rl本 管理 会討 学 会 誌 管 埋 会副』弓潮2000
町r SHXi 8巻身写1・2 合一「ji写.
論 文
業 績 測 定 評 価 と 報 酬 シ
ステ
ムー 日
本企業
にお け る成 果主 義
へ の動
きにつ い て の 一考察
一横
田絵 理
*〈 論文 要 旨〉
本 論 文の 目的は, 日本企業における成果主 義へ の報 酬シ ス テ ムへ の変 化と業 績測定 ・ 評 価 尺 度の変 更が,そのマ ネ ジメ ン ト・コ ン トロ ール に対 し,どの ような意 味 を持つ か
につ い て考 察す る こ と にある . 成 果主義へ の動きは ,
一一見
, 日本企業の マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ール が あ た か も米 国
テキ ス トに示 さ れてい る仕組 みへ の 変化 を 意 味 してい る ように見える .し か し,米国マ ネジ メ ン ト ・コ ン トロ ール の プロ セス の 本 質は,株 主 利 益 最 大 化 を実 現 させ る ため の し
くみであるの に 対して ,日本企業の マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ールは,変 更 後も,株主利 益最 大 化 を 徹 底 させ る ため の もの と は必 ず しもい えない .む し ろ,社 員 全 体の意識 変革
のた めの施 策 と してな さ れてい る.
ま た,マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ール ・プロ セス の うち,業 績 測定 ・評価 尺度の変 更を 報酬制度の変更 と同時に行なうこ とで, 業 績測定 ・評価 尺度の変更 も, マ ネジャーの 意 思 決 定 情 報の変 更とい うよ りもむ しろ,企 業と してマ ネ ジャーに求めてい る行 動 が 変 化
して い るこ と,そ して ジ 企業全体がマ ネ ジャーに
期 待 して い る成 果 も変 化 してい るこ と を明確に表わすこ と に な る.
事 例に取 り 上げた3 企業で はい ずれ も報 酬 シ ス テ ム を変 更し た とほ ぼ 同時に, 業 績測 定尺度の 変更 を行なっ てい た.事例 企業で は,直面 してい る不況 や ビジ ネス モ デ ル の 変 更 とい う事 情 か ら,成 果 主 義に もと つい た 報 酬 シス テ ム をと りい れた.同時に,さま ざ
ま な 理 由か ら業 績 測 定 評 価 尺 度が導入 さ れ た.マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ール の
2
分 割 構 造を な し てい た2 つ の シス テム を リ ン ク さ せ た こと に よっ て,日本企業はマ ネ ジャ ーや 社 員に対 する企 業 と して の期 待 行 動が大 き く変 わっ てい るこ とを 示 し,意 識 変革を促 したの で あっ た.
〈 キ ーワ ー ド〉
日本企業のマ ネ ジメ ン ト・コ ン トロ ール
, 2分 割 構 造, 成果 主義, 新 業 績測定尺度, 意識 変 革
1999年 12 ♪亅 受 付 2000 年 1 月 受1里
* 武 蔵 た 学 経 済 学 部 助 教 授
管 理 会E[学 第8巻 第 1・2 含 併 咢’
1
. は じめ に問 題 意識
報 酬シ ステ ム は, 業 績 測 定 ・評 価 と共 に
, マ ネジ メ ン ト・コ ン トロ ール ・プ ロ セ ス の重 要 な シス テム の一つ である.
1990
年代 後半, 日本企業の報 酬シス テ ムが 大 き く変わ ろ うとし て い る. かつ て ,日本企 業の 報 酬シ ステ ム にお い て ,管理会 計上 の業績 測定 ・評 価 結果 と報 酬の増 減は , 直接 関係づ け されてい ない 場 合 が多かっ た.報酬 シ ステ ム が, ロ 本 的 経 営 の 特徴 であ っ た 長 期 雇 用 を前 提 と し た年功賃金 制 を中 心 に成 り 立っ てい た た め で ある .
し か し,こ こ数年 ,に わ か に年功 賃金 制 は廃止 さ れ は じめ ,代 わっ て成 果 主 義 を唱 え た 制度 改 革 が多くの 企業で 行わ れて い る .
一方, 管理会 計に お い て も,キ ャ ッ シュ ・フ ロ ー ・ベ ース の会計が 脚 光を浴び,あた ら しい
業績 測定 ・評価 尺度を導入 してい る企 業 が 出て きて い る.
で は, 日本企業の 成果主義へ の 変 化は, マ ネ ジメン ト ・コ ン トロ ール に と
っ て どの よ う な 意 味 を もっ て い るの だろ う か.ま た, ほ ぼ 同 時 に行 な わ れて い る業 績 測 定 ・評 価 尺 度の変 更 は こ
れ らと どうつ なが るの だろ うか .本 論文で は, こ の問 題意識 を解 くた め, まず, 成果 主義的 な 報酬シ ス テ ム を もつ とい われ る米 国の報 酬シ ス テム の 特徴 と ね らい を文献か ら探っ た.次 に,
日 本 企 業の 成 果 主 義の動 きとその 意味 に つ い て , マ ネジ メ ン ト・コ ン トロ ール の枠 組み か ら考 察を試み た. また,先 進 的に成 果 主義 と新 しい 業績 測 定 尺 度 を導入 した 日 本 企 業の 3 事例を使
っ て, この考 え方 を具 体 的に説 明 し 検 討 した .本 報 告 で の 事例 は
3
社に過 ぎず ,一般 論 にする
に はま だ時間が か か る であろ うが , 日本企 業の 成果 主義へ の動 きがマ ネジ メ ン ト ・コ ン トロ ー
ル に与える本質 的な影響やその意味の 変化につ い て の現 時 点にお ける 一考 察と し たい .
2
.米国
の報 酬
システム :マネ
ジメ ント・コ ン トロールに お ける位置
づ けと変 化
米 国の管理会 計シス テム の テ キ ス トの 中で も,報 酬シ ステ ム は重要な
1
つ の プロ セ ス である と され てい る (Bruns
&McKinnon
(1992
),An
七hony
&Govindarajan
(1998
)).そ れ は, 組 織 目 的を達 成 す るこ と に対 し,マ ネジ ャ ーを動 機づ けるの に大 変 重 要 な メカ ニ ズ ム と して の 役 割 を もっ てい る (
Anthony
&Govindarajan
(1998 )).マ ネジ メン ト ・コ ン トロ ール の テ キス ト に よ れ ば , マ ネジ ャ ーの 幸鬮 珪の うち, 金銭的 報 酬 と
しては,サ ラ リー,ベ ネフ ィ ッ ト そ し て イ ン セ ンテ ィブ が ある (
Merchant
(1997
>,Anthony
他 (
1998
)(注1)). うち, イ ン セ ン テ ィブ (ボーナス を 含 む)は, マ ネジ メ ン ト・コ ン トロ ール と 強 く関連してい る (Anthony
&Govindarajan
(1998
)).短 期業 績をベ ース に し た短期イ ン センテ ィブ や, 長期の 視 点 (例 えば株価 など)に対応 した長 期 インセ ン テ ィ ブ に よっ て , 企 業の長 期 戦略 目標 と短期 目標へ とマ ネジ ャ ーを動機づ ける もの が イ ン セ ン テ ィ ブ である. 長期イ ンセ
ン テ ィ ブには さ まざま な 種 類 が あ る が , 代 表的 な もの として は,ス トッ ク ・オ プシ ョ ン な ど が ある (Merchant (1997 )).
Merchant に よ れ ば, 多 くの 企 業で は, 報 酬と 成 果が 線形で定 義さ れ る とい う.た だ し, 報 酬は, 受取る側に と っ て 価値がある こ と, イ ンパ ク トが ある こ と, 理解さ れるべ き もので ある
こ と,そ し て タ イム リーであ る こ とが重 要で ある とさ れ てい る .そ して 金銭的報酬 が こ れ をす
べ て満たす こ と は困 難で ある と も 述べ てい る (
Merchant
(1997
)〉. した が っ て,それ以外の ポジ テ ィブ, ネガテ ィブ な意味 合 い の非 金 銭 的 報 酬 も併 用 さ れ る. 守 息
1996
)に よ れ ば,米国の , 特 に ホ ワ イ ト カラ ー一管 理 職 に おい て, 給 与を個 人の成 果 とリ
業 績i則 定・丙師 と報 酬シ ス テ ム ー 日本企巣における 1貞 果主 義へ の 動 きにつ い て の 一考 察一
ン ク さ せ る傾 向は ,
1970
年 代か ら強ま り,1980 年 代に な っ て ます ます強 く なっ て きた .高 橋(
1999
)も 米 国 に お け る成 果 主義は ,1980
年代 に 入っ て か ら 現 れた とい う.1960 年代に普及した職 務等級制が 問 題 点 を抱 えた た め, それ を残 しつ つ も 成 果 指向性 を高め る 目 的で成 果 主 義 が あ ら わ れ た.企業の 利益 と個人の給 与 を リン ク させ る や りか たは ,
1980
年 代に入 り一般従 業 員 に も 適 用 さ れ る ように なっ た .1990
年代に入る と.等級の数 を 減 ら し た ブロ ー ドバ ン ド化や 職務 評価の 廃IL,また,給 与相 場が 重視さ れ た.人事部門が 縮小 さ れ, 人事ス タッ フが 中央 管理 す る人事制 度 は終焉 を迎 え, ラ イン 重 視へ と動 き 始め て い る (高橋(
1999
)).現在, 米 国の ホ ワ イ トカ ラー雇用 ,賃 金 制度は, 市 場価値 との 連動 を 強め る な ど変 革を続けて い る (守 島
(1996)).
米 国企業で は , 長 期 イ ン セ ン テ ィ ブ の割 合 を増や して い る とい う結果 も出て い る (高 橋 他
(
1997
)). 長 期イ ン セ ン テ ィブ の多くは , 株価 と 関連 し た もの で , 2 年か ら 10 年をターゲ ッ トに した もの が 多い .日 本で 最 近 注 目を集め て い る ス トッ ク ・オ プシ ョ ン の ほ かに, さ ま ざ ま な 種類の 長期インセ ン テ ィブ が ある (高橋 他(1997 )).
経 済理論や エ ージェ ンシ ー理論な どに よ る と,
CEO
あるい は上級マ ネ ジャーの 報 酬は ,企 業 業績 や 部 門 業 績 と強 く相 関 してい るは ずで あるが, 実証 的 に は その ような結 果は 明確 にはでて い ない とい う報 告もある (
Barkema
&Gomez
−Mejia
(1998
)).実 証研 究で は , 米国, あるい は英 国 に おい て,
CEO
,マ ネ ジ ャーの報酬 は,戦 略や企 業 の 規 模な ど別 要因 と関係が ある との 結 果 も 出てい る (
Murthy
(1977
),Merchant
(1989 ),Barkema
&Gomez
−Mejia
(1998
),Conyon
&Peck
(1998 ),Sanders
&Carpenter
(1998
),Finkelstein
&Boyd
(1998
)). し か し,一 方で は, プロ フ ィ ッ ト ・セ ン タ ー長や マ ネジ ャ ーの報酬は , 企業業 績や プ ロ フ ィッ ト・セ ン タ ーの 規模, 残 余 利益 な どに相 関して い る との 結果 も 出て い る (Fisher
&Govindarajan
(1992),
Wallace
(1996 )).以上 , 文献か ら探っ た 限 りで は, 一般に成果 主義の 代 表の よ うに い わ れ る米国に お い て も,
その動 きは
1980
年 代 以 降に特 徴 的 な 動 きであ る.また ,CEO
あるい はマ ネジ ャ ーの 報 酬レ ベル とい え ど も,必 ずし も責 任 部門の成果 だ けで報酬の すべ て が 決 まる とい い きれ る わけで は な
い
し か し ,マ ネ ジメ ン ト ・コ ン トロ ール の し くみ に関連の 深い 金銭 的報 酬 との 関係でい え ば, 成 果と短 期 インセ ン テ ィブ との 関 係 が ま す ま す 強 める傾 向 が ある こ と に加 え, 長 期 イ ン セ ン テ
ィブ に よっ て , 株 主利 益との 関 連 も強 く しよ うと して い る傾 向が ある こ とがわか る.短期的 に は企 業 目 標 と斉 合 す る 業 績 (例 え ば,
ROE
など)に リン ク し た イン セ ンテ ィ ブ を与え る と 共 に, もう一つ, 長 期 的 な視 点 を 「株 価 」 とい う 株 主 利 益 と 共 通 す る 尺 度 を 利 用 し な が ら, 長短 期 目標 をそ れ ぞ れ の イ ンセ ン テ ィ ブ で動 機づ けて い る とい うこ とで ある .長期 ,短期の 種類は ある もの の ,と もに明確 な数値 目標 設定 と測定 ,評 価を関係づ ける こ とに よる動機づ けの仕 組
み となっ て い る.
この 米 国の 仕組み を 図1 に示し た.米国に おける目 標 設定,計 画,評 価, 報 酬 とい う 流れ は,
株主利益の 最大 化とい う明確 な 目 標 と強 く関 連 付 け られ て い る. 株主 利益を最 大 化 する ことが
CEO
に求め ら れ,そ れ が下 位 の責任 者 の それ ぞ れの 目標と し て与えら れ る の で ある .長短期 目 標 とその 評 価, イ ンセ ンテ ィブの 関 係 はそれ ぞれ 明 確で ある.も ちろ ん , そ れ 以 外の 報酬 も ある が,こ の 目標 と 評価 ,イ ン セ ン テ ィブ の 関係づ けは 明確に示 さ れ て い る こ とが推測 され る.管理会 刮 学 第8巻 第1・2 含 併号
株主利益
企 業 目 標
部門 目標
丶
計 画 報 酬
譲 i 隆 論 タ ち
図
1
米国に お け るマ ネ ジメン ト・コ ン トロ ール プロ セ ス の 考 え方3
. 日本
企 業の 報 酬 シス テム の 変 化3
.1
成果主 義へ の 動 き日本企 業に お い て も, 近 年は, 「成果主 義」が ,今 後の 報酬 シ ス テ ム の 特徴を示すキーワ ード
と して使わ れ て い る(注2).こ こ で い う, 「成 果主剃 の 意味は, 人 的資 源管理 の研究 者に よ っ て
も, 必 ずし も明確に は なさ れて い ない ようで ある. 例え ば,守 島に よ る と,「『こ こ までの 成果 主義 』の 氾濫 に も か か わ らず , 成 果 主 義 とは何で あ るのか につ い て共 通 の理 解 が ある わ けで は ない .ま た 成 果 主 義 へ の 動きが, 人 的資源管理 におい て どの よ うな考 え方の転換 に基づ い てい
る の か も必ず しも十 分な理解が ある わけで はな い 」 とい う守島(1999 ,
P3
).とはい え, 成果主 義 とい う言葉 は, 従来型の 日本の勤続年数に応 じた 賃金制度 とは異なる考え方が ある こ と を示し てい る .本 論文で は, 成果 主義 とは, 年齢 , 勤 続 年 数に応 じて 賃金 を決定 す るの で はな く, 成果に基づ い て賃金 を決 定 し ようとす る動 き ととら えて い る.
成 果 主 義 に し た
1
つ の証 の ように導入 され る 仕 組み が年俸制で ある.1997
年10
月 時 点 で の 人事行政 研究所の 調査に よ る と,上 場企 業の 約30
% が 賃金体系を見 直し て お り, うち,18
% が年俸制 を導入 して い る (日本経済新 聞 1998 年4 月5 日付).また 、 富士総 合研究所が 1997 年 11 月時点で全 国全産 業の企業か ら従 業 員規模の大 きい 順 に
2000
社 を対象と して行 なっ た調査 に よ る と, 今 後の 人事管 理につ い て 「実 力 主 義 を 強 化 す る 」「報 酬 は成 果 で 決め る」「複 線 型 人 事 管理 を推 進 する」 「雇用形 態の 多様 化 を 図る 」 「昇 進昇 格の 決 定に当たっ て は ,入社 年次を考 慮 し ない 」とい う方向へ の 変化 を 企 業 は期待 して い る との 結 果 が 出てい る .同調査時 点 で , 年 俸 制を導入 し て い る 企業 は24% で あっ た. 新 しい 人事 制度の導入 は リス トラ の 進 行度との 関連 が深く, 最近5 年間で正 社 員 を削減 し た 企業 ほ ど年 俸制 ,社 内 公募制 等の制 度を導入 す る傾向 に ある とい う (富 士 総 合 研 究 所(1998
)).企 業の 年俸 制へ の 関 心の 高 さは , 日 経 連 , 経 済 同友 会があい つ い で ,それ につ い ての 調査 結果 を ま とめ てい る こ とで もわ か る(日経連職務 分析 セ ンター(
1997
), 経 済 同友会(1998
)).現 在, 日本企 業の 多くが 企業 ある い は個 人の 業 績 ・成 果 を賞与, あるい は給 与に リ ン ク さ せ
よ うと してい る.その変 化の 理由の 一つ とし て ,社 員の 高齢 化 ,不 況に よる 人件 費の肥 大化や ポス ト不 足 に対 処 す る ための コ ス ト削 減, とい う 意味合い が 強 調 さ れ が ちで あ る.
し か し, よ り積 極的 な 理由を挙げる な ら, 激変する企業 環境に対応する た め に は, 経 験 よ り
柴績 漣1定・ll「斬 と韻酬」シ ス テ ムー H 本 帝業におけ る 成 果t ;ftへ の 動 きにつ い て の 考 察一
も 創 造 性が よ り重 要に な り, 柔 軟 性 を もっ た 人 材が 力 を 発揮 し て くれ るこ とが 必 要に なっ て き た こと もあげ ら れ よう,つ まり 「成果 主義」へ の移行の 理 由として 「個の 自律 」が あげ られる .
問 題 を 自分 で発 見 し,能 力 を 発 揮 して 成果を だ して も ら う た め に,成 果 主 義 にする とい う論理
で ある.集 団の 業績 と して だ けで な く,個 人の 成 果 も 明 確 化 し ようとする .報 酬は勤 続 年 数に よ っ て 自動 的に上が っ てい く わ けで は ない の で, 個人の 能力の 発揮に応 じ,その成 果に報 酬で 報 い よ うとす る もの であ る.
この よ うな報酬シ ス テ ム の 変 更は , 日本企 業の マ ネジ メン ト ・コ ン トU 一ル に どの よ うな影 響 を与 える のか とい う点につ い て, 次 に考 察をする.
3
.2
日本
企 業のマネ
ジメ ン ト ・コ ン トロ ール に お け る報
酬 システ ムの 役 割 マ ネジ メ ン ト・コ ン トロ ール と は, 組 織 目 標 達 成 の た めに 戦 略 を 確 実 に実 行 させ るた めの仕 組 み であ る.対象は 戦 略の 実 行 責 任 者で あ るマ ネジ ャ ー層であ り
, 彼 らの 部 分 目標達 成 と 全体 目 標の 達 成 との 斉 合
i
生 をと る た め の し く み が マ ネジ メ ン ト・コ ン トロ ール ・シ ステ ム であ る.マ ネジ メン ト ・コ ン トロ ール のテ キ ス ト に出て くるマ ネジ メ ン ト ・コ ン トロ ール ・プロ セス に お い て は, 目標と評 価 ,そ して報 酬 に よる フ ィードバ ッ クは,責任 者 の目標達 成,そ して,組 . 織 目標 達 成 のた めの しくみ とし て,
1
つ の流れ を もっ て い る (Anthony
(1988
)).し か し, 日本の 大企業は こ れ まで , 長期 的な雇 用 を前 提と した報酬シ ス テ ム の 中で, 管理会 計の計 算シ ス テム か ら算出 さ れ る業績測定の 結果を,ダ イ レ ク ト に報酬とは結び付ける こ とを あ えて して こ なか っ た.報 酬 シ ス テ ム に よ っ て , 社 員 を 長 期 的 に組 織 目 標 達 成へ と動機づ ける 工 夫を して きたの である.企 業に とっ て, 勤続年 数が長 い 人 は, 多 くの 経験 をつ み , 企業の さ
ま ざ ま な状 況 も把握 し た上で の意思決 定が で きる人 と して重要な存在で あっ た.
長 期 雇 用を前 提と して ,期 間業 績の 大 小 を報 酬 と直 接 リン ク さ せ な か っ た 日 本 企 業の マ ネジ
メ ン ト・コ ン トロ ール の 特性 を,筆 者は 「日本企業の マ ネ ジ メ ン ト・コ ン トロ ール の
2
分 割構造 」 と して 説 明 し た (横 田(
1998
), およ び 図2
).その 仕 組み に おい て は, 報 酬 シス テ ム が 組 織 メン バ ーと企業 との心理的契 約の構 築に寄与し,その うえで 短期 的業績 向上へ とマ ネジャ ーを動 機づ ける こ とに 業績 測 定 ・評価を含む管理会計の 計算シ ス テ ム が機能 して い た と説 明した(注3).こ の仕 組み に よっ て , 日本企業の マ ネジ ャ ーは
, 企 業目的を個人目標 として 内 在化 する こ とが 可能に な り,その上 で, 短 期 業 績 を あ げるこ と に マ ネ ジャ ーは 専 念 して き たの で ある .
報酬システム
報
計 算 シス テム
(業 績 測定・評 価シ ス テ ム)
凾 事
論 田
f 」
華
図