令和3年度 研究プロジェクト実施報告書
研究代表者:愛知学泉大学・愛知学泉短期大学 ライフスタイル学科 平岩暁子
学外コンテスト参加を通した
専門的知識・技術の活用および向上への効果
1. 研究活動の概要
本研究は、学外にて行われるファッションデザインコンテスト参加を通じ、学生がカリキュラム内で 修得した専門的知識・技術を外部との連携で更に向上させながら、実社会で活用していける汎用的能力 を育てることを目的とし、その効果を考察したものである。
「翔工房」とは、(公財)一宮地場産業ファッションデザインセンターが主催となり、大学生や専門学 校生等の感性溢れるアイデアやデザインと、歴史ある尾州産地の織物技術や染色整理技術を組み合わせ ることで、創造性豊かな新しいものづくりを進めていく人材育成事業である。数多く存在するファッシ ョンデザインコンテストと翔工房が大きく異なる点は、作品に使用する布地を、毛織物で有名な尾州産 地の匠講師と共に、1からオリジナルで作り上げていく点にある。
4月にイメージマップ・デザイン画を製作し応募、29 校 49 名の応募の中、13校14名が審査を通過、
6月に参加の権利を得た後、研修・設備見学・匠講師との素材製作のための打ち合わせ・試し織り工場の 見学等を行い、完成素材の発表・求評を得た後、デザイン画に沿った作品のパターン製作・仮縫い・縫 製を行い作品完成、動画撮影による作品発表、冊子の製作、翌年の 2 月の一宮市にて開催されたヤーン フェアにて展示まで約1年間を掛けて活動を行った。
2. 成果
10月に素材(布地)の完成、翌年1月に衣装作品の完成ま で、多くの人たちと関わり、協働しながら行えた。織り糸の 選択、密度、織り方等について相談しいくつかの案をいただ く中、自分のイメージを鮮明に伝え、具現化するためのコミ ュニケーション能力、言葉の選択の仕方が養えた。2 年前期 では糸・布の構造や織り方に関する授業が行われていないた め、はじめは知識が不足し充分ではなかったが、布地の設計 に参加し一つ一つ段階的に経験させていただくことで、専門 的知識を向上させていった。完成した布は、上品な風合いで、
肌触りがしっかりしつつも柔らかさがあるものに、また握った時に感じられる温かみは、布団に包まれ た時の温度が感じられるようなイメージの「ねむり」をしっかりと表現できるものが完成した。
その布を使用し、デザイン画に沿った作品製作をしていっ た。布が完成する前からパターン製作を行った。1年次でシ ャツ製作をした時の文化式原型を活用し応用した。イメージ するワンピース、ジャケットの形を求め仮縫いを何度も繰り 返し、パターンを完成させた。しかし布が出来上がってきた 後、そのパターンでは布が不足してしまうことが判明したた め、イメージを大きく壊さないようスカート部分のデザイン とパターンを変更した。柔軟性が求められたが、仮縫いとパ
ターン修正を何度も繰り返した中で、その変更にも対応することができた。縫製では授業内で得た基礎 的な技術をベースに、さらにさまざまな新しい技術を取り入れながら作り上げていくことで、専門的技 術の大きな向上につながった。一部デザインは変更されたが、イメージの通りの作品を完成させること ができた。
3. 考察・今後の課題
当初の計画では、学科から衣装着用モデルを別途選定し、採寸、仮縫い補正などを協働して行うこと で、学科内での学びも生まれことを期待していたが、コロナ禍で出校が困難な時期でもあり、作業に支 障が出ることが懸念されたため、モデル学生を立てることを断念した。そのため学生 1 名が製作者兼モ デルとなって活動を進めていくこととなった。しかし、作業の様子、作品が完成していく様子を同級生、
そして下級生が実習室で目にする機会が多く、熱心に取り組む姿に関心を強く持つ学生たちが多数いた。
また仮縫いの際には、見ている学生たちに意見を求める場面も多々あった。これらの様子は、学科内の 相乗効果に繋がり、ライフスタイルではこんなこともできる、と可能性を感じた学生も増えただろう。
実際、2022年度には、このコンテストにチャレンジしたいと申し出る学生が数名おり、応募した2名の うち、1名が審査を通過し、取り組みを進めている最中である。