家電リサイクル法
〜施行を 1 年後にひかえて〜
慶応大学経済学部山口研究会 家電リサイクル班 杉山多恵子・藤岡由佳子・星川太輔・分部真弓 2000年4月1日
序
このレポートでは、本格施行まで一年をきった家電リサイクル法について、その概要と 問題点、課題について述べ、解決策を探していきたいと思う。
目次
1章 家電リサイクル法の概要 2章 今後の課題について
3章 自治体に関する諸問題―実例を考える―
4章 料金の徴収時期について 終章 まとめ
まず、1章では家電リサイクル法の概要と目的について述べ、2章では家電リサイクル 法の施行へ向けて考え、解決していかなければならない課題について述べる。次に3章で はこの法律によって大きく役割が変わる自治体に関する問題について、東京都を例に考え ていく。そして、4章では廃棄時徴収と決まった後も議論がされている料金の徴収時期に ついて廃棄時徴収と販売時徴収のメリット・デメリットを考えていく。
第1章 家電リサイクル法の概要
特定家庭用機器再商品化法(以下、家電リサイクル法)は、家電製品の適正なリサイク ルを進めるために1998年5月に制定された。同年6月に公布され、2001年4月からエア コン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目を対象に本格施行される。この法律では、エアコ
ンで60%、テレビで55%、冷蔵庫と洗濯機で 50%を上回るリサイクル率がそれぞれの機
器に対して求められる。
次に新たな役割分担として、消費者は適正な引き渡し及び排出時における収集・再商品 化等費用の負担義務を、販売店は消費者からの引き取り義務及び製造業者等への引き渡し 義務を担うことになった。そして、製造業者等は過去に自ら製造・販売した製品で引取り 要請があったものに対しての、引き取り義務及び再商品化等実施義務を担うことになり、
これにともなって自治体は義務が軽くなる。具体的には、これまで、自治体は廃家電につ いて回収から処理まで一貫して義務を負っていたが、家電リサイクル法施行後は補完的な 役割を担うことになっている。(P11資料参照)
表 リサイクル率
テレビ 冷蔵庫 洗濯機 エアコン
リサイクル率 55% 50% 50% 60%
一年間に排出される約5000万tの一般廃棄物のうち使用済み家電製品は約60万tしか ない((60/5000)×100=1.2%)。では、なぜこれだけしかない廃家電が問題とされるよ うになったのか。その理由として、処理が難しいことが挙げられる。多くの使用済み家電 製品は家庭から排出される「一般廃棄物」1として処理される。これらの廃家電は市町村に よって回収・処理されようと、販売店で回収されようと、従来の処理プラントでは鉄など の金属類の回収を一部で行っているにすぎず、適切なリサイクルが不可能であった。そこ で、今回の法律ではリサイクルの必要性が特に高い4品目が他の家電製品に先行して対象 となり、高い処理技術を持っており、製品設計にも影響を与えられると思われる家電メー カーにリサイクルの義務を負わせることになったのである(これに伴う役割分担につては 上述)。
また、この法律のもう一つの趣旨は、廃棄物処理にも市場競争を導入し、より効率的な 処理を目指していく、というものである。
この点で、家電リサイクル法の成否が他の廃棄物処理政策に影響を与える可能性はおお いにあると考えられる。
1 廃掃法による
第2章 家電リサイクル法施行へ向けての課題
ここでは、家電リサイクル法の本格施行までの課題について検討する。指定引き取り場 所及びリサイクルプラントの配置のあり方と,行政のあり方、料金徴収の方法2である。
2−1 指定引き取り場所及びリサイクルプラントの配置のあり方
まず、指定引取場所及びリサイクルプラントの配置のあり方が問題となる。家電リサイ クル法においては、指定引取場所までの一次輸送は小売業者の義務、指定引取場所以降の 二次輸送及び再商品化は製造業者等の義務であり、これらの費用の支払義務は排出者にあ る(図)。指定引取場所が多ければ土地代や人件費などの費用が増加したり、プラントまで の輸送費用が増加したりするので、廃家電一台あたりの再商品化料金3が高くなる。逆に、
少なければ小売業者の運送にかかる時間が長くなるので指定引取り場所までの収集・運搬 料金が高くなる。リサイクルにかかる総費用を最小に抑えるという視点から考えると、一 次輸送と二次輸送・再商品化のコストが全体として最小になるような指定引取り場所とプ ラントの配置を考える必要がある。また、リサイクルプラントについては,メーカーが自 ら施設を設営するケースや、複数のメーカーが共同で設営するケース、再商品化率を満た せる既存の処理業者に委託するケースなどが考えられる。現時点では、99 年5月に完成し た三菱電機のリサイクルプラント(千葉県市川市)をはじめ、東芝も北九州市にリサイク ル・処理プラントを建設中であり、また日立製作所と有明工業も都内にプラントを計画中 であるなど、全国で11ヶ所程度のプラントが建設、計画されている。
図
一次輸送費 二次輸送費 プラント処理費
再商品化料金
注)一次輸送費は小売店、自治体に支払い、再商品化料金はメーカーに支払う
24章で料金の徴収時期を問題としているが、ここでは 施行へ向けての課題 であるため法律通り廃棄時 徴収であるとする。
3 指定引取り場所からプラントまでの二次輸送費とプラントでの処理費用を合わせたものを 再商品化料 自ら処理?
排出者
小売店
自治体
指定引取り場所 処理プラント 処理
2−2 行政のありかた
次に行政のあり方が問題となる。ここで、この点について論じるまえに家電リサイクル 法施行前後の自治体の責任がどのように変化するかについて確認しておきたい。現在は廃 掃法により、家電 4 品目も含めて一般廃棄物の処理は自治体の責任である。家電リサイク ル法が施行された後、家電4品目の処理責任はおおむねメーカーが負う事になる。そこで、
自治体は家電4 品目の処理について大きく分けて 2つの対応が可能となる。ひとつは回収 した廃家電(4品目)に対して廃掃法にもとづいて家電リサイクル法における再商品化基準 と同等の処理を自ら行うこと。2つ目は、家電リサイクル法により4家電4品目の処理をメ ーカーに委託することである。
まず、一つ目の場合について考えてみる。自治体が家電リサイクル法の求める再商品化 率を満たした処理を行う場合、排出者から処理費用を徴収しなければならない。この 処 理料金 は現在粗大ゴミを回収しているときに徴収している料金よりも明らかに高くなる。
つまり、条例によって料金を値上げしなくてはいけなくなるわけだが、料金の値上げは政 治的に難しいと考えられる。しかし、現在のように、無料もしくは低額の処理手数料しか 徴収しないと仮定すると、処理料金の安さから多くの廃家電が自治体ルートに流入し、処 理責任を民間に移すという法の趣旨に反することになってしまう。この場合、料金の引き 上げが出来るかどうか、が重要なポイントとなるだろう。
しかし、自治体の既存のプラントでは、家電リサイクル法の求める再商品化率を達成す ることは難しい。そこで自治体は処理をメーカーに委託する事が考えられる。つまり二つ 目の場合であり、このとき手数料と処理費用の徴収のあり方が問題となる。この点につい ては小売店とメーカーの間でも問題となっている点であり,次に改めて, 料金徴収 につ いて考える。
2-3処理費用の徴収の方法について
自治体が回収のみを行い、処理をメーカーに委託するときメーカーは何らかの形で再商 品化料金を徴収しなくてはいけない。そこで、自治体が消費者から再商品化料金を徴収し メーカーに納める方法(代理徴収)とメーカーがシールや金券を使って排出者から直接料 金を徴収する方法が考えられる。まず、代理徴収についてだが、自治体は地方自治法の規 定により代理徴収ができない5。地方自治法が改正されれば可能になるだろうが、これはあ まり現実的ではない。また、メーカ―も自治体が回収する、小売店が回収するに関わりな く、排出者から直接料金を徴収したいと考えているようだ。
そこで、2番目の方法(メーカーが直接排出者から再商品化料金を徴収する方法)が有力 である。この方法についてはメーカーと小売店が徴収システムの構築に向け様々な議論を
金 とする。(P11資料2参照)
4 家電リサイクル法により、自治体は回収した家電4品目の引取りをメーカーに求める事が出来る。
5 地方自治法第235条の4第2項
行っている。
主に料金をどこで徴収するのかが焦点のようだ。郵便局、コンビニエンスストアなどが 考えられるが、それぞれに問題がある。郵便局に関しては、家電リサイクル法の為だけに 料金徴収のシステムを構築してくれるのか、という点、及び休日に料金徴収が出来ないと いう点が問題となっている。また、コンビニエンスストアを利用した場合には、小売店に とって重要な顧客情報が競争相手に流れてしまう可能性があるという点が問題となってい る。いずれの方法にしても、排出者に適正な排出を促せるようなシステムが望まれる。
第3章 自治体に関する諸問題について
3‐1はじめに
家電リサイクル法が施行されると自治体は回収した家電リサイクル法対象機器4品目(以下 家電4品目)の処理をメーカーに委託する、もしくは処理を民間業者に全面的に任せること が想定される。自治体が現在持っている既存のプラントでは家電リサイクル法の再商品化 率を達成することは非常に困難だからである。この法律の施行により、それまで家電 4 品 目の処理にかかっていた費用が大幅に削減し、自治体の廃棄物処理費用に含まれていた家 電4品目の処理費用が削減され、その結果自治体の廃棄物処理費用も削減されると予想出 来る。処理費用の削減という点に着目し,自治体の廃棄物費用はどのくらい削減されるか、
また削減された費用をどう活用していくべきか、という 2点について東京都(23 区)を例と して考察していく。
3−2 家電リサイクル法施行による自治体の廃棄物処理費用の削減額についての考察
〜東京都のケース〜
東京都では家電リサイクル法施行後の自治体の役割を研究するために,家電リサイクル 研究会ひらいた。この家電リサイクル研究会では、次のような事が提案された。
{家電リサイクル法施行時に東京都は家電4品目を粗大ごみから外し、収集・処理を民 間業者に全面的に任せる}
上記の場合、東京都の廃棄物処理費用はどのくらい削減されるのだろうか。という点に ついて、収集・運搬費用と、処理費用に着目して考えてみたい。
3−2−1 収集・運搬について
現状で、家電4品目の処理にかかっている費用を次の式と表1、表2のデータをもとに 計算し、4品目を収集・運搬の対象外とすることによる都の支出減を推定すると総額約19 億円と予想される。また、23 区の住民を約780 万人6とすると、一人あたり約 243 円削減 されることになる。
計算式)
(家電4品目にかかる費用総額)
=(粗大ゴミの収集・運搬費用)×(粗大ゴミに占める家電4品目の割合7) 注)重量ベース
家電4品目にかかる費用総額
=8795609(千円)×(13118/60747)≒1899366≒1900000(19億円)
6 正確には7,830,323人(平成9年)。「住民基本台帳人口要覧」(1997)(財)国土地理協会より
7 粗大ごみの家電4品目の割合は(家電4品目総排出量)/(粗大ごみ処理量)により計算。
13,118t/60,747t=0.216
表1:粗大ごみの処理にかかる経費
処理量(t) 総額(千円) 処理量あたり経費(円/t)
収集・運搬処理・処分 合計 収集・運搬処理・処分 合計 60747 8795609 4126879 12922488 144791 67924 212727
表2:家電4品目の平均重量と東京都における収集台数
及び排出重量、1台あたり収集+処理経費8 (平成9年度)
平均重量(Kg) 収集台数(台) 排出重量(t) 収集+処理経費(円) エアコン 41 53,705 2,202 8,733
テレビ 29 155,939 4,522 6,177 冷蔵庫 60 69,694 4,182 12,780 洗濯機 36 61,438 2,212 7,668 合計 166 340,776 13,118 35,358
(注:「家電4品目排出重量」は(家電4品目平均重量)×(家電4品目収集実績)で求めた。これは、作 成者による単純計算である。その他は東京都家電リサイクル研究会報告書より)
ただし、家電 4 品目は現在粗大ゴミとして扱われており、他の粗大ごみとともに収集・
運搬されているので、処理にかかる費用を細かく計算することは困難であり、上記の式及 び計算結果は非常に大雑把なものである。
3−2−2 処理について
処理費用は収集・運搬と異なり、固定費の要素が大きいためあまり削減は期待できない。
また、埋め立てコスト9に関しては家電4品目の埋め立量が減るので埋立てコストが減少す ると考えた。ところが、平成8年度中央防波堤埋め立処分場への埋立て量は約140万t、
埋立て費用は約120億円、従って、約8,800円/t。平成9年度は埋立て量が約111万t、
埋立て費用が約111億円、従って約10,000円/t。つまり埋立て量が少ない平成9年度の方 がトン当たりの埋立て費用が高いとい状況になっている。これは埋立て事業が埋立て量の 増減によって埋立て価格が変動しにくいためである。処分場からでる排水処理10だけで半分 を占める。それに埋立地の整備費(道路、ショベルカーなど)は固定費であり、ランニングコ ストの要素が少ない。従って処理に関しては処理費用の削減額を計算することは困難であ り、短期的にはあまり変化がない可能性が高い。
3‐3削減される廃棄物処理費用の活用の方法
家電リサイクル法により削減された自治体の廃棄物処理費用はどのように活用すべきだ ろうか。
8 (財)家電製品協会による試算
9 トンあたり費用が埋め立て価格で、総額が埋め立てコストと定義づける
10 埋立地にたまった雨水などは、汚染の可能性があるので処理しなければならない。
いくつかの活用方法が考えられるが、削減額が一人あたり約243円と小額であること、
また家電4品目処理にかかわることに活用すべきであるので、例えば住民に平等に243円 を返却する、もしくは住民税を一人あたり 243 円下げるということは効果的ではなく、ま た公平性にかける。そこで活用方法としては以下の3つが考えられるのではないだろうか。
①冷蔵庫の断熱材フロンの回収費用に当てる11
②住民に家電4品目の適切な排出を促すPR費用に当てる
③粗大ごみ手数料を値下げする
東京都の家電リサイクル研究会では東京都が①を行うことが提案された。家電リサイ クル法をより効果的に進めていくには消費者・小売店・メーカー・自治体各主体の積極 的な取り組みが必要である。人口約 780万人を有し、多大な影響力を持つ東京都(23 区) が自ら自治体のトップランナーとして①に取り組んでいくことは非常に意義あるものと 考える。一方で断熱材フロンの回収可能な設備は全国でもあまり多くはない数多くない。
では、近くにそのような設備がない自治体はどうしたらよいのだろうか。また①以外に も他に必要なことはないのだろうか。そこで②を訴えたい。現状では粗大ごみ排出者は 手数料として、廃家電(4品目)については 500円〜1900円を支払っている。しかし、
家電リサイクル法施行後メーカーに支払う処理料金は現状の粗大ごみ手数料より増加す る可能性が高く、それに伴い不法投棄が懸念される。しかし表 2 からわかるように現状 においても実際には家電 4 品目の処理に多くの費用がかかっている。問題はそのような 多くの費用を税金でまかなっているということを住民が知らないということだ。
家電リサイクル法施行後はメーカーがこの費用(粗大ごみ手数料+税金による処理費 用)よりも安く処理することが可能であると予想されている。つまり、実際に消費者が 排出時にメーカーに支払う料金は以前の粗大ごみ手数料より高くなってしまうが、処理 自体にかかるコストは下がり、廃家電処理への税金投入が減るということだ。
排出者に適切な排出を促すためには、現在の家電 4 品目にかかる処理費用の情報を公 開し、また家電リサイクル法施行後は費用の使い道を住民に十分に情報公開することが 必要である。家電リサイクル法の施行により削減することの出来た処理コストは、PR の費用に当てるのも効果的な使い方ではないだろうか。
11 家電リサイクル法において、冷媒フロンの回収は義務付けられているが、断熱材フロンの回収は義務で はない。しかし、オゾン層や温暖化の問題を考えると、断熱材フロンの回収も必要であると考えられる。
第4章 料金徴収の時期について
家電リサイクル法におけるリサイクル料金の徴収方法として、製品の販売時に製品価格 に上乗せして徴収する方法と、製品の廃棄時に徴収する方法とが考えられる。この法律で は後者、つまり製品の廃棄時にリサイクル料金を徴収することになっているが、欧米にお ける同様の法律では主に前者の方法(製品価格に上乗せして、販売時に徴収する方法)が 採られることになっている。
この章では、現在でも議論が行われている販売時徴収か廃棄時徴収か、という点に焦点 をおき、そのメリットとデメリットについて考えていきたい。また、販売時徴収について は、さらに一対一対応型12と年金型13という二つのケースに分けて考える。
ここで、両者を比較する視点として、以下の1〜7を挙げる。
1、既に販売済みの製品(historical waste)への適応の可否 2、リサイクル責任者が倒産・撤退してしまった場合の製品の扱い 3、消費者の排出抑制への効果
4、リサイクル性に配慮した製品づくりへのインセンティブ 5、不法投棄に対する影響
6、製品の受益者と当該製品の回収・リサイクル費用を負担者の一致の有無 7、徴収額の算定
(表3参照)
4−1 historical wasteへの対応の可否
排出時徴収の場合には廃棄されようとしている製品に対してリサイクル費用を徴収す るので、適応が可能である。また、年金型についても購入者が支払ったリサイクル料金 が廃棄された製品のリサイクル費用となるので、適応できる。反対に、一対一対応型は、
販売した製品に対してリサイクル料金を徴収するので、現在ある製品については対応で きない。
4−2 リサイクル責任者の倒産・撤退への適応の可否
排出時徴収の場合には上記と同様の理由で、対応できる。しかし、販売時徴収につい て考えると、基本的には対応できない。ただし、一対一対応型の場合、販売時に徴収し た費用を製品の廃棄時まで管理する機関があれば対応できる。また、年金型の場合にも、
法施行後リサイクル責任者が徴収した費用を撤退した者が製造等を行った製品のリサイ
12 今後販売する製品の価格に、当該製品が将来廃棄される際に必要になると想定される費用を上乗せして 徴収する。この為には徴収した料金をプールしておく機関が必要になるであろう。
13 今後販売する製品の価格に、既に販売され、その時点で廃棄されようとしている製品の回収・リサイク
クルに充当する機関があれば対応できる。しかし、これらの方法を考えるとき、費用を 管理する機関の運営コストが必要となってしまうということも頭に入れておかなくては ならない。
4−3 消費者の排出抑制への効果
排出時徴収の場合には、消費者はリサイクル費用の支払いを嫌うので、なるべく長く使 おうとし排出抑制につながるであろう。しかし、販売時徴収の二つの場合を考えると、
消費者は廃棄時には費用を支払わないので、 リサイクル費用を自分で支払っている と いう意識があまり無いと思われる。そのため、無料もしくは自治体に2000円以下の手数 料を支払うのみで回収している現状におけるのと変わらないと考えられる。
4−4 リサイクル性に配慮した製品作りへのインセンティブ
廃棄時徴収では、メーカーが自社製品を引き取ってリサイクルしなくてはいけないので あれば、ある程度効果的である。そして,一対一対応型ではリサイクル性が販売価格に影 響を与えるので、リサイクル費用がより安い製品を作るインセンティブがある。これに対 し年金型は、販売する製品と徴収されるリサイクル費用は一致しないので、リサイクル性 に考慮した製品を作るインセンティブはメーカーにはない。
4−5 不法投棄への影響
廃棄時徴収の場合、おおよそ5000円といわれているリサイクル費用の支払いを排出者が 嫌い、不法投棄は増加するという可能性が考えられている。しかし、私たちは廃棄時徴 収の場合でも、不法投棄が増加するかどうかは疑問だと考える。すなわち、不法投棄は 誰が行うのかということである。家電リサイクル法の対象4品目はテレビを除いてとて も大きく、排出者が自分で動かすことは困難であると思われる。そこで、それらの製品 を廃棄するための運搬コストを考えても、リサイクル費用の支払いを嫌った排出者が不 法投棄をするケースは非常に少ないのではないかと考えた。また、排出者が不法投棄を してしまう場合にも、二章で述べたように自治体による正しい情報公開や消費者に対す るPR活動が行われれば、不法投棄はあまり大きな問題とはならないと考える。販売時徴 収の二つのケースについては廃棄時には既に料金は徴収されており、無料で引き取られ るので不法投棄が今以上に増加する恐れはない。
なお、厚生省、通産省共に廃家電の不法投棄に関するデータはない。
4−6 製品の受益者とリサイクル料金負担者の一致の有無
廃棄時徴収、一対一対応型では、消費者は自分自身が使用し、便益を受たものに対する リサイクル費用を支払っているため、便益を受けるものとリサイクル費用を支払う者は ル費用を上乗せして徴収する。
一致している。しかし、年金型では一致していない。
4−7 徴収額の算定
排 出 時 徴 収 の 場 合 に は そ の 時 点 で 必 要 と さ れ て い る 費 用 を 徴 収 す る こ と が できるので、ほぼ正確にできる。また、年金型もその時点で廃棄された製品のリサイク
ル費用が新しい製品を買った人から徴収されているため、ほぼ正確に算定できる。これ に対し、一対一対応型は、正確に算定するのは困難である。なぜなら、家電製品はいわ ゆる耐久消費財であり,販売した製品が廃棄されるのは数年以上たってからである。こ の場合には、廃棄時にかかるであろう費用を予 測 し て徴収しなくてはならず、この予測 が非常に難しい.
以上7点について述べてきたが,このほかにも将来パソコンが対象に加えられたと仮定 したときに、複数メーカーの製品を組み合わせたパソコン(ハードディスクを後から取り 付けている・自分で組み立てた・・・等)をどう取り扱うのかという問題も考えられる。
この場合については、再商品化義務を負うのは誰かと言う問題はあるが、料金徴収に関し ては排出時徴収であれば対応は可能である。また、年金型については,将来、廃棄される 製品の数が販売される製品の数を上回った場合に対処が難しくなっていくと考えられる。
そして、一対一対応型の場合には、物価の変動に対処できないという点も指摘される。数 年、もしくはそれ以上という期間には物価の変動も避けられないだろう。
これらの理由から、料金徴収は廃棄時ということになったと考えられる。私達もこれら の観点から見る限りではやはり廃棄時徴収の方がよりすぐれていると考えた。欧米では販 売時支払いが多いと前述したが、まだ施行されたのがオランダのみでありこの資料も不足 している。そのため、実績値から販売時が好ましいか廃棄時が好ましいかを判断すること はできなかった。この点が、残念である。
表3:料金の徴収時期の影響
廃棄時徴収 一対一対応 年金型
historical waste ○ × ○
責任者の倒産・撤退 ○ × ○
排出抑制 ○ × ×
リサイクル性への配慮 △ ○ ×
不法投棄 ? ○ ○
受益者と費用負担者 ○ ○ ×
徴収額の算定 ○ × ○
注)不法投棄に関しては,増加する場合を×、影響を与えない場合を○とする。
資料1 現在の家電処理
資料2
出典:通産省HP(資料1,2)
<参考資料>
・ 東京都家電リサイクル研究会 (1999) 第3回資料No.3
・ 東京都家電リサイクル研究会報告書 (2000)
・東京都家電リサイクル研究会 (1999)「議論の要点」冊子
・「日経エコロジー エコプロダクツガイド2000」 (2000) 日経BP社 ・「日経エコロジー 2月号、3月号、4月号」 (2000) 日経BP社 ・通産省ホームページ
<お世話になった方々>
澤崎 道男様 東京都清掃局 ごみ減量総合対策室 企画係 主任 清水 智雄様 日本電気大型店協会(NEBA) 常務理事
中川 惇 様 (株)東芝 常務 家電機器社社長
信谷 和重様 通産省機械情報産業局 電気機器課 課長補佐 松村 恒男様 (株)三菱電機 リサイクル推進室企画担当部長 (五十音順)