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595

化学と生物 Vol. 51, No. 9, 2013

陸上植物の世代交代の謎にせまる

遺伝子重複と機能分化による胞子体の劇的な形態進化

私たちは日常的にさまざまな植物を目にする.その 数,30万種ともいわれている陸上植物は約4億7千万年 以上前にシャジクモ藻類のような祖先から起源したと考 えられている(1).陸上植物はその生活環のなかで染色体 を一組もつ時期(単相)と二組もつ時期(複相)とを交 互に繰り返し,大きさや生活様式の異なる多細胞体制を 構築する異形世代交代を行う.単相に形成される体は配 偶体,複相に形成される体は胞子体と呼ばれ,それぞれ 最終的に配偶子(卵細胞と精細胞)と胞子を形成する.

それぞれの発生プログラムは厳密に制御されており,減 数分裂と受精によって開始される.陸上植物の進化の初 期に分岐したコケ植物では,私たちが目にしている体の 大部分は配偶体に相当し,胞子体は配偶体から突き出て いる軸とその先端の緑ないし茶色の膨らんだ組織,胞子 のうのみである.一方,維管束植物(シダ植物,裸子植 物,被子植物)では複相が生活環の大部分を占めてお り,特に被子植物では配偶体が数細胞にまで退化してい る.陸上植物に近縁と考えられているシャジクモ藻類は 単相が多細胞となるが,複相は単細胞の受精卵のみであ る.以上をまとめると,陸上植物の陸上進出に前後して 複相の多細胞化が起こり,さらに維管束植物の系統で胞 子体の巨大化・複雑化が起こったと考えられる.現在,

地表を覆っている植物の大部分は維管束植物の胞子体に 相当するので,陸上植物の進化において複相の多細胞 化,巨大化は重要なイベントであった(図1

では,どのような遺伝子変化が陸上植物の劇的な形態 進化をもたらしたのだろうか.緑色植物(緑藻と陸上植 物)に共通の転写因子の研究から胞子体の進化を考察し てみよう.今回,紹介するのは転写因子 KNOX (

 like homeobox) である.   遺伝子は,トウ モロコシの葉の形態異常変異体   の原因遺伝子 として単離され,植物では初めてのホメオボックス遺伝 子として1991年に報告された(2).その後,さまざまな 植物からKNOX遺伝子が見つかった.単細胞緑藻クラ ミドモナスは1個の   遺伝子をもつ.クラミドモ ナスには性別があり,それぞれプラス型とマイナス型の 性別をもつ配偶子に分化するが,  遺伝子はマイ ナス型配偶子特異的に発現する.そして,KNOXタン

パク質を発現するマイナス型配偶子がプラス型配偶子と 接合した際,プラス型配偶子特異的に発現するBELLタ ンパク質と一緒に複相特異的発生プログラムを制御す る(3)

一方,陸上植物では遺伝子重複により   遺伝 子と   遺伝子に分かれ,それぞれで遺伝子亜族 を形成している(4).先のトウモロコシの   の原 因遺伝子は   遺伝子亜族に属しており,これに 含まれる遺伝子は被子植物の胞子体の茎葉形成に重要な 役割を担っていることがわかってきた.被子植物は胞子 体の茎の先端に茎頂分裂組織を作り,それを生涯維持す る一方で,その周辺部から繰り返し葉原基を分化するこ とで,繰り返し構造の茎葉を形成することができる.

  遺伝子はこの茎頂分裂組織で発現してその未 分化状態の維持に機能し,その周辺の葉原基予定領域で は   遺伝子や   遺伝子らによって    遺伝子の発現が抑制され,そこから,葉原基が分化す る(5).被子植物は胞子体の茎頂で複雑な   遺伝

複相の巨大化・複雑化 シャジクモ藻類 コケ植物

ヒメツリガネゴケ 被子植物 シロイヌナズナ

複相(胞子体)

単相(配偶体)

+ - 受精 緑藻 クラミドモナス

減数分裂 受精 受精 減数分裂

減数分裂 接合 減数分裂

KNOX

KNOX1 KNOX2

KNOX1

KNOX2

遺伝子重複と 機能分化

(時期は不明) 複相の分裂組織の維持

発現調節の複雑化 複相の分裂組織の維持

複相で単相の 発生プログラムの抑制

複相の発生プログラム

の制御

複相の多細胞化

図1緑色植物の体制と系統関係,および   遺伝子進化 の模式図

複相に着目すると,クラミドモナスとシャジクモ藻類などの緑藻 では単細胞であるが,陸上植物では多細胞組織である.

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今日の話題

596 化学と生物 Vol. 51, No. 9, 2013

子の発現調節を行うことで,茎頂分裂組織の未分化状態 の維持と葉原基分化を平行して行い,繰り返し構造の茎 葉を形成することが明らかとなってきた.では,緑藻と 被子植物の中間に位置するコケ植物ではどうだろうか.

コケ植物の胞子体は発生初期に分裂組織を作るが,じき 消失し,その後,1個の胞子のうを分化して発生を終了 する.コケ植物ヒメツリガネゴケの   遺伝子は 分裂組織で発現し,分裂組織の消失とともにその発現も 消失する.ヒメツリガネゴケゲノムには   遺伝子や 

 遺伝子といった被子植物   遺伝子の発 現調節にかかわる遺伝子が存在せず,それらの遺伝子が 獲得され, 遺伝子の複雑な発現調節機構が成立 したことで被子植物胞子体の複雑化・巨大化が実現した と考えられる(6, 7)

では,   遺伝子の姉妹遺伝子,   の獲 得は陸上植物の進化にどのような役割を担ったのだろ う.ヒメツリガネゴケ   遺伝子の機能欠損株で は,初期で胞子体発生が停止し,その体の一部から配偶 体様組織が形成された.それを培養すると,核相は複相 にもかかわらず,配偶体として成長し,最終的に配偶子 である卵細胞や精子も形成した.ヒメツリガネゴケ 

  遺伝子は胞子体発生を通じて発現しており,

胞子体で単相の発生プログラムの抑制に機能していると 推測された.以上をまとめると,もともと複相特異的発 生プログラムを制御していた   遺伝子が緑藻と陸 上植物との分岐の後,陸上植物の系統で遺伝子重複によ り2個になり,  遺伝子は複相の分裂組織の維持 に,   遺伝子は複相で単相の発生プログラムの 抑制に機能するようになったと推測される.複相での分 裂組織の維持と単相の発生プログラムの抑制の両方が獲 得されたことで複相の多細胞体制が成立し,その結果,

陸上植物は現在のような異形世代交代を行うようになっ

たと考えられる(8)

今後,シャジクモ藻類のゲノム計画が進められ,あわ せて機能解析系が確立されれば,遺伝子重複がいつ頃起 こったのか,また,  遺伝子と   遺伝子 の機能分化がいつ頃起こったのかが明らかにされていく と期待される.被子植物   遺伝子の機能につい ては今後の解析が待たれるところである.

  1)  L.  E.  Graham :“Origin  of  Land  Plants,”  John  Wiley  & 

Sons, Inc., 1993, 渡邊 信,堀 輝三共訳, 陸上植物の起 源・緑藻から緑色植物へ

  2)  E. Vollbrecht, B. Veit, N. Sinha & S. Hake : , 350,  241 (1991).

  3)  J.-H. Lee, H. Lin, S. Joo & U. Goodenough : , 133, 829 

(2008).

  4)  K. Mukherjee, L. Brocchieri & T. R. Burglin : , 26, 2775 (2009).

  5)  A. Hay & M. Tsiantis : , 137, 3153 (2010).

  6)  K. Sakakibara, T. Nishiyama, H. Deguchi & M. Hasebe :   , 10, 555 (2008).

  7)  榊原恵子:生物の科学遺伝, 1, 39 (2013).

  8)  K. Sakakibara  : , 339, 1067 (2013).

(榊原恵子,東京大学大学院理学系研究科)

プロフィル

榊原 恵子(Keiko SAKAKIBARA)  

<略歴>2003年総合研究大学院大学生命 科学研究科分子生物機構論専攻修了/同 年山口県立萩高等学校常勤講師/2004年 広島大学大学院理学研究科,学術振興会 特別研究員 (PD)/2007年オーストラリ アMonash大学リサーチフェロー/2009年 ERATO長谷部分化全能性進化プロジェク ト技術参事/2011年広島大学大学院理学 研究科特任助教を経て2013年より東京大 学大学院理学系研究科助教<研究テーマと 抱負>陸上植物の形態進化を引き起こした ゲノム変化を明らかにする<趣味>着物,

料理,手芸などの創作活動

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