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菌体外多糖中の免疫誘導部位の構造決定と合成法の確立 菌体外多糖を構成しているどのような構造部位が,免疫誘導

Dalam dokumen 2022年度 - 日本農芸化学会 (Halaman 34-39)

L -アミノ酸代謝関連酵素の産業利用技術に関する研究

4. 菌体外多糖中の免疫誘導部位の構造決定と合成法の確立 菌体外多糖を構成しているどのような構造部位が,免疫誘導

部位であるかを明らかにするために,NTM048株の酵素を用 いて,菌体外多糖の部分構造の合成を試みた.まず本菌のドラ フトゲノム解析を行い,NTM048株は菌体外多糖を合成する 酵素遺伝子を 3 つ有していることを明らかにした.2 つは糖質 加水分解酵素ファミリー70 に属しα-グルコース鎖を合成する 酵素Gtf1, Gtf2 であり,1 つは糖質加水分解酵素ファミリー68 に属しβ-フルクトース鎖を合成する酵素LvnS であった7,8).そ

こでこれら酵素遺伝子を乳酸菌ゲノムよりクローニングし,大 腸菌に発現させて組み換え酵素を作出し,各精製酵素の性状解 析により多糖合成条件を明らかにし,それぞれの酵素から菌体 外多糖の部分構造を合成して,構造解析および免疫誘導活性の 比較を行った.

その結果,酵素Gtf2 によって合成される可溶性多糖は,最 も強く抗原特異的抗体を誘導した.気道粘膜上および血中に抗 原特異的な IgA と IgG を誘導し,その効果は NTM048株の菌 体外多糖より,1.8~2.0倍高いものであった.酵素Gtf2 によっ て合成される構造部位が,菌体外多糖中の免疫誘導部位である と考えられた.多糖構造解析の結果,この多糖の構造はα-1,6 結合とα-1,3結合の割合が 1:1 のグルコース鎖であり,分子サ イズ 14.4×106 Da, 粒径7.8 μm であった.α-1,6結合よりα-1,3結 合の割合が高いグルコース鎖,もしくはα-1,6結合のみのグル コース鎖の場合はいずれも活性が半分以下に低下し,グルコー ス鎖の結合様式の比率が活性に大きく影響することを明らかに した9)(図1).

   

科学的根拠に基づき乳酸菌の免疫誘導能を評価するには,免 疫を誘導している成分の解明が重要である.我々は本研究にお いて免疫誘導成分の構造と免疫誘導機序を明らかにし,乳酸菌 を機能性食品素材として利用するのための基盤を構築するとと もに,酵素を用いた機能性成分の合成法を確立し,免疫増強効 果を有する新たな食品素材の開発に貢献した.さらに免疫誘導 機序を詳細に解析することによって,粘膜ワクチンの免疫増強 剤として,医薬への利用の可能性を見出した.今後も活性の向 上に向けて,さらなる研究を行う予定である.

(引用文献)

1) Matsuzaki, C., et al. Immunomodulating activity of exopoly- saccharide-producing Leuconostoc mesenteroides strain NTM048 from green peas. J Appl Microbiol, 116, 980–989

(2013)

2) US Patent No. 9572844, Immunostimulation agent

3) Matsuzaki, C., et al. Exopolysaccharides produced by Leuco- nostoc mesenteroides strain NTM048 as an immunostimulant to enhance the mucosal barrier and influence the systemic

immune response. J Agric Food Chem, 63, 7009–7015(2015)

4) US Patent No. 10093749, Exopolysaccharide produced by lac- tic acid bacteria

5) Matsuzaki, C., et al. Immunostimulatory effect on dendritic cells of the adjuvant-active exopolysaccharide from Leuconos- toc mesenteroides strain NTM048. Biosci Biotechnol Biochem, 82, 1647–1651(2018)

6) Matsuzaki, C., et al. Structural characterization of the immu- nostimulatory exopolysaccharides produced by Leuconostoc mesenteroides strain NTM048. Carbohydr Res, 448, 95–102

(2017)

7) Ishida, R., et al. Levansucrase from Leuconostoc mesenteroides NTM048 produces a levan exopolysaccharide with immuno- modulating activity. Biotechnol Lett, 38, 681–687(2016)

8) 松﨑千秋,乳酸菌が産生する菌体外多糖の構造と機能性,化 学と生物,解説,59, 7–15(2021)

9) Matsuzaki, C., et al. Enzymatically synthesized exopolysac- charide of a probiotic strain Leuconostoc mesenteroides NTM048 shows adjuvant activity to promote IgA antibody responses. Gut Microbes, 13, 1949097(2021)

謝 辞 日本農芸化学会女性研究者賞の受賞にあたり,選考 委員会の先生方,関係者の方々に厚く御礼申し上げます.ここ に紹介させていただいた一連の研究は,石川県立大学生物資源 工学研究所にて行ったものです.未熟な研究員の頃から今に至 るまで長きに渡り乳酸菌研究をご指導ご鞭撻いただきました和 歌山大学山本憲二先生に心より感謝・御礼申し上げます.また 女性研究者としての道を与え,いつも温かく支えてくださり,

本賞へのご推薦を賜りました石川県立大学熊谷英彦先生に,深 く御礼申し上げます.共同研究において免疫学・生化学におけ る研究手法を惜しみなくご教授くださった医薬基盤・健康・栄 養研究所國澤純先生,細見晃司先生,滋賀大学糸乗前先生,

Noster株式会社久景子研究員に深謝申し上げます.最後に,

データのディスカッションを通して時には厳しく,時には親身 になってこれまでの研究生活を支えていただきました河井重幸 先生,南博道先生,中川明先生,松本健司先生,東村泰希先生 をはじめとする石川県立大学生物資源工学研究所および食品科 学科の先生方に心より御礼申し上げます.

1.  L. mesenteroides NTM048株の分泌する菌体外多糖成分の中でも,α-1,6結合とα-1,3結合の割合が約1:1 のグルコース鎖は,樹状

細胞を刺激し,IgA産生を誘導するサイトカイン IL-6 とレチノイン酸(RA)の産生を促進する.また濾胞性ヘルパー T細胞(TFH

細胞)を介した T細胞依存的抗体産生経路にて,病原体を排除する効果の高い抗原特異的な IgA の分泌を促進する.

アブラナ科植物が生産する含硫機能性化合物グルコシノレートの代謝調節機構の解析

九州大学大学院農学研究院 丸 山 明 子

   

硫黄(S)は,全生物の必須元素であるとともに,取りうる 価数の幅が−2 から+6 と広い反応性の高い元素である.無機 S は環境問題(酸性雨や硫酸酸性土壌など)の原因ともなるた め,生物による無機S から有機S への変換は環境保全や農業生 産にとって重要である.S を含む有機化合物には,アミノ酸,

酸化還元物質,補酵素,また医薬や食品成分としても有用な特 化代謝物が多くある.人間を含む動物は,必須アミノ酸である メチオニンを食べ物(植物)から摂取する必要がある一方,植 物は環境中の硫酸イオンから含硫アミノ酸であるシステインや メチオニンを生合成しており,自然界の S サイクルに中心的 な役割を果たす.生物の利用する様々な含硫有機化合物の源は 植物による無機S の同化にあると言っても過言ではない.

植物の生育や発達も S栄養条件や S同化効率の影響を強く受 けており,S は作物の生産性・品質維持に必要な元素である.

植物の S同化は,硫酸イオン輸送体(SULTR)による硫酸イオ ンの吸収に始まる.細胞内に取り込まれた硫酸イオンは,数段 階の反応により硫化物イオンへと還元され,システインへと同 化される.その後,システインを基にグルタチオン(GSH)や メチオニン,各種の特化代謝物が生合成される(図1).

植物が生合成する含硫代謝物の機能もまた多様である.アブ ラナ科植物が蓄積するグルコシノレート(GSL)は.病虫害の 忌避に働くことから,農業上の有用性が注目されてきた.生合 成基質となるアミノ酸によって側鎖の構造が異なり,トリプト ファン由来のインドール GSL,メチオニン由来の脂肪族GSL

(mGSL)などに分類される.このうち,数種の mGSL では発 がんや各種炎症性疾患の予防効果が示されている.

私が本研究に着手した 2000年頃,S不足(−S)下におかれ た植物で S同化酵素群の遺伝子発現が上昇することが示さ れ1),一見何事もないように見える植物の体内で起こる栄養不 足への適応的な変化に強く興味をもった.この変化をもたらす 仕組みの解明が S の同化・代謝を最適化する植物栽培法や遺 伝子工学的な有用物質の生産に繋がると考え,研究に取り組ん できた.

1. 硫黄不足に応じたグルコシノレート生合成の抑制因子 SDI1の発見

アブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナを用いたマイ クロアレイ解析を行い,−S に応じて 24時間以内に遺伝子発 現が変化する遺伝子群を見出した2).この遺伝子群には複数の SULTR の 他, 多 く の 機 能 未 知 遺 伝 子 が 含 ま れ て い た.

SULTR と同様に二次構造の類似したタンパク質群であれば S の同化や代謝に重要な役割を果たすのではないかと考え,Sul- fur Deficiency Induced(SDI)1, 2 の機能解析に取り組んだ.

SDI1, SDI2 は TPR ドメインを含み,SDI1 には核移行シグナ ルも存在した.

SDI1, SDI2 の単欠損株(sdi1, sdi2),二重欠損株(sdi1sdi2)

を取得し,S十分(+S),−S で育成した際の S同化・代謝系 遺伝子の発現を解析した.その結果,野生型株(WT)では−S に応じて発現が低下する mGSL生合成酵素遺伝子群の発現が

−S で低下しないどころか,sdi1, sdi1sdi2 では+S下よりも上 昇する事を見出した.そこで同条件で育成した植物中の含硫代 謝物量を測定したところ,sdi1, sdi1sdi2 では−S下でも mGSL 量が高く維持されていた.高発現株(SDI1-OX, SDI2-OX)を作 製し,同様の解析を行ったところ,欠損株とは逆に,mGSL生 合成酵素遺伝子群の発現,mGSL量がともに S条件によらずに 低下した.これらの結果は,SDI1, SDI2 が mGSL生合成の抑 制に働くこと,SDI1 が主要な役割を果たすことを示していた.

SDI1 の標的代謝系を明らかにする目的で+S,−S条件で育 成した WT, sdi1sdi2, SDI1-OX についてマイクロアレイ解析を 行なった.多変量解析の結果から SDI1 の標的が mGSL生合成 酵素遺伝子群であることが明らかとなった.そこで,mGSL生 合成酵素群の発現を促進する転写因子として知られる MYB28 と SDI1 の関係を解析した.BiFC法により SDI1 と MYB28 が 核内で相互作用する事を確認した.ゲルシフト実験および一過 的な転写調節活性の測定により,SDI1 が MYB28 の DNA結合 を維持したまま MYB28 と相互作用し,MYB28 の転写促進活 性を抑制することを証明した3)

以上により,SDI が−S に応じた mGSL生合成の抑制因子で あることを明らかにした(図2)3).この発見は,−S に応じた mGSL生合成の抑制が専ら SDI1 の発現上昇による事を示して いた.私たちは−S に応じた遺伝子発現変化を司る SLIM1転 写因子を同定している4).現在,SDI1 の−S応答への SLIM1 転写因子の関与,SDI1 の 5′上流域に存在する−S応答配列の 決定と転写因子の単離に取り組んでいる.

2. 硫黄不足に応じたグルコシノレート分解を担うβ-グルコ シダーゼBGLU28, BGLU30の発見

GSL の分解にはミロシナーゼと呼ばれるβ-グルコシダーゼ

(BGLU)の一群が働く.しかし,−S に応じた GSL分解に働

1. 硫黄不足(−S)に応じた硫黄同化・代謝系の変化

Dalam dokumen 2022年度 - 日本農芸化学会 (Halaman 34-39)