海洋微量元素の動態解析
1. はじめに
私は1980年京都大学理学 部 に入学 し, 1983年 化 学教室分 析化学研 究室 の 四 回 生 とな った . 最 初 の 指 導 教 官 は桑本融先生で, 卒 業 研 究 の テ ー マ は
「海水中ゲルマニウムの共同沈殿」であっ た.私の 最初の幸運は,それが海洋 微塁 元 素 研 究 の 勃 興 期 であったことである .採 水 , 前 処 理 , 分 析 操 作 を 通して, 目的元素の汚染混入(コンタミネ ーショ
ン)を防ぐことの重要性が認識され , クリ ーン技 術が開発され, 多くの微量 元 素 の 分 布 がようやく 明 らか にされた(Bruland,1983). G eについ て も,
無機ゲルマニウムはケイ素とよく似た栄投塩型の 分布であるが,おそろし く 安 定 な メ チ ル 形 ゲ ル マ ニウムが無機ゲルマニウムよ り多く存在し , それ は保存成分型の分布をとるという 不 思 議 なデータ が報告 された (Lewis et al., 1985). 修士のとき中 山英一郎先生から 「海水中 の タ ン グ ス テ ン 」 を 研 究するように勧められ, 一 色 健 司 先 輩 が 見 つ けら れた接触波ポーラログラフ 法 の 論 文 を 基 に , その 分析法を開発した (Sohrin et al., 1989). これを 用いて,世 界 ではじめて外 洋 に お け るW の分布 を 明 らか にした (Sohrin et al., 1987). どうして G e やW を測るのか? 何の意 味があ るの か? とい う疑問ある いは叱貢は, 当 時 か らよ く投げかけら れた.説明責 任を科学 的に 果 た し, 研 究 資 金 を 獲 得するために,今も頭を ひ ね り 続 け て いる. しか し,研究を始めた頃か らずっと私自身にとっ ては,
たとえ他に意味がなくても新しい分析法を開発し,
自然の姿 を は じ め て 垣 間 見る こと それ自 体か,
sense of wonderである .
1987年大学院を中退し,化学 研 究 所 の 松 井 正 和
宗 林 由 樹*
先生 に教務職員 として採用していただいた. ここ では一 時海洋の研究 を 離 れ て , 金 属 イオン 認 識 の 化学を中心に研究した.後 か ら 振 り 返 る と , 研 究 の幅を広げた ことは海洋の研究に もた いへ ん 役 に 立っ てい る.ふたつめの幸運は , この ころ現 れた Martinの鉄仮説で ある (Martin et al., 1989).
ただ単純に微量 元素の研究を 楽 し ん で い た私など とは異なり .Martin はずいぶん早 くか らFeがi・毎 洋の生物生産の 制限因子 として 重 要 で あ る こ と を 確信 し. 長 い 努 力 の 末 に そ れ を 実 証 し た . 鉄 仮 説 は,i毎洋観測にお いて 注 文 ば か り 多 く て ほ か の 役 に立たないと思われていた(?)われわれ微塁 元 素研究者 の立場を大きく改善 してくれた. 1994年 松井先生か裔分解能型 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ 質 星分 析 装置 ( H R‑ICP‑MS) を導入され. /毎洋微昂 元 素 の研究に本格的にのりだすことになった. 1996年 金沢大学工学部上田一正 先生 に助教授 に 採 用 して いただ き, そ こでも 自由 に 海洋 の 研 究 を 続 け さ せ ていた だいた .2000年 松 井 先生 の 後 任 と し て 化 学 研究所教授に採用され現在に至っている.本稿で は.私かこれまでに行ってきた研究のうち 最 近 の 成果について述べる .
2. 多元素同時分析法の開発
前述のように微量元 素 の 分 析 に あ た っては , 試 料の採取,前処理,定 量操 作 を 通 し て 目的元素の コ ンタミネ ー ションを 抑えるク リー ン技術が大切 である . とりわけ, Fe, Zn などは地 殻存在 度 か 高 く,人」..的にも 多用されているた め, 汚 染 を 受 け やすい. Bruland ら (1979) は, ジチオカルバメー トによ る 溶 媒抽 出ま た は キ レ ー ト 樹脂C helex‑100
・京都大学化学研究所 教 授 〒611‑0011京 都府宇治市五ヶI
玉
宗林先生は、平 成15年 度 第18回 洵 洋 化学 学 術 買 ( 石 橋i町)を受宜さ れ ま し た 。 御 受裳 の 記 念 購 演
(平成15年4月28日)を 基に して、本稿を こ調 製 い た だき ました。
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Oceanochemistry Vol. 16, N o. 2, Nov.. 2003 41
を用いるカラム抽出によって濃縮した後, フレー ム レス 原子吸光法によってi籠水中 のCd, Cu, Ni, Zn を定畠 する分析法を確立した. この方法か以後 の海洋学研究 における 椋準となって いる. しかし,
この方法は高価なクリーンルームにおける採作を 前提 として おり,ま た目的元素 を100倍以上 に濃縮 しなければならない.私逹は, クリーンベンチ程 度の装備しかもたな い通常の実験室で可能なク リー ン技術の確立を目指 した. カラム濃縮法は閑鎖系 にすることで雰囲気からの汚染を防ぎやすい,吸 着体を繰り返し利用できるので試薬を精製する手 間を省くことかでき ,また地球に もやさし いなど の点で優れて いる.市販の キレート 樹脂はn M レ ベル の微量元素の定量 を想定していないため,製 造過程で多くの不純物元素を含んで いる. 幸 い中 山先生,小
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元氏らは,鉄の自動分析のために,8ーヒドロキシキノリンを 含フッ素メタルアルコ キ シドカラスに 修飾 して,不純物の少ないキレート 吸着体M A F ‑ 8 H Q (図1 ) を合成して いた (Oba‑
ta et al., 1993). 私逹 は これを用いて 閉鎖系のカ ラム濃縮装置を構築し た (Sohrin et al., 1998 ; 宗
林ほか,2001).測定には誘導結合プラズマ発光分
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H図1 キレート吸着体M A F ‑ 8 H Oの 構 造 析 法 (ICP‑AES) またはICP‑MSを用いて, 多 元 素同時定贔を可能 にした. この研究には1994年か ら着手したか, クリ ーン 技 術 の 開 発 は 試 行 錯誤 の 連続であった .岩元俊一君, 秋 山 昌次君 ,ij瀑島タ 喜代さん, 石田恒 巳君,衣笠正敏君,見方 美智さ ん, 且副雅子さん,東負暁東君ほ か多くの 学 生 の 長 い努力のすえ,近年ようやく実用的な技 術となっ た.木法は世界でもっとも簡便かつ 高 精 度 な 多 元 素 同時定量法である.現在,本法を活用して , 生
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物活性微景金屈 (bioactive trace metals; Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Pb) の 動 態 超 微蜀 第2' 第
3遷移系列金属 (Zr, Hf, Nb, Ta) の海洋 化学 (Sohrin et al., 1998) などの研究を進めている.
3. 生物活性微量金属の動態
生物活性微量金屈ある いは微量 生 元 素 (trace bioelemen ts) とよばれる Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, P bなどは,拮抗的ある いは相乗的に 生 物 に 影響をおよぼす. したかって, 多数の 元素 の 挙 動 を同時に観測する ことが里要 で あ る . 私 逹 の 開 発 したM A F ‑ S H Qカラム濃縮ーICP‑MS法により,
微昂生元素の多元素同時解析か容易 となり, これ らの元素の時空間的な分布 とその 生 物 と の 相 互 作 用 の解明が進められている .
例として,北太平洋亜寒帯循環の南端に位僅す るB002 (1S0°E, 40°N) で得られ た溶存態および 酸可溶態Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Pb の鉛 直 分布を図2に示す (Ezoe et al., submitted). こ こで, 溶存態分析用の海水は , 採 水 後 た た ち に 船 上 で孔径0.2μmのニュクレポアフィルターでろ過 し,塩酸を添加してp H 2.2として 保 存 した.酸可 溶態分析用の海水は,未 ろ過のまま塩酸を添加 し p H 2.2と して保存し た. これ らの海水試料を室温 で数ヶ月保存 した後, M A F ‑ S H Qカラムを用いて 微量金属をは縮した. したかって , 酸 可 溶態は , 溶存態に加えて希塩酸に溶解する反応活性な 粒 子 態成分を含むと考えられる.具体的には , 粘土 鉱 物に吸着していた金屈イオンの脱着, 有 機 物 と 錯 生成していた金属 イオンの解離,水酸化鉄コロイ ドの溶解などか起こり,溶 存態 よ り も 濃 度 か 増 加 する可能性がある.
酸可溶態濃度と溶存態農度の差かもっ と も大き いのはFeであった.溶存Feは表層 で極大, 3 0 40 m て極小をとり, 740m 以深では0.7pMでほは 一 定となった . 酸 可 溶 態 Fe は , 表 屈 で 極 大 ,
40 50 m で極小をと り,中深層でははら つきはあ
砺1羊化 学 研 究 第16巻第2号 平 成15年11月
るが一定であり,底から1000m くらいでは深さと ともに増加した.鉛直分布の形は北太 平洋のほか の測点でも似ていたか , 深層の酸可溶態Fe濃度 は,大陸棚に近いBOOlやハワイ 諸島南方 のB004 で高く,海盆中央のB003やB006で低くなり , そ の変動は約4倍であった. Feは地殻中存在度が高 いが,海水中の溶解度が低いために , 酸可溶態画 分が大きいと考えられる.底層 での濃度増加は,
底層水の移流 と堆積物の再懸濁を示唆 している.
酸可溶態Fe と溶存態Feの間には, なんらかの交 換反応があるであろう. Joh nson ら (1997) は溶 存態Feの分布のみを考えて, その濃度が溶存有 機物との錯生成によって支配されるというモデル を提案したが,洵洋の Fe分布のモデルは酸可溶 態Feを含 めて再構築する必要がある.
溶存態浪度 と酸可溶態濃度の 差 が最も 小さいの はNiであった.図 2に示すように , ふたつの鉛 直分布はほ とんど一致した. Co, Cu, Zn, Cd, P bは,深層水の溶存態浪度と酸可溶態濃度 はおお むね分析誤差の範囲内で一致した. P bは表面から 500 m くらいの深さで,酸可溶態が高い傾向があっ た. これは大気経 由などで運ばれてくる 粒子の中 に,反応活性なP bが多いためであろう. C u も表 面近くでは酸可溶態の割合が高 くなった.
一方, C oは表層で溶存態0・農度の方が高くなる こ と が あ っ た こ の 結 果 は,今回用 いたス ペシ ェー ション法の限界を示している . 未ろ過海水の中 に は, マンガン酸化物が含まれている . この酸 化物 はp Hを下げただけでは溶解しない.溶存態C oは おもに 2価のイオンであるか, マンガン酸化物表 面で接触的に3価に酸化される. C o (III) は配位 子交換が遅く,また粒子に吸着 され酸化物を生成
しやすい.すなわち, Co は保存中に粒子と反応し ,
M A F ‑ 8 H Qで捕集できない化学形に変化したと考
え られる. Cu, Znでも酸可溶態か低くなること があったか, マンガン酸化物への吸 着 が関係して いる可能性がある .
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北西太平洋にお いてはじめて行われた海洋への 鉄散布実験 (Tsuda et al., 2003) における観測に よって,溶存態Feに比べて酸可溶態F eは植物プ ランク トンにとって利用し に くいことがわかった (Kinugasa et al., submitted).夏季の北太平洋亜 寒帯域やベ ーリング海では, Fe とZn が表層水 中 で枯渇する (Fujishima et al., 2001) (図3). こ れと対照的に,亜熱帯北太平洋の表層水では,主 な栄養塩である NO3が枯渇しているが, F eやZn は余っていることが見出された (Ezoe et al., sub‑
mitted).すなわち ,海域によって栄養塩の組成が
異 なることがはっきりと示された.
北太平洋亜寒帯域の なかでも, 黄砂の供給源 に 近い西部に比べて東部では F eの枯渇がより著し
い (Fujishima et al., 2001).私達は植物プランク トン の光合成活性が西部で より 高 いことを 見 いだ した (Suzuki et al., 2002). またベ ーリ ング海で は, FeやZn の供給速度がより大きいことが示唆 された (Fujishima et al., 2001).一般に亜寒帯北 太平洋では小型の植物プランク トン が優先するが,
ベー リング海では大型の珪藻が優先し,植物プラ ンクトン現存量か高く,再生産が活発である. Fe やZnの供給速度の差が, 海域による生態系の違 いを決定している可能性が高 い.微量元素の時間 的 ・空間的変動が,生態系を どのように特徴付け るのかを解明することが現在の課題である .
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図3 亜寒帯域と亜熱帯域の表層水柱における溶存Fe, Zn, N O,およびクロロフィルa の鉛直分布.
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,B006; ▽, B007. KH‑97‑2航海の試料分析時の検出限界は溶存Fe 0.28 nM, 溶存Zn 0.41 n M であった.
図では検出限界以下の値は,溶存Fe 0.14 nM, 溶存Zn 0.20 n M とした.
Transactions of The Research Institute of
Oceanochemistry V ol. 16, N o. 2, Nov., 2003 45
4 . 古海洋を解く 鍵とし てのタングステンとモリ プテン
海底火山活動かある海域でマグマによって加熱 された海水(熱水)が海底から噴出していること が発見されたのは, 1977年である (Edmond et al.,
1982).中央海碩や沈み込み帯な どの火山活動域に
おいて,海底の亀裂から地下にしみ込んだ海水か,
高温 (400℃) atm) 下で岩石と反 応して熱水を生成する.高温熱水は酸性 (p H 3‑5) かつ遠元的 (m Mオー ダーの 比Sを含む)となる ため,海水の10汀音に逹するマンガン,鉄などの重 金属元素やCH4に富む.熱水活動は, 海洋への物 質の供給源,あるいは海洋から物質を除去す る機 構として璽要であると考えられている. しかし,
洵底熱水噴出孔の孔径はたかだか10cmであり,噴 出する熱水試料を採取するには 高度な技術を要す る. そのため,熱水試料中の微羅元素は未知の点 が多い.
岸田剛一君は,世界で初めて熱水中の W 濃度の 測定に成功した (Kishida et al., submitted). W
とM oの濃度をM g 2十浪度に対してプロットした
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結果を図4に示す .M g2十は洵水中の主要 イオン であるが,岩石との高温反応で鉱物にとり込まれ るため 高温熱水中では ゼロとなる.
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隈 度 は ,M gか、濫度の減少につれ直線的に増加した . この ことは, W が熱水中で高濃度であり,熱水が周囲 の海水と混合する過程では沈殿しないことを示し ている . これは,同族元素である M o と対照的で ある.図4より, M oは熱水中では低磯度であり,
また熱水と涌水の混合過程において海水中の M o は硫化物として沈殿すると考えられる.
現代の酸化的な海水 中で は, M o とW はともに 酸素酸 (Moo.2‑, w o.2‑) として溶 存しており , 保存成分型の分布を示す. しかし , 古代の海洋に おいて,海洋循環か変化して深層水に無酸素隠 か 広がったときには, M o は硫化物として沈殿した が, W は悔水中に残ったと考えられる . また , 洵 底熱水活動が活発であっ た時代には, 大量:のW が 海洋に供給されたと考えられる.従って,堆積物 やマンガンノジュールに残された W / M o比を測定 すれば,古海洋の環境を推定できる可能性がある .
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図4 熱水試料中のタングステンとモリプテンの濃度.伊豆小笠原水曜海山 (口,2000年11月 ;
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, 2001年8月; △, 2001年10月), 沖縄トラフ鳩間海丘 (◇) ,沖縄 トラフ与那国海丘 (▽),インド洋中央海嶺 白鳳海丘 ( 0 ) .
46 涌洋化 学 研 究 第16巻第2号 平 成15年11月
5. おわりに Johnson, K. S., Gordon, R. M., Coale, K. H.
栄えある海洋化学学術賞をいただくにあたり What controls dissolved iron concentra‑
私をご推載 くださった方々, および選考委 員の 皆 tions in the world ocean? Mar. Chem. 57, 様に心から御礼申し上げる.私はちょうど厄年を 137‑161 (1997).
迎え,体のあちこちに 問題か起 こりつつあり,研 Kinugasa, M. et al. Dynamics of trace metals 究生活も折り 返 し点である .今 後も 学 術賞 の名を during the subarctic Pacific iron experi‑
汚さぬように, 一層研究 に励 みたい.本稿ではお ment for ecosystem dynamics study 世話にな った先生, 共同研究者,学生, 研 究室 ス (SEEDS2001). Prog. 0 ceanogr. submitted.
タッフなどのすべての名前 を挙 げることはできな Kishida, K., Sohrin, Y ., Okamura, K., Ishibashi, かったが, これまでの成果 は皆様に 負 うところが J. . T Tungsten as a unique probe into the 限 りなく大きい.どうも 有難うございました.今 evolution of submarine hydrothermal 後ともどうぞよろしくお願い 申 し上げます. fluids. Earth Planet. Sci. Lett. submitted.
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