• Tidak ada hasil yang ditemukan

古くて新しい植物のO-結合型糖タンパク質の世界 - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "古くて新しい植物のO-結合型糖タンパク質の世界 - J-Stage"

Copied!
2
0
0

Teks penuh

(1)

729

化学と生物 Vol. 53, No. 11, 2015

古くて新しい植物の O- 結合型糖タンパク質の世界

生合成の鍵となる糖転移酵素群がついに解明

タンパク質の糖鎖修飾には -結合型と -結合型とが 知られているが,基本的な生合成のしくみが動植物間で 類似している -結合型に対して, -結合型糖鎖は最初に 付加される糖とアミノ酸の組み合わせが大きく異なる.

ヒトやマウスの -結合型糖鎖では,セリン(Ser)また はスレオニン(Thr)の水酸基に -アセチルガラクトサ ミンが付加するのが一般的であるのに対し,植物ではヒ ドロキシプロリン(Hyp)にL-アラビノース(L-Ara)が 付 加 する例や,HypまたはSerにD-ガラクトース(D- Gal)が付加する例が広く知られている.こうした植物 特異的な -結合型糖タンパク質の研究の歴史は古く,そ の始まりは今から50年ほど昔にまでさかのぼる.

植物における -結合型糖タンパク質の代表例の一つ は,エクステンシンである.エクステンシンは,1960 年代に植物培養細胞の細胞壁画分に発見された糖タンパ ク質であり,Hyp残基には直鎖1 〜 4残基のL-Araが,

Ser残基には1残基のD-Galが付加している(1).シロイヌ ナズナでは65種類のエクステンシンが知られており,

その一つEXT3の欠損株では,細胞壁の形成異常のため に根や葉が極端な奇形を示す.エクステンシンは,重量 の50%以上を占める糖鎖の立体的な効果によって棒状 のコンフォメーションをとり,さらに互いにチロシン残 基を介して分子間架橋している.この網目状の構造がセ ルロース微繊維の足場として細胞壁の形成に不可欠な役 割を果たしていると考えられている(1)

また,細胞間シグナリングを担う短鎖ペプチドホルモ ンにも -結合型糖鎖修飾されるものが見つかっている.

細胞伸長にかかわるPSY1,  茎頂メリステムの幹細胞数 を制御するCLV3, 根粒数の制御に関与するCLE-RSなど が代表的な例である.これらのペプチドでは,Hyp残 基の一つに直鎖3残基のL-Ara糖鎖が付加しており,糖 鎖の存在が活性に重要である(2)

-結合型糖タンパク質のもう一つの大きなグループ は,古くから乳化剤として用いられてきたアラビアガム の成分でもあるアラビノガラクタンプロテイン(AGP)

である.AGPは,D-GalやL-Araに富んだ複雑な枝分か れ構造の糖鎖をもち,糖鎖部分が重量の90%程度にも なる(3).AGP生合成の鍵となるのはHyp残基にD-Galが

付加する反応であり,このD-Galを起点としてさらに糖 鎖が枝分かれしながら伸長することで,巨大な分子とな る.シロイヌナズナには85種類のAGPが見いだされて おり,それらの欠損はさまざまな形態異常を引き起こす ことから,AGPは植物の生長や分化に重要な機能をも つと考えられている.

このように,長い研究の歴史をもつ植物の -結合型 糖タンパク質であるが,それぞれの糖鎖修飾の第1段階 を担う酵素,すなわちHyp  -アラビノシル化,Hyp  - ガラクトシル化,およびSer  -ガラクトシル化にかかわ る糖転移酵素群が,ここ数年の間に立て続けに同定され 注目を集めている(表1

エクステンシンや短鎖ペプチドホルモンのHyp残基 にL-Araを転移する酵素,Hyp  -arabinosyltransferase

(HPAT)は,2013年に筆者らのグループが,シロイヌ ナズナ培養細胞由来の膜画分から精製することに成功し た(4).HPATはゴルジ体に局在する約42 kDの膜タンパ ク質である.シロイヌナズナに 遺伝子は3種類存 在し,それらの2つを欠損させると,その組み合わせに よって胚軸の徒長,細胞壁の薄化,花成の促進,葉の老 化の促進,花粉管伸長異常などのさまざまな表現型が見 られる.一方,三重変異株は花粉管伸長不全のために得 られていない.興味深いことに,欠損株が根粒過剰着生 の形質を示すが機能は未知であったエンドウのNOD3や クローバーのRDN1が,1次配列の類似性からHPATオ ルソログであることが明らかとなった.この事実は,根 粒菌の着生により根粒がある程度形成されると,アラビ ノシル化されたペプチドCLE-RSが根粒形成の抑制シグ ナルとして分泌され,根粒数が一定に保たれるというし くみを解き明かした最近の報告を裏づけるものである(5)

また,エクステンシンのSer残基にD-Galを転移する 表1同定された植物の -結合型糖転移酵素群

糖転移反応 酵素名 細胞内 

局在 文献 Hyp  -アラビノシル化 HPAT1, HPAT2, HPAT3 ゴルジ体 (4) Ser  -ガラクトシル化 SGT1 小胞体 (6) Hyp  -ガラクトシル化 GALT2 小胞体 (7) HPGT1, HPGT2, HPGT3 ゴルジ体 (8)

今日の話題

(2)

730 化学と生物 Vol. 53, No. 11, 2015

酵 素,Ser  -galactosyltransferase(SGT) は,2014年 にSaitoらによって藻類であるクラミドモナスの膜画分 から精製された(6).SGTは91 kDの膜タンパク質であ り,主に小胞体に局在する.シロイヌナズナのSGTは1 遺伝子しかなく,その欠損株では,野生型よりもやや根 が長く,葉も大きくなるという表現型が観察されてい る.この表現型は,エクステンシンの機能低下による細 胞壁の緩みによるものと考えられているが,HPAT欠 損株の表現型よりも軽微で質的にも違うことから,エク ステンシンの機能に対する2種類の糖鎖修飾の寄与はか なり異なるようである.

一方,AGPのHyp残基にD-Galを転移する酵素,Hyp  -galactosyltransferase(HPGT)は,当初,既知のガラ クトース転移酵素群の配列上の特徴に基づいたバイオイ ンフォマティクスにより候補の絞り込みが行われ,

Basuらにより2013年にそれらの一つであるGALT2に 微弱ながらも酵素活性があることが示された(7).しか し,シロイヌナズナGALT2の欠損株にはまだ相当量の ガラクトース転移酵素活性が残っており,表現型も観察 されなかったため,主要な酵素はまだほかに存在するこ とが予測されていた.このような状況のなか,2015年 に筆者らは,シロイヌナズナ培養細胞由来の膜画分から 高い酵素活性を示す分子群を精製し,HPGT1, HPGT2 およびHPGT3と名づけた(8).HPGTはゴルジ体に局在 する膜タンパク質である.HPGTの三重変異株では AGPの糖鎖修飾が著しく減少し,側根や根毛の伸長と 密度増加,根端細胞の肥大,植物体の矮化,稔性の低下 など,いくつかのAGP欠損株と類似した多面的な表現 型が観察されたことから,HPGTこそがAGP生合成に おいて主要な酵素であると考えられる.

これらHyp  -アラビノシル化,Hyp  -ガラクトシル 化,およびSer  -ガラクトシル化にかかわる糖転移酵素 群の同定がもたらすインパクトは多岐にわたる.たとえ ば,これらの欠損株の表現型は,それぞれの糖鎖修飾が 非常に低下している状態を反映しており,これを手がか りに今まで遺伝子重複のために隠れていた -結合型糖 タンパク質の機能が見つかる可能性がある.また近年,

植物培養細胞を用いた抗体やサイトカインなどの生産が 試みられているが,それには植物特有の -結合型糖鎖 の付加を抑制する技術の開発が必要不可欠である.世界 的に花粉症患者が多いヨモギやブタクサなどの花粉のア レルゲンが -結合型糖鎖であるという報告もある(9〜11)

同定された -結合型糖転移酵素群の遺伝子情報は,基礎 研究のみならず応用面にも今後大きく貢献するだろう.

  1)  D. T. Lamport, M. J. Kieliszewski, Y. Chen & M. C. Can-

non:  , 156, 11 (2011).

  2)  Y. Matsubayashi:  , 65, 385 (2014).

  3)  M.  Ellis,  J.  Egelund,  C.  J.  Schultz  &  A.  Bacic: 

153, 403 (2010).

  4)  M.  Ogawa-Ohnishi,  W.  Matsushita  &  Y.  Matsubayashi: 

9, 726 (2013).

  5)  S.  Okamoto,  H.  Shinohara,  T.  Mori,  Y.  Matsubayashi  & 

M. Kawaguchi:  , 4, 2191 (2013).

  6)  F. Saito, A. Suyama, T. Oka, O. T. Yoko, K. Matsuoka, Y. 

Jigami & Y. I. Shimma:  , 289, 20405 (2014).

  7)  D.  Basu,  Y.  Liang,  X.  Liu,  K.  Himmeldirk,  A.  Faik,  M. 

Kieliszewski, M. Held & A. M. Showalter:  ,  288, 10132 (2013).

  8)  M. Ogawa-Ohnishi & Y. Matsubayashi:  , 81, 736  (2015).

  9)  R.  Leonard,  N.  Wopfner,  M.  Pabst,  J.  Stadlmann,  B.  O. 

Petersen, J. O. Duus, M. Himly, C. Radauer, G. Gadermai- er,  E.  Razzazi-Fazeli  :  , 285,  27192  (2010).

10)  L.  Brecker,  D.  Wicklein,  H.  Moll,  E.  C.  Fuchs,  W.  M. 

Becker & A. Petersen:  , 340, 657 (2005).

11)  N. Gupta, B. M. Martin, D. D. Metcalfe & P. V. Rao: 

98, 903 (1996).

(小川(大西)真理,松林嘉克,名古屋大学大学院理学研 究科)

プロフィル

小 川( 大 西 )  真 理( M a r i   O G A W A - OHNISHI)

<略歴>2001年名古屋大学農学部応用生 物科学科卒業/2003年同大学大学院生命 農学研究科博士前期課程修了/同年同研究 科研究員/2010年基礎生物学研究所研究 員/2013年名古屋大学大学院理学研究科 研究員,現在に至る<研究テーマと抱負>

糖鎖修飾ペプチドの機能解析と情報メカニ ズムの解明<趣味>子育て,マラソン,ド ライブ,読書,美容

松林 嘉克(Yoshikatsu MATSUBAYASHI)

<略歴>1997年名古屋大学大学院生命農 学研究科博士後期課程修了,博士(農学)/ 

1999年同大学大学院生命農学研究科助 手/2002年同大学大学院生命農学研究科 准教授/2011年基礎生物学研究所教授/

2014年名古屋大学大学院理学研究科教授,

現在に至る<研究テーマと抱負>リガン ド̶受容体ペアの同定から植物のかたちづ くりや環境応答のしくみを解き明かす<趣 味>純米無濾過生原酒,銀塩写真

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.729

今日の話題

Referensi

Dokumen terkait

4の割合になっている。 ◎著作権・ディープリンクについて 業界の総意として新聞協会がディープリンク に関して強い態度を示しているので琉球新報と しても従っているが、 個人的には、 ディープリ ンクはインターネットの特徴の一つと考えてい るので、 これと格闘しても仕方がないと思う。 むしろそのアーキテクチュアと上手く付き合っ ていったほうが良いのではないか。

エリスロマイシンやテトラサイクリンに代表されるポ リケチド抗生物質は,化学構造と生理活性の多様性に最 も富んだ抗生物質の一群である.主に放線菌などの微生 物が生産することが知られており,脂肪酸生合成と類似 した機構で生合成されることが知られている.脂肪酸生 合成では,アセチルACP(アシルキャリアープロテイ ン)とマロニルACP間のクライゼン型縮合反応により