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著 し い 重 複 契 約 に よ る 重 大 事 由 解 除
--傷 害 疾 病 定 額 保 険 に か か る モ ラ ル リ ス ク 対 応 --
コ ー プ 共 済 連 坂 本 貴 生
1 . は じ め に
生 命 保 険 分 野 で は 、 疾 病 定 額 保 険 に つ い て 、 モ ラ ル リ ス ク1へ の 対 応 策 の ひ と つ と し て 、 昭 和 6 2 年 に 、 約 款 上 、 重 大 事 由 に よ る 解 除 権 が 導 入 さ れ た2。 著 し い 保 険 累 積 の 悪 用 か ら 保 険 者 を 防 衛 す る た め に 、 重 大 事 由 の 一 つ と し て 、「 他 の 保 険 契 約 と の 重 複 に よ っ て 、 被 保 険 者 に か か る 給 付 金 額 等 の 合 計 額 が 著 し く 過 大 で あ っ て 、 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る 場 合 」( 以 下 、「 本 件 条 項 」 と い う 。) が 規 定 さ れ た3。
そ の 後 、 保 険 法 の 制 定 議 論 の 中 で 、 本 件 条 項 は 、 重 大 事 由 と し て 法 定 化 さ れ る こ と が 検 討 さ れ た も の の 、 法 定 化 に は 至 ら な か っ た4。 し か し 、 生 命 保 険 会 社 で は 、 重 大 事 由 解 除 の 包 括 条 項 ( バ ス ケ ッ ト 条 項 )の 具 体 化 と し て 、本 件 条 項 は 、約 款 上 規 定 さ れ て い る 。ま た 、 保 険 法 施 行 に よ る 重 大 事 由 解 除 の 法 定 化 に 伴 い 、 生 命 保 険 会 社 以 外 の 損 害 保 険 会 社5、共 済 団 体 に お い て も 、本 件 条 項 が 導 入 さ れ て い る 。
1山 口 誠 「 重 大 事 由 に よ る 解 除 権 と ガ イ ド ラ イ ン 」 生 命 保 険 協 会 会 報 69 巻 1 号 2 項(1989 年)で は 、「 今 日 の 入 院 給 付 金 を め ぐ る モ ラ ル・リ ス ク の 特 徴 は 、 短 期 的 に 複 数 会 社 の 生 命 保 険 契 約 に 、 集 中 的 に 加 入 し て 、 加 入 の 直 後 に 長 期 入 院 を 行 な い 入 院 給 付 金 を 取 得 す る の を 常 套 手 段 と す る 」 と 冒 頭 に 述 べ て い る 。 平 尾 正 治 「 第 三 種 保 険 の 沿 革 」 生 命 保 険 協 会 会 報 9 巻 1 号 29 項(1989 年)は 、「 生 命 保 険 の 場 合 に は 、 殺 人 な ど の 特 殊 な 犯 罪 行 為 を 除 け ば 、 逆 選 択 と い え ど も 保 険 金 受 領 の た め に は 、 自 己 の 生 命 を 犠 牲 に し な け れ ば な ら い 。 し か し 、 疾 病 、 災 害 に よ る 入 院 の 場 合 に は 、 あ る 程 度 自 訴 の み で 行 動 し 、 し か も 給 付 金 受 領 と い う 利 益 を 享 受 す る こ と が 可 能 で あ る 。 し た が っ て 、 逆 選 択 の 傾 向 は 生 命 保 険 の 比 で は な い 」 と 指 摘 す る 。
2導 入 の 経 過 等 に つ い て 、 山 口 ・ 前 掲 注 1)2 項 以 下 参 照 。
3洲 崎 博 史 「 人 保 険 に お け る 累 積 原 則 と そ の 制 限 に 関 す る 一 考 察 」 法 学 論 叢 140 巻 5・6 号 235 項(1997 年)参 照 。
4 田 口 誠 「 重 大 事 由 に よ る 解 除 」 甘 利 公 人 = 山 本 哲 生 ・ 保 険 法 の 論 点 と 展 望 154 項(2009 年 ・ 商 事 法 務)参 照 。
5 東 京 海 上 日 動 火 災 保 険 株 式 会 社 編 「 損 害 保 険 の 実 務 と 法 務 【 第 2 版 】」389
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し か し 、 本 件 条 項 が 争 点 と な っ た 公 刊 さ れ て い る 裁 判 例 は 少 な く6、 本 件 条 項 の 要 件 の 具 体 化 は 不 十 分 で あ る7と の 指 摘 も あ る 。 も っ と も 、 平 成
13
年 以 降 、 裁 判 例 に 肯 定 例 も 表 れ る よ う に な っ た8。 ま た 、 生 命 保 険 協 会 及 び 日 本 共 済 協 会 の 裁 定 で も 取 り 上 げ ら れ て い る9。 さ ら に 、 損 害 保 険 会 社 や 共 済 団 体 の 保 険 ・ 共 済 の 約 款 ・ 規 約 に 本 件 条 項 が 導 入 さ れ た こ と に 鑑 み る と 、 今 後 、 本 件 条 項 の 適 用 事 例 が 増 え て く る も の と 思 わ れ る 。そ こ で 、 本 稿 で は 、 裁 判 例 の あ る 生 命 保 険 会 社 等 の 本 件 条 項 を 念 頭 の 上 、 保 険 法 施 行 前 の 本 件 条 項 、 保 険 法 の 包 括 条 項 と 本 件 条 項 の
項(き ん ざ い ・2016 年)参 照 。 東 京 海 上 日 動 火 災 保 険 株 式 会 社 の 医 療 保 険 (1 年 契 約 用 ) 普 通 保 険 約 款(2013 年 10 月 1 日 以 降 始 期 用)第 18 条 1 項 4 号 は 、 重 大 事 由 解 除 事 由 と し て 、「 他 の 保 険 契 約 等 と の 重 複 に よ っ て 、被 保 険 者 に 係 る 傷 害 入 院 日 額 、 疾 病 入 院 日 額 等 の 合 計 額 が 著 し く 過 大 と な り 、 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る こ と 」と 規 定 し て い る 。ま た 、 同 社 の 傷 害 保 険 普 通 保 険 約 款(2016 年 10 月 1 日 以 降 始 期 用)第 18 条 1 項 4 号 も 同 旨 の 規 定 を 定 め て い る 。 但 し 、 い ず れ も 第 1 条 の 告 知 事 項 と し て 、 他 の 保 険 契 約 等 に 関 す る 事 項 も 含 む と し て お り 、 他 の 保 険 契 約 の 告 知 義 務 も 併 用 し て い る 。
6 1997 年 当 時 の 文 献 で は 、本 件 条 項 の 行 使 に あ た っ て は 保 険 監 督 上 主 務 官 庁 へ の 報 告 義 務 が 求 め ら れ る な ど 、 実 務 上 行 使 し づ ら い の で は な い と の 指 摘 が あ っ た(洲 崎 ・ 前 掲 3)235 項 、中 野 佳 代 子 ・ 文 研 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 122 号 8 項(1997 年)参 照 。)
7洲 崎・前 掲 注 3)235 項 、山 下 友 信=米 山 高 生・保 険 法 解 説 578 項〔 甘 利 公 人 〕
( 有 斐 閣 、2010 年 ) 参 照 。
8保 険 法 施 行 前 の 本 件 条 項 に 関 す る 判 例 の 分 析 を 行 う も の と し て 、勝 野 義 孝 ・ 生 命 保 険 契 約 に お け る 信 義 則 の 原 則 429 項(2002 年 ・ 文 眞 堂)、甘 利 公 人 ・ 生 命 保 険 契 約 法 の 基 礎 理 論 201 項 及 び 229 項 以 下(有 斐 閣 、2007 年)、中 西 正 明
「 生 命 保 険 契 約 の 重 大 事 由 解 除 」 大 阪 学 院 大 学 法 学 研 究 34 巻 1 号 106 項 以 下(2007 年)、 が あ る 。 本 件 条 項 の 適 用 が 明 確 に 問 題 と な り 、 か つ 、 公 刊 さ れ て い る も の は 、 把 握 で き た 限 り で は 、 別 紙 の 裁 判 例 一 覧 の と お り 、 文 研 生 命 保 険 判 例 集 第 7巻 や 生 命 保 険 判 例 集 第 13巻 以 降 に 掲 載 さ れ て い る 10判 例 で あ っ た 。た だ し 、同 判 例 集 で は 13 巻 以 降 で は 最 新 19 巻 ま で に は 各 巻 1 件 は 掲 載 さ れ て い る 。
9 日 本 共 済 協 会 の 共 済 相 談 所 の 裁 定 で は 、 平 成 23 年 度 及 び 平 成 24 年 度 に そ れ ぞ れ 1 件 の 合 計 2 件 が 裁 定 に 付 さ れ て お り 、 前 者 が 和 解 で 成 立 し 、 後 者 は 訴 訟 に 移 行 し て い る 。平 成 23 年 度 の 審 議 に お け る 裁 定 の 概 要 15 項 及 び 平 成 24 年 度 の 同 概 要 23 項 参 照(http://www.jcia.or.jp/adr/support/index)。生 命 保 険 協 会 の 裁 定 審 査 会 で も 、平 成 20 年 度 及 び 平 成 24 年 度 に そ れ ぞ れ 1 件 の 合 計 2 件 の 申 立 て 事 案 が あ り 、 い ず れ も 裁 判 所 に よ る 訴 訟 に よ る 解 決 が 適 当 と し て 、 裁 定 手 続 を 打 ち 切 っ て い る(【 事 案 20-72】 及 び 【 事 案 24-64】 参 照 (http://www.seiho.or.jp/contact/adr/item/))。
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関 係 を 踏 ま え 、 本 件 条 項 の 法 的 性 質 か ら 導 か れ る 考 慮 要 素 ( 評 価 根 拠 事 実 、 評 価 傷 害 事 実 ) を 検 討 し 、 生 命 保 険 会 社 や 共 済 団 体 が 当 事 者 と な っ た 裁 判 例 を 検 討 す る 。 最 後 に 、 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 が 本 件 条 項 の 判 断 に 与 え る 影 響 、 実 務 上 問 題 と な る 解 約 後 の 重 大 事 由 解 除 の 可 否 及 び 解 除 の 対 象 と な る 保 険 契 約 の 範 囲 に つ い て 触 れ る 。
2 . 本 件 条 項 の 導 入 経 過 等
( 1 ) 保 険 法 施 行 前
昭 和
51
年 に 生 命 保 険 会 社 が 災 害 疾 病 関 係 特 約 の 入 院 日 額 の 限 度 額 引 上 げ (7500
円 か ら2
万 円 へ の 引 上 げ ) 等 を 実 施 し て 以 降 、 悪 質 な モ ラ ル リ ス ク 事 例 の 発 生 が 顕 著 と な っ た 。 当 時 の 約 款 に は 重 大 事 由 解 除 に 関 す る 規 定 は な く 、 こ の よ う な 悪 質 な 事 例 に 対 し 、 無 責 ・ 免 責 ・ 告 知 義 務 違 反 に よ る 解 除 、 詐 欺 無 効 等 の 規 定 に よ り 対 応 す る こ と に よ り 対 応 す る こ と に 限 界 が あ っ た こ と か ら 、 保 険 者 が 契 約 関 係 か ら 離 脱 す る 権 利 の 確 保 が 模 索 さ れ る こ と に な っ た10。 こ う し た 中 、 保 険 者 の 重 大 事 由 解 除 権 は 、 モ ラ ル リ ス ク 対 策 の 一 環 と し て 昭 和62
年 に 医 療 関 係 特 約 に 導 入 さ れ た の を 皮 切 り に 生 命 保 険 約 款 に 導 入 さ れ た 。 本 件 条 項 の 導 入 に 際 し て は 、 当 時 解 釈 論 と し て 提 唱 さ れ て い た 信 頼 関 係 を 基 礎 と す る 継 続 的 契 約 で あ る こ と を 理 由 と す る 保 険 者 の 特 別 解 除 権 を 導 入 す る か 、 他 契 約 開 示 義 務 を 導 入 す る か 生 命 保 険 協 会 内 部 で 検 討 さ れ た 結 果 、 モ ラ ル リ ス ク の 実 効 性 あ る 排 除 、 重 複 契 約 の 排 除 等 を 目 的 と し て 重 大 事 由 解 除 権 が 採 用 さ れ た と さ れ て い る11。し た が っ て 、本 件 条 項 は 、約 款 作 成 者 の 認 識 と し て は 、あ く ま で 信 頼 関 係 の 破 壊 と い う 特 別 解 除 権 の 理 論 を 基 礎 と し た 解 除 事 由 と し て 位 置 づ け ら れ る と 考 え ら れ る12。
1 0 田 口 ・ 前 掲 4)149 項 参 照 。
1 1山 口 ・ 前 掲 注 1)4 項 以 下 参 照 。
1 2中 西 ・ 前 掲 8)83 項 は 、「 約 款 上 の 重 大 事 由 解 除 権 の 理 論 的 基 礎 は 、 一 般 的 に 理 論 上 の 特 別 解 約 権 の 場 合 と 同 様 で あ っ て 、 信 頼 関 係 の 破 壊 を 理 由 に 契 約
4
( 2 ) 保 険 法 施 行 後
保 険 法 で は 、 重 大 事 由 解 除 に 関 す る 約 款 規 定 を 参 考 に 、 モ ラ ル リ ス ク 事 案 に 対 応 す る た め に 、 保 険 契 約 者 等 の 側 で 信 頼 関 係 を 破 壊 す る よ う な 行 為 が 行 わ れ た 場 合 に は 、 も は や 当 該 契 約 関 係 は 維 持 す る こ と が で き な い こ と か ら 、重 大 事 由 に よ る 解 除 の 規 定 が 設 け ら れ た13。 保 険 法 へ の 重 大 事 由 解 除 の 規 定 創 設 に 係 る 議 論 の 中 で 、 本 件 条 項 を 法 定 化 す べ き か 議 論 さ れ た も の の 、 最 終 的 に は 解 除 事 由 と し て 例 示 し な い こ と と さ れ た14。重 複 契 約 に よ り 保 険 給 付 が 著 し く 過 大 で あ る 場 合 に つ い て は 包 括 条 項 に あ た る ケ ー ス も あ り う る こ と を 前 提 と し て 、 保 険 契 約 の 重 複 に よ り 信 頼 関 係 が 破 壊 さ れ る に 至 っ た か 個 別 に 判 断 す る こ と が 適 当 と さ れ た15。
こ う し た 中 、 生 命 保 険 会 社 に お い て は 、 保 険 法 に 対 応 す る た め 、 約 款 の 見 直 し が 検 討 さ れ た も の の 、 本 件 条 項 は 、 重 大 事 由 解 除 の 条 項 の 一 つ と し て 残 さ れ 、 包 括 条 項 の 具 体 例 と 位 置 づ け ら れ て い る16。 ま た 、 保 険 法 対 応 の 一 環 と し て 、 損 保 会 社 ・ 共 済 団 体 で は 、 約 款 ・ 規 約 に 、 本 件 条 項 が 導 入 さ れ た 。
の 解 除 を 認 め る も の と 考 え て よ い 」 と す る 。 山 下 友 信 教 授 コ メ ン ト ・ 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 178 号 8 項(2000 年)参 照 。重 大 事 由 に 基 づ く 解 除 権 は 、端 的 に 道 徳 的 危 険 が 増 加 し た こ と に 基 づ く 保 険 法 特 有 の 解 除 権 と し て 位 置 づ け る べ き と し た も の と し て 、 山 下 友 信 ・ 保 険 法 645 項 ( 有 斐 閣 ・2005年 ) 参 照 。
1 3 萩 本 修 ・ 一 問 一 答 ・ 保 険 法 97 項 ( 商 事 法 務 ・2009年 ) 参 照 。
1 4 榊 素 寛「 保 険 法 に お け る 重 大 事 由 解 除 」竹 濱 修 = 木 下 孝 治 = 新 井 修 司 編 ・ 保 険 法 改 正 の 論 点 360 項 以 下 ( 法 律 文 化 社 ・2009 年 ) 参 照 。
1 5田 口 ・ 前 掲 4)155 項 、 山 下 友 信 「 保 険 法 と 判 例 法 理 へ の 影 響 」 自 由 と 正 義 60 巻 1 号 30 項(2009 年)、 洲 崎 博 史 「 保 険 契 約 の 解 除 に 関 す る 一 考 察 」 法 学
論 叢 164 巻 1~6 号 226 項(2009 年)等 参 照 。
1 6 山 下 ・ 前 掲 15)31 項 で は 、「 包 括 条 項 は 一 般 的 抽 象 的 な 規 定 の 仕 方 が し て あ る の で 、 保 険 者 側 が 濫 用 す る の で は な い か と い う 懸 念 が あ っ た こ と も 考 慮 し て 、 お そ ら く 保 険 会 社 と し て は 保 険 契 約 の 著 し い 重 複 を 重 大 事 由 と し て 約 款 に 規 定 す る こ と な る 」 と し て い た 。 嶋 寺 基 「 新 保 険 法 の 下 に お け る 保 険 者 の 解 除 権 」石 川 正 先 生 古 稀 記 念・経 済 社 会 と 法 の 役 割 835 項( 商 事 法 務 、2013 年 )、山 下 友 信 = 永 沢 徹 ・ 論 点 体 系 保 険 法 2 ・212 項〔 山 下 典 孝 〕(第 一 法 規 ・ 2014年)参 照 。
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( 3 ) 保 険 法 施 行 前 後 の 本 件 条 項 の 連 続 性
以 上 の と お り 、 保 険 法 施 行 前 ・ 後 に 規 定 さ れ て い る 本 件 条 項 は 、 い ず れ も 信 頼 関 係 破 壊 を 根 拠 と す る も の で あ り 、 法 的 性 格 を 同 じ く す る も の と 考 え ら れ る 。 こ の 意 味 で 、 保 険 法 施 行 前 の 本 件 条 項 に か か る 裁 判 例 は 、 保 険 法 施 行 後 に お い て も 参 考 に な る も の と 考 え ら れ る17。
3 . 本 件 条 項 は 包 括 条 項 の 枠 内 で 解 釈 さ れ る こ と
本 件 条 項 は 、 包 括 条 項 の 具 体 化 で あ る の で 、 保 険 法 上 の 根 拠 規 定 は 、包 括 条 項 で あ る 保 険 法
86
条3
号 で あ る 。重 大 事 由 解 除 の 規 定 は 、 片 面 的 強 行 規 定(
同94
条)
で あ り 、 保 険 法 施 行 前 の 約 款 等 に も 適 用 に な る(附 則 5
条)
と こ ろ 、本 件 条 項 も 包 括 条 項 の 枠 内 で 解 釈 さ れ る こ と に な る 。 し た が っ て 、 本 件 条 項 で 考 慮 さ れ る 事 実 も 包 括 条 項 の 枠 内 で あ る 必 要 が あ る の で 、 包 括 条 項 で は 、 ど の よ う な 範 囲 の 事 実 が 、 解 除 の 判 断 に あ た っ て 、考 慮 要 素(
評 価 根 拠 事 実 、評 価 障 害 事 実)
と な る か 否 か が 問 題 と な る 。( 1 ) 包 括 条 項 は 規 範 的 要 件 で あ る こ と
保 険 法
86
条3
号 の 要 件 は 、信 頼 の 毀 損 、保 険 契 約 の 存 続 困 難 と い っ た 規 範 的 な 評 価 ( 抽 象 的 な 事 項 に つ い て の 価 値 判 断 を 伴 う 評 価 ) を 内 容 と す る も の で 、「 規 範 的 要 件 」 と 呼 ば れ る も の の 一 種 で あ る 。現 在 の 訴 訟 実 務 に お け る 一 般 的 な 考 え 方 に よ れ ば 、 規 範 的 要 件 に 係 る 法 律 効 果 の 発 生 を 認 め さ せ る た め に 当 事 者 が 主 張 ・ 立 証 す べ き 要 件 事 実 ( 主 要 事 実 ) は 、 そ の 要 件 の 内 容 と な っ て い る 規 範 的 評 価 の 成 立 を 根 拠 付 け る 具 体 的 事 実 ( 以 下 「 評 価 根 拠 事 実 」 と い う 。) で あ る 。 一 方 、 こ れ を 争 う 相 手 方 は 、 そ の 規 範 的 評 価 の 成 立 を 妨 げ る
1 7山 下・前 掲 15)31 項 は 、「 生 命 保 険 会 社 の 約 款 で 規 定 し て い た 保 険 契 約 の 重 複 と い う 重 大 事 由 に 関 す る 従 来 の 裁 判 例 は 、 数 は 少 数 に と ど ま る も の の 一 応 保 険 法 の 下 で も 参 考 事 例 と な 」 る と す る 。
6
具 体 的 事 実 ( 以 下 「 評 価 障 害 事 実 」 と い う 。) を 主 張 ・ 立 証 す べ き 立 場 に あ り 、 裁 判 所 は 、 双 方 か ら 主 張 立 証 さ れ た す べ て の 評 価 根 拠 事 実 と 評 価 障 害 事 実 と を 総 合 的 に 勘 案 し て 、 規 範 的 評 価 の 成 立 の 可 否 を 判 断 す る と さ れ て い る18。
( 2 ) 評 価 根 拠 事 実 と な り 得 る 事 実 の 種 類 ・ 範 囲
一 般 的 に 、 規 範 的 要 件 の 評 価 根 拠 事 実 と な り 得 る 事 実 の 種 類 ・ 範 囲 に は 、 特 段 の 制 限 は な く 、 問 題 と さ れ て い る 規 範 的 評 価 に 関 連 す る も の で あ る 限 り は 、 あ ら ゆ る 事 実 が 評 価 根 拠 事 実 と な り 得 る の が 原 則 で あ る19。し か し 、同 条 項 が 、信 頼 関 係 破 壊 を 根 拠 と す る も の で あ る の で 、 評 価 根 拠 事 実 は 信 頼 を 毀 損 す る も の に 向 け ら れ る 必 要 が あ る と こ ろ 、 評 価 根 拠 事 実 の 範 囲 は 、「 信 頼 」 の 意 味 が 問 題 と な る 。
保 険 法 に お け る 重 大 事 由 解 除 は 、 保 険 者 が モ ラ ル リ ス ク 等 の 保 険 契 約 の 不 正 な 利 用 の 意 図 が 認 め ら れ る 事 案 ( 不 正 利 用 事 案 ) に 適 切 に 対 処 す る こ と が で き る よ う に す る た め に 設 け ら れ た 規 定 で あ る20。 つ ま り 、 信 頼 は 不 正 利 用 を し な い こ と に 向 け ら れ て い る 。 し た が っ て 、 保 険 契 約 者 等 の 側 に そ の 保 険 契 約 を 不 正 に 利 用 す る 目 的 が あ る の で は な い か と い う 疑 い を 保 険 者 に 生 じ さ せ る 方 向 に 働 く 事 実 は 、 す べ て 評 価 根 拠 事 実 と な り う る と 解 さ れ る21。
な お 、包 括 条 項 の 適 用 要 件 に 際 し て 、1 号 及 び
2
号 と 同 様 に 、保 険 金 の 不 正 取 得 目 的 を 要 件 と す べ き か 否 か の 見 解 の 対 立 は あ る も の の22、保 険 法 が 片 面 的 強 行 規 定 と し た 趣 旨 は 、保 険 法 が 定 め る 重 大 事 由 よ り も 軽 微 な 事 由 に よ っ て 保 険 契 約 を 解 除 す る こ と を 制 限 す る こ と で あ っ て 、 保 険 法 が 認 め た 重 大 事 由 を 狭 く 解 釈 す る ( あ る い は 謙 抑
1 8 宮 根 宏 一 「 重 大 事 由 解 除 に 関 す る 包 括 条 項 」 金 融 法 務 事 情 1898 号 30 項
(2010 年 ) 参 照 。
1 9 宮 根 ・ 前 掲 注 18)31 項 参 照 。
2 0 萩 本 ・ 前 掲 注 13)98 項 参 照 。
2 1 宮 根 ・ 前 掲 注 18)32 項 参 照 。
2 2 甘 利 ・ 前 掲 注 7)577 項 、 山 下 典 孝 ・ 前 掲 注 16)212 項 参 照 。
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的 に 運 用 す る )こ と を 求 め る 趣 旨 を 含 む も の で は な い23こ と か ら 、不 正 取 得 目 的 を 要 件 と ま で は す べ き で は な い と 考 え る24。
ウ 評 価 根 拠 事 実 と な る 時 的 範 囲
解 除 の 事 由 が 生 じ た 時 点 以 後 の 支 払 い は 免 責 と な る ( 保 険 法
88
条2
項3
号 )。そ の た め 、と り わ け 重 大 事 由 解 除 に 伴 う 免 責 を 主 張 す る 際 に は 、そ の 時 点 が 重 要 と な る 。評 価 根 拠 事 実 と の 関 係 で は 、 解 除 の 事 由 が 生 じ た 時 点 ま で の 事 実 が 、 評 価 根 拠 事 実 と な り 、 そ れ 以 後 の 事 実 は 直 接 的 に は 評 価 根 拠 事 実 と は な ら な い25。4 . 本 件 条 項 の 要 件
本 件 条 項 で の 解 除 が 認 め ら れ る の は 、 そ の 文 言 か ら は 、 ① 「 他 の 保 険 契 約 と の 重 複 」 に よ っ て 、 ② 「 給 付 金 額 等 の 合 計 額 が 著 し く 過 大 」 で あ っ て 、 ③ 「 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る 」 場 合 で あ る 。 本 件 条 項 は 、 包 括 条 項 の 具 体 化 で あ る 以 上 、本 条 項 も 規 範 的 要 件 で あ り26、モ ラ ル リ ス ク の 徴 表 た る 評 価 根 拠 事 実 に よ り 本 件 条 項 の 要 件 を 満 た す と 同 時 に 、 契 約 の 存 続 を 困 難 と す る 程 の 保 険 者 に 対 す る 信 頼 を 損 な う と 評 価 さ れ て 初 め て 包 括 条 項 の 枠 内 で の 重 大 事 由 解 除 と し て 有 効 と な る 。
( 1 )「 他 の 保 険 契 約 」 の 意 義
「 他 の 保 険 契 約 」 に い う 保 険 契 約 と は 、 裁 判 例 上 、 実 質 的 に 同 一 の 保 険 金 支 払 事 由 を 定 め る 保 険 契 約 を い う も の と 解 さ れ る と 判 示 し
2 3 嶋 寺 ・ 前 掲 注 16)830項 参 照 。
2 4 そ の 他 の 限 定 的 な 解 釈 に つ い て の 学 説 の 状 況 に つ い て は 、宮 根・前 掲 18)29 項 参 照 。
2 5 村 田 = 山 野 目 ・ 要 件 事 実 論 30 講(第 3 版)97 項 〔 村 田 渉 〕( 弘 文 堂 ・2012 年 )で は 、「 規 範 的 要 件 に つ い て は 、規 範 的 評 価 の 成 否 を 判 断 す る 際 に ど の 時 点 ま で に 存 在 し た 具 体 的 事 実 を 考 慮 す べ き か が 問 題 と な る こ と が 多 い こ と か ら 、 時 的 要 素 に 特 に 意 を 用 い る こ と 」 と す る 。 大 島 眞 一 「 完 全 講 義 民 事 裁 判 実 務 の 基 礎[第 2 版]」129 項(民 事 法 研 究 会 ・2013 年)参 照 。
2 6 宮 根 宏 一「 モ ラ ル リ ス ク に 対 す る 法 的 な 対 応 手 段 の 要 件 等 の 研 究 」保 険 学 雑 誌 602 号 102 項(2008 年)参 照 。
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た も の が あ る27。
本 件 条 項 が 定 め ら れ た の は 、 過 剰 な 保 険 契 約 に よ る 不 正 請 求 の 温 床 と な る こ と を 防 止 し 、不 正 請 求 事 案 に 対 処 す る た め で あ る と こ ろ 、 同 一 リ ス ク を 担 保 す る 保 障 で あ れ ば 、 そ の 過 剰 性 を 判 断 す る こ と が で き る の で 、「 他 の 保 険 契 約 」 に い る 保 険 契 約 と は 、 同 一 リ ス ク を 担 保 す る 保 障 を 含 む も の は 全 て 含 ま れ る も の と 考 え る 。
( 2 ) 累 積 対 象 保 険 の 範 囲 と 「 著 し く 過 大 」 の 判 断 基 準 ア 累 積 対 象 と す る 保 険 の 範 囲
給 付 金 額 等 の 累 積 の 程 度 を 算 出 す る に あ た っ て は 、 モ ラ ル リ ス ク の 徴 憑 に な る か 否 か は 法 人 の 主 体 よ り も 、 保 障 内 容 が 問 題 に な る こ と か ら 、 生 命 保 険 会 社 、 損 害 保 険 会 社 、 共 済 団 体 の 扱 う す べ て の 同 一 リ ス ク を 担 保 す る 保 障 が 含 ま れ る と 考 え ら れ る28。
イ 「 著 し く 過 大 」 の 判 断 基 準
「 著 し く 過 大 」に 該 当 す る か 否 か に つ き 何 を も っ て 判 断 す べ き か 。 著 し く 過 大 を 要 件 と し て い る の は 、 モ ラ ル リ ス ク を 含 む 不 正 利 用 の 防 止 と い う 重 大 事 由 解 除 の 趣 旨 に 鑑 み 、 付 保 金 額 が 著 し く 過 大 で あ る と 保 険 料 、 収 入 、 債 務 、 集 中 加 入 の 状 況 等 を 加 味 し て 評 価 で き る の で あ れ ば 、 何 ら か の 不 正 な 意 図 を も っ て 加 入 し て い る か 、 少 な く と も 不 正 請 求 を 行 う 動 機 づ け に な る 危 険 性 が 非 常 に 高 い と い え る か ら で あ る 。 そ こ で 、 入 院 給 付 金 日 額 等 の 合 計 額 だ け で は な く 、 保 険 料 と 収 入 と の 関 係 、 集 中 加 入 の 事 実 や 債 務 の 状 況 、 既 払 給 付 額 等 を 考 慮 し て 「 著 し く 過 大 」 に 該 当 す る か 否 か 判 断 す る こ と に な る29。
2 7名 古 屋 地 判 平 成 19 年 11 月 30 日(生 判 19 巻 616 項)【 別 紙 ⑫ 事 件 】 参 照 。 横 田 尚 昌 「 判 批 」 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 233 号 7項(2009 年)参 照 。
2 8 田 口 ・ 前 掲 4)167 項 は 、「 実 務 上 、 給 付 金 額 等 の 累 積 の 程 度 を 算 出 す る に あ た っ て は 生 命 保 険 、 損 害 保 険 、 共 済 の す べ て を 対 象 と 」 す る と し て い る の は 同 一 趣 旨 だ と 思 わ れ る 。
2 9角 田 和 央「 判 批 」保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 178 号 5 項(2003 年 )参 照 。山 口 ・ 前 掲 1 )8 項 は 、「 ① 給 付 金 日 額 の 合 計 が 過 大 で 保 険 制 度 の 本 旨 に 反 す る
9
評 価 根 拠 事 実 と し て は 、 入 院 給 付 金 等 合 計 額 、 保 険 料 合 計 額 、 集 中 加 入 の 事 実 、 既 払 給 付 金 額 な ど で あ り 、 評 価 障 害 事 実 は 、 収 入 、 債 務 、 付 保 状 況 の 合 理 性 を 示 す 事 実 な ど で あ る 。 評 価 根 拠 事 実 か ら 、 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ た 場 合 に は 、 評 価 障 害 事 実 に よ り そ の 評 価 が 減 殺 さ れ な い 限 り 、 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ る こ と と な る 。
( 3 ) 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ
重 大 事 由 に よ る 解 除 は 、 信 頼 関 係 破 壊 の 法 理 に 立 脚 す る も の で あ る か ら 、 本 件 条 項 に よ る 解 除 に つ い て も 、 個 別 事 案 ご と に 様 々 な 事 情 を 総 合 的 に 勘 酌 し て 、 信 頼 関 係 の 破 壊 が あ っ た と い え る 場 合 に は 、「 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る 」と 判 断 し て よ い と 考 え る3031。す な わ ち 、不 正 な 目 的 の 存 在 の 疑 い に つ な が る 事 実 で あ る 限 り は 、 必 ず し も そ れ 自 体 明 ら か に 背 信 的 と ま で は い え な い も の で あ っ て も 、 あ ら ゆ る 保 険 契 約 者 等 の
「 行 為 」( 保 険 契 約 締 結 前 後・保 険 事 故 時 等 の 不 自 然 な 行 動 等 )や 、
状 態 に 達 す る こ と 、 ま た は 、 ② 過 度 の 集 中 加 入 に よ り 事 故 招 致 の 蓋 然 性 が 著 し く 高 い 状 態 に 達 す る こ と で あ る 。『 過 大 』『 過 度 』『 集 中 加 入 』『 著 し く 高 い 状 態 』と は 、当 該 被 保 険 者 の 年 齢 、性 別 、職 業 、社 会 的 地 位 、治 療 費 の 水 準 、 社 会 通 念 等 を 総 合 的 に 判 断 し て 決 す る 」と す る 。田 口・前 掲 4)167 項 参 照 。 嶋 寺 ・ 前 掲 注 16)835 項 は 、「 日 額 5 万 円 程 度 に ま で 至 る と 、 一 定 規 模 の 個 人 事 業 の 経 営 者 が 事 業 リ ス ク の た め に 加 入 す る 等 の 特 殊 な 事 情 が な い 限 り 、 そ の 必 要 性 を 合 理 的 に 説 明 す る こ と は 極 め て 困 難 」 と す る 。
3 0角 田 ・ 前 掲 注 29)6 項 参 照 。 田 口 ・ 前 掲 4)167 項 で は 、「 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る 場 合 」と は 、「 保 険 法 の 包 括 条 項 が 規 定 す る 契 約 存 続 を 困 難 と す る 程 度 の 信 頼 関 係 の 破 壊 と 同 じ こ と を 意 味 す る 」 と す る 。 木 下 孝 治 「 判 批 」 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 171 号 12 項 で は 、「 第 一 義 的 に は 契 約 の 過 度 の 累 積 を 問 題 視 す る と は 言 っ て も 、 同 時 に モ ラ ル リ ス ク 性 を 併 せ 考 慮 す る こ と が 前 提 に さ れ て い る と 理 解 す る こ と も で き る 。 こ う し た 理 解 に 立 つ こ と が 許 さ れ る な ら ば 、3 号 の 解 釈 に 際 し て も 信 頼 関 係 破 壊 の 観 点 を 取 り 入 れ る こ と が 許 さ れ る 。」 と す る 。
3 1 岡 田 豊 基 「 判 批 」 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 213 号 19 項(2007 年)は 、「 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 」 と は 、 不 正 な い し 不 当 な 行 為 に 起 因 し た 保 険 事 故 が 発 生 す る と 、 保 険 団 体 が 構 築 し た 基 金 を 不 当 に 取 り 崩 す こ と に な る 状 態 を い う 、 と す る 。 ま た 、 宮 根 ・ 前 掲 26)103 項 は 、 保 険 契 約 が 狭 義 の 不 労 利 得 の 目 的 で 利 用 さ れ る 状 態 、 又 は 、 保 険 契 約 が 保 険 金 の 不 正 請 求 等 の 目 的 で 利 用 さ れ る 状 態 、 と す る 。
10
さ ら に は 「 行 為 」 以 外 の 諸 事 実 ( 過 去 の 保 険 事 故 や 直 近 の 保 険 金 請 求 に 係 る 保 険 事 故 等 を め ぐ る 不 自 然 な 事 情 、 モ ラ ル リ ス ク 懸 念 の 強 い 個 人 ・ 団 体 と の 密 接 な 関 係 等 ) も 、 同 要 件 の 評 価 根 拠 事 実 と な る も の と 考 え ら れ る32。
( 4 ) 前 記 ( 2 )( 3 ) の 両 者 の 関 係
両 者 の 関 係 に つ い て は 、 保 険 契 約 の 重 複 に よ り 給 付 金 の 合 計 額 が 著 し く 過 大 と な っ て い る こ と も 、そ れ 自 体 が 決 定 的 な も の で は な く 、 信 頼 関 係 破 壊 の 重 要 な 徴 憑 で は あ る が 、 給 付 金 の 不 正 請 求 行 為 等 他 の 要 素 と 相 ま っ て は じ め て 保 険 者 の 解 除 事 由 と し て 認 め ら れ る と い う 解 釈 が 穏 当 な と こ ろ で あ ろ う33と の 指 摘 が あ る 。
し か し 、 問 題 と な る 契 約 が 短 期 間 の 集 中 加 入 期 間 中 に 締 結 さ れ た 事 案 ( 以 下 、「 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 型 」 と い う 。) の う ち 、 前 記 の と お り 、 収 入 、 債 務 等 も 加 味 し て 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ る 事 案 に お い て は 、 不 正 取 得 目 的 の 蓋 然 性 が 高 く 、 も は や 信 頼 関 係 が 破 壊 さ れ て い る と し て 、 通 常 は 、 前 記 ( 3 ) の 要 件 も 満 た す も の と 考 え る34。 こ れ に 対 し て 、 当 該 契 約 の 加 入 当 時 は 集 中 加 入 の 状 況 に な く 、 そ の 後 に 累 積 す る に 至 っ た 事 案( 以 下 、「 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 で は な い 類 型 」 と い う 。) で は 、 加 入 当 初 は 不 正 取 得 の 蓋 然 性 が 高 い と ま で 言 え な い こ と も あ り 、 そ れ だ け は 通 常 信 頼 関 係 が 破 壊 さ れ た と は 言 え ず 、 不 必 要 入 院 の 疑 い 等 の 他 の モ ラ ル リ ス ク の 徴 憑 で あ る 事 由 も
3 2包 括 条 項 の 評 価 根 拠 事 実 に つ い て 、 宮 根 ・ 前 掲 注 18)32 項 参 照 。 本 件 条 項 は 、 包 括 条 項 の 具 体 化 で あ る た め 、 包 括 条 項 の 考 慮 要 素 と な り 得 る す べ て の 事 実 は 、「 保 険 制 度 の 目 的 に 反 す る 状 態 が も た ら さ れ る お そ れ が あ る 」の 要 件 に お い て 検 討 さ れ る も の と 考 え る 。 嶋 寺 ・ 前 掲 注 16)838 項 で は 、 包 括 条 項 で 考 慮 さ れ る 事 情 を 、 ① 契 約 加 入 時 の 事 情 、 ② 契 約 加 入 後 の 事 情 、 ③ 事 故 発 生 後 の 事 情 、 ④ そ の 他 の 事 情 、 に 分 け て 、 例 示 し て お り 、 評 価 根 拠 事 実 の 参 考 に な る と 思 わ れ る 。
3 3 角 田 ・ 前 掲 29)9 項 の 山 下 友 信 コ メ ン ト 参 照 。 同 コ メ ン ト は 、 解 除 さ れ た 契 約 が 短 期 集 中 期 間 中 に 加 入 し た も の で は な い 事 案 に 関 す る も の で あ る 。
3 4 甘 利・前 掲 7)は 、ご く 短 期 間 に 保 険 契 約 が 著 し く 重 複 し た と い う だ け で は 、 保 険 契 約 者 と の 信 頼 関 係 を 破 壊 し 保 険 契 約 の 存 続 を 困 難 と い う 要 件 を 満 た す こ と に な ら な い と す る 。
11
加 味 し て 判 断 さ れ る こ と に な る と 考 え ら れ る 。
5 . 本 件 条 項 に 係 る 裁 判 例 の 検 討
( 1 ) 本 件 条 項 に 基 づ く 解 除 を 認 め た 裁 判 例
ア 札 幌 高 裁 平 成 13 年 1 月 30 日 生 判 13 巻 58 項3 5(別 紙 ① )
( ア ) 概 要
被 控 訴 人 を 含 む
4
社 と 保 険 契 約 を 締 結 し 、 入 院 給 付 金 日 額 合 計 が2
万9000
円 、 保 険 料 月 額2
万6961
円 で あ っ た 控 訴 人 が 、 そ の 後 、2
年 間 の 間 に4
社7
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、入 院 給 付 金 日 額 合 計 が7
万4000
円 、保 険 料 月 額 が11
万2675
円 に 増 加 し 、 更 に そ の1
年 半 後 に 入 院 給 付 金 日 額 が8
万4000
円 、保 険 料 月 額 が13
万3094
円 と な っ た 事 案 で あ る 。月 収 約40
万 円 の う ち 毎 月 約15
万 円 の 住 宅 ロ ー ン 債 務 を 負 担 し て い る こ と 、4
社7
社 の 保 険 契 約 に 追 加 加 入 し た 直 後 に2
回 入 院 し 年 収 の 約3
倍 に 相 当 す る1457
万2100
円 の 保 険 金 を 受 領 し て い る こ と 、 入 院 時 に 頻 繁 に 外 泊 外 出 を 重 ね て い る こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ た 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋑ 集 中 加 入 期 間 時 で は な い 加 入 ( そ の 後 、 集 中 加 入 )、 ㋒ 給 付 金 日 額 合 計 額 、 ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 、 ㋔ 収 入 ・ 財 産 、 ㋕ 債 務 、 ㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 、 ㋗ 入 院 の 態 様 、 が 考 慮 要 素 と さ れ て お り 、 入 院 の 態 様 を 除 く 要 素 か ら 、 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ た も の で あ り 、 入 院 の 態 様 は そ の 他 の 信 頼 関 係 破 壊 事 由 と し て 位 置 づ け ら れ る も の と 考 え ら れ る36。解 除 さ れ た 契 約 の 加 入 時
3 5 判 批 と し て 、 木 下 ・ 前 掲 注 30)9 項 、 角 田 ・ 前 掲 注 29)1 項 、 甘 利 ・ 前 掲 注
8)203-207項 、 同 229-231 項 、 中 西 ・ 前 掲 注 8)108-112 項 参 照 。
3 6 中 西 ・ 前 掲 注 8)111 項 は 、「 給 付 金 額 等 の 合 計 額 が 著 し く 過 大 で あ る と い う 状 況 に 加 え て 、 被 保 険 者 が 不 必 要 入 院 の 疑 い が あ る 入 院 を し て い る 場 合 に は 、 保 険 者 に お い て こ の 被 保 険 者 は 信 頼 で き な い と 考 え て も や む を え な い 。 そ の 意 味 に お い て 、 こ の 場 合 に 保 険 者 に 解 除 権 を 認 め る こ と に は 合 理 性 が あ
12
期 が 、 集 中 加 入 期 間 で は な い た め ( 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 で は な い 類 型 )、 加 入 時 に は モ ラ ル リ ス ク が あ る と ま で は 評 価 で き な い た め 、 そ の 後 の 集 中 加 入 の 事 実 に 加 え 入 院 の 態 様 と い う モ ラ ル リ ス ク の 徴 憑 も 考 慮 し て 、 信 頼 関 係 破 壊 の 有 無 を 検 討 し た も の と 思 わ れ る 。
イ 熊 本 地 判 平 成 14 年 10 月 10 日 生 判 14 巻 679 項 (別 紙 ② ) ( ア ) 概 要
原 告 を 含 む 複 数 の 保 険 会 社 と 保 険 契 約 を 締 結 し 、 入 院 給 付 金 日 額 合 計 が
2
万7000
円 と な っ た 事 案 で あ る 。被 告 は 無 職 で あ る こ と 、 入 院 給 付 金 等 合 計 額2716
万6000
円 を 受 領 し て い る こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ た 。 た だ し 、 本 件 で は 、 過 去5
年 以 内 に 入 院 事 実 が 多 数 存 在 し た に も か か わ ら ず 、 一 部 の 手 術 の み 申 告 し て い る と し て 、 詐 欺 無 効 、 告 知 義 務 違 反 解 除 も 認 め ら れ て い る 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 、 ㋔ 収 入 、 ㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 が 、考 慮 要 素 と し て 挙 げ ら れ て い る 。し か し 、本 件 で は 、 集 中 加 入 の 事 実 も 考 慮 さ れ て い な い う え 、 他 の 事 案 に 比 し て 入 院 給 付 日 額 が
2
万7000
円 と 低 い に も か か わ ら ず 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ た の は 、 無 職 に も か か わ ら ず 多 額 の 給 付 金 を 受 給 し て い る こ と に 加 え 、 そ の 他 の 信 頼 関 係 破 壊 事 由 と し て 、 多 数 の 告 知 義 務 違 反 事 実 が あ っ た に も か か わ ら ず 、 こ れ を 申 告 し な か っ た と い う 加 入 時 の 事 実 が 重 視 さ れ 、 解 除 が 認 め ら れ た の で は な い か 考 え る 。 こ の 裁 判 例 は 、 集 中 加 入 の 事 実 が な く と も 、 モ ラ ル リ ス ク 徴 憑 た る 事 実 を 総 合 し て 、 信 頼 関 係 破 壊 と 評 価 さ れ る 場 合 に は 本 件 条 項 の 適 用 が 認 め ら れ る ケ ー ス も あ る こ と を 示 し て い る と 思 わ れ る 。る 」 と す る 。
13
ウ 福 岡 地 判 平 成 15 年 12 月 26 日 生 判 15 巻 842 項3 7(別 紙 ③ ) ( ア ) 概 要
1
か 月 間 に 被 告 保 険 会 社 と の 契 約 を 含 む 保 険7
件 に 加 入 し 、入 院 給 付 金 日 額 合 計 が8
万 円 、 通 院 給 付 金 日 額 合 計 が3
万8500
円 、 と な っ た 原 告 が 、 加 入 直 後 よ り 入 通 院 を 繰 り 返 し 、 原 告 の 主 張 す る 年 収 を 前 提 と し て も 年 収 の3
倍 も の 給 付 金 請 求 が 行 わ れ た 事 案 で あ る 。保 険 料 月 額3
万5000
円 に 対 し 、保 険 契 約 者 は 無 職 無 収 入 か 、少 な く と も30
万 円 を 大 き く 下 回 る 収 入 し か 得 て お ら ず 、 数 千 万 円 単 位 の 負 債 を 抱 え 、 月 々 数 十 万 円 も の 返 済 義 務 を 負 っ て い る 経 済 状 況 、 短 期 的 集 中 加 入 し な け れ ば な ら な い 事 情 は な い こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ 、 給 付 金 請 求 が 棄 却 さ れ た 事 例 で あ る 。 な お 、 詐 欺 無 効 の 主 張 も さ れ た が 、 そ の 判 断 は さ れ て い な い 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等 、 ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 、 ㋔ 収 入 、 ㋕ 債 務 、 ㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 が 重 大 事 由 の 考 慮 要 素 と さ れ て い る 。 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 型 に 属 す る 事 案 で あ り 、 入 院 の 必 要 性 に 疑 い が あ る こ と な ど そ の 他 の 信 頼 関 係 破 壊 事 由 は 考 慮 さ れ て い な い 。 な お 、 こ れ ら の 要 素 は 、本 件 条 項 に 基 づ く 評 価 根 拠 事 実
(
主 要 事 実)
と な る と 同 時 に 、詐 欺 無 効( 当 時 )の 間 接 事 実 と も な り 得 る も の で あ る が 、 裁 判 所 が 、 抗 弁 事 由 と し て 、 本 件 条 項 に よ る 重 大 事 由 解 除 の 判 断 を 選 択 し て い る の は 、 詐 欺 無 効 で は 、 主 観 的 要 件 の 認 定 を 伴 う た め38、そ れ を 伴 わ な い 本 件 事 由 を 選 ん だ の で は な い か と 考 え る 。
3 7 甘 利 ・ 前 掲 8)207-209、229-231 項 参 照 。
3 8 宮 根 ・ 前 掲 26)は 、 詐 欺 を 構 成 す る た め 、 内 心 の 事 実 で あ る 不 正 請 求 等 の 目 的 の 立 証 の 困 難 性 を 指 摘 し て い る 。
14
エ 東 京 地 判 平 成 16 年 6 月 25 日 生 判 16 巻 438 項3 9(別 紙 ④ ) ( ア ) 概 要
保 険 料 の 負 担 を 軽 減 す る た め に 既 存 の 保 険 契 約 を 解 約 又 は 減 額 し た 被 告 が 、
3
か 月 間 に 原 告 保 険 会 社 を 含 む5
社8
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、保 険 料 月 額 が3
万905
円 か ら10
万6135
円 に 増 額 し 、 が ん 診 断 一 時 金 が3400
万 円 に 、 入 院 給 付 金 合 計 額 が10
万3000
円 と な っ た 事 案 で あ る 。加 入 当 時 自 ら の 乳 房 の し こ り に 気 づ い て い た 可 能 性 を 否 定 で き な い こ と 、 加 入 直 後 に 検 診 を 受 け て 、 乳 が ん と の 確 定 診 断 を 受 け て い る こ と な ど を 勘 案 し 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 を 認 め 、 保 険 会 社 の 既 払 保 険 金 の 返 還 請 求 を 認 め た 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等 及 び ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 と い う 他 の 事 案 と 共 通 の 要 素 に 加 え 、 ㋘ 自 ら 乳 が ん に 気 づ い た 可 能 性 や 加 入 直 後 の 検 診 に よ る 乳 が ん の 確 定 診 断 を 考 慮 要 素 と し て い る 。 本 件 は 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 で あ る に も か か わ ら ず 、 著 し く 過 大 と い う 要 素 以 外 の 事 項 も 併 せ て 考 慮 さ れ て い る 。 こ れ は 、 が ん は 、 自 己 の 意 思 に よ り 引 き 起 こ す こ と は 困 難 で あ る こ と か ら 、 モ ラ ル リ ス ク は 他 の 疾 病 保 険 よ り は 低 い た め で あ る と 考 え る 。
オ 東 京 高 判 平 成 16 年 9 月 7 日 生 判 16 巻 680 項 (別 紙 ⑤ ) ( ア ) 概 要
3
か 月 間 に 被 控 訴 人2
社 を 含 む 保 険 会 社4
社 及 び2
会 と の 間 で6
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、 障 害 特 約 等 に お け る 保 険 金 額 が7540
万 円 、 人 工 骨 頭 を そ う 入 置 換 し た 場 合 の 障 害 給 付 金 額 が2118
万 円 、 入 院 給 付 金 日 額 が3
万8000
円 、 保 険 料 月 額 合 計 額 が6
万850
円 と な っ た 控 訴 人 が 、 ス キ ー を し た 際 に 転 倒 し て 傷
3 9 判 批 と し て 、森 原 憲 司・保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 197号(2005年)5項 参 照 。
15
害 を 受 け た と し て 、 傷 害 特 約 に 基 づ く 傷 害 給 付 金 等 を 請 求 し た 事 案 で あ る 。 年 収 は
143
万4217
円 、 就 労 期 間 の 月 額 平 均 額 は14
万 円3000
円 に 対 し て 、 自 宅 家 賃 は 月 額9
万 数 千 円 、 生 活 費 と し て 月 額 約5
な い し6
万 円 で あ っ た 等 の 収 入 資 力 に 照 ら す と 、 到 底 保 険 料 月 額 の 合 計 額 を 支 払 い 続 け る こ と が で き な い も の と し て 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 を 認 め た 。 な お 、 ス キ ー間 の 第 1 入 院 で
791
万750
事 故 が 発 生 し た と は 認 め ら れ な い と 判 示 さ れ て い る 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等 、 ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 及 び ㋔ 収 入 と 支 出 が 考 慮 さ れ て い る 。 解 除 さ れ た 契 約 は 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 の た め 、 入 院 の 必 要 性 が 疑 わ し い こ と な ど の 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ る 事 由 以 外 は 考 慮 さ れ て い な い 。 な お 、 重 大 事 由 解 除 の 判 断 の 部 分 に 記 載 は さ れ て い な い も の の 、 傷 害 給 付 金 等 の 請 求 の 原 因 と な っ た ス キ ー 事 故 自 体 が 認 定 で き な い と し て お り 、 こ の 事 実 も 信 頼 関 係 が 破 壊 さ れ た と の 判 断 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 。
カ 大 分 地 判 平 成 17 年 2 月 28 日4 0生 判 17 巻 156 項 ・判 タ 1216 号 282 項 (別 紙 ⑥ )
( ア ) 概 要
被 告 保 険 会 社 と の 保 険 契 約 締 結 後 、
2
年 間 に11
社14
契 約 の 保 険 契 約 を 締 結 し た 結 果 、加 入 す る 保 険 契 約 が15
社27
件 と な り 、 入 院 給 付 金 日 額 合 計11
万9000
円 と な っ た 原 告 が 、 入 院 給 付 金 を 請 求 し 、 被 告 保 険 会 社 が 既 払 給 付 金 の 返 還 を 求 め た 事 案 で あ る 。 同 種 の 疾 病 で の 入 退 院 を 繰 り 返 し 、 収 入 ( * 認 定 さ れ て い な い 。)に 比 べ て1658
万7984
円 と い う 多 額 の 入 院 給 付 金 を 受 け 、 入 院 の 必 要 性 に 疑 問 が あ る 点 も あ り 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事
4 0 判 批 と し て 、 岡 田 ・ 前 掲 31)14 項 、 中 西 ・ 前 掲 8)112-120 項 参 照 。
16
由 解 除 を 認 め 、 重 大 事 由 が 生 じ た 以 後 の 既 払 い 給 付 金 の 返 還 請 求 が 認 め ら れ た 。
( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、㋑ 集 中 加 入 期 間 時 で は な い 加 入
(
そ の 後 集 中 加 入)
、㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 、㋔ 収 入 、㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 及 び ㋗ 入 院 の 態 様 が 考 慮 要 素 と さ れ て い る 。 こ の 判 断 枠 組 み は 、 上 記 ア
(
別 紙 ①)
と 同 様 で あ る た め 、 繰 り 返 さ な い 。キ 千 葉 地 判 八 日 市 場 支 部 平 成 18 年 6 月 21 日 生 判 18 巻 406 項 (別 紙 ⑦ )
( ア ) 概 要
原 告 を 含 む 保 険 会 社
6
社 と7
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、 疾 病 入 院 給 付 金 日 額 が6
万6500
円 、災 害 入 院 給 付 金 が7
万9000
円 と な っ た 被 告 が 、 原 告 保 険 会 社 に よ り 、 重 大 事 由 解 除 に 伴 う 既 払給 付 金 の 返 還 を 求 め ら れ た 事 案 で あ る 。 第 1 入 院 の 約
9
か 月 前 か ら4
か 月 間 に 原 告 を 含 む4
社 と 保 険 契 約 を 締 結 し 、 約4
カ 月0
円 を 受 領 し て い る こ と 、 そ の 後 、 第2
入 院 に よ り278
万1116
円 を 受 領 し て い る こ と 、 い ず れ の 入 院 も そ の 必 要 性 に 疑 問 を 差 し 挟 ま ざ る 得 な い こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 を 認 め ら れ 、 原 告 の 返 還 請 求 が 認 容 さ れ た 。( イ ) 短 評
本 判 決 は 、 本 件 契 約 が 短 期 集 中 加 入 期 間 中 と ま で い え る か 微 妙 な 事 案 で あ る (
4
カ 月 で 入 院 給 付 金 日 額 合 計 4 万 6 千 円 )。 本 判 決 で は 、 考 慮 要 素 と し て 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等 、 ㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 及 び ㋗ 入 院 の 態 様 が 考 慮 さ れ て い る 。 本 件 で は 、 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 と ま で は い え る か 微 妙 な 事 案 で あ る た め 、 入 院 の 必 要 性 に 疑 問 が あ る こ と も 併 せ て 検 討 さ れ た の で は な い か と 考 え る 。17
ク 東 京 地 判 平 成 19 年 5 月 7 日 生 判 19 巻 194 項 (別 紙 ⑧ ) ( ア ) 概 要
被 告 は 原 告 を 含 む 保 険 会 社
10
社 と12
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、 災 害 入 院 給 付 金 日 額 合 計9
万9500
円( 交 通 事 故 の 場 合 、災 害 入 院 給 付 金 日 額 合 計10
万5500
円 )、月 額 保 険 料 合 計 額 約8
万3248
円 と な っ た 事 案 で あ る 。 原 告 が 被 告 に 対 し て 重 大 事 由 解 除 に 伴 う 既 払 給 付 金 の 返 還 請 求 を 請 求 し た 。当 初 は 、3 社 、3
件 の 契 約 で あ っ た も の の 、 そ の 後 、 原 告 と の 契 約 を 含 む9
契 約 は1
年4
カ 月 の 間 に 集 中 的 に 契 約 さ れ て い る こ と 、 被 告 に 安 定 的 な 収 入 が な い こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 を 認 め 、 原 告 の 被 告 に 対 す る 返 還 請 求 を 認 め た 。 た だ し 、 擬 制 自 白 の 事 案 で あ る 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 、㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 及 び ㋔ 収 入 が 考 慮 要 素 と さ れ て い る 。 こ の 事 例 で は 、 解 除 さ れ た 契 約 が 集 中 加 入 期 間 中 に 加 入 し た ケ ー ス で あ り 、 入 院 の 必 要 性 が 疑 わ し い こ と な ど は 考 慮 さ れ て い な い 。
ケ 札 幌 高 判 平 成 27 年 10 月 29 日 判 例 集 未 登 載 ( 別 紙 ⑨ ) ( ア ) 概 要
約
1
年 間 に 被 告 を 含 む9
社 と13
件 の 保 険 契 約 等 を 締 結 し 、疾 病 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 が10
万5000
円 、 保 険 料 月 額 合 計10
万 円 と な っ た 事 案 で あ り 、 原 告 が 被 告 に 対 し て 契 約 上 の 地 位 の 確 認 を 求 め た も の で あ る 。原 告 は 入 院 給 付 金 に よ り 約1217
万 円 を 得 た 一 方 、 そ の 間 に 支 払 っ た 保 険 料 の 合 計 は 約171
万 円 に と ど ま る こ と 、収 入 は 不 明 か 、仮 に 原 告 の 主 張 す る 月20
万 円 な い し25
万 円 の 収 入 を 得 て い た と し て も 、保 険 料 及 び 入 院 給 付 金 の 合 計 額 と の 関 係 、 そ の 必 要 性 が 明 ら か で な い こ と か ら 、 本 件 条18
項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ た 。 ( イ ) 短 評
保 険 法 施 行 後 に 解 除 が な さ れ た 事 案 で あ る の で 、 保 険 法 が 適 用 と な る 事 案 で あ る 。
判 断 要 素 は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 、 ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 、 ㋔ 収 入 及 び ㋖ 保 険 金 の 受 給 歴 で あ る 。 こ の 事 例 は 、 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 の 類 型 に 属 し て 、 判 断 手 法 も 、 保 険 法 施 行 前 の 事 案 で あ る 上 記 ウ 、 オ と 同 様 で あ る 。 コ 東 京 地 判 平 成 28 年 3 月 3 日 判 例 集 未 登 載 (別 紙 ⑩ )
( ア ) 概 要
約
5
カ 月 間 に 被 告 ら を 含 む 保 険 会 社6
社 と8
件 の 保 険 契 約 等 を 締 結 し 、入 院 給 付 金 日 額 が7
万6200
円 と な っ た 事 案 で あ り 、契 約 者 で あ る 原 告 が 、 被 告 ら に 対 し て 入 院 共 済 金 を 請 求 し た 事 案 で あ る 。 原 告 は 自 営 業 者 で 、 自 営 業 者 の 平 均 疾 病 入 院 給 付 金 日 額 が1
万995
円 で あ り 、 原 告 の 得 ら れ る 入 院 日 額 が 自 営 業 者 の 平 均 額 の 約6.9
倍 と な っ て い る こ と 、原 告 の 加 入 動 機 は 信 じ 難 い こ と か ら 、 本 件 条 項 の 規 定 の あ る 契 約 に つ き 本 件 条 項 に よ る 重 大 事 由 解 除 を 認 め 、 入 院 給 付 金 の 請 求 を 棄 却 し た 。( イ ) 短 評
上 記 ケ と 同 様 に 、 保 険 法 施 行 後 に 重 大 事 由 解 除 が 行 使 さ れ た 事 案 で あ る 。
考 慮 要 素 と し て は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等 及 び ㋘ そ の 他 ( 加 入 動 機 が 信 じ が た い こ と ) が 考 慮 さ れ て い る 。 こ の 裁 判 例 も 、 他 の 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 事 案 と 同 様 に 、入 院 の 必 要 性 等 の 他 の 信 頼 関 係 破 壊 事 由 は 挙 げ ら れ て い な い 。
19
( 2 ) 本 件 条 項 の 適 用 を 否 定 し た 裁 判 例
ア 東 京 簡 判 平 成 4 年 2 月 28 日4 1文 研 生 判 7 巻 31 項 (別 紙 ⑪ ) ( ア ) 概 要
10
か 月 間 に10
社12
件 の 保 険 契 約 を 締 結 し 、入 院 給 付 金 日 額 合 計 が6
万4000
円 、 保 険 料 月 額 が16
万5041
円 と な っ た 原 告 が 、 加 入 直 後 に 入 院 し 、 被 告 で あ る 保 険 会 社 に 対 し て 給 付 金 の 請 求 を し た 事 案 で あ る 。原 告 夫 婦 の 年 収 合 計 は1420
万 円 で あ り 、 子 供 も 独 立 し 、 住 宅 ロ ー ン な ど の 債 務 も な い こ と か ら 、 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ ず 、 給 付 金 請 求 が 認 め ら れ た 。( イ ) 短 評
本 判 決 で は 、 ㋐ 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 、 ㋒ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 、 ㋓ 保 険 料 月 額 合 計 額 、 ㋔ 収 入 及 び ㋕ 債 務 が 考 慮 要 素 と さ れ て い る 。 こ の 意 味 で は 、 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 の 類 型 に 属 す る 。 し か し 、 収 入 に 占 め る 保 険 料 月 額 の 割 合 が
16
% に 過 ぎ ず 、 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ な か っ た 点 は 正 当 で あ る と 思 わ れ る42。 イ 名 古 屋 地 判 平 成 19 年 11 月 30 日 生 判 19 巻 616 項4 3(別 紙 ⑫ ) ( ア ) 概 要無 配 当 医 療 保 険 契 約 の 本 件 条 項 に 基 づ く 重 大 事 由 解 除 の 有 効 性 が 争 わ れ た 事 案 で あ る 。「 他 の 保 険 契 約 」と は 実 質 的 に 同 一 の 保 険 金 支 払 事 由 を 定 め る 保 険 契 約 を い う と し て 、 無 配 当 医 療 保 険 契 約 と 特 定 疾 病 保 障 保 険 契 約 と は 保 険 金 の 支 払 事 由 を 実 質 的 に 同 一 と す る こ と は で き な い と し て 、 両 契 約 の 給 付 額 の 合 算 を 認 め な か っ た 。無 配 当 医 療 保 険 契 約 と 重 複 す る 入 院 保 障 日 額 は
1
4 1 判 批 と し て 、糸 川 厚 生・文 研 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト 99 号(1994 年)1 項 、 甘 利 ・ 前 掲 注 8)209-210 項 、 同 230 項 、 勝 野 ・ 前 掲 注 8)434-436 項 参 照 。
4 2 糸 川 ・ 前 掲 41)3 項 は 、「 本 件 の 収 入 に 占 め る 保 険 料 の 割 合 が 14% 弱 で あ れ ば 、 社 会 通 念 上 許 容 す る こ と の で き な い 不 相 当 性 の 指 摘 は 困 難 で あ る 」 と す る 。
4 3 判 批 と し て 、 横 田 ・ 前 掲 注 27)7 項 以 下 参 照 。
20
万
6
千 円 で あ り 、 著 し く 過 大 と は 言 え な い と し て 、 重 大 事 由 解 除 が 認 め ら れ な か っ た 。( イ ) 短 評
私 見 か ら は 、 無 配 当 医 療 保 険 契 約 と 特 定 疾 病 保 障 保 険 契 約 で は 、 疾 病 と い う リ ス ク を 担 保 す る 保 障 と い う 意 味 で 同 一 リ ス ク を 担 保 す る 保 障 と し て 、 両 者 を 併 せ て 著 し く 過 大 か 否 か を 判 断 し て も よ か っ た の で は な い か と 考 え る 。
( 3 ) 裁 判 例 の 傾 向 ア 訴 訟 類 型
訴 訟 類 型 と し て は 、
12
の 裁 判 例 を 取 り 上 げ た が 、5
件 が 保 険 者 側 か ら の 既 払 保 険 金 の 返 還 請 求 訴 訟 あ り 、6
件 が 契 約 者 側 か ら 保 険 者 へ の 給 付 請 求 で あ り 、 残 り1
件 が 契 約 者 か ら の 給 付 請 求 に 対 し て 反 訴 と し て 返 還 請 求 を 求 め た も の で あ る 。 約 半 数 が 保 険 者 側 か ら の 返 還 請 求 訴 訟 で あ り 、 保 険 者 側 が 、 支 払 請 求 に 対 す る 抗 弁 と し て 重 大 事 由 解 除 を 行 っ て い る だ け で は な く 、 積 極 的 に 重 大 事 由 解 除 に 伴 う 返 還 請 求 を 行 っ て い る こ と が 表 れ て い る 。イ 入 院 給 付 金 日 額 合 計 額 等
本 件 条 項 の 適 用 が 認 め ら れ た 事 案 の 中 で 、 主 に 疾 病 入 院 給 付 金 日 額 が 問 題 と な っ た 事 案 ( 別 紙 ① ② ③ ④ ⑥ ⑧ ⑨ ⑩ ) で は 、 最 低 額 が
2
万7000
円 、最 高 額 が11
万9000
円 で 、そ の 平 均 が 約8
万3000
円 で あ っ た 。 こ の よ う な 幅 が あ る の は 、 事 案 に 応 じ て 、 前 記 考 慮 要 素 に 応 じ て 信 頼 関 係 破 壊 の 有 無 を 総 合 的 に 検 討 さ れ る た め で あ り 、 付 保 金 額 は 一 応 の 目 安 に は な る も の の 、 決 定 的 な 要 素 で は な い こ と を 示 し て い る と 思 わ れ る 。ウ 短 期 集 中 の 期 間
短 期 集 中 期 間 中 の 加 入 型 の 事 案( 別 紙 ③ ④ ⑧ ⑨ ⑩ )で は 、「 短 期 」 に つ い て 、最 短 で
1
か 月 、最 大 で1
年4
カ 月 で あ り 、幅 が 大 き い 。 個 別 事 案 毎 に 判 断 す る こ と に な る と 思 わ れ る 。21
エ 類 型 に 応 じ た 判 断 要 素 の 傾 向
重 複 加 入 の 類 型 に 応 じ て 評 価 根 拠 事 実 の 範 囲 も 異 な る 扱 い を し て い る も の と 思 わ れ る 。 す な わ ち 、 集 中 加 入 中 の 加 入 型 で は 、 著 し く 過 大 と 評 価 さ れ る の で あ れ ば 、 他 の 評 価 根 拠 事 実 を 考 慮 し な く て も 、 本 件 条 項 の 要 件 に 該 当 す る と 概 ね 判 断 さ れ て い る 。 こ れ に 対 し て 、 集 中 加 入 期 間 中 の 加 入 で は な い 類 型 で は 、 著 し く 過 大 の 要 素 だ け で は な く 、 そ の 他 の 信 頼 関 係 破 壊 事 由 と し て 入 院 の 必 要 性 に 疑 い が あ る こ と 等 も あ わ せ て 検 討 さ れ て い る 。
6 . 重 複 加 入 に よ る 重 大 事 由 解 除 の そ の 他 の 問 題
( 1 ) 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務4 4
損 害 保 険 会 社 で は 他 保 契 約 の 告 知 義 務 を 課 し て お り 、 生 命 保 険 会 社 で は 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 は 定 め ら れ て い な い45 46。 本 件 条 項 が 、 前 記 の と お り 、 損 害 保 険 会 社 が 販 売 す る 傷 害 疾 病 定 額 保 険 に も 導 入 さ れ て い る 。 そ こ で 、 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 違 反 の 事 実 は 、 そ の 他 の モ ラ ル リ ス ク の 存 在 と 合 わ せ て 、 本 件 条 項 の 要 件 該 当 性 の 判 断 を
4 4 他 保 険 契 約 の 告 知 ・ 通 知 義 務 の 問 題 に つ い て は 、佐 野 誠「 他 保 険 契 約 の 告 知・通 知 義 務 」落 合 誠 一 = 山 下 典 孝・新 し い 保 険 法 の 理 論 と 実 務( 別 冊 金 商 ) 89 項(2008 年)、 出 口 正 義 「 保 険 法 の 若 干 の 解 釈 問 題 に 関 す る 一 考 察 」 損 害 保 険 研 究 71 巻 3 号 27 項(2009 年)、洲 崎 博 史「 保 険 法 の も と で の 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 ・ 通 知 義 務 」竹 濱 修 = 木 下 孝 治 = 新 井 修 司 ・ 保 険 法 改 正 の 論 点 82 項 ( 法 律 文 化 社 、2009年 )、 松 澤 登 「 告 知 義 務 違 反 に よ る 解 除 」 甘 利 公 人 = 山 本 哲 生 ・ 保 険 法 の 論 点 と 展 望 42 項 ( 商 事 法 務 、2009 年 )、 大 槻 哲 雄 「 保 険 法 成 立 を 受 け た 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に お け る 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 及 び 通 知 義 務 の 再 検 討 」 大 塚 英 明 = 児 玉 康 夫 ・ 新 保 険 法 と 保 険 契 約 法 理 の 新 た な 展 開 497 項 ( ぎ ょ う せ い 、2009 年 )、 潘 阿 憲 「 道 徳 的 危 険 事 実 と 告 知 事 項 」 損 害 保 険 研 究 73 巻 2 号 1 項(2011 年)、 勝 野 義 孝 「 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 ・ 通 知 義 務 違 反 と 解 除 」落 合 誠 一 = 山 下 典 孝・保 険 法 判 例 の 分 析 と 展 開・金 融 ・ 商 事 判 例 1386 号 118 項(2012 年)、 潘 阿 憲 「 重 大 事 由 解 除 に 関 す る 一 考 察 」 損 害 保 険 研 究 75 巻 4 号 211 項(2014 年)、 潘 阿 憲 「 生 命 保 険 契 約 と 重 大 事 由 解 除 」 生 命 保 険 論 集 192 号 13 項(2015 年)、 等 参 照 。
4 5 共 済 団 体 の 中 に は 、「 入 院 給 付 金 付 き の 保 険 ・ 共 済 に 4 社 以 上 加 入 し て い る 。」か 否 か を 告 知 事 項 と し て い る と こ ろ も あ る( 全 労 済 の こ く み ん 共 済 加 入 申 込 書 A 質 問 表 )。
4 6 生 命 保 険 会 社 の 引 き 受 け る 保 険 契 約 に 他 保 険 契 約 の 告 知 義 務 が 定 め ら れ て い な い 理 由 に つ き 、 松 澤 ・ 前 掲 注 44)44 項 参 照 。