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公的介護保険制度の持続可能性と自治体間差異

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2018年6月9日

平成30年度 第1回日本保険学会関西部会報告会【レジュメ】

公的介護保険制度の持続可能性と自治体間差異

小樽商科大学 商学研究科(博士後期課程)

現代商学専攻 菊地雅彦

1. はじめに

現在、日本の 65 歳以上の高齢者人口は年々増加しており、団塊の世代が 75 歳以上の後 期高齢者となる 2025 年には 65 歳以上の人口は 36,573 千人で総人口の 30.3%になると推計 されている。また生産年齢人口は減少を続けると推計されている1

この様な人口推計のもと、2000 年に施行された公的介護保険制度が将来的に持続可能な のか検証する一環として、本研究では、第1号・第 2 号被保険者数と要支援・要介護認定者 数の推移を予想し、将来的に公的介護保険制度の財政収支が成り立つのか検証を行い、各自 治体における介護サービス利用の給付支払額が異なることから、その要因を分析すること により介護保険制度運用の違いを明らかにする。

2. 公的介護保険制度の財政収支予想

公的介護保険制度の仕組みを簡略化して示すと図 2-1 の通りとなる。

図 2-1 介護保険制度の仕組み

[出典]厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」から筆者作成

被保険者は 65 歳以上の第 1 号被保険者と 40 歳から 64 歳までの第 2 号被保険者に分か れ、第 1 号被保険者からは原則年金からの天引きとして個別市町村が徴収し、第 2 号被保

1 国立社会保障・人口問題研究所(2012)

市区町村

(保険者)

被保険者 介護サービス

事業者 保険料

給付は現金給付ではなく サービス給付となっている

介護保険制度 負担額支払

請求

サービス提供 要介護認定

自己負担額支払

(2)

2

険者からは国民健康保険、健康保険組合などから全国プールとして徴収する。公的介護保険 制度は 3 年毎に見直しを行うこととなっており市町村では介護保険として税金 50%、保険 料 50%で財源を組んでいる。税金の内訳は市町村 12.5%、都道府県 12.5%、国 25%となっ ている2

国立社会保障・人口問題研究所「男女年齢各歳別人口:出生中位(死亡中位)推計」をもと に、要支援・要介護認定者数の推移を予想する。第 2 号被保険者に対しては、2014 年度と 2015 年度の第 2 号被保険者数における要支援・要介護認定者数の割合が今後も変わらない として、2016 年度から 2060 年度までの第 2 号被保険者の要支援・要介護認定者数の推移を 予想する。第 1 号被保険者に対しては、年齢が高くなると要支援・要介護認定者数が増える ことから、2014 年度と 2015 年度における第 1 号被保険者の要支援・要介護者認定者数の割 合を 65 歳から 5 歳ごとに算出し、その割合の平均値が今後も変わらないとして、2016 年度 から 2060 年度までの各年度における第 1 号被保険者の各年齢に割合を乗じることにより、

第 1 号被保険者の要支援・要介護認定者数の推移を予想すると図 2-2 の通りとなる。

図 2-2 第 1 号・第 2 号被保険者数と要支援・要介護認定者数予想

[出典]厚生労働省「介護保険事業報告(全国計)」と国立社会保障・人口問題研究所「男女年齢各歳別 人口:出生中位(死亡中位)推計」から筆者作成

一般会計予算歳出の 2000 年度から 2017 年度までの推移は図 2-3 の通りとなる。社会保 障費と国債費が増加傾向となっており、地方財政費は横ばい、国家機関費・防衛関係費・教 育文化費その他は減少傾向となっている。歳出総額も横ばいとなっており、高齢化に伴い社 会保障費が増加することから歳出を抑制するには社会保障費以外の歳出を減らさなければ

2 厚生労働省(2015)

要支援・要介護認定者数

年度 千人

第 1 号被保険者数

第 2 号被保険者数

(3)

3

ならない。一般会計予算歳入の 2000 年度から 2015 年度までの歳入総額と租税及び印紙収 入と公債金の関係は図 2-4 の通りとなり、歳出が税収入を上回っており不足分を公債金で 補填している状況となっている。

図 2-3 一般会計歳出予算目的別推移

[出典]財務省「一般会計歳出予算目的別分類総括表」から筆者作成

図 2-4 一般会計歳入主要科目推移

[出典] 財務省「一般会計歳入主要科目別決算」から筆者作成

政府は 2019 年 10 月に予定されている消費税率 10%への引き上げにより社会保障の充実 策として 1.1 兆円程度を充てることとしている3。従って社会保障費は 2019 年度の予想歳出 額に 1.1 兆円を加算した値が限度額となり、この値を超える場合は他の科目に影響を与え

3 財務省(2018)

年度 億円

億円

年度 歳入総額

租税及び印紙収入

公債金 歳出総額

社会保障関係費 国家機関費・防衛関係費・

教育文化費その他

国債費 地方財政費

(4)

4

ることとなる。介護保険特別会計経理状況をまとめると表 2-1 の通りとなる4

表 2-1 介護保険特別会計経理状況 保険事業勘定(2015 年)

[出典]厚生労働省「介護保険事業状況報告」(2015)から筆者作成

表 2-1 より歳出の 93.6%が保険給付費であり、保険給付費の変動によって歳出が大きく 変わることが分かる。第 2 号被保険者の保険料は支払基金が介護保険関係業務として各医 療保険者から徴収し市町村等へ交付していることから、本研究では歳入の介護保険料、国庫 支出金、支払基金交付金、都道府県支出金と、歳出の保険給付費の 5 つの科目に着目して分 析を進める。

公的介護保険制度では 3 年毎の改定により介護保険料が見直されることになっているが、

介護保険料を 3 年毎に見直しせずに 2015 年度の保険料のまま推移するとして介護保険料の 歳入を推計すると図 2-5 の通りとなる。2019 年度の国庫支出金と都道府県支出金の合計は 47,470 億円で、この値に 11,000 億円を加算した 58,470 億円を支出限度額とする。この値 を超えると介護保険事業だけで消費税率引き上げによる社会保障費の補てん分を使い切る こととなる。介護保険料を見直さなければ 2024 年に国庫支出金と都道府県支出金の合計額 が 60,260 億円となり限度額を超える。国庫支出金と都道府県支出金を減らすためには介護 保険料の定期的な見直しが必要となる。

4 厚生労働省(2015)

科目 決算額(千円) 科目 決算額(千円)

介護保険料 2,141,719,296 総務費 227,836,936

分担金及び負担金 2,899,282 保険給付費 9,108,036,255

使用料及び手数料 602,414 地域支援事業 203,446,174

国庫支出金 2,221,447,088 財政安定化基金拠出金

支払基金交付金 2,569,596,197 相互財政安定化事業負担金

都道府県支出金 1,371,657,241 保健福祉事業費 595,551

相互財政安定化事業交付金 - 基金積立金 105,184,873

財産収入 373,876 公債費 3,987,078

寄附金 1,806 予備費 16,269

繰入金 1,453,675,591 諸支出金 76,296,517

繰越金 163,993,183

市町村債 140,655

諸収入 7,607,771

合計 9,933,714,402 合計 9,725,399,653

歳入歳出差引残高 208,314,749

歳入 歳出

(5)

5

図 2-5 公的介護保険 歳入 4 科目推移予想(3 年毎に改定しない場合)

[出典]厚生労働省「介護保険事業状況報告」、図 2-2 要支援・要介護者認定者数予想から筆者作成

次に現在の介護保険制度に則り、3 年毎に介護保険料を見直した場合の歳入を推計すると 図 2-6 の通りとなる。

図 2-6 公的介護保険 歳入 4 科目推移予想(3 年毎に改定した場合)

[出典]厚生労働省「介護保険事業状況報告」、図 2-2 要支援・要介護者認定者数予想から筆者作成 年度

億円

介護保険料 国庫支出金

都道府県支出金

支払基金支出金 2024 年に限度額を超える

年度 億円

国庫支出金+都道府県支出金

2019 年 47,470 億円

2024 年 60,260 億円

12,790 億円増加

介護保険料

国庫支出金

都道府県支出金 支払基金支出金 2029 年に限度額を超える

国庫支出金+都道府県支出金 2019 年

42,639 億円 2029 年 54,935 億円

12,296 億円増加

(6)

6

2019 年度の国庫支出金と都道府県支出金の合計は合計 42,639 億円で、この値に 11,000 億円を加算した 53,639 億円を限度額とする。この値を超えると介護保険料を 3 年毎に見直 さない場合と同様に介護保険事業だけで消費税率引き上げによる社会保障費の補てん分を 使い切ることとなる。3 年毎に介護保険料を見直した場合でも 2029 年に国庫支出金と都道 府県支出金の合計額が 54,935 億円となり限度額を超える。公的介護保険制度を継続するに は介護保険料や制度利用に伴う自己負担金を現状の水準より大きく増加させるか、介護サ ービスを利用した場合の給付支払額を減額しなくてはならない。

3. 各自治体における給付支払額の差異

介護サービスを利用した際の給付支払額が各自治体によって異なることから、その要因 を分析し、介護保険料や介護サービス利用の自己負担額を増額しなくても、給付支払額を抑 制することにより持続が可能となる公的介護保険制度の運用を検証する。

先行研究では 2010 年度都道府県別の要介護認定率と第 1 号被保険者の保険料基準額単純 平均を比較した図を示し、格差が生じる要因を要介護認定率の違いと 1 人当たり給付額の 違いの 2 つになるとしている5。先行研究と同様に 2006 年と 2013 年の第 1 号被保険者の要 介護認定率と保険料基準額加重平均を図にすると図 3-1、図 3-2 の通りとなる。

図 3-1 要介護認定率と第 1 号被保険者 図 3-2 要介護認定率と第 1 号被保険者 保険料基準額(都道府県別 2006 年度) 保険料基準額(都道府県別 2013 年度)

[出典] 厚生労働省「介護保険事業状況報告」より筆者作成

要介護認定率と第 1 号被保険者の保険料基準額加重平均の比較のグラフが、2006 年から 2013 年にかけてY軸の正の方向に移動し、X軸の正の方向へ移動するとともにX軸に沿っ て広がる事によりグラフの傾きが小さくなっているのは、2006 年度から 2013 年度に掛けて 各都道府県の要介護認定者数及び要介護認定率のバラツキが大きくなり、保険給付の支払

5 小塩隆士(2013)

保険料基準値、加重平均、月額、円)

要介護認定率(%)

y = 24184x + 1158.6

要介護認定率(%)

保険料基準値、加重平均、月額、円)

y = 18989x + 2523.3

(7)

7

済額累計のバラツキも大きくなっていることが主な要因であると考えられる。これらのこ とより都道府県によって介護サービスの利用が多い地域と少ない地域に分かれて、介護サ ービス利用の地域差が拡大していると考えられる。

介護サービス利用の地域差分析のため、介護サービスの主要 3 介護サービスとなる居宅 介護サービス、地域密着型サービス、施設介護サービスに関して、全国 1,541 市町村の要支 援・要介護認定者における利用者の割合と、要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済 額を人口別に図にすると図 3-3 から図 3-7 の通りとなり、人口が多い地域ほど各サービス を使い分けており、人口が少ない地域ほど介護サービスが少ないことから使い分けができ ず、介護サービス利用の給付金支払額が大きくなる。

図 3-3 介護サービス利用者割合と給付支払 図 3-4 介護サービス利用者割合と給付支払 済額(人口 100 万人以上) 済額(人口 10 万人以上 100 万人未満)

図 3-5 介護サービス利用者割合と給付支払 図 3-6 介護サービス利用者割合と給付支払 済額(人口 5 万人以上 10 万人未満) 済額(人口 1 万人以上 5 万人未満)

居宅介護

施設介護 地域密着型 支払済額平均:125.26 千円

利用者割合(%)

居宅介護 利用者割合(%)

要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額(千円)

施設介護 地域密着型 支払済額平均:118.81 千円

居宅介護

施設介護 地域密着型 支払済額平均:121.64 千円

要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額(千円)

居宅介護

施設介護 地域密着型 支払済額平均:130.18 千円

利用者割合(%)

要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額(千円)

利用者割合(%)

要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額(千円)

(8)

8 図 3-7 介護サービス利用者割合と給付支払

済額(人口 1 万人未満)

[出典]図 3-3~3-7: 厚生労働省「介護保険事業状況報告」 総務省「住民基本台帳人口・世帯数」より筆者作成

要支援・要介護認定者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額に影響を及ぼす要因を分析する。

介護サービス利用に影響すると考えられる要因として要支援・要介護認定者数、人口密度、

65 歳以上の高齢単身者世帯数、高齢夫婦世帯(夫 65 歳以上妻 60 歳以上の夫婦 1 組のみの 一般世帯)、3 世代世帯数、第 1 次産業就業者数、第 2 次産業就業者数、第 3 次産業就業者 数を上げ分析を行う。地域差分析を行った 1,541 市町村のうち、データを取得できた全国 1,529 の市町村を対象に、給付支払済額の大小という質的変数を目的変数とし、他の要因と なる量的変数を説明変数として分析を行う。分析には目的変数が質的変数 2 値の重回帰分 析となるロジスティック回帰分析を用いる。

1,529 市町村の要支援・要介護認定者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額の平均値を取り、平 均値以上の支払いとなっている市町村を「支払額負担大」、平均値未満の支払いとなってい る市町村を「支払額負担小」の質的変数 2 値モデルとして、要支援・要介護認定者数 X1、一 人当たり医療費 X2、人口密度 X3、高齢単身者世帯数 X4、高齢夫婦世帯数 X5、3 世代世帯数 X6、第 1 次産業就業者数 X7、第 2 次産業就業者数 X8、第 3 次産業就業者数 X9とすると予測 モデル式は式 3-1 の通りとなる。

支払額負担大小

= 1

1 + 𝑒

−(𝛼1𝑋1+𝛼2𝑋2+𝛼3𝑋3+𝛼4𝑋4+𝛼5𝑋5+𝛼6𝑋6+𝛼7𝑋7+𝛼8𝑋8+𝛼9𝑋9+𝛼0)

(3-1)

α1、・・・、α9:回帰係数、α0:定数項

居宅介護

施設介護

地域密着型

要支援・要介護者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額(千円)

支払額平均:131.66 千円 利用者割合(%)

(9)

9

表 3-1 1,529 市町村のロジスティック回帰分析結果

(注) 判定[**][*]は、それぞれ 0≦p 値≦0.01、0.01<p 値≦0.05

分析結果は表 3-1 の通りとなる。要支援・要介護認定者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額 に有意となった要因は、一人当たり医療費、人口密度、高齢単身者世帯数、高齢夫婦世帯数、

第 3 次産業就業者数となった。一人当たり医療費、人口密度、高齢夫婦世帯数は回帰係数が プラスのため、増加すると支払済額が小さくなる確率が高くなり、高齢単身者世帯数、第 3 次産業就業者数は回帰係数がマイナスのため、増加すると支払済額が大きくなる確率が高 くなる。分析結果より、医療機関の利用は介護サービスの代替となっており、人口密度が高 い地域は効率よく介護サービスが提供され、高齢夫婦世帯は要支援・要介護認定者となった 場合でも最低限の介護サービスを利用して居宅に留まっていると考えられる。高齢単身者 世帯は要支援・要介護認定者となった場合に介護サービスを利用せざるを得なく、第 3 次産 業就業者数が多い地域は、家族の就労継続や介護者の休息(レスパイトケア)のために介護 サービスを利用すると考えられる。分析結果より予測モデル式は式 3-2 の通りとなる。

支払額負担大小= 1

1 + 𝑒−(0.000004×𝑋2+0.000353×X3−0.000036×X4+0.000532×𝑋5−0.000066×𝑋9−1.740575)

(3-2)

X2:一人当たり医療費、X3:人口密度、X4:高齢単身者世帯数、

X5:高齢夫婦世帯数、X9:第 3 次産業就業者数

市町村の規模による違いを見るために、分析を行った 1,529 市町村を「市の人口条件」で ある 5 万人以上の 532 市町村と、5 万人未満の 997 市町村に分けてロジスティック回帰分析 を行う。人口 5 万人以上の市町村の分析結果は表 3-2 の通りとなり、人口 5 万人未満の市 町村の分析結果は表 3-3 の通りとなる。

[回帰式]

変数名 回帰係数 標準誤差 Wald-square p値 判定 標準回帰係数

要支援・要介護認定者数 0.000139 0.000082 2.858318 0.090903 [ ] 1.000139 一人当たり医療費 0.000004 0.000001 9.948989 0.001609 [**] 1.000004 人口密度 0.000353 0.000057 38.675913 0.000000 [**] 1.000353 高齢単身者世帯数 -0.000036 0.000017 4.585102 0.032251 [* ] 0.999964 高齢夫婦世帯数 0.000532 0.000095 31.231870 0.000000 [**] 1.000532 3世代世帯数 -0.000117 0.000084 1.944384 0.163193 [ ] 0.999883 第1次産業就業者数 -0.000013 0.000059 0.047878 0.826797 [ ] 0.999987 第2次産業就業者数 -0.000021 0.000020 1.039300 0.307984 [ ] 0.999979 第3次産業就業者数 -0.000066 0.000010 40.226760 0.000000 [**] 0.999934 定数 -1.740575 0.445540 15.262028 0.000094 [**]

判別クロス表 n表

実測値 判別的中率

支払額負担小 支払額負担大 全体 68.5%

分類 0.50以上 517 176 693

0.50未満 305 531 836

全体 822 707 1529

(10)

10

表 3-2 人口 5 万人以上市町村のロジスティック回帰分析結果

(注) 判定[**][*]は、それぞれ 0≦p 値≦0.01、0.01<p 値≦0.05

表 3-3 人口 5 万人未満市町村のロジスティック回帰分析結果

(注) 判定[**][*]は、それぞれ 0≦p 値≦0.01、0.01<p 値≦0.05

給付支払済額に有意となった要因は人口 5 万人以上の市町村で、一人当たり医療費、人口 密度、高齢夫婦世帯、第 3 次産業就業者数となった。人口 5 万人未満の市町村では、要支 援・要介護認定者数、人口密度、高齢単身者世帯数、高齢夫婦世帯数、3 世代世帯数となっ た。

[回帰式]

変数名 回帰係数 標準誤差 Wald-square p値 判定 標準回帰係数

要支援・要介護認定者数 0.000024 0.000090 0.071498 0.789168 [ ] 1.000024 一人当たり医療費 0.000009 0.000004 6.677681 0.009763 [**] 1.000009 人口密度 0.000197 0.000058 11.554977 0.000676 [**] 1.000197 高齢単身者世帯数 -0.000008 0.000018 0.190419 0.662568 [ ] 0.999992 高齢夫婦世帯数 0.000317 0.000097 10.706891 0.001067 [**] 1.000317 3世代世帯数数 -0.000147 0.000088 2.775531 0.095715 [ ] 0.999853 第1次産業就業者数 -0.000077 0.000073 1.109661 0.292156 [ ] 0.999923 第2次産業就業者数 -0.000011 0.000020 0.307262 0.579365 [ ] 0.999989 第3次産業就業者数 -0.000032 0.000010 10.515631 0.001184 [**] 0.999968 定数 -2.415452 1.206886 4.005573 0.045350 [* ]

判別クロス表 n表

実測値 判別的中率

支払額負担小 支払額負担大 全体 74.2%

分類 0.50以上 344 103 447

0.50未満 34 51 85

全体 378 154 532

[回帰式]

変数名 回帰係数 標準誤差 Wald-square p値 判定 標準回帰係数

要支援・要介護認定者数 0.000933 0.000239 15.224800 0.000095 [**] 1.000933 一人当たり医療費 0.000002 0.000002 1.116718 0.290626 [ ] 1.000002 人口密度 0.000359 0.000154 5.452895 0.019536 [* ] 1.000359 高齢単身者世帯数 -0.000972 0.000366 7.070272 0.007837 [**] 0.999028 高齢夫婦世帯数 0.001452 0.000451 10.352139 0.001293 [**] 1.001453 3世代世帯数 -0.000744 0.000364 4.168506 0.041182 [* ] 0.999257 第1次産業就業者数 -0.000181 0.000126 2.061789 0.151033 [ ] 0.999819 第2次産業就業者数 -0.000163 0.000094 3.021441 0.082170 [ ] 0.999837 第3次産業就業者数 -0.000035 0.000060 0.343171 0.558005 [ ] 0.999965 定数 -1.162109 0.535153 4.715617 0.029890 [* ]

判別クロス表 n表

実測値 判別的中率

支払額負担小 支払額負担大 全体 63.2%

分類 0.50以上 176 99 275

0.50未満 268 454 722

全体 444 553 997

(11)

11

厚生労働省は 2025 年を目途に、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供さ れる地域包括ケアシステムの構築を目指している 。地域包括ケアシステムは、おおむね 30 分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位として想定しており、保険者で ある市町村や都道府県が地域の特性に応じて作り上げていくこととなる。ロジスティック 回帰分析の結果より、人口 5 万人以上の市町村では、医療機関の利用が介護サービスの代替 となっているが、5 万人未満の市町村では医療費は有意とならなかったことから、人口が少 ない地域ではシステム構築が大きな課題となる。

これらの結果より、公的介護保険制度は自治体をひとつの地域として同じ運用を行うの ではなく、自治体の中でも各地域の状況に合わせて運用方法を変えるべきである。第 3 次産 業の就業者が多く人口密度が高い地域では、地域包括ケアシステムに沿って、居宅を中心に 各介護サービスや医療機関との連携により医療サービスを提供するシステムの構築を目指 す。人口密度が低く居宅が点在している地域では、転居を伴うコンパクトシティ化を急いで 推し進めるのではなく、高齢者の在宅を支援し、居宅介護サービスをはじめとした在宅支援 の各種サービスを効率よく提供することにより給付支払額を抑制する。将来的に高齢者の 在宅が難しい状況となった時には、自治体が中心となって空き家等を有効利用して、小規模 多機能型居宅介護やサービス付き高齢者向け住宅の設立を推進し居住誘導すればコンパク トシティ化が可能となり、地域包括ケアシステムを構築することが出来る。

4. まとめ

将来の人口推計を基に要支援・要介護認定者数の推移を予想し、将来的に公的介護保険 制度の財政収支が成り立つのか検証を行った。公的介護保険制度では 3 年毎の改定により 介護保険料が見直されることになっているが、介護保険料を見直さず 2015 年度の介護保険 料負担額のまま推移すると、2024 年に財源が限度額を超える。現在の介護保険制度に則り 3 年毎に介護保険料を見直した場合でも 2029 年に財源が限度額を超える。この結果より、

公的介護保険制度を持続させる為には介護保険料や制度利用に伴う自己負担金を現状の水 準より大きく増加させるか、介護サービスを利用した場合の給付支払額を抑制しなくては ならない。

要支援・要介護認定者 1 人当たり 1 ヵ月給付支払済額を目的変数として、他の要因を説 明変数としてロジスティック回帰分析を行った。有意となった要因として一人当たり医療 費、人口密度、高齢夫婦世帯数は増加すると支払済額が小さくなる確率が高くなり、高齢単 身者世帯数、第 3 次産業就業者数は増加すると支払済額が大きくなる確率が高くなる結果 となった。人口 5 万人以上と 5 万人未満の市町村をそれぞれロジスティック回帰分析した 結果、有意となる要因に違いが出た。公的介護保険制度は自治体の中でも各地域の状況に合 わせて運用方法を変えることにより給付支払額を抑制できる。残された問題として、各市町 村における 65 歳以上の医療費のデータが入手出来なかったため、医療費のデータは各市町 村の人口全体のデータとなっている。今後、65 歳以上の医療費のデータを入手し分析を行 いたい。

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12 参考文献

漆博雄『医療経済学』東京大学出版会 1998 年

大内講一『やさしい医療経済学』第 2 版 勁草書房 2008 年

岡本茂雄『導入から開発、ソリューションまでICTが創造する業務イノベーション』 日本医療企画 2014 年

小塩隆士『社会保障の経済学』第 4 版 日本評論社 2013 年

加藤久和(編)『超高齢社会の介護制度 持続可能な制度構築と地域づくり』中央経済社 2016 年 角谷快彦『介護市場の経済学』名古屋大学出版会 2016 年

金森久雄・伊部英男(編)『高齢化社会の経済学』東京大学出版会 1996 年 河口洋行『医療の経済学』第 2 版 日本評論社 2012 年

菅民郎『例題と Excel で学ぶ多変量解析』オーム社 2017 年

木下武徳・吉田健三・加藤美穂子(編)『日本の社会保障システム』東京大学出版会 2017 年 厚生労働統計協会『保険と年金の動向 Vol62 No.14』2015/2016 年

厚生労働省「介護保険事業状況報告」2006 年~2015 年

厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成 27 年度」2015 年 厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築に向けて」2013 年

国税庁「民間給与実態統計調査結果」2016 年

国土交通省「「都市再生特別措置法」に基づく立地適正化計画概要パンフレット」2014 年

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口:出生中位~人口置換水準到達(死亡中位)推計」

2012 年

国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付費とその財源」2015 年 財務省「日本の財政関係資料」2018 年

清水谷諭・野口晴子『介護・保育サービス市場の経済分析』東洋経済新報社 2004 年 下野恵子・大日康史・大津廣子『介護サービスの経済分析』東洋経済新報社 2003 年 総務省「住民基本台帳人口・世帯数」2015 年

近見正彦・堀田一吉・江澤雅彦(編)『保険学』有斐閣 2014 年 土居丈朗『入門公共経済学』日本評論社 2009 年

中村二朗・菅原慎矢『日本の介護』有斐閣 2017 年

西村周三『保険と年金の経済学』名古屋大学出版会 2000 年

西村周三(監)『社会保障費用統計の理論と分析』慶應義塾大学出版会 2014 年 堀田一吉『現代リスクと保険理論』東洋経済新聞社 2014 年

真野俊樹『入門 医療経済学』中央公論新社 2006 年 村上雅子『社会保障の経済学』東洋経済新報社 1992 年 兪炳匡『「改革」のための医療経済学』メディカ出版 2006 年

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