1 . 光と電磁波
Ⅲ . 宇宙を調べる方法
・天体を調べる手段:天体が発する電磁波の観測が(ほぼ)唯一
・電磁波は波長(λ)と振動数(ν)を持ち真空中では、
λν=c (光速度:定数、
3
×10 8 ms -1
) の関係がある・電磁波の粒子の性質に注目する場合は光子と呼び、
E=hν=ch/λ のエネルギーを持つ( h
はプランク定数)※左は電磁波が横波であることを示す図、右は振動数(周波数)と波長の関係図
2021
・電磁波は波長の順に分類され、波長の長い方から
<電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線>
※マイクロ波は電波のうち波長に短いもの(通常は電波の一部とみなす)
2 . 大気の窓
・電磁波の波長によっては地球大気から吸収を受ける
・透過するのは、可視光と電波(の一部)のみ
・観測地によっては赤外線など一部も観測可能
(高山、砂漠、南極、などは水蒸気の影響が少ないので
水蒸気の吸収の影響のある赤外線の一部が観測可能に)
・透過しない波長は、ロケット、人工衛星などで観測
※色のついているところは大気の吸収を受ける波長帯
2021
1 . 光と電磁波、2.大気の窓
Ⅲ.宇宙を調べる方法
波長
・電磁波は (λ)と (ν)を持ちλν=c(光速度
)
・粒子の性質に注目する場合は光子:E=hν=ch/λ(
h
は定数)・電磁波は波長の順に分類され、地上に届くのは可視光と電波
振動数
まとめ3-1
3 . 天体観測の手法
【撮像観測】:特定の波長で天体の見かけの姿を画像で捉える
・明るさの測定などの量的解析や比較して天体を調べる
【位置観測】:点状天体では位置の測定で解析するものも
※左下図は様々な波長で撮像観測した銀河の画像
※右上図は空の1領域を連続して撮った中に写った移動天体(デブリ)の概念図
2021
【測光観測】:天体の明るさ(の変化)を捉える
・点状天体で明るさを測定(精密測定では
0.01
等以下も可能)・明るさの変わる天体(変光星)では測光で変光の理由を探る
※左は変光星を時間をおいて撮った写真例、右はその明るさ変化のグラフ
・天体からの光は色々な波長の光が含まれる
→
波長帯ごとに測らないと正確な評価ができない・特定の波長帯を通すフィルターで測光する
→
3色(UBV)以上のフィルターを組み合わせる※前ページの変光星グラフで色の違う点はフィルターを変えて撮ったデータを表す
【分光観測】:波長ごとの光強度を詳しく調べる 2021
・波長ごとの光強度のパターンをスペクトルと呼ぶ
(光の帯、もしくはそれをグラフ状にしたものもスペクトル。
下図の中の光の帯、もしくは下の赤線、どちらもスペクトルと呼ぶ)
・天体の温度、組成、密度、速度、などの物理量を解析できる
【偏光観測】:電磁波の偏光を観測
→
磁場の様子などを知る3 . 天体観測の手法
フィルター
スペクトル
【撮像観測】:特定の波長で天体の見かけの姿を画像で捉える
【測光観測】:天体の明るさ(の変化)を捉える
特定の波長を通す で測光するのが一般的
【分光観測】:波長ごとの光強度を詳しく調べる
・波長ごとの光強度を
と呼び天体の物理量の解析に使う
まとめ3-2
2021
4 . 光学望遠鏡
肉眼:6等星が限度(角度では1’)
→
暗い天体はより集光が必要肉眼では瞳孔が開くと光が多く 入射し、暗いものが見えるが 限界がある。左は視力検査の
C
で解像度を調べるが限界が。より多くの光を集める道具=望遠鏡
⇒レンズや鏡の直径(口径)が大きいほど集光力大、解像力大
【望遠鏡の方式】:
・屈折式(レンズで集光):色収差がある、メンテナンス容易
・反射式(凹面鏡で集光):色収差がない、大型化しやすい、
【架台の方式】:
・経緯台(上下左右)
・赤道儀(極軸を持つ)
※色収差は波長で屈折が違うためピントがずれる現象(下図)
※赤道儀の極軸は地球の自転軸方向に合わせることで日周運動の追尾が可能
2021
光学望遠鏡のいろいろ
65cm
屈折望遠鏡(国内屈折最大)8m
すばる望遠鏡(日本最大)TMT
望遠鏡(30m)
、計画中3.8m
せいめい望遠鏡(国内最大)4 . 光学望遠鏡
反射式
【望遠鏡の方式と架台の方式】:
・屈折式(レンズで集光):色収差あり、メンテし易い
・ (凹面鏡で集光):色収差なし、大型化容易
・経緯台(上下左右)と (極軸を持つ)
65cm
屈折望遠鏡8m
すばる望遠鏡赤道儀
まとめ3-3
5 . 観測装置
2021【観測データの記録】
・肉眼観測
→
データとして残らない(スケッチ等は可能だが)・写真
→
化学反応で残す、効率が悪い(下図は現像過程の例)・半導体素子(CCD、CMOS)
→
光を電気に変換、高効率※下段、左は写真乾板、中はCCD素子、右はCCD素子の電子の動き
写真乾板
(a)
とCCD(b)
の感度の違い(A. Tyson, Astron. J. 96 (1988))
(写真はネガ(白黒反転)、写っている星の数の違いに注目)
・現在はほぼ半導体素子による観測
・高効率、広いダイナミックレンジ、コンピュータに取り込める
※ CCD
と写真フィルムのダイナミックレンジの違い(左図の直線と下の曲線)2021
半導体素子 5 . 観測装置
【観測データの記録】
・写真は化学反応のため低効率
・現在はほぼ (CCD,CMOS)による観測
・高効率、広いダイナミックレンジ、コンピュータに取り込める
写真乾板
(a)
とCCD(b)
の感度の違い(A. Tyson, Astron. J. 96 (1988))
まとめ3-4
【分光器】
・撮像、測光
⇒
CCDでデータを電気信号に・波長情報を得るにはCCDに入力前に分光の必要:分光器
※プリズムと回折格子
による分光例(上図)左は典型的な分光器 の内部構造の例
2021
・分光器による観測データの例:
(どちらも波長別の光強度なのでスペクトルと呼ぶ)
・
↓
光の帯状態のスペクトル(記録そのまま)
・
↓
グラフ表示のスペクトル(測定などはこの方式)
※左のような光の帯が分光器で記録された生データに近い。
右のグラフは光の帯の波長方向(横方向)を横軸にとり波長ごとの光強度 を縦軸に取ったグラフで、解析にはこちらを使う(こちらもスペクトルと呼ぶ)
【能動光学と補償光学】
・望遠鏡の性能を限界まで引き出す手法
・「能動光学」:望遠鏡の鏡面を
アクチュエータで整える(下左図)
・「補償光学」:大気による波面乱れを 鏡面の変形で補正する
(下右は補償光学による像の改善例)
2021
補償光学
スペクトル
【分光器】
・物理的なデータを得るため分光の必要性:分光器
・波長別の光強度である を取得する
【能動光学と補償光学】
望遠鏡性能を引き出すため工夫
・能動光学:望遠鏡の鏡面を整える
・ :大気の乱れを補正する
まとめ3-5
6 . 電波望遠鏡
・大気の吸収のため可視光以外で地上に届く波長が電波
⇒可視光についで早くから天体の観測に使われた
2021
・電波は可視光に比べて波長が長いので大きな反射鏡が必要
←
6m(三鷹)45m(野辺山)
→
100m↓
(グリーンバンク)300m
(プエルトリコ)
↓
・単一鏡では大きさに限界があり解像度で光学望遠鏡に劣る
(可視光との波長差4桁以上)
⇒複数の望遠鏡の組み合わせで解像度アップ(干渉計)
【干渉計】
※左は干渉計の概念図:離れた2台の望遠鏡のデータを併せて解析する
右は実際の干渉計の例(野辺山の太陽電波干渉計)2021
・干渉計では、大陸間や宇宙との組み合わせも可能
⇒光学望遠鏡以上の解像度を実現
※左は宇宙に打ち上げて干渉計を構
成するための日本の衛星「はるか」下はアンデスの広大な高山の砂漠地 帯を使った大規模な干渉計の例
(
ALMA
望遠鏡)6 . 電波望遠鏡
電波
干渉計
・可視光以外で地上で観測可能 :電波望遠鏡の開発
・波長が長く解像度が劣るのを補うため: を使う
まとめ3-6
7 . 多波長の観測
2021・可視光、電波以外は高山、気球、飛行機、等で観測するか、
ロケットや人工衛星を使って、宇宙から観測する
赤外線観測衛星「あかり」
<赤外線>での観測例
銀河の低温のダストなど
X線観測衛星「すざく」
<X線>
高温の降着円盤など
2021
γ線観測衛星「GLAST」
<
γ
線>超高温の爆発現象など
・可視光でも宇宙に出ると 大気の影響を避けられる
※上段:ハッブル望遠鏡とその画像例、下段:後継の JWST
(打ち上げ準備中)7 . 多波長の観測
2021大気
赤外線
・可視光、電波以外は主にロケットや人工衛星で宇宙から観測
< >:低温のダストなど
<X線>:高温の降着円盤など
<
γ
線>:超高温の爆発現象など・可視光でも宇宙に出ると
の影響を避けられる
まとめ3-7