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保険契約法の現代化 京都大学 洲崎 博史

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保 険 契 約 法 の 現 代 化

京 都 大 学 洲 崎 博 史

1 . 保 険 契 約 法 現 代 化 の 経 緯 と 背 景

2006

9

月 、法 務 大 臣 か ら 、そ の 諮 問 機 関 で あ る 法 制 審 議 会 に 対 し て 保 険 法 の 見 直 し に 関 す る 諮 問 が 行 わ れ( 諮 問 第

78

号 )

1

、こ れ を 受 け て 、法 制 審 議 会 に 保 険 法 部 会 ( 部 会 長 は 、 山 下 友 信 東 京 大 学 教 授 。 以 下 、 「 部 会 」 と い う 。 ) が 設 置 さ れ 、 保 険 法 の 現 代 化 に 向 け た 作 業 が 開 始 し た 。 部 会 は 平 成

18

11

1

日 に 第 1 回 会 議 を 開 催 し た 後 、平 成

19

8

8

日 ま で に 計 1 4 回 の 会 議 を 開 催 し 、そ こ で の 審 議 内 容 を も と に 、平 成

19

8

14

日 、35頁 か ら な る「 保 険 法 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 」( 以 下 、「 中 間 試 案 」と い う 。頁 数 を 引 用 す る 際 は 単 に「 試 案 」 と い う 。 ) が 公 表 さ れ た ( 中 間 試 案 に は 、108 頁 か ら な る 「 保 険 法 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 の 補 足 説 明 」 ( 法 務 省 民 事 局 参 事 官 室 に よ る 。 以 下 、 「 補 足 説 明 」 と い う )が 付 け ら れ て い る 。)。中 間 試 案 は 、同 年

9

14

日 ま で の 1 か 月 間 に わ た っ て パ ブ リ ッ ク ・ コ メ ン ト 手 続 に 付 さ れ 、 現 在 、 部 会 で は 、 同 手 続 の 結 果 も 踏

1

諮 問 第

78

号 の 内 容 は 以 下 の 通 り で あ る 。

広 く 社 会 に 定 着 し て い る 保 険 契 約 に つ い て 、 保 険 者 、 保 険 契 約 者 等 の 関 係 者 間 に お け る ル ー ル を 現 代 社 会 に 合 っ た 適 切 な も の と す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る の で 、 別 紙 「 見 直 し の ポ イ ン ト 」 に 記 載 す る と こ ろ に 即 し て 検 討 の 上 、 そ の 要 綱 を 示 さ れ た い 。

別 紙 見 直 し の ポ イ ン ト

第 一 規 律 の 内 容 の 現 代 化 に つ い て

商 法 が 定 め る 保 険 の 類 型 を 見 直 す と と も に 、損 害 保 険 契 約 及 び 生 命 保 険 契 約 に 属 さ な い 傷 害 又 は 疾 病 に よ り 保 険 金 が 支 払 わ れ る 保 険 契 約 に つ い て 、 典 型 契 約 と し て の 位 置 付 け を 与 え 、 そ の 適 切 な 規 律 を 法 定 す る も の と す る 。

損 害 保 険 契 約 に 関 し 、物 を 保 険 の 対 象 と す る 物 保 険 に つ い て そ の 機 能 に 応 じ て 規 律 を 見 直 す と と も に 、 現 代 社 会 で 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 責 任 保 険 に つ い て そ の ル ー ル を 整 備 す る も の と す る 。

生 命 保 険 契 約 に 関 し 、今 後 の 高 齢 化 社 会 に お け る 役 割 の 重 要 性 等 に か ん が み 、多 様 な ニ ー ズ に こ た え る こ と が で き る よ う に 規 律 を 見 直 す も の と す る 。

そ の 他 、 保 険 契 約 の 成 立 、 変 動 及 び 終 了 に 関 す る 規 律 に つ い て 、 保 険 契 約 者 の 保 護 、 保 険 の 健 全 性 の 維 持 、 高 度 情 報 化 社 会 へ の 対 応 等 に 配 慮 し 、 そ の 内 容 を 見 直 す も の と す る 。 第 二 現 代 語 化 そ の 他 の 改 正 に つ い て

片 仮 名・文 語 体 の 法 文 を 平 仮 名・口 語 体 の 法 文 に 改 め る と と も に 、所 要 の 規 定 の 整 備 を 行 う も の と す る 。

(2)

ま え た う え で 、 法 律 案 要 綱 の 作 成 に 向 け て 再 び 審 議 が 行 わ れ て い る 。

現 行 の 保 険 法 を 収 め て い る 商 法 典 は 、 明 治

32

年 (

1899

年 ) に 制 定 さ れ た も の で あ り 、 保 険 法 部 分 は そ れ 以 来 実 質 的 な 改 正 を 受 け て い な い

2

。 保 険 契 約 法 の 現 代 化 は 、 ま さ に 、 1 0 0 年 以 上 も 前 に 制 定 さ れ た 保 険 に 関 す る ル ー ル を 現 代 社 会 に あ っ た 適 切 な も の と す る た め に 行 わ れ る も の で あ る が 、 そ の 作 業 の 中 で 最 重 要 課 題 と さ れ て い る の が 、 保 険 契 約 者 ( と り わ け 消 費 者 た る 保 険 契 約 者 ) の 保 護 で あ る 。 わ が 国 で は 、 家 計 保 険 の 分 野 に 関 す る 限 り は 、 保 険 約 款 に 関 し て い わ ゆ る 事 前 認 可 制 が 採 ら れ て お り 、 保 険 契 約 者 に 不 当 に 不 利 益 を 課 す よ う な 約 款 は 、 金 融 庁 の 事 前 の チ ェ ッ ク に よ り 排 除 さ れ る よ う に な っ て い る 。 し か し な が ら 、 新 た な 保 険 商 品 が 次 か ら 次 へ と 開 発 さ れ る 中 、 従 来 通 り 事 前 認 可 制 の 保 険 監 督 に 頼 っ て 保 険 契 約 者 保 護 を 図 る こ と に は 限 界 も あ り 、 保 険 契 約 法 の レ ベ ル で 保 険 契 約 者 保 護 を 図 る こ と は 喫 緊 の 課 題 で あ っ た と い っ て よ い 。 中 間 試 案 は 、 保 険 契 約 法 の 各 所 に 、 保 険 契 約 者 を 保 護 す る た め の 片 面 的 強 行 規 定 を 設 け る こ と で こ の 課 題 を 解 決 し よ う と し て い る 。

2 . 新 保 険 契 約 法 の 規 律 対 象 ・ 立 法 形 式 等

( 1 ) 現 行 商 法 に お け る 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 は 、 損 害 保 険 お よ び 生 命 保 険 に 関 す る 第 2 編 第 1 0 章 (

629

条 ~

683

条 ) と 、 海 上 保 険 に 関 す る 第 3 編 第 6 章 (

815

条 ~

841

条 ) と に 分 け て 置 か れ て い る が 、 保 険 法 の 現 代 化 に あ た っ て は 、 前 者 の

2

保 険 法 改 正 の 試 み は 、 こ れ ま で に も 、 保 険 実 務 家 と 保 険 法 研 究 者 の 共 同 作 業 に よ る 改 正 試 案 の 作 成 と い う 形 で 行 わ れ る こ と が あ っ た 。 そ の よ う な 例 と し て 、 損 害 保 険 法 制 研 究 会 「 損 害 保 険 契 約 法 改 正 試 案 傷 害 保 険 契 約 法 ( 新 設 ) 試 案 理 由 書 (

1995

年 確 定 版 ) 」 、 同 「 海 上 保 険 契 約 法 改 正 試 案 (

1995

年 確 定 版 ) 理 由 書 」 、 生 命 保 険 法 制 研 究 会 ( 第 二 次 ) 「 生 命 保 険 契 約 法 改 正 試 案 疾 病 保 険 契 約 法 試 案(

2005

年 確 定 版 )理 由 書 」( 以 下 、生 保 試 案 と い う )、

傷 害 保 険 契 約 法 研 究 会 「 傷 害 保 険 契 約 法 試 案 (2003年 版 ) 理 由 書 」 な ど が あ る 。

な お 、今 回 の 現 代 化 作 業 に あ た っ て は 、法 制 審 議 会 保 険 法 部 会 に 先 立 ち 、法 務 省 ス タ ッ フ 、 保 険 法 研 究 者 、 保 険 実 務 家 等 か ら 成 る 「 保 険 法 研 究 会 」 ( 座 長 は 山 下 友 信 東 京 大 学 教 授 ) と い う 研 究 会 が 組 織 さ れ 、 1 年 近 く に わ た っ て 勉 強 会 を 行 っ て い る 。 資 料 「 保 険 法 の 現 代 化 に つ い て ― 保 険 法 研 究 会 取 り ま と め ― 」( 法 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ の「 審 議 会 情 報 」「 法 制 審 議 会 」

「 保 険 法 部 会 」 の 第 1 回 会 議 の 参 考 資 料 と し て ダ ウ ン ロ ー ド 可 能 ) は 、 そ の 要 約 で あ る 。

(3)

規 律 の み を 見 直 し の 対 象 と し 、 海 上 保 険 契 約 に 固 有 の 規 律 は 見 直 し の 対 象 と は し な い こ と と さ れ て い る ( 試 案

1

頁 ) 。 海 上 保 険 契 約 の 規 律 は 、 陸 上 保 険 契 約 の 規 律 と は 性 格 を 異 に す る と こ ろ が 多 く 、 将 来 の 海 商 法 の 現 代 化 に お い て 検 討 す る こ と が 適 当 で あ る と 考 え ら れ た こ と に よ る ( 補 足 説 明 2 頁 ) 。

( 2 ) 現 行 商 法 の 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 は 、 保 険 契 約 ( 株 式 会 社 形 態 の 保 険 会 社 が 行 う 商 行 為 と し て の 保 険 契 約 ( 商 502⑨ ) と 相 互 会 社 形 態 の 保 険 会 社 が 行 う 相 互 保 険 契 約 ( 商 664) ) の み を 規 律 対 象 と し 、 共 済 契 約 は 規 律 対 象 と し て い な い が 、 新 保 険 契 約 法 ( 以 下 、 保 険 契 約 法 の 現 代 化 に よ り 制 定 さ れ る 新 法 を 新 保 険 契 約 法 と 呼 ぶ こ と と す る ) は 、 共 済 契 約 を も 規 律 対 象 と す る こ と が 予 定 さ れ て い る

( 試 案 1 頁 ) 。 既 に 保 険 監 督 法 の 分 野 に お い て は 、 従 来 は 国 家 に よ る 保 険 監 督 に 服 し て こ な か っ た 共 済 事 業 を 保 険 業 法 の 適 用 対 象 と し た り 、 従 来 か ら 各 種 協 同 組 合 法 に 基 づ い て 行 わ れ て き た 共 済 に つ い て も そ れ ら の 法 を 改 正 し て 保 険 業 法 と 同 様 の 監 督 に 服 せ し め る よ う に す る な ど

3

、 保 険 と 共 済 は 同 様 の 扱 い を 受 け る よ う に な っ て き て い る 。 前 述 の よ う に 保 険 法 現 代 化 の 最 重 要 課 題 が 保 険 契 約 者 保 護 で あ る こ と か ら す れ ば 、 保 険 契 約 者 と 同 様 の 地 位 に 置 か れ て い る 共 済 契 約 者 の 保 護 も 等 し く 要 請 さ れ る は ず で あ り 、 共 済 契 約 が 新 保 険 契 約 法 の 適 用 対 象 に 含 め ら れ る こ と は 正 当 で あ る 。 そ し て 、 そ の た め に は 、 新 保 険 契 約 法 は 、 商 法 第 2 編 第 1 0 章 の 改 正 と い う 立 法 形 式 を と る の で は な く 、諸 外 国 の 法 制 が そ う で あ る よ う に 、 単 行 法 た る 保 険 契 約 法 と し て 制 定 し た う え で 、 同 法 の 規 定 が 共 済 契 約 に も 直 接 適 用 さ れ る よ う な 立 法 形 式 を 採 る こ と が 自 然 で あ ろ う 。

も っ と も 、 保 険 と と も に 共 済 を も 新 保 険 契 約 法 の 規 律 対 象 に す る と し て 、 そ れ を 具 体 的 に ど の よ う な 立 法 技 術 を も っ て 実 現 す る か は な か な か の 難 問 で あ る 。 中 間 試 案 は 、 共 済 ( 契 約 ) も 含 み う る よ う な 「 保 険 ( 契 約 ) 」 の 定 義 を 設 け る こ と

3

平 成 1 7 年 保 険 業 法 改 正 に よ る 少 額 短 期 保 険 業 制 度 の 導 入 や 、 農 業 協 同 組 合 法 改 正 ( 平 成 1 6 年 ) ・ 中 小 企 業 等 協 同 組 合 法 改 正 ( 平 成 1 8 年 ) ・ 消 費 生 活 協 同 組 合 法 改 正 ( 平 成 1 9 年 ) に よ る 共 済 規 制 の 整 備 が こ れ に あ た る 。

(4)

の 当 否 に つ い て 検 討 す る こ と と し て い る が 、 新 保 険 契 約 法 に 不 用 意 に 「 保 険 」 の 定 義 規 定 を 置 い て し ま う と 、 そ れ が 保 険 業 法 の 解 釈 に 必 ず し も 適 切 と は い え な い 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 も あ り 、 「 保 険 」 の 定 義 規 定 を 置 く べ き か ど う か に つ い て は 慎 重 な 検 討 が な さ れ る べ き で あ ろ う

4

。 こ れ に 対 し 、 新 保 険 契 約 法 に お い て も 、 現 行 商 法 と 同 様 に 損 害 保 険 契 約 等 の 定 義 規 定 を 置 く こ と は 予 定 さ れ て お り 、 こ れ ら の 概 念 を 介 す る 形 で 、 す な わ ち 、 「 保 険 契 約 、 共 済 契 約 そ の 他 名 称 の い か ん を 問 わ ず 、 損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契 約 、 傷 害 保 険 契 約 ま た は 疾 病 保 険 契 約 に 該 当 す る も の に は 、 本 法 の 規 定 を 適 用 す る 」 と い っ た 条 文 を 置 く こ と で 、 共 済 契 約 等 が 新 保 険 契 約 法 の 規 律 対 象 で あ る こ と を 明 ら か に す る こ と は 可 能 で あ ろ う 。

( 3 ) 現 行 商 法 が 規 律 す る の は 損 害 保 険 契 約 と 生 命 保 険 契 約 だ け で あ る が 、 新 保 険 契 約 法 で は 、 傷 害 保 険 契 約 お よ び 疾 病 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 を 新 設 す る こ と が 予 定 さ れ て い る 。 こ の 損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契 約 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 と い う 三 つ の 契 約 類 型 ( 傷 害 保 険 契 約 と 疾 病 保 険 契 約 を 別 の 類 型 と 考 え る な ら ば 四 類 型 と な る が 、 中 間 試 案 を み る 限 り 、 傷 害 保 険 契 約 と 疾 病 保 険 契 約 の 規 律 内 容 は ほ ぼ 共 通 し て い る こ と か ら 、 以 下 で は 、 傷 害 保 険 契 約 と 疾 病 保 険 契 約 を 合 わ せ て 一 つ の 類 型 ( 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 ) と し て 扱 う こ と に す る ) を 法 体 系 的 に ど の よ う に 整 理 し て 規 律 す る か も 、 な か な か の 難 題 で あ る 。

中 間 試 案 は 、 損 害 保 険 契 約 に 関 し て 、 「 損 害 保 険 契 約 は 、 当 事 者 の 一 方 が 一 定 の 偶 然 の 事 故 に よ っ て 相 手 方 又 は 第 三 者 に 生 ず る こ と の あ る 損 害 を て ん 補 す る こ と を 約 し 、 相 手 方 が こ れ に 対 し て 保 険 料 を 支 払 う こ と を 約 す る こ と に よ っ て 、 そ の 効 力 を 生 ず る も の と す る 。 」 と い う 定 義 を 提 案 し て い る が ( 試 案 2 頁 ) 、 こ れ は 、 基 本 的 に 現 行 商 法 629 条 を 口 語 化 し た も の と い っ て よ い ( 「 其 報 酬 」 が 「 保 険 料 」 に 改 め ら れ て い る 点 が 唯 一 の 実 質 的 な 違 い と い っ て よ い ) 。

次 に 、 中 間 試 案 は 、 生 命 保 険 契 約 に 関 し て 、 「 生 命 保 険 契 約 は 、 当 事 者 の 一 方

4

洲 崎 博 史「 新 保 険 法 の 射 程 と 構 造 」( 日 本 私 法 学 会 シ ン ポ ジ ウ ム 資 料 )商 事

1808

6

頁 以 下 参 照 。

(5)

が 相 手 方 又 は 第 三 者 の 生 存 又 は 死 亡 に 関 し て 一 定 額 の 金 銭 の 支 払 〔 そ の 他 の 一 定 の 給 付 〕 を す る こ と を 約 し 、 相 手 方 が こ れ に 対 し て 保 険 料 を 支 払 う こ と を 約 す る こ と に よ っ て 、 そ の 効 力 を 生 ず る も の と す る 。 」 と い う 定 義 を 提 案 し て い る ( 試 案 17 頁 )。現 行 商 法 で は 、生 命 保 険 の 保 険 者 の 給 付 内 容 は「 一 定 ノ 金 額( ヲ 支 払 フ ヘ キ コ ト ) 」 に 限 ら れ て い る が 、 こ れ を 「 一 定 額 の 金 銭 の 支 払 」 以 外 の 「 一 定 の 給 付 」 に も 拡 げ る こ と を 検 討 し て は ど う か と い う の が 中 間 試 案 の 趣 旨 で あ る 。 具 体 的 に は 、 満 期 保 険 金 の 支 払 の 代 わ り に 、 老 人 ホ ー ム の 入 居 権 の よ う な 現 物 給 付 を 給 付 内 容 と す る こ と が 想 定 さ れ て い る よ う で あ る 。 た だ し 、 現 物 給 付 の み を 約 す る よ う な 生 存 保 険 契 約 を 正 面 か ら 認 め て よ い の か ( 将 来 の 給 付 時 に 、 当 該 現 物 給 付 の 価 値 が 下 落 し て い る 可 能 性 が あ る が 、 そ の リ ス ク は 保 険 契 約 者 側 が 負 担 す る こ と に な る )、他 の 条 文 と 整 合 性 を 保 て る か(「 保 険 金 」や「 保 険 金 受 取 人 」 が 登 場 す る 条 文 は 、 現 物 給 付 保 険 に ど の よ う に 適 用 さ れ る こ と に な る の か が 明 ら か で は な い ) と い っ た 問 題 も あ り 、 生 命 保 険 契 約 に お い て 現 物 給 付 保 険 を 認 め る こ と に つ い て は 慎 重 な 検 討 が な さ れ る べ き で あ ろ う

5

最 後 に 、 中 間 試 案 は 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 関 し て 、 「 傷 害 保 険 契 約 は 、 当 事 者 の 一 方 が 相 手 方 又 は 第 三 者 の 傷 害 に 関 し て 一 定 額 の 金 銭 の 支 払 〔 そ の 他 の 一 定 の 給 付 〕 を す る こ と を 約 し 、 相 手 方 が こ れ に 対 し て 保 険 料 を 支 払 う こ と を 約 す る こ と に よ っ て 、 そ の 効 力 を 生 ず る も の と す る 。 」 と い う 定 義 を 提 案 し て い る ( 試 案 27 頁 。こ の 定 義 中 の「 傷 害 」を「 疾 病 」に 置 き 替 え た も の が 疾 病 保 険 契 約 の 定 義 で あ る ( 試 案 同 頁 ) ) 。

傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 の 定 義 に お け る 「 一 定 額 の 金 銭 の 支 払 〔 そ の 他 の 一 定 の 給 付 〕 を す る こ と 」 と い う 文 言 は 生 命 保 険 契 約 の 定 義 に お け る 文 言 と 同 じ で あ る こ と も 明 ら か な よ う に 、 中 間 試 案 に い う 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 と は 、 定 額 保 険 と し て の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 の み を 指 し て お り 、 傷 害 ・ 疾 病 に よ っ て 生 ず る 医 療 費 等 の

5

洲 崎 ( 前 掲 注

4)9

頁 。

(6)

費 用 を て ん 補 す る 契 約 や 、 傷 害 に よ る 損 害 の 額 を た と え ば 自 動 車 事 故 に 関 し て 実 務 上 一 般 に 採 用 さ れ て い る 損 害 賠 償 額 算 出 基 準 に 基 づ い て 算 定 し 、 保 険 金 と し て 支 払 う よ う な 契 約 は 、損 害 保 険 契 約 に ほ か な ら ず( 試 案 1 頁 、17 頁 )、中 間 試 案 で 定 義 さ れ る と こ ろ の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に は あ た ら な い ( し た が っ て 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 関 す る 規 定 は 少 な く と も 直 接 適 用 は さ れ な い ) と い う の が 、 中 間 試 案 の 考 え 方 で あ る 。 し か し な が ら 、 こ の よ う な 類 型 論 は わ が 国 の 保 険 法 学 に 照 ら し て も 、 ま た 、 比 較 法 的 に み て も 、 異 例 で あ る と 思 わ れ 、 従 来 は 、 定 額 給 付 方 式 か 損 害 て ん 補 方 式 か を 問 わ ず 、 人 の 傷 害 ・ 疾 病 に 関 し て 給 付 を 行 う 保 険 契 約 を 広 く 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 と み る 考 え 方 が む し ろ 一 般 的 で あ っ た と 思 わ れ る 。 そ し て 、 損 害 て ん 補 方 式 で 傷 害 ・ 疾 病 に 関 し て 給 付 を 行 う 保 険 契 約 は 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 で あ る と 同 時 に 、 商 法 629 条 に い う 損 害 保 険 契 約 で も あ り 、 そ の よ う な 保 険 契 約 に は 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 関 す る 規 律 ( 当 該 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 適 用 さ れ る 約 款 規 定 + 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 類 推 適 用 さ れ る べ き 生 命 保 険 契 約 に 関 す る 商 法 の 規 定 ) と と も に 、 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 規 律 、 具 体 的 に は 重 複 保 険 や 請 求 権 代 位 に 関 す る 規 律 が 重 ね て 適 用 さ れ る と み る 考 え 方 が 、 学 説 上 は 有 力 で あ っ た と 思 わ れ る 。 中 間 試 案 が 前 述 の よ う な 独 自 の 類 型 論 を 採 用 し た 理 由 は 必 ず し も 明 ら か で は な い が 、 あ え て 推 測 す る な ら ば 、 人 の 傷 害 ・ 疾 病 に 関 し て 給 付 を な す 保 険 商 品 に つ い て ど の 規 範 が 適 用 さ れ る の か を で き る 限 り 明 確 に し て お き た い と い う こ と と と も に 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 法 の 立 法 に あ た っ て 、 定 額 給 付 方 式 の み を 念 頭 に 置 け ば よ い こ と か ら 、 条 文 作 成 作 業 が 容 易 に な る と い う メ リ ッ ト が 考 慮 さ れ た と い う こ と な の か も し れ な い 。

し か し な が ら 、 損 害 て ん 補 方 式 の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 は 損 害 保 険 契 約 で あ る か ら 損 害 保 険 契 約 法 を 適 用 す る 、 と い う こ と だ け で 規 律 と し て 十 分 か と い う と 、 お そ ら く は そ れ だ け で は 足 り な い と 思 わ れ る 。 た と え ば 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 法 に は 、 保 険 契 約 者 の 債 権 者 等 が 解 約 返 戻 金 を 狙 っ て 保 険 契 約 の 解 除 を し よ う と し た

(7)

場 合 に 、 保 険 金 受 取 人 の た め に 保 険 契 約 を 存 続 さ せ る た め の ル ー ル を 設 け る こ と が 予 定 さ れ て い る が(「 保 険 金 受 取 人 等 の 意 思 に よ る 傷 害・疾 病 保 険 契 約 の 存 続 」

( 試 案

29

頁 ))、こ の ル ー ル は 、保 険 金 支 払 事 由 の 発 生 が 近 々 予 期 さ れ る に も か か わ ら ず 、 保 険 契 約 者 の 債 権 者 が 保 険 契 約 を 解 除 し て し ま う こ と か ら 保 険 金 受 取 人 を 保 護 し よ う と す る も の で あ り 、 そ の よ う な 立 法 趣 旨 か ら す れ ば 、 支 払 わ れ る 保 険 金 が 定 額 給 付 で あ る か 損 害 て ん 補 で あ る か に か か わ ら ず 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に は 等 し く 適 用 さ れ る べ き で あ ろ う 。 同 様 の こ と は 、 被 保 険 者 が 傷 害 を 原 因 と し て 死 亡 し た 場 合 に 被 保 険 者 の 法 定 相 続 人 に 傷 害 死 亡 保 険 金 を 支 払 う 傷 害 保 険 契 約 に 、 被 保 険 者 同 意 の ル ー ル を ど の よ う に 適 用 す る か 、 と い う こ と に つ い て も 妥 当 す る 。 他 人 を 被 保 険 者 と す る 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 の 死 亡 給 付 に 関 し て は 、 そ も そ も ど の よ う な ル ー ル を 定 め る か が 保 険 法 部 会 で は 大 き な 論 点 に な っ て い る が 、 被 保 険 者 同 意 に 関 し て 最 終 的 に ど の よ う な ル ー ル が 採 用 さ れ る と し て も ( 搭 乗 者 傷 害 保 険 の よ う に 予 め 被 保 険 者 同 意 を 得 る こ と が 類 型 的 に 困 難 な 保 険 契 約 に つ い て は 、被 保 険 者 同 意 を 要 求 し な い と い う 例 外 ル ー ル が 設 け ら れ る 可 能 性 が あ る )、

死 亡 保 険 金 が 定 額 で あ る の か 、 そ れ と も 被 保 険 者 の 価 値 を 算 定 し て そ の 額 を 支 払 う の か で 、被 保 険 者 同 意 に 関 す る ル ー ル は 異 な る べ き で は な か ろ う 。こ の よ う に 、 損 害 て ん 補 方 式 の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 は 、 損 害 保 険 契 約 法 の 規 定 だ け を 適 用 し て お け ば そ れ で 済 む と い う わ け で は な く 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 法 の 規 定 の い く つ か を 個 別 に 準 用 し な け れ ば な ら な く な る 可 能 性 が 高 い 。 そ う だ と す る と 、 損 害 て ん 補 方 式 の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 を 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 と 位 置 付 け 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 法 の 規 定 を 適 用 す る と し た う え で 、 重 複 保 険 や 請 求 権 代 位 な ど 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の ル ー ル の 適 用 に つ い て は 別 途 手 当 て す る と い う ア プ ロ ー チ に も 十 分 に 理 由 が あ る と い う べ き で あ ろ う

6

6

こ の ア プ ロ ー チ に よ る 場 合 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 は 、 た と え ば 、 「 傷 害 ( 疾 病 ) に 関 し て 契 約 で 定 め た 給 付 を す る こ と を 約 し … 」 と い う よ う に 定 義 す べ き こ と に な ろ う 。 重 複 保 険 や 請 求 権 代 位 な ど の 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 規 律 に つ い て は 、 損 害 て ん 補 方 式 の 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に こ れ ら の 規 律 が 及 ぶ こ と を 明 文 で 定 め る こ と も 考 え ら れ る が 、 特 に 規 定 は お か ず 解 釈

(8)

( 4 )中 間 試 案 は 、そ こ に 掲 げ ら れ た 諸 ル ー ル の そ れ ぞ れ に つ い て 、強 行 規 定( こ れ に 反 す る 約 定 が 無 効 と さ れ る 規 定 ) 、 片 面 的 強 行 規 定 ( こ れ に 反 す る 規 定 で 保 険 契 約 者 又 は 被 保 険 者 ( 生 命 保 険 契 約 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に お い て は こ れ ら の 者 に 加 え て 保 険 金 受 取 人 ) に 不 利 な も の が 無 効 と さ れ る 規 定 ) 、 任 意 規 定 の 別 を 示 し て い る 。 も っ と も 、 あ る 規 定 が 片 面 的 強 行 規 定 と さ れ る の は 、 当 該 規 定 の 効 果 を 貫 徹 す る こ と が 保 険 契 約 者 等 の 利 益 を 保 護 す る た め に 必 要 で あ る と 判 断 さ れ る か ら で あ り 、 し た が っ て 、 そ の よ う な 保 護 を 与 え る 必 要 の な い 立 場 の 強 い 保 険 契 約 者 に つ い て は そ れ ら の 規 定 を 片 面 的 強 行 法 規 と は せ ず 、 契 約 内 容 を 当 事 者 間 の 交 渉 に よ り 自 由 に 決 め ら れ る よ う に し て お く 方 が 、 保 険 契 約 者 ・ 保 険 者 の 双 方 の 利 便 性 を 高 め る こ と に な る 。中 間 試 案 も 、海 上 保 険 契 約 や 再 保 険 契 約 そ の 他〔 一 定 の 契 約 〕 に つ い て は 、 強 行 規 定 の 対 象 か ら 外 す ( 任 意 規 定 と す る ) こ と を 予 定 し て い る ( 試 案 1 頁 。 な お 、 こ こ で 強 行 規 定 の 対 象 か ら 外 す と は 、 正 確 に は 片 面 的 強 行 規 定 の 対 象 か ら 外 す と い う 趣 旨 で あ ろ う ) 。 も っ と も 、 片 面 的 強 行 規 定 の 対 象 か ら は ず す 保 険 契 約 を ど の 範 囲 と す る か に つ い て は 、 部 会 で も 様 々 な 意 見 が 述 べ ら れ て お り ( 補 足 説 明 3 頁 以 下 参 照 ) 、 中 間 試 案 で も 今 後 の 検 討 事 項 と さ れ て い る 。

ま ず 、 中 間 試 案 自 ら が 強 行 規 定 の 対 象 か ら 外 す 例 と し て 挙 げ て い る 海 上 保 険 契 約 や 再 保 険 契 約 は 、 一 般 消 費 者 が 保 険 契 約 者 と な る こ と は 考 え に く く 、 ま た 、 保 険 契 約 自 体 が 国 際 的 で あ っ て 、 契 約 自 由 に 制 約 を 加 え る こ と が 保 険 業 の 国 際 的 競 争 力 を 引 き 下 げ か ね な い こ と か ら も 、 片 面 的 強 行 規 定 の 対 象 か ら 外 す こ と は 正 当 で あ ろ う 。 補 足 説 明 で は 、 こ の ほ か に 航 空 保 険 や 海 外 の P L 保 険 、 保 証 保 険 ・ 信 用 保 険 も 同 様 の 例 と し て 挙 げ て い る が 、 こ れ ら は 、 保 険 契 約 の 属 性 そ れ 自 体 か ら 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 か ら 外 れ る 契 約 類 型 で あ る と 整 理 す る こ と が で き よ う ( こ の よ う な 類 型 の 保 険 契 約 は 、 契 約 当 事 者 の い か ん に か か わ ら ず 常 に 片 面 的 強 行 法

に 委 ね る と い う こ と も 考 え ら れ る で あ ろ う 。

(9)

規 の 対 象 か ら 外 れ る 契 約 類 型 と い う 意 味 で 、 「 絶 対 的 企 業 保 険 」 と 呼 ぶ こ と が で き る か も し れ な い ) 。

こ れ と は 逆 に 、 保 険 契 約 の 属 性 そ れ 自 体 か ら 、 必 ず 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 と さ れ る べ き 保 険 種 類 は あ る か 。 生 命 保 険 契 約 や 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に お い て は 、 被 保 険 者 と な る の は 常 に 個 人 で あ り 、 し か も 、 片 面 的 強 行 法 規 に よ る 契 約 自 由 の 制 限 は 、 保 険 契 約 者 、 保 険 金 受 取 人 と 並 ん で 被 保 険 者 の 保 護 の た め に な さ れ る も の で あ る か ら 、 生 命 保 険 契 約 お よ び 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に つ い て は 、 契 約 の 属 性 そ れ 自 体 に よ っ て 常 に 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 に な る と 考 え る こ と も 可 能 で あ ろ う 。 生 命 保 険 契 約 や 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 の 中 に は 、 団 体 保 険 の よ う に 法 形 式 上 企 業 が 保 険 契 約 者 と な っ て い る も の も あ る が 、 そ の よ う な 場 合 で あ っ て も 、 被 保 険 者 や そ の 親 族 の 個 人 的 な 需 要 を 充 足 す る た め に そ れ ら の 保 険 が か け ら れ て い る こ と が 少 な く な い か ら 、 保 険 契 約 者 が 個 人 で は な く 企 業 で あ る こ と を も っ て 、 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 か ら 外 す べ き で は な い で あ ろ う

7 8

( こ の よ う な 類 型 の 保 険 契 約 は 、 契 約 当 事 者 の い か ん に か か わ ら ず 、 常 に 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 に な る 契 約 類 型 と い う 意 味 で 、 「 絶 対 的 家 計 保 険 」 と 呼 ぶ こ と が で き る か も し れ な い ) 。

そ れ で は 、 絶 対 的 企 業 保 険 で も な く 、 ま た 、 絶 対 的 家 計 保 険 で も な い そ の 他 の 類 型 の 保 険 契 約 ( た と え ば 、 火 災 保 険 契 約 、 自 動 車 保 険 契 約 、 一 般 賠 償 責 任 保 険 契 約 等 ) に つ い て は ど の よ う に 考 え れ ば よ い か 。 こ れ ら の 契 約 類 型 に つ い て は 、 た と え ば 、 保 険 契 約 者 が 一 定 の 事 業 規 模 を も つ 事 業 者 で あ る 場 合 を 企 業 保 険 と み て 、片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 か ら 外 す と い う 規 整 枠 組 み を 考 え る こ と も 可 能 で あ る 。 こ の 枠 組 み に よ れ ば 、 総 資 産 額 や 売 上 高 な ど が 一 定 の 数 値 に 達 し て い る 事 業 者 が

7

ド イ ツ 保 険 契 約 法 で は 、 生 命 保 険 契 約 、 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 は 常 に 片 面 的 強 行 法 規 に よ る 保 護 の 対 象 に な る も の と さ れ て い る 。

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こ の よ う に 、 生 命 保 険 契 約 お よ び 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 は 、 常 に 個 人 が 被 保 険 者 と な り 、 ま た 、 個 人 の 需 要 を 満 た す た め に 付 保 さ れ る こ と が 多 い と い う 点 に 着 目 し て 常 に 片 面 的 強 行 法 規 に よ る 保 護 を 与 え る と す る の で あ れ ば 、 こ の 点 か ら も 、 傷 害 ・ 疾 病 に 関 し て 給 付 を 行 う 保 険 契 約 は 、 損 害 て ん 補 方 式 で あ る か 定 額 給 付 方 式 で あ る か を 問 わ ず 、 す べ て 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 と し て 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 法 を 適 用 す る と い う ア プ ロ ー チ の 方 が 整 合 的 で あ る と い え る の で は な か ろ う か 。

(10)

保 険 契 約 者 と な る 場 合 は 企 業 保 険 と し て 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 か ら 外 す が 、 そ の よ う な 数 値 に 達 し な い 小 規 模 個 人 商 人 等 が 保 険 契 約 者 と な る 場 合 は 片 面 的 強 行 法 規 に よ る 保 護 を 与 え る と い う こ と も 可 能 に な る 。 実 際 、 ド イ ツ 保 険 契 約 法 は こ の よ う な 規 整 枠 組 み を 採 用 し て い る 。

し か し な が ら 、 事 業 規 模 と リ ス ク は 必 ず し も 比 例 す る も の で は な く 、 ベ ン チ ャ ー 企 業 の よ う に 、 現 時 点 で は 小 さ な 事 業 規 模 し か 有 し な い 事 業 者 で あ っ て も 、 大 き な リ ス ク な い し 定 型 的 と は い え な い リ ス ク を 抱 え て い る 事 業 者 は あ り う る 。 そ の よ う な 事 業 者 の リ ス ク が 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 と さ れ 、 保 険 者 が 契 約 自 由 を 制 限 さ れ る 形 で リ ス ク を 引 き 受 け な け れ ば な ら な く な る と 、 ス ム ー ズ な リ ス ク の 引 受 け が 困 難 に な り か ね な い 。 こ の 点 を 重 視 す る な ら ば 、 事 業 規 模 の い か ん に か か わ ら ず 、 事 業 者 が 保 険 契 約 者 と な る 場 合 に は 常 に 企 業 保 険 と し て 、 片 面 的 強 行 法 規 の 対 象 か ら 外 さ れ る べ き こ と に な ろ う ( 「 事 業 者 」 か ど う か を 法 適 用 の メ ル ク マ ー ル と し て い る 例 と し て 、 消 費 者 契 約 法

2

2

項 ・

3

項 ) 。

3 . 中 間 試 案 の 概 要

中 間 試 案 は 、 第 1 か ら 第 4 の 4 つ の 部 分 か ら 成 っ て お り 、 第 1 で 「 保 険 法 の 適 用 範 囲 」 ( こ れ に つ い て は 本 報 告 の 2 . で 取 り 上 げ た ) を 扱 っ た 後 、 第 2 か ら 第 4 に お い て 、 「 損 害 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 、 「 生 命 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 、

「 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 を 扱 っ て い る 。 「 損 害 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 、 「 生 命 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 、 「 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 関 す る 事 項 」 の そ れ ぞ れ に お い て 扱 わ れ て い る 事 項 は ( 損 害 保 険 契 約 に 関 し て 、 火 災 保 険 契 約 ・ 責 任 保 険 契 約 に 関 す る 特 則 が 置 か れ て い る 点 を 除 く と ) ほ ぼ 共 通 し て お り 、 具 体 的 に は 、 ( 1 ) 保 険 契 約 の 成 立 に 関 す る 事 項 、 ( 2 ) 保 険 契 約 成 立 後 の 保 険 契 約 の 変 動 ( リ ス ク の 増 減 や 保 険 金 受 取 人 の 変 更 等 ) に 関 す る 事 項 、 ( 3 ) 保 険 事 故 の 発 生 に よ る 保 険 給 付 に 関 す る 事 項 、( 4 )保 険 契 約 の 終 了 に 関 す る 事 項 で あ る 。

(11)

以 下 で は 、 現 行 商 法 と 異 な る ル ー ル が 提 案 な い し 検 討 さ れ て い る 事 項 を い く つ か 取 り 上 げ て 、 簡 単 な コ メ ン ト を 加 え て い く こ と と し た い

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( 1 ) 保 険 契 約 の 成 立 に 関 す る 事 項

保 険 契 約 の 成 立 に 関 し て は 、 各 保 険 契 約 の 意 義 ( 定 義 ) が 扱 わ れ て い る ほ か 、 三 類 型 共 通 の 事 項 と し て 、 危 険 に 関 す る 告 知 ( 告 知 義 務 ) 、 第 三 者 の た め に す る 保 険 契 約 、 遡 及 保 険 、 保 険 契 約 の 無 効 ・ 取 消 し に よ る 保 険 料 の 返 還 、 保 険 証 券 が 扱 わ れ て お り 、 さ ら に 、 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 、 損 害 保 険 契 約 の 目 的

( 被 保 険 利 益 ) 、 生 命 保 険 契 約 お よ び 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 、 他 人 を 被 保 険 者 と す る 死 亡 保 険 契 約 ( ま た は 他 人 を 被 保 険 者 と す る 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 ) に お け る 被 保 険 者 の 同 意 な ら び に 被 保 険 者 の 意 思 に よ る 契 約 関 係 か ら の 離 脱 、 保 険 金 受 取 人 の 指 定 が 扱 わ れ て い る 。

(a) 「 危 険 に 関 す る 告 知 」 ( 試 案

2

頁 ) に つ い て は 、 い く つ か の 点 で 現 行 商 法 と は 異 な る ル ー ル を 採 用 す る こ と が 予 定 さ れ て い る 。 ま ず 、 現 行 商 法 が 保 険 契 約 者 側 に 重 要 事 実 を 自 発 的 に 申 告 す る 義 務 を 課 し て い る の に 対 し て 、 中 間 試 案 で は 、 保 険 者 か ら の 質 問 に 応 答 す れ ば 告 知 義 務 を 履 行 し た こ と に な る と す る 質 問 応 答 義 務 に 改 め る こ と が 予 定 さ れ て い る ( ① ) 。 ま た 、 告 知 義 務 違 反 が あ っ た 場 合 の 保 険 者 の 解 除 権 の 阻 却 事 由 と し て 、 現 行 商 法 が 定 め る 保 険 者 の 悪 意 ・ 有 過 失 に 加 え て 、 保 険 者 の 使 用 人 等 の う ち 告 知 の 受 領 権 限 を 有 し な い 者 が 告 知 妨 害 を し た な ど 一 定 の 行 為 を し た 場 合 も 明 記 す る こ と が 検 討 さ れ て い る ( ② ) 。 さ ら に 、 告 知 義 務 違 反 に 対 し て 保 険 者 が 解 除 権 を 行 使 し た 場 合 の 効 果 に つ い て は 、 現 行 法 の 規 律

( 保 険 契 約 者 側 が 告 知 し な か っ た 事 実 と 当 該 保 険 事 故 と の 間 の 因 果 関 係 の 不 存 在

9

中 間 試 案 で 取 り 上 げ ら れ て い る 項 目 を 個 別 に 検 討 し た も の と し て 、 「 日 本 私 法 学 会 シ ン ポ ジ ウ ム 資 料・保 険 法 改 正 」( 商 事 法 務

1808

4

頁 以 下 に 収 め ら れ た 諸 論 文 )が あ る( た だ し 、 論 文 執 筆 時 期 の 関 係 で 、 こ れ ら の 論 文 が 直 接 に 検 討 の 対 象 と し て い る の は 、 中 間 試 案 そ の も の で は な く 、 中 間 試 案 の 一 つ 手 前 の 段 階 で あ る 「 保 険 法 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 の 取 り ま と め に 向 け た 議 論 の た め の た た き 台 」 で あ る ) 。

(12)

を 証 明 し た 場 合 を 除 き 、 既 に 発 生 し た 保 険 事 故 に つ い て も 保 険 者 は 免 責 さ れ る ) を 維 持 す る と い う A 案 の ほ か に 、 保 険 契 約 者 側 に 重 過 失 が あ っ た に す ぎ な い 場 合 で 、 正 し い 告 知 が さ れ て い た と す れ ば 保 険 者 が よ り 高 い 保 険 料 で 契 約 を 締 結 し た で あ ろ う 場 合 に つ い て は 、 一 定 の 方 法 で 保 険 金 を 減 額 し て 支 払 う こ と と す る B 案 が 提 示 さ れ て い る ( ③ ) 。 ① お よ び ② は 、 い ず れ も 保 険 契 約 者 に 有 利 に 働 く ル ー ル で あ り 、 ③ の B 案 も 、 現 行 商 法 で は 保 険 者 が 全 額 免 責 さ れ る 場 合 に つ い て 、 減 額 は さ れ る も の の 一 定 の 保 険 金 の 支 払 を 認 め る も の で あ る か ら 、 同 様 に 保 険 契 約 者 に 有 利 に 働 く ル ー ル と い え る 。 そ し て 、 こ れ ら 告 知 義 務 に 関 す る 規 定 は 、 基 本 的 に は 片 面 的 強 行 規 定 と す る こ と が 予 定 さ れ て い る 。 以 上 の う ち 、 ② お よ び ③ に つ い て は 、 部 会 で も 以 前 か ら 様 々 な 意 見 が 出 さ れ て お り 、 パ ブ コ メ で も 多 数 の 意 見 が 寄 せ ら れ た よ う で あ る が 、 最 終 的 に は 、 ② に つ い て は 、 一 定 の 限 定 を 付 け た う え で 採 用 す る 、 ③ に つ い て は A 案 を 採 用 す る と い う 方 向 で 意 見 の 取 り ま と め が な さ れ る 見 込 み で あ る 。

(b) 「 遡 及 保 険 」 ( 試 案

5

頁 ) に つ い て は 、 現 行 商 法 の ル ー ル を よ り 精 緻 化 し 、 保 険 契 約 者 が 契 約 の 申 込 の 通 知 を 発 し た と き に 保 険 契 約 者 又 は 被 保 険 者 ( 保 険 金 受 取 人 ) が 保 険 事 故 の 既 発 生 を 知 っ て い た と き 、 お よ び 、 保 険 者 が 契 約 の 承 諾 の 通 知 を 発 し た と き に 保 険 事 故 の 不 発 生 を 知 っ て い た と き を 除 い て 、 遡 及 保 険 契 約 が 有 効 で あ る こ と を 定 め る こ と が 予 定 さ れ て い る が ( 片 面 的 強 行 規 定 ) 、 実 質 的 に 現 行 商 法 の ル ー ル を 変 更 し よ う と す る も の で は な い 。

(c) 「 他 人 を 被 保 険 者 と す る 死 亡 保 険 契 約 ( ま た は 他 人 を 被 保 険 者 と す る 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 ) 」 に お け る 「 被 保 険 者 の 同 意 」 ( 試 案

18

頁 ・

27

頁 ) に 関 す る ル ー ル を ど の よ う な も の と す る か は 、 部 会 に お い て 最 も 激 論 と な っ た 問 題 の 一 つ で あ る 。 現 行 商 法 が 採 用 す る 同 意 主 義 ( 商

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1

項 本 文 ) を 原 則 的 に 維 持 す る と い う 点 に つ い て は 意 見 が 一 致 し て い る が 、 被 保 険 者 が 未 成 年 者 等 の 制 限 行 為 能 力 者 で あ る 場 合 の 規 律 を ど の よ う に す る か と い う 問 題 お よ び 同 意 主 義 の 例 外 ( 被 保

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険 者 の 同 意 が な く て も 保 険 契 約 を 有 効 と し て よ い 場 合 ) を ど の 範 囲 で 認 め る か と い う 問 題 に つ い て は 、 部 会 で も 様 々 な 意 見 が 出 さ れ 、 中 間 試 案 の 公 表 時 点 で は 部 会 と し て 明 確 な 方 向 性 を 示 す こ と は で き て い な い と い う の が 実 情 で あ る ( 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に お い て 被 保 険 者 が 生 存 し て 自 ら 保 険 金 を 受 領 す る 場 合 に は 、 被 保 険 者 の 同 意 を 要 求 す る 必 要 は な い で あ ろ う と い う こ と に つ い て は 概 ね 異 論 は な い と 思 わ れ る 。 こ れ に 対 し て 、 傷 害 ・ 疾 病 の 死 亡 給 付 に 関 す る 契 約 に つ い て は 、 実 際 に 保 険 金 を 受 け 取 る の は 被 保 険 者 以 外 の 者 で あ る こ と か ら 、 他 人 を 被 保 険 者 と す る 死 亡 保 険 契 約 の 場 合 と 同 様 の 規 律 に 服 せ し め る 必 要 が あ る ) 。

被 保 険 者 が 未 成 年 者 で あ る 場 合 に つ い て 被 保 険 者 の 同 意 を ど の よ う に 得 る か に つ い て 現 行 商 法 は 明 記 し て お ら ず 、 生 保 実 務 上 は 、 被 保 険 者 が 1 5 歳 以 上 の 未 成 年 者 で あ る 場 合 は 未 成 年 者 本 人 と そ の 親 権 者 等 の 法 定 代 理 人 の 同 意 を 得 る こ と と し 、 1 5 歳 未 満 の 未 成 年 者 で あ る 場 合 は 法 定 代 理 人 の 同 意 を 得 る こ と と し て い る と さ れ て い る 。 部 会 で は 、 こ の よ う な 実 務 に 問 題 は な い と い う 指 摘 が な さ れ る 一 方 で 、 そ も そ も 、 親 の 同 意 さ え あ れ ば 幼 児 や 小 児 を 被 保 険 者 と し て 保 険 金 額 数 千 万 円 も の 死 亡 保 険 を か け る こ と が で き る と い う 制 度 自 体 が 比 較 法 的 に も 異 例 で あ っ て 問 題 が あ る の で は な い か ( 幼 児 や 小 児 を 被 保 険 者 と す る 死 亡 保 険 契 約 に そ の よ う な 高 額 の も の を 認 め る 必 要 性 は 乏 し く 、 保 険 金 額 の 上 限 を 設 け る べ き で は な い か ) と の 意 見 も 数 多 く 出 さ れ て い た と こ ろ で あ る 。

一 方 、 同 意 主 義 の 例 外 に 関 し て は 、 た と え ば 、 自 動 車 保 険 契 約 の 搭 乗 者 傷 害 条 項 や 施 設 入 場 者 や イ ベ ン ト 参 加 者 を 被 保 険 者 と す る 保 険 契 約 ( い ず れ も 傷 害 の 死 亡 給 付 に 関 す る 契 約 が 問 題 と な り 、 約 款 上 は 被 保 険 者 の 法 定 相 続 人 に 死 亡 保 険 金 が 支 払 わ れ る こ と に な る ) の よ う に 保 険 契 約 締 結 時 に 被 保 険 者 が 確 定 し て い な い 契 約 類 型 を 同 意 主 義 の 例 外 と し て 扱 っ て よ い と い う 点 に つ い て は 部 会 に お い て も 強 い 反 対 は な か っ た よ う に 思 わ れ る の に 対 し 、 家 族 を ま と め て 被 保 険 者 と す る 傷 害 保 険 契 約 ( 同 じ く 傷 害 の 死 亡 給 付 に 関 す る 契 約 が 問 題 と な る ) に つ い て 、 家 族

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で あ る と い う 理 由 だ け で 同 意 主 義 の 例 外 と し て 扱 う と い う 考 え 方 に 対 し て は 消 極 的 な 意 見 も 述 べ ら れ て い た と こ ろ で あ る 。 傷 害 の 死 亡 給 付 に 関 す る 契 約 は 、 一 般 の 生 命 保 険 契 約 と 比 較 し て レ バ レ ッ ジ が 高 い ( 保 険 料 に 照 ら し て 受 領 す る 保 険 金 の 額 が 大 き い ) と い う 点 で は 、 よ り モ ラ ル ハ ザ ー ド が 高 い と も い う こ と が で き る の で あ り 、 そ の よ う な 契 約 に つ い て 、 家 族 で あ る と い う 理 由 で 被 保 険 者 同 意 を 省 略 で き る と す る 例 外 ル ー ル を 設 け る こ と は 、 立 法 論 的 批 判 の 強 い 現 行 商 法

674

1

項 但 書 の ル ー ル を 形 を 変 え て 存 続 さ せ る こ と に な っ て し ま う と い う こ と に 留 意 す べ き で あ ろ う 。

(d) 中 間 試 案 は 、 「 他 人 を 被 保 険 者 と す る 死 亡 保 険 契 約 ( ま た は 他 人 を 被 保 険 者 と す る 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 ) 」 に お い て 、 被 保 険 者 が 同 意 を す る 前 提 と な っ て い た 事 情 を 欠 く に 至 っ た な ど 一 定 の 場 合 に 「 被 保 険 者 の 意 思 に よ る 契 約 関 係 か ら の 離 脱 」 を 認 め る と い う ル ー ル を 提 案 し て い る ( 試 案

18

頁 ・

28

頁 。 片 面 的 強 行 規 定 ) 。 こ れ は 現 行 商 法 に は な い 新 た な ル ー ル で あ る 。 た だ し 、 被 保 険 者 の 一 方 的 な 意 思 表 示 に よ っ て 保 険 契 約 を 失 効 さ せ る こ と が で き る と す る 中 間 試 案 の ル ー ル に 対 し て は 強 い 異 論 も あ り 、 実 質 的 に 利 害 が 対 立 す る の は 契 約 か ら の 離 脱 を 望 む 被 保 険 者 と 契 約 の 存 続 を 望 む 保 険 契 約 者 で あ る 以 上 、 や や 迂 遠 で は あ る も の の 、 法 律 の 規 定 と し て は 、 保 険 契 約 者 に 対 し 保 険 契 約 を 解 約 す べ き こ と を 請 求 す る 権 利 を 被 保 険 者 に 付 与 す る と い う ル ー ル ( 生 保 試 案

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条 の

3

参 照 ) の 方 が 適 切 で あ る と の 見 解 も 部 会 で は 述 べ ら れ て い る 。

( 2 ) 保 険 契 約 成 立 後 の 保 険 契 約 の 変 動 に 関 す る 事 項

保 険 契 約 成 立 後 の 保 険 契 約 の 変 動 に 関 し て は 、 三 類 型 共 通 の 事 項 と し て 、 危 険 の 増 加 、 危 険 の 減 少 に 関 す る ル ー ル が 提 案 さ れ て い る ほ か 、 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 超 過 保 険 が 、 生 命 保 険 契 約 お よ び 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 、 保 険 金 請 求 権 の 譲 渡 等 、 保 険 金 受 取 人 の 変 更 、 保 険 金 受 取 人 等 の 意 思 に

(15)

よ る 保 険 契 約 の 存 続 が 扱 わ れ て い る 。

(a) 中 間 試 案 は 、 「 危 険 の 増 加 」 に 関 し て 、 現 行 商 法 の ル ー ル を 大 幅 に 改 め た 詳 細 な ル ー ル を 提 案 し て い る ( 試 案

6

頁 ) 。 現 行 商 法 は 、 保 険 契 約 者 等 の 責 め に 帰 す べ き 危 険 の 増 加 の 場 合 に は ( 保 険 者 の 意 図 に 関 わ り な く ) 保 険 契 約 が 当 然 に 失 効 す る も の と し て い る 点 で 合 理 性 を 欠 く も の と し て 立 法 論 的 に 批 判 さ れ て お り 、 約 款 実 務 上 も こ れ と は 異 な る ル ー ル が 定 め ら れ て い る が 、 中 間 試 案 は 、 現 在 の 約 款 ル ー ル を 配 慮 し つ つ 、 告 知 義 務 に 関 す る ル ー ル と パ ラ レ ル な 形 で 、 保 険 契 約 者 の 利 益 保 護 が 図 ら れ る よ う な ル ー ル ( 原 則 と し て 片 面 的 強 行 規 定 ) を 提 案 し て お り 、 そ の 方 向 性 は 基 本 的 に 正 当 で あ る と 思 わ れ る 。 た だ し 、 告 知 義 務 に 関 す る ル ー ル と ど こ ま で 平 仄 を 合 わ せ る の か な ど 、今 後 詰 め る べ き 点 も な お 残 さ れ て い る 。 「 危 険 の 減 少 」 に 関 す る ル ー ル は 、 特 別 危 険 の 消 滅 に 関 す る 現 行 商 法

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条 に 対 応 す る も の で あ る が 、 内 容 的 に は 危 険 の 増 加 に 関 す る ル ー ル と は 裏 腹 の 関 係 に あ る も の で あ る か ら 、 中 間 試 案 の 提 案 の よ う に 、 ( 特 別 危 険 の 消 滅 で は な く ) 危 険 の 減 少 と し て ル ー ル を 整 理 し て い る 点 は 正 当 で あ る と 思 わ れ る 。

(b) 「 超 過 保 険 」 ( 試 案

8

頁 ) に 関 し て 、 現 行 商 法

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条 は 超 過 部 分 が 無 効 で あ る と い う 立 場 を 採 っ て い る が 、 中 間 試 案 は 、 こ れ と は 異 な り 、 超 過 部 分 も 有 効 で あ る と い う 立 場 を 採 る 。 し か し 、 超 過 部 分 が 有 効 で あ る と す る と 、 既 に 経 過 し た 保 険 期 間 に つ い て 、 保 険 契 約 者 が 超 過 部 分 の 保 険 料 相 当 額 の 返 還 請 求 を す る こ と が ( 錯 誤 無 効 の 主 張 を な し う る 場 合 で も な い 限 り ) 困 難 と な る 。 そ こ で 、 中 間 試 案 は 、 保 険 契 約 者 に 悪 意 ・ 重 過 失 が あ っ た 場 合 を 除 き 、 既 経 過 保 険 期 間 の 超 過 部 分 に つ い て 、 保 険 料 の 返 還 請 求 権 を 保 険 契 約 者 に 認 め る と い う ル ー ル を 併 せ て 採 用 し て お り 、 現 行 商 法 よ り も 保 険 契 約 者 が 不 利 な 立 場 に 置 か れ る こ と が な い よ う 配 慮 を し て い る ( 片 面 的 強 行 規 定 ) 。

(c) 生 命 保 険 契 約( お よ び 傷 害・疾 病 保 険 契 約 )に お け る「 保 険 金 受 取 人 の 変 更 」 に 関 し て 、 中 間 試 案 は 、 生 前 の 意 思 表 示 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 と 、 遺 言 に よ

(16)

る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 と に 分 け た 上 で 、 前 者 に つ い て は 、 受 取 人 変 更 の 要 件 と し て 、 保 険 者 に 対 す る 意 思 表 示 を 要 求 す る A 案 と 、 保 険 者 又 は 新 旧 保 険 金 受 取 人 の い ず れ か に 意 思 表 示 を す れ ば 足 り る と す る B 案 ( 判 例 は こ の 立 場 で あ る ) を 選 択 的 に 提 示 し 、 後 者 に つ い て は 、 遺 言 に よ る 受 取 人 の 変 更 を 明 文 で 認 め る こ と を 提 案 し て い る( 試 案

21

頁 )。保 険 金 受 取 人 の 変 更 に 関 し て は で き る 限 り 保 険 契 約 者 の 意 思 を 尊 重 し 、こ れ を 法 律 効 果 に 反 映 さ せ る べ き で あ る と の 大 原 則 か ら す れ ば 、 保 険 契 約 者 に と っ て は 受 取 人 変 更 の 要 件 が 緩 や か な B 案 の 方 が 望 ま し い と い う こ と に も な る が 、 他 方 に お い て 、 B 案 は A 案 と 比 べ て 法 律 関 係 を 錯 綜 さ せ る こ と に な る 可 能 性 が 高 い こ と も 否 定 で き な い 。 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 、 現 行 商 法 に は 明 文 の 規 定 が な く 、 そ れ が 可 能 で あ る か ど う か に つ き 判 例 学 説 上 争 わ れ て い る と こ ろ で あ り 、 こ れ を 明 文 で 認 め た う え で 、 無 用 の 紛 争 が 生 じ な い よ う 必 要 な 法 整 備 を す る こ と は 正 当 で あ ろ う 。

(d) 「 保 険 金 受 取 人 等 の 意 思 に よ る 保 険 契 約 の 存 続 」 と は 、 生 命 保 険 契 約 ( ま た は 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 ) に お い て 、 保 険 事 故 の 発 生 が 近 々 見 込 ま れ る に も か か わ ら ず 、 保 険 契 約 者 の 債 権 者 等 が 解 約 返 戻 金 を 狙 っ て 保 険 契 約 を 解 除 し て き た 場 合 に 、 保 険 金 受 取 人 が 当 該 解 約 返 戻 金 相 当 額 を 保 険 契 約 者 の 債 権 者 等 に 支 払 う こ と に よ り 、 保 険 契 約 の 解 除 を 阻 止 し 、 も っ て 保 険 契 約 を 存 続 さ せ る こ と を 認 め て や ろ う と い う も の で あ る( 試 案

23

頁 。片 面 的 強 行 規 定 )。現 行 商 法 に は こ れ に 相 当 す る 規 定 が な い が 、 海 外 に は 立 法 例 も あ り 、 従 来 わ が 国 で は 「 保 険 金 受 取 人 の 介 入 権 」と し て 立 法 論 が 展 開 さ れ て き た も の で あ る

10

。中 間 試 案 は 、保 険 契 約 者 の 債 権 者 等 に よ っ て 解 除 権 が 行 使 さ れ る 前 に 必 要 な 手 続 が と ら れ れ ば 解 除 を 阻 止 し う る ( 従 来 の 立 法 論 は 、 一 般 に こ れ の み を 主 張 し て い た ) も の と す る こ と に 加 え て 、 解 除 権 が 現 に 行 使 さ れ た 後 で あ っ て も 、 一 定 期 間 内 に 必 要 な 手 続 を と れ ば 解 除 さ れ な か っ た も の と み な す と い う ル ー ル を 定 め て い る と い う 点 で 特 徴 的 で あ

1 0

生 保 試 案

677

条 の

2

参 照 。

(17)

る 。

( 3 ) 保 険 事 故 の 発 生 に よ る 保 険 給 付

保 険 事 故 の 発 生 に よ る 保 険 給 付 に 関 し て は 、三 類 型 共 通 の 事 項 と し て 、損 害( 保 険 事 故 ) 発 生 の 通 知 、 保 険 金 の 支 払 時 期 、 保 険 金 請 求 権 等 の 消 滅 時 効 、 保 険 者 の 免 責 が 扱 わ れ て い る ほ か 、 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 、 保 険 者 の 損 害 て ん 補 責 任 、 損 害 発 生 及 び 拡 大 の 防 止 、 て ん 補 す べ き 損 害 額 ( 損 害 額 の 算 定 、 評 価 済 保 険 ) 、 一 部 保 険 、 重 複 保 険 、 損 害 発 生 後 の 保 険 の 目 的 物 の 滅 失 、 残 存 物 代 位 、 請 求 権 代 位 が 扱 わ れ て い る 。

(a) 「 保 険 金 の 支 払 時 期 」( 試 案

11

頁 )に 関 す る ル ー ル は 現 行 商 法 に は な く 、実 務 上 は 約 款 規 定 に よ っ て い る も の の 、そ の 解 釈 に つ い て は 最 高 裁 で も 争 わ れ る( 最 判 平 成

9

3

25

日 民 集

51

3

1565

頁 )な ど 、明 確 な ル ー ル の 制 定 が 待 ち 望 ま れ て い る 問 題 で あ る 。 約 款 で は 通 常 、 保 険 金 の 支 払 に つ い て 期 限 の 定 め が 設 け ら れ て い る が 、 中 間 試 案 に よ れ ば 、 そ の よ う な 場 合 で あ っ て も 、 当 該 期 間 が 保 険 金 の 支 払 に あ た り 確 認 が 必 要 な 事 項 ( 保 険 事 故 の 発 生 の 有 無 の ほ か 、 免 責 事 由 の 有 無 の 確 認 も 含 ま れ る ) に 照 ら し て 相 当 な 期 間 を 超 え る 場 合 に は 、 保 険 者 は 、 そ の 相 当 な 期 間 を 経 過 し た と き か ら 、 遅 滞 の 責 任 を 負 う こ と と さ れ て い る ( 片 面 的 強 行 規 定 ) 。

(b) 損 害 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 の う ち 、「 重 複 保 険 」に つ い て は 、現 行 商 法 と も 、 現 行 の 保 険 約 款 と も 異 な っ た ル ー ル を 定 め る こ と が 予 定 さ れ て い る( 試 案

10

頁 )。

中 間 試 案 に よ れ ば 、 い わ ゆ る 重 複 保 険 の 状 態 が 生 じ た 場 合 に 、 各 保 険 者 が て ん 補 す べ き 損 害 の 額 は 、 各 損 害 保 険 契 約 に 基 づ き 当 該 保 険 者 が て ん 補 す べ き 損 害 の 額

( 「 独 立 責 任 額 」 ) と さ れ る 。 現 在 の 保 険 実 務 で 一 般 に 用 い ら れ て い る 約 款 に よ れ ば 、 各 保 険 者 が 責 任 を 負 う の は 独 立 責 任 額 を 按 分 比 例 し て 算 出 さ れ る 額 に 限 ら れ て お り 、 被 保 険 者 が 損 害 の 全 額 の て ん 補 を 受 け る た め に は 、 重 複 保 険 の 各 保 険

(18)

者 に 対 し て 損 害 の て ん 補 を 請 求 し な け れ ば な ら な い 。中 間 試 案 の ル ー ル に よ れ ば 、 一 の 保 険 者 か ら 損 害 の 全 額 の て ん 補 を 受 け る こ と も 可 能 に な る か ら ( 自 己 の 負 担 額 を 超 え て て ん 補 を し た 保 険 者 は 重 複 保 険 の 他 の 保 険 者 に 対 し て 求 償 し て い く こ と に な る )、保 険 契 約 者 に と っ て よ り 有 利 な ル ー ル が 採 用 さ れ て い る こ と に な る 。

( 4 ) 保 険 契 約 の 終 了

保 険 契 約 の 終 了 に 関 し て は 、各 契 約 共 通 の 事 項 と し て 、保 険 契 約 者 に よ る 任 意 解 除 、重 大 事 由 に よ る 解 除( 特 別 解 約 権 )、保 険 者 の 破 産 、解 除 の 効 力 が 扱 わ れ 、 生 命 保 険 契 約 ・ 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 と し て 、 保 険 料 積 立 金 等 の 支 払 が 扱 わ れ て い る 。

(a) 「 重 大 事 由 に よ る 解 除 ( 特 別 解 約 権 ) 」 は 、 現 行 商 法 に は 規 定 が な い が 、 約 款 で は 一 般 に 規 定 さ れ 、 と り わ け 、 入 院 給 付 金 等 の 不 正 請 求 に 対 抗 す る 手 段 と し て 、 保 険 実 務 上 も こ れ ま で も 活 用 さ れ て き た ル ー ル を 、 保 険 契 約 法 の 明 文 の ル ー ル と し て 定 め よ う と い う も の で あ る( 試 案

13

頁 )。保 険 者 が 重 大 事 由 に よ り 解 除 権 を 行 使 し た 場 合 、 重 大 事 由 が あ っ た 後 に 生 じ た 保 険 事 故 に つ い て 保 険 者 は 免 責 さ れ る こ と に な る が 、 モ ラ ル ハ ザ ー ド の 防 止 を 口 実 に 保 険 契 約 者 の 利 益 が 不 当 に 害 さ れ る こ と が な い よ う 、 解 除 権 の 行 使 要 件 や 効 果 を 定 め た ル ー ル は 片 面 的 強 行 規 定 と す る こ と が 予 定 さ れ て い る 。 と は い え 、 解 除 権 を 行 使 し う る 場 合 と し て 、

「 そ の 他 の 当 該 保 険 者 と の 信 頼 関 係 を 損 な い 、 当 該 契 約 を 存 続 し 難 い 重 大 な 事 由 が あ る 場 合 」 と い う 包 括 条 項 が 定 め ら れ て い る こ と か ら 、 た と え ば 、 約 款 で 定 め ら れ た 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 や 通 知 義 務 に 違 反 し た 場 合 に は 、 そ の 義 務 違 反 自 体 が 、 「 保 険 者 と の 信 頼 関 係 を 損 な い 、 当 該 契 約 を 存 続 し 難 い 重 大 な 事 由 が あ る 場 合 」 に あ た る と し て 、 保 険 者 の 免 責 を 導 く こ と も 可 能 に な る と 思 わ れ る 。 (b) 「 保 険 料 積 立 金 等 の 支 払 」 に 関 す る ル ー ル と は 、 保 険 期 間 満 了 前 に 生 命 保 険 契 約 ま た は 傷 害 ・ 疾 病 保 険 契 約 が 終 了 し た 場 合 に 、 保 険 契 約 者 に 対 し て 、 将 来 の

(19)

保 険 金 の 支 払 に 充 て る べ き 保 険 料 を も と に 算 定 し た 「 一 定 の 金 額 」 を 支 払 う こ と を 保 険 者 に 義 務 付 け る と い う も の で あ る( 試 案

26

頁 。片 面 的 強 行 規 定 )。現 行 商 法 は 、 生 命 保 険 契 約 が 終 了 す る 場 合 の う ち 、 限 ら れ た ケ ー ス に つ い て 、 「 被 保 険 者 ノ 為 メ ニ 積 立 テ タ ル 金 額 」 を 保 険 契 約 者 に 支 払 う べ き こ と を 定 め て い る に す ぎ な い の に 対 し 、 中 間 試 案 は 、 保 険 契 約 者 が 保 険 契 約 を 任 意 解 除 し た 場 合 の い わ ゆ る 解 約 返 戻 金 に つ い て も 、 明 文 の ル ー ル を 定 め よ う と す る も の で あ る 。 こ の 場 合 の 「 一 定 の 金 額 」 を 具 体 的 に ど の よ う に 定 め る か に つ い て は 、 今 後 の 検 討 に 委 ね ら れ て お り 、 最 終 的 に こ の ル ー ル を 立 法 化 で き る か ど う か は な お 予 断 を 許 さ な い が 、 可 能 な 限 り 立 法 を 行 う 方 向 で 検 討 さ れ る べ き で あ ろ う 。

な お 、 損 害 保 険 契 約 に つ い て は こ の ル ー ル の 適 用 は な い が 、 そ の か わ り に 、 現 行 商 法 に お い て 、 い わ ゆ る 保 険 料 不 可 分 原 則 の 根 拠 と さ れ て い る 規 定 (654 条 ・

655

条 ) を 削 除 す る こ と に よ り 、 「 保 険 料 不 可 分 の 原 則 を 画 一 的 に 採 用 す る こ と は し な い 」と い う 姿 勢 を 明 ら か に す る こ と が 予 定 さ れ て い る( 試 案

15

頁 )。も っ と も 、 保 険 期 間 の 途 中 で 、 保 険 契 約 者 が 解 約 し た り 、 被 保 険 利 益 の 滅 失 に よ り 保 険 契 約 が 失 効 し た 場 合 に 、 未 経 過 期 間 に 相 当 す る 保 険 料 が ど う な る の か に つ い て 任 意 規 定 を 設 け る こ と は 予 定 さ れ て い な い よ う で あ る ( 中 間 試 案 は 、 民 法 の 一 般 法 理 ( 不 当 利 得 法 を 指 す の で あ ろ う ) か ら 、 ( 別 段 の 定 め を し な い 限 り は ) 未 経 過 期 間 に 対 応 す る 保 険 料 が 返 還 さ れ る こ と に な る と い う 考 え 方 に 立 つ も の の よ う で あ る ( 補 足 説 明

59

頁 ) ) 。

( 5 ) そ の 他

上 記 ( 1 ) ~ ( 4 ) に は 含 ま れ な い 事 項 と し て 、 火 災 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 お よ び 責 任 保 険 契 約 に 固 有 の 事 項 が あ る が 、 こ の う ち 、 責 任 保 険 契 約 に お け る 「 保 険 金 か ら の 優 先 的 な 被 害 の 回 復 」 は 、 重 要 か つ 難 解 な 問 題 で あ る 。

中 間 試 案 は 、 責 任 保 険 契 約 の 被 保 険 者 に つ い て 破 産 手 続 開 始 、 再 生 手 続 開 始 又

(20)

は 更 生 手 続 開 始 の 決 定 が あ っ た 場 合 に は 、 被 害 者 が 一 定 の 要 件 の も と で 保 険 金 か ら 優 先 的 に 被 害 の 回 復 を 受 け る こ と が で き る 、 と い う ル ー ル を 設 け る こ と を 提 案 し て い る( 試 案

16

頁 。そ の た め の 法 的 枠 組 み と し て は 、保 険 者 に 対 す る 直 接 請 求 権 を 被 害 者 に 認 め る と い う ア プ ロ ー チ と 、 責 任 保 険 金 に つ い て 被 害 者 に 優 先 弁 済 権 ( 先 取 特 権 ) を 与 え る と い う ア プ ロ ー チ が 考 え ら れ る と し て い る ) 。 こ の ル ー ル の 採 用 に よ り 、 本 来 被 害 者 ・ 加 害 者 ( 被 保 険 者 ) 間 で 争 わ れ る べ き 損 害 賠 償 責 任 の 有 無 ・ 額 が 、 加 害 者 を 抜 き に し て 、 被 害 者 と 保 険 者 の 間 で 争 わ れ る こ と に な り か ね な い こ と を 懸 念 す る 損 害 保 険 業 界 や 、 責 任 保 険 契 約 の 存 在 や 内 容 そ れ 自 体 が 重 要 な 企 業 秘 密 で あ る に も か か わ ら ず そ れ を 開 示 さ せ る よ う な ル ー ル が 新 設 さ れ か ね な い こ と を 懸 念 す る 企 業 保 険 ユ ー ザ ー か ら 、 こ の ル ー ル の 採 用 に 対 し て は 当 初 強 い 難 色 が 示 さ れ て い た が 、 そ れ ら の 懸 念 を 払 拭 さ せ う る よ う な 法 的 枠 組 み を 構 築 す る こ と は 可 能 で あ る と 思 わ れ る 。 立 法 化 す る 方 向 で 、 さ ら な る 検 討 が 尽 く さ れ る べ き で あ ろ う 。

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