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ロシア極東・シベリア開発と日本の経済安全保障

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Academic year: 2025

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「ロシア極東・シベリア開発と日本の経済安全保障」

【研究概要】

昨年(2012 年)5 月に発足した第 3 期プーチン政権は、重点課題の一つとして極東シ ベリアの開発を掲げた。極東シベリア開発を重視する方針が掲げられたのは、直接には同 年 9 月に開催された APEC ウラジオストク会議の準備のためであるが、プーチン自身(と そのブレーンたち)の世界観を反映しているからだともいえる。彼らの見解によれば、ソ 連崩壊後、エリツィン時代の混乱期を経て、ロシアのアジア太平洋地域における存在感は 大きく低下した。その一方で、中国の台頭に見られるようにアジア太平洋地域の躍進は著 しく、ロシアひとりが取り残されるような状況になった。

こうした認識に基づきプーチンは、大統領選挙綱領となった論文「ロシアと変化する世 界」において、ロシアはアジア太平洋地域への進出を本格化してゆかねばならないと指摘 する。また、定例となったプーチンとロシア国内外の専門家が直接討論する国際会議(通 称ヴァルダイ会議)においても、極東地域(ウラジオストク)に経済の「首都」を置くべ きだと提言する報告書が作成されるなど、プーチンの「東方シフト」の大号令を支える勢 力が形成されつつある。そして、大統領就任後は極東開発の司令塔となるべき極東発展省 が新たに設置されるなど、名実共に「東方シフト」が進められようとしている。

こうしたなか 2012 年 9 月にウラジオストクにて開催された APEC は、ロシアの東方 進出を国内外にアピールする絶好の機会となった。各国企業はプーチン新政権の「東方シ フト」を歓迎し、そこに新たな商機を見出そうとしている。ウラジオストクをはじめ極東 の各都市では急ピッチでインフラ整備が進められ、外資系企業の進出が進んでいる。日系 企業の進出も目覚しい。近年では日系企業による自動車工場の建設やシベリア鉄道を利用 した物流拠点の設置、銀行の出張所の開設など、新しい分野にも投資が広がりつつある。

インフラ整備が急速に進むロシア極東・シベリアはアジア太平洋地域における「最後のフ ロンティア」の一つであり、日本の国内市場の頭打ちに悩むわが国の諸産業に新たな成長 機会を提供しうるという点で注目されているのだ。

極東・シベリア地域の開発は、単にビジネス上の利益から関心を集めているわけではな い。東日本大震災の後、エネルギー源の確保が死活的に重要となっているわが国にとって、

資源大国であるロシアとの関係強化は経済安全保障上でも大きなメリットがあることは言 を俟たない。わが国の繁栄の確保のため、ロシアとの戦略的関係の強化が模索されてしか るべきである。

プーチン政権が「東方シフト」を進める背景には安全保障面での懸念、「台頭する中国」

への警戒心があることもしばしば指摘されている。1990 年代から 2000 年代にかけて、

中露両国は経済面だけでなく軍事面でも関係を強化してきたが、近年ではロシアの中国に 対する警戒心が高まっている。例えば経済・貿易面ではロシアの対中依存が突出するよう になり、極東地域は中国からの人口流入の圧力にさらされ続けている。ソ連崩壊後から続 く極東地域の人口流出を抑えることは、ロシアの国土の一体性の保全や中露両国間の軍事 的バランスの維持のためにも重要となっている。こうして極東開発は人口流出を抑えるた めにも焦眉の政策課題となる。

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また、「台頭する中国」はそのアグレッシブな海洋進出という形でも顕在化しており、ロ シアが極東・シベリア開発を促すきっかけとなっている。近年、中国は北極海航路の開拓 に積極的に取り組んでいるが、これは軍事・安全保障の観点からはオホーツク海やバレン ツ海などロシアにとっての「内海」への進出を許すことを意味するため、ロシア側は警戒 を強めているのである。こうした中国の動向を念頭に、ロシアは北極地域を極東・シベリ アと結びつけ、その開発を急ぐことで自らのプレゼンスを確保しようとしている。極東・

シベリアや北極を舞台とした各国の動向は、従来の地政学理論や軍事戦略に大きな変化を もたらすだけでなく、東アジアにおける安全保障環境にも大きな影響をもたらすものと考 えられる。

日本の繁栄の確保のために、アジア太平洋地域で存在感を取り戻しつつあるロシアと戦 略的関係を構築できるか否かは、日本の経済安全保障のレベルを高め、新たな繁栄の基盤 を固めていく上で極めて重要な課題である。また、このようなロシアとの戦略的関係の構 築は、北方領土問題の解決や中国との関係をにらんだ、日本の安全保障の向上にも貢献し 得ると共に、アジア太平洋地域の戦略環境の「ゲーム・チェンジャー」になり得るもので もある。戦略的連携に向けた日露協力の抜本的強化が今こそ求められている。

上記の問題意識を踏まえ、本研究会ではロシアの極東・シベリア地域の開発の現状と問 題点を把握したうえで、同地域のポテンシャルとその開発が日本の経済安全保障にどのよ うに貢献するのか、を検討することを目的とする。さらに、日露の経済安全保障分野での 戦略的関係の構築にあたっての課題(含、極東・シベリア地域の開発への日本の参画にあ たっての課題)を総合的に検討し、外交当局および経済界にとって有益な政策提言を提示 してゆく。本研究会の研究成果は、わが国の対ロシア外交への有益な政策提言となるばか りでなく、新たな繁栄の地平を切り開こうとするわが国の経済界にとっても有益な助言と なることが期待される。

【研究プロジェクトメンバー】

主査 下斗米伸夫 法政大学法学部教授

副主査 杉本侃 環日本海経済研究所(ERINA)副所長 研究委員(50 音順) 畔蒜泰助 東京財団研究員

石郷岡健 ジャーナリスト/麗澤大非常勤講師 岡田邦生 ロシア NIS 経済研究所部長

小澤治子 新潟国際情報大学教授

酒井明司 三菱商事天然ガス事業本部/新規事業開発部 シニアア ドバイザー

兵頭慎治 防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長 堀江典生 富山大学極東地域研究センター教授 山嵜直美 防衛大学校准教授

委員兼幹事 浅利秀樹 日本国際問題研究所主任研究員兼副所長 伏田寛範 日本国際問題研究所研究員

研究助手 増田智子 日本国際問題研究所研究助手

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