論文要旨 氏名 岩田 宜子 論文題目 コーポレートガバナンス・コードの IR 対応
著者は1992年よりIRおよびコーポレートガバナンスのコンサルティングの分野に就き、
2001年にはジェイ・ユーラス・アイアール社を起業し、コーポレートガバナンスやIR(イ ンベスター・リレーションズ)に関する活動を行っている。日本企業に対してコンサルタ ントを行うだけではなく、海外機関との連携や投資家との議論により、企業のガバナンス やIRのあり方を研究し、深化させる活動も行っている。今回、これまでの活動成果をとり まとめた。
IR およびコーポレートガバナンスのコンサルティングの分野に著者が就いた当時は、日 本企業においては、これらの言葉自体の認知は低く、間接金融による資金調達が主であっ た。日本企業には、その概念すら受け入れない状況であった。また、ガバナンスの主要な 議論である社外取締役導入も長らく停滞した。その背景には、物言わぬ株主という安定株 主を得ることを目指す日本企業の姿勢があり、物言う機関投資家株主を、「新種の総会屋」
として位置付ける日本企業も少なくなかったからだ。
2015年6月よりいよいよ上場企業にコーポレートガバナンス・コードが適用されること になった。日本企業は、積極的にIR活動を行いたいとするポジティブ面と、できたら株主 とのコミュニケーションを避けたくガバナンス議論や社外取締役の導入にも否定的とする ネガティブ面の二面を持ち合わせていたが、当コードにより、IRとガバナンスの議論は、
急速に統合され一つに収斂していく(コンバージェンス)ことが期待される。
本論文では、1990年代から現在に至るまで、日本におけるガバナンスの議論の進展を検 証し、コーポレートガバナンス・コードの策定より先行した日本版スチュワードシップ・
コードへの検証と日本企業との関わり、さらに、73 項目のコーポレートガバナンス・コー ドについて海外企業の例や投資家のコメント、データを取り上げながら、その趣旨を分析 した。それは、まさに、中長期運用の投資家を株主にするステップであり、そのためのIR 活動も示唆する。企業と資本市場にとって透明度の高いガバナンス体制を構築することと それを市場にアピールするIR活動の両者がコンバージェンスする意義と目指すべき企業の 姿勢、さらに、企業経営における今後の課題をまとめた。