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核軍縮に新たな光-求められる総合的戦略

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Academic year: 2023

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時事通信社「Janet」「週刊 e-World」10月8日号 巻頭言

核軍縮に新たな光-求められる総合的戦略

佐藤行雄

2010年に開かれる核拡散防止条約(NPT)の運用検討会議を前に、核軍縮に新たな光が当たり始 めている。

ヘンリー・キッシンジャー、ジョージ・シュルツ、ウィリアム・ペリー、サム・ナンという、米国の共和、民主 両党を代表する戦略家たちが、昨年と今年の1月に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に連名で寄稿 した意見に触発されて、核兵器のない世界を目指して、核保有国も含めて新たな努力を行うべし、とい う意見が国際的に広まりつつある。

ケヴィン・ラッド豪首相が福田康夫首相(当時)に提案し、麻生太郎首相とラッド豪首相の会談(9月25 日)の後に発表された「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」もこの流れに沿ったもので、豪州のエ ヴァンス、日本の川口順子両元外相を共同議長とする委員会には、米国のペリー元国防長官をはじめ として、15カ国から錚々(そうそう)たる人物が参加している。キッシンジャー、シュルツ、ナンの3人も、こ の委員会に助言する諮問委員会に参加している。

日本国際問題研究所もこの委員会に協力する7研究機関の一つとなった。

この委員会とは別に、一層の核軍縮に向けて国際世論を喚起するために、10年に大規模な国際会 議を開く計画が、米国の外交・安全保障の専門家たちを中心に進められている。

9月にジュネーブで開かれた国際戦略問題研究所(IISS、在ロンドン)の年次総会でも、核兵器の全 廃を実現するために克服すべき様々な問題についての研究論文が発表され、活発な議論が行われ た。

東西冷戦下、核戦略についての市民の理解を深めることを目的に発足したIISSが、創設50周年の 年に核廃絶への道を探る議論を始めたこと自体、核軍縮論議の新しい展開を予感させた。

もちろん、核兵器のない世界の実現は理想であって、仮に達成できるとしても遠い将来のことと考えて おかなくてはならない。それにもかかわらず、核廃絶を目標に揚げる運動が米国の中から起きて来た背 景には、インド、パキスタンに続いて、北朝鮮、イランと核保有国が増える可能性が高まり、また、テロリ ストが核兵器を入手する危険も懸念される状況に対する強い危機感があるからであろう。

そもそも原子力エネルギーの取り扱いについては、核兵器の拡散防止と核軍縮、そして、地球温暖 化対策に役立つ原子力発電の安全性の向上を、並行的に進めて行く必要がある。

また、その過程における安全保障の確保が不可欠で、日本の場合、米国の核抑止力の信頼性の一 層の向上、核抑止を補完する手段としてのミサイル防衛を始めとする自衛力の強化と米国との防衛協

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力の深化が重要である。

その上で、日本としても、米国を発信地とする新しい動きに積極的に参加していくことが大事である。

核不拡散の分野では、この新しい動きを北朝鮮の核廃棄につなげていく外交努力が必要だし、大量 破壊兵器やミサイルの拡散を阻止するための国際協力の強化も重要である。また、核軍縮の分野では、

中国やロシアの核兵器の持つ潜在的な脅威を減らしていくことが、日本の立場からみた優先課題であ る。

さらに、日本としては、核軍縮の前提となる国家間の相互信頼関係の深化から、有効な査察の仕組み や検証技術の開発までの幅広い分野で積極的に貢献していかなくてはならない。

とくに、自らの財政支出で、模範的な形で査察を受けることを通じて国際原子力機関(IAEA)の査 察・検証技術の進歩にも貢献して来た日本は、核不拡散、核軍縮の査察・検証でも相応の責任と役割 を果たして当然である。

なお、このことは別に、IAEAの次期事務局長に天野之弥大使が選出されれば、日本にとっても喜ば しいことである。

最後に、原子力の平和利用と、そのために必要な原子力施設の安全性の向上で日本の知識と経験 が果たし得る役割が大きいことは言うまでもない。

このようなことを考慮して、核兵器のない世界の実現に貢献するための総合的な戦略を持つこと、そし て、そのために、関係省庁を網羅した一元的な体制を作ることを考えるべき時が来ていると思う。

佐藤行雄(さとう・ゆきお)

(財)日本国際問題研究所理事長。

1961年、外務省入省。大蔵省主計局主査(科学技術・文化担当)、安全保障課長、外務大臣秘書官、

国際戦略問題研究所(IISS、ロンドン)研究員、在英大使館参事官、宮崎県警察本部長、官房総務課 長、在香港総領事、情報調査局長、北米局長、駐オランダ大使、駐オーストラリア大使、国際連合日本 政府常駐代表(大使)等を歴任。2003年より現職。

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