第 4 章 実験結果・考察
4.4 ポート 毎の性能の違い
本節では 、特定のネットワーク機器では通信に用いるポートによって、機器の内部で フレーム転送に用いられるASICが異なっており、位置の離れたポート間の通信では内部 チップ 間での通信が必要となり、Ethernetフレームの転送速度が隣接ポート間の通信よ り遅延が高くなるという仮説のもとに計測対象の機材に対し 、それぞれ3つのポートで計 測を行なって得られたデータをグラフに統合し比較を行なった。その結果、BUFFALO社
のLSW4-GT-8EPの計測データからポートによってEthernetフレームの転送性能が異な
る事が判明したため、詳細を示す。
0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 140000
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
Latency [ns]
Frame Size [Bytes]
Port 1->2 Port 1->2 Port 1->4 Port 1->4 Port 1->8 Port 1->8
図 4.6: LSW4-GT-8EPのポート毎のEthernetフレームの転送に要する遅延の違い
4.4.1 ポート 毎の遅延とフレームド ロップレート の際の考察
図4.6はLSW4-GT-8EPに対してポート1からEthernetフレームをポート2、4、8へ 送信し 、計測を行なった結果得られた遅延の値を点で示し 、それらの遅延の値から最小二 乗法で得られたフレームサイズに対して発生する遅延を示す一次関数を線で示したもの だ。図4.6の計測して得られた異なるポートの遅延を示す点と線はほぼ重なりあっている
第 4章 実験結果・考察
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
Frame Loss Rate [%]
Frame Size [Bytes]
LSW4-GT-8EP-Loss-ver2.eps by Frame Size Port 1->2
Port 1->2 Port 1->4 port 1->4 Port 1->8 port 1->8
図 4.7: LSW4-GT-8EPのポート毎のフレームド ロップレート
ことから、計測結果がいずれも近い値を示しており、ポート2,4,8のいずれにおいても4.2 節にて示されたようにEthernetプロトコルによるフレームの転送性能は極めて高く、低 遅延での転送を行なっている事が伺える。
計測を行なったポートでは、それぞれ計測に用いられるフレームサイズが1byte増加す るのに応じておよそ8ナノ秒遅延が上昇している事から、計測対象であるLSW4-GT-8EP がカットスルーを行わず、Ethernetフレームがバッファに記憶された後に転送を行うスト アアンド フォワード 型の特性を示している。また、Ethernetフレームの転送に要する転送 速度を示す定数は、ポート2では1796ナノ秒、ポート4では1739ナノ秒経過している事 が最小二乗法を用いたデータの解析から判明した。この事からポート2とポート4の間に は転送性能に差異は殆ど 無い事が明らかである。しかし 、ポート8では転送処理に要する 遅延を示す定数が2067ナノ秒となっており、ポート2、4と比較して、300ns程Ethernet フレームの転送性能に差異が発生している事が判明した。
図4.7は 、LSW4-GT-8EPに対してポート1からEthernet フレームをポート 2、4、8 へ送信し 、計測を行なった結果得られた論理的に送信可能なフレーム数に対受信フレー ム数との差異からフレームド ロップレートを%表記で示したものである。フレームド ロッ プレートを確認した所、ポート2と4で計測に用いられるEthernetフレームのサイズが
13514byteの時点までは、フレームド ロップが発生していなかったが 、計測に用いられる
フレームサイズが13515byteに上昇した時点から、突如フレームド ロップレートが98%程 に大きく飛躍した。ポート8の計測の際には、計測に用いるフレームサイズが7000byteの
第 4章 実験結果・考察
表 4.3: LSW4-GT-8EPのEthernetフレームの転送性能を一次関数に最小二乗法を用いて 当てはめて表された性能
項目\計測対象 Port 2 Port 4 Port 8
フレーム 7.98324 7.98308 7.98417
サイズ毎の 遅延の増加 [ns/byte]
転送に要 1796.28 1739.55 2067.42
する遅延 の定数[ns]
傾斜に対する 0.0004848 0.0004961 0.000478 漸近的標準誤差
[ns/byte]
傾斜に対する 0.006073 0.006214 0.005987 漸近的標準誤差
[%]
遅延の定数に 4.155 4.251 4.096 対する漸近的
標準誤差[ns](%)
遅延の定数に 0.2313 0.2444 0.1981 対する漸近的
標準誤差[%]
時点までは、フレームド ロップが発生していなかったが、計測に用いるフレームサイズが
7001byteに上昇してからフレームド ロップレートが80%程に大きく飛躍した。このポー
ト2、4と8の間の性能の隔たりは、ポート1から4までは同一ASICに接続されており、
ポート5から8は別のASICに接続されており、ポート1とポート8間で計測を行なった 際にASIC間での通信が発生したためだと推測される。
BUFFALO社の製品仕様の説明によると、[27]ワイヤレートでのEthernetフレームの
転送性能、つまり最短IFGで最大レートでフレームを転送処理を行えるのは 、9216byte までと記載されているがそれはポート1から4 の間に送信と受信を行う端末が共に接続 された場合のみである事、またポート1から4までの間であればカタログスペックである
9216byteまでではなく、13514 byteまでワイヤレートでのジャンボフレームの転送が可
能である事が本研究での計測から判明した。