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植物の細胞核を駆動するミオシンXI-i複合体 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 53, No. 2, 2015

植物の細胞核を駆動するミオシン XI-i 複合体

細胞内で核を動かす仕組みは動物と植物で異なっていた

教科書を開くと,細胞核は細胞の中心に鎮座した丸い オルガネラとして描かれていることが多い.しかし実際 には,核は細胞内を動き回る.特に高等植物の細胞核 は,形態をダイナミックに変化させながら非常に活発に 動くことが知られている.植物の細胞核の運動は,組織 の発生,微生物の共生や病害応答,受精,環境光に対す る定位,細胞成長,非対称細胞分裂といったさまざまな 成長戦略の局面において必須な現象であることがわかっ てきた(1).動物細胞では,細胞核の運動の詳細な分子機 構が明らかにされており,主として微小管とそれに付随 するモーター分子(キネシン・ダイニン)が駆動力と なっていることが知られている.これらのモーター分子 はLINC(Linker of Nucleoskeleton and Cytoskeleton)

複合体と呼ばれる核膜タンパク質群によって核に連結さ れ,細胞質からの機械的な力を細胞核に伝えることがで きる(2).LINC複合体は主としてSUN domainをもつ核 内膜タンパク質とKASH domainをもつ核外膜タンパク 質からなる(図1.一方で高等植物では,薬理学的解 析によって核運動には微小管ではなくアクチン繊維が関 与していることが強く示唆されてきた.しかしながら,

核運動を担う実際の分子組成は全く不明であった.最

近,私たちは細胞核の運動不全変異株であるシロイヌナ ズナ 変異体の解析を通じて,高等植物が独自に獲 得したユニークな核運動の分子機構を発見した(3)(図1).

細胞核の運動には核自身の形態変化が伴うことに注目 して,細胞核の形態が異常になったシロイヌナズナ変異 体を単離して と名づけた.シロイヌナズナ野生株 の成熟した表皮細胞は,一般に細胞の長軸方向に伸張し た紡錘形の細胞核をもっているが, 変異体の核は 球形の異常な形態をとっている.電子顕微鏡による核の 超微細構造を観察した結果, 変異体の核膜は複雑 に波打っており,核膜の一部が核内部に向かって折り畳 まれた構造をとっていることがわかった.この結果は,

核外または核内から核膜へ向かう物理的なテンションを 大きく欠いていることを示唆している.興味深いこと に, 変異体の原因遺伝子はアクチン繊維依存的に 機能する分子モーターのミオシンXI-iであった.ミオシ ンXI-iは植物特異的ミオシンファミリー XIに属するタ ンパク質でその詳細な機能はこれまで全く不明であっ た.蛍光タンパク質との融合タンパク質を用いた解析か ら,このミオシンXI-iは核膜に局在することがわかっ た.これらの結果はミオシンXI-iが核膜で特異的な機能

図1植物と動物細胞における核運動の 制御分子

植物細胞の核運動ではアクチン繊維に結合 するミオシンXI-iによって駆動される.核 外膜タンパク質WITはミオシンXI-iを核膜 上に係留するとともに,WIP‒SUNタンパ ク質複合体と相互作用している.一方で動 物細胞では主として微小管に依存する分子 モーター(キネシン・ダイニン)によって 核運動を制御している.分子モーターは KASH‒SUNタンパク質複合体と相互作用 することで,細胞質側からの機械的な力を 細胞核に伝える.

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をもつミオシンであることを示している.ミオシンXI-i が細胞核の運動に関与するかを調べるために,GFP マーカーを導入して細胞核が蛍光ラベルされた形質転換 植物を作出した.45分間にわたる蛍光タイムラプス撮 影を行って,根の細胞核の運動を野生株と 変異体 で比較定量した.野生型の核は平均して2.68 µm/minの 運動速度をもつのに対して, 変異体では0.52〜

0.85 µm/minと顕著に速度が低下していた.このことは 変異体では細胞核の形態異常だけでなく運動能力 を欠く変異体であることを示している.

前述のとおり,モータータンパク質を核膜に係留する ためには核外膜と内膜タンパク質からなる複合体が必要 であり,それらは動物と酵母細胞でLINC複合体と呼ば れている.生化学的解析によりミオシンXI-iを核につな ぎとめるWITタンパク質が同定された.このWITタン パク質は米国のグループにより植物特異的な核外膜タン パク質であることがすでに報告されており,同じく核外 膜に局在するWIPタンパク質と相互作用することが明 らかにされている(4).このWIPタンパク質には動物細 胞で知られているようなKASH domainは存在しないも のの,C末端側にKASHタンパク質で保存されたVal- Val-Pro-Thr配列をもっており,核内膜SUN domainタ ンパク質と相互作用する.したがって,WIPタンパク 質は高等植物でKASHタンパク質と同様の機能をもつ と考えられている.

動物細胞の核運動を制御する分子モーターは,主とし て微小管に依存して働くものが同定されてきた(図1). なぜ植物と動物で異なる細胞骨格と分子モーターを使っ ているのか? 一つの理由として,細胞骨格の分布パ ターンが植物細胞と動物細胞で大きく異なっていること が挙げられる.動物細胞では長いアクチン繊維はほとん ど見つからず,オルガネラの長距離輸送は微小管に大き く頼っている.植物細胞では束になった長いアクチン繊 維が細胞の長軸方向に向かって伸びており,小胞や多く のオルガネラではこのアクチン繊維に沿った動きが見ら れる.私たちが同定したミオシンXI-iはミオシンの中で も強力なモーター活性をもつ植物特異的なミオシンXI ファミリーに属している(5).植物は細胞内の核をより長 距離に,そしてより素早く動かすためにミオシンを使っ

て核運動を行うように進化したのかもしれない.核運動 の制御機構に関する研究は,動物細胞では疾患や個体発 生との関連から精力的に進められている.一方で植物細 胞における核運動の理解はまだ端緒についたばかりであ る.これは核運動の中心的役割を果たす核膜タンパク質 が植物ではほとんど保存されていないことに起因してい る(例外的に,核膜孔タンパク質は種を超えた保存性が 見つかる(6)).遺伝学や生化学によるホモロジーに頼ら ない手法や,今回同定されたミオシンXI-i複合体のさら なる解析を通じて,植物独自の核運動の理解が今後進む ことが期待される.

  1)  A.  H.  Griffis,  N.  R.  Groves,  X.  Zhou  &  I.  Meier: 

5, 129 (2014).

  2)  A. Mejat & T. Misteli:  , 1, 40 (2010).

  3)  K. Tamura, K. Iwabuchi, Y. Fukao, M. Kondo, K. Okamo- to,  H.  Ueda,  M.  Nishimura  &  I.  Hara-Nishimura: 

23, 1776 (2013).

  4)  X. Zhou, K. Graumann, D. Evans & I. Meier:  ,  196, 203 (2012).

  5)  M. Tominaga, H. Kojima, E. Yokota, E. Orii, R. Nakamori,  E. Katayama, M. Anson, T. Shimmen & K. Oiwa: 

22, 1263 (2003).

  6)  K.  Tamura,  Y.  Fukao,  M.  Iwamoto,  T.  Haraguchi  &  I. 

Hara-Nishimura:  , 22, 4084 (2010).

(田村謙太郎,西村いくこ,京都大学大学院理学研究科)

プロフィル

田村 謙太郎(Kentaro TAMURA)

<略歴>2004年京都大学大学院理学研究 科博士課程修了/2007年同大学大学院理 学研究科助教,現在に至る<研究テーマと 抱負>植物細胞生物学<趣味>育児,写 真,旅

西村 いくこ(Ikuko HARA-NISHIMURA)

<略歴>大阪大学大学院理学研究科博士課 程修了/名古屋大学,神戸大学,基礎生物 学研究所を経て1999年京都大学大学院理 学研究科教授,現在に至る<研究テーマと 抱負>植物の生き方から学ぶこと<趣味>

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