ケフィアによる脂肪細胞におけるグルコース取り込み増強機構の解析
○伊東花織1、照屋輝一郎2、奥田聡子1、片倉喜範2、徳丸千之助3、徳丸浩一 郎3、白畑實隆2(1九大院・生資環、2九大院・農院、3日本ケフィア(株))
【目的】2型糖尿病ではインスリン抵抗性を原因とした標的臓器におけるグルコース取り込 み能の低下が起こる。本研究ではマウス由来の3T3-L1 脂肪細胞における発酵乳 NKGケフ ィア(ケフィア)のグルコース取り込み増強機構の解析を行った。
【方法・結果】ケフィア水溶性画分はインスリン刺激の有無に関わらず、脂肪細胞における グルコース取り込みを増強した。ケフィアがPI 3-キナーゼ経路に与える影響を調べた結果、
PI 3-キナーゼ阻害剤wortmanninはグルコース取り込み増強効果を完全に阻害しなかったた
めケフィア活性成分は複数の作用点を有することが示唆された。MAP キナーゼファミリー タンパク質の各阻害剤を用いたグルコース取り込み検定によりケフィア活性成分の p38 経 路、ERK経路への関与が示唆され、p38、ERKの活性化がwestern blottingによって確認さ れた。現在、ケフィア処理がグルコーストランスポーターに与える影響を検討中である。
1E08
細胞老化プログラムにおけるTAK1の寄与
○伊藤紋子1、片倉喜範2、藤木 司2、白畑實隆2
(1九大院・生資環、2九大院・農院)
【目的】本研究では、炎症性シグナル経路の下流キナーゼとして知られるTAK1の細胞老化 プログラムにおける寄与を明らかにすることを目的として、研究を行った。
【方法・結果】まず TAK1 の細胞老化誘導能を評価した。その結果、ヒト正常線維芽細胞
(TIG-1)に TAK1を導入することで、細胞形態の扁平化、細胞増殖抑制及び老化マーカー である酸性β-ガラクトシダーゼ活性の上昇が観察され、TAK1は細胞老化誘導能を有するこ とが明らかとなった。さらに、長期培養を行うことで、テロメアの短縮に伴う細胞老化が誘
導されたTIG-1において、TAK1が活性化されていることがウエスタンブロットにより明ら
かとなった。以上の結果より、TAK1は、細胞老化プログラムの制御因子として中心的な役 割を担っていることが明らかとなった。
1E09
Origin and evolution of STAT, WNT and the nuclear receptor superfamily, NR○S. Abe, E. Sasaki, T. Kishida, K. Ebihara (Fac. Agriculture, Ehime Univ.)
Phylogeny of NR for lipid metabolism (RXR, RAR, PPAR), steroid hormone reception (GR, MR, ESR, AR), and other (THR, VDR, TR2, TR4), and WNT members were studied in lower and higher verte- brates. Analysis of their genomic organization showed considerable conservation of exon organiza- tion and a nearly universal exon linkage in NR was found. An RXR and NR2F1 were identified inCiona intestinalis with similar genomic structures, and NR2F1 at 5q14 shared the same structure with human PPARG at 3p25, indicating the NR2F1 is the direct source of NR and NR2F1 was already created from RXR before evolution of Ciona. Ten WNTs in Ciona shared similar genomic structure to vertebrates, and analyses of flanking genes demonstrated evolutionary linkages of NR, WNT, and STAT to the human 3p14-26 and also to 1q21-42, 2q11-35, 5q12-35, 6p21-25, 12q11-13, 17q11-21 and 22q11-13 syntenies. Homodimer or heterodimer formation and their functional overlap might play a key role in the coordinated evolution and differentiation of NR , WNT, and STAT members.
1E10
Origin and role of intergenic splicing of UbiE2 and Hig1-4 in mouseS. Abe, ○E. Sasaki, (Faculty of Agriculture, Ehime University)
Hig1ファミリーは、ブリで最初に発見されたYGHL1 (D85880)と呼ばれた遺伝子のホモログ で、植物から動物にいたる幅広い生物種において、ゲノム構造を高度に保存する。本研究で は、マウス、ヒト、魚類およびホヤのゲノムを比較することによって、Hig1 (9F4, 3p22.1), Hig1-4 (15F1, 12q13)およびClst11240 (11D, 17q21.31)が、ホヤから魚類に進化する過程で生じ たパラログを起源とすること、およびマウスの腎臓ではHig1-4が隣接するUbiE2と遺伝子 間スプライシングし融合遺伝子として発現することを明らかにした。一方、ヒト12q13では UbiE2とHIG1-4がCIG (cancer induce gene)をはさんで並んでおり、UbiE2とHIG1-4の融合 した発現は困難であると考えられた。Higホモログの周辺領域にはSTATやWNTおよびNR ファミリー(RAR, PPAR, THR, VDR)を含むSyntenyが存在し、Higファミリーがこれらと協調 進化した可能性が高い。マウス腎臓での遺伝子間スプライシングは、新しい遺伝子の生成と 機能の獲得という遺伝子進化の観点からも興味深く、その機能解析を進めている。
1E11
染色体・動原体・ヘテロクロマチンを可視化したマウス C3H 細胞のライブイメ ージングと微小管重合阻害剤indanocineの有糸分裂への影響
○渡辺 沙奈美、杉本 憲治(大阪府大院・生命環境)
【目的】我々は染色体・動原体・ヘテロクロマチンの三つを可視化したマウス C3H 細胞を樹 立し、微小管の重合阻害剤として知られているindanocineがこれらの細胞内構造の動態に与 える影響についてリアルタイムで調べる事を目的とした。
【方法・結果】細胞に微小管重合阻害剤の一つであるindanocineを添加し生きたまま蛍光顕 微鏡下で観察を行った。10nM添加した際には核膜が崩壊し染色体が散在した後、染色体が 複数の極様構造を中心に集合して分裂を停止する様子が観察された。また、30nM添加した 際には核膜が崩壊し染色体が散在してその後散在した状態のまま分裂を停止している様子 が観察された。このようにindanocineは有糸分裂期の前期から前中期の染色体の中心体周辺 への集合や赤道面への整列に影響を与え、その添加濃度によって異なる形態変化を示した。
1E12
グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼとRanBPM によるアンドロゲ ン受容体転写制御機構の解明
○泰永涼子、原田直樹、山地亮一、乾博、中野長久(大阪府大院・応生化)
【目的】近年、グリセルアルデヒド‑3‑リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は解糖系酵素以 外の多くの機能を持つタンパク質と認識されている。GAPDHはアンドロゲン受容体(AR)
と結合し、また前立腺癌細胞においては GAPDH の発現レベルが増加する。そこで本研究
ではGAPDHがARの転写活性に及ぼす効果とその調節機構について検討した。
【方法・結果】アンドロゲン応答配列を組み込んだベクターを作製し、Luciferase reporterア ッセイによってGAPDHがARの転写活性を促進することを明らかにした。さらに、GAPDH によるARの転写活性化に関与するタンパク質を検索するために、GAPDHをbaitとした酵
母Two-Hybridアッセイを行った結果、ARの転写活性化因子である RanBPMを候補タンパ
ク質として得た。in vitro及びin vivo解析によって、GAPDHがRanBPMと結合することを 示し、さらにGAPDHがRanBPMと相乗的にARの転写活性を高めることを明らかにした。
1E13
BRI3はアンドロゲン受容体の転写活性を抑制する○吉元貴子,中尾元幸, 山地亮一,乾博,中野長久(大阪府大院・応生化)
【目的】 BRI3はBRICHOSドメインを持つBRIファミリー(BRI1~3)メンバーである。BRI3 はβ-amyloid precursor protein(APP)の切断酵素のβ-site APP-cleaving enzyme 1と相互作用 し、さらにBRI3とBRI2はAPPと相互作用することが報告されている。本研究ではBRI3の 機能情報を得るために、BRI3の局在を検討し、BRI3と相互作用するタンパク質を検索した。
【方法・結果】 RT-PCR実験より、BRI3が脳や精巣を含む様々な組織で発現していること が判明した。また組換え体BRI3をCOS-7細胞で発現させたところ、細胞膜や核周囲で観察 された。さらに酵母Two-Hybridシステムを用いたスクリーニングにより、BRI3と相互作用 する候補タンパク質として、ARの転写活性促進能を持つRanBPMを得た。BRI3はARコレ ギュレーターのコンセンサス配列(LXXLLまたはFXXLF)に似たFXXLL配列を持ってい るので、AR の転写活性に及ぼす BRI3の効果を検討したところ、BRI3がテストステロンに よって活性化したARの転写活性を抑制することが判明した。
1E14
エリ蚕中腸で発現する2種のペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)遺伝子○橋本和彦, 山野好章, 森嶋伊佐夫(鳥取大農)
【目的】バクテリア細胞壁ペプチドグリカン (PGN) は、昆虫において、抗菌性タンパク質 をはじめ様々な生体防御遺伝子の発現を誘導する。PGN 認識タンパク質 (PGRP) は、カイ コ体液から最初に単離され、その後、種々の昆虫及び脊椎動物からそのcDNAがクローニン グされている。本研究では、今までに知られている鱗翅目昆虫型 PGRP とは異なる2種の PGRP cDNAをエリ蚕 (Samia cynthia ricini) 幼虫からクローニングし、ノーザンブロット法 によりその発現を解析した。
【結果】2種のPGRP cDNA (1Aおよび1B) は、ショウジョウバエPGRP-LBと高い相同性 を示した。PGRP-1Aは中腸において恒常的に高レベルで発現しており、PGNあるいはバク テリアの注射により脂肪体で低レベルの発現誘導が認められた。PGRP-1BはPGNの注射に より中腸の他、脂肪体、血球で発現が誘導された。また、1A、1B ともにLB などの一部の PGRPに特異的なアミダーゼ活性部位を有していた。
1E15
Adiponectin 発現制御遺伝子の網羅的解析○田島 亜佳里、立花 宏文、山田 耕路 (九大院農院 生機科)
【目的】Adiponectin は脂肪細胞でのみ特異的に発現する生理活性タンパク質であり、その 発現低下は糖尿病や動脈硬化を惹起するが、Adiponectin を補充することでその病状は改善 する。これまでに Adiponectin の発現制御関連因子についての研究が行われてきたが、それ らはほとんど明らかとなっていない。そこで本研究では、 Adiponectin の発現を制御する遺 伝子の網羅的スクリーニングを試みた。
【方法・結果】Adiponectin のプロモーター活性が上昇した細胞のみが生き残る薬剤選択系 を構築し、その細胞にマウス胚由来の遺伝子断片ライブラリーを導入した。遺伝子断片を導 入した細胞に薬剤添加後、薬剤耐性クローンを選択し、その細胞から導入遺伝子断片を回収 し、その由来遺伝子を同定した。その結果、 Adiponectin の発現を制御する可能性のある遺 伝子として数種類の遺伝子を同定した。