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情報活用教育(情報リテラシー教育)の事例と今後の展開

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情報活用教育(情報リテラシー教育)の事例と今後の展開

−文化情報学部におけるオリエンテーション科目の周辺−

1.大学における教育内容等の改革状況

 大学のカリキュラム改革が進んでいる。最近4年間

(2001年度から2004年度)においては、全大学の約8割 がカリキュラム改革を実施しているということであ る(文教協会発行『大学資料』No.172, 2006.9, p.2)。そ の具体的内容としては、①必修・選択見直し、②科目区 分の見直し、③コース制の導入、④卒業要件単位数の 見直しなどがあげられている。

 さらに、いわゆる教養教育(一般教育といわれたこ ともある)の実施においても様々な取組みが行われて いる。新制大学が誕生した時に、最も問題となったも のの一つが学部基礎教育で、それが一般教育という必 修科目群で残っていたが、大学教育の大綱化で、一般 教育は必修ではなくなり、教養科目群や基礎科目群と なった。しかし、実態が大きく変わったわけではな かった。これらの科目群の取り扱いに、各大学では独 自性を出そうと苦心してきたのであるが、上記の報告 によれば、情報活用能力の育成に関する科目を開設し たところが多いという結果がでている。

 2004年度の開設科目調査結果では、①情報活用能力 の育成、②心身の健康に関する科目、③社会的・学問的 な主題等、④学際的・総合的内容、⑤専門教育の基礎科 目、⑥文書作成等の訓練(文教協会発行『大学資料』

No.172, 2006.9, p.3)となっていて、一般教育科目群と して位置付けられていた時の科目とは大きく変わっ ていることがわかる。

 いわゆるオリエンテーション科目がその大半を占 めているのである。その中でも、①情報活用能力の育 成、⑥文書作成等の訓練の二つは、文化情報学部の創

設時(1994年)のオリエンテーション科目(以下の2.

で説明する)にその内容がほとんど含まれている。こ のオリエンテーション科目の設置が、大学志願者全入 時代を先取りした重要な科目であることは、上に紹介 した実態調査をみても明らかである。

 残念ながら、これらの科目は、その後の学部カリ キュラム改革で全部無くなり、すべてがオリエンテー ションゼミに置き換えられた。シラバスを見ると、従 前の科目内容の片鱗は残っているが、講義科目として 設置されていた当時と比較して、その趣旨が本当にゼ ミに生かされているかどうかはわからない。

2.文化情報学部におけるオリエンテーショ     ン科目

 1994年4月に創設された文化情報学部(文化情報学 科と知識情報学科の2学科各2コース、合計4コースで 構成されている)のカリキュラム体系はつぎのとおり であった。

 全体はA群からE群までの5つの科目群から構成 されていた。A群は共通基礎科目群といい、オリエン テーション科目(卒業要件は6単位以上)、基礎科目

(14単位以上)、関連基礎科目(スポーツ2単位は必 修)からなり、合計34単位以上を卒業要件とした。B 群は外国語科目群といい、Ⅰ群(英語)とⅡ群(独・仏・

中国・ロシア・日本語)からなり、Ⅰ群10単位、Ⅱ群6単 位、合計16単位以上を卒業要件とした。C群は情報関 連科目群といい、コンピュータ利用技術習得のため の科目である。情報基礎科目と情報応用科目からな り、合計14単位以上を卒業要件とした。D群は基幹科

戸 田 光 昭

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目群といい、共通基幹科目(学部共通の科目で8単位 以上)と学科基幹科目(学科に共通の科目で4単位以 上)からなり、合計20単位以上を卒業要件とした。最 後がE群で、専攻科目群といい、専攻科目(12単位以 上)、副専攻科目、演習科目(ゼミナール8単位は必修)

からなり、合計40単位以上を卒業要件とした。総計 124単位が卒業に必要な最低修得単位数である。

 これらの科目のなかのオリエンテーション科目が、

上記の1.で紹介した科目であり、その特色・履修目標 は、『文化情報学部履修ガイド 1994年度』にはつぎの ように記述されている。

 本学部では、1年次春学期をオリエンテーション学 期として、入学後間もない学生の、大学への導入期間 としている。この期間に、本来、学生が大学での授業を 自主的・効果的に学ぶために必要な基礎である  「学問の研究・調査の仕方」

 「必要な情報や文献の探し方」

 「得られた知見のまとめ方」

 「獲得した新知識の発表を通じてのコミュニケー  ショ ンの仕方」

などを修得するために、オリエンテーション科目を開 設している。いずれの科目も学習・研究に不可欠の重 要な科目であり、オリエンテーション科目を履修する ことにより、基礎・基幹・専攻科目を自主的かつ効率よ く学ぶための下地となるので、できる限り1年次春学 期に修得すること。

 以上の目標に沿って、クラス指定科目(全員が履修 するように割り当てられた必修科目に準ずる位置づ け)として、「資料検索法」「論文執筆法」「研究調査法」

の3科目が設置され、さらに、土曜日開講の外部講師に よる「プレゼンテーション法」、基礎的ゼミナールとし ての「プレゼミナール」の2科目がオリエンテーション 科目の自由選択として置かれていた。

 これらの科目のうち、プレゼミナール以外は講義課 目であったが、実質的には演習科目に近く、毎回、多く の課題が出され、受講学生はそれをこなすのに苦労し たようである。しかし、その苦労は後になって相当に

役立っていることが、卒業生のつぎの文章からも明ら かである。文化情報学部1期生のS君が『駿河台大学案 内ガイドブック 2004年版』に寄せたものである。

 「文化情報学部では、自ら課題を見つけ、それを調査 し、レポートにまとめるという一連の流れを身につ け、一人で研究を進めることができるようにご指導い ただきました。お陰様で、このことが今の社会人とし ての私の活動を支えています。」

 これらのオリエンテーション科目は、その後、何回 かのカリキュラム改正のたびに減少し、最近の2006年 4月実施の改正では、オリエンテーション科目は、オリ エンテーション・ゼミナールⅠ(春学期、2単位)、オリ エンテーション・ゼミナールⅡ(秋学期、2単位)と全部 で4単位のゼミナール科目だけになっている。学部開 設時には、春学期だけでみると、6単位もあった科目が 三分の一に減少したわけで、大学全入時代の新入生に とって、ふさわしいカリキュラムであるかどうかは、

これから数年の実績が評価することになろう。

3.情報活用教育の発展形としての図書館利    用教育

 文化情報学部では、情報活用教育がオリエンテー ション科目として発展・存続しなかったのであるが、今 後、これを復活させ、発展させるためのいくつかの方策 が考えられる。その中で、実現性の高いものの一つに、

図書館利用教育として実践するという考え方がある。

 大学図書館はコンピュータ化の恩恵を受け、図書館 資料の組織化(目録・分類・整理業務)は、かなりスムー ズに行えるようになっている。図書資料という物理的 なものを取り扱うので、コンピュータにすべて頼るこ とはできないが、コンピュータ化で効率的になったた め、図書館資料の運用に必要だった人的資源を、利用者 支援サービスに向けることが可能になったのである。

 すなわち、利用者支援サービスとしての図書館利用 教育が、特に大学図書館においては最重要サービスの 一つとなったのである。既に、多くの大学で、その実践

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事例をみることができる。つぎに代表的なもののいく つかについて、インターネット・ウェブ情報と印刷資 料(図書)で調べた結果を紹介する。

⑴ 慶 應 義 塾 大 学 日 吉 メ デ ィ ア セ ン タ ー 提 供 の KITIEプログラム(ウェブによるサービス。学外 からも利用可能)

 その概要をみると、サイトマップはつぎのような構 成になっている1)

①レポートを書く:レポートとは何か、レポートの構  成、レポートにおける倫理、レポート提出までの作  業、クイズ

②情報の種類と特徴:情報の生産と流通、情報のタイ  プ、クイズ

③情報を収集する:情報検索の基本、KOSMOSの使い  方、新聞・雑誌論文の探し方、インターネット検索、

 法令の探し方、判例の探し方、資料を入手する(それ  ぞれの項目にクイズがついている)

④情報を評価する:図書を評価する、雑誌記事・論文を  評価する、インターネット上の情報を評価する、ク  イズ

⑤情報を活用する:引用について理解する、著作権を  理解する、クイズ

⑥プレゼンテーションをする:プレゼンテーション、

 資料をデザインする、クイズ

⑦ファイナルテスト

⑧資料集

⑨用語集

⑩お問い合わせ

 この構成内容を見ると、最初は「レポートを書く」か ら始まっている。「情報とは何か」、あるいは「情報の種 類」などから始まるのではなく、「レポート」であるの は、大学生にとって最大の課題がレポートを書くこと だからであろう。すなわち、情報活用教育というのは、

理屈の講義ではなく、学生にとっての身近な課題を解 決してくれるものでなければならない。したがって、

日吉メディアセンターの場合は、このサイトマップを ステップごとに追い、さらにクイズを解いてゆけば、

情報活用能力(特に情報スキル)が身につくように構

成されていて、eラーニングのモデルでもある。

 このプログラムの中心である「①レポートを書く」

の内容は、次のとおりである。

 (a)レポートとは何か

   大学におけるレポートは感想文やエッセイと    は異なり、学術的な文章でなければならない。

   その要件を「問題提起とそれに対する解答が示    されていること」としている。

 (b)レポートの構成

   序論、本論、結論で構成され、最後に参考文献リ    ストをつけなければならないとし、本論から結    論までの議論、論証の重要性を述べている。

 (c)レポートにおける倫理(態度)

   ⅰ)自分の主張に責任を持つ

   ⅱ)自分の考えたことと他者の考えたことを区       別する。特に引用の方法について

   ⅲ)利用した情報の真意を損ねることはしない  (d)完成までのスケジュールをたてる

   ⅰ)いつごろまでに何を終えておけばよいの       か。テーマ決定、情報収集、執筆時間などを       考え、日程を具体的にイメージ

   ⅱ)執筆計画のポイントとしては、とにかく早       くとりかかる。他のやるべきこととのバラ       ンスを考慮。現実的な計画立案

 (e)レポートの趣旨を理解する

   最初に課題文をしっかり読み、内容の理解につ    とめる

   ⅰ)誰に対して書くのか?(例えば、授業担当の       教員、インターンシップ先の指導者、就職活        動先の人事担当者など)

   ⅱ)相手が求めているもの、期待しているもの        は何か

   ⅲ)条件は?(締切り日、文字数など)

 (f)テーマを決定する

   与えられた分野に関連する範囲で興味のある    ことを取り上げる。テーマを検討するには、ブ    レーンストーミングやコンセプトマップなど    の手法が有効であるとして、事例をあげて分か

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   りやすく説明している。

 (g)問題を設定する

   5W1Hをもとにして、問いを疑問文の形で書    いてみる。

 (h)情報を収集する(1)

   問題を設定したら、自分なりの答えへと導く    (論証する)ための根拠となる情報を収集する。

 (i)情報を収集する(2)

   ⅰ)講義ノートを読み直す    ⅱ)教科書、参考書を読む    ⅲ)インターネットを検索する    ⅳ)図書館を活用する

 (j)問題設定の見直しをする

   情報が足りない、情報が多すぎる、情報の誤り    に気がついたなど、自分の問題設定の修正や変    更を迫られる時には、そのまま強引に進めない    で、設定した問を検討し、柔軟に対処する。

 (k)レポートの構成を練る

   集めた情報をもとにしてアウトラインを作成    する。

 (l)下書き

   自分の主張を支持するための材料(文献・デー    タなど)を利用しながら、理論を組み立てる。下    書きが出来たら、書いたものを次の点で確認す    る。必要ならば修正する。

   ⅰ)理論に無理はないか?

   ⅱ)説明が足りないところはないか?

   ⅲ)書き忘れていることはないか?

   ⅳ)分かりにくいところはないか?

   ⅴ)アウトラインを再構成する必要はないか?

 (m)仕上げ

   ⅰ)参考文献リストをつける(文献やデータの       出所を明示するための引用・参考文献リス       ト)

   ⅱ)校正する(誤字・脱字、ワープロの変換ミス       など)

   ⅲ)タイトルの確認(内容を的確に表している       か。読み手に興味を湧かせるようなタイト       ルであるとなおよい)

   ⅳ)標題紙作成(見栄えのよい標題紙を付ける。

      学籍番号、所属学部学科、学年、氏名、レポー       トのタイトルなど、書き忘れがないか確認       する)

 (ⅴ)提出

 これをよく読めば、レポートを大学生らしく書ける ようになるための一歩を踏み出すことが可能であろ う。しかし、読んだだけでは十分ではなく、これを学生 が教材として効果的に活用できるように、教員が指導 することが重要である。このサイトはeラーニングの モデルの一つとしても紹介されているが、遠隔地教育 のためには、演習問題としてのクイズは問題数が不足 しており、内容も多様性が欠けているなど、これから 時間をかけて充実させていくことが望まれる。

⑵実践女子大学図書館編、伊藤民雄著『インターネッ トで文献検索 2004年版』(日本図書館協会発行、2004 年)2)

 情報活用教育を行う場合、インターネットをその中 心的な教材あるいは情報源として考えることが重要 である。そこで、実践女子大図書館編集の本書を事例 として取り上げることにした。本書の目的は「学術上 の調査・研究、情報検索に役立つサイトとデータベー スを紹介するガイドとしての役割」である。その収録 内容は、「図書館が主に扱う資料である図書、雑誌、新 聞、視聴覚資料、及び、それらの中身(記事・論文)に関 して、研究・調査・情報検索に有効と思われるサイトと データベースであること。つぎに『情報検索に関して は無料』であることを収録の大原則とする。」としてい る。そして、本書の大きな特徴は、従来から発行されて いる冊子体(図書などの印刷物)との関連に可能な限 り言及していることである。

 構成は全体がつぎのように6章からなり、各章のは じめに概説がついていて、初心者の学生でも、よく読 めば各章の構成が理解しやすいように編集されてい る点は、高く評価することができる。

 ①第1章 探索補助ツール(図書館でいえば、参考図        書コーナーに相当するもの)

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 ②第2章 図書の探索(言語別の図書探索に有効な        サイトとデータベースを列挙。蔵書目録、

       出版目録、販売目録など収録)

 ③第3章 新聞・雑誌の探索(言語別に新聞と雑誌を        探すためのサイトやデータベースを扱        う。記事・論文は第4章へ)

 ④第4章 新聞・雑誌記事・論文検索(新聞の中味で        ある記事を対象としたデータベース、雑        誌記事・論文検索データベースを国別あ        るいは言語別に扱う。電子ジャーナルの         うち無料のものを中心にその一部も掲載)

 ⑤第5章 主題情報源(これらは商用データベース         が大半であるため、有料のものが多いが、

        無料あるいは一部無料もある。企業情報、

        議会資料、判例検索、法令情報、統計情報、

        海外美術書検索などを収録)

 ⑥第6章 音楽と映像、視聴覚資料(音楽では歌詞検         索、楽譜検索、音楽データベース、映像で         は映画データベース、音楽・映像ソフト販         売目録などを収録)

 本書は、実践女子大学図書館のウェブページで公開さ れているインターネット利用ガイドを、冊子体として出 版したものである。したがって、現場の経験と知恵すな わち「暗黙智」とも言えるノウハウが随所に詰まってい る。読むほどに、利用するほどに、その奥深さが分かるの である。その中心が「はじめに」の部分である。このペー ジを読むだけでも、最近の図書館とインターネットの相 互関係と、図書館サービスがいかにインターネットに大 きな影響を受けているかがよく分かる。

 さらに本書は、当初の出版意図とは異なり、司書講 習会や図書館研修会の補助教材として、教科書的な利 用実績があったことを踏まえて、数回目の改訂版であ る本版では、教科書あるいは教材としての需要に応え るものとなっている。例えば、見開きあるいは1ページ で一つの教材項目として利用できるように編集され ていることは、その実践事例である。 

(3)東北大学附属図書館編『東北大学生のための情報 探索の基礎知識 基本編 2004』(東北大学附属図書

館発行、2004年)

 これは、東北大学附属図書館が編集、発行したガイ ドで、「学生がレポートや論文を作成する時に必要な、

文献や情報を調べるための基礎的な知識と技能を習 得する」ために作られたものである3)。特に本書では、

「大学入学以前に使いこなすことのなかった電子ツー ルの具体的利用法を中心に、情報探索の方法を説明」

している。その内容はつぎのようになっている。

 ①第1章 大学と情報と図書館(大学における図書          館の重要性とその役割を具体的に説明)

 ②第2章  情報探索の基礎(情報探索とは。資料の種        類、情報探索法、文献情報の読み方、検索        上のテクニック、文献の利用と著作権)

 ③第3章 図書・雑誌の探し方(入手までの基本的な        手順、蔵書を調べる、テーマについて調べ        る、和漢古典籍資料を調べる、出版情報を        調べる)

 ④第4章 雑誌論文の探し方(雑誌論文とは、探す手        順、論文探索ツール、電子ジャーナル、相        互利用サービス)

 ⑤第5章 新聞記事の探し方(新聞資料の特徴、入手        までの概要、記事検索ツール、所蔵検索、

       新聞の出版情報)

 ⑥第6章 より専門的な資料を探すために(専門資        料とは、博士学位論文を探す、テクニカル        レポートを探す、会議録・特許資料・政府        関係資料・国際機関資料を探す)

 ⑦第7章 事柄について調べるには(事柄について、

       百科事典、人名事典、地名事典、専門事典、

       統計、サーチエンジン)

 ⑧付  録 (論文・レポートの書き方の参考文献、分       類体系表、略語表、キャンパスマップ、

        フロアマップ、利用案内、演習解説)

 なお、各章ごとの演習問題が第3章から第7章までの 末尾についていて、各自の理解度を、演習により確実 に高めることがきるようになっている。また、巻末に 解答例と解説が掲載されている。これは教材として重 要な部分である。

 本書は、「あとがき」によれば、初めて東北大学に入

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学した学生を想定した内容とすることを基本方針と して執筆された。2003年版の改訂版として発行された 2004年版では、東北大学の全学教育科目である「大学 生のための情報検索術」のための教科書・参考書とし ての役割を担うことも目指して、「読む」だけでなく、

演習問題などを解くことにより、「使う」「身につける」

ことができる本にしたのが大きな特色である。付録も 大変充実している。

 特に、第1章「大学と情報と図書館」では、大学に入っ たばかりの学生にも分かりやすいように、「大学図書 館の役割」「インターネットの位置付け」「大学図書館 の収集資料」「大学図書館の設備・利用」を項目ごとに 解説し、さらに、東北大学附属図書館に関しては、具体 的にその構成・所蔵資料ならびにサービス内容を記述 し、ウェブサービスの説明もしている。学生向けの説 明会・講習会、個別の支援サービスの存在も分かりや すく書かれているのは親切である。

4.情報問題解決プロセスあるいは情報行動    パターンという考え方 

4.1 クールトーの情報探索プロセスモデル

  学校において、生徒が教師に宿題を与えられてか ら、レポートを書くまでのプロセスについては、多く の研究が行われ、そのプロセスを段階的にとらえた複 数のモデルが提示されている。以下に紹介するものは そ の う ち の 一 つ で 、情 報 学 者 ク ー ル ト ー ( C . C .   Kuhlthau)が提示した情報探索プロセス(情報問題解 決プロセス)モデルである。4)5)6)

(1)第一段階 課題開始(initiating a research          assignment)

         課題を生徒に与える。

(2)第二段階 主題選択(selecting a topic)

         課題の主題を自分に合わせて選択する。

(3)第三段階 漠然とした情報探し(exploring            information)

         選択した主題に関する一般的な情報            を収集することにより、主題への理解          を深める。

(4)第四段階 フォーカス形成(formulating a focus)          主題の焦点が定まり、主題構造が明確           に形成される。

(5)第五段階 情報収集(collecting information)          主題の焦点に直接関連した情報を収           集する。

(6)第六段階 情報探し終了・レポート執筆準備               (preparing to present)

         情報探しを完了し、収集した情報を         使って発表(レポート執筆)の準備を         する。

(7)第七段階 プロセスの評価(assessing the          process)

        プロセスを評価し、総括を行う。 

4.2 アイゼンバーグのビッグ6モデル

 クールトーと同じように宿題のレポートを書くと いう情報探索プロセスを対象にし、さらにレポート執 筆までを加えたのが情報学者アイゼンバーグ(M.B. 

Eisenberg)らの研究である。これは情報問題解決プロ セス全体をとらえたもので、「ビッグ6モデル」と呼ば れているように全体が6段階で構成されている7 )。 これを以下に紹介する。しかし、三輪眞木子が述べてい るように、「実際の情報問題解決プロセスは、必ずしも これらの段階を順序立てて進むとは限らない。むしろ、

各段階を行きつ戻りつするフィードバック・プロセス を伴って、徐々に目的に近づいていくのである8)。」

(1)第一段階  課題の設定(task definition)

        解決すべき問題を明確にし、そのため         の情報ニーズを認識する。

(2)第二段階 情報探索の戦略(information seeking          strategies)

        使える情報源の範囲を決定し、問題解         決に適した情報を選択する。

(3)第三段階 所在とアクセス(location and access)         情報源の所在を確かめ、情報源から適         切な情報を見つけ出す。

(4)第四段階 情報の利用(use of information)         情報源の中の情報を読んだり、聞いた

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       り、見たり、触ったりし、情報を抽出・

        獲得する。

(5)第五段階 情報の統合(synthesis)

        多様な情報源からの情報をまとめて、

        組み立て(組織化し)、提示(新しい情         報として提供)する。

(6)第六段階 評価(evaluation)

        成果を評価し、さらに情報問題解決プ         ロセスを評価する。

4.3 エリスによる情報行動パターン類型

 研究者を対象にして、研究や教育に関する情報を探 す際に、彼らがとる情報行動パターンをまとめ、それ らを分類した結果、以下の8種類があることを見つけ たのは、英国の情報学者エリス(D. Ellis)である9)。な お、これらの情報行動は、企業のエンジニア、科学者、

管理職も形を変えて使っていることが、エリスの後の 調査で明らかになっている。

(1)探索開始(starting)

  情報探しに着手する時のさまざまな行動。

(2)連鎖探索(chaining)

  既に入手した情報を手がかりにして、他の関連情   報源を探す。関連文献、専門家などがある。

(3)情報源の選別(differentiating)

  情報源の性格に基づいて、情報源を選別する。雑   誌論文だけ、書評に挙げられた図書だけ、専門家   紹介の情報源だけなど。

(4)ブラウジング(browsing)

  はっきりとした方向性を持たない、漠然とした情   報探し。インターネットサーフィン、図書館や書   店の棚でのブラウジング。

(5)情報監視(monitoring)

  特定のテーマを設定し、そのテーマについての最   新情報を収集する。データベースのSDIサービ   ス、知人への依頼、専門家への監視依頼など。

(6)情報抽出(extracting)

  特定テーマに関する情報源から有用な情報を抽   出する。記事を読みながらマーカーで印をつけた   り、メモをとったり、インターネットで関連分野

  のウェブページを読みながら、重要な部分をコ   ピー・アンド・ペーストしたりする。

(7)妥当性の検証(verifying)

  情報の正確さや適切さを確認する。複数の情報源   から得た情報を照合して確認したり、あるいは獲   得情報が相互に矛盾したりする時は、専門家や知   人に相談するなど。

(8)探索終了(ending)

  情報探しの終了。情報源からこれ以上の新しい情   報が得られなくなったら、情報探しを終了する。

5.情報リテラシー教育の7段階と図書館利用    教育ガイドラインの5領域

5.1 米国の学校図書館メディアプログラムの7段階  アメリカ図書館協会(ALA)の学校図書館部会がま とめた「学校図書館メディア・プログラム」は、情報ス キル育成のためのものであるが、つぎのように7段階 から構成されている10)。  

(1)情報ニーズの識別

  情報ニーズがどのようなものかを識別し、その   ニーズを定義する。解決すべき問題を明確に述べ   る。

(2)探索戦略の構築

  情報を探索するための段取りを計画する。情報を   整理するためのツールを使ってアイディアを表   現する。

(3)情報源の探索

  多様な情報源から情報を探し出し、それぞれの情   報源の中で見つけた特定の情報にアクセスする   のが重要であることを知る。

(4)情報の評価と理解

  有効な情報を見つけたら、評価・分析・選択のプロ   セスを経て、情報の有用性を判断する。

(5)情報の解釈

  情報を自分のものとして取り込んだ後に、問題を   解決するためにその情報を活用し、結論を導く。

(6)情報の伝達

  問題解決に取り組んだ成果を整理し、他の人に伝

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  え、情報の共有化をはかる。

(7)成果物とプロセスの評価

  最終成果物が問題をどの程度まで解決できたか、

  望ましい成果に至るステップが適切で能率的で   あったかを判定する。学習者は自分で評価する   か、他の人々に評価してもらう。

5.2 日本図書館協会の図書館利用教育ガイドライン      の目標「5領域」

 情報活用教育において、図書館をその実践場所とす ることが多い。そこで、図書館利用教育を情報活用教 育の現場として取り上げ、その事例として、日本図書 館協会図書館利用教育委員会が編集したガイドライ ンの示した「利用者のニーズと情報利用能力の到達度 に合わせて設定した5つの領域」を紹介する11)

(1)印象づけ

  各自の情報ニーズを充たす社会的機関として図   書館の存在を印象づけ、必要な時には利用しよう   という意識を持たせる。

(2)サービス案内

  各自の利用する図書館の施設・設備・サービスお   よび専門的職員による支援の存在を紹介し、そこ   を容易に利用できるようにする。

(3)情報探索法指導

  情報の特性を理解すると同時に、各種情報源の探   し方と使い方を知り、主体的な情報探索ができる   ようにする。

(4)情報整理法指導

  メディアの特性に応じた情報の抽出、加工、整理、

  および保存ができるようにする。

(5)情報表現法指導

  情報表現に用いる各種メディアの特性と使用法   を知り、目的に合った情報の生産と伝達ができる   ようにする。守らなければならない情報倫理を理   解し、習得する。

6.問題意識・問題発見・課題創造の重要性と    ユーレカ

6.1 フィンランドの教育メソッドが目指す5つの力  フィンランドの教育メソッドは、以下の5つの力を 段階的に養成することにより、グローバル・コミュニ ケーション力を習得することを目指しており、フィン ランドの国語教科書は、これを身につけることができ るように構成されている12)。    

(1)発想力

  「いいたいこと」を思いつくように訓練する。それ   が発想力である。

(2)理論力

  「いいたいこと」に筋が通っていなければ、どこの   誰にも通じない。話の筋を通すために必要なのが   理論力である。

(3)表現力

  「いいかた」が悪ければその内容は伝わらない。表   現力を磨いて相手に伝わる言葉を見つける。

(4)批判的思考力

  相手の言い分にも一理ある。自分の言い分にも問   題がある。それを認めるところから、コミュニ   ケーションは始まる。

(5)コミュニケーション力

  発想力、倫理力、表現力、批判的思考力、これらす   べてを駆使して、困難な状況においても意思疎通   を図ることができる能力を磨く。  

6.2 効率的な学習のために必要なルール

 効率的な勉強のために、まず何が必要か。『シカゴ大 学テキスト:大学で勉強する方法』では、最初に重要な 要件は、「やる気」であるという。そのためには、第一に 明確な希望と理念を持つこと。第二にいま取り組んで いる学習内容に興味を持つこと。そこで、以下の5つ のルールにより、その教科を勉強したいという気持ち を高めることができると述べている13)

(1)学んでいる教科についての様々な情報を集める

(2)新しい情報と既知の情報を結びつける

(3)新しい情報を自分のものにする

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(4)新しい知識を実地に活用する

(5)自分のものとして集めた資料は他の授業でも活   用する

6.3 アイディア誕生の過程

 アメリカの広告業界で50年近くわたって読まれてき たバイブル的小冊子『アイディアのつくり方』は、アイ ディア誕生に大切なことは原理と技術であるという。原 理の第一は「アイディアは一つの新しい組み合わせであ る」。第二は「新しい組み合わせを作り出す才能は事物の 関連性を見つけだす才能によって高められる」14)。この 二つの原理に基づき、下記の5つの段階を経過して技 術がはたらくという事実を把握することが大切であ る。ここにも資料や情報の重要性が含まれている。

(1)資料集め̶当面の課題のための資料と一般的知   識の蓄積を豊富にすることから生まれる資料̶

(2)心の中でこれらの資料に手を加える

(3)孵化段階。意識外で自然に組み合わせの仕事が行   われるのにまかせる

(4)アイディアの事実上の誕生。ユーレカ!分かっ   た!見つけた!という段階

(5)現実の有用性に合致させるために最終的にアイ   ディアを具体化し、展開させる段階

7.インデックス情報の重要性̶外岡秀俊著   『情報のさばき方』 (朝日新書、2006年)によ   る情報力を高めるための基本原則̶

 氾濫する情報をいかに処理するか。新聞記者として の著者は情報力の要点を下記の5つの基本原則として まとめている15)

(1)情報力の基本はインデックス情報である

  「情報に関する情報」がインデックス情報である。

  不要な情報は捨て去り、自分にとって必要な情報   がどこにあり、誰に聞けばいいのかだけを管理   し、記憶する方法である。情報は「物のかたち」で   保管するのではなく、「インデックス情報」として   記憶する。

(2)自分の位置情報を確認すること

  自分が立っている「いま、ここ」という位置に関す   る情報を位置情報という。

(3)膨大な情報を管理するコツは、情報管理の方法を   できるだけ簡単にすること

  物としての情報を捨て、重要なことは記憶だけに   頼る。これが最も簡単な管理法である。現物や原   情報はデータベースなどから取り出せばよい。 

(4)情報は現場や現物にあたり、判断に際しては常に   現場におろして考える

  情報を確認するのは現場や現物であり、そこにい   る「人」であることを常に念頭におく。

(5)情報発信者の意図やメディアのからくりを知り、

  偏りを取り除く

  情報分析にあたっては、為政者の情報操作、流行   発信者の世論操作に惑わされずに、独自の視点で   ものごとを観察する。それぞれのメディアの特性   や癖を知ることが必要である。

8.まとめ̶情報活用教育(情報リテラシー教    育)の理想を求めて̶

 情報活用教育を行うのは、大学・学校や図書館など の教育・学習機関や社会教育施設である。しかも最近 ではコンピュータネットワークの普及により、在宅で も勤務先でも、いわゆるeラーニングのお蔭で、どこ にいても教育がうけられるようになった。本稿でもそ の一部を紹介している。このような情報環境にあって は、情報活用教育における重要なポイントを、きちん と学んでゆけば、これを身につけることは、それほど 難しいことではない。以下にその要点を述べて、まと めとしたい。

(1)最初に大切なことは、できるだけ多くのさまざま   な情報源に接し、ここから必要な情報を収集する   訓練を絶えず積んでゆくことである。

(2)情報源の中で最も重要なのは、文字情報である。

  文献情報はその代表であり、本を読むことから、

  その訓練は始まる。年少時から本をできるだけ多   く読むような環境と時間を設けて、その機会を増   やすことが重要である。

(10)

(3)情報を集める明確な目的の存在が大切である。目   的のない情報収集は意味がない。日ごろから問題   意識を持ち、その課題に関する情報を集めること   は、良い経験になる。

(4)情報探索プロセスモデルや情報伝達サイクルモ   デルなどは、情報が循環するという考え方を表し   ている。この考え方は情報活用教育を進めるため   に重要であり、基本となるものである。

(5)情報活用の最終課題は創造であり、新しい情報の   誕生であるが、これは情報循環につながるもので   ある。アイディアは情報の循環の過程で生まれる   ものである。

(6)情報の消費は生産のために行われるのであり、大   量の情報消費は大量の情報発信へと続く。消費の   大きい情報は、有効な情報であり、これがユニー   クな情報創造へと循環する。

(7)最も重要な情報の一つがインデックス情報であ   る。情報を探すための情報で、図書館では二次情   報や三次情報という表現をすることもある。これ   らは文字情報が中心であり、情報は文字化するこ   とにより、抽象度が増し、インデックス情報に近   づくのである。

(8)情報活用教育では本を読むことから始まり、問題   意識を明確にし、多くの情報源に接し、必要な情   報を集め、組織化し、これを上手に活用して、さら   に創造へと結びつけるという過程(プロセス)が   重要である。この過程を多く経験することによ   り、情報問題解決プロセスを短縮することが可能   になる。このプロセスが短ければ短いほど、理想   的な情報探索モデルが誕生する。これが情報活用教   育の成果である。

(9)情報活用教育の三大要素を挙げると、つぎのよう   になる。①有効な教材の開発。②これを支援する   指導者や教育者の養成。③情報活用教育が生涯学   習の基本であるという認識に立った教育方策と   施設。

(10)図書館の大切な役割が情報活用教育の実践であ   ることを、図書館で働く人たち、あるいは利用者   も含めて図書館に関係する人たち全員が理解す

  ることが情報活用教育の基本である。

(11)最後に強調すべきことは、大学の情報活用教育に   おいては、情報探索プロセスあるいは情報問題解   決プロセスなどの「プロセス」の重要性である。情   報探索の最終目標は求める内容を発見したり、抽   出したりすることであるが、教育においては「プ   ロセス」を楽しみ、もっと大切にする必要がある。

  本稿で、いくつかの「情報探索モデル」あるいは   「情報行動パターン」を紹介したのはそのためで   ある。江戸時代の日本における典型的な旅であっ   た「お伊勢参り」でも、その「道中」が最も大切な部   分であったことを思い返して欲しい。

<参考文献ならびに注>

1)http://www.hc.lib.keio.ac.jp/kitie/ (2006年11月   26日アクセス)

2)実践女子大学図書館編、伊藤民雄著.インターネッ   トで文献検索 2004年版.日本図書館協会,2004,

  174p.

3)東北大学附属図書館編.東北大学生のための情報   探索の基礎知識:基本編 2004.東北大学附属図書   館,2004,207p.

4)三輪眞木子.情報検索のスキル:未知の問題をどう   解くか(中公新書).中央公論新社,2003,p.54-58.

5)Kuhlthau, Carol Collier. Seeking meaning: A   process approach to library and information

services, second edition.   Libraries Unlimited,       2004. p.45. 

6)Kuhlthau, Carol Collier. Teaching the library research process, second edition. Scarecrow     Press, 1994.  190p.

7)生涯学習時代における学校図書館パワー:渡辺信    一先生古希記念論文集.渡辺信一先生古希記念論    文集刊行会発行,日本図書館協会発売,2005,

   p.193-194.

8)三輪眞木子.前掲書.p. 59.

9)三輪眞木子.前掲書.p.168-171.

10)三輪眞木子.前掲書.p.182-190. なお、この部分の   引用文献となっているALA(米国図書館協会)の

(11)

  ウェブサイトページは、著作権の関係で現在は削   除されている。

11)日本図書館協会図書館利用教育委員会編.図書館   利用教育ハンドブック:大学図書館版.日本図書館   協会,2003.p.2-3.

12)北川達夫訳・編.メルビル・パレ、マルック・トッリ   ネン、リトバ・コスキバー原著.フィンランド国語   教科書:小学校3年生(日本語翻訳版).経済界,

  2006.93p.

13)Kornhauser, Arthur W. 著、山口栄一訳.大学で勉   強する方法(シカゴ大学テキスト).玉川大学出版   部,1995.p.22-25.

14)Young, James Webb 著、今井茂雄訳.アイディア   のつくり方.ティービーエス・ブリタニカ,1988.

  p.32-55. (現在の発行所は、阪急コミュニケーショ   ンズである)

15)外岡秀俊.情報のさばき方:新聞記者の実戦ヒント   (朝日新書).朝日新聞社,2006.  245p.

Information literacy instruction: Cases and their 

future development.  By TODA Mitsuaki 

Referensi

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目 次 1 はじめに (1)新たな段階を迎える日本語教育小委員会………1 (2)日本語教育をめぐる状況の変化への対応………2 (3)今回の検討と結果の報告………3 2 日本語教育の推進に当たっての基本的な考え方について (1)日本語教育を推進する意義について………3 (2)日本語教育に関する国と自治体との役割分担について………4