1 第2回 BW 採点結果
(2015/11/10実施)
課 題
• 近年のトピック(とくに社会・経済問題)から,
アカロフの「レモンの原理」によって問題の本 質を的確に説明できると思われる事例を1つ 選び,その事例について評論しなさい。
• 評論においては,「レモンの原理」とは何かも 書いてください。
つづき
• 【ヒント】東洋ゴムの免震偽装,旭化成建材の 杭打ちデータ偽装,太平物産による有機肥料 の偽装などが,上記の事例となります。
レモンの原理(復習)
財の質に関す る情報の非対
称性
財の質に対す る代理人の不
信感
財の平均価格 のスパイラルダ
ウン
粗悪品の氾濫 市場の崩壊
参考事例 NHK 「花燃ゆ」第45回
• 楫取のもとに,生糸の値が大暴落していると の知らせが入る。調べると,粗悪品が混じり,
品質が安定していないことが原因であること がわかった。
その対策は
• ・・・楫取は,・・・生糸の価格を安定させるた めに組合を創設し,品質管理を行う共同施設 を作ろうと奔走する。
NHKのHPより
組合のロゴ シグナリング
2 モデル解答
• レモンの原理とは,取引の主体間に情報の 非対称性が存在すると,逆選択が生じ,市場 が成立しなくなることを説明した経済理論で ある。
• 旭化成建材の杭打ちデータ偽装事件は,同 社による他の建築物の質だけでなく,同業他 社による建築物の質についても,市場の不信 感を生み出した。
つづき
• この状態を放置すれば,逆選択が生じ,建築 物市場の崩壊に至る可能性がある。
• それを回避するために,建設会社は一斉に,
自社建築物の質=杭打ちの実態を調査し,
その結果を社会に公表することにより,情報 の非対称性の緩和に努めている。
参考資料
• くい打ち工事最大手の三谷セキサン は26日、
約350物件の工事を調査した結果、データ流 用が1件判明したと発表した。今回の約350件 を含め、過去5年間に行った工事約8000件を 半年をめどに調べる方針。
時事通信 2015年11月26日(木)
得点分布表
評価※
文章・構成
(A+~E)
内容
(A~D)
A+(5) 9 ー
A(4) 8 12
B(3) 5 4
C(2) 0 6
D(1) 0 0
E(0) 0 ー
平均点 4.2 3.3
※注 評価横の括弧内の数値は平均を出すためのものであり,学期末の 評価の際の得点ではありません。
得点分布
0 2 4 6 8 10 12 14
文章・形式 内容
BW 第2回 N=22
A+
A B C D E
採点を終えて
• 前回に比べ,総じてよくできていました。
• レモンの原理の観点で解説する際のキーワードとな る「情報の非対称性」や「エージェンシー費用」を利 用できている答案は,全体的によくできていました。
• 誰と誰の間に情報の非対称性が存在するのかとい う点についてきちんと言及してください。
3 採点を終えて
• レモンの原理によって説明できるものは不正を行っ た企業が存在する「市場」の崩壊であり,不正を行っ た「企業」の倒産等ではありません。
–ただし,不正を行った企業が生産する(扱う)複数の製品 があり,その中に良品と粗悪品があるという特殊な設定 であればレモンの原理で説明することは可能かもしれま せんが,その設定を明確にしておく必要があります。
• レモンの原理は「逆選択」の論理であり,「モラルハ ザード」を説明するものではありません。