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かずさDNA研究所ニュースレター

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Academic year: 2024

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(1)

* 新年にあたって

早いもので、このニュースレターの発行を開始し てからもう2年が経過し、今号は第25号になりまし た。この間、当研究所で定期的に行なわれている各 種の催し物の開催予定や結果の報告記事、それぞれ の研究部の最前線で活躍している研究者による研究 の概要、当研究所の施設や設備の紹介、その時々に 注目されている科学上のトピックスの解説などを載 せてまいりました。発行以来の統計データを見てみ ますと、毎回、発行直後に400件から600件のダウ ンロードがあり、号によってはその後もかなりの長 期間にわたって引き続き一定程度のダウンロードが 続いているのがわかります。

それぞれの号でダウンロードされる数にはかなり の差がありますので、掲載した記事によって読まれ 方が異なっているのだと思われますが、残念なが ら、特定の号のどの記事がどれだけ読まれているの かについては知る術がありません。また、当研究所 と同じような組織で発行しているニュースレターが どの程度広く読まれているのかについてもデータが ないので何とも言えません。今後はそのような点も

調べ、よりよいニュースレターをお届けできるよう に心がけていこうと考えております。

このニュースレターの発行目的は、第一に、公的 な資金で運営されている当研究所で、どのような研 究がどのように行なわれているのかを県民の皆様に 知っていただくことにあります。そのために、科学 的な内容を損なわない範囲でできるだけ専門用語 を避け、平易な文章で表現することを心がけてまい りました。一人でも多くの県民の皆様に当研究所 の活動に関心をもっていただければ幸いです。

かずさDNA研究所・常務理事 磯野克己

かずさDNA研究所ニュースレター

25 201016

新年号からニュース レターのレイアウト を変更しました。

財団法人 かずさDNA研究所 http://www.kazusa.or.jp/

〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-6-7   TEL : 0438-52-3956 FAX : 0438-52-3901

公開講座のお知らせ

2010年1月16日(土)、30日(土)に 開催いたします。詳細はホームペー ジ  (h t t p : / / w w w.kazusa.or.jp/j/

course/seminar.html)  をごらんくだ さい。

(2)

バイオ産業技術支援センター全般については一昨年 9月のニュースレターでも紹介しましたが、今回はそ の一部門である「生体物質解析センター」における受 託化合物解析について紹介します。

意外に思われるかもしれませんが、生体に含まれる さまざまな化合物の多くは、どういう構造をしていて どういう働きをしているのかほとんどわかっていませ ん。また食品を調理したり、食品が劣化したりした 時に生ずる化合物の多くもどういう構造のものかよ くわかっていないのです。このように多くの未知化合 物があるということは、まだまだ知られていない有用 な化合物も有害な化合物もあるということになりま す。そこで私たちは、一つでも多くの未知化合物を解 明するために様々な研究を重ねてきました。これまで 私たちが培ってきた技術やノウハウは、今後いろいろ な産業分野で応用できる可能性を秘めています。例え ば、肥満解消を始めとした健康増進の働きをもつ機能 性食品の開発やその品質の評価、あるいは新薬の開発 過程での作用・副作用の評価などです。

私たちはFT/ICR-MS, Orbitrap-MSあるいはTOF- MSと名付けられた高精度の「質量分析装置」と、私た ちが独自に開発してきたデータ解析のためのソフト ウェアを駆使することによって、上に述べたような課 題の解決に少しでもお役に立てるよう、日々業務にあ たっています。質量分析装 置についてはこれまでにも ニュースレターで何度か取 り上げてましたが、この装 置は要するに化合物の質量  (重さ)  を分子のレベルで正 確に測定する“はかり”と考 えていただいて結構です。

化合物分子にはそれぞれ固 有の質量がありますので、

その質量が高精度でわかる と、それがどのような化合物であるかを推定すること ができるのです。

例えば、トマトを例にし て考えてみます。トマトの 果実に含まれる赤色のリ コペンと呼ばれる色素は 536.43820の質量をもって おり、また毒性をもつ物 質 で あ る ト マ チ ン は 1033.54576の質量をもつ

化合物として検出することができます。もちろん、ト マトにはその他にもたくさんの物質が含まれているの ですが、それらの一つ一つを丹念に調べていくという これまでの方法ではそれらの全てを把握するのには限 界がありました。そこで、私たちは、質量分析装置で 得られたデータから物質の質量を一挙に取り出すソフ トウェアを開発しました。

このソフトウェアを用いますと、解析の対象とする 試料の中に含まれるさまざまな物質の質量を一斉に検 出できるだけでなく、それらがどのような構造や働き を持つ化合物なのか、またどれくらいの量が含まれて いるのかを短時間のうちに知ることができます。この ようにして、一回の分析で得られたデータをこのソフ トウェアで処理することにより、トマトには数千個も の多くの物質が含まれていることがわかるとともに、

それぞれの化合物がどれだけ含まれているかも一挙に わかるのです。

さらに、いろいろな生物試料のデータ間の比較を行 うソフトウェアも開発し、特定の試料に特徴的な物質 をすばやく見つけ出すことも可能になりました。例え ばトマトの場合ですと、生育段階の試料をこのソフト ウェアで比較することにより、成熟するに従って抗酸 化作用を持つ有用物質リコピンが増加する一方、茎や 葉にある毒性物質であるトマチンは、果実が緑のうち は残っていますが、赤く成熟するにしたがって減少し

ていくことなどがわかりました。

今後は、ここに紹介しました高精度の質量分析装置 を用いた機器分析や、得られたデータを独自に開発 したソフトウェアを用いて解析する技術を向上させ るとともに、受託サービスのメニューをより一層充 実させ、より多くの産業分野の方々からの依頼にき め細かく対応することができるように努力していく 所存です。      

研究施設・機器の紹介 (8)

表1:解析ソフトによる結果の出力例

左側の赤丸で囲ったデータはトマチンに由来するもの。

 (拡大図) 

(3)

私たちは他の生物が作り出すさまざまな物質を利用 して生活しています。私たちの身近には、野菜や果物 をはじめ、米・小麦など数多くの作物があります。私 たちは長年の経験から、それぞれの作物の色や香りや 味を学び、食用として品種改良を重ねてきました。イ チゴを例にとりますと、赤く熟した果実の独特の甘い 香りや甘酸っぱい味を「おいしい」と認識してきまし た。いちごのこのような特徴は、分子量がせいぜい 2,000くらいまでの低分子有機化合物 (代謝物) の組み 合わせによるものです。植物は他の生物に比べて代謝 物の種類が多く、植物全体で20万種類はあるであろ うと言われています。各植物が作り

だす代謝物はそれぞれ異なっていま す。動物のように自由に移動できな い植物は、害虫・病原菌などの外敵 や過酷な環境などから身を守る手段 として、また受粉や伝播を促す手段 として、それぞれに適した代謝物を 作り出してきたのでしょう。私たち はそれらを食品成分や薬効成分とし て利用しているのです。

では、どの野菜にどのような代謝物 が含まれており、それらはどれだけ バラエティに富んでいるのでしょう か?今までそのような評価は非常に 難しかったのです。なぜなら、それ らの代謝物のほとんどが未知な化合 物であり、またそれらを感度よく分 析し、比較解析できるような技術が 十 分 確 立 さ れて い な か っ た か らで す。そこで私たちは、各代謝物の精 密な分子量を測定することのできる 高性能質量分析装置を用いて網羅的 に 野 菜 の 代 謝 物 の 分 析 を 行 い ま し た。そして、本研究所で開発した新 しい解析技術  (ニュースレター第20 号で紹介) を用いて代謝物の一斉比較 解析に取り組みました。その結果、

各野菜から数百〜数千の成分の検出が可能になり、特 に今まで構造の分からなかった未知の成分の組成式や 部分構造などの化学情報を得ることができました。そ して、トマトの果実で約850種類、ホウレンソウの葉 で600種ほどの代謝物の存在を明らかにしました。そ の結果、全ての野菜で共通に含まれる代謝物はアミノ 酸などごくわずかであり、予想以上に代謝物の構造が 多様であることが分かりました。例えば健康に役立つ とされるフラボノイドは、他の野菜類に比べホウレン ソウに非常に多様に存在することがわかりました。

野菜などの食用作物が作り出す 様々な代謝成分の一斉解析

生体機能応用研究室 研究員 飯島 陽子

  今月のキーワード  

〜「研究最前線」

にでてきた言葉の解説

代謝と代謝物:すべての生物は、植物が光合成によって作り出し たブドウ糖などの炭水化物を酵素の働きにより変化させ、生命活動 に必要なさまざまな機能をもった化合物を作り出しています。この 過程を代謝と呼び、その結果作られるものが代謝物です(ニュース レター10号・16号を参照して下さい)。味の、甘さ、辛さ、酸っ ぱさ、苦さなどはすべて含まれている代謝物のせいです。

植物と動物:よく知られていますように、植物は効率良い受粉の ために、さまざまな形をしたよく目立つ色の花を咲かせ、その中に 蜜を蓄えたり独特の匂いを出したりして昆虫を誘引します。また、

植物の果実も動物に食べられることで広い地域に散布されて分布域 の拡大に役立っています。その一方で植物は、食害や病虫害に対抗 するため、動物や微生物にとって有害な作用をもつさまざまな物質 を生産し分泌したりしています。古来私たちの祖先はこのような植 物の作り出す代謝物を栄養や薬として利用してきました。

野菜類:スーパーの野菜売り場には季節によっていろいろな種類の 野菜がならび種類が豊富なように見えますが、自然界にある植物の 種類に比べると非常に少ないものでしかありません。通常売られて いる野菜類を分類学的に見てみますと、アブラナ科、ナス科、マメ 科、ウリ科、イネ科などのごく少数の科に属するものが多いことに 気がつきます。かつてわれわれの祖先は、季節ごとに野山に入って もっと多くの種類の植物を採り、乾燥させたり塩漬けにしたりして 加工し保存して利用してきました。最近の野菜の種類の少ないのは 栽培が工場的になってきたせいかも知れません。

高感度・高性能 質量分析

高度な情報処理に よる解析法の開発

野菜代謝物 データ集

*野菜成分の事典

*学際的な分析基礎データ

*代謝物の多様性から“栄養”を評価

応用 多くの成分情報を

一度に獲得 高感度・高性能

質量分析

高度な情報処理に よる解析法の開発

野菜代謝物 データ集

*野菜成分の事典

*学際的な分析基礎データ

*代謝物の多様性から“栄養”を評価

応用 多くの成分情報を

一度に獲得

図1.野菜の代謝物情報の収集

研究最前線

(4)

今まで野菜に含まれる代謝物については、ビタミン などせいぜい数十種類のものしか把握されていません でしたので、このような大規模な代謝物の解析結果は 今までにない新しい観点からデータを提供することに なり、植物育種分野から食品・栄養分野など幅広い研 究分野において注目されています。野菜などの代謝物 には、味や香りなどの“おいしさ”を担うものだけでな く、生活習慣病の予防など私たちの健康維持にも関係 の深い食品機能性成分も含まれます。この網羅的な代 謝物データは、新しい機能性成分の発見や高付加価値 作物の育種に貢献することが期待されます。

食の安全・安心に対する消費者の関心は年々高まっ ています。とりわけ食品成分情報の基盤の確立は、農 薬・包装・土壌などからの混入成分の識別や、遺伝子 組換え食品の評価など様々な面にも応用できると考え ています。

細胞内でのタンパク質の役割の解析

<今月の花>

アブラナ

Brassica rapa

アブラナ科  (2009年1月20日撮影) 

黒潮の影響で温暖な気候の房総 では、昔から草花の栽培が盛ん で、冬でも色とりどりの花が咲 いています。中でも県花の菜の 花の色と香りはひと足早く春を 感じさせてくれます。

肺炎を起こす原因菌として知ら れるマイコプラズマは、ゲノムが 非常に小さく、独立して生育で きる最も単純な生物種の一つで す。そのため細胞のしくみを理解 するためのモデル生物として研究 されています。中でもこれまでに よく研究されている肺炎マイコプ ラズマ (M. pneumoniae) は、ゲノ ムの大きさが約82万塩基対であ り、予想される遺伝子の数が677 個と大腸菌 (約4300個)  の1/6し かありません。

欧米のグループは分担して、肺 炎マイコプラズマの中で働いてい るほぼすべてのタンパク質のはた

らきを解析し、それぞれのタンパ ク質の立体構造と、どのタンパク 質が互いに結合するのかを網羅 的に調べ、それぞれのタンパク質 が分子機械としてどのような役割 を演じているかを明らかにしま した。そして、電子線断層写真な どをもとにして細胞内でのタンパ ク質の配置を画像化しました。

さらに、細胞内で起こる反応を すべて特定し、8個の遺伝子が一 連の反応を制御する「分子スイッ チ」として働いていることを明ら かにました。

これらの研究は、細胞が増殖す るために必要な最小限のしくみ を明らかにするのに役に立ちま す。たった700個ほどの遺伝子し かもたない生物でも驚くほど複 雑なしくみを持っているのですか ら、マイコプラズマの6倍の遺伝 子をもつ大腸菌はもとより、多 くの細胞の集合体であるわたし たちの体のしくみはもっと巧妙 で複雑であると考えられます。

図2:野菜による代謝物の有無を比較する

色の濃淡は代謝物の量を表し、同じ行に並ぶものは共 通に含まれている代謝物であることを示しています。

代 謝 物 A 代 謝 物 B 代 謝 物 C 代 謝 物 D 代 謝 物 E 代 謝 物 F 代 謝 物 G 代 謝 物 H 代 謝 物 I 代 謝 物 J

Referensi

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