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アジア太平洋安全保障の新展開 視点 Point of View

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(1) 地域安全保障と主要国の秩序像の対立 多国 間で 安定的 な国際 秩序が 形成 される ために は、① 主要 国が平 和と安 定に対 する 共通の 秩序観 を持つ こと 、②そ のため の安全 保障 上の国 際ルー ル(明文化 ・ ある いは暗 黙の) を持 つこと が重要 な要素 とな るが、 アジア 太平洋 地域 では依 然とし て共通 の安 全保障 システ ムとア プロ ーチを 受け入 れる段 階に は至っ ていな い。そ れは 、少な くとも 以下の よう に、域 内諸国 間に地 域安 全保障 の秩序 像をめぐる対立が根深く存在するからである。

第一の対立点は、「同盟関係の意義」である。米 国とそ の同 盟国は 、冷戦 後も同 盟ネ ットワ ークの 意義を 変化 させな がら維 持して いる 。しか し、中 国や北 朝鮮 などは 、同盟 関係が 冷戦 時代の 遺物で あり、相互不信から生じる「安全保障のジレ ンマ」

を生み 出し 、東ア ジア諸 国間の 対立 を助長 すると 捉えがちである。

第二の対立点は、「多国間安全保障協力の期待値」

である 。中 国をは じめ東 アジア 諸国 の多く は、植 民地か らの 独立が 基盤と なって 第二 次大戦 後の国 家建設 を経 たこと から、 主権概 念と 内政不 干渉原 則に固 執し やすい 。安全 保障分 野に おける 国際協 調にも 慎重 で、た とえば ASE AN 地域フ ォーラ ム(A RF) に お け る 安 全 保 障 協 力 の ペ ー ス が 、

「すべての参加国が受入れ可能な漸進的なもの」と ならざるを得ない淵源となっている。

第三の対立点は、「共通の安全保障措置を導入し た場合 の相 対利得 をめぐ る認識 の差 」であ る。実 効性が 高い 規制措 置の導 入ほど 、各 国の受 け入れ る政治 的コ ストが 高くな り、さ らに 異なる 国力間

の軍事 レベル の固定 化は 当事者 間の不 平等感 を生 みやすい。

以上 のよう な、地 域的 安全保 障の成 立する 条件 と、そ の秩序 像をめ ぐる 三つの 対立点 は、ア ジア 太平洋 地域諸 国が共 通の アプロ ーチを 導入す るこ との著 しい困 難を描 き出 してい る。実 際、こ のよ うな困 難さこ そが、 われ われが 地域安 全保障 を考 えると きの立 脚点と なら ざるを 得ない のが現 状で ある。

しか しなが ら、以 下で 述べる ように 、近年 のア ジア太 平洋地 域では 、地 域安全 保障の 新展開 とも いうべ き現象 が生ま れて きてい る。こ れは、 従来 日本 政府が 示し て き た 、 同 盟 関 係 を 基 軸 と 捉 え 、 多国間 安全保 障をそ の補 完とと らえる 、いわ ば二 軌道の 戦略で は説明 しき れない 、新し い展開 が生 まれてきていることを問題提起したい。

(2) アジア太平洋安全保障の新展開 同盟関係の地域的文脈の強化

1996年 の日米 安保共 同宣 言で確 認され た の は 、 共通の 脅威へ の共同 対処 という 明確な 目標を 失っ た同盟関係 を、共 通の利 益・ 価 値の追 求を主 眼と した同 盟の再 構築で あっ た。冷 戦後の 同盟は 、脅 威へ の武力 対処 を 主 眼 と し た か つ て の 同 盟 よ り 、 多義 的(multi‑functional)に なっ ている 。と り わ け顕著なの は、① 不透明 性・ 不 確実性 のある 地域 情勢に、一定の戦略計算(strategic calculation) を提供し、 その結 果各国 の外 交・ 安全 保障政 策を この関 数の下 に進め るこ とがで きるこ と、② その 結果地 域協力 の基盤 とし ての安 定的な 抑止関 係を 提供で きるこ とであ る。 その意 味で、 日米同 盟関

No.120 / 2002/7 6

アジア太平洋安全保障の新展開

−同盟・ウェブ型安全保障・協調的安全保障の戦略的融合性の模索−

Asia-Pacific Security Reconsidered: A Search for Strategic Convergence

神保 謙 アジア太平洋研究センター研究員

JIMBO Ken Research Fellow, Center for Asia-Pacific Studies

視点 Point of View

[プロフィール]

慶應義塾大学後期博士課程在学中

1999年より日本国際問題研究所研究員補、2001年より現職。

早稲田大学アジア太平洋研究センター特別研究員 [主な論文]

『ミサイル防衛−新しい国際安全保障の構図』(共著、日本国際問題研究所、2002年)、

『アジアのエネルギーと安全保障』(共著、財団法人エネルギー問題調査会、2000年)、

「ASEAN地域フォーラムと予防外交 −多様化する予防外交概念と地域的適用の模索−」

『新防衛論集』(第27巻第3号、1999年12月)、「日米安全保障体制と中国:1972−1998

―日米安全保障体制と日中国交正常化を両立させた『三つの理解』の変遷―」『法学政 治学論究』(第42号、1999年秋季号)ほか

(2)

係は東 アジ アの平 和と安 定を抑 止関 係の維 持のみ ならず、地域協力の基盤を提供しているのである。

そし て、 現在専 門家の 間では 、将 来の同 盟関係 をいか に地 域的な 文脈で 再構築 する かとい う視点 が積極 的に 議論さ れてい る。た とえ ば、米 国が北 東アジアの基地にほぼ全面的に依存する状態 から、

シンガポール ・ フィ リピン・ タイ・ オース トラリ アを含 むア ジア全 域での 多様な 作戦 上の配 置や訓 練を通じた同盟強化を提言している。

「ウェブ型安全保障」の萌芽

さらに米 国は 、日米・ 米韓を 中心 とする 同盟関 係の強 化と は別に 、アジ ア太平 洋に おける 安全保 障の新 たな 方向づ けを模 索して いる 。それ は、米 太平洋軍司 令官 のデニ ス・ ブレ アら が提唱 してい る「ウ ェブ 型安全 保障」 と呼ば れる もので ある。

ブレア は「共通の 安全保 障上の 課題 に対し 、地域 の多面的なアプローチを発展させるべき」と 述べ、

そのた めに 多国間 での共 同軍事 協力 を含む 政策調 整を発展させるべきと論じる。

ブレ ア構 想では 、国家 間協力 の形 態は必 ずしも 同盟条 約に 署名す る必要 はなく 、ま た共通 の敵や 国家脅威も必要とされていない。たとえば、 テロ、

違法な 麻薬 取引、 海賊行 為、兵 器の 拡散な どの国 境を越 える 問題や 、災害 救助や 捜索 救難な どの問 題に関 して 、東ア ジアの 各国が 協調 行動が とれる ように する ことを 主眼に 置いて いる 。そし て、現 存する 二国 間同盟 を基軸 とはし なが らも、 東アジ アに生 まれつ つある 多国間 協力(た とえば 日米韓 協力、ASEAN+3、ARF等)のような拡大し た対話と協力のパターンに引き込むことによ って、

現在の 二国 間取り 決めの システ ムを 、より 開かれ た安全 保障関 係の網(ウ ェブ) へと 転換さ せるこ とが可 能であ るとす る。こ れを「ウ ェブ型 安全保 障」と呼称しているのである。

昨年5月に太平洋軍は多国間演習「チーム・チャ レンジ 」を 実施し 、米国 と東ア ジア 諸国間 で国連 の平和維持活動、捜索救助、人道支援、災害 対処、

非戦闘 員退 避など の共同 活動を 訓練 し、紛 争予防 や危機 管理 を主眼 とした 試みを 開始 した。 この試 みは、 本年5月に シンガ ポール で開 催され たII SS主 催の 国防大 臣級会 合(シャン グリ ラ・ ミー ティン グ) と併せ 、国防 当局者 が安 全保障 協力を 進展させる大きな可能性を有しているといえる。

ARFと予防外交の積極化

AR Fはこ れまで 域内 の主要 国すべ ての参 加を 得つ つ、① 情報 の 透 明 性 の 拡 大 ( 国 防 白 書 発 行 、 国連通常兵器移転登録制度の推進)、②交流の 推進 を促進してきた。また2000年の第7回ARFでは、

北朝鮮 が初参 加し、 北朝 鮮が周 辺諸国 への関 係改 善の努力を継続する機能も加味された。

現在の ARF は第 二段階 の「予防外 交」へ の取 組みを 強化し つつあ る。 ARF が多国 間安全 保障 として の機能 を強化 し、 安全保 障上の 懸念に 対し 各国が自発的に地域に貢献するには、「ARF 議長 の役割」 や「専門家 登録 」をは じめと する予 防外 交の機 能をい かに整 えて いくか が重要 である 。し かし、予 防外交 はA RFが これま で「すべて の国 に快適 なペー ス」で 進め てきた 会議外 交に、 変革 を迫る 意味を 持って いる 。われ われが ARF にお ける予 防外交 をどの よう に確立 するこ とがで きる のかは 、地域 的安全 保障 の成熟 化への 試金石 とい える。

(3) 「戦略的融合性」に向けて

以上のように、①同盟関係の地域的文脈の強 化、

②「ウ ェブ型 安全保 障」 の萌芽 、③A RFに おけ る予防 外交の 進展等 、ア ジア太 平洋の 安全保 障は かつて より複 雑化し てい るとい える。 これら の安 全保障 の諸形 態を、 政策 論とし ては相 互排他 的で はなく 、相互 競合あ るい は補完 させつ つ、刺 激を 与え合 ってい くこと が現 時点で は重要 な視点 とい えよう。東 アジア の大小 さま ざまな 顕在・ 潜 在的 な紛争要 因に、 対応 する「メニ ュー」 を整え るこ とが、 同盟の オーバ ーコ ミット メント や、自 律性 (autonomous)のあ る地域 安全 保障へ の過剰 な期 待 の双方を抑制する効果も期待できよう。

地域 安全保 障の諸 形態 がイン テンシ ティの 異な る、さ まざま な紛争 対処 のメニ ューを 整えら れる ように なった 場合、 冒頭 の三つ の秩序 対立像 を乗 り越える「戦 略的融 合」の 可能性 が生ま れてく るの である 。それ は、同 盟の 役割の 自制と ドクト リン の明確 化を促 し、地 域安 全保障 が対応 すべき 問題 を特定 させ、 協調可 能な 領域を 創出す ること が導 き出せ る可能 性があ るか らであ る。ア ジア太 平洋 の安全保障の新 展開を 、この よう な「戦略 的融合 」 の模索という観点から、問題提起した次第である。

JIIA Newsletter

No.120 / 2002/7 7

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