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共役脂肪酸の多様な機能性とその利用 - J-Stage

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72 化学と生物 Vol. 54, No. 2, 2016

共役脂肪酸の多様な機能性とその利用

臨床利用への足掛かり

脂肪酸は生体内においてエネルギー源として用いら れ,生体を構成する多様な脂質の部分構造でもある.一 方,魚油に含まれるエイコサペンタエン酸,ドコサヘキ サエン酸の血中脂質の改善作用を例とした,機能性の面 でも脂肪酸は注目されている.

機能性脂肪酸の一つとして注目を集めているのが共役 脂肪酸である.共役脂肪酸とは,その炭素鎖構造中に共 役構造を有するもので,同一の組成式でもいくつかの構 造異性体が存在する.特に1980年代に抗変異原活性や 発がん抑制作用が報告された共役リノール酸(Conjugat- ed Linoleic Acid;CLA)は多くの機能性について報告 がなされている.CLAとして反芻動物の肉や乳に含ま れる 9, 11-CLA,リノール酸をアルカリ条件下で熱処理 す る と 9, 11-CLAと お よ そ1 : 1の 割 合 で 得 ら れ る 10, 12-CLAが主に知られている.多くの場合 9, 11- CLAより 10, 12-CLAのほうが生理活性が強く,CLA は異性体によって機能性が異なることも多い.たとえ ば,9, 11-CLAはインスリン抵抗性の改善作用,アテ ローム性動脈硬化症や炎症性腸疾患(IBD)の予防作用 が報告されている.一方,10, 12-CLAは体脂肪量を減 少させる抗肥満作用や抗がん作用が報告されている.

本稿ではCLAの抗がん作用に特に注目したい.CLA は低濃度で増殖抑制を示し,乳がん,皮膚がん,結腸が ん,肺がん,肝がんなどのさまざまながん細胞において で抗腫瘍作用を示す.この抗腫瘍作用はマウス やラットといった動物試験でも確認されている.抗腫瘍 作用は細胞周期調節による細胞増殖抑制とミトコンドリ

アを介したアポトーシスなどの細胞死誘導機構により発 揮される.たとえば,ヒト結腸がん細胞株HT-29で 10, 12-CLAは濃度依存的にG1期停滞を引き起こし(1), さらにp53変異TM4tマウス乳がん細胞株でアポトーシ ス抑制タンパク質Bcl-2の発現阻害を引き起こし,アポ トーシスを誘導する(2).またCLAのアポトーシス誘導 機構には小胞体ストレスがかかわることが示唆されてお り,小胞体ストレスマーカーの発現や小胞体ストレス応 答により誘導されるアポトーシス促進タンパク質である CHOPの発現増加が報告されている(3).また 10, 12-CLA は,血管新生阻害や細胞間接着分子ICAM-1,浸潤にか かわるMMP-2の発現減少を引き起こすことによりがん 転移抑制にも働くと考えられる(4, 5).さらに,共役リノ レン酸であるエレオステアリン酸(18 : 3 ;  9, 11, 13-リ ノレン酸)はG2/M期停滞やカスパーゼ依存的なアポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す(6).ま た ジ ャ カ ル 酸(18 : 3 ;  

8, 10, 12-リノレン酸)はCLAよりさらに低用量で抗腫 瘍活性を示すことが報告されていることから(7),共役リ ノレン酸の抗がん作用も期待されている.

しかしながら,10, 12-CLAは 9, 11-CLAに比べて吸 収 後 に 体 内 で の 代 謝 を 受 け や す く,10, 12-CLAと 9, 11-CLAが同量含まれるCLA食を与えたマウス(8)や CLAサプリメントを数週間摂取したヒト試験(9, 10)にお いて,試験中および試験終了時の血中では 10, 12-CLA は 9, 11-CLAのおよそ半分以下の量しか存在しないこ とが明らかになっている.そのため,CLAの多様な機 能の有効性をより強固にするためには,10, 12-CLAの

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代謝速度を考慮した戦略が必要と考えられる.ここで は,「エマルション化技術」にフォーカスし,この技術 を利用した共役脂肪酸の安定性や吸収効率の改善による バイオアベイラビリティーの向上,そして薬剤との併用 による作用増強を取り上げる.

一般的に水中に油滴粒子が安定して分散することで O/Wエマルションとなるが,粒子径が小さいマイクロ,

ナノエマルションになるとさらに安定性が増加する.ま た,ナノエマルションにすることで表面積が増加するた

め標的細胞との相互作用が起こりやすくなり,細胞への 取り込み効率も向上する.共役脂肪酸はその構造のため に酸化を受けやすいという特徴があるが,エマルション 化させることで脂肪酸の安定性を向上させ,標的とする 組織や細胞にそのままの形で取り込ませることでバイオ アベイラビリティーが改善したことがエレオステアリン 酸で報告されている(11).腸管組織での吸収もまた同様 であり,ナノエマルションを含む微粒子では比較的速や かに吸収されることがわかっている.この特徴を利用 図1共役脂肪酸の構造,生理機能とナノエマルション化技術を利用した機能増強

CLA,エレオステアリン酸やジャカル酸といった共役脂肪酸はさまざまな生理機能をもっており,いくつかの作用においては極めて強い 効果を発揮する.これらの脂肪酸をナノエマルション化技術により粒子化させることで,腸管吸収効率の上昇や脂溶性薬剤との併用によ り,さらに効率良く生理機能を発揮させることが期待できる.

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し,CLAの体脂肪減少作用や血中トリグリセリド濃度 の減少作用はCLAをナノエマルションにすることで効 果的に発現することも観察されている(12).また,当研 究室においてもCLAナノエマルションを作製しており,

炎症性疾患を標的としたCLAによる抗炎症性の向上に 関する評価を進めている(図1

抗がん作用において,CLAはタキサン系の抗がん剤 の効果を増強することがわかっており,CLAとタキサ ン系抗がん剤であるパクリタキセル(PTX)を結合さ せたCLA-PTXはグリオーマ細胞の増殖を強く抑制す る.さらにCLA側鎖によって血液脳関門を通過するこ とができるため,PTX単独よりも生体内での作用効率 が高い.このように,抗がん剤にCLAを結合させるだ けでも相加あるいは相乗的な抗がん作用が期待される が,CLA-PTXは低水溶性という問題がある.この問題 もまたエマルション化によって解決されており,大豆油 を使用したCLA-PTX含有エマルションはCLA-PTXの 溶解性をクリアしつつ,CLA-PTXと同じように腫瘍増 殖を抑制することが報告されている(13)

共役脂肪酸はある種の作用では強い効果を発揮するた め,副作用などの安全性に関する情報が必要ではある が,そのさまざまな生理活性は非常に有望なものであ る.これらの作用を効率的に発揮させるような技術開発 は,共役脂肪酸の利用価値を大きく前進させることが期 待される.

  1)  H. J. Cho, E. J. Kim, S. S. Lim, M. K. Kim, M. K. Sung, J. 

S. Kim & J. H. Park:  , 136, 893 (2006).

  2)  L. Ou, C. Ip, B. Lisafeld & M. M. Ip: 

356, 1044 (2007).

  3)  A.  S.  Pierre,  M.  Minville-Walz,  C.  Fèvre,  A.  Hichami,  J. 

Gresti, L. Pichon, S. Bellenger, J. Bellenger, F. Ghiringhelli, 

M. Narce  :  , 1831, 759 (2013).

  4)  C.  Bocca,  F.  Bozzo,  S.  Cannito,  S.  Colombatto  &  A. 

Miglietta:  , 183, 187 (2010).

  5)  L.  S.  Wang,  Y.  W.  Huang,  Y.  Sugimoto,  S.  Liu,  H.  L. 

Chang,  W.  Ye,  S.  Shu  &  Y.  C.  Lin:  ,  25(6B), 4061 (2005).

  6)  M. E. Grossmann, N. K. Mizuno, M. L. Dammen, T. Schus- ter, A. Ray & M. P. Cleary:   (Phila.), 2,  879 (2009).

  7)  M. Yamasaki, C. Motonaga, M. Yokoyama, A. Ikezaki, T. 

Kakihara,  R.  Hayasegawa,  K.  Yamasaki,  M.  Sakono,  Y. 

Sakakibara, M. Suiko  :  , 62, 925 (2013).

  8)  A.  Białek,  A.  Tokarz,  A.  Dudek,  W.  Kazimierska  &  W. 

Bielecki:  , 9, 126 (2010).

  9)  K. Sato, N. Shinohara, T. Honma, J. Ito, T. Arai, N. Nosa- ka, T. Aoyama, T. Tsuduki & I. Ikeda: 

 (Tokyo), 57, 364 (2011).

10)  S.  N.  Zlatanos,  K.  Laskaridis  &  A.  Sagredos: 

7, 34 (2008).

11)  D. Paul, S. Mukherjee, R. Chakraborty, S. K. Mallick & P. 

Dhar:  , 126, 426 (2015).

12)  D.  Kim,  J.  H.  Park,  D.  J.  Kweon  &  G.  D.  Han: 

8, 451 (2013).

13)  D.  Li,  K.  Yang,  J.  Si  Li,  X.  Yu  Ke,  Y.  Duan,  R.  Du,  P. 

Song, K. Fu Yu, W. Ren, D. Huang  :  , 7, 6105 (2012).

(木下和昭,野見山将太,山崎正夫,宮崎大学大学院農 学工学総合研究科)

プロフィール

木下 和昭(Kazuaki KISHITA)

<略歴>2011年宮崎大学農学部応用生物 科学科卒業/2013年同大学大学院農学研 究科修士課程修了/同年同大学大学院農学 工学総合研究科博士課程在学中<研究テー マと抱負>脂質ナノエマルションの創製と その生体調節機能に関する研究<趣味>

CD集め,音楽鑑賞,ルームフレグラン ス,ソロギター

野見山 将太(Shota NOMIYAMA)

<略歴>2011年宮崎大学農学部応用生物 科学科卒業/2013年同大学大学院農学研 究科修士課程修了/同年同大学大学院農学 工学総合研究科博士課程在学中<研究テー マと抱負>脂質の細胞生存調節に関する研 究<趣味>料理,ギター,お酒を飲みに行 くこと

山崎 正夫(Masao YAMASAKI)

<略歴>2000年日本学術振興会特別研究 員/2001年九州大学大学院生物資源環境 科学研究科博士課程修了/2002年オーム 乳業株式会社/2004年宮崎大学農学部応 用生物科学科助手/2007年同助教/2009 年日本学術振興会海外特別研究員/2011 年より宮崎大学農学部応用生物学科准教 授,現在に至る<研究テーマと抱負>脂質 の生体調節機能について独自の視点で研究 を考え,脂質のもつ底力を幅広い点で応用 できればと思っている<趣味>ジョギン グ,釣り,ネコの観察

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.72

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