The Japanese Association of Management Accounting
NII-Electronic Library Service
The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
日本 管 理 会 計 学 会 誌
管 理 会 計 学2000 年 第9巻 第1号
論 文
売 上 高 差 異 を 数 理 的 に 二 分 す る 方 法
力 石 雅 樹
*〈 論 文 要 旨〉
売 上 高は経営 活 動 を 測 定 する た めの主 要 な指標で も ある,その 目標と成 果 とい っ た
2
つ の売 上 高 間に発 生 した差 異 (売 上 高 差 異)を 分 析 するの に, 売上高を
2
つ の要因の 積で定 義 した差 異 分 析が広 く行わ れて い る。その 技法と し て は一般に,伝統 的な方法
で ある 三分 法 また は二 分 法 が 利 用 さ れてい る.しか し,そ れ らの 分 析に は疑 問が あ り,
これ まで 先 達に よっ て適 正 に分析す る方法の 開 発 が試み られ て き たが,未解 決で ある と言えよう.
本論文で は, こ の よ うな問題 意 識 に基づ き, 最初に,売上高の 管理形態を要素と要 因に基づ い て分 類 し,売 上 高 差 異 分 析の 意 義 を 明 らかに した.次に,従来の 主 要 な 方 法
4
つ を再検 討 し て,い ずれ の方法 も欠 点を内包し て い る た め ,売上高の差異分析に 適用で きない こと を明らか に し た.そ の次に,売上高差異を,ベ ク ト ル解析 を利用 して,数理 的 方法に よ り各要因に適正 に配 分 する方法 (公式 )を開 発 し提案 した.最後
に,こ の提 案 し た方 法が有 用であるこ と を数 値 例に よ り確 認 した.
提案 し た方 法 を用い る と, 売上高 差異を数理的に適正 に分 析で きる の で , 売上高 と
その要因を一層 明確に管理する こ と が で きる.
〈 キーワー ド 〉
売上高 差 異, 売上高 差 異 分 析, 2要 因, 乗算型, 三分 法, 二 分法, 混合 差 異, 数理 的方法
2000年 6月 9日 受 付
2000年 9月30 日受 理
*東京理科大学 経営 学部 助 手
133
N工 工一Eleotronlo Llbrary
管理 会計 学 第9巻 第1号
1
. は じ め に経営 環 境の 変化や企 業 間競 争の激 化等に伴い , 売上高に影響を及ぼす要因 を直接的 に管理 す る必 要性が ますます 増大してい る た め, 計画, 標準, 前年実績 など との 差 異 分析や戦 略策定の
た めの 差 異分析な どの 重要 性が高 まっ て い る.埼玉県久喜 市 内の 中 小事業 所を対 象に して予備 的実 態 調査 を行 っ た とこ ろ, 販 売 ・営 業 管理 を行っ て い る
8
事業所の うち3
事業所が売上高 差 異分 析 (販売差 異分析, sales variance analysis >を実施して い た.差異 分 析 とは, 広 くは
2
つ の 活 動 量 問における差 異 に対 する様々 な分 析の 総称で ある.そ れ らの うち最 狭 義の 差 異 分析 似 下, 単に差 異分 析 とい う.)と は,2
要 因乗算型モ デ ル に対す る 分析を意 味 し, もともとは製造原価 計算の領 域で発 展 し て き た技 法で あ り,その伝 統 的な方 法 に は三 分法 (3
−variate analysis ),二分法 (2
−variate analysis )などが ある. しか し, こ れ らの方 法はい ず れ も, 第
3
節 で詳述 す る よ うに欠点を内 包 し てい る.し か も近年に おい て は, 差 異 分 析が営 業 費 , 物 流 費, 売上高な どの 管理 に も適 用 さ れ る ように なっ て きて い る (例 えば,Kotler
(2000
)p .697
,溝口(1987
)pp .167
−168 , 西 澤(1993
)pp
.130 −132
,西澤(1996
)pp .438
−455
)た め, 従 来の方法に 内在して い る欠点が障害に な るの では と懸念さ れる.
そこで ,本研 究の 目的は,売上高は客 単 価 と客 数とい う
2
要 因の積で定 義 する こ と が で きる とい う前提の下で ,2
つ の 売上高 (例え ば, 計 画と実績 )の 間に発生する売上高 差 異を, 数理 的方法に よ り客 単 価差異 と客 数差 異 とに適正に配分す る方法を開発 する こ と とする.し た がっ て本論 文で は, 第2
節で売上高の 管理形態 と売上高差異 分析の 意義を明ら かに し, 第 3 節で従 来の方 法につ い て議 論 し た うえで , 第5
節で売上高差異を各要 因に数理的に適正に配分 する方 法を導 出し提 案 する.ま た, 第6
節で数 値例 によ りその有 用性につ い て考 察する.2
.売
上高
の管 理 形 態
と差 異分 析
の意 義 2
.1
売 上 高の管 理 形 態企業はつ ねに, 売上高の動 向に留意 し, その 変調の検知や影 響の測 定, 原 因の 究 明と対策に
腐心 して い る.そ して, そ れ らに対 応 する た め に, 売上高 を商 品や売場別に あるい は販売価格
や客数 別に分 析 して き め細か く管理 して お り,その具 体 的方 法は, 業 種や企 業 , 商品の違い な どに より実に多様で ある.
しか し, 売上高の 管理形 態は , その 構 造の捉 え方に よ り, すな わ ち売 上 高を規 定 して い る要 素 と要 因の 数を 基準に して , 表 1に 示 す よ うに, 単純型 (単一型 ), 加算型 (加 法型〉, 乗算型
(乗 法 型), 混在 型 (複合 型 )の 4 つ に大別 する こ とがで きる.こ こで , 要素 と は, 販売 ・営業 上の 一群 を指す.具体的 には販売 主体 (事業所, 売場 ・職 能, 販 売 員な ど)や販売相手 (学生,
主 婦, 企業など),販売品 目 (製 品, 商晶, サービス),販 売 経 路 (代理店 ,販売エ リア な ど),
販売時機 (時 間帯, 曜 日, 季節な ど), 販売方 法 (陳 列 方 法, セ ール ,ク レジ ッ ト販 売な ど) な どの 小項 目で ある.他方 , 要因と は,売上高に直接 影響を 及ぼす 主要な原 因の こ とで あるが,
本 研究で は特に, 乗 算型モ デル にお け る要因変 数を指 すこ と とする. 例 えば, 販 売 価格, 販売 数量,客単 価, 客 数, 単位 面 積 当た り販 売 額, 売 場面 積, 市場規 模, 市場占有率などで ある.
The Japanese Association of Management Accounting
NII-Electronic Library Service
The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
売上高 差 異 を数理 的に 二分 する方法
表
1
売上高の管理形 態 要 因単 数 複 数
要 素 単 数 単純 型 (単一型) 乗算型 (乗法型) 複 数 加 算 型 (加 法型 ) 混在 型 (複合 型 )
上表を説 明 する. 売上高 管理の 単 純型 と は, 売上高 を要 素 や 要 因に細 分 す る こ とな く,
一括 して管理 す る形態で あ る.主 に,極めて小規 模な個人 企業で行わ れてい る.
2
番目の加算型とは,売上高を売場 や 商 品, 曜日 とい っ た 要素別 に 細 分 して管理 す る形態で あ る.
3
番 目の 乗算 型(2)と は, 売上高は複数の 要 因の積で ある と考え, 売上高の変動量 を各要因の貢献 度 に応 じて配分す るこ と によ り得 ら れ る各要 因の影響量 を基に して, それぞ れの要 因を管 理 する形 態で ある ,本 研 究 が 対象 と して い る形 態 はこの 乗 算 型で あ る.
4
番 目の 混在型 と は, 加算型 と乗算 型 と が混在 してい る形 態で あ り, 最 も多くの企業で採用 さ れて い る タ イ プで ある.こ れ らの うち, 乗算 型と混 在 型に は , い わゆ る混合 差異の 配 分問題 すなわ ち売上高 差 異の 中に複 数の 要因の影響を受けて発生 し た 差 異 (混合差 異, 結合 差異,
joint
variance )があるため売上高差 異 を各要 因に直接配分 するこ と がで き ない ,とい う問 題 が あ る.そ して , この問題
の存在が,こ れ まで にい ろい ろな方 法を 生み 出し,結 果 的に混乱を与 えて い るの で あ る.
2
.2 売
上高差異
分析
の意 義
売上高差 異分 析 と は, 売上高に関する 2 つ の 活動量 (例え ば, 予 定 売上高 と実 際売上高 ,標 準 売上 高と実 際 売上高 , 前 年度同月売上 高 と当 年 度 当 月売上 高 )の 間に お ける売上高差 異 (
2
つ の売上高 間の差 額)を各 要 因に帰属 させ る分析である .
し た が っ て , 売上高差 異分 析の 意義は, 目標と成果 とい うよ うな2つ の 売上高の 間に生 じる
(生 じ た) 売上高 差 異を その 要 因ご とに把 握 して各 要 因の 影 響 量を明ら かにする こ とに よ り,
企 業活 動に意思決 定のた めの ひ とつ の基準 を提 示 する こ とにある.そし て , こ の ような売上高 差 異 分 析 と要素別 に行 うミクロ販 売分析 と を併 用 する こ とに より,販 売上の課 題ま た は販 売機
会 を 要 素 ・要 因 別 に一層明確化 す るこ と がで き る.
3
.従 来
の方法
の再検討
こ の 節で は, 従 来の方 法の うち主要な
4
つ の方 法, すな わち三分 法, 二分 法,Vance
の方 法 および混合 差異 等分法を取 り上げ, 下記の3
点を評価 項目 に して議論し, 問 題点を 明確 にする. 形 式的適 合 性 (総差 異を全 定義 域に おい て各 要 因に配分 する とい う差 異分析の本 来の 目的 に形式的 に呼応 してい る か)
数 学的 論理性 (数 学 的論理 が存在し,そ れ が貫か れてい る か)
経 営 的 有用 性 (経 営管理 上有用 か,あ るいは 大 きな不都 合が 生 じ ない か〉
次に, 本 節で用 い る用語 と記号につ い て説 明して お く, 売上高は客 単 価 と客数の積で定 義で きる と し,
2
つ の 活動量 は 予定 売上高 (計 画)と実 際 売上高 (実 績 )とする .そ して, 予 定 客 単価をfls
で ,実際客単価をfta
で 表し, 予定 客 数をf2s
で , 実 際客 数をf2a
で 表す .し た がっ て ,135
N工 工一Eleotronlo Llbrary
管理会 計 学 第9巻 第1号
こ の記法を用い る と, 予 定 売上高 =
fts
×f2s
, 実際 売上高=fla
×f2a
と表記 す る こ と がで きる.3
.1
三分法
三分 法を客 単価 と客 数の積で定 義さ れる売上高の差 異分 析に適用す る場合は, 売上高差 異 を
(
1
)式 〜(3
)式の如 く3
つ の 差 異に分 割 し て捉 える.客単価差 異 = (
fla
−fis
)f2s
(1
)客数差 異 =fls他 a− f2s) (
2
)混合 差
se
一(fla
−fls
)(f2a
−f2s
) (3
)fia
客
単
fia
価0
f2s
客 数
f2a
図
1
三 分法三 分 法は , 混 合差 異を
2
つ の要 因の い ずれ に も帰 属さ せずに別扱い に し, 売上高 差 異を3
分 割 して い る た め, 売上 高差 異 を2つ の要 因に配分 する とい う差 異分 析の本 来の 目的に応 えて いない .換 言 すれ ば, 客単 価 差 異 と客 数差 異を求めるのが 目的で あるの に, そ れ ら 以外に混 合差 異 も求め て い る の で, 形式 的適 合 性に欠けて い る と言える. し か し, 売上高差 異 を
3
分割 する 際の 論理 が 明確で あ り, 求め ら れた3
つ の 差 異の発 生 理 由が異 なっ て い る の で, こ の 三分 法にはそ れ な りの使い 方 が あ る と思わ れ る.
こ こ で, 議論を分か りやす くする た め に, 下表に示 す 簡単な例 題 を用い て 考え よう.
表 2 三 分法に よ る差 異分 析の例 予定
客単価
予定 客数
予定 売上高
実 際 客単 価
実 際 客 数
実 際 売 上 高
売上高 差 異
客 単 価 差 異
客 数 差 異
混 合 差 異 例 11
例
12
例 13
102010 101510 100300100153516 12305 1801 ρ50
80
80750
−
20
5022560 20300
−
50
10225
−
30
例
11
で は, 売上高差異80
(100
%)に対 し混 合差 異は10
(12
.5
%) と少 数で あ り, しかも要 因 別の2
つ の差 異の うち小 さい 方の差異で ある客 数差 異20
(25%)の 半 分で ある ので , 混 合 差 異 を別扱い して も あ るい は無視 して も実 害は ほ とん ど ない で あろ う. し か し, 例12
で は どうで あろ うか.売上高差 異750
(100
%)に対 し 混合 差 異は225
(30%) と大 き く, 客 単価 差 異と同額で ある ので ,別 扱 い するに は 無 理 が ある の は 明ら か で ある.例
13
は , 客単 価が 10 か ら 16へ と60
% 増 加 し, 客数が10
か ら5
に50
% 減少し た例で あ る が, 分析結果は客単価差異が60
, 客数 差異が 一50
であ り, 各要 因の 変動率に正 比例して い る た め,一見すると適正に配分さ れてい る
よ う で あ る,し か し, 混 合 差 異 は 一
30
で あ り, 売上高 差異 一20 の1
.5
倍 に相当 す るので , 混 合The Japanese Association of Management Accounting
NII-Electronic Library Service
The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
売上高差異を数理 的 に 二分す る方 法
差異を 別扱いす る理由が 見 いだせ ず, この分析 値は決 して容 認で きない .
以 上 を ま と める と, 三 分法は, 数 学 的論理は 明確で ある もの の ,
2
つ の 要 因に よ る売上高差 異 を3
つ の差 異 に分 解 して い る た め差異分析の本 来の 目 的 に応 えて お らず, また混合 差 異はつねに僅少とは 限 らない の で , 混合差 異に積極的 な意味を持たせ て 別管理する よ うな特殊 な場 合 を除き,経営 管理 上 の有 用 性は極め て低い と言 える .
3
.2
二 分 法二 分法は最 も広 く使わ れてお り, 売上高差 異 は一般 に次の ように2つ の 差 異に 分 け ら れ る. 客単 価差異 =(
fla
−fls
)f2a (4) 客数 差異 =fls
俛a一也s) (
5
)
fla
客 単
fis
価
0
客 単価 差 異 一一一一■闘一一一
↑}一一一一1−一一
:
1
客数 差 異
1
1
麁s
f2a
客 数 図
2
二 分法最 初 に, 製 造 原 価計算に お ける 二分法の論 拠につ い て再検 討 し よ う.二 分 法で は通常 ,混合 差異 を価格差 異に含め る が , その理 由を多 くの 論 者は管理 可能性 と原価 責 任に求めてい る.例 えば, 岡本(1990)
p
.433
は, 「一般 的にい っ て ,価 格差異 は管理不 能な 企業外 部の要 因に よっ て 発 生 す る こ と が多い の にた い して , 数 量差 異は管理 可 能 な企 業 内部の 要 因に よっ て発生 する こ と が多い .し た がっ て原 価管理の見 地 か ら す れ ば, 原価 責任 を 問い うる数 量差 異の ほ うを む しろ厳 密に把 握 す る 必要が あ る.そこ で通 常 は, 混合差 異の部分 を, 価 格 差 異の なか に含め て計 算す るの で あ る.」 と述べ てい る. また, Drury (
1988
)p
.526 も同様の 観 点か ら, 混 合 差異は価格 差 異に含め るべ きだ と主張してい る(5).こ こ で注目すべ きこ とは,「一般 的にい っ て」,「多い 」,
「通 常 は」, ”more ”,”rather ” とい っ た 用 語 が使われて い る ことか ら も分か る と お り, 二分 法は 恒 常 的 に 成 立 す るわ けで は ない とい うこ とで あ る.
し か しその点 を考慮して も, これ らの見 解は以下の理 由に より妥 当性 を欠い てい る と言える。 近 代 的企 業で は, 自動化や標準化が か な り進展 し, 管理の巧 拙に よ る数 量差 異は発生 しに く
くなっ て お り, む しろ購買 先や購買方 法の 見 直 し な どによ る原価 低 減, あるい は為 替 変動 対 策
が 重要 になっ て い る.つ ま り,管理 の可能性は 通常 ,他社 との 契 約 内容や 自社の管理能力な ど によ り定 まる 問 題で あ り, ま た,価 格 差 異が管理不 能な 企業外部の 要 因 によっ て発 生 するこ と が 多い か否かは , 個 別の 企業に依存する こ とであ り,
一概 に 言える こ と で はない . 外 部 要 因
と内部 要 因の重要 性 は つ ねに環境の 変 化や 経 営 目 標の 変更 か ら影 響を受けて変 化 して い る の で , 混合差異を価 格差 異 に含める こ と がで き ない 場合 も多い . 数量 差異のほ うを む し ろ厳 密
に把握 す る た め に混 合差 異 を価 格 差 異に含める と述べ て い る が, これ は錯 誤と言え よう.な ぜ なら ば, 混 合 差異を価格 差 異に含め て しまうと逆に, 数 量差異を厳 密に把握 する (細かな変化
137
N工 工一Eleotronlo Llbrary
管理会計 学 第9巻 第1号
も見 落と さずに 把握す る)こ と が で き な く な る か らで あ る.ま た, 岡本 らの 論 拠が 正当な 場 合で も, 混合 差異を一方の 要因に含め る と実態か ら大 きく乖離 し,不都合が生 じる こ とがある. 次に, 販売 管理 ・マ ーケテ ィ ン グにお け る二分 法につ い て考え る. 売上高の 要因の ほと ん ど が
2
.1項で 例 示 した よう に 企 業外 部に属す た め, 岡本ら が述べ る ような論 拠その もの が存在 し ない こ と が多く, し た が っ て,混合 差 異を企 業 内部の要 因に含め ようが ない 場 合がある.ま た,本研 究の ご とく売上高が客 単価 と客 数の積で 定義され て い る場合は, 金額 要 因とし て の 客 単価 は あ る もの の価 格 要 因が存 在 しない た め, 上述の 論 拠を採 用 する こ とが で き ない .すな わ ち, 差 異分 析を製造 原価 計 算以外に適 用 する場 合, 企 業 内部の 要 因や価 格 要 因が ない こ と もある た め, 二分 法は新た な論 拠を見い だ さ ない 限 りその よ うなモ デル には使 え ない の で ある. し か し
現 実には, 混 合 差異を 不用 意に一方の 要因 に含め て使わ れる こと が多く, 問 題で あろ う.
最 後に, 下表に 示 す 例 題 を 用 い て , 分 析値の妥 当性につ い て考 察しよ う.
表
3
二 分 法に よる差 異 分析の例 予定客単 価
予定 客 数
予定 売上高
実際 客 単価
実 際 客数
実際 売上高
売上高 差異
客 単価 差 異
客 数 差 異 例 21
例
22
例
23
102015 101510 100300150
1535612305
1801
,
050
30
80
750
−
120
60450
− 45
20300
−
75
上 表の例 21 で は , 売上高差 異
80
が客単価 差 異に60
, 客 数差異に20
配 分 さ れて お り, 妥 当 な ように思える, とこ ろ が例 22 で は, 客単価が 20 か ら35 に 75% 増 加 し, 客 数が 15 か ら30に
100
% 増 加 し て い る の に, 客 単価 差 異が450
(60
%), 客 数差 異が300
(40
%〉 と分 析されて お り, 売上高 差 異 を発 生させ た原因で ある各要 因の貢 献度 と,各要 因に帰属 する差 異 と が逆 転状 態に なっ てい る.ま た, 例23
におい て も, 客 単価が15
か ら6
に60
% 減 少 し, 客 数が10
か ら5
に 50% 減 少 して い るの に対 し, 客単 価差異が 一
45
,客 数差 異が一75
と なっ てお り, やは り逆 転 状 態が 生 じ て い る. もしも差異分析が 総 差 異 (売上高 差 異 )を各要因に その 貢献 度に応 じ て 配 分する道具で ある な ら ば, この ような 逆転状 態は発生 して は な ら ない .し か し, 実 際に は逆 転 状態が 生 じて お り, その 原 因 は 混 合 差 異 を一方の 要 因に帰 属さ せ たこ と に あ る.以 上の考 察を まとめ ると以 下の と お りで ある.二分 法は, 売上高差 異 を 客単価 差異と客 数差 異とに二 分 して お り, 各要 因が定義域内で増 加 して も減 少 して も適用で きるの で形式的に は適 合 してい る.し か し, 混 合 差 異 を一方の 要 因に帰 属さ せる論 拠が薄 弱で あ る ため, 論 理性に欠 けてお り, 各 要 因の貢 献度 と売上高 差 異の配 分 結果の 間 に逆 転 状 態が 生 じ るこ ともあ るの で ,
経営管理 上の有 用性はない .
3
.3Vance
の方法
Vance
,L
.L
,が, 直接材 料 費の差 異分析に関 して,実 際価 格か ら標準 価格を引 きそれ に標準 数量 を掛け た値 と, 実 際 数量か ら標 準 数 量 を引きそ れ に標 準価 格を掛け た値の割 合で , 混 合差 異
を配 分 する方 法を提 案 して い る(6) (片 岡(