え ば 「 将 来 が 楽 しみ だ/将 来 を 楽 しみ に して い る」 と い う の は 、 「 晩 酌 が 楽 しみ だ 」 の 「 楽 しみ 」 と は 違 い、 これ か ら来 る べ き事 柄 を 待 ち 望 む 気 持 ち を 表 す 表 現 で あ る 。 こ こ で い う 「楽 しみ 」 は 、 将 来 につ い て 言 及 す る と き に使 う。 例 え ば、 「明 日の. 23.

(26) 遠 足 が 楽 しみ で す 」 や 「 お 会 い で き る の を 楽 しみ に して い ま す 」 と い う 文 で は 、 将 来 に つ い て 述 べ て い る 。 この よ う な 固 定 さ れ た 「 楽 しみ 」 は 、 将 来 や 未 来 と い っ た 時 間 軸 を 見 る 必 要 が あ る だ ろ う。. ■ ま と め 辞 書 で の 定 義 や 用 例 分 析 か ら、 接 尾 辞 「∼ さ 」 と 「∼ み」 に つ い て は、 両者 と も元 にな る動 詞 の 「 状態」や 「 そ う で あ る様 子 」(「楽 しい 」 な ら楽 しい 様 子 、 「 悲 しい 」 な ら悲 しい様 子)を 表 す 事 は 違 いな い 。 そ の 違 い に つ いて は ①. 主 観 ・客 観. ②. 程度. ③. 固 定 表 現(時 間 軸). とい う面 にお いて 違 いが あ る と い う事 が わ か った 。 これ を図 で 表 す と以 下 の よ う にな る。. み. さ. ■ 日 本 語 教 育 の 視 点 か. ら. 「楽 しみ 」 と い う語 は 出 現 頻度 が 高 く 、 日本 語 学 習 者 に と って 早 く使 え るよ う にな りた い言 葉 の 一 つ だ と思 う。 一 方 、 「悲 しみ 」 「楽 しさ 」 「悲 しさ 」 な どは 「楽 しみ 」 に 比 べ て 出 現 頻 度 が 低 く、 初 級 日本語 学 習者 に と つ て さ ほ ど 必 要 だ と は 思 え な い 。 よ っ て 、 固 定表 現 で あ る 「 楽 しみ 」 と い う言 葉 を最 初 に教 え 、 接 尾 辞 「∼ さ」 と 「∼ み 」 の 違 い に つ い て は 、 中級 以 上 に お け る 説 明 とす る べ き だ ろ う。 固 定 表 現 の 「 楽 しみ 」 と い う言 葉 を 教 え る 時 に は 、そ れ が 未 来 や 将 来 に つ い て話 す 時 に使 う事 を教 え る必 要 が あ る 。 中級 レベ ル 以 上 で は 、 接 尾 辞 「∼ さ 」 と 「∼ み 」 の 主 観 ・客 観 の違 いや 、 「 ∼ さ 」 が程 度 表 現 とな る こ と を導 入 す る必 要 が あ る と思 わ れ る。. ■付録:幽. 墜. 〈識鍛〉 楽 しい→楽 しむ→楽 しみ. 24.

(27) ↓ 楽 しさ. 〈櫪. 〉(以. しむ{助. 下. 4、学 鐺r古. 蒲 犬辞典 ヨよ 切. 動 詞 マ 下 二 型}. 活 用 語 の 未 然 形 に つ く。 ①. 他 に 動 作 を させ る 意(使 役 ・他 動 詞)を 表 す.…. ②. 尊 敬 の 同 士 と と も に 用 い て 、 さ ら に尊 敬 の 意 を 高 め る。…. ③. 謙 譲 の 動 詞 と と も に 用 い て 、 さ ら に謙 譲 の 意 を 深 め る 。. 語 誌:奈. せ る.…. さ せ る。 な さ る.…. あそ ば す 。. 良 時 代 に① の 意 味 で 盛 ん に用 い られ た 。 ② や ③ の 用 法 は 平 安 時 代 に至 っ て 生 じた. が 、 こ の 期 に は① の 意 で は 、 も っ ぱ ら漢 文 訓 読 文 に用 い られ 、 和 文 で は 一 般 に 「 す 」 「さ す 」 が 用 い られ た 。 鎌 倉 時 代 以 降 に 至 り、 再 び ① の意 味 で 、 軍 旗 物 語 や 説 話 集 な どに 頻 出 し、 文 章 語 や 所 管 用 語 と して 命 脈 を 保 っ た 。 しむ{助. 動 特 殊 型}. (四段 ・ナ 変 活 用 の 動 詞 の 未 然 形 に つ い て)尊 敬 の 意 を泡 ラ ス 。…. な さる。. 語 誌:「 し も」 と道 元 。 行 わ れ た 時 代 や 意 味 用 法 も大 差 な く、 「し も 」 の揺 れ の 語 形 とみ る こ と も で き る 。 「し も」 に比 べ て 用 例 は 少 な い 。 ⇒ 関 係 な さ そ う。. 楽 し{形 容 詞 シ ク活} ①(精. 神 的 に満 ち足 りて)快. ②(物. 質 的 に)裕 福 だ.豊. 語 誌:上. い。 愉 快 だ.気 持 ち が よ い.日 本 書 記 、 古 語 拾 遺. か だ.今 昔 、 日葡 辞 書. 代 で は 、 肉体 的 な 快 楽 感 や 飽 満 感 を 表 す の に 用 いた 用 例 が 多 く、 満 腹 感 を 表 した. も の な どが 目立 つ 。 古 語 拾 遺 に 「 あ な 面 白 し、 あ な 楽 し」 と あ る が 、 こ の 「 楽 し」 は 肉 体 の快 楽感 で 、 「 面 白 し」 とは 意 味 領 域 を 異 に す る 。 中 世 語 の 「 楽 し」 は 「 貧 し」 の 対 。 金 銭 や 物 質 の 豊 富 な こ と を い う例 が 多 い 。. 楽 し ぶ 「自バ 四 」 《形 容 詞 「 た の し」+接 尾 語 「 ぶ 」古 く は 上 二 段 か 》 「 た の しむ 」 に 同 じ。 宇 津保 、 今昔 、徒 然草 魍1.「. 自マ 四 」. ①. 楽 し く思 う.愉 快 に 思 う。. 方 丈記 、. ②. 富 み栄 える。 豊 かに富 む。 西域 記長寛 点 、平 家物語. II.「 他 マ 四 」 楽 し く感 ず る 。 興 味 を 感 ず る 。 徒 然 草. た の しび(動. 詞 「た の しぶ 」 の 名 詞 形). 快 楽 。 楽 しみ 。. 書 記(快. タ ノ シ ビ)。 古 今 ・仮 名 序 、 今 昔. 25.

(28) ぶ. 「接 尾 バ 上 二 型 」(び. ・び ・ぶ ・ぶ る ・ぶ れ ・び よ). {体 言 ・形 容 詞 の 語 幹 な ど に つ い て}そ. の よ うな 状 態 に な る 。 そ の よ うな 状 態 で 振 舞 う の. 意 を表す 。 例)哀. れ ぶ ・怪 し ぶ ・荒 ぶ ・翁 ぶ ・大 人 ぶ ・殊 更 ぶ ・高 ぶ ・尊 ぶ ・鄙 ぶ ・雅 ぶ 、 な ど. 斑 ①. 形 容 詞 ・形 容 動 詞 の 語 幹 に 付 い て そ れ を 体 言 化 し、 そ う い う 状 態 や 全 体 を体 言 化 して. 詠 嘆 表 現 とな る こ とが 多 い 。 「青 柳 の 糸 の くは し さ」 万 葉 、 「 細 谷 川 の さや け さ」 古 今 ②. 名 詞 に付 いて 方向 の意 をそ え る。. ③. 移 動 の 意 を 表 す 動 詞 の 終 止 形 に付 い て 移 動 の 途 中 に あ る こ と を表 す.…. しな.…. す る とき。. 文 献 の 成 立 時 代; 徒 然 草=1331頃 方 丈 記:1212頃 宇津 保. 平安 期. 今昔. 平安 期. 平 家:. 鎌倉. 西 域 記 長 寛 点=1163 拾 遺 和 歌 集:平 安 期 日本 書 紀:720 記=古. 事 記:712. 〈考察 〉 たの し. →. た の しぶ(た. の し+ぶ)→. た の しび. ↓ た の し さ(た の し+さ). 助 動 詞 「し む 」 は 尊 敬 や 使 役 の 意 味 を 持 っ て お り、 「た の+し 難 しい。 また 、 「 た の し+む 」 と分 解 した と して も、 助 動 詞. む 」 と い う風 に 考 え る の は. 「 む 」 は 活 用 形 に しか つ か ず 、. 形容 詞 の あ とには つかな い。 よ って 「 た の し+ぶ 」 の 「ぶ 」 が 「む 」 に 変 化 し て 「た の し む 」 と な っ た の で は な い か と考 え る 。 現 在 の 「 た の しみ 」 も 同 じ よ う に 「た の しび 」 が 変 化 した も の だ と思 う。 「た の しび 」 と い う言 葉 は 、720年. ご ろ に成 立 した 日本 書 記 に も 出 て. きて お り、 「 た の し ぶ 」 の 名 詞 形 とい う変 化 は か な り古 く か らあ る こ とが 分 か る。 次に 「 か な し」 を 見 て み た い 。 「か な しぶ 」 「か な しび 」 「 か な しむ 」 「 か な しみ 」 「 かな し. 26.

(29) さ」 の 全 て が 載 っ て い る 。 「 か な し さ」 と は 、 「 か な し」 の 語 幹 に 接 尾 語 「さ」 が の つ い た も の だ と い う。 「 か な し ぶ 」 は 「か な し」 の 動 詞 化 で 上 代 語 だ と い う 。 「 か な しむ 」 の 欄 に は 「 『か な し 』の動 詞 化 。上 代 に は 、形 容 詞 か ら派 生 した 他 の 動 詞 と 同 じ く バ 行 上 二 段 の 『か な しぶ 』 が 用 い られ た 。 中 古 に は バ 行 四 段 に活 用 す る こ とが 多 くな っ た が 、 の ち 、 次 第 に マ 行 四 段 に活 用 す る もの の 勢 力 が 強 ま り、も っ ぱ ら こ ち ら を 用 い る よ う に な っ た 。『名 義 抄 』 な ど に は 「か な しぶ 」 が 多 いが 、 『節 用 集 』 にな る と圧 倒 的 に 「 か な しむ 」 の 訓 の ほ うが 多 くな る。」(角 川 古 語 大 辞 典 第1巻) 「 あ や し」 に 関 し て は 、 両 方 と も 「あ や しむ 」 「あや しぶ 」 「あや し み 」 「あや しび 」 の 全 て が 載 っ て い る。 「あ や しむ 」 は 「 『あ や し』 の 動 詞 化 」 と な っ て お り、 「あ や しみ 」 は 「『あ や し む 』 の名 詞 形 」 と い う風 に 載 っ て い る 。(角 川 古 語 大 辞 典) よ っ て 、 「た の し」 「 か な し」 「あや し」 につ いて は 、 仮 定 で 述 べ た1段. 階 の 変 化 、2段 階. の 変 化 と い う 説 が 当 て は ま る と思 わ れ る 。. 参 考 文 献: ・ 中村 幸 彦 、 岡 見 正 雄 、阪 倉 篤 義. 編(昭 和57年)『. 角 川古 語大 辞典. 店 ・ 中田祝 夫 、和 田利 政、 北原保 雄. 編(1989)『. 執筆者 別所佑子 編集者 四元憲太郎. 27. 古語 大辞 典 』小学 館. 第 一巻 』. 角川 書.

(30) ゆ が み ・ひ ず み ■辞 書記載の意味(三 省堂. 新明解国語辞典. 第六版). 1ゆが む 【 歪 む 】(自 動 詞 五)1 ①. 押 さ れ た り 引 っ 張 られ た りな ど し て 、 そ の もの の 形 が 変 わ る.「 ネ ク タ イ が ゆ が む 」. ②. 心 や 行 い が 正 し くな く な る.「 ゆ が ん だ 根 性 」. 1ゆが み 【 歪 み 】(名)1. 「 人間 関係 の ゆが み」. 山 ゆが め る 【 歪 め る 】(他 動 詞 下 一)1「顔 ・口 ・唇 を ゆ が め る」. ひず む 【 歪 む 】(自 五)1 外 力 が 加 わ っ て 、そ の 部 分 だ け沈 ん だ り膨 れ た り して 、全 体 と し て 正 し い 形 が 失 わ れ る 。「ボ リュー ム を上 げ ると高音 が ひずむ 」 1ひず み. 【歪(み)】(名)1. ① ひ ず む こ と(程 度)。 〔 誤 っ て 、 権 力者 側 に よ る しわ よ せ の 意 に も用 い られ る 。〕 「 高 度経 済成 長 のひず み に泣 く中小企業 」 ②. 〔 物 理 で 〕 物 体 に外 力 が 加 わ った と き に起 こ る 、 長 さ ・体 積 ・形 な どの 変 化 。. 「 デ ィ ス プ レイ に ひ ず み が 生 じ る 。」. こ の 両 者 は漢 字 で 書 く と 「 歪 み 」と な り同 じで あ る 。辞 書 よ り両 者 に共 通 す る意 味 は 、"物 体 に 外 力 を 加 え た とき に 生 じ る伸 び 縮 み 、 ね じれ な ど の 変 化"で. あ る。そ の他 に 「 ひ ずみ 」. は"あ. どを表す 際 に用 い、 「 ゆが. る こ と の 結 果 と して 表 れ た 悪 い 影 響 、 弊 害 、 しわ よ せ"な. み 」 は"よ. こ し ま な こ と 、 不 正"な. どを 表 す 際 に 用 い る。. ま た 、 「ゆ が む 」 の 他 動 詞 「ゆ が め る 」 に 対 し て 、 「 ひ ず む」 に は他動 詞 が存 在 せ ず、 人 間 が そ の 動 作 の 主 語 にな る こ と は な い 。 そ の た め 「ゆ が む 」 は と き と して 人 間 が 意 図 的 に 外 力 を加 え る こ と に よ っ て 物 質 を 変 形 さ せ る と き に も 用 い られ るが 、 「 ひ ず む 」 は あ く まで 人 間 の 意 志 の 介 さな い 外 力 に よ っ て 物 質 が 変 形 す る際 に用 い られ る 。 「 ひず む」 にマ イ ナス 印 象 が 強 い の は そ の た め だ と考 え られ る 。. ■用例分析 ・両 方 使 え る場 合 「 画 面 のゆが み、 ひず み」 「 精 神 のゆが み、 ひず み」 ・「 ゆ がみ」 の み. 28.

(31) 「ゆ が ん だ 人 間 関 係 」 「 背 骨が ゆが む」 「 性根 が ゆが ん だ男」 「あ ま りの に お い に鼻 を ゆ が め る」 「 列 のゆ がみ」 ・「ひ ず み 」 の み 「 人 間関係 に生 じたひず み」 「 高 度 経 済 成 長 の ひ ず み に泣 く 中 小 企 業 」 「こ の ス ピー カ ー は 音 が ひ ず む 」 「 崖 のひず み」. ■考察 i視点 ① 変 形 の イ メー ジi 物 理 的 変 形 に注 目 す れ ば 、 「 ゆ が み 」 は 凹 凸 を指 し、 「ひ ず み 」 は 断 裂 を指 す 。 物 理的 変形 にお いて、 「 ひ ず み 」 は主 に 、地 形 の 変 形 を 表 す 時 に 用 い られ る 。 「 崖 」や 「 地 層 」、 「プ レー ト」 と い っ た 単 語 に 結 び つ く。 これ ら は 地 球 が い くつ か の プ レー トで 構 成 さ れ て い る と い う プ レー ト理 論 の 通 り、 プ レ ー トが 乗 っ て い る マ ン トル の 動 き に よ っ て ず れ 込 んで い く とい う 「 ず れ 」 の概 念 か ら共 通 す る 単 語 で あ る 。 ま た 「 せ ん断 ひず み」 とい う 語 が あ る よ う に 、2つ に 切 られ た モ ノ に つ い て 用 い る 。 た だ し 、 「ゆ が み 」 と 「ひ ず み 」 が 同 じ漢 字 を用 いて い る こ と も あ り、 同 一 視 して 誤 用 し て し ま う こ と も多 い よ うで あ る。 「ひ ず み 」 が よ く使 わ れ る 「 ゆ が み 」 の 意 味 で 用 い られ る こ とが あ っ て も 大 した 違 和 感 が な い の は そ の 為 で あ る 。 今 後 、 「ひ ず み 」 が 「 ゆが み」 と同 じ 意 味 を持 ち 、 差 異 が な く な っ て い くか も しれ な い 。. 題 点 ② 状 態 か 、 因 果 関 係 か?「 ゆが み」 「 ひ ず み 」 は ど ち ら も 形 が 変 化 す る 、 と い う 共 通 軸 を持 っ て い る が 、 そ れ ぞ れ の こ と ば を 使 う と き 、 形 の 変 化 そ の も の に 着 目す る か 、 形 の 変 化 した プ ロ セ ス に着 目す る か が 異 な っ て い る と考 え られ る 。 「ゆ が み 」 の 用 例 と して は 「 柱 に ゆ が み が で き る 」、 「 列 の ゆ が み 」 な ど が あ り、 動 詞 の 「 ゆ が む 」で 使 う と 「 窓 枠 が ゆ が む 」、 「 物 が ゆ が ん で 見 え る 」な ど の よ う に使 わ れ て い る 。 これ ら の 例 は 、 す べ て 柱 や 列 、 窓 枠 が 正 常 な 状 態 で な く、 特 に 曲 が っ て い る 状 態 を 表 して お り、"ど う して ゆ が ん だ の か"と. い う 因 果 関 係 に は 着 目 して い な い 。 抽 象 的 な 表 現 だ と 、. 辞 書 の意 味 で は 「 心 の 行 い が 正 し く な く な る こ と」 と な っ て い る。 用 例 を 見 る と 「性 根 が ゆが んだ男 」 「 心 の ゆ が み を 直 す 」 な どが あ る。 しか し この 場 合 も 「 柱 」や 「 列 」 の例 と同 じ く"考 え 方 や 行 動 が 正 常 で は な くな っ た"状. 態 を表 して い る 。. そ れ に 対 し て 「ひ ず み 」 の 用 例 「 崖 の ひ ず み 」 を 考 え る と 、崖 は な か な か 自 然 に は 変 化 し. 29.

(32) な い も の で 、"外 か ら力 を 加 え て 変 化 した"と. い う こ と を 強 く感 じ る 。 ま た 「 人間 関係 に生. じた ひ ず み 」 「 高 度 経 済 成 長 の ひ ず み に 泣 く 中 小 企 業 」 「この ス ピ ー カ ー は 音 が ひ ず む 」 と い う 用 例 か ら も"正 常 で な い 曲 が っ た 状 態"そ くな い"と. の も の よ り も"外 力 を 加 え られ た 結 果 が 良. い う こ と を 強 調 して い る 。 こ れ らは 単 に 今 の 悪 い 状 態 、 正 常 で は な い 状 態 を 表. した い の で は な く 、 そ の 結 果 を 引 き 起 こ して し ま っ た 原 因 を 含 め た 、 因 果 関 係 に着 目 して い る の で あ る と考 え られ る 。. ■ ま とめ 「ゆ が み 」 も 「 ひ ず み 」 も 、 ど ち ら も"正 常 で は な くな っ て し ま っ た も の の 形 や 状 況 の 変 化"に. つ い て 使 う表 現 で あ る 。 ど ち らの 表 現 を使 っ て も 、"変 化 を 引 き起 こ した 原 因"は. 存 在 す る し 、"正 常 で は な い状 態 を 表 す"こ. と に 変 わ りは な い 。 しか し 「ゆ が み 」 は 、 よ り. 今 の 正 常 で は な い そ の 状 態 を 強 調 し、 「 ひ ず み 」 は 、 そ れ は あ る 外 力 を受 け て 変 化 した 結 果 な の だ 、 と い う こ と を 強 調 して い る 。 した が っ て 「 背 骨」 「 鼻」 「 性根 」 「 列 」 に お い て ゆ が み を 使 う方 が 好 ま し い の は 通 常 、 変 化 の 生 じた 過 程 や 原 因 で は な く 、変 化 が 起 き た こ と 自体 に 着 目す る か らで あ る。 同 様 に 「ひ ず み 」 を使 っ た 場 合 、 着 眼 点 は"何. に よ っ て"に 移 る 。 そ の た め 「ひ ず み 」 の 用 例 で は 社. 会 制 度 や 音 な ど外 力 が 多 岐 にわ た り、 か つ 通 常 は 変 化 し づ らい と考 え て い る も の に 起 こ る 変 化 に使 わ れ る こ とが 多 い 。. ■ 日本 語 教 育 の 視 点 か ら イ メ ー ジ と して の 「 ゆ が み 」 と 「ひ ず み 」 を 図 で 印 象 づ け る と よ い。 「ゆ が み 」 は 凹 凸 、 「ひ ず み 」 は. の よ うな ず れ の イ メー ジ が よ い 。. 「ゆ が み 」 「 ひず み」 は基 本 的 に どち らも 「 外 力 に よ って も た ら さ れ た 形 や 状 況 の 変 化 」 を 表 わ す た め 、 日本 語 学 習 者 に そ の 違 い を は っ き り と 分 か らせ る こ と は 困 難 で あ る と 思 わ れ る 。 導 入 の 仕 方 と して は 、 「箱 が ゆ が む 」 「 顔 が ゆが む」 な どの 目に見 えて わ か る例 文 か ら 「ゆ が み 」 の 用 例 に 触 れ 、 同 じ 形 の 変 化 で も 社 会 制 度 の 要 因 に よ る 状 態 の 変 化 、 音 響 や 画 像 な ど の 個 人 の 直 接 の 力 で は そ の 場 で 変 え られ な い も の を 紹 介 して 「ひ ず み 」 の 意 味 に つ い て 理 解 して も らえ た ら 良 い と思 う 。 しか し 日常 的 に 使 う の は 「 ゆ がみ 」 の ほ うで あ る と思 う の で 、 中 級 以 上 の 学 習 者 に は 積 極 的 に 「 ゆ が み 」 を つ か った 慣 用 表 現(「 あ ま りの に お い に 鼻 を ゆ が め る」、 「 心 の ゆ が み 」)を 教 え て い く と 良 い の で は な い だ ろ うか 。. 執筆者 朴廷珍. 伊藤貴祥. 中村久子. 森下泰行. 別所佑子 加藤聖人. 副 田邦生. 石田充. 若 月亜 由美. 編集者 庄司由香里. 30. 黄佳瑩. 富田夏子. 中村苑子.

(33) 思 う ・考 え る ■辞 書記載 の意味(三省堂. 新 明解 国語辞典. 第四版). 【 思 う】 1.外 界 か ら受 け た 刺 激 が も と にな って な ん ら か の 感 覚 が 生 じた り情 意 を 抱 い た り し た ことを意識 す る。 2.感. 「これ ぞ と 思 う相 手 」 「 結 果 を 不 満 に 思 う」. 覚 に 頼 っ て 、 判 断 す る。. 「 あ す は 雨 だ と 思 う」. 3す そ の も の に 絶 え ず 心 が 惹 か れ る 。. 「 故 国 を 思 う」 「 親 を 思 う子 」. 【 考える】 1.経. 験 や 知 識 を基 に して 、 未 知 の 事 柄 を 解 決(予 測)し. よ う と して 、頭 を 働 か せ る 。. 「い い と考 え る 」 「 人 の 立 場 を考 え る 」 2.相. 手 や 将 来 の 事 につ いて 思 い を め ぐ らす 。. 3.新. し い 物 を 作 り出 す 方 法 や 考 え を 思 い つ く。. ■用 例 分 析. 「 将 来 を考 え る 」. ×は非 文. 「 考 える」 が使 えて 「 思 う」 が 使 え な い例 「さ あ み ん な で 考 え よ う 」(×. 「さ あ み ん な で 思 お う」). 「数 学 の 問 題 の解 き 方 を考 え る 」(× 「 納 得 の い く ま で考 え る 」(×. 「 数 学 の 問 題 の 解 き 方 を 思 う」). 「納 得 の い く ま で 思 う」. 「 思 う」 が 使 え て 「 考 え る」が 使 えな い例 「 捨 て 犬 を見 て か わ い そ うだ と思 っ た 」(×. 「 捨 て 犬 を見 て か わ い そ うだ と考 え た 」). 「 思 う」 と 「 考 え る 」 が 両 方 使 え る が 、 意 味 が 変 わ る例 「 子 ど も の こ と を思 う」 → 子 ど もの 身 の 上 を心 配 した りす る(【 辞 書 記 載 の 意 味 】1.) 「 子 ど も の こ と を考 え る 」 → 子 ど も の 様 子 な ど に思 い を め ぐ らす(【 辞 書 記 載 の 意 味 】 2.). ■考察 C点 ①感情と理倒 「思 う」 と い う言 葉 は 「心 で 感 じ る 」 に 近 い 。 瞬 間 的 に 、 自然 に湧 き 出 た 感 情 的 な も の. 31.

Referensi

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