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ヒカリカモメガイ由来の 発光タンパク質(フォラシン)

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【解説】

ヒカリカモメガイ由来の

発光タンパク質(フォラシン)

小さな発見に至るまでの長い道のり

久世雅樹

ヒ カ リ カ モ メ ガ イ の 発 光 器 に は 発 光 タ ン パ ク 質(フ ォ ラ シ ン)があり,活性酸素種 ROS の刺激により青色に発光す る.フ ォ ラ シ ン はROS検 出 キ ッ ト と し て 市 販 さ れ て い る に もかかわらず,発光に関与しているクロモフォア(発光を司 る化学構造)の構造は不明であった.そのため,フォラシン の遺伝子発現はすでに達成されていたが,クロモフォアを構 成することができず発光させることは不可能であった.筆者 ら は ト ビ イ カ の 発 光 基 質 で あ る デ ヒ ド ロ セ レ ン テ ラ ジ ン が フォラシンの基質であることを突き止めた.本稿では,ヒカ リカモメガイの科学研究における長い歴史の紹介と,フォラ シンの基質を特定するに至った経緯について紹介する.

海洋発光生物と発光タンパク質

最近,海に潜って水中生物の写真を撮ることを趣味に している.海中では1 cmにも満たないエビの仲間から,

大きなウツボやエイまでのさまざまな生物を間近で見る ことができ,そっと近づけば写真を撮らせてくれる.水 中生物はわれわれダイバー(部外者)に対して寛容であ

り,陸上ではなかなか味わうことのできない生物との

「近い距離感」を楽しむことができる.潜れる範囲は水 深40メートルまでの沿岸域と限られるが,色彩豊かな 生物を見ることができ,海洋生物の多様性を実感でき る.図

1

の水中写真を見ていただくとフラッシュ光が届

Pholasin, the Photoprotein from a Bioluminescent Mollusk : Long  History to Find Its Organic Substance

Masaki KUSE, 神戸大学大学院農学研究科

図1水深20 mにおける水中写真

上部の矢印で示したアカマツカサの赤色はフラッシュ光が届いて 赤色に見えるが,下に矢印で示したように同じ魚でも離れるとフ ラッシュ光が海水によって吸収されてしまい灰色に写る.

(2)

く範囲は色鮮やかに写っているが,少し離れると色彩が 乏しく灰色の世界になることに気がつくであろう.これ は海水が赤色の光をより吸収しやすいためである.青色 から黄色にかけての色合いは離れていてもよく見える.

この海水の性質が海洋発光生物の放つ光の色(波長)に 大きく関係している.

光は波長をもった電磁波の一部であり,可視光とは 400 nmから700 nmまでの波長を指す.海水は600 nm 以上の赤色の波長をよく吸収するので,生物は青色から 緑色に発光するほうが効率良くシグナルとして利用でき るのであろう.そのため海洋発光生物には青から緑色に 光るものが多い.しかしながら,なかには赤色に光る生 物が実在しているのも事実である.また,赤色の魚は水 中では黒っぽく見えるので外敵から認識されにくい利点 もある.

2008年のノーベル化学賞受賞で有名になった緑色蛍 光タンパク質 (GFP) は緑色の蛍光を放つ.蛍光とは,

基底状態にある分子がエネルギーを吸収して一重項励起 状態となり,過剰のエネルギーを光として放出して基底 状態に戻ることを指す.GFPが蛍光を出すためには何 らかのエネルギーの供給が必要であり,この役割を果た しているのがイクオリン (aequorin) である.イクオリ ンは発光タンパク質 (photoprotein) と呼ばれる(1)

.発

光タンパク質とはホタルのルシフェラーゼ(酵素)(2,3) 

と区別するための用語である.ルシフェラーゼは基質で あるルシフェリンの酸化反応を触媒し,光を放つ.この 反応はルシフェリン−ルシフェラーゼ反応(L‒L反応)

と呼ばれ,酵素反応であるので放たれる光の量(発光 量)は基質のモル数に依存する.一方,発光タンパク質 は,その分子構造中にクロモフォア(発光を司る化学構 造)があり,これが分解することで発光する(図

2

このため,発光量は発光タンパク質のモル数に依存す る.発光量がタンパク質の濃度に依存するか否かで発光 タンパク質とルシフェラーゼが区別できよう.蛍光を発 する蛍光タンパク質を含めると,3種類の光るタンパク 質が存在していることになる.イクオリンのほかの発光

タンパク質には,トビイカ由来のシンプレクチン (sym- plectin)(4), ヒカリカモメガイ由来のフォラシン (phola- sin) がある.本稿ではこのフォラシンについての詳細 を紹介する.

ヒカリカモメガイ ( )

ヒカリカモメガイ ( ) はイギリス南西 部の海岸に生息する二枚貝であり,岩に穴を掘って一生 を過ごす.おそらく餌を捕獲するためであると思われる が,管状の器官の中が発光する(図

3

.この器官の中

には発光器と呼ばれる光を発するための部位があり,こ の中に発光タンパク質(フォラシン)が存在している.

沿岸部の護岸工事による生息地の縮小,そして食用や夜 釣りの餌用とするための乱獲により,近年その生息数は 減少している.

ヒカリカモメガイに関する記述の歴史

生物発光研究の歴史についてはHarveyとRodaによ る優れた書籍(5, 6) がある.ここではヒカリカモメガイの 科学研究の歴史について焦点を絞って紹介する.ヒカリ カモメガイに関する記述の始まりは古代ギリシャ時代に までさかのぼる.Alistotle(アリストテレス)(紀元前 384 〜 322年)は海洋生物が発光し,その光は熱を発し 図2発光タンパク質における発光機構の概略図

アポタンパク質は発光基質と結合しクロモフォアを構成し発光タンパク質となる.クロモフォアは活性酸素などの刺激により酸化され過酸 化物へと変化し,これが分解するときに生じるエネルギーを光として放出する.発光後,クロモフォアは酸化物へと変化する.

図3ヒカリカモメガイの写真

ヒカリカモメガイ(左)の管状の器官(赤丸で囲んだ部分)の中に 発光器がある.管状の器官を切り開いた状態を赤丸で囲んである

(中央).その中の発光器が発光している様子(右).

(3)

ない冷たい光(冷光)であると記述している.その後 Pliny the Elder(大プリニウス)(西暦23 〜79年)はヒ カリカモメガイに関する詳細を記している.

という言葉は,Plinyの著書『

 (IX, 87)』のなかで述べられており,ヒカリカモメ ガイを珍味として好んで食べるローマ人によって名づけ られたと記述されている.Plinyの原文に対するRodaの 英訳(6) を自分なりに訳して紹介する.

「人の指の爪に似ていることに因んで名づけられたそ の貝(ヒカリカモメガイ)は「dactyls(指)」である.

光のない暗い岩の穴に住んでいるので,外に向かって 輝く光を放つ.面白いことには,それを食べた人の口 の中でも光り,その手も光り,さらには飛沫のとんだ 地面や衣類などあちらこちらが光っている.この貝に は体液が光るという性質があることは明白である.」

この記述は皇帝ネロの時代あたりにおけるローマでの 逸話であり,人々がヒカリカモメガイを口からあふれん ばかりに食べ,口の周りや手を光らせて神秘的な晩ごは んを薄暗いテーブルで食べている様子が,2000年近く 経過した今でも現実味をもってユーモラスに想像できる こ と は 実 に 興 味 深 い.な お, は ラ テ ン 語 の pholadesに由来し,穴に潜むという意味である.

ローマ時代が終焉(西暦500年頃)を迎え,その後中 世から16世紀にかけてはヒカリカモメガイに関する記 述は見つかっていないようである.この頃になると,ホ タルなどの光る生物についての記述が世界各地で見られ るようになる.日本では,壇ノ浦の戦い(西暦1185年)

で亡くなったたくさんの兵士の魂がホタルとなり,勝利 を挙げた源氏に因んでゲンジボタルが,敗れた平家に因 んでヘイケボタルと名づけられた逸話は有名であろう.

17世紀に入る頃には科学 (science) の概念が形成さ れ始めた.Galileo Galilei(ガリレオ)が活躍した時代で ある.ボローニャ大学(伊)の教授 Ulisse Aldrovandi

(西暦1522 〜 1605年)は1602年の著書のなかでヒカリ カモメガイの詳細な記述とスケッチを残している.現代

では,すぐにデジタルカメラで写真を撮ってしまうが,

じっくりと時間をかけて生物を観察し,写真のように詳 細なスケッチを残してきた先人の偉大さにただ驚嘆する ばかりである.この17世紀において生物発光に関する 研究の方法論が形成されていく.18世紀には高度な実 験科学の時代に入り,特に「酸素」の発見は生物発光研 究において重要な事項と言える.ナポリ(伊)のSpallan- zaniは1797年に, の発光部を小麦粉でまぶして ペーストとしてから乾燥させたものは,1年経過しても 水や海水を加えると発光することを報告している.彼は 空気(酸素)と水と発光性の物質が光の生成には必須で あることを見いだしたのである.今から200年以上前に 達成された偉業といえる.

19世紀は Charles Darwin(ダーウィン)が活躍した 時代である.発光する生物はさまざまな生物種で見ら れ,また発光する部位もさまざまであり,彼の自然淘汰 の理論では説明の難しいものであったと述べている.こ の19世紀において科学は成熟し,物理・化学・生物と いう分野が形成されていくのである.

ヒカリカモメガイの科学研究の始まり

Spallanzaniの記述から100年経過した頃,リヨン(仏)

の科学者 Raphael Dubois が生物発光は化学反応の結果 であることを遂に実証する.Duboisはヒカリカモメガ イ発光部位をすりつぶしペーストとし,冷水に溶かし淡 く光る溶液を作成した.これを2つに分けて,一方を光 が消えるまで煮沸した.これを冷却したのち,先ほどの 冷水と混ぜると再び発光が開始することを発見した.

1887年におけるこの発見は,生物発光研究における最 大の貢献といえる.Duboisは生物発光とは本質的に化 学的であり,煮沸しても壊れない熱に安定な物質はおそ らく有機分子であることを見いだし「luciferine」と命 名した.冷水中に含まれるものは熱に弱いが発光を促進 する物質(発光酵素)であり,これをルシフェラーゼ 

(luciferase) と命名した.当時は酵素が発見された時代 であり,語尾に「ase」つける慣例に従ってこの名に なったそうである.「Luciferine」から語尾の「e」を外 した用語が現在でも利用されるルシフェリン (luciferin) 

である.この熱水抽出物(ルシフェリン)と冷水抽出物

(ルシフェラーゼ)とを混ぜて発光する反応がルシフェ リン‒ルシフェラーゼ反応である.Duboisはルシフェ ラーゼなしでも,過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を 加えるとルシフェリンが発光することも発見している.

現在から120年以上前に,これほどの偉業がすでに達成

(4)

されているということは,そこに至るまでの2000年近 い長い歴史と伝統に裏づけられた西洋文化における知識 の蓄積と「philosophy」というものがいかに重要なのか を再認識させられる.

ヒカリカモメガイの研究の発展

生物発光の研究は20世紀になると一斉に花開き,世 界中で展開されることになる.ヒカリカモメガイの研究 はその後もフランスで展開され,1970年代にはMichel- sonらが遂にルシフェリン( ルシフェリン)を単 離する.これは糖タンパク質(分子量35 kDa)であり,

クロモフォアをその分子中に保持していた(この ルシフェリンはその後Robertによってフォラシンと 命名された)(7)

.Michelsonらはルシフェラーゼの単離

にも成功し,これは銅イオンを含んだペルオキシダーゼ であった.Michelsonらの研究により,ルシフェラーゼ がなくてもフォラシンを光らせる条件が見つかり,活性 酸素種 (ROS) が最も強く発光させることが発見され る.その後,イギリスのRobertとKnightはKnightサ イエンス社を立ち上げ,ヒカリカモメガイを養殖し,

フォラシンを精製してROSの検出キットとして利用す ることに成功している(8)

.2000年にはドイツのReichl

らのグループがペルオキシダーゼと過酸化水素の混合物 がフォラシンを強く発光させることを報告しており(9)

同年,イギリスのCampbellらのグループはフォラシン の遺伝子を昆虫細胞で発現させることに成功してい る(10)

しかしながら,クロモフォアの構造が不明で あったため,発現フォラシンを光らせることには成功し ていなかった.GFPは自分自身のアミノ酸の自己縮合 により蛍光物質を構成できるが,フォラシンはその機能 をもたないため,基質となる有機分子を加えない限り発 光できないのである.21世紀に入っても市販のフォラ シンは天然由来の精製品しか発光しない状況が続くこと になる.

トビイカの発光タンパク質(シンプレクチン)

フォラシンのクロモフォア構造の決定にはトビイカの 発光タンパク質(シンプレクチン)の研究が大きなヒン トを与えることになる.名古屋大学大学院生命農学研究 科では磯部らによりトビイカの発光機構に関する研究が 行われていた.磯部らはトビイカの発光タンパク質はデ ヒドロセレンテラジン (DCL) を基質として発光するこ とを1993年に報告している(11, 12) (図

4

.その後,DCL

がタンパク質のシステイン残基に結合して還元型クロモ フォアを形成して発光するという生物発光機構を提唱し た.その後,筆者はこの研究グループに参画し,有機合 成化学を基盤として生物の光る仕組みを解明するという 磯部の研究哲学(13, 14) を学びながら,さまざまなDCL誘 導体(合成プローブ)を化学合成し,最終的にはクロモ フォア形成部位の特定に成功している(15) (図

5

このシンプレクチンはROSで強く発光することを Shimomuraが報告している(16)

.ROSがどのような役割

を果たしているのかは,その後長い間疑問として心に 引っかかっていた.あるとき,ROSで光るタンパク質 はほかにもあるはずだと考えて,調べてみるとROS検 出キットとしてフォラシンが市販されていることに気が ついた.よく調べるとフォラシンの発光に必要な基質の 分子構造が不明であることがわかった.ここですべてが つながる瞬間を迎えることになる.

図4デヒドロセレンテラジン DCL の化学構造

図5シンプレクチンの発光機構 フッ素化DCLはシンプレクチンの 390番目のシステイン残基と安定なク ロモフォアを不可逆的に生成し発光 する.

(5)

フォラシンとデヒドロセレンテラジン DCL

筆者らは,フォラシンのクロモフォアはトビイカと同 様にDCLで構成されているのではないかと推定した.

そこで,市販のフォラシンにDCLを加えて光らせてみ た.その結果,DCLの添加によりフォラシンの発光は 著しく強くなることを見いだした(17) (図

6

しかしながら,DCLが本当の基質ではないが偶然基 質として働いている可能性も残っていたので,実際に DCLをフォラシンから抽出して証明する必要があった.

まず,トビイカから単離されたアセトン付加体の抽出法

を参考にして,フォラシンをアセトンで処理してみた が,アセトン付加体は単離できなかった.フォラシンの クロモフォアもシンプレクチン同様にシステイン残基に 結合しているのであれば,過剰のチオール化合物(ジチ オスレイトール:DTT)で処理すればクロモフォアを DTT付加体へと変換できるのではないかと考えた(図

7

シンプレクチンのクロモフォアはDCLと平衡の状態に あり,シンプレクチンの状態ではクロモフォアとして安 定であるが,タンパク質の構造を破壊するとすぐに DCLを放出する.この性質により,シンプレクチンの 活性部位の特定の際には苦労させられたが,平衡反応を 逆に利用することがフォラシンからDCLを抽出する際 には都合が良いことになった.

市販のフォラシンをメタノールに懸濁させ,過剰の DTTを加え撹拌した.その後上澄みを集めると蛍光を 示す化合物の抽出に成功した(図7)

.抽出量はごく微

量であったため,別途化学合成した標品と比較しながら 磯部らの手法(18, 19)  を用いて質量分析した.その結果,

フォラシンから抽出された蛍光物質は間違いなくDCL のDTT付加体であることが証明できた(20)

.DCLの添

加によりフォラシンの発光強度が増加すること,DCL のDTT付加体がフォラシンから抽出できたこと,そし てDCLを添加したフォラシンの発光スペクトルがヒカ リカモメガイの発光スペクトルと一致したことから,

フォラシンのクロモフォアはDCLを基質として形成さ れていると結論づけることができた.1887年における 図6フォラシンの発光プロファイル

横軸は経過時間(秒)で,縦軸は光の強さを表している.市販の フォラシンンは青色で示した発光パターンを示す.これにDCLを 加えて発光させると,ピンク色で示すように発光強度が増加する.

図7フォラシンのクロモフォアを DTT付加体へと変換するスキーム フォラシンのクロモフォア(左上)

はDCL(右上)と平衡の関係にあり,

クロモフォアの状態が安定である.

過剰のDTTで処理すると,この平衡 はDTT付 加 体(右 下) へ 移 動 し,

DTT付加体の抽出が可能になる.そ の結果,蛍光物質として有機溶媒で 抽出できるのである(左下).クロモ フォアはフォラシン中では安定であ るうえにシステインと結合している ため,直接有機溶媒で抽出すること はできない.そのため,長年その化 学構造が不明であった.

(6)

Duboisのフォラシンの発見から120年以上経て遂に基質 の構造が判明した瞬間であった.

おわりに

以上,フォラシンのクロモフォアがデヒドロセレンテ ラジン (DCL) で構成されているという小さな発見に至 るまでの長い道のりについて紹介してきた.①Dubois がフォラシンを発見し,その後もヨーロッパで研究が続 きROS検出キットが完成していたこと,②磯部らがシ ンプレクチンの発光基質がDCLであることを発見して いたこと,③ShimomuraがシンプレクチンもROSで発 光することを発見していたこと,この3つの要素のうち いずれが欠けてもフォラシンのクロモフォアの化学構造 は決定できない.当然ながらDuboisの発見に至るまで の長い歴史のどれ一つ欠くことはできない.その歴史が 古代ギリシャ時代にまでさかのぼるということは,生物 発光という神秘的な現象が人々をいかに魅了し続けてき たのかということを証明しているのであろう.おそらく 文字など存在しない古代から人類はこの現象に絶えずひ きつけられていたに違いない.さまざまな時代と地域に おいて多くの人々が生物発光に興味をもち,何らかの知 識を少しずつ得て,それを文書に残して蓄積してきたこ との重要性が再認識できる.フォラシンがDCLを利用 して発光している事実は,その長い歴史のなかにおいて は小さな発見であるが,これによりフォラシンに関する 科学研究がさらに展開できることになったことも事実で あり,こうしてフォラシンの科学研究の歴史はさらに積 み重ねられていくのである.

本稿で紹介したのは生物発光研究における歴史と進歩 のごく一部であるが,ヒカリカモメガイだけでもかなり の知識が蓄積されて現在に至っていることが伝われば幸 いである.

謝辞:研究とは何かをゼロからご指導くださいました磯部 稔先生(名 古屋大学名誉教授,台湾國立清華大學教授)に深く感謝いたします.ま た,有益なご助言や多くの励ましを賜りました西川俊夫先生(名古屋大 学大学院生命農学研究科教授),ならびに滝川浩郷先生(神戸大学大学院 農学研究科教授)に心より感謝いたします.そして本研究を支えてくだ さった多くの共同研究者の皆様に深く御礼申し上げます.

文献

  1)  寺西克倫:化学と生物,47, 457 (2009).

  2)  大場裕一,井上 敏:化学と生物,45, 681 (2007).

  3)  加藤博章,中津 亨:化学と生物,45, 239 (2007).

  4)  金久保 暁,久世雅樹,磯部 稔:化学と生物,41,  605 

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  5)  E.  N.  Harvey:“A  History  of  Luminescence  from  the  Ealiest  Times  until  1900,”  American  Philosophical  Soci- ety, Philadelphia, PA, 1957.

  6)  A.  Roda:“Chemiluminescence  and  Bioluminescence :   Past, Present and Future,” The Royal Society of Chemis- try, Cambridge, 2011, p. 3.

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  12)  H. Takahashi & M. Isobe : , 843 (1994).

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  14)  磯部 稔:化学と生物,50, 609 (2012).

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  17)  M.  Kuse,  E.  Tanaka  &  T.  Nishikawa : , 18, 5657 (2008).

  18)  M. Kuse, T. Franz, K. Koga, S. Suwan, M. Isobe, N. Aga- ta & M. Ohta : , 10, 735 (2000).

  19)  M. Kuse, A. Kanakubo, S. Suwan, K. Koga, M. Isobe & O. 

Shimomura : , 11, 1037 (2001).

  20)  E. Tanaka, M. Kuse & T. Nishikawa : , 10,  2725 (2009).

プロフィル

久世 雅樹(Masaki KUSE)    

<略歴>1995年名古屋大学農学部農芸化 学科卒業/2000年同大学大学院生命農学 研究科博士課程修了/同年同大学大学院生 命農学研究科リサーチアソシエイト/2001 年同大学化学測定機器センター助手/2004 年同大学物質科学国際研究センター助手/

2007年同助教/2011年神戸大学大学院農 学研究科准教授,現在に至る<研究テーマ と抱負>有機化学を基盤とした海洋発光生 物の光る仕組みの解明.一つ謎が解けると また新しい謎が生まれる摩訶不思議さに魅 力を感じているので,基礎科学指向型の研 究に挑み続けたい<趣味>水中写真撮影,

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Referensi

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