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メイラード反応による着色機構 - J-Stage

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Academic year: 2023

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化学と生物 Vol. 50, No. 2, 2012

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今日の話題

地成分の枯渇が考えられたため,濃縮培地を添加する新 たな長時間培養を行なうこととした.その結果を図1-B に示す.イソプロパノールは240時間まで生産され続 け,培養液と回収瓶で回収されたイソプロパノールを合 計し,培養液にすべて溶解しているとして計算した実生 産濃度は2,378 mm(148 g/ ) となり,満足のいく結果が 得られた.ただし,最大対糖収率は67.4%とやや低く なった.また,平均生産速度は10.2 mm/h (0.64 g/・h)

となり,さらなる向上が望まれた.

筆者らは,同様のアプローチで1-ブタノール(3)および イソブタノール(4)の生産に成功している.筆者らがこの ような研究を始める頃から,このような研究例は報告さ れていたが,ここ数年,同様のアプローチを用いた様々

な化学物質の微生物による生産に関する報告例が,急速 に増加している.

今後は,メタボロームデータを利用した代謝流速解析 や代謝シミュレーションなどの理論解析を利用すること で,競合する代謝経路遺伝子の効率的な破壊を行ない,

代謝経路の最適化を行なう予定である.

  1)  T. Hanai, S. Atsumi & J. C. Liao : , 73, 7814 (2007).

  2)  K. Inokuma, J. C. Liao, M. Okamoto & T. Hanai : , 110, 696 (2010). 

  3)  S.  Atsumi,  A. F.  Cann,  M. R.  Connor,  C. R.  Shen,  K. M. 

Smith,  M. P.  Brynildsen,  K. J.  Chou,  T.  Hanai  &  J. C. 

Liao : , 10, 305 (2008). 

  4)  S. Atsumi, T. Hanai & J. C. Liao : , 451, 86 (2008).

(猪熊健太郎,花井泰三, 九州大学大学院農学研究院)

メイラード反応による着色機構

メラノイジン前駆体 Blue-M1 と褐変との関わりを探る

食品の代表的な褐変反応であるメイラード反応がフラ ンスのMaillardにより発見(1)されてから,今年でちょう ど100年となる.近年,生体内においてもメイラード反 応が進行し,その生成物が糖尿病合併症などの疾患の発 症に関与することが明らかとなっており,医学・生物学 研究者からの注目を浴びるようになってきている.一 方,食品の製造・加工の現場において,メイラード反応

に起因する褐変の制御はいまも重要な課題である.しか し,その複雑さゆえ,反応生成物および反応機構の解明 は,発見から100年を経た現在もなお十分とはいえな い.

メイラード反応で生成する褐色色素メラノイジンにつ いては,その“amorphous”な性質から直接的な機器分析 を適用することは困難である.したがって,メラノイジ 図1ガスストリッピング装置の模 式図 A と培養条件を最適化した ガスストリッピング法によるイソプ ロパノール生産 B

(A) ①エアポンプ,②ニードルバル ブ,③滅菌フィルター,④加湿用ボ トル,⑤培養フラスコ,⑥回収瓶,

⑦ウォーターバス.(B) pH調整,グ ルコース添加,濃縮培地添加を行 なっている.矢印は,5倍濃縮SD-8 培地を添加したタイミングを示して いる.◆:イソプロパノール,▲:

グルコース,●:OD600

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今日の話題

ンの構造を解明する上で,前駆体となる分子の構造を解 明することが有用であると考えられる.また前駆体の構 造解析は,メラノイジンの生成機構の解明にも大きく寄 与すると考えられる.筆者らは,五明,三浦らとの共同 研究により,キシロースとグリシンのメイラード反応に より生成する青色色素の構造を明らかにしている.この 反応系で生成する青色色素化合物群のうち主要生成物で あるBlue-M1(2)は,2つのピロロピロール (pyrrolopyr- role) 骨格がメチン架橋された長い共役系を有し,その 極大吸収波長は625 nmである(図1.筆者らは,Blue- M1のほかにもいくつかの青色色素が同じ反応系で生成 することを見いだしているが,それらはいずれもピロロ ピロール骨格がメチン架橋された特徴的な構造を有す る(3)

精製したBlue-M1を単独でインキュベートすると褐変 することから,Blue-M1はメラノイジンの前駆体である と考えられる.実際,キシロースとブチルアミンから調 製されたメラノイジンとBlue-M1とでは化学的諸性質が 類似しており,またアミノ化合物側鎖を考慮すると両者

の組成式もきわめてよく似たものとなっている.メラノ イジンが抗酸化性を有することはよく知られているが,

Blue-M1もヒドロキシルラジカル消去活性など強い抗酸 化性をもつ(3)

一方,ヘキソースであるグルコースのメイラード反応 においては,閉環構造が安定であるため,ペントースに 比較すると褐変の進行はきわめて遅い.したがって,前 駆体となる色素化合物の検出も困難であるが,筆者らは 最近,グルコースとグリシンの反応系において,Blue- M1と同様の特徴的なピロロピロール構造を有する青色 色素Blue-G1を単離・同定した.Blue-G1も単独で褐変 することから,グルコース由来メラノイジンの重要な前 駆体の1つであると考えられる(4).さらに,筆者らは同 じキシロースとグリシンの反応系において赤色の色素

(Red-M1および2)を単離している(5).これらの赤色色 素はピロロピロール骨格に加えて,アゼピン (azepine) 

環を有する複雑な構造をとっている.アゼピン環の形成 にはアマドリ化合物(キシルロースグリシン)が関与す るものと考えられる(図1).

図1キシロースとグリシンより生 成するメラノイジン前駆体色素化合 物

Red-M1および2は*を付した不斉炭 素に起因する立体異性体である.

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今日の話題

これらの事実は,ピロロピロール骨格をもつ色素群が メラノイジンの前駆体となっており,メイラード反応に よる褐変において重要な役割をもつことを示している.

褐変の制御において,これら色素化合物の生成機構およ び重合・高分子化の機構を解明することが重要であると 考えられる.

筆者らは,Blue-M1の生成機構を解明する目的で,そ の前駆体となるピロロピロール化合物の単離を試みた.

その結果,キシロースとグリシンの反応液よりピロロピ ロールアルデヒドPPA-1およびPPA-2を見いだした

(図1).これらは348 nmに極大吸収を有する黄色の化合 物である.PPA-1,PPA-2には,Blue-M1がもつ2つの 側鎖,すなわちジヒドロキシプロピル基とトリヒドロキ シル基がそれぞれ存在する.このことから,PPA-1およ びPPA-2が何らかの機構で反応することによりBlue-M1 が形成されるものと推定される.

一方,Blue-M1からメラノイジンが形成されるメカニ ズムについては,不明の点が多い.筆者らは,Blue-M1 を単独でインキュベートすることによる褐変反応の過程 で,Blue-M1の減少に伴ってPPA-1およびPPA-2が生成 することを観察している(未発表).このことから,

Blue-M1が一部分解して反応性の高い低分子が生成し,

これらとBlue-M1が再び反応することによって高分子

化,褐変するものと推定される.

Blue-M1などの色素化合物は重合・高分子化して褐変 する性質を有しているが,メイラード反応による色調変 化に対しては,重合活性の乏しい低分子色素の寄与も小 さくない.たとえば村田らは,キシロースとリジンの反 応により生成する黄色色素群dilysylpyrrolonesを見い だしている.これらはピロール環とピロロン環がメチン 架橋された骨格を共通に有する新奇化合物である(6).そ のほか,メイラード反応により色素としてフルフラール 関連化合物などが同定されており,着色機構解明にはこ れら比較的安定な低分子色素化合物の解析も重要である と考えられる.

  1)  L. C. Maillard : , 154, 66 (1912).

  2)  F. Hayase, Y. Takahashi, S. Tominaga, M. Miura, T. Go-

myo  &  H.  Kato : , 63,  1512 

(1999).

  3)  F.  Hayase,  T.  Usui  &  H.  Watanabe : , 50, 1171 (2006).

  4)  Y.  Ono,  H.  Watanabe  &  F.  Hayase : , 74, 2526 (2010).

  5)  Y.  Shirahashi,  H.  Watanabe  &  F.  Hayase : , 73, 2287 (2009).

  6)  J. Sakamoto, M. Takenaka, H. Ono & M. Murata : , 73, 2065 (2009).

(渡辺寛人,早瀬文孝,明治大学農学部)

脂質成分を利用したグイマツ雑種 F 1 苗木の判別

ケモタキソノミーの林業分野への応用

北海道のカラマツ造林において,最大の課題は野鼠害 であった.そのため,北海道では野鼠害に強いといわれ

たグイマツ とカラマツ との

種間交雑育種が精力的に進められてきた.グイマツ雑種 F1, × (以下F1)はグイマツ を母樹とし,カラマツを花粉親とした林業用種間雑種で あり,成長速度,材質,病虫獣害・気象害に対する抵抗 性などの点に優れる.さらに,CO2固定能が高く,環境 対策の面からも有望な造林樹種である.環境サミットと して注目されたG8北海道洞爺湖サミットでは,各国首 脳がF1を記念植樹している.

F1の種子はグイマツとカラマツが混植された採取園 において,自然受粉を経てグイマツから採取される.こ れら種子には,F1とグイマツ両者の種子が混在するが,

現在のところ種子の段階ではF1を判別できない.その ため,現在は播種後,苗木の形態的特徴やフェノロジー

(冬芽形成期,黄葉期,芽どまり期)の違いなどからF1

の苗木を判別しており,判別の確実性などから雑種識別 法の改良や新たな雑種識別法の確立が期待されてきた.

一方,これらの樹種では樹皮のエーテル抽出物量と耐鼠 性との関連性が指摘されており(1),樹種間に成分的な違 いがあると考えられた.そこで,筆者らは樹皮成分を指 標としてF1とグイマツの苗木を判別できるのではない かと考え,エーテル抽出物の主要成分であるジテルペン に着目した.樹幹を傷つけないために枝を使用し,成木 と苗木の樹皮に含まれるジテルペンの樹種特性を明らか にするとともに,苗木の雑種判別を試みた(2)

成木では,F1とそれらの両親であるグイマツとカラ

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クの負担の重さは、コロナ下になる以前から何度か指 摘されていました。関係者の努力によってそれなりの 水準を保ちつつ今日まで続いてきましたが、継続だけ でよいのかという疑問は共有されてきたところです。 電子メディアの進展が進んだ社会状況もあって、新た な日々を迎えようとする今年度に向け、30号を区切り とする提案にいたったものと受け止めております。