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繋ぐ海、恵む海 ―海洋安全保障の諸課題と日本の対応

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守る海、繋ぐ海、恵む海

―海洋安全保障の諸課題と日本の対応―

(平成

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年度海洋安全保障研究プロジェクト報告書)

要旨

海洋安全保障研究プロジェクトは、近年の東アジア海洋秩序をめぐる動向を踏まえ、海洋にお いて国益を確保するためには、長期的視野に立つ息の長い取り組みが必要であるとの観点に立 ち、20年、30年後の日本を取り巻く状況を見据えながら、日本が今何をしておくべきかについて研 究を重ねてきた。かかる研究成果は、2012 年 3 月に報告書としてとりまとめた。以下は、同報告書 の要旨(executive summary)である。

1.大国間パワーバランスの変化がもたらす海洋安全保障への影響

リーマン・ショックに端を発した世界金融危機を受け、米国は現在深刻な財政状況に直面してい る。それゆえ、米国は今後、軍事支出をますます選択的に行わざるをえないと予測される。米国が 有するハードパワーおよび米国の覇権国ないし超大国としての地位の相対的低下が指摘される一 因である。他方、急速な経済的・軍事的台頭を背景に、中国のパワーは増大している。中国は、経 済のみならず軍事においても、米国に対する相対的な力を急速に強化しつつある。このように、大 国間パワーバランスに変化が生じつつある不安定な海洋秩序において、中国は近年南シナ海や 東シナ海において、「積極的な」海洋政策をとっており、日本、南シナ海沿岸諸国など周辺国との 摩擦を生じさせている。不安定化する海洋秩序において、日本は多面的な性格と機能を併せ持つ 海洋(「守る」海、「繋ぐ」海、「与える」海)を守っていかなければならない。

それを行ううえでの一つの施策は、自国の海洋の安全に関わる防衛態勢を強化することである。

日本側から殊更に緊張を高めるような行動をとることは控える一方で、不測の事態に対応できる防 衛力を整備し、主権の侵害に対して日本は毅然たる態度をとるべきである。そのためには、具体的 な事態を想定したうえで、その事態の法的性質に対応した対処の枠組みを整理し、円滑な対応が とれるよう適切な法整備を行う必要がある。その一つに、海上保安庁と防衛省の連携強化に係る法 整備が挙げられよう。海上警備・防衛が効果的であるためには、両機関の支障なき連携が実現さ れなければならない。今後、日本の海の基点となる沿岸部、特に島嶼防衛強化の観点から、米国 海兵隊に類似した組織の設立を視野に入れた議論を開始することも有益であるかもしれない。

日本の自助努力に加え、日米同盟の強化を並行して進めていくことが重要である。さらに今後は、

日豪安全保障協力など米国の同盟国同士(スポークス間)の協力や、日米豪、日米印、日米比、

日米越などのミニラテラルの協力も強化されるべきである。また、東南アジア海域は、日本にとって 死活的に重要な海上交通路を提供するため、東南アジア諸国との安全保障協力強化は極めて重 要である。

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海上防衛態勢および日米同盟の強化は、近隣諸国に誤解を生じさせることがないよう、また万 が一誤解が生じたとしても、それに起因する偶発的な事故が発生しないように防止する努力を並 行して行うべきである。日本はロシアと海上事故防止協定(INCSEA)を締結しているが、地域諸国、

特に中国と同協定を締結することも検討に値する。これに関連して、二国間の海上捜索・救助

(SAR)協定といった、汚染対応や海難救助等を目的とする協力枠組みを作成し、具体的な共同 行動を積み重ねていくことも事故防止の一助となる。日本は同協定を、米国、ロシア、韓国と締結し ており、2011 年 12 月には中国とも締結について原則的合意に達した。上記協定は、海洋関係当 局間の信頼醸成にも資するため、海洋安全保障の確保という観点から極めて重要な措置である。

また、信頼醸成に関連して、海賊、テロ、麻薬、密輸等の非伝統的安全保障分野の問題への取り 組みは、各国共通の脅威に対する協力であるため、対立する利害を持つ国家間の意思疎通を促 進し、相互信頼を増す効果がある。中国との関係では、安全保障分野に限らず、経済・エネルギー 分野を含め、協調することが両国にとって望ましい「共通の利益」を拡大していくことも重要である。

2.非伝統的脅威への対応

海洋安全保障に対する脅威は軍事的性格のものに限定されないため、非伝統的脅威への対処 に関わる各国のキャパシティー・ビルディングが肝要である。例えば、大量破壊兵器(WMD)の拡 散である。日本は北朝鮮という脅威に直面するが、テロリスト等の非国家アクターへの WMD 拡散 も安全保障上の脅威である。東南アジア諸国の能力および取り組みには格差が存在することを踏 まえ、日本はインテリジェンス協力、国内法規制および執行の強化を含む、WMD拡散阻止のため に求められる各国のキャパシティー・ビルディングを支援していくべきである。キャパシティー・ビル ディング支援を行うことは、アジア太平洋地域全体の「公共財」供給力の増大にもつながる。

非伝統的脅威のもう一つの例は海賊である。日本は特に、東南アジア諸国の海賊対策に大きく 貢献してきたが、周知の通り2009年3月からはソマリア沖の海賊対策にも尽力している。日本がこ れまで培ってきた海賊対策に関わる経験とノウハウをアフリカでも存分に発揮させることで、国際社 会における日本の存在感が高まる。マラッカ海峡の海賊被害がアジア通貨危機後に大幅に増加し たことが示唆するように、海賊行為の背景には貧困をはじめとする社会経済的要因がある。日本は 国際海事機関(IMO)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国連開発計画(UNDP)などの国際機 関と連携しながら、ソマリアが経済的に自立できるような生産活動支援を行うべきである。その際、

日本の漁業組合や水産業者との連携が重要になることが考えられる。日本政府は国際機関や民 間企業・団体といった多様なアクターと一緒に、経済・社会分野にまで及ぶ多角的な支援を行って いく必要がある。

3.海洋管理体制の強化

技術進歩によって、従来開発不可能であった海域までもが開発の対象となり、各国は自国にお

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ける資源エネルギー需要の拡大を背景に、自らの管轄が及ぶ海を拡大し、より有効的かつ独占的 に活用しようと努めつつある。その結果、日本が自由に利用できる海は世界規模で狭まる傾向があ り、だからこそ自国の領海、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を守り、効果的に開発するための海 洋管理体制強化が重要である。日本政府は2007年に海洋基本法を制定したが、同法の下、離島 政策や資源開発を含め、海洋管理を一元的かつ強力に推進していく必要がある。また、その際、

日本の周辺において、EEZや大陸棚の境界が未画定の海域が残されていることを踏まえれば、日 本の行為が国際法上十分に対抗力を有するものでなければならないことは、言うまでもない。

最後に、北極海航路の利用について日本政府は真剣に検討すべきであることを指摘したい。

2011 年夏、北極海航路が通行可能な状態となったことを受け、アジアから欧州に向けて物資が同 航路経由で試験的に運搬された。北極海航路が実用化されれば、極東地域の物資をウラジオスト ックなどの港湾から輸送することが可能となり、世界の海運事情を一変させる可能性がある。北極 海航路の利用に際して、北方四島海域は通過点となる。同海域の戦略的重要性が劇的に高まるこ とを踏まえたうえで、北方領土返還交渉に臨まなければならない。

Referensi

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